説明

複合マンドレル

織物品又は編組品の製造において基板として使用するためのマンドレルは、発泡体の内部コア、炭素繊維強化樹脂の少なくとも第1の中間層、及びガラス繊維強化樹脂の外層を含むことができる。発泡体コアは、所望のサイズ及び形状で形成される高密度の独立気泡ポリウレタンフォームを含むことができる。中間層及び外層の繊維は、例えば、短繊維、連続的に長手方向に整列された繊維、円周方向に織られた繊維、斜めに整列された繊維でよく、或いは、繊維は、織模様又は編組模様を有してもよい。曲線、長円、及び円形などの複雑なマンドレル形状を形成するために、複数のマンドレルを一緒に連結させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(0001)
本出願は、参照によって本明細書に組み込まれる、2006年4月4日出願の表題「複合マンドレル(Composite Mandrel)」の米国特許仮出願第60/789,031号の利益を主張する。本出願はまた、参照によって本明細書に組み込まれる、2007年3月30日出願の表題「複合マンドレル(Composite Mandrel)」の米国特許出願第11/694,491号に対する優先権も主張する。
【0002】
(0002)
本発明は、ニアネット・シェイプ(near-net shape)の複合プレフォーム(preforms)をその上に製造するための改良されたマンドレルに関する。
【背景技術】
【0003】
(0003)
複合材料を含む物品を製造する技術分野では、複合製品がその上に予備成形されるマンドレルを最初に形成することが知られている。従来技術では、そのようなマンドレルは通常、ソリッド・ウッド、合板、及び/又は金属材料から製造される。
【0004】
(0004)
曲線の複合プレフォーム製品の製造では、従来技術の木製のマンドレルは、その上に形成されている複合製品の不均一を生じさせる不安定さをしばしば呈する。金属製マンドレルは、木製マンドレルの不安定さを解決する傾向があり得るが、それでもなお周囲の温度変化によって引き起こされる熱的不安定に晒されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(0005)
作業環境において、寸法及び熱的な安定性を呈するマンドレルが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(0013)
織物品又は編組品の製造において基板として使用するためのマンドレルの1つの実施形態は、発泡体の内部コア及び繊維強化樹脂の少なくとも第1の層を含むことができる。炭素繊維が樹脂の強化材として使用されてもよい。複数の炭素繊維強化樹脂層が発泡体コアに重着されていてもよい。
【0007】
(0014)
織物品又は編組品の製造において基板として使用するための複合マンドレルの別の実施形態は、高密度の独立気泡ポリウレタンフォームの内部コア、該コアの周りの炭素繊維強化樹脂の中間層、及び該中間層の周りのガラス繊維強化樹脂の外層を有する、長手方向に延びるマンドレル本体を含むことができる。
【0008】
(0015)
さらに別の実施形態は、発泡体のマンドレル・コアを準備するステップ、炭素繊維のスリーブで発泡体コアの表面を覆うステップ、炭素繊維強化樹脂層を作り出すために炭素繊維に樹脂を付着させるステップ、炭素繊維強化樹脂層が硬化した後、ガラス繊維のスリーブで炭素繊維強化樹脂層の表面を覆うステップ、及びガラス繊維強化樹脂層を作り出すためにガラス繊維に樹脂を付着させるステップを含む、織物品又は編組品の製造において基板として使用されるマンドレルの製造方法を含む。
【0009】
(0016)
1つ又は複数の実施形態では、マンドレルは、炭素繊維強化樹脂の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の層及びガラス繊維強化樹脂材料の少なくとも1つの外層で覆われた独立気泡の高密度ポリウレタンフォームのコアを含む。また、他のタイプの発泡体が本発明の実施形態で利用できることも企図される。発泡体コアは、最初に最終のマンドレルに望まれる形状に合わせて成形され、その後、強化された炭素及びガラス繊維の層が積層される。
【0010】
(0017)
本明細書で教示する複合マンドレル構造の実施形態は、従来技術のマンドレル構造よりも高い剛性及び低い重量を付与し、それにより、複合プレフォームがマンドレル上に施与され及び/又は硬化されるとき、その複合プレフォーム中にしわの寄らない、又はむらのない複合材料層を自動的に及び/又は半自動的に積層することが容易になる。
【0011】
(0018)
例えばマンドレルの長手軸方向に沿って軸方向に直列の直線、円形、又は非円形の形状など、より複雑な形状を作り出すために、本明細書に教示する複数の複合マンドレルを一緒に連結させることができ、それによって単一の製造作動で複数の複合プレフォームを製造することが容易になる。
【0012】
(0019)
複合マンドレルの実施形態の長手方向及び断面の形状は、可変の形状を含むことができ、それによって所望のバリエーションが最終プレフォーム外形の形状に付与される。複合マンドレルの長手方向及び断面の形状は、手動で、又はコンピューター支援設計(CAD)製造ソフトウエア・プログラムを用いる自動又は半自動の工作機械によって生成することができる。
【発明の効果】
【0013】
(0020)
したがって、本発明の実施形態のうち1つの実施形態の1つの利点は、従来技術の欠点の1つ又は複数を克服する、ニアネット・シェイプの複合プレフォームをその上に製造するための寸法的に安定した複合マンドレルを提供することである。
【0014】
(0021)
本発明の実施形態のうち1つの実施形態の別の利点は、ニアネット・シェイプの複合プレフォームをその上に製造するための複合マンドレルであって、複合繊維を編組又は積層した後に、型内で連結剤を注入し、複数の複合製品製造方法を用いて最終の複合製品に形成することができる、複合マンドレルを提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(0022)
図1は、本発明の1つの実施形態を包含する、曲線の軸の形状を有するマンドレル10の全体を示している。マンドレル10はまた、長手方向に直線の形状又は複数の軸形状のどのようなものも包含することができる。マンドレル10の横断面は、概ね矩形断面を有するものとして示されているが、マンドレル10は、代替的に、複数の所望の断面形状のどのようなものも包含することができ、或いはその長手軸方向の長さに沿って可変の断面を含むこともできる。例えば、図5に示すマンドレルは、使用できる複数の断面形状のうちの1つにすぎない。したがって、マンドレルのどのような形状、サイズ、及び曲率も本発明の様々な実施形態で使用されるように企図されている。
【0016】
(0023)
図2及び2Aを参照すると、マンドレル10は、炭素繊維強化樹脂材料の第1のオーバーラップ層14、炭素繊維強化樹脂材料の任意の第2のオーバーラップ層16、及びガラス繊維強化樹脂材料の第3の外層18を有する、高密度のポリウレタン・フォームのコア12を含むことができる。任意選択で、炭素繊維強化樹脂材料の第2の層16は省かれてよく、或いは炭素繊維強化樹脂材料の複数の層が加えられてもよい。
【0017】
(0024)
複合マンドレル10の製造では、最初に発泡体コア12を、発泡体製品を形成する周知の方法を使用して所望のマンドレルの形状及び輪郭に合わせて形成することができる。予備成形された発泡体コアを得た後、炭素繊維強化樹脂材料の第1のオーバーラップ層14を積層して硬化させ、その後に任意の第2の炭素繊維オーバーラップ層16及びガラス繊維強化樹脂材料の最終外層18を積層して硬化させる。
【0018】
(0025)
複合マンドレル10を製造する1つの実施形態では、炭素繊維のスリーブが発泡体コア上に積層される。炭素繊維は、スリーブの周りを斜めに延びることができる弾性の繊維又は部材と少なくとも部分的に織られ、又は編組された、長手方向又は軸方向に整列された繊維でよい。或いは、炭素繊維自体が、部分的又は実質的に編組されても、織られてもよい。炭素繊維でオーバーラップされたコアを、物品又はバッグ内に配置させることができ、そこで、一方の端部で空気を抜き、樹脂を他方の端部で導入し、それにより樹脂をコア/繊維の組み合わせ上に引き、炭素繊維強化層を形成する。或いは、樹脂を手又はブラシで炭素繊維に付着させてもよい。炭素繊維強化層が硬化した後、繊維ガラス又はガラス繊維のスリーブを炭素繊維強化層上に積層することができる。これも同様に、コア/炭素繊維強化樹脂部材を類似の物品又はバッグ内に配置させることができ、そこで、一方の端部で空気を抜き、樹脂がガラス繊維全体に引き込まれ、それによりガラス繊維強化層を形成する。ここでも、代替策として樹脂を手又はブラシで付着させることができる。
【0019】
(0026)
複数の樹脂のうちどのようなものも本発明の実施形態に従って使用することができる。例えば、1つの実施形態では、樹脂は、室温で硬化するビニール・エステル樹脂である。使用できる樹脂の他の実施形態として、エポキシ樹脂が挙げられるが、それには限定されない。
【0020】
(0027)
マンドレル10の可変の断面は、その長手方向長さに沿って可変の断面を有する発泡体コアを形成することにより、又はオーバーラップ層14、16、18の数及び/又は厚さを変えることにより、実現することができる。
【0021】
(0028)
オーバーラップ層14、16、及び18は、短繊維、連続的に長手方向に整列された繊維、円周方向に織られた繊維、繊維織模様又は繊維編組模様、或いは他の任意の所望の繊維強化模様を含むことができる。各々の層14、16、及び/又は18は、所望される場合は、それぞれ異なる繊維強化パターンを含むことができる。
【0022】
(0029)
複合マンドレルは、強化繊維のマトリクスがその上に施与された寸法的に安定な基板として働く。
【0023】
(0030)
同じ又は異なる組成を有する繊維強化の複数の層は、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,398,586号に教示する装置及び方法を使用して、発泡体コアに編組され、或いは別の形で積層することができ、各々の層は、マンドレルの長手方向長さに延びても延びなくてもよく、それによって自動プロセス又は半自動プロセスを使用して複雑な形状を構成することが可能になる。
【0024】
(0031)
繊維の編組模様を複合マンドレル・コア12上に直接施与することにより、織物繊維材料、スリーブ材料、又は編組繊維材料を用いる複雑な複合プレフォームの手積み又は反自動積みという大きな労働力を要するプロセスが解消される。さらに、複数の編組層の軸方向のけん引繊維を、自動又は半自動装置によって正確に整列させることができる。
【0025】
(0032)
使用時、マンドレル10は、織物品又は編組品30がその上に形成される基板として使用することができる。例えば、図3及び3Aは、マンドレル10上に形成された織物品又は編組品30を示している。
【0026】
(0033)
複数の複合マンドレル10を、マンドレルの端部に取り付けられた接合板20を用いて互いに着けることができ、それによって図4に示すようにより複雑な形状を有する構造が容易になる。
【0027】
(0034)
特定の実施形態に関連して、本発明者の発明の原理を上記で説明してきたが、この説明は単に例示のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを明確に理解されたい。
【0028】
(0035)
本発明を詳細に上記で説明してきたが、これも説明のため及び例示のためのものにすぎず、本発明の限定としてとらえるものではない。したがって、本発明の範囲及び内容は、付属の特許請求項の範囲の条件によってのみ定義されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
(0006)
【図1】複合マンドレルの斜視図である。(0007)
【図2】図1に示すマンドレルの断面図である。(0008)
【図2A】図2において円で囲んだ部分の拡大図である。(0009)
【図3】編組された繊維製品でその周りを包まれた複合マンドレルの側面図である。(0010)
【図3A】マンドレルをオーバーラップする編組された繊維製品の拡大図である。(0011)
【図4】接合板を用いて円形のマンドレル・アセンブリを形成するために、端部同士が接合された複数の非直線形のマンドレルの斜視図である。(0012)
【図5】複合マンドレルの第2の実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物品又は編組品の製造において基板として使用するためのマンドレルであって、
発泡体の内部コアと、
前記発泡体コアの表面を覆う繊維強化樹脂の第1の層とを有するマンドレル本体を備えるマンドレル。
【請求項2】
前記第1の樹脂層が、炭素繊維強化樹脂層である、請求項1に記載のマンドレル。
【請求項3】
さらに、前記第1の炭素繊維強化樹脂層の表面を覆う第2の炭素繊維強化樹脂層を含む、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項4】
さらに、前記第2の炭素繊維強化樹脂層の表面を覆うガラス繊維強化樹脂層を含む、請求項3に記載のマンドレル。
【請求項5】
さらに、前記炭素繊維強化樹脂層の表面を覆うガラス繊維強化樹脂層を含む、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項6】
前記炭素繊維強化樹脂層及び前記ガラス繊維強化樹脂層の少なくとも一方の層内の前記繊維が、少なくとも部分的に編組される、請求項5に記載のマンドレル。
【請求項7】
前記炭素繊維強化樹脂層中の前記炭素繊維が、前記マンドレル本体の軸に対して軸方向に整列され、前記炭素繊維が、弾性繊維と少なくとも部分的に編組されている、請求項6に記載のマンドレル。
【請求項8】
前記ガラス繊維強化層中の前記ガラス繊維が、実質的に編組される、請求項6に記載のマンドレル。
【請求項9】
前記発泡体コアが、高密度の独立気泡ポリウレタンである、請求項5に記載のマンドレル。
【請求項10】
組み合わせにおいて、請求項5に記載のマンドレルの複数を互いに連結して形成したマンドレル・アセンブリ。
【請求項11】
前記マンドレル・アセンブリの形状が、円形である、請求項10に記載のマンドレル・アセンブリ。
【請求項12】
前記マンドレルが、接合板によって互いに連結されている、請求項10に記載のマンドレル・アセンブリ。
【請求項13】
織物品又は編組品の製造において基板として使用するためのマンドレルであって、
高密度の独立気泡ポリウレタンフォームの内部コアと、
前記コアの周りの炭素繊維強化樹脂の中間層と、
前記中間層の周りのガラス繊維強化樹脂の外層とを有する、長手方向に延びるマンドレル本体を備えるマンドレル。
【請求項14】
炭素繊維強化樹脂の前記中間層中の前記繊維が、長手方向に整列された繊維である、請求項13に記載のマンドレル。
【請求項15】
前記ガラス繊維強化層中の前記ガラス繊維が、実質的に編組される、請求項14に記載のマンドレル。
【請求項16】
前記マンドレルが、その側面に長手方向に延びる切削溝を有する、請求項15に記載のマンドレル。
【請求項17】
織物品又は編組品の製造において基板として使用されるマンドレルを製造する方法であって、
発泡体のマンドレル・コアを準備するステップと、
炭素繊維のスリーブで前記発泡体コアの表面を覆うステップと、
炭素繊維強化樹脂層を作り出すために前記炭素繊維に樹脂を付着させるステップと、
前記炭素繊維強化樹脂層が硬化した後、ガラス繊維のスリーブで前記炭素繊維強化樹脂層の表面を覆うステップと、
ガラス繊維強化樹脂層を作り出すために前記ガラス繊維に樹脂を付着させるステップとを含む方法。
【請求項18】
前記内部発泡体コアが、独立気泡ポリウレタンフォームである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記炭素繊維スリーブ中の前記炭素繊維が、実質的に長手方向に整列され、斜めに伸びる弾性繊維と織られる、或いは編組される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ガラス繊維スリーブ中の前記ガラス繊維が、実質的に編組された繊維である、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−523730(P2010−523730A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504397(P2009−504397)
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/065740
【国際公開番号】WO2007/115239
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508294620)エー アンド ピー テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】