説明

複合化球状粒子組成物とその製造方法

【課題】 球状形状を有し、分散性が良く、化粧料に配合したときには、その化粧料に良好な発色性、するするとした滑りの良い感触を付与することができ、また、プラスチック材料に混練したときには、そのプラスチック材料に、質感のある発色性と水玉模様とを発現させることができる複合化球状粒子組成物を提供し、併せてその製造方法を提供する。
【解決手段】 モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散膨潤させておき、その中に無機顔料もしくは有機顔料を均一に分散させてスラリー溶液とする。次いで、このスラリー溶液に酸を加え、スプレードライヤにて噴霧乾燥させるか、あるいは、スラリー溶液をスプレードライヤにて噴霧乾燥させた後500℃以上の温度で焼成する。こうして、モンモリロナイト系合成粘土鉱物と無機顔料もしくは有機顔料とを複合化した複合化球状粒子組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、化粧料、プラスチック、インク、繊維、ゴム、トナー等に配合して使用する複合化球状粒子組成物とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、するするとした滑りの良い感触を与える球状粒子は、着色顔料と共に、化粧料、プラスチック等に配合されて使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記着色顔料は凝集し易いという特性を備えているため、均一に系の中へ分散させることが難しく、化粧料に配合した際に均一な分散性で着色することができないという問題点がある。また、前記着色顔料は球状に形成することが極めて困難であるため、球状粒子の特性であるするするとした滑りの良い感触を付与することができないという問題点もある。
【0004】
また、前述のように着色顔料は球状に形成することが困難であることから、その着色顔料をプラスチック材料に混練した際に、プラスチック材料に質感のある発色性を持たせたり、プラスチック材料に水玉状の模様を付したりすることが難しいという問題点がある。このため、プラスチック材料に質感のある発色性を持たせ、水玉模様を発現させるためには、プラスチック成形物の表面に印刷を行うのが普通である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、球状形状を有し、分散性が良く、化粧料に配合したときに、その化粧料に良好な着色性と、するするとした滑りの良い感触を付与することができ、また、プラスチック材料に混練したときに、そのプラスチック材料に質感のある発色性と鮮やかな水玉模様とを発現させることができる複合化球状粒子組成物を提供し、併せてその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究した結果、モンモリロナイト系合成粘土鉱物と無機顔料もしくは有機顔料とを複合化することにより得られる複合化球状粒子組成物は、分散性が良く、球状粒子形状を有し、水に分散させた場合であっても膨潤せずにその球状粒子形状を保持することができることを見い出した。加えて、前記複合化球状粒子組成物を化粧料に配合したときには、均一に分散されて、その化粧料に良好な着色性とするするとした滑りの良い感触とを付与できることを見い出した。また、その組成物をプラスチック材料に混練した際には、均一に分散されて、そのプラスチック材料に質感のある発色性と水玉模様を発現させることができることを見い出した。
【0007】
また、モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散・膨潤させ、無機顔料もしくは有機顔料を分散させて得られる液中に、無機顔料もしくは有機顔料を分散・膨潤させておき、一気にスプレードライヤにて噴霧・乾燥させることにより、その噴霧されたスラリー溶液の液滴が球状で乾燥されて、その球状粒子形状を保った粒子となることを見い出した。
【0008】
さらに、モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散・膨潤させ、無機顔料もしくは有機顔料を分散させた後に酸を加え、こうして得られた酸性のスラリー溶液をスプレードライヤで噴霧乾燥させることによって、または、モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散・膨潤させ、無機顔料もしくは有機顔料を分散させて得られるスラリー溶液をスプレードライヤで噴霧乾燥させた後に500℃以上で焼成することによって、水に分散されたときでも二度と膨潤されずに、球状粒子形状を保つことができる前述の複合化球状粒子組成物を得ることを見い出した。
【0009】
すなわち、第1発明による複合化球状粒子組成物は、
モンモリロナイト系合成粘土鉱物と無機顔料もしくは有機顔料とを複合化した球状粒子よりなることを特徴とするものである。
【0010】
前記第1発明において、前記球状粒子の粒子径は0.01〜500μmであるのが好ましい(第2発明)。
【0011】
次に、第3発明による複合化球状粒子組成物の製造方法は、
モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散膨潤させておき、その中に無機顔料もしくは有機顔料を均一に分散させた後、酸を加えて酸性のスラリー溶液とし、このスラリー溶液をスプレードライヤにて噴霧乾燥させることを特徴とするものである。
【0012】
また、第4発明による複合化球状粒子組成物の製造方法は、
モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散膨潤させておき、その中に無機顔料もしくは有機顔料を均一に分散させてスラリー溶液とし、このスラリー溶液をスプレードライヤにて噴霧乾燥させ、500℃以上の温度で焼成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
前記第1発明による複合化球状粒子組成物は、例えば、化粧料、プラスチック、インク、繊維、ゴム、トナー等の組成物として含有させることができるが、特に、化粧料に配合した場合には、均一に分散して、その化粧料に、優れた発色性と、するするとした滑りの良い使用感を同時に付与することができる。また、プラスチック材料に混練した場合には、均一に分散して、そのプラスチック材料に、質感のある発色性と鮮やかな水玉模様とを発現させることができる。
【0014】
前記第2発明によれば、球状粒子の粒子径を0.01〜20μmとすることにより、化粧料に配合したときに、その化粧料により優れた使用感を発現させることができ、また球状粒子の粒子径を20〜500μmとすることにより、プラスチック材料に混練したときに、鮮やかな水玉模様を出現させることができる。
【0015】
前記第3発明によれば、モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散・膨潤させて無機顔料もしくは有機顔料を添加し、こうして得られるスラリー溶液の酸処理を行って、その酸処理されたスラリー溶液をスプレードライヤにて噴霧乾燥させることによって、その噴霧されたスラリー溶液を球状粒子の状態で乾燥させることができ、水に分散された場合でも水中で分散されずに球状粒子形状を保持することができる複合球状粒子組成物を得ることができる。以上のような製造方法を酸処理法という。なお、第3発明においては、乾燥後、酸処理により生成された塩を取り除くための水洗工程を経ることが必要となる。ここで、酸処理法においては、第4発明のように、500℃以上の高温で焼成されることがないので、高温で色変化・分解が生じる顔料、例えば、有機顔料、黄酸化鉄、黒酸化鉄を複合化させる際に有効である。
【0016】
また、前記第4発明によれば、モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散・膨潤させて、無機顔料もしくは有機顔料を添加し、こうして得られるスラリー溶液をスプレードライヤを用いて噴霧・乾燥させ、500℃以上の高温で焼成することにより、水に分散された場合でも水中で分散されずに球状粒子形状を保持することができる複合球状粒子組成物を得ることができる。以上のような製造方法を乾燥法という。この乾燥法においては、500℃以上の高温で焼成しても、変化の生じ難い顔料を複合化させる際に有効である。
【0017】
ここで、前記酸処理法、焼成法において、複合化球状粒子に対する無機顔料もしくは有機顔料の含有量は、特に制限されるものではないが、着色性、発色性の良さと、球状形状を保つために、10〜95wt%とするのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明による複合化球状粒子組成物およびその製造方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0019】
本実施形態において用いるモンモリロナイト系合成粘土鉱物は、一般に工業的に合成されたヘクトライトであり、種々のものを用いることができるが、特に親和性・水膨潤性に優れたものが好ましく、たとえば、次式
Na(MgLi)(Si10)(OH)
(x=0.33、y=2.67、z=0.33)
で示される、コープケミカル株式会社製ルーセンタイトSWN、あるいは同社製ルーセンタイトSWF等を使用するのが好ましい。
【0020】
また、本実施形態において、複合化する無機顔料もしくは有機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、群青、酸化クロム、酸化亜鉛、赤色202号、赤色226号、橙色203号、橙色204号、緑色202号、青色201号、黄色401号等が挙げられる。
【0021】
本実施形態による複合化球状粒子の製造方法(酸処理法)の例としては、
(a)イオン交換水に、0.5〜20wt%となるようにモンモリロナイト系合成粘土鉱物を添加して撹拌し、均一かつ十分に膨潤させ、
(b)その膨潤溶液中に、モンモリロナイト系合成粘土鉱物に対して適量の無機顔料もしくは有機顔料を添加し、その無機顔料もしくは有機顔料が均一に分散するまで撹拌してスラリー溶液を得、
(c)このスラリー溶液に1Nの希硫酸溶液を除々に滴下してスラリー溶液のpHが2〜2.5になるように調整し、その後2時間撹拌して全体を均一にした後、
(d)その酸処理されたスラリー溶液を、二流体スプレーノズルを備えたスプレードライヤを用いて、送風空気温度200℃にて一気に噴霧乾燥させ、
(e)熱風乾燥機を用いて100℃で再度乾燥させた後、
(f)イオン交換水中に約10wt%となるように分散させ、約二時間水洗し、ろ過・乾燥させて、目的とする複合化球体粒子組成物を得るという方法が挙げられる。
【0022】
また、他の製造方法(焼成法)の例としては、
(a)イオン交換水に0.5〜20wt%となるように、モンモリロナイト系合成粘土鉱物を添加して撹拌し、均一かつ十分に膨潤させ、
(b)その膨潤溶液中に、モンモリロナイト系合成粘土鉱物に対して適量の無機顔料もしくは有機顔料を添加し、その顔料が均一に分散するまで撹拌してスラリー溶液を得、
(c)このスラリー溶液を二流体スプレーノズルを備えたスプレードライヤを用いて、送風空気温度200℃にて一気に噴霧乾燥させた後、
(d)500〜1000℃の焼成炉にて、3〜4時間焼成し、目的とする複合化球体粒子を得るという方法が挙げられる。
【0023】
これら製造方法によって得られる本実施形態による複合化球状粒子組成物は、例えばシリコン処理、金属せっけん処理、アルキルシラン処理、パーフルオロアルキルリン酸処理、ラウロイルリジン処理、シランカップリング処理等の表面処理を必要に応じて施すことで、化粧料あるいは、プラスチック材料、インク、塗料等の着色剤として使用される。
【実施例】
【0024】
次に、本発明による複合化球状粒子組成物の具体的実施例について説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
市販のモンモリロナイト系合成粘土鉱物(コープケミカル株式会社製ルーセンタイトSWN)10gを1000ccのイオン交換水に分散させ、約1時間撹拌して均一に膨潤させる。こうして得られた溶液中に黄酸化鉄(チタン工業株式会社製タロックスLLXLO)を90g投入し、約30分間撹拌して、スラリー溶液を得る。次いで、このスラリー溶液を撹拌しながら、1Nの希硫酸溶液を除々に滴下し、スラリー溶液のpHを2.5に調整する。その後2時間撹拌して熟成させ、二流体スプレーノズルを備えたスプレードライヤに50cc/minで供給し、熱風温度200℃、スプレー圧力0.55MPaの条件の下で一気に噴霧して、スプレードライヤに備え付けのサイクロンで捕集し乾燥させる。次に、サイクロンで捕集した捕集物を室内温度100℃の熱風乾燥機に投入し、10時間乾燥させた後、イオン交換水1000ccを加え、約2時間撹拌させた後ろ過し、再度室内温度100℃の熱風乾燥機に投入し、約20時間乾燥させた。このようにして得られた複合球状粒子化合物は、黄色を呈し、平均粒子径が5μmで、走査型電子顕微鏡観察による観察の結果、球状の粒子形状を有していた。
【0026】
(実施例2)
市販のモンモリロナイト系合成粘土鉱物(コープケミカル株式会社製ルーセンタイトSWN)10gを1500ccのイオン交換水中に分散させ、約1時間撹拌して均一に膨潤させる。その溶液中に酸化チタン(石原産業株式会社製CR−50)90gを投入し、約30分間撹拌してスラリー溶液を得る。このスラリー溶液を、二流体スプレーノズルを備えたスプレードライヤに50cc/minで供給し、送風温度200℃、スプレー圧力0.55MPaの条件下で一気に噴霧してサイクロンで捕集して乾燥させる。こうして得られたサイクロン内の捕集物を、室内温度600℃に保たれた焼成炉内に投入し、約3時間焼成する。このようにして得られた複合球状粒子化合物は、白色を呈し、平均粒子径が4μmで、走査型電子顕微鏡観察による観察の結果、球状の粒子形状を有していた。
【0027】
(実施例3)
市販のモンモリロナイト系合成粘土鉱物(コープケミカル株式会社製ルーセンタイトSWN)50gを1000ccのイオン交換水中に分散させ、約1時間撹拌して均一に膨潤させて、赤色226号を120g投入し、約30分間撹拌する。次いで、こうして得られたスラリー溶液を撹拌しながら、そのスラリー溶液中に1Nの希硫酸溶液を除々に滴下し、スラリー溶液のpHを2.5に調整する。その後2時間撹拌して熟成させ、二流体スプレーノズルを備えたスプレードライヤに100cc/minで供給し、熱風温度200℃、スプレー圧力0.75MPaの条件の下一気に噴霧して、スプレードライヤに備え付けのサイクロンで捕集し乾燥させる。これ以降、前記実施例1と同様の工程を経て複合化球状粒子組成物を得た。このようにして得られた複合球状粒子化合物は、赤色を呈し、平均粒子径が30μmで、走査型電子顕微鏡観察による観察の結果、球状の粒子形状を有していた。
【0028】
(実施例4)
市販のモンモリロナイト系合成粘土鉱物(コープケミカル株式会社製ルーセンタイトSWN)70gを1500ccのイオン交換水中に分散させ、約一時間撹拌させて均一に膨潤させて、酸化クロム170gを投入し、約30分間撹拌してスラリー溶液を得る。次いで、このスラリー溶液を、二流体スプレーノズルを備えてスプレードライヤに100cc/minで供給し、熱風温度200℃、スプレー圧力0.75MPaの条件下の下一気に噴霧し、スプレードライヤに備え付けのサイクロンで捕集し乾燥させる。それ以降、前記実施例2と同様の工程を経て複合化球状粒子組成物を得た。このようにして得られた複合球状粒子化合物は、緑色を呈し、平均粒子径が40μmで、走査型電子顕微鏡観察による観察の結果、球状の粒子形状を有していた。
【0029】
(比較例1)
1Nの希硫酸水溶液を添加しない他は、実施例1と同様にして球状粒子組成物を得た。
【0030】
(比較例2)
600℃での焼成工程を省略した他は、実施例2と同様にして球状粒子組成物を得た。
【0031】
(比較例3)
1Nの希硫酸水溶液を添加しない他は、実施例3と同様にして球状粒子組成物を得た。
【0032】
(比較例4)
600℃での焼成工程を省略した他は、実施例4と同様にして球状粒子組成物を得た。
【0033】
次に、前記実施例1〜4で得られた複合化球状粒子組成物と、比較例1〜4にて得られた球状粒子組成物とをイオン交換水中に投入したが、実施例1〜4の複合化球状粒子組成物は水中に均一に分散され、膨潤せずに球状粒子形状を保ち、かつ顔料の脱落がないことがわかった。これに対し、比較例1〜4の球状粒子組成物は、イオン交換水中に分散すると膨潤してしまい、その球状粒子形状が消滅した
【0034】
以上のように、実施例1〜4にて得られた複合性球状粒子組成物は、分散性が良く、球状粒子形状を保持することができ、複合化された各々の顔料の色を呈することがわかった。
【0035】
また、これら調整された20μm以下の複合性球状粒子組成物を化粧料に配合することで、その化粧料に、優れた発色性、するするとしたすべりの良い感触を付与できることが明らかとなった。また、20〜500μmの複合性球状粒子組成物をプラスチック材料に混練したところ、質感のある発色性と鮮やかな水玉模様が発現した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モンモリロナイト系合成粘土鉱物と無機顔料もしくは有機顔料とを複合化した球状粒子よりなることを特徴とする複合化球状粒子組成物。
【請求項2】
前記球状粒子の粒子径は0.01〜500μmである請求項1に記載の複合化球状粒子組成物。
【請求項3】
モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散膨潤させておき、その中に無機顔料もしくは有機顔料を均一に分散させた後、酸を加えて酸性のスラリー溶液とし、このスラリー溶液をスプレードライヤにて噴霧乾燥させることを特徴とする複合化球状粒子組成物の製造方法。
【請求項4】
モンモリロナイト系合成粘土鉱物を水に分散膨潤させておき、その中に無機顔料もしくは有機顔料を均一に分散させてスラリー溶液とし、このスラリー溶液をスプレードライヤにて噴霧乾燥させ、500℃以上の温度で焼成することを特徴とする複合化球状粒子組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−16338(P2006−16338A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195828(P2004−195828)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】