説明

複合合成木材

【目的】表面平滑にして吸水性が低く密実で物理的強度があり、しかも腐朽、虫害に安全な不燃性合成樹脂複合材と木材を一体とした複合合成木材を提供することである。
【構成】圧縮強度600kgf/cm以上で嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1500℃以上のセラミック微細中空粒子、シリカ粉末及びガラス粉末あるいは/又はガラスマイクロバルーンにレゾール型フェノール樹脂と硬化剤を加えた不燃性合成樹脂複合材を木材表面の一部あるいは全周に積層又は被覆し複合合成木材とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は軽量で且つ断熱性に優れた不燃性合成樹脂複合材を木材に積層又は被覆した複合合成木材で、エクステリア製品、ベランダ、サンルーム、窓枠、ドアや建造物の壁材、屋根材、床材等に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
木材は古くから建築材料として各種の部位に使用されてきた。加工が容易で軽量である割りには強度も比較的あり、天然の木の有する独特な肌合いは我国でも特に重用されてきた。資源的にも枯渇することのない有望な材料であるが、可燃性であること、腐ること、狂うことという欠点も有しているのである。
【0003】
木材は多くの長所を有するものである反面上記の欠点を有するものであるため、使用する建築の部位や用途に応じて材料の選択をしなければならないのである。可燃性であることは木材の大きな欠点であるため不燃材の使用が条件とされる部位には使用できないのである。木材の腐朽、虫害に対してはあらかじめ十分防腐処理をすることによってある程度防止できるが充分ではない。木材は乾燥すると収縮して狂いを生ずるが、これは充分乾燥された木材を使用することによってある程度は解決される。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は木材の長所を生かしつつ上記の如き木材の欠点である、可燃性であることと腐朽、虫害に対して弱いことを容易に解決することのできる複合合成木材を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は木材の表面の一部あるいは全周に不燃性合成樹脂複合材を積層又は被覆することによって解決される。すなわち本考案になる不燃性合成樹脂複合材は、圧縮強度600kgf/cm以上で嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1500℃以上のセラミック微細中空粒子、シリカ粉末とガラス粉末あるいは/又はガラスマイクロバルーンを配合し、これにレゾール型フェノール樹脂と硬化剤及び水を加えて充分混合混練し成形硬化させたものである。
【0006】
【作用】
本考案になる複合合成木材は、木材の欠点である可燃性であることと腐朽、虫害に対して十分な効果が期待できるもので、木材に不燃性合成樹脂複合材を積層または被覆するものである。この場合不燃性合成樹脂複合材組成物を予め板状あるいは種々の形状に成形したものを木材に貼着して積層又は被覆する方法と不燃性合成樹脂複合材組成物を木材に積層又は被覆させた後一体成形硬化させる方法がある。
【0007】
不燃性合成樹脂複合材組成物は、レゾール型フェノール樹脂をバインダーとして使用するものであるが、フェノール樹脂の量が多いと不燃性にはならなくなる。このためセラミック微細中空粒子100重量部に対して、シリカ粉末10〜100重量部、ガラス粉末あるいは/又はガラスマイクロバルーンを10〜100重量部の範囲で配合した組成物に対して、レゾール型フェノール樹脂を固形換算で6%重量部以下になるようにしこれに硬化剤と水を加え成形する。
【0008】
不燃性合成樹脂複合材は、バインダーであるレゾール型フェノール樹脂の量が6%以下であるため、これを木材に積層又は被覆することによって可燃性の木材を保護することができ、さらに腐朽、虫害に弱い木材に対して十分な効果をあげることができた。これらは使用部位によって木材を積層又は被覆する箇所が異なってくる。例えば、ベランダの床は特に腐朽し易いものである。しかし木材としての独特の肌合いを表出することも必要であるため、床材の表面は木材にし、床材として腐朽し易い裏面にのみ不燃性合成樹脂複合材組成物を板材等に成形したものを積層するか、又は不燃性合成樹脂複合材組成物を木材に積層した後一体成形硬化させる。
【0009】
本考案の不燃性合成樹脂複合材組成物に使用されるレゾール型フェノール樹脂はフェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類及びその変性物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒト、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルカリ性触媒で反応させて製造するレゾール型のものである。
【0010】
本考案に使用したるセラミック微細中空粒子は、従来の微細中空発泡体に比較して特に圧縮強度が高いものであり不燃性合成樹脂複合材製造過程で生ずる高い応力、剪断力に対して耐え得ることができるものである。さらに加圧成形することによって軽量であるにもかかわらず緻密な不燃性合成樹脂複合材とすることができるのである。
【0011】
セラミック微細中空粒子あるいは微細中空発泡体の圧縮強度とは耐水圧強度と同意語であり、圧縮強度の測定は、微細中空発泡体を水中で加圧し水に加えられた圧力が微細中空発泡体に伝わり微細中空発泡体が破壊する圧力を圧縮強度とするのである。
【0012】
優れた性能を示すことのできる不燃性合成樹脂複合材は、攪拌・混練工程が充分でなければならず、均一な製品で品質の良い不燃性合成樹脂複合材には特に重要である。本考案におけるが如き組成物に対して充分な攪拌・混練を行なう場合セラミック微細中空粒子に加わる応力及び剪断力は、約400kgf/cm前後になるため、従来の微細中空発泡体には、このような高圧に耐え得るものが無かったので、かかる不燃性合成樹脂複合材として使用し充分な性能が得られるものは皆無であった。即ち大部分が破壊してしまうからである。
【0013】
次にセラミック微細中空粒子を不燃性合成樹脂複合材に使用する場合重要なことは熱伝導率である。微細中空発泡体はその粒径によるが一般に0.1(kcal/mhr℃)前後であり、充填した微細中空発泡体の半分が破壊されたものである場合熱伝導率は大体0.2(kcal/mhr℃)に低下する。破壊されない完全な微細中空発泡体が使用された場合にのみ優れた効果が得られるのである。本考案に使用するセラミック微細中空粒子は従来の微細中空発泡体であるシラスバルーン、ガラスマイクロバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーンなどに比較して格段に圧縮強度が高いものであり、不燃性合成樹脂複合材の微細中空粒子は100%完全な球状で残存するため耐熱性、不燃性となるのである。従来の微細中空発泡体の圧縮強度は80〜300kgf/cmである。
【0014】
本考案に使用するセラミック微細中空粒子の融点は1500℃以上である。セラミック微細中空粒子はその材質に起因するのは当然であるが一般的に融点の高いもの程圧縮強度も高くなる。圧縮強度を600kgf/cm以上とするならばその融点は1500℃以上になる。
【0015】
以上により本考案において使用するセラミック微細中空粒子はシリカ50〜60%、アルミナ40〜45%、その他1.5〜2.5%からなるセラミック組成物を発泡生成せしめたものを使用し、その物性は圧縮強度700kgf/cm、融点1600℃、嵩比重0.3〜0.5g/cm、熱伝導率0.1(kcal/mhr℃)で完全な中空粒子のみで構成されている。セラミック微細中空粒子の粒径は、5〜350μmの範囲のものを使用し、細目5〜75μm、中目75〜150μm、荒目150〜350μmとして粒度調整により混合使用する。
嵩比重は粒度の細かいものは重く、荒いものは軽くなる。このため嵩比重の範囲は0.3〜0.5g/cmとなる。
【0016】
本考案に使用するシリカ粉末は、酸化硅素を80%以上含有する非晶質シリカ化合物で、例えばシリカヒューム、硅石粉、硅砂、硅酸カルシウム、メタ硅酸カルシウム、硅そう土等である。その粒径は5〜100μmの範囲が好適で、不燃性合成樹脂複合材の耐火性を向上させる充填材として効果を発揮する。
【0017】
不燃性合成樹脂複合材にガラス粉末を配合するのであるが、ガラス粉末の他硼酸、硼砂や又ガラスマイクロバルーンも使用することができ、その粒径は74μm以上が好適である。これらは溶融点が比較的低温であるため不燃性合成樹脂複合材の崩壊を防止する効果がある。ここで使用するガラスマイクロバルーンは大部分が成形過程で破壊されていても使用目的が断熱・耐火を目的とするセラミック微細中空粒子とは異なるので使用できる。即ちガラスマイクロバルーンはガラス粉末として使用するため成形過程で破壊されていた方がむしろ良いのである。
【0018】
【実施例】
以下本考案の実施例について詳述する。
【0019】
実施例1 圧縮強度700kgf/cm、嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1600℃、熱伝導率0.1(kcal/mhr℃)で完全中空粒子のみで構成されているセラミック微細中空粒子100重量部、シリカ粉末としてシリカヒュームを200重量部、ガラス粉末20重量部、ガラスマイクロバルーン5重量部にリン酸系の硬化剤を配合し充分混合した。これに固形換算で全体の6重量%になるようレゾール型フェノール樹脂を加えさらに充分攪拌を行ない、図1に示す木材の上部に10mm厚になるよう積層し50kgf/cmの圧力で加圧成形後60℃で30分養生して硬化させ木製ベランダの床材に使用した。
【0020】
実施例2 実施例1と同じ配合の不燃性合成樹脂複合材組成物を型枠に打設し80kgf/cmの圧力で加圧成形後60℃で45分養生して、この成形体を図2に示す木材に被覆し、木製ベランダの手摺に使用した。
【0021】
実施例で作製した不燃性合成樹脂複合材の物性試験結果を表1に示す。尚、試験体の厚みは15mmである。
【0022】
【表1】


【0023】
加熱試験は試験体220×220×15(mm)の表面を850℃で10分間加熱した時の裏面温度を示したものである。
【0024】
【考案の効果】
以上述べた如く本考案にかかる不燃性合成樹脂複合材は、フェノール樹脂の充填材にセラミック微細中空粒子、シリカ粉末及びガラス粉末あるいは/又はガラスマイクロバルーンを使用することによって、従来のフェノール樹脂発泡体では得られなかった表面の平滑性を得ることができた。また従来のフェノール樹脂発泡体はフェノール樹脂自身の発泡のみであるため連続気泡となり多孔質で吸水性が高く、物理的強度も充分では無かった。
【0025】
セラミック微細中空粒子の面と面がフェノール樹脂によって点接合しさらにセラミック微細中空粒子間の空隙にシリカ粉末とガラス粉末あるいは/又はガラスマイクロバルーンが充填することによりフェノール樹脂自身の発泡のみによるものとは全く異なった構成になる表面平滑で吸水性の低い、密実にして物理的強度が高くしかも断熱性にも優れ腐朽、虫害の心配のない不燃性合成樹脂複合材を木材に積層又は被覆した複合合成木材を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の複合合成木材
【図2】実施例2の複合合成木材
【符号の説明】
1.木材
2.不燃性合成樹脂複合材

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項 1】 圧縮強度600kgf/cm以上で嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1500℃以上のセラミック微細中空粒子、シリカ粉末、ガラス粉末あるいは/又はガラスマイクロパルーンを配合し、これにレゾール型フェノール樹脂と硬化剤及び水を加えた不燃性合成樹脂複合材を木材に積層又は被覆することを特徴とする複合合成木材。

【図1】
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【図2】
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