説明

複合地盤の地盤改良工法

【課題】汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とがそれぞれ存在している複合地盤を地盤改良する際、汚染された液状化地盤層に含まれる汚染物質をこの液状化地盤層に封じ込めておくことで、汚染物質が地表に漏れ出すのを無くすようにした複合地盤の地盤改良工法を提供する。
【解決手段】汚染された液状化地盤層Bでは砂系の透水性材料10を地盤中に排出し、拡径して締め固まった改良砂杭11を造成すると共に、この改良砂杭11を造成した液状化地盤層Bの上方においてセメント系の固結材料20を地盤中に排出し、所定の高さだけ固結杭21を造成して、この固結杭21にて液状化地盤層Bに造成した改良砂杭11の上側を塞ぐようにした複合地盤の地盤改良工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とがそれぞれ存在している複合地盤の地盤改良工法に関し、特に、汚染された液状化地盤層に含まれる汚染物質が容易に地表に漏れ出さないようにした複合地盤の地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地表の下に汚染されていない非液状化地盤層が、その下に汚染された液状化地盤層がそれぞれ存在し、要するに、汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とがそれぞれ存在している複合地盤を地盤改良する際、一般的に知られている締固め工法を用いて行われていた。この締固め工法としては、たとえば、上部に取り付けた回転装置と昇降装置によってケーシングパイプを地盤に貫入し、ケーシングパイプ内に砂系の透水性材料を投入して、ケーシングパイプの先端から砂系の透水性材料を排出しながらケーシングパイプを引抜き、さらに打ち戻すことによって、地盤中に砂系の透水性材料を拡径しながら締め固めるようにして、これを上方に向かって繰り返し行うことで、ここに拡径して締め固まった改良砂杭を造成して地盤を締固めるようになるSAVEコンポーザー工法があり、また、回転装置を振動装置に替えたサンドコンパクションパイル工法もある。
【0003】
このような締固め工法による地盤改良では、地盤に透水性材料にて造成する改良砂杭が汚染された液状化地盤層から汚染されていない非液状化地盤層を介して地表まで達しているため、汚染された液状化地盤層に含まれる汚染物質がこの改良砂杭を通って地表に漏れ出すおそれがあった。
【0004】
そこで、従来、地盤強化併用汚染地盤の浄化方法が知られていた。この地盤強化併用汚染地盤の浄化方法としては、特許第3714855号公報に開示されているように、地盤改良のための締固め工法による改良砂杭を所定の深度まで多数造成し、そして、地下水を汲み上げるための揚水井を設けると共に、圧縮空気を注入するための空気注入管を汚染された液状化地盤層の下側まで達するように設ける。次に、揚水井により地下水を汲み上げて地下水位を汚染された液状化地盤層より下側まで低下させてから、空気注入管より圧縮空気を注入して、この注入された圧縮空気が汚染された液状化地盤層を通ることにより、液状化地盤層に含まれる汚染物質を圧縮空気とともに改良砂杭を通して地上に排出し、地上にて汚染物質を回収するもので、このように液状化地盤層の地盤改良を行うと共に、汚染物質の回収も行うようにしたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3714855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の地盤強化併用汚染地盤の浄化方法を行う場合、締固め工法による改良砂杭の造成以外にも、揚水井による地下水の汲み上げ及び空気注入管による圧縮空気の注入といった作業が必要になり、これらの作業に時間がかかって工期が長くなってしまうと共に、工費も高くなってしまうといったことがあった。
【0007】
一方で、汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とが存在している複合地盤において、液状化地盤層に含まれる汚染物質の地表への影響が極めて低い場合や汚染物質が自然に減少して無くなる場合などにあっては、液状化地盤層に含まれる汚染物質を前記のような浄化方法で除去する代わりに、汚染物質を液状化地盤層に封じ込めておくという処理方法もあったが、従来の締固め工法による地盤改良では、前述したように汚染物質が改良砂杭を通って地表に漏れ出すといったことが起こって汚染物質を液状化地盤層に封じ込めるのが困難であるといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とがそれぞれ存在している複合地盤を地盤改良する際、汚染された液状化地盤層に含まれる汚染物質をこの液状化地盤層に封じ込めておくことで、汚染物質が地表に漏れ出すのを無くすようにした複合地盤の地盤改良工法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明は、汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とが存在している複合地盤を地盤改良する際、汚染された液状化地盤層では砂系の透水性材料を地盤中に排出し、拡径して締め固まった改良砂杭を造成すると共に、この改良砂杭を造成した液状化地盤層の上方においてセメント系の固結材料を地盤中に排出し、所定の高さだけ固結杭を造成して、この固結杭にて液状化地盤層に造成した改良砂杭の上側を塞ぐようにした複合地盤の地盤改良工法である。
【0010】
第二の発明は、第一の発明において、汚染された液状化地盤層における改良砂杭を造成するための砂系の透水性材料の地盤中への排出と、改良砂杭を造成した液状化地盤層の上方におけるセメント系の固結材料の地盤中への排出とを、同一の施工機械にて行うようにした複合地盤の地盤改良工法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、汚染された液状化地盤層に造成した改良砂杭の上側を、セメント系の固結材料にて造成した固結杭によって塞ぐことにより、汚染された液状化地盤層に含まれる汚染物質をこの液状化地盤層に封じ込めておくことができ、汚染物質が地表に漏れ出すのを無くすことができる。
【0012】
しかも、従来のような地盤強化併用汚染地盤の浄化方法を行うことなく、汚染された液状化地盤層に拡径して締め固まった改良砂杭を造成することにより、液状化地盤層を安定した地盤へと改良することができ、同一の施工機械にて行うようにしたので、地盤改良工事における工費を安価にすると共に、その工期の短縮も図る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の複合地盤の地盤改良工法の説明図である。
【図2】本発明の複合地盤の地盤改良工法の工程図である。
【図3】本発明の複合地盤の地盤改良工法の工程図である。
【図4】本発明の複合地盤の地盤改良工法の工程図である。
【図5】本発明の複合地盤の地盤改良工法の別の例の工程図である。
【図6】本発明の複合地盤の地盤改良工法の別の例の工程図である。
【図7】本発明の複合地盤の地盤改良工法の別の例の説明図である。
【図8】本発明の複合地盤の地盤改良工法の別の例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による複合地盤の地盤改良工法の一実施形態について説明する。なお、この場合の複合地盤としては、図1に示すような、地表の下に汚染されていない非液状化地盤層Aが存在し、その下に汚染された液状化地盤層Bが存在するようになる複合地盤である。
【0015】
この複合地盤の地盤改良工法に用いる施工機械1としては、地盤に貫入するケーシングパイプ2を図示していない施工機本体により吊り下げるように配置し、このケーシングパイプ2の上部にケーシングパイプ2を回転させる回転装置3、ケーシングパイプ2を昇降させる昇降装置4、そしてケーシングパイプ2内に材料を投入するホッパー5を、それぞれ取り付けたもので、SAVEコンポーザー工法用の機械である。なお、この施工機械1にあっては、回転装置3や昇降装置4の代わりに振動機を取り付けたサンドコンパクションパイル工法用の機械でも良いし、また他の工法用の機械でも良い。
【0016】
次に、本発明による複合地盤の地盤改良工法について述べると、前記施工機械1を用いて、砂系の透水性材料10をホッパー5よりケーシングパイプ2内に投入し、投入後、図2(a)に示すように、ケーシングパイプ2の上部に取り付けた回転装置3及び昇降装置4によりケーシングパイプ2を汚染された液状化地盤層Bの下端まで貫入する。貫入後、図2(b)に示すように、ケーシングパイプ2の先端から砂系の透水性材料10を排出しながらケーシングパイプ2を引抜き、図2(c)に示すように、引抜いてから再びケーシングパイプ2を打ち戻すことにより、液状化地盤層Bに砂系の透水性材料10が拡径して締め固まった改良砂杭11を造成する。図3(d),(e)に示すように、これを上方に向かって繰り返し行うことで、図3(f)に示すように、拡径して締め固まった改良砂杭11を汚染された液状化地盤層Bの下端から上端まで造成する。このように汚染された液状化地盤層Bに拡径して締め固まった改良砂杭11を造成することにより、拡径して締め固まった改良砂杭11とともにその周囲の地盤を締め固めることができ、これにより、液状化地盤層Bを安定した地盤へと改良する。なお、砂系の透水性材料10としては、基本的には砂材であるが、砂材に添加材等を混ぜ合わせたものでも良い。
【0017】
そして、汚染された液状化地盤層Bに改良砂杭11を造成した後、同一の施工機械1を用いて、セメント系の固結材料20をホッパー5よりケーシングパイプ2内に投入し、ケーシングパイプ2の先端からセメント系の固結材料20を排出しながらケーシングパイプ2を引抜くことにより、図4(g)に示すように、汚染されていない非液状化地盤層Aに固結杭21を造成する。この固結杭21については所定の高さ、たとえば2〜3mだけ造成する。このように改良砂杭11を造成した液状化地盤層Bの上方の非液状化地盤層Aに所定の高さだけ固結杭21を造成することで、このセメント系の固結材料20にて造成した固結杭21によって液状化地盤層Bに造成した改良砂杭11の上側を塞ぐ。なお、セメント系の固結材料20としては、砂利や砕石等にセメントミルクを混ぜ合わせたものであるが、これに類似する材料であれば他のものでも良い。
【0018】
また、汚染されていない非液状化地盤層Aに固結杭21を造成した後、この非液状化地盤層Aの上端である地表まで、図4(h)に示すように、ケーシングパイプ2の先端より砂系の透水性材料10を排出して、内部に砂系の透水性材料10を充填するようにしても良いし、周囲の土砂等を充填するようにしても良い。
【0019】
このように液状化地盤層Bに造成した改良砂杭11の上側を、セメント系の固結材料20にて造成した固結杭21によって塞ぐようにして、汚染された液状化地盤層Bに含まれる汚染物質をこの液状化地盤層Bに封じ込めておくことができ、汚染物質が地表に漏れ出すのを無くすことができる。
【0020】
また、汚染された液状化地盤層Bや汚染されていない非液状化地盤層Aの土質に応じて、非液状化地盤層Aに造成する固結杭21を、拡径したものにしても良い。これは、図5(a)に示すように、ケーシングパイプ2の下端からセメント系の固結材料20を排出しながらケーシングパイプ2を引抜き、図5(b)に示すように、引抜いてから再びケーシングパイプ2を打ち戻し、これを繰り返すことにより、非液状化地盤層Aにセメント系の固結材料20が拡径して、拡径した固結杭21を造成する。このとき、拡径した固結杭21は、液状化地盤層Bに造成した改良砂杭11と同じ杭径又はそれよりも拡大した杭径にしても良い。これにより、汚染された液状化地盤層Bに含まれる汚染物質を固結杭21にて確実に封じ込めるようにする。
【0021】
さらに、汚染された液状化地盤層Bと汚染されていない非液状化地盤層Aの境界が明確になっていない場所があるが、このような場所では、汚染された液状化地盤層Bに造成した改良砂杭11の上側を塞ぐようになる固結杭21を、改良砂杭11と同じ杭径又はそれよりも拡大した杭径にしつつ、図6(a),(b)に示すように、この固結杭21を液状化地盤層Bに余長させるように造成する。これにより、境界が明確でない場所においても、汚染された液状化地盤層Bに含まれる汚染物質を固結杭21にて確実に封じ込めることができる。
【0022】
また、本発明による複合地盤の地盤改良工法の別の実施形態について説明する。これは、汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とが複数に重なり合った複合地盤の場合であって、具体的には、図7に示すように、地表の下に汚染されていない非液状化地盤層Aが存在し、その下に汚染された液状化地盤層Bが存在し、さらにその下に、汚染されていない非液状化地盤層Cと汚染された液状化地盤層Dがそれぞれ存在する場合である。
【0023】
砂系の透水性材料10をケーシングパイプ2内に投入した後、図8(a)に示すように、ケーシングパイプ2の上部に取り付けた回転装置3及び昇降装置4によりケーシングパイプ2を一番下の汚染された液状化地盤層Dの下端まで貫入する。貫入後、前述と同様、ケーシングパイプ2の先端から砂系の透水性材料10を排出しながらケーシングパイプ2を引抜き、打ち戻すことにより、液状化地盤層Dに拡径して締め固まった改良砂杭11を造成し、これを繰り返し行って、拡径して締め固まった改良砂杭11を一番下の汚染された液状化地盤層Dの下端から上端まで造成する。
【0024】
そして、一番下の汚染された液状化地盤層Dに改良砂杭11を造成した後、前述と同様、セメント系の固結材料20をケーシングパイプ2内に投入し、ケーシングパイプ2の先端からセメント系の固結材料20を排出しながらケーシングパイプ2を引抜くことにより、図8(b)に示すように、汚染されていない非液状化地盤層Cに固結杭21を所定の高さだけ造成して改良砂杭11の上側を塞ぐ。その後、この非液状化地盤層Cの上端まで、ケーシングパイプ2の先端から砂系の透水性材料10を排出して充填する。
【0025】
次に、上側の汚染された液状化地盤層Bにおいて、その下端から、前述と同様、ケーシングパイプ2の先端から砂系の透水性材料10を排出しながらケーシングパイプ2を引抜き、打ち戻すことにより、液状化地盤層Bに拡径して締め固まった改良砂杭11を造成し、これを繰り返し行って、拡径して締め固まった改良砂杭11を上側の汚染された液状化地盤層Bの下端から上端まで造成する。
【0026】
そして、上側の汚染された液状化地盤層Bに改良砂杭11を造成した後、前述と同様、セメント系の固結材料20をケーシングパイプ2内に投入し、ケーシングパイプ2の先端からセメント系の固結材料20を排出しながらケーシングパイプ2を引抜くことにより、上側の汚染されていない非液状化地盤層Aに固結杭21を所定の高さだけ造成して改良砂杭11の上側を塞ぐ。その後、図8(c)に示すように、この非液状化地盤層Aの上端である地表まで、ケーシングパイプ2の先端から砂系の透水性材料10を排出して充填する。
【0027】
このようにして、汚染された液状化地盤層B,Dと汚染されていない非液状化地盤層A,Cとが複数に重なり合った複合地盤の場合でも、それぞれの汚染された液状化地盤層B,Dに含まれる汚染物質をそれぞれの液状化地盤層B,Dに封じ込めておくことができる。
【0028】
なお、汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とがさらに複数に重なり合った複合地盤の場合も、前述と同様の工程を繰り返し行うことによって、汚染物質をそれぞれの液状化地盤層に封じ込めることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…施工機械、2…ケーシングパイプ、3…回転装置、4…昇降装置、5…ホッパー、10…砂系の透水性材料、11…改良砂杭、20…セメント系の固結材料、21…固結杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された液状化地盤層と汚染されていない非液状化地盤層とが存在している複合地盤を地盤改良する際、汚染された液状化地盤層では砂系の透水性材料を地盤中に排出し、拡径して締め固まった改良砂杭を造成すると共に、この改良砂杭を造成した液状化地盤層の上方においてセメント系の固結材料を地盤中に排出し、所定の高さだけ固結杭を造成して、この固結杭にて液状化地盤層に造成した改良砂杭の上側を塞ぐようにしたことを特徴とする複合地盤の地盤改良工法。
【請求項2】
汚染された液状化地盤層における改良砂杭を造成するための砂系の透水性材料の地盤中への排出と、改良砂杭を造成した液状化地盤層の上方におけるセメント系の固結材料の地盤中への排出とを、同一の施工機械にて行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の複合地盤の地盤改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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