説明

複合微生物の培養生成物を有効成分とする血糖降下剤および血糖降下機能食品

【課題】即効性があり血糖降下作用が大なる天然物由来の血糖降下剤又は食品の提供。
【解決手段】複数種の微生物より成る微生物群を1つの培養槽で同時に培養する複合培養を複数種の微生物群について行う1次複合培養工程、得られた複数種の1次複合培養物中の微生物菌体をそれぞれの培養液と分離して複数種の複合微生物菌体を得る集菌工程、集菌された複数種の複合微生物菌体を1つの培養槽で同時に培養する2次複合培養工程、及び、2次複合培養で得られた複合微生物培養物に加熱処理等を加える後処理工程より成る製造方法で得られる複合微生物の培養生成物を有効成分とする血糖降下剤および血糖降下機能食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、複合微生物の培養生成物を有効成分とする血糖降下剤の製造、及び複合微生物の培養生成物を含有する食品を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの血糖降下剤は化学製剤を用いるものが主流であり、天然物を用いる事例としては、下記文献に記載される植物の抽出物や微生物培養物を用いる血糖降下剤の事例が散見されるのみである。
【文献1】
特開平6−56680
【文献2】
特開平9−40566
【文献3】
特開平10−7577
【文献4】
特開2005−538636
【文献5】
特開2005−538637
【文献6】
特開2005−538630
【文献7】
特開2005−224205
【文献8】
特開2006−193489
【文献9】
特開2006−273797
【文献10】
特開2007−99636
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然るに、これらの天然物を用いる血糖降下剤は、血糖降下作用が現われるまでの期間が長くしかも血糖降下作用が小さいという問題があり、即効性があり血糖降下作用が大なる天然物由来の血糖降下剤の提供が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記の問題を解決し即効性があり血糖降下作用が大なる天然物由来の血糖降下剤を見出すべく、長年にわたり鋭意研究を行った結果、複数種の微生物より成る微生物群を1つの培養槽で同時に培養する複合培養を、複数種の微生物群について行う1次複合培養を行い、該1次複合培養で得られた複数種の該1次複合培養物中の微生物菌体を、ろ過又は遠心分離により、それぞれの培養液と分離して複数種の微生物菌体を得、該複数種の微生物菌体を1つの培養槽で同時に培養する2次複合培養を行い、該2次複合培養で得られた2次複合培養物を加熱処理し、該加熱処理した2次複合培養物を、ろ過又は遠心分離により、2次複合微生物菌体と2次複合培養液に分離し、該2次複合微生物菌体には微生物菌体内成分の抽出手段を講じて2次複合微生物菌体内成分の抽出液を得、該2次複合微生物菌体内成分の抽出液と、上記2次複合培養液とを混合して得られる複合微生物の培養生成物のごく微量を適用するとき、通常食を摂取しつつわずか1週間で血糖値が平均的に80mg/dl程度低下すること、著しい場合では、かなりの大食家で血糖値300以上を常態としていたケースで、大食を続けながら血糖値が170程度まで低下したケースもあり、上記複合微生物の培養生成物の強力な血糖降下作用と即効性を確信するに至り、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、糖尿病患者に対しては即効性があり1週間あたり80mg/dl程度低下するという強力な血糖降下作用を示し、血糖値が一旦正常値に達して以後や健常者に対しては、血糖値が下がり過ぎることなく正常な血糖値が維持され、しかも副作用がまったくないという、糖尿病や糖尿病合併症、あるいは「メタボ」と称される生活習慣病の予防や治療にとって実に好適な従来なかった国民健康の増進手段が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0006】
本発明は、糖尿病の予防薬や治療薬を製造する製薬産業分野、糖尿病の予防や治療を行う医療分野、および健康食品や特定保健用食品を製造する機能性食品産業分野で利用される。その他、広く一般食品産業分野においても食品の差別化をはかるための手段としても利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記複合微生物の培養生成物は副腎皮質ステロイドの副作用改善剤として用いうることが示され、また上記複合微生物の培養生成物は免疫機能抑制作用を抑制する薬理作用だけでなく皮膚を修復し完治させる働きによって副腎皮質ステロイドの副作用を防止し改善しているものと推定された(文献11)。しかし、上記複合微生物の培養生成物を血糖降下剤として用いうることは確認されなかった。
【文献11】
特開平11−71289
本発明において用いられる微生物としては種々のものが挙げられ、かつその培養方法も多岐にわたるが、たとえば第1群:バチルス・ブルガリカス A (B.bulgaricus A);バチルス・アシドフィルス A (B.acidophilus);メチニコフ・ラクティスアシディ A (M.lactisacidj A)、第II群:バチルス・ブルガリカス B (B.bulgaricus B);バチルス・アシドフィルス B (B.acidophilus);メチニコフ・ラクティスアシディ B (M.lactisacidi)、第III群:コルンシェンバチルス A (Kornchenbacillus A);バチルス・アシドフィルス C (B.acidophilus C);メチニコフ・ラクティスアシディ C (M.lactisacidi C)、及び、第IV群:コルンシェンバチルス B (Kornchenbacillus B);バチルス・アシドフィルス D (B.acidophilus D);メチニコフ・ラクティスアシディ D (M.lactisacidi D)において、各群I〜IVごとに少なくとも一種の乳酸桿菌及び乳酸球菌を含み、かつ菌株が各群相互間で異なる構成の複数種の乳酸菌群に対し、それぞれ該乳酸菌群とは異なる微生物種を加え又は加えない微生物群の各群ごとに、所定条件で1次培養し、得られた各群の培養物を合わせてさらに2次培養することによって好ましい結果が得られる。この場合、1次培養の際の代謝生成物はこれをろ過等によって除去し菌体のみをさらに2次培養することが好ましい。該2次培養によって得られた微生物菌体に加熱処理その他の処理を施し、該2次培養中に菌体外に排出された代謝生成物を、たとえばメンブランフィルターで吸引ろ過して分離すると、ろ液として透明な酸性(乳酸含有、PH3〜4)の液体が得られる。このろ液と、メンブランフィルタ上の濾滓としての菌体を粉砕・抽出して得られる菌体細胞内成分抽出液を混合することによって、上記複合微生物の培養生成物が得られる。
上記複合微生物の培養生成物を血糖降下剤として適用するに当たっては、基剤溶液1ミリリットルに上記複合微生物の培養生成物を10マイクロリットル配合した水溶性治療剤を1日数回服用すればよいが、この配合・用法に限定されるものではない。
上記複合微生物の培養生成物を配合した食品としては、炊飯米、パン、ウドン、ラーメン、果実ジュース、アメ、チューインガム、ナットウなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの食品への培養生成物の配合割合は、概ね、それぞれの食品の1食分あたり培養生成物10マイクロリットルとすればよいが、この量に限定されるものではない。
また上記複合微生物の培養生成物は、日常の食品に滴下して食してもよい。この場合、培養生成物を精製水で10倍希釈したものを、たとえば味噌汁1杯に1滴(100〜200マイクロリットル)滴下して食すればよいが、この配合・用法に限定されるものではない。
さらに、上記複合微生物の培養生成物の生理活性は、血糖降下だけではなく、前記副腎皮質ステロイドの副作用改善の他にも、火傷・外傷・創傷・虫さされ・痔の治癒、水虫の治癒、アトピー性皮膚炎・湿疹・腫れ物・ニキビ・シミ・ソバカスの治癒・美肌効果、ワキガ・口臭・体臭の抑制、腰痛・リューマチ痛・関節痛・頭痛・歯痛・神経痛・胃癌痛などの鎮痛、アレルギー性鼻炎・喘息の改善・治癒、中耳炎・歯周病の改善・治癒、整腸作用、消化器系疾患の改善、抗癌剤の副作用抑制、抜け毛防止・発毛促進、高血圧・動脈硬化・高脂血症の改善、膠原病の改善など、多岐にわたることが確認されているので、培養生成物を含む薬剤や食品を適用することにより、血糖降下だけでなく総合的な健康改善・増進効果がもたらされるものと推定される。
【0008】
以下本発明を実施例によって説明するが、本発明はこの記載内容に限定されるものではない。
【実施例1】
第I群:バチルス・ブルガリカス A (B.bulgaricus A);バチルス・アシドフィルス A (B.acidophilus);メチニコフ・ラクティスアシディ A (M.lactisacidi A)、第II群:バチルス・ブルガリカス B (B.bulgaricus B);バチルス・アシドフィルス B (B.acidophilus);メチニコフ・ラクティスアシディ B (M.lactisacidi)、第III群:コルンシェンバチルス A (Kornchenbacillus A);バチルス・アシドフィルス C (B.acidophilus C);メチニコフ・ラクティスアシディ C (M.lactisacidi C)、及び、第IV群:コルンシェンバチルス B (Kornchenbacillus B);バチルス・アシドフィルス D (B.acidophilus D);メチニコフ・ラクティスアシディ D (M.lactisacidi D)の各群に分けられ、菌株が各群間で異なる乳酸菌群I〜IVに対してそれぞれ酵母を加えた微生物群を、それぞれ以下の組成:10g トリプティケースペプトン;5g 酵母エキス;6g リン酸1カリウム;2g クエン酸アンモニウム;20g ブドウ糖;1g ソルビタンモノオリエイト;25g 水和酢酸ナトリウム;0.575g 硫酸マグネシウム;0.120g 硫酸マンガン;0.034g 硫酸第一鉄;1リットル 精製水(pH5.5)からなる乳酸菌の培地を用いて37℃で120時間1次複合培養を行った。
これらI〜IV群の微生物から得られる培養物を混合してメンブランフィルターで濾過し、得られた菌体を種菌として37℃で120時間2次複合培養を行った。
これらそれぞれ酵母を加えた第I〜IV群の微生物群から得られる2次複合培養物は、約65℃で16時間加熱処理後、メンブランフィルターで濾過し、2次複合微生物菌体と2次複合培養液に分離し、2次複合微生物菌体は菌体磨砕機で磨砕し、磨砕物を水に懸濁した懸濁液をメンブランフィルターでろ過し、ろ液を菌体内部の細胞質等に由来する2次複合微生物菌体内成分の抽出液を得、これと上記2次複合培養液とを混合してpH3〜4の透明な濾液(複合微生物の培養生成物)を得た。
上記複合微生物の培養生成物を分析した結果の一例を表1に示す。
【実施例2】
【0009】
上記実施例1で製造した複合微生物の培養生成物を用いて、下記の処方により血糖降下剤のサンプルを調製し、臨床試験に供した。
血糖降下剤サンプルは、市販の服用カプセルに1ミリリットルの食酢を入れ、それに10マイクロリットルの培養生成物を添加してカプセルに蓋をかぶせ、冷凍保存した。
医師の協力を得て、平均血糖値200〜300を示していた糖尿病患者6名に対して上記の血糖降下剤サンプル1個を朝昼夕食後の1日3回服用する臨床試験を実施した。試験にあたり、それまで服用していた糖尿病治療薬の服用と食事指導はそのまま継続し、血糖降下剤サンプルの服用だけを追加することにしたが、血糖値が正常値まで降下し1週間以上正常値を維持した後は、糖尿病治療薬の服用と食事指導は打ち切り、通常の食生活下で血糖降下剤サンプルの服用だけを続けることとした。血糖値測定は医師が行い、午前中(当日朝食抜き)の空腹時に採血を行って血糖値測定に供した。以上の試験経過を図1に示す。
【実施例3】
【0010】
上記実施例1で製造した複合微生物の培養生成物を用いて、下記の処方により血糖降下機能食品のサンプルを調製し、臨床試験に供した。
血糖降下機能食品サンプルは、培養生成物を精製水で10倍希釈したもの5ミリリットルを入れた滴下容器を被験者に与え、その1滴を、市販の液体ヨーグルト180ミリリットルを飲用する前に滴下して飲用させた。
医師の協力を得て、平均血糖値200〜300を示していた糖尿病患者3名および健常者ボランティア3名に対して上記の血糖降下機能食品サンプルを朝昼夕食後の1日3回摂取する臨床試験を実施した。試験にあたり、糖尿病患者3名にはそれまで服用していた糖尿病治療薬の服用と食事指導はそのまま継続し、血糖降下剤サンプルの服用だけを追加することにしたが、血糖値が正常値まで降下し1週間以上正常値を維持した後は、糖尿病治療薬の服用と食事指導は打ち切り、通常の食生活下で血糖降下剤サンプルの服用だけを続けることとした。健常者3名は通常の食生活下で朝昼夕食後の1日3回血糖降下機能食品サンプルを摂取し、血糖値測定だけを医師が行い、午前中(当日朝食抜き)の空腹時に採血を行って血糖値測定に供した。以上の試験経過を図2に示す。
[表1]実施例1の分析結果の一例を示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例2の臨床試験経過を示す。
【図2】実施例3の臨床試験経過を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の微生物より成る微生物群を1つの培養槽で同時に培養する複合培養を、複数種の微生物群について行う1次複合培養を行い、該1次複合培養で得られた複数種の該1次複合培養物中の微生物菌体を、ろ過又は遠心分離により、それぞれの培養液と分離して複数種の微生物菌体を得、該複数種の微生物菌体を1つの培養槽で同時に培養する2次複合培養を行い、該2次複合培養で得られた2次複合培養物を加熱処理し、該加熱処理した2次複合培養物を、ろ過又は遠心分離により、2次複合微生物菌体と2次複合培養液に分離し、該2次複合微生物菌体には微生物菌体内成分の抽出手段を講じて2次複合微生物菌体内成分の抽出液を得、該2次複合微生物菌体内成分の抽出液と、上記2次複合培養液とを混合して複合微生物の培養生成物を得、該複合微生物の培養生成物を有効成分とし血液中の血糖濃度を下げる効果を有することを特徴とする薬剤。
【請求項2】
請求項1に記載の複合微生物の培養生成物を含有し血液中の血糖濃度を下げる効果を有することを特徴とする食品。
【請求項3】
請求項1に記載の複数種の微生物群が、第I群:バチルス・ブルガリカス A (B.bulgaricus A);バチルス・アシドフィルス A (B.acidophilus);メチニコフ・ラクティスアシディ A (M.lactisacidi A)、第II群:バチルス・ブルガリカス B (B.bulgaricus B);バチルス・アシドフィルス B (B.acidophilus);メチニコフ・ラクティスアシディ B (M.lactisacidi)、第III群:コルンシェンバチルス A (Kornchenbacillus A);バチルス・アシドフィルス C (B.acidophilus C);メチニコフ・ラクティスアシディ C (M.lactisacidi C)、及び、第IV群:コルンシェンバチルス B (Kornchenbacillus B);バチルス・アシドフィルス D (B.acidophilus D);メチニコフ・ラクティスアシディ D (M.lactisacidi D)において、各群I〜IVごとに少なくとも一種の乳酸桿菌及び乳酸球菌を含み、かつ菌株が各群相互間で異なる構成の複数種の乳酸菌群に対し、それぞれ該乳酸菌群とは異なる微生物種を加え又は加えない微生物群より成ることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤、又は、請求項2に記載の食品。
【請求項4】
請求項1に記載の加熱処理を、40〜70℃で6〜24時間の条件で行うことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤、請求項2に記載の食品、並びに、請求項3に記載の薬剤又は食品。
【請求項5】
請求項1に記載の微生物菌体内成分の抽出手段が、微生物菌体を凍結したものを微生物菌体の細胞壁を破砕しうる能力を有する磨砕機で磨砕し、該磨砕物を水に懸濁し、該懸濁液をメンブランフィルターでろ過したろ液を菌体内部の細胞質等に由来する抽出物として得ることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤、請求項2に記載の食品、請求項3に記載の薬剤又は食品、並びに、請求項4に記載の薬剤又は食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−114163(P2009−114163A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312842(P2007−312842)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(507396703)株式会社日本エネルギー研究所 (2)
【Fターム(参考)】