説明

複合材料用途のための高性能スリーブ付き干渉締結具

【課題】加工物を通って整列した穴にかみ合わされる締結具を開示する。
【解決手段】締結具は、滑らかな円筒状軸部からねじ部へ広がるように半径方向に直径が減少する移行部を有するピン部材を備える。締結具は、スリーブ部材および取り付け手段も具える。取り付け手段は、カラー、ナット、または他の可能な取り付け手段を備える。一実施例において、加工物は複数個の材料で形成でき、材料には、複合材料、金属、金属/複合材料構造、またはそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施例において、締結具は、複合材料の層間剥離または破壊の危険性なしに、複合材料構造中へ0.0127〜0.254mm(0.0005〜0.0100インチ)の干渉性能を有する。締結具干渉の結果、締結具と、構造との間の隙間は取り除かれ、構成部材間の良好な電気伝導性がもたらされる。その結果、電気火花発生の可能性は減り、航空宇宙用に使用される安全な締結具がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改善されたねじ部品、および複合材料の加工物(ワークピース)を固定する方法に関するものである。特定の実施形態において、本開示は、ピンと、そのピンの周りに配置され得る、干渉用途に用いられる予形成されたスリーブとを有する締結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ますます多くの黒鉛複合材料が、航空機の構造に取り入れられている。黒鉛複合材料の使用は、数ある利益の中でも特に、強度を増大し、寿命を伸ばし、重量を減らし、燃料消費量を減らし、積載量を増大させる。しかしながら、これらの最新材料が活用されるにつれ、典型的な金属構造と比較した場合に、固定技術において新しい挑戦が克服される必要がある。
【0003】
既存の航空宇宙産業の締結具は、黒鉛または混合黒鉛複合材料金属構造には、干渉状態では安全に取り付けることができなかった。これらの締結具の使用を危険なものとする、複合材料の層間剥離および潜在的な構造欠陥の懸念を避けるために、一般的に、すきまばめ締結具が活用されていた。その結果、締結具は隙間有り穴(クリアランスホール)の中に取り付けられ、動的接合性能の低減、構造中の隙間(ギャップ)、および他の構造的懸念を生じさせていた。
【0004】
結果として生じる、締結具の軸(シャンク)部分と穴との間の隙間は、構造用部品の均一な接触を阻止する。従って、落雷の電流/エネルギーの安全な消散、および電磁流が大きな懸案事項となる。現在のところ、航空機製造会社は、複雑で、高価で、たまに危険を伴う代替手段に頼って、構造物を適切に接地している。例えば、銅または他の低導電性片が、加工物の表面に組み込まれて、どのような流れに対しても優先的な低抵抗経路をもたらしている。さらに、二つの加工物の間で大電流を導くことができる、導電繊維担体フィルムを含むフィルム接着剤が用いられ得る。しかし、これらの手段は双方とも、電流の安全な消散をもたらすためには非常に高価であり、費用対効果の良い方法ではない。
【0005】
また、従来の締結具では、多くの航空機構造で要求されるようなかなりの量のシーリング材とともに取り付けることができない。もし、取り付け中に十分な量のシーリング材が用いられれば、締結具構体と加工物との間の摩擦係数が減少し、取り付け性能を妨害する。加えて、従来の締結具には接合部から過剰なシーリング材を流出させる能力が無い。
【0006】
さらに、従来の、干渉適用のために製造される嵌め合いスリーブを有するピンは、100%炭素複合材料にだけ取り付けることができる。加えて、これらの締結具は、短い長さおよび小さな径に適用を制限する。従来の締結具は、いずれの複合材料/金属構造にも、そして大部分の100%複合構造にも取り付けることができない。
【0007】
加えて、干渉適用のための従来の締結具は、せん断荷重範囲強度容量内で使用できるだけである。通常、これらの締結具に用いられるカラーは、市販されている純チタン製で、極めて低い温度上昇でクリープし易いものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、層間剥離および構造欠陥の可能性なしに干渉適用を可能にする締結具を提供する必要がある。
【0009】
また、種々の異なる用途に用い得る締結具を提供する必要もある。様々な複合材料/金属構造での締結具の活用が求められている。
【0010】
加えて、落雷および/または静電気に起因する電流の安全な消散をもたらす締結具を提供する必要がある。構造用部品の均一な接触を可能にする締結具は、電流に伴って生ずる問題に対して、必要な消散、および安全でより費用対効果の高い解決策をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一つの態様として、ピンを有する締結具が開示されている。このピン部材は、細長く滑らかな円筒状の軸(シャンク)部と、スリーブと適合するための拡大された頭部(ヘッド)とを有する。いくつかの実施態様においては、スリーブのフレア端部に嵌め合わせるための、皿穴または突き出たヘッドがある。このピン部材はまた、ねじ部および折れやすい部分を、細長く滑らかな円筒状の軸部と軸線方向に整列して有する。折れやすい部分は、ピン部材をスリーブに引き込むための相対軸力を加えるために握れるように構成された円周方向の引き手ねじ溝を備える引き手溝(プルグルーブ)部を有する。このピン部材は、ねじ部分と折れやすい部分との間の、折り首溝を有する。締結具が取り付けられると、折れやすい部分が折り首溝の位置で分離される。
【0012】
このピンは、滑らかな円筒状の軸部とねじ部との間に、取り付けに起因する高干渉状態のために要求される取り付け力を最小化するように、最適化され、設計された、移行部(transition portion)を有する。例示的一実施形態において、この移行部はテーパー状にでき、ピンの軸部に対し20度以下の角度を有し得る。他の実施形態において、この移行部は、滑らかな軸部とねじ部との間で0.254mm〜7.37mm(0.010〜0.290インチ)の距離の間に、0.102mm〜約0.127mm(0.004〜約0.005インチ)の間でピンの軸部の半径方向に直径を減少させる。
【0013】
別の実施形態において、この締結具は、複数の加工物を一体に固定するために、スリーブと、クランプ手段とをさらに備える。このクランプ手段は、カラーもしくはナット部材を備えてもよく、またはピンおよびスリーブで複数の加工物を一体に固定するのに適した他の手段を具えても良い。この締結具は、二つ以上の加工物に配置された互いに整列した複数の穴を通って取り付けられる。いくつかの実施例において、加工物を貫くそれらの穴の一つは、その外側の開口部に皿穴、または導入用放射状部を有する。
【0014】
滑らかな円筒状の軸部へ嵌装できるように構成されたスリーブは、管状部と、加工物の外面に嵌合するための拡大された端部とを有する。いくつかの実施形態においては、加工物中の皿穴と嵌合するためのフレア端部がある。このスリーブは、整列された穴の位置での、連結される加工物の最大合計厚さより長い全長を有する。このスリーブの管状部は、滑らかな円筒状軸部の直径より小さい内径と、加工物の整列された隙間有り穴にこのスリーブを嵌入し得る大きさの外径とを有する。
【0015】
一実施形態において、前記ピン部材は、前記スリーブの最大内径より大きい直径を有する滑らかな円筒状軸部を備える。この滑らかな円筒状軸部が、そのスリーブに入り、そしてそのスリーブを通って引かれたとき、スリーブは、半径方向に拡張されて加工物の穴の壁と締まりばめする。
【0016】
管状カラー部材は、ピン部材のねじ部に嵌装されるよう構成されるとともに、このカラーにスリーブとの隙間を設けることを可能とする座ぐりと、加工物の他方の外面と係合するために一端部に位置する環状のフランジ部とを有している。このカラー部材は、ピンのねじ部にすえ込みされるのに適した均一の外径を有する、拡大円筒状軸部を備える。
【0017】
他の実施形態においては、ナット部材は、ピン部材のねじ部に嵌合するよう構成されるとともに、このナット部材に前記スリーブとの隙間を設けることを可能とする座ぐりと、加工物の他方の外面と係合するために一端部に位置する環状のフランジ部とを有している。このナット部材は、この締結具を加工物に固定するためにピンのねじ部に螺合されるねじ部を有する。
【0018】
他の形態において、スリーブ部材は、ピンの滑らかな円筒状軸部がスリーブに入るときに摩擦を減らすように内周面に潤滑剤を備える。このスリーブの外周面および/または前記整列された穴の内周面は、粗い表面を有する。特定の実施形態において、スリーブの内面とピン部材の滑らかな円筒状軸部との間の摩擦係数は、スリーブの外面と穴の内面との間の摩擦係数より小さく、スリーブが締まりばめになるためにピン部材の滑らかな円筒状軸部の挿入時に半径方向に拡張されるのを可能にする。
【0019】
更に別の形態において、複合材料、金属、または複合材料/金属構造に取り付けられる能力を有する締結具が開示される。例えば、開示された締結具は、炭素複合材料、チタン、アルミニウム、またはそれらの混合物等に取り付けることができる。
【0020】
他の態様において、この締結具の干渉の結果、締結具と構造物との間の隙間は除かれ、構成部材間の良好な電気伝導率がもたらされる。その結果として、電気火花の発生の可能性が減り、航空宇宙用に使用される安全な締結具をもたらす。
【0021】
別の態様において、この締結具は、複合材料の層間剥離または損傷の危険性なく、複合材料および/または金属構造に0.0127〜0.254mm(0.0005〜0.0100インチ)干渉する能力を有する。
【0022】
追加の本開示の態様において、この締結具は、約1.57〜約3.56mm(約0.062〜約0.140インチ)の機能的なグリップ性能を有する。
【0023】
本開示の、他の目的、特徴、および利点は、添付の図面と合わせて理解され、後述の記載および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る締結具の典型的な一実施例の、拡大された皿頭を有するピン、およびスリーブを示す断面図である。
【図2】本発明に係る締結具の典型的な他の実施例の、拡大された突出頭(protruding head)を有するピン、およびスリーブを示す断面図である。
【図3】本発明に係る締結具の他の実施例の、長いねじ領域と、つば出しされていない領域と、拡大された皿頭とを有するピン、およびスリーブを示す断面図である。
【図4】本発明に係る締結具の他の実施例の、拡大された突出頭(protruding head)を有するピン、およびスリーブを示す断面図である。
【図5】加工物を一体に固定する締結具を取り付けるのための整列した穴を有する、複数個の加工物を示す断面図である。
【図6】加工物の一つの外側部が皿穴を有し、加工物を一体に固定する締結具を取り付けるための整列した穴を有する、複数個の加工物を示す断面図である。
【図7】ピンがスリーブを通って押され、または引かれる前の、スリーブが膨張しておらず、また所望の締まりばめまで引き伸ばされていない典型的な締結具を示す断面図である。
【図8】ピンが所定の位置にスリーブを通って押され、または引かれた後の典型的な締結具を、すえ込み前のピンに配置されたカラーとともに示す断面図である。
【図9】ピンの尾部を分離する前の、締結具を固定するためにピンのねじ部にすえ込みされたカラーを有する締結具を示す断面図である。
【図10】ピンの尾部を分離した後の、かみ合い、挿し込まれている部分の中の締結具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前述の、本開示の態様および利点は、添付の図面と合わせて後述の詳細な説明を参照することで、より容易に理解され、明らかになるであろう。
【0026】
複数個の加工物105、110を一体に固定するための、加工物の整列した穴125、130に配置されるように構成された締結具が開示されている。一実施例において、締結具10は、ピン部材15と、スリーブ部材20と、カラー200とを具える。他の実施例において、締結具は、カラーの代わりにナットを具え得る。一実施例において、加工物105、110は複数の材料で形成され、材料には複合材料、金属、もしくは複合材料/金属構造、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。特定の実施例において、加工物105、110は、チタン、アルミニウム、炭素複合材料、またはそれらの任意の組み合わせで構成し得る。
【0027】
図1および図2は、ピンおよびスリーブ構体12の一実施例を示す。ピン部材15は、拡大された皿頭37または突出頭(プロトルーディングヘッド)35を備え、一端部30で終わる細長い軸部40を有する。ピン軸部40は、十分に滑らかな円筒状部45と、ねじ部50と、折れやすい部分60とを有する。滑らかな円筒状軸部は、ヘッド35、37から延在し、そして、拡大スリーブ20により支持されるように構成されている。滑らかな円筒状軸部45には、ねじ部50が続いて存在する。ねじ部50は、その長さ全体にわたり略均一にねじが付けられている。テーパー状の移行部55は、ねじ部50と滑らかな円筒状軸部45とを滑らかに結合する。
【0028】
ねじ部50からピン部材15の折れやすい部分60が延在する。折れやすい部分60は、円筒状のランド70と、円周に引かれた溝75からなる引き溝部75とを有する。折り首溝65は、ねじ部50に隣接して位置し、締結具10の最も弱い部分を規定する。
【0029】
いくつかの実施例において、ねじ部50と、折り首溝65と、一直線のランド70と、引き溝部75とは、最大でも軸部の滑らかな円筒状部45の直径より小さい直径を有し、そして一直線のランド70は、ねじ部50および引き溝部75より小さい直径を有する。
【0030】
本実施例において、拡大スリーブ部材20は、ピン部材15の、皿頭37または突出頭35を支持するための拡大されたフランジ形状のヘッド85で終わる、略均一の管状部80を有する。スリーブ20は、ピン15のねじ部50および折れやすい部分60より大きく、滑らかな円筒状軸部45より小さい内径を有する。
【0031】
スリーブ部材20の内径は、ピン部材15の挿し込み時にピン部材15がスリーブ20に入る動きを容易にするために、その表面90に低摩擦コーティングを有する。特定の実施例において、スリーブ部材20は、ピン部材15の滑らかな円筒状軸部45と、スリーブ管状部80の内面90との間の抵抗を取り除くため、低摩擦コーティング剤でコーティングされる。スリーブの内面の低摩擦コーティング剤は、摩擦負荷を減らすことにより、ピン部材15がスリーブ部材20を滑らかに通り抜けることを容易にする。
【0032】
加えて、内面90のコーティングは、締結具上および挿し込まれたジョイント内に、最小限の、適度な、または大量のシーリング材を有して締結具が挿し込まれた場合でも、締結具を機能するように挿し込むことを可能にする。
【0033】
図3および図4は、締結具の他の実施例を示す。この実施例において、ピン部材15は、拡大ヘッド35、37と一体に形成されて一端部30で終わる、細長い軸部40を備える。この実施例においても、図2の実施例に示されるような突出頭37を有し得る。ピン軸部40は、十分に滑らかな円筒状部45と、ねじ部50とを備えるが、折れやすい部分を有さない。滑らかな円筒状軸部は、ヘッド35、37から延在して拡大スリーブ20により支持されるよう構成されている。十分に滑らかな円筒状軸部45には、ねじ部50が続いて存在する。ねじ部50は、その長さ全体にわたり略均一にねじが付けられている。テーパー移行部55は、ねじ部50と滑らかな円筒状軸部45とを滑らかに結合する。
【0034】
図5および図6は、整列した穴125、130を有する加工物105、110を示す。加工物105、110を固定するため、締結具構体10は整列した穴125、130を通って延在する。加工物115の外面は、スリーブの拡大されたヘッドを支持する。図6に示す実施例に描かれるように、外側加工物105の開口は、拡大スリーブ部材20の拡大フランジ85を支持できるように形成されており、皿穴部120の外面115または放射状部のリードで終わる。
【0035】
ピン部材15がスリーブ部材20に押し込まれ、または引き込まれる前のスリーブ管状部80の外径は、加工物105、110に配置された穴の直径よりも小さい。従って、図7に示すように、スリーブの外径と、穴の外径との間には空間がある。拡大前の状態のスリーブ管状部80の外径と、穴の直径とはスリーブ部材20の管状部が穴の内部に位置する際に滑らかな嵌合をもたらす。
【0036】
図8に示すように、取り付け中、ピン軸部がスリーブ部材20に挿し込まれるようにしてピン部材15がスリーブを通って押し込まれ、または引き込まれるにつれ、スリーブは、加工物105、110を通る穴125、130の壁との所望の締まりばめまで半径方向に拡大する。この様にすると、スリーブ部材20は隙間有り穴の表面をピン軸部から遮蔽することとなり、これにより、ピンがスリーブ部材20に押し込まれ、または引きこまれる際の、複数の加工物の層間剥離を無くす。
【0037】
テーパー移行部55は、ピン部材15のスリーブ部材20への取り付けにより生じる高い干渉状態に起因して要求される取り付け力を最小化するように設計され、そして最適化されている。移行部55は、取り付けに必要な力を減らす、浅い引き込み角を有する。干渉状態で締結具10を挿し込むために必要とされる力が小さいから、スリーブの伸びおよび早期のスリーブ破壊の減少と同時に、非常に長いグリップ長さの締結具10を可能にする。
【0038】
一実施例において、移行部55はテーパー状にしても良く、滑らかな軸部からねじ部へ半径方向に直径が減少するよう、ピン軸からの角度を20度以下にしても良い。図示した実施例において、移行部55はテーパー状で、その直径は均一なつくりで減少する。しかしながら、移行部は、ピン軸の直径が減少する、同じ長さのどの形状にもなれる。例えば、移行部は、凸曲面、凹曲面、もしくはS字状曲面、または滑らかな軸部とねじ部との間の直径の減少を可能にする構造のような、穏やかに直径が減少する形状にし得る。これらの実施例において、移行部55は、0.254〜7.37mm(0.010〜0.290インチ)の長さにわたり、ピン軸の半径が0.102〜約0.127mm(0.004〜0.005インチ)の間で減少する。一実施例において、締結具が挿し込まれると、スリーブ20は約0.0762mm(0.003インチ)と0.305mm(0.012インチ)との間で半径方向に広がる。一実施例において、加工物105、110と締結具10との干渉は、約0.0127〜0.254mm(0.0005〜0.0100インチ)である。
【0039】
開示された締結具10の締結具干渉の結果、加工物と締結具10との間の隙間は取り除かれる。従って、構成部材間の良好な電気伝導がもたらされる。電気火花発生の可能性は減少し、締結具10の航空宇宙用への使用をより安全なものとする。
【0040】
一実施例において、スリーブ20の外面および/または穴125、130の内面は、粗くまたは粗雑である。これらの二つの領域に粗い表面を備えることにより、スリーブ部材20の外面95と、穴125、130の内面135との間の摩擦係数が増加する。スリーブ20の管状部80の半径方向への拡大をもたらすように、基本的に、摩擦係数および/またはピン15をスリーブ部材20に押し込み、または引き抜く力は、スリーブ外面95と穴の内面135との間の摩擦係数および/または負荷より低くならなければならない。摩擦係数の差(differential coefficient of friction)がなければ、挿し込むことなくスリーブ20は穴に引き込まれ得る。
【0041】
一実施例において、粗い、スリーブの外面および/または穴の内面は、スリーブ部材20の内面90の潤滑剤と相まって、取り付け中のスリーブ20の過度の伸びを防止する。スリーブの外面95と、穴の内面135との間の摩擦係数は、スリーブの内面とピン部材の滑らかな円筒状軸との間の摩擦係数より大きい。その結果、スリーブ20は干渉位置まで半径方向に拡大し、そしてスリーブ20の伸びは減少する。
【0042】
一適用例において、摩擦係数の違いは、スリーブ部材20の伸びを1.27mm(0.050インチ)以下まで減らすことを可能にする。加えて、スリーブ20の表面の特性はジョイント内および締結具上のシーリング材の使用を可能にする。
【0043】
一実施例において、締結具10を0.254mm(0.010インチ)の干渉状態となるように挿し込むのに必要な取り付け力を最小化する、ピン部材15の最適化された角度の移行部形状55が設計されている。設計された形状は、従来の丸い(bull-nose)移行部形状と同様のピン部材15の挿入に平行な力の代わりに、ピンを挿入する際に、角度のある移行部55に直角に力が加わるのを可能にする。これにより、ピン部材15の取り付けに低い力が必要とされる。低い力が必要とされる結果、締結具10は、金属、複合材料、金属/複合材料構造を含む非常に多様な加工物に差し込める。
【0044】
ピン部材15のテーパー状の移行部55の移行形状も、過度のスリーブの伸びおよび/または早期のスリーブ破壊のない非常に長いグリップ長さを機能的に可能にするので、重要である。
【0045】
加工物を十分に一体に固定するために、取り付け手段が用いられる。取り付け手段は、図3に示すねじナット部材250か、または図8に示すカラー部材200とし得る。加工物を一体に固定するために、別の取り付け手段も用いることができる。
【0046】
図8に示すように、対称的な形状の一実施例において、事前に選択された材料の管状カラー200が挿し込まれたピンおよびスリーブ構体12を覆って設置されている。加工物105、110が一体に固定されるように、カラーはピン部材15のねじ部に対して半径方向に整列される。カラー200は、ピン軸とボアを通るカラーとを覆って位置するように合わせた座ぐり部215を有し、貫通孔の内径は、ピン15の引き溝75およびねじ部50に対して隙間を生じるように選択される。カラー形状は、体積バランスがとられている。所望の締め付け荷重をもたらすようにねじ部50をすえ込みするために、カラー200の肉厚(壁厚)は均一で対称的な形状である。
【0047】
図3に示すように、締結具10の他の実施例では加工物を一体に固定するためにナット部材250を用いる。ナット部材250は、ピン部材のねじ部50と螺合するためのねじ部255を備える。
【0048】
カラー部材200またはナット部材250は、カラー200またはナット250がスリーブ構成部材を通るのを可能にする、座ぐり部215を一端に有する。従って、座ぐり部215はスリーブ20の外径より大きい直径を有する。その結果、挿し込まれた締結具10は、低減された高さおよび重量を有する。これは、締結具10を、従来の締結具よりコスト効果の高い解決手段にする。
【0049】
カラー200またはナット部材250も、拡大フランジ220を一端に備える。複数個の加工物の外面140とかみ合うフランジ220は、加工物105、110の外面140への取り付けおよび締め付け荷重を分配するために、事前に定められたかみ合い領域が設けられる。加工物105、110が少なくとも一つの複合材料を有する場合、フランジ220のかみ合い領域は、加工物105、110の外面での複合材料の局所的な層間剥離または圧壊に耐えるのに十分なように選択される。
【0050】
図9に示すように、締結具10のカラー部材は、ピン部材15のねじ部にすえ込みされる。特定の実施例において、最適化されたカラー形状は、ねじ部50へのカラーのすえ込みを可能にするために、既存のねじ山および結束工具と釣り合いを取るようにする。カラー200は、カラー材料の調整および締め付け荷重/予荷重を一貫した高さに維持しながらねじ部50の約40〜60%の深さまですえ込みされ得る。
【0051】
一貫した締結具10の高い締め付けは、ダイナミックジョイント性能および航空機構造の製品寿命を著しく増加する。特定の実施形態において、高い締め付け荷重/予荷重は、挿し込まれた締結具の最低引っ張り強度の約50〜96%を平均化する。更に、一実施例において、高い締め付け/予荷重は最低引っ張り強度の約78%を平均化する。代表的な締結具では、高い締め付け/予荷重は最低引っ張り強度の約50%を平均化する。
【0052】
加えて、調整されたピン部材15のねじ部50の部分的な充填は、著しく、なお一層の挿し込み中のシーリング材の流出を可能にする。締結具10の機械的性能は、このシーリング材流出では減少しない。
【0053】
カラー200による、制御され、すえ込みされた充填も、従来技術にかかる締結具と比較して改善された点である。主な適用例には、ピン部材、およびカラーまたはナットの内部および外部ねじの間の固有の隙間がある。加えて、締結具10の不圧側、およびカラーまたはナットの座ぐりは、構成部材間に隙間を有する。ここで開示される締結具10は、ピン15のねじ部50の両側での全面的接触を作り出す。従って、締結具は良好な伝導性を有し、そして燃料気密の改善に加えて航空宇宙条件の安全な締結具をもたらす。
【0054】
カラー200がすえ込みされる場合、カラーはスリーブ部材20の端部全体にすえ込みされる。その結果、スリーブ部材20は、ピン15の移行角部55を覆って圧縮される。従って、必要であれば、スリーブ20およびピン15は単一ユニットのように取り除かれる。これは、様々な適用例で、挿し込まれた締結具10の効率および加工性を改善すると同時に、伝導性も改善する。
【0055】
図9に、挿し込まれた締結具10の一実施例を示す。事前に定められた長さの軸を有するピンを備える締結具10は、複数個の、最小から最大総厚まで総厚が変わる、グリップを有する加工物105、110を固定するために選択され得る。グリップ長さの全体を包み込むスリーブを有することが望ましいので、スリーブは、複数個の加工物105、110の最大総幅以下とならないように事前に定められる。
【0056】
本開示の特定の適用例において、約3.45mm(0.136インチ)の機能的グリップ性能により110%の最低機械性能が達成された。標準的な締結具は、約1.57mm(0.062インチ)の機能的グリップ性能しか有さない。長い機能的グリップ性能の変化を有することは、異なる適用例に使用される多くの多様性を持つ締結具10をもたらす。
【0057】
図1に示すように、締結具10を差し込むため、スリーブはピンの上に設置される。そして、引き込み性能のために道具がピン部材15の引き溝75をとらえられるような、十分なピン15のフランジ部の長さが、複数個の加工物105、110の外面を超えて延在するように、スリーブ20およびピン15は加工物105、110の整列された穴の中に配置される。
【0058】
ピン部材15が道具で引かれるにつれ、ピン部材15の滑らかな円筒状軸部45はスリーブ部材20に引き込まれ、スリーブ20を外側に半径方向に拡大する。この拡大の大きさは、滑らかな円筒状軸ピン部45とスリーブの内面90との間、および、スリーブ95の外面と複数個の加工物105、110の穴135の内面との間の摩擦および要求される力の関数である。
【0059】
カラー部材200は、フランジ部220が加工物表面140に向かって位置するように、ピン部材15およびスリーブ20を覆って配置される。この時点で、ピン部材のねじ部50にカラー部材200をすえ込みするためにカシメ工具が使用され、その位置に締結具10を固定する。
【0060】
他の実施例において、図3に示すように、締結具10を差し込むためのスリーブがピンの上に配置される。そして、スリーブ20およびピン15が、加工物105、110の整列された穴に設置される。ナット250のねじ部がピンのねじ部と螺合することができるよう、ピン15のねじ部の十分な長さが複数個の加工物105、110の外面を越えて延在するように、ピン15はスリーブ20に押し込まれる。それから、挿し込みを終わらせるために、ナット250が挿し込まれ締め付けられる。
【0061】
従って、複合材料、金属、および金属/複合材料構造の内部で締まりばめをもたらす、独自の締結具10が開示される。締結具10は、良好な締結具干渉および高い締め付け荷重の結果として、改善されたダイナミックジョイント性能をもたらす。様々な構成部材の形状は、層間剥離および潜在的な構造の破壊をなくすと同時に、干渉状態を可能にする。干渉は、締結具10と構造体との間の隙間をなくし、良好な電気伝導性および電気火花発生の可能性の低減をもたらして、締結具10の安全性を高める。
【0062】
上述の記載は多くの事項を含むが、これらは開示の範囲の限定を意図したものでなく、むしろその実施例の説明である。締結具およびこの中に使用されているものは、異なった種類または開示された実施例の任意の組み合わせを含む。加えて、上述の記載により、開示の範囲が限定されることは意図していない。特許請求の範囲の様々な構成要素、および特許請求の範囲自身はどの組み合わせとも結合してもよく、本開示の示唆に従い、特許請求の範囲を含む。
【符号の説明】
【0063】
10 締結具
12 スリーブ構体
15 ピン
20 スリーブ
30 一端
35 突出頭
37 皿頭
40 軸部
45 円筒状部
50 ねじ部
55 移行部
60 折れやすい部分
65 溝
70 ランド
75 溝
80 管状部
85 フランジ
90 表面
95 外面
105 加工物
110 加工物
115 外面
120 皿穴部
125 穴
130 穴
135 内面
140 外面
200 カラー
215 座ぐり部
220 フランジ
250 ナット
255 ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ以上の加工物を通って整列した穴に取り付けられるように構成されたスリーブ付き干渉締結具であって、
一端部に拡大頭部を有するとともに、内径および外径を有して前記外径が構造物の前記整列された穴の内径より小さい管状部を有するスリーブ部材と、
一端部に拡大されたピン頭部を有するとともに、反対側の端部にねじ部を有し、且つ、それらの間に、滑らかな円筒状軸部を有し、前記滑らかな円筒状軸部は、前記スリーブ部材の管状部の内径より大きい直径を有して前記拡大されたピン頭部の下に位置する、ピン部材と、
を備え、
前記スリーブ部材は、前記滑らかな円筒状軸部上で半径方向に拡大され、前記スリーブ部材の外径と前記二つ以上の加工物を通って整列した穴との間で締まりばめを形成するように構成され、スリーブ付き干渉締結具の取り付け位置をもたらし、
前記スリーブ付き干渉締結具は、前記滑らかな円筒状軸部と、前記ねじ部との間にテーパー状の移行部を更に備え、前記移行部は、前記ピン部材の前記滑らかな円筒状軸部と前記ねじ部との間で半径が減少する構造を有して、前記スリーブ部材に前記ピン部材を挿し込むのに必要な取り付け力を最小化し、
前記スリーブ部材の内面と前記ピン部材の前記滑らかな円筒状軸部との間の摩擦係数が、前記スリーブ部材の外面と前記二つ以上の加工物を通って整列した穴の内面との間の摩擦係数より小さくなるように選択されて、前記スリーブ部材の伸びの量を低減し、それにより前記滑らかな円筒状軸部が、前記スリーブ部材を前記二つ以上の加工物と締まりばめするまで拡大するのを可能にすることを特徴とする、スリーブ付き干渉締結具。
【請求項2】
前記移行部が、前記滑らかな円筒状軸部から20度以下の角度を有するテーパー状の移行部であり、前記滑らかな円筒状軸部から前記ねじ部へと直径が半径方向に減少する、請求項1に記載のスリーブ付き干渉締結具。
【請求項3】
前記移行部は、0.254mmと0.737mmとの間の長さを有し、
前記移行部の直径は、前記滑らかな円筒状軸部から前記ねじ部へ延在するにつれて、0.102mmと0.127mmとの間で半径方向に減少する、請求項1に記載のスリーブ付き干渉締結具。
【請求項4】
前記ピン部材の前記ねじ部に嵌合するように構成されたクランプ手段を更に備える、請求項1〜3の何れかに記載のスリーブ付き干渉締結具。
【請求項5】
前記クランプ手段がねじナット部材である、請求項4に記載のスリーブ付き干渉締結具。
【請求項6】
前記クランプ手段がカラー部材である、請求項4に記載のスリーブ付き干渉締結具。
【請求項7】
前記クランプ手段が、座ぐり部を備え、
前記座ぐり部が、前記スリーブ部材の外径よりも大きい直径を有する、請求項5または6に記載のスリーブ付き干渉締結具。
【請求項8】
前記ピン部材の前記滑らかな円筒状軸部が、前記ピン部材が前記スリーブ部材に挿し込まれると前記スリーブ部材を半径方向に約0.0127mm〜約0.254mm拡大するように構成されている、請求項1〜7の何れかに記載のスリーブ付き干渉締結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−189222(P2012−189222A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−133101(P2012−133101)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【分割の表示】特願2007−244140(P2007−244140)の分割
【原出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(506072631)アルコア グローバル ファスナーズ インコーポレイテッド (5)