説明

複合材組成物

【課題】成形品の形成によく適した複合材を提供する。
【解決手段】該複合材は、熱可塑性ポリマー、セルロース、無水物部位を含むカップリング剤、及びカルボン酸のアルキルエステルを含む潤滑剤を含む組成物。好ましくは該潤滑剤はステアリン酸亜鉛を実質的に含まない組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2001年4月16日出願の米国仮出願第60/284131号に関連し、それに基づく優先権を主張する。前記出願は引用によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、熱可塑性ポリマー及びセルロース繊維を含む複合材組成物、そのような複合材組成物用の潤滑剤/カップリング剤、並びにそのような組成物から形成される構造部材及び構造体に関する。本発明の複合材は、構造部材に成形された場合、代用木材としての使用によく適している。
【背景技術】
【0003】
有機樹脂及び充填材を含む複合材は何年も前から知られ、使用されている。例えば、天然木材の外観と感触を呈する材料の発見が求められている。この要求の理由の一つは、建設目的のために世界の森林から供給される有限の天然木材資源を保護するための努力と関係する。別の理由は、ある種の複合材は、ある点において天然木材よりも優れた性質を示しうることである。例えば、複合材を処方して耐湿性の向上した合成木材を作ることも可能である。
【0004】
建設で木材製品を大量に使用すると一般的コストや困難を伴うことに加え、一般的なボード製造における木材の大半は廃材になる。材木製造業者が、伐採した樹木を構造物製造用の長いボードや厚板群に加工しようとすると、枝などのパルプ材料と共に相当量のおが屑が発生する。そこで、木材繊維や木材パーティクルを種々のバインダ材料と共に使用して、原木の代用品になる製品を製造しようとする試みがなされてきた。そうした製品は、今日では入手可能であり、一般的に“繊維ボード”又は“パーティクルボード”として知られている。さらに、木材パーティクルや木材繊維をプラスチックバインダと共に使用することにより、いわゆるプラスチックウッドも作り出されている。その結果、セルロース及び関連材料は、一般に複合材、特に代用木材としての使用を意図した複合材に使用する材料として非常に望ましい。
【0005】
そのような複合材の製造及び有効性に伴う一つの問題は、セルロース繊維と熱可塑性バインダとを強固に結合させる能力である。充填材と樹脂性混合物との間の接着安定性は、そのような材料が知られるようになって以来ほぼずっと、ごれらの材料の劣化と破壊の原因として認識されている。米国特許第5,981,067号に報告されている通り、この問題に対する一つの解決策は、ポリマー−繊維の適合性を向上させること、すなわち、ポリマー及び繊維が相互に混合及び/又は接着する傾向を増大させることである。米国特許第5,120,776号(引用によって本明細書に援用する)は、セルロース繊維を無水マレイン酸又は無水フタル酸で前処理してポリマーマトリックス中の繊維の結合性及び分散性を改良する方法を開示する。また、これに関連するのがMaldas及びKoktaによる“無水マレイン酸及びイソシアネートをコーティング成分として用いる木材繊維の表面改質法及びポリスチレン複合材におけるそれらの性能(Surface modification of wood fibers using maleic anhydride and isocyanate as coating components and their performance in polystyrene composites)”,Journal Adhesion Sc
ience Technology,1991,pp.1−14である。
【0006】
無水マレイン酸系のカップリング剤を複合材の作成に使用することが示唆されているが、そのような材料を商業的に応用した明確な成功例がない。
複合材組成物の商業的な用途は、そのような組成物のモールディングや押出などによる成形を伴うことが多い。そうした操作が商業的に競争力のある環境で実際的に有効であるためには、そのような工程を比較的高速度で、操作上の問題を最小限にとどめて行うことが必要である。この目的のため、複合材組成物中にその加工を助ける添加剤の使用が、実際的に必須である。広く使用されている一つの加工補助剤は潤滑剤又は離型剤であり、これによって、商業的に許容しうる速度でそのような複合材を有効に加工することができる。ステアリン酸金属、特にステアリン酸亜鉛は、熱可塑性ポリマー及びセルロース充填材を含む複合材の潤滑剤パッケージにしばしば使用される。例えば、米国特許第6,180,257 B1号(2欄,26−28行)参照。
【発明の概要】
【0007】
発明の要旨
本発明は、新規潤滑剤組成物、新規複合材組成物、新規構造部材及び新規製造法を含むいくつかの側面を有する。これらの各側面は、ある種の潤滑剤、特にステアリン酸金属等のカルボン酸金属の潤滑剤が、ある種の望ましいカップリング剤の性能に悪影響を及ぼしうるという本発明者らによる認識;及び、ある種の潤滑剤はそのようなカップリング剤と相乗的に作用して、思いがけず優れた性能を引き出すという本発明者らによる発見;から少なくとも一部は導き出されている。
【0008】
出願人らは、成形品の形成によく適した複合材組成物を発見した。そのような組成物は、ポリマー(好ましくは熱可塑性ポリマー)、セルロース、カルボキシル官能基(例えば無水物部位)を含むカップリング剤、及び求電子官能基(例えばカルボン酸のアルキルエステル又はその官能性誘導体)を含む潤滑剤を含む。非常に好ましい態様によれば、潤滑剤は拮抗量(antagonistic amount)のステアリン酸金属等のカルボン酸金属を含まず、更に好ましくは、ステアリン酸金属等のカルボン酸金属を実質的に含まない。ここで使用する拮抗量という用語は、複合材の性質(特に押出性といった加工特性)について、そのようなカルボン酸金属を全く含まない同じ複合材と比較した場合に、何らかの悪影響を及ぼすカルボン酸金属の量のことである。
【0009】
本発明はまた、アルキルエステルとアミドエステルとを含む潤滑剤組成物も提供する。
本発明の方法は、好ましくは本発明の複合材の押出によって該複合材を成形品に成形することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1つの態様による1つの構造部材を示す半概略断面図である。
【図2】本発明の1つの態様による1つの構造部材を示す半概略断面図である。
【図3】本発明の別の態様による1つの構造部材を示す半概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい態様の説明
本発明は、望ましい強度を示す成形品に成形加工できる複合材組成物に関し、特に構造部材に高速で成形加工できる複合材組成物に関する。一般的に、該組成物は、好ましくは約10〜約50重量部の熱可塑性ポリマー、約50〜約90重量部のセルロース繊維、有効量のカップリング剤及び本発明による有効量の潤滑剤を含む。ここで使用している有効量という用語は、組成物の対応する性能に、顕著な、好ましくは実質的な改良をもたらす任意の量のことである。従って、カップリング剤に関して言うと、有効量のカップリング剤は、熱可塑性ポリマーとセルロース繊維との間の適合性及び/又は接着性に顕著な改良をもたらす。このことは、典型的には成形品の引張り強度の改良となって現れるが、これだけに限られるものではない。潤滑剤に関しては、有効量によって組成物の加工性に顕著な改良がもたらされる。このことは、典型的には組成物を効果的に形成して、好ましくは押出して成形品に加工できる速度及び/又は効率の改良となって現れるが、これだけに限られるものではない。
【0012】
ある好ましい態様によれば、複合材組成物は、好ましくは約20〜約40重量部、さらに好ましくは約25〜約35重量部の熱可塑性ポリマー、約50〜約80重量部、さらに好ましくは約50〜約65重量部のセルロース繊維、約1〜約5重量部のカップリング剤、及び約1〜約5重量部の潤滑剤を含む。
【0013】
本組成物の好ましい態様によって、先行技術の組成物と比較して意外にも改良された性能特性を有する成形品が製造される。更に詳しくは、無水マレイン酸系のカップリング剤と本発明による潤滑剤とを含む好ましい複合材組成物を用いると、広く使用されている先行技術の潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を相当量含有する同一の組成物より少なくとも約25相対パーセント、更に好ましくは少なくとも約50相対パーセント大きい引張り強度を示す引張り強度特性を有する成形品が製造される。本発明の好ましい複合材組成物は、少なくとも約2000psi、更に好ましくは少なくとも約2500psi、なお更に好ましくは3000psiの引張り強度を示す。
【0014】
本発明、特に本発明の潤滑剤組成物の実質的かつ意外な別の利点は、コストに関する利益であり、この利益は本発明の潤滑剤の改良された加工性能に由来する。更に詳しくは、本発明の潤滑剤は、複合材組成物の成形性、特に押出性の向上について更に有効である。この改良は、本発明の組成物を先行技術のステアリン酸亜鉛潤滑剤を用いた組成物と実質的に同じ速度で成形するために使用される潤滑剤の量が、同じ加工速度を達成するために先行技術で必要とされる使用量の約90相対パーセント以下、さらに好ましくは約75相対パーセント以下でよいという事実によって示される。
【0015】
熱可塑性ポリマー
実質的に熱可塑性であるいかなるポリマーも、本発明による使用に適合可能と考えられる。例えば、本発明の組成物に有用な熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリハロゲン化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン、スチレンポリマー、及びポリカーボネートを含みうると考えられる。特に好ましくはポリオレフィンポリマーである。
【0016】
実質的に熱可塑性であるポリマー材料の主たる要件は、セルロース繊維との溶融ブレンドを可能にし、熱可塑性工程で押出又はモールディングによる成形品への効果的な形成を可能にするに足る熱可塑性を保持していることである。従って、本発明の組成物には、これらの本質的性質を犠牲にしない範囲で少量の熱硬化性樹脂が含まれてもよいと考えられる。バージン(未使用)及びリサイクル(廃)ポリマーのいずれもが使用できる。
【0017】
本明細書中で使用するポリオレフィンという用語は、不飽和脂肪族炭化水素のホモポリマー、コポリマー及び改質ポリマーを指す。好ましいポリオレフィンのうち、ポリエチレン及びポリプロピレンが最も好ましい。高密度ポリエチレン(HDPE)が特に好ましい。経済的及び環境的理由からは、ボトル及びフィルムからの粉砕再生HDPEが好ましい。
【0018】
セルロース繊維
本発明の組成物は、セルロースを含む充填材を包含する。充填材成分は、強化(高アスペクト比)充填材、非強化(低アスペクト比)充填材、並びに強化及び非強化充填材の組合せを含みうる。アスペクト比とは、充填材粒子の有効直径に対する長さの比と定義される。高アスペクト比の利点は、同量の充填材含有量について、より高い強度及びモジュラスを提供することである。ガラス繊維、炭素繊維、タルク、雲母、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機充填材も任意のセルロース補助剤として加えてよい。さらに、ポリマー繊維を含む他の有機充填材を使用することもできる。
【0019】
本発明によるセルロース充填材は低コストというだけでなく、軽量であり、強力熱速度ミキサ(high intensity thermokinetic mixer)で加工後に高アスペクト比を維持する能力を有し、低摩耗性である(従って機械の寿命を延長する)といった他の理由から、特に重要であり好ましい。セルロースは、木材/林業及び農業の副産物を含む任意の供給源から得ることができる。セルロース繊維は、硬木繊維、軟木繊維、大麻、ジュート、もみ殻、麦わら、及びこれらの二つ以上の組合せを含みうる。ある態様では、好ましくは、セルロースは硬木に含まれるような高アスペクト比の繊維を相当の比率で含む。しかしながら、そのような高アスペクト比の繊維は一般的に加工が困難なので、加工速度及び効率が特に重要な事項となる態様ではあまり望ましくない場合がある。
【0020】
カップリング剤
本明細書中で使用するカップリング剤という用語は、セルロース粒子及び熱可塑性ポリマーの分散及び/又は適合性を促進させやすい化合物又は組成物のことを指す。一般に、求電子官能基、特にカルボキシル官能基を有する有機ポリマーを含む化合物はこの目的にとって有効である可能性があることが見出されており、そうした化合物すべてが本発明による使用に適合可能であると考えられる。好ましい有機化合物は、無水マレイン酸の官能基を有するポリマーなどである。
【0021】
無水マレイン酸官能基を有する多数の化合物が、本明細書中の開示により本発明に従って使用可能であると考えられ、そのようなすべての化合物又は化合物の組合せが本発明の範囲に含まれる。ある態様では、官能基化ポリマー、特にマレイン酸化ポリオレフィンポリマーが好ましい。
【0022】
当業者が本願に含有される記載の開示から理解する通り、本発明に従って使用される官能基化ポリマーの特性及び特徴は、多数の用途の特定のニーズに対応するために幅広く変動させうる。しかしながら、出願人らは、一般的に複合材の熱可塑性ポリマーの少なくとも一部に概ね対応する主鎖を有する官能基化ポリマーを選ぶことが望ましいことが多いことを見出した。例えば、熱可塑性ポリマーがポリエチレンである本発明の態様においては、カップリング剤として官能基化ポリエチレンを利用することが好ましい場合がある。同様に、熱可塑性ポリマーがポリプロピレンを含む態様の場合、カップリング剤として官能基化ポリプロピレンを使用することが好ましい場合がある。しかしながら驚くべきことに、出願人らは、異なるポリオレフィンポリマー、より好ましくはC2−C4ポリオレフィン、さらにより好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンの両方と非常に効果的に使用されるカップリング剤を見出した。様々な複合材組成物に非常に効果的に使用できるカップリング剤を有することが望ましい本発明の態様の場合、出願人らは、マレイン酸化ポリプロピレンポリマー、特に約10,000〜約15,000の分子量を有し、ポリマー鎖あたり平均約1.5〜約2.5個の無水マレイン酸官能基を有するポリプロピレンを使用することが好ましいことを見出した。熱可塑性ポリマーがポリオレフィンを含む態様について、より一般的には、カップリング剤は約10,000〜約25,000(更に好ましくは約10,000〜約20,000)の分子量とポリマー鎖あたり平均約0.6〜約3個(更に好ましくは約0.8〜約2.5個)の無水マレイン酸官能基とを有する官能基化ポリオレフィン、好ましくは官能基化ポリエチレン、官能基化ポリプロピレン、及び/又は官能基化ポリエチレンと官能基化ポリプロピレンとの組合せを含むことが好ましい。そのような官能基化ポリオレフィンは、例えばHoneywell International社からA−C 1221、597、596及び575の商品名で入手可能である。それに加え、官能基化ポリエチレン及びポリプロピレンは、米国特許第3,882,1945号、4,404,312号及び5,001,197号に開示されており、これらの各特許は引用によって本明細書に援用する。
【0023】
ある態様では、シランカップリング剤を単独で又は他の好ましいカップリング剤と組み合わせて使用することが好ましい場合があると考えられる。当然のことながら、本明細書中に具体的に記述していないが当業者に現在知られている又は知られるようになった他の効果的なカップリング化合物も、本明細書中に記載の好ましいカップリング剤に加えて、又は場合によってはその代替として使用することができる。
【0024】
潤滑剤
本発明の組成物は有効量の潤滑剤又は潤滑剤パッケージを含む。1つの態様において、潤滑剤はアルキルエステルを含む。特に好ましいのは、ポリオール(すなわちポリヒドロキシル化合物)と1以上の一塩基又は多塩基カルボン酸又はカルボン酸官能基との反応によって形成されるポリオールエステル類である。
【0025】
ポリオールの中でも、一般式R(OH)n[式中、Rは任意の脂肪族又は脂環式ヒドロカルビル基(好ましくはアルキル)であり、nは少なくとも2である]で表されるものである。ヒドロカルビル基は約2〜約20個以上の炭素原子を含有し、またヒドロカルビル基は塩素、窒素及び/又は酸素原子といった置換基を含有していてもよい。ポリヒドロキシル化合物は一般的に1個以上のオキシアルキレン基を含有しているので、ポリヒドロキシル化合物はポリエーテルポリオールのような化合物を含む。カルボン酸エステルの形成に使用されるポリヒドロキシル化合物中に含有される炭素原子の数(すなわち炭素数;本願全体にわたって使用している炭素数という用語は、場合に応じて酸又はアルコールのいずれかにおける炭素原子の総数のことである)及びヒドロキシ基の数(すなわちヒドロキシル数)は、広範囲にわたって変動可能である。
【0026】
以下のアルコール、すなわちネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、モノ−ペンタエリトリトール、工業用ペンタエリトリトール、及びジ−ペンタエリトリトールは、ポリオールとして特に有用である。最も好ましいアルコールは、工業用ペンタエリトリトール(例えば約88%のモノ−、10%のジ−、及び1〜2%のトリ−ペンタエリトリトール)、モノペンタエリトリトール、及びジ−ペンタエリトリトールである。
【0027】
好ましいカルボン酸は、アジピン酸及びステアリン酸を含む任意のC2〜C20の一(モノ)及び二(ジ)酸を含む。
潤滑剤の形成にカルボン酸の官能性誘導体も使用することができる。例えば、エステルを形成させる場合に多塩基酸の代わりに多塩基酸の無水物を使用できる。これらには、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸、無水ナディック酸(エンディック酸無水物)、無水メチルナディック酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ステアリン酸、及び多塩基酸の混合無水物などが含まれる。本発明による特に好ましい潤滑剤組成物は、米国特許第4,487,874号及び6,069,195号に記載されている複合エステルであり、これらの各特許は引用によって本明細書に援用する。
【0028】
本発明の好適なアルキルエステルは、以下の式1:
【0029】
【化1】

【0030】
のアルキルエステルの混合物を含む;
(式中、Rは独立して水素又は−C(O)R’であり、少なくとも1個のRは−C(O)R’であり;
R’は水素、約3〜約18個の炭素原子を有する不飽和若しくは飽和アルキル鎖、又は−C(O)−X−COOHであり;
Xは約3〜約18個の炭素原子を有する一価又は多価であり得る不飽和又は飽和アルキル鎖である)。
【0031】
アルキルエステルは、好ましくはペンタエリトリトールアジペート−ステアレートを含む。これは、式1のアルキルエステルの混合物であり、約14%の有機部位がアジピン酸由来の−C(O)−X−COOH部分で、約71%の有機部分がステアリン酸及びそれに関連する酸(主としてパルミチン酸)由来の−C(O)R’部位である。そのような材料は、Honeywell International Inc.社からRL 710の商品名で販売されている。
【0032】
本発明による潤滑剤パッケージは、好ましくはカルボキシアミドワックス、より好ましくはステアラミドワックスも含む。これらは米国特許第3,578,621号に開示されており、この特許は引用によって本明細書に援用する。特に好ましいのはエチレンビスステアラミド(“EBS”)である。
【0033】
アルキルエステル及びアミドワックスは潤滑剤パッケージの中で広範囲の相対濃度にわたって使用できるが、アルキルエステル:アミドワックスの重量比は約30:1〜約1:1が好ましく、20:1〜約2:1が更に好ましい。
【0034】
好ましい態様によると、潤滑剤パッケージは、約25重量%以下のカルボン酸金属、更に好ましくは10重量%以下のカルボン酸金属を含有し、最も好ましくはカルボン酸金属を実質的に含まない。非常に好ましい態様によれば、潤滑剤パッケージは、約25重量%以下のステアリン酸亜鉛、更に好ましくは10重量%以下のステアリン酸亜鉛を含有し、最も好ましくはステアリン酸亜鉛を実質的に含まない。
【0035】
複合材組成物に関しては、複合材は0.5重量%以下のカルボン酸金属、更に好ましくは0.25重量%以下のカルボン酸金属のみを含有することが一般的に好ましい。特に好ましくは、複合材は0.5重量%以下のステアリン酸亜鉛のみを含有し、更に好ましくは、0.25重量%以下のステアリン酸亜鉛のみを含有する。
【0036】
ある態様によれば、潤滑剤は硬化ひまし油を含む。
添加剤パッケージ
本発明の一側面は、有利な加工特性及び最終用途特性を有する複合材組成物の形成に有用な添加剤組成物にも関する。更に詳しくは、添加剤パッケージは、潤滑剤及び/又はカップリング剤の独自の組合せを含む。この組合せは、複合材の加工特性の改良に効果的であり、最終製品の強度特性を損ねず増強することさえある。
【0037】
ある好ましい態様において、添加剤は拮抗量未満のカルボン酸金属を含有する潤滑剤である。本発明による特に好ましい潤滑剤は、カルボン酸金属を実質的に含まず、高重量比のアルキルエステル及び/又は硬化ひまし油と低重量比のカルボキシアミドワックスとを含む。ある態様では、潤滑剤パッケージは、低重量比のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレン、更に好ましくは実質的に線状のポリエチレン又はポリプロピレンをさらに含む。ある好ましい態様では、潤滑剤組成物は、約80重量部〜約97重量部のアルキルエステル類、硬化ひまし油類、及びこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる化合物と、約1重量部〜約10重量部のカルボキシアミドワックスと、約1重量部〜約10重量部のポリオレフィンとを含む。
【0038】
本発明の潤滑剤パッケージは、ある態様では単独でも有益に使用できると考えられるが、本発明による潤滑剤/パッケージと本発明によるカップリング剤/パッケージとを組み合わせて含む添加剤パッケージを提供することが一般的に好ましい。さらにこれらのパッケージは、本発明によって広範囲の相対比率で組み合わせることができると考えられるが、潤滑剤:カップリング剤の重量比が約1:1〜約4:1、さらに好ましくはある態様では約3:2の添加剤パッケージを提供するのが一般的に好適である。
【0039】
構造部材
前述の通り、本発明の組成物は多様な構造部材を形成するために使用でき、そのようなすべての構造部材も本発明の広い範囲内に含まれる。しかしながら、出願人らは、本発明の方法及び組成物は、特に押出成形された構造部材の形成に利用できることを見出した。そのような構造部材は、本発明の方法及び組成物を使用しなければ形成が格段に困難であり、及び/又は、高い加工コストのために経済的観点から実際的に実施不可能である。図1〜3に関して詳細に説明すると、本発明は、強度と軽量性の両者を同時に有する構造部材を含むことがわかる。当業者であれば、そのように軽量の構造部材を従来の複合材組成物から押出によって製造することは、構造体の断面積が大きいために実際的に不可能だったであろうことが理解できるはずである。更に特別なことには、本発明の複合材組成物は、比較的高速で経済的な押出条件下でそのような高断面積の形状の押出を可能にする高強度及び高潤滑性を特異的に合わせ持っている。出願人らは、そのような構造部材は、先行技術において商業的に効率よく費用効果の優れた様式では製造できなかったと考える。
【0040】
方法
成形品の形成に関する本方法は、本明細書中に記載した本発明による複合材組成物を準備する工程と、前記組成物を所望の成形品に形成する工程とを含む。該組成物は、成分を組み合わせて均一な複合材組成物を形成するため当該技術で周知である任意の技術に従って成分を組み合わせることによって準備できる。そのような技術は、米国特許第3,943,079号;4,338,228号;5,886,066号;及び5,997,784号に開示されており、これらの各特許は引用によって本明細書に援用する。
【0041】
形成工程も、均一な複合材を成形品に形成するため当該技術で周知である任意の技術を含み、前述の特許に開示されている射出成形及び押出などが挙げられる。押出による成形が好適である。
【0042】
比較例1
この比較例は、必ずしも先行技術による製品を代表するものではない。実際のところ、先行技術に最も近い製品より本発明に近い可能性もある。それでも、本例は本発明の優れた性能を示すための根拠としての役割を果たしている。
【0043】
複合材組成物を、62重量部(parts by weight; "pbw")の木材繊維、33pbwのHDPE、2pbwのマレイン酸化ポリエチレンカップリング剤、及び3pbwの本質的にEBS及びステアリン酸亜鉛(重量比1:2)からなる潤滑剤の押出配合によって製造する。
【0044】
該組成物を公知条件下で公知法によって成形品に成形する。得られた物品は約2000psiの引張り強度を示す。
実施例1
複合材組成物を、62.8重量部(“pbw”)の木材繊維、33pbwのHDPE、2pbwのマレイン酸化ポリエチレンカップリング剤、及び2.2pbwの本質的にEBS、ステアリン酸亜鉛、及びペンタエリトリトールアジペート−ステアレート(重量比1:1:20)からなる潤滑剤の押出配合によって製造する。
【0045】
該複合材組成物を比較例と同一の条件下及び同一の方法で成形品に成形する。得られた物品の引張り強度は約2900psiで、比較例より45%の改良を示している。
実施例2
複合材組成物を、62.75重量部(“pbw”)の木材繊維、33pbwのHDPE、2pbwのマレイン酸化ポリエチレンカップリング剤、及び2.25pbwの本質的にEBS及びペンタエリトリトールアジペート−ステアレート(重量比2.5:20)からなる潤滑剤の押出配合によって製造する。
【0046】
該複合材組成物を比較例と同一の条件下及び同一の方法で成形品に成形する。得られた
物品の引張り強度は約3500psiで、比較例より75%の改良を示している。
実施例3
複合材組成物を、62.5重量部(“pbw”)の木材繊維、33pbwのHDPE、2pbwのマレイン酸化ポリエチレンカップリング剤、及び2.5pbwの本質的にペンタエリトリトールアジペート−ステアレートからなる潤滑剤の押出配合によって製造する。
【0047】
該複合材組成物を比較例と同一の条件下及び同一の方法で成形品に成形する。得られた物品の引張り強度は約3200psiで、比較例より60%の改良を示している。
比較例2
この比較例は必ずしも先行技術による製品を代表するものではない。実際のところ、先行技術に最も近い製品より本発明に近い可能性がある。それでも、本例は本発明の優れた性能を示すための根拠としての役割を果たしている。
【0048】
複合材組成物を、60.5重量部(“pbw”)の木材繊維、33pbwのHDPE、2pbwのマレイン酸化ポリエチレンカップリング剤、及び4.5pbwの本質的にEBSとステアリン酸亜鉛(重量比1:2)からなる潤滑剤の押出配合によって製造する。
【0049】
該組成物を公知の条件下で公知の押出法によって成形品に形成する。
実施例4
複合材組成物を、62重量部(“pbw”)の木材繊維、33pbwのHDPE、2pbwのマレイン酸化ポリエチレンカップリング剤、及び3pbwの本質的にEBSとペンタエリトリトールアジペート−ステアレート(重量比2.5:20)からなる潤滑剤の押出配合によって製造する。
【0050】
該複合材組成物を比較例2と同一の条件下及び同一の方法で成形品に成形する。重量及びコストの両面で比較例2より約50%削減された潤滑剤を使用したにもかかわらず、形成作業は比較例2と少なくとも同じ効率及び少なくとも同じ生産速度で進行する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維;
熱可塑性バインダ;
無水マレイン酸官能基を有するC2−C4ポリオレフィンカップリング剤;及び
以下の式1:
【化1】

[式中、Rは独立して水素又は−C(O)R’であり、そして少なくとも1個のRは−C(O)R’であり;
R’は水素、3〜18個の炭素原子を有する不飽和若しくは飽和アルキル鎖、又は−C(O)−X−COOHであり;
Xは3〜18個の炭素原子を有する不飽和又は飽和アルキル鎖である]
のカルボン酸のアルキルエステル、及びカルボキシアミドワックスを含む、ステアリン酸金属を含まない潤滑剤;
を含み、
ステアリン酸金属を含有する組成物と比較して、少なくとも約2000psiの引張り強度を含む、改良された性能特性を示す、
成形品を形成するための組成物。
【請求項2】
前記潤滑剤がアミドワックスを、アルキルエステル:アミドワックス=30:1〜1:1の重量比で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重量比が20:1〜2:1である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性バインダがポリエチレンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィンカップリング剤が、ポリマー鎖あたり平均0.6〜3個の無水マレイン酸官能基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性バインダが20〜40重量部で、前記セルロース繊維が50〜80重量部で、前記カップリング剤が1〜5重量部で、そして前記潤滑剤が1〜5重量部で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の成形品形成のための組成物を準備する;および
前記組成物を成形品に成形する;
の工程を含む、成形物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−144731(P2012−144731A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45367(P2012−45367)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2008−292521(P2008−292521)の分割
【原出願日】平成14年4月16日(2002.4.16)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】