説明

複合窒化物蛍光体の製造方法

【課題】焼成コストが低く、発光強度の高い微粉末状態の複合窒化物蛍光体を製造する方法を提供する。
【解決手段】付活元素Mの単体及び/又は化合物、2価の金属Mの窒化物、3価の金属Mの窒化物、並びに、4価の金属Mの窒化物を含む原料混合粉末を焼成して、下記一般式(I)で示される微量酸素を含有する複合窒化物蛍光体を製造する方法。原料混合粉末を嵩密度0.05g/cm以上1g/cm以下の状態とし、焼成温度を1200℃以上1750℃以下とし、被焼成原料中の窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数が1%以上20%以下となるように被焼成原料中に酸素を存在させて焼成する。
(I)
(0.00001≦a≦0.15、0.5≦b≦2、0.5≦c≦2、0.5≦d≦2、1.5≦e≦6、0<f≦1.2、0<f/(e+f)≦0.2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合窒化物蛍光体の製造方法に関する。さらに詳細には、微量酸素を含有する複合窒化物蛍光体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光灯、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、可視光線、電子線などの高いエネルギーを有した励起源により励起されて、紫外線、可視光線、赤外線を発する。
【0003】
しかしながら、蛍光体は前記のような励起源に曝される結果、蛍光体の輝度が低下するという問題があり、輝度低下のない蛍光体が求められている。そのため、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ホウ酸塩蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、輝度低下の少ない酸窒化物蛍光体として、Eu2+イオンを付活したCa−アルファサイアロン蛍光体が提案されている。
【0004】
このEu2+イオンを付活したCa−アルファサイアロン蛍光体は、概略以下に述べるような製造プロセスによって製造される。まず、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ユーロピウム(Eu)の原料粉末をモル比でSi:Al:Eu=13:9:1となるように混合し、原料混合粉末を200気圧の圧力を加えて圧縮成形した状態で、1気圧の窒素ガス中において1700℃の温度で1時間保持するホットプレス法により焼成してEu−アルファサイアロンを製造する。別に、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化カルシウム(CaO)の原料粉末をモル比でSi:Al:Ca=13:9:3となるように混合し、原料混合粉末を200気圧の圧力を加えて圧縮成形した状態で、1気圧の窒素ガス中において1700℃の温度で1時間保持するホットプレス法により焼成してCa−アルファサイアロンを製造する。そして、この様にして得られたEu−アルファサイアロンの粉末とCa−アルファサイアロンの粉末をモル比で50:50の割合で混合し、1気圧の窒素ガス中において1700℃の温度で1時間保持するホットプレス法により焼成して、目的のEu2+イオンを付活したCa−アルファサイアロン蛍光体を得る(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このプロセスで得られるEu2+イオンを付活したCa−アルファサイアロンは、波長450nmから500nmの青色光で励起されて波長550nmから600nmの黄色の光を発する蛍光体となることが報告されている。
【0006】
しかしながら、紫外線や青色光を励起源とする白色LEDやプラズマディスプレイなどの用途には、使用時の劣化が小さく、黄色以外に発光する蛍光体、特に波長600nm以上の赤色に発光する蛍光体も求められていた。
【0007】
また、この様にして得られる蛍光体は、使用される原料粉末の反応性がいずれも低いことから、焼成時に原料混合粉末の間でなされる固相反応を促進する目的で高温において圧縮成形した状態で原料混合粉末間の接触面積を多くして加熱されるために、非常に硬い焼結体の状態で合成される。しかし、前記の蛍光体用途に適する粉末状態の蛍光体を得るためには、この様にして得られる蛍光体からなる焼結体を微粉末状態まで粉砕する必要があった。ところが、硬い焼結体からなる蛍光体をジョークラッシャーやボールミルなどを使用して長時間と多大なエネルギーをかけて機械的に粉砕する際に、蛍光体の結晶母体中に多数の欠陥を発生させてしまい、蛍光体の発光強度を著しく低下させてしまうという不都合が生じていた。
【0008】
このために、加熱時に圧縮成形せずに粉末状態で焼成する方法が試みられたが、低温では原料の窒化物粉末間での固相反応が促進せずに、目的の蛍光体が生成しないため、1800℃以上の高温で蛍光体を合成する必要があった。ところが、この様な高温での焼成時には窒化物原料からの窒素の脱離を伴う分解反応が起こるという不都合が発生するために、それを抑制する目的で5気圧以上の窒素ガス雰囲気下で焼成する必要があり、高い焼成エネルギーが必要とされるだけではなく、非常に高価な高温高圧焼成炉が必要となり、蛍光体の製造コストを上昇させる原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−363554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来の希土類付活サイアロン蛍光体とは異なる発光色、特にEuで付活する場合には長波長の赤色に発光する蛍光特性を有し、圧縮成形せずに嵩密度の低い粉末状態で比較的低温において低い雰囲気ガス圧力の下で焼成できるために焼成コストが低く、大きな粉砕エネルギーをかけずに短時間の粉砕処理により発光強度の高い微粉末状態の複合窒化物蛍光体を安価に製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記実情に鑑み、複合窒化物蛍光体の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、以下の(1)〜(6)の製造方法を選択することにより、使用時の劣化の少ない複合窒化物蛍光体を安価に製造する方法を見出し、本発明を完成した。特に、複合窒化物蛍光体の中でも、酸素を微量含有するCaAlSiN:Euに代表される蛍光体は、紫外から緑色にかけての励起光により効率良く励起されて高輝度に赤色発光を示すが、本発明の方法はこの蛍光体の製造法に好適である。
【0012】
(1)付活元素の単体及び/又は化合物、2価の金属の窒化物、3価の金属の窒化物、並びに、4価の金属の窒化物を含む原料混合粉末を焼成して、下記一般式(I)で示される微量酸素を含有する複合窒化物蛍光体を製造する方法であって、原料混合粉末を嵩密度0.05g/cm以上1g/cm以下の状態とし、焼成温度を1200℃以上1750℃以下とし、被焼成原料中の窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数が1%以上20%以下となるように被焼成原料中に酸素を存在させて焼成することを特徴とする複合窒化物蛍光体の製造方法。
(I)
(一般式(I)において、Mは付活元素、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素であり、a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
0.5≦b≦2
0.5≦c≦2
0.5≦d≦2
1.5≦e≦6
0<f≦1.2
0<f/(e+f)≦0.2)
【0013】
(2)付活元素MがCr,Mn,Fe,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、2価の金属元素MがMg,Ca,Sr,Ba,及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、3価の金属元素MがAl,Ga,In,及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、4価の金属元素MがSi,Ge,Sn,Ti,Zr,及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする前記(1)に記載の複合窒化物蛍光体の製造方法。
【0014】
(3)付活元素Mが少なくともEuを含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の複合窒化物蛍光体の製造方法。
【0015】
(4)2価の金属元素Mの50モル%以上がCa及び/又はSrであり、3価の金属元素Mの50モル%以上がAlであり、4価の金属元素Mの50モル%以上がSiであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合窒化物蛍光体の製造方法。
【0016】
(5)酸化ユーロピウムを含むEu原料を使用することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の複合窒化物蛍光体の製造方法。
【0017】
(6)焼成雰囲気が不活性雰囲気又は還元性雰囲気であり、焼成時のガス圧力が9気圧以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の複合窒化物蛍光体の製造方法。
【0018】
なお、以下において、本発明における被焼成原料中の窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数の割合(百分率)を「原料中酸素存在割合」と称す場合がある。
【0019】
本発明において、原料中酸素存在割合とは、焼成時に被焼成原料中に存在する窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数の割合(百分率)であり、被焼成原料中の窒素とは、原料粉末由来の窒素であり、一方、酸素は、予め原料粉末中に含まれているものの他、焼成時に焼成雰囲気中から被焼成物中に取り込まれる酸素も含むものである。この原料中酸素存在割合は、酸素窒素分析計を用いて測定することにより求めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法により、高輝度の発光を示し、使用時の劣化の少ない複合窒化物蛍光体を安価に提供することが可能になる。即ち、本発明においては、前述の所定の原料中酸素存在割合となるような酸素の存在下で焼成するため、圧縮成形を行うことなく、比較的低い嵩密度の状態で、しかも過度の高温焼成や高圧焼成を行うことなく、比較的低い焼成温度と焼成圧力で窒化物原料間の固相反応を円滑に促進させて、発光特性に優れた蛍光体を安価に製造することができる。
【0021】
本発明の製造方法により生産される複合窒化物蛍光体は、従来のサイアロン蛍光体より高輝度に発光し、特にEuを付活元素として選択した場合には、高輝度で長波長の赤色発光を示す。また、励起源に曝された場合でも、この蛍光体は、輝度が低下することなく、蛍光灯、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に使用される有用な蛍光体を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、付活元素の単体及び/又は化合物、2価の金属の窒化物、3価の金属の窒化物、並びに、4価の金属の窒化物を含む原料混合粉末を焼成することにより、下記一般式(I)で示される複合窒化物蛍光体を製造する本発明の複合窒化物蛍光体の製造方法の実施の形態について詳しく説明する。
(I)
(一般式(I)において、Mは付活元素、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素であり、a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
0.5≦b≦2
0.5≦c≦2
0.5≦d≦2
1.5≦e≦6
0<f≦1.2
0<f/(e+f)≦0.2)
【0023】
本発明の複合窒化物蛍光体の製造方法において、付活元素Mとしては、複合窒化物蛍光体を構成する結晶母体に含有可能な各種の発光イオンを使用することができるが、Cr,Mn,Fe,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素を使用すると、発光特性の高い蛍光体が製造可能なので好ましい。また、付活元素Mとして少なくともEuを含むこと、特に、Euを付活元素Mの10モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上含むことが高輝度の赤色発光を示す蛍光体を得ることができるので好ましい。また、輝度を上げることや蓄光性を付与するなど様々な機能を持たせるために、付活元素MとしてはEu以外に共付活剤を1種又は複数含有させても良い。
【0024】
は、2価の金属元素であるが、Mg,Ca,Sr,Ba,及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であることが、発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましく、中でも、Mの50モル%以上がCa及び/又はSrとなるように原料を混合することが好ましく、Mの80モル%以上をCa及び/又はSrとするのがより好ましく、90モル%以上をCa及び/又はSrとするのが更に好ましく、Mの全てをCa及び/又はSrとするのが最も好ましい。
【0025】
は、3価の金属元素であるが、Al,Ga,In,及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であることが、発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましく、中でも、Mの50モル%以上がAlとなるように原料を混合することが好ましく、Mの80モル%以上をAlとするのが好ましく、90モル%以上をAlとするのがより好ましく、Mの全てをAlとするのが最も好ましい。
【0026】
は、4価の金属元素であるが、Si,Ge,Sn,Ti,Zr,Hfから選ばれる1種以上の元素であることが、発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましく、中でも、Mの50モル%以上がSiとなるように原料を混合することが好ましく、Mの80モル%以上をSiとするのが好ましく、90モル%以上をSiとするのがより好ましく、Mの全てをSiとするのが好ましい。
【0027】
特に、Mの50モル%以上がCa及び/又はSrであり、かつ、Mの50モル%以上がAlであり、かつ、Mの50モル%以上がSiとなるようにすることにより、発光特性が特に高い蛍光体が製造できるので好ましい。
【0028】
上記一般式(I)中のaは、0.00001≦a≦0.15であるが、aの値の下限としては、a≧0.0001であることが好ましく、a≧0.001であることがより好ましく、a≧0.005であることがさらに好ましく、a≧0.008であることが最も好ましい。aの値の上限としては、a≦0.1であることが好ましく、a≦0.05であることがより好ましく、a≦0.04であることがさらに好ましく、a≦0.02であることが最も好ましい。
【0029】
bは、0.5≦b≦2であるが、bの値の下限としては、b≧0.7であることが好ましく、b≧0.9であることがより好ましい。bの値の上限としては、b≦1.5であることが好ましく、b≦1.2であることがより好ましい。b=1であることが最も好ましい。
【0030】
cは、0.5≦c≦2であるが、cの値の下限としては、c≧0.7であることが好ましく、c≧0.9であることがより好ましい。cの値の上限としては、c≦1.5であることが好ましく、c≦1.2であることがより好ましい。c=1であることが最も好ましい。
【0031】
dは、0.5≦d≦2であるが、dの値の下限としては、d≧0.7であることが好ましく、d≧0.9であることがより好ましい。dの値の上限としては、d≦1.5であることが好ましく、d≦1.2であることがより好ましい。d=1であることが最も好ましい。
【0032】
eは、1.5≦e≦6であるが、eの値の下限としては、e≧2.1であることが好ましく、e≧2.7であることがより好ましい。eの値の上限としては、e≦4.5であることが好ましく、e≦3.6であることがより好ましい。
【0033】
酸素の固溶量であるfは、0<f≦1.2の範囲となるが、結晶相中の酸素量が増加すると窒素の量が減少し、それに伴って3価の金属元素Mが増加して4価の金属元素Mが減少する。fが1.2を越えると、発光波長が短波長にシフトして好ましくない。一方、酸素を全く含有しない蛍光体は、非常に高い焼成温度と高い圧力の焼成雰囲気が必要となり、製造コストが高くなるので好ましくない。fの値の下限としては、f≧0.03が好ましく、f>0.03がより好ましく、f≧0.06がさらに好ましく、f≧0.09が最も好ましい。fの値の上限としては、f≦0.8が好ましく、f≦0.5がより好ましく、f≦0.3が最も好ましい。
【0034】
また、一般式(I)において、酸素と窒素の合計モル量に対する酸素のモル量の比率を表すf/(e+f)は、0<f/(e+f)≦0.2の関係を満たす。f/(e+f)が0.2を越えると、発光強度が著しく低下すると共に、発光波長が短波長にシフトして好ましくない。一方、f/(e+f)=0の酸素を全く含有しない蛍光体は、非常に高い焼成温度と高い圧力の焼成雰囲気が必要となり、製造コストが高くなるので好ましくない。f/(e+f)の値の下限としては0.01≦f/(e+f)が好ましく、0.01<f/(e+f)がより好ましく、0.02≦f/(e+f)がさらに好ましく、0.03≦f/(e+f)が最も好ましい。f/(e+f)の値の上限としては、f/(e+f)≦0.2が好ましく、f/(e+f)≦0.15がより好ましく、f/(e+f)≦0.1が最も好ましい。
【0035】
本発明の複合窒化物蛍光体の製造方法において、原料として使用される付活元素の単体及び/又は化合物としては、付活元素の金属(単体)、酸化物、窒化物、硫化物、ハロゲン化物、水素化物の他、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの無機酸塩、しゅう酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、有機金属化合物など、付活元素が高温で蛍光体の結晶母体に取り込まれるものであれば良く、その種類に制約はない。しかし、他の窒化物原料との反応性が良い点から、付活元素の金属、酸化物、窒化物、ハロゲン化物が好ましく、特に、原料が安価に得られ蛍光体の合成温度を低下させられる点で酸化物が好ましい。
【0036】
付活元素として少なくともEuを使用する場合には、Eu原料として、Euを構成元素とするEu金属、EuOやEu等の酸化ユーロピウム、EuN、EuH、Eu、EuF、EuF、EuCl、EuCl、Eu(NO、Eu(SO、Eu(CO、Eu(C、Eu(O−i−Cなど各種化合物の1種又は2種以上を使用できるが、EuF、EuF、EuCl、EuClなどのEuハロゲン化物は結晶成長を促進する効果があるので好ましい。また、EuやEu金属も特性の高い蛍光体が合成できるので好ましい。その中でも、原料コストが安く潮解性が少なく高輝度の蛍光体を比較的低温度で合成できるEuが特に好ましい。
【0037】
付活元素以外の元素の原料、即ち、2価、3価及び4価の金属元素の原料としては、通常、それらの窒化物を使用するが、2価の金属の窒化物としては、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn等の1種又は2種以上が挙げられ、3価の金属の窒化物としては、例えば、AlN、GaN、InN、ScN等の1種又は2種以上が挙げられ、4価の金属の窒化物としては、例えば、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hf等の1種又は2種以上が挙げられ、それらの粉末を使用することが発光特性の高い蛍光体を製造できるので好ましい。
【0038】
特に、付活元素以外の2価の元素の原料として窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数が1%以上20%以下の活性が高く反応性の高い窒化物原料を使用することが、窒化物原料混合粉末間の固相反応を著しく進めることができ、その結果として、原料混合粉末を圧縮成形することなく焼成温度や焼成時の雰囲気ガス圧力を低くすることが可能となる。同様の理由で、付活元素以外の2価の元素の原料として、窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数が特に2%以上15%以下の窒化物原料、とりわけ3%以上12%以下の窒化物原料を使用することがより一層好ましい。
【0039】
これらの付活元素と金属元素を含有する原料混合粉末中の金属元素組成は、原料混合粉末中のM元素のモル比をa’、M元素のモル比をb’、M元素のモル比をc’、M元素のモル比をd’としたとき、下記の組成範囲とすることが特性の高い蛍光体を収率良く製造できるので好ましい。
0.00001≦a’≦0.15
0.5≦b’≦2
0.5≦c’≦2
0.5≦d’≦2
【0040】
また、下記の金属元素組成比となるように原料混合粉末中の金属元素組成を調整しても発光特性の良い蛍光体が得られる。
0.00001≦a’≦0.15
a’+b’=1
0.2≦c’≦10
0.2≦d’≦5
【0041】
上記金属元素組成において、a’が0.00001より小さいと十分な発光強度が得られない。a’が0.15より大きいと濃度消光が大きくなって発光強度が低くなる。同様の理由で、下限としては、a’≧0.0001が好ましく、a’≧0.001がより好ましく、a’≧0.005がさらに好ましく、a’≧0.008となるように原料混合粉末の金属元素組成を調整することがもっとも好ましい。上限としては、a’≦0.1が好ましく、a’≦0.05がより好ましく、a’≦0.04がさらに好ましく、a’≦0.02となるように原料混合粉末の金属元素組成を調整することが最も好ましい。
【0042】
a’とb’の合計は、蛍光体の結晶母体中において付活元素Mが2価の金属元素Mの原子位置を置換するので、1となるように原料混合組成を調整する。
【0043】
c’が0.2より小さいとMで表される蛍光体の製造時の収率が低くなる傾向がある。一方、10より大きい場合にも前記蛍光体の収率が低くなる傾向がある。従って、c’は通常、0.2≦c’≦10の範囲となるように原料を混合する。しかし、発光強度の観点からはc’の下限としては、c’≧0.4が好ましく、c’≧0.5がより好ましく、c’≧0.6がさらに好ましく、c’≧0.8が最も好ましい。上限としては、c’≦5が好ましく、c’≦2.5がより好ましく、c’≦2がさらに好ましく、c’≦1.8が最も好ましい。
【0044】
d’が0.2より小さいと、前記一般式(I)のMで表される蛍光体の収率が低くなる傾向がある。一方、d’が5より大きい場合にも前記蛍光体の収率が低くなる傾向がある。従って、dは通常、0.2≦d’≦5の範囲となるように原料を混合する。しかし、発光強度の観点からはd’の下限としては、d’≧0.4が好ましく、d’≧0.5がより好ましく、d’≧0.6がさらに好ましく、d’≧0.8が最も好ましい。上限としては、d’≦2.5が好ましく、d’≦2がより好ましく、d’≦1.7がさらに好ましく、≦d’≦1.2が最も好ましい。
【0045】
上記の様な金属元素組成比となるように原料混合粉末の組成を調整することにより、発光特性の高い、前記一般式(I)のMで表される蛍光体を収率良く製造することが可能となる。
【0046】
なお、原料混合粉末の調製量により、所望の前記一般式(I)のMで表される蛍光体以外の不純物が生成される場合があるが、その場合は、前記一般式(I)で表される所望のM蛍光体の生成量が、20重量%以上となるように原料混合粉末の金属元素組成を調整することが好ましい。また、前記一般式(I)で表される所望のM蛍光体の生成量が、50重量%以上となるように原料混合粉末の金属元素組成を調整することがより好ましく、80重量%以上となるように調整することが更に好ましく、不純物を含まずMで表される蛍光体が単相として生成するように原料混合粉末の金属元素組成を調整するのが最も好ましい。
【0047】
本発明においては、原料混合粉末の金属元素組成を好ましくは上述の如く調整した上で、原料中酸素存在割合が1%以上20%以下となるように酸素を焼成時において存在させることにより、窒化物原料粉末間の固相反応を促進させ、低温度での蛍光体の製造を可能とする。
【0048】
ここで、原料中酸素存在割合が1%未満であると、窒化物原料間の固相反応が促進せずに比較的低温での蛍光体の合成が難しくなる。また、原料中酸素存在割合が20%を越えると、蛍光体の発光強度が低下すると共に好ましい発光色が得られない。特に、少なくとも付活元素としてEuを含有する蛍光体の場合には、原料中酸素存在割合が20%を越えると発光波長が短波長となり所望の赤色発光を示す蛍光体が得られない。同様の理由で、原料中酸素存在割合は、2%以上15%以下とするのが好ましい。
【0049】
焼成時にこのような原料中酸素存在割合で酸素を存在させる方法としては、
(1) 原料窒化物として酸素を所望の濃度だけ含有するものを被焼成原料とする方法
(2) 原料窒化物を予め酸素含有雰囲気下で加熱して酸素を所望の濃度だけ含有させて被焼成原料とする方法
(3) 原料窒化物粉末に酸素含有化合物粉末を混合させて被焼成原料とする方法
(4) 原料窒化物を焼成する際に焼成雰囲気に酸素を含有させて焼成時に原料窒化物を酸化させることにより、被焼成原料中に酸素を導入する方法
などが挙げられるが、工業的に安定に高輝度の蛍光体を製造するためには、(1)原料窒化物として酸素を所望の濃度だけ含有するものを被焼成原料とする方法や、(3)原料窒化物粉末に酸素含有化合物粉末を混合させて被焼成原料とする方法が好ましく、特に、上記(1)の方法と(3)の方法を併用して、原料窒化物として酸素を所望の濃度だけ含有する被焼成原料を使用すると共に、原料窒化物粉末に酸素含有化合物粉末を混合させて用いる方法がより好ましい。
【0050】
この場合、酸素含有化合物粉末としては、焼成時に金属酸化物になる物質から選ばれる。これらの物質としては、各金属、即ち、原料窒化物を構成する金属の酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの無機酸塩、しゅう酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、酸素含有有機金属化合物などが使用できるが、酸素の濃度を制御しやすく焼成雰囲気中への不純物ガスの同伴を低く抑制できる点から金属酸化物を使用することが好ましい。
【0051】
原料中酸素存在割合は、全原料の化学分析を実施することで容易に判別できる。特に、窒素と酸素の濃度を分析することにより、窒素と酸素の比率を決定できる。また、それらの分析値から前記一般式におけるeとfと比率f/(e+f)を決定することができる。
【0052】
原料の混合は、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機を用いて粉砕した後、原料粉末を十分に均一に混合できる通常の方法が使用できる。これらの方法としては、ボールミル、パールミル、振動ボールミルなど分散メディアを使用する方法、V型ブレンダーなど重力を利用する方法、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の撹拌翼を有する混合機を利用する方法などが挙げられる。原料を混合する際は、原料粉末を乾式粉砕機を用いて粉砕し混合する乾式法、又は、水等の媒体中に原料粉末を加え湿式粉砕機を用いて粉砕し混合する方法があるが、窒化カルシウムなど水と反応しやすい原料粉末を使用する際は乾式混合することが好ましい。
【0053】
原料混合粉末の焼成に用いる容器としては、従来から高温焼成で使用されてきた様々な耐熱容器が使用できるが、中でも窒化硼素製の坩堝やトレイ等の耐熱容器を使用すると、原料の窒化物との反応性が低く不純物濃度が低いために発光特性の良好な蛍光体が得られるので好ましい。
【0054】
焼成装置としては、通常、不活性雰囲気や還元雰囲気を保つことが可能な各種の高温焼成炉を使用する。中でも酸素濃度を精密に制御可能な高温焼成炉が好ましく、炭素製のヒーターと炭素製の断熱材を有する焼成炉で酸素濃度を0.1%以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下に制御できる密閉容器を有する焼成炉が特に好ましい。
【0055】
本発明においては、付活元素の単体及び/又は化合物、2価の金属の窒化物、3価の金属の窒化物、並びに、4価の金属の窒化物よりなる原料混合粉末を、嵩密度0.05g/cm以上1g/cm以下の状態として焼成する。この焼成時の原料混合粉末の嵩密度が小さすぎると原料粉末間の接触面積が小さいために固相反応が進みにくく、好ましい蛍光体を合成し得ない不純物相が多量に残存するものとなる。一方、嵩密度が大きすぎると、得られる蛍光体は硬い焼結体となってしまい、焼成後に長時間の粉砕工程が必要となるばかりでなく、蛍光体の輝度が低下するという問題が発生する。原料混合粉末を嵩密度0.05g/cm以上1g/cm以下の状態として焼成する場合には、焼成後に得られる蛍光体には不純物相が少なく、好ましい発光特性を示す結晶相を多量に含有し、しかもその焼成により得られる粉末から比較的短時間の粉砕工程により輝度の高い蛍光体微粉末を得ることができる。同様の理由で焼成時の原料混合粉末の嵩密度の下限は、0.15g/cm以上が好ましく、0.25g/cm以上がより好ましい。上限は、0.8g/cm以下が好ましく、0.6g/cm以下がより好ましい。
【0056】
本発明において、原料混合粉末の焼成温度は、1200℃以上1750℃以下とする。焼成温度が1200℃未満では原料混合粉末を加熱しても固相反応が進みにくく目的の蛍光体を合成できない。一方、1750℃を超える温度で焼成すると、無駄な焼成エネルギーを消費してしまうだけでなく、出発原料や生成物質からの窒素の揮散が多くなり、雰囲気ガスの一部となる窒素の圧力を非常に高くしないと目的の蛍光体を製造できない。同様の理由で、焼成温度の下限は、1300℃以上が好ましく、1400℃以上がより好ましく、1500℃以上がさらに好ましい。上限は、1700℃以下が好ましく、1650℃以下がより好ましく、1650℃以下がさらに好ましい。
【0057】
また、本発明においては、原料混合粉末の焼成雰囲気は、基本的には不活性雰囲気又は還元性雰囲気とするが、酸素濃度が0.1〜10ppmの範囲の微量酸素を含有する雰囲気とすることで比較的低温での蛍光体の合成が可能となるので好ましい。しかし、酸素濃度が0.1%を越えるような酸素含有ガス中や大気中など酸化雰囲気下で焼成すると原料及び生成物からの窒素の揮散が多くなり、目的の蛍光体を得ることができない。
【0058】
また、焼成時の雰囲気ガスの圧力は、通常20気圧(2MPa)以下とする。20気圧を越える圧力にするには頑強な耐熱容器からなる高温焼成設備が必要となり、焼成に必要となるコストが高くなり好ましくない。高温耐圧焼成炉の装置コストを下げるために雰囲気ガス圧力を10気圧(1MPa)以下とするのが好ましく、10気圧未満とするのがより好ましく、9.5気圧(0.95MPa)以下とするのがさらに好ましく、9気圧(0.9MPa)以下とするのが特に好ましい。また、装置コストを下げ、窒素の揮散を防止するには0.5気圧(0.05MPa)以上2気圧(0.2MPa)以下とするのが好ましい。焼成炉の設備費をより安価にするためには、雰囲気ガス圧力は0.9気圧(0.09MPa)から1.5気圧(0.15MPa)とするのが更に好ましい。大気中の酸素の混入を防ぐためには1気圧(0.1MPa)をわずかに越え1.2気圧(0.12MPa)以下とするのが特に好ましい。焼成炉の密閉性が悪い場合には、1気圧(0.1MPa)以下にすると多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることが難しい。
【0059】
また、焼成時の最高温度での保持時間は、通常1分間以上100時間以下とする。保持時間が短すぎると原料混合粉末間の固相反応が十分に進まずに目的の蛍光体が得られない。また、保持時間が長すぎる場合には、無駄な加熱エネルギーが消費されるだけではなく、蛍光体の表面から窒素が脱離して蛍光特性が低下する。同様の理由により、保持時間の下限は、10分間以上とするのが好ましく、30分間以上とするのがより好ましい。上限は、24時間以下とするのが好ましく、12時間以下とするのがより好ましい。
【実施例】
【0060】
本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
原料粉末として、Eu粉末、窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数で示される酸素含有量9モル%のCa粉末、同酸素含有量2モル%のSi粉末、同酸素含有量2モル%のAlN粉末を使用し、金属元素組成比(モル比)がEu:Ca:Al:Si=0.008:0.992:1:1となるように各粉末を秤量し、混合して原料混合粉末を得た。この原料混合粉末の窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数で示される酸素含有量は、5モル%であった。なお、Ca粉末は酸素を所望の濃度だけ含有するものを被焼成原料とすることにより酸素を含有させたものであり、Si粉末は酸素を所望の濃度だけ含有するものを被焼成原料とすることにより酸素を含有させたものであり、AlN粉末は酸素を所望の濃度だけ含有するものを被焼成原料とすることにより酸素を含有させたものである。
【0062】
この原料混合粉末を圧縮せずに、嵩密度0.35g/cmとなるように窒化硼素製坩堝に入れ、酸素濃度を10ppm以下にした高純度窒素雰囲気中にて窒素圧力1.1気圧として電気炉を使用して1600℃で10時間焼成した。このとき、焼成時の原料中酸素存在割合は、各原料中の酸素濃度と各原料の混合割合から算出することにより5モル%である。
【0063】
得られた蛍光体中に生成している結晶相を粉末X線回折法で同定した結果、CaAlSiNの結晶が生成していることが確認された。蛍光分光光度計でこの蛍光体の波長465nm励起による蛍光特性を測定したところ、市販のCe付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体のピーク強度を100とした場合に、得られた蛍光体のピーク強度は128と発光強度が高く、ピーク波長652nmの赤色光を示した。また、得られた蛍光体試料20mgをスズカプセルに投入し、これをニッケルバスケットに入れたものを、LECO社製TC−436型酸素窒素分析計を用いて、粉体試料中の窒素と酸素の濃度を分析したところ、窒素と酸素との合計において、窒素94モル%と酸素6モル%を含有していた(即ち、f/(e+f)=0.06)。
【0064】
[実施例2]
Euの代わりにEuFを用いたこと以外は、実施例1と同様にして蛍光体粉末を得た。この原料混合粉末の窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数で示される酸素含有量は、5モル%だった。また、焼成時の原料中酸素存在割合は、各原料中の酸素濃度と各原料の混合割合から算出することにより5モル%である。
【0065】
得られた蛍光体中に生成している結晶相を粉末X線回折法で同定した結果、CaAlSiNの結晶が生成していることが確認された。蛍光分光光度計でこの蛍光体の波長465nm励起による蛍光特性を測定したところ、市販のCe付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体のピーク強度を100とした場合に、得られた蛍光体のピーク強度は114と発光強度が高く、ピーク波長650nmの赤色光を示した。また、得られた蛍光体試料20mgをスズカプセルに投入し、これをニッケルバスケットに入れたものを、LECO社製TC−436型酸素窒素分析計を用いて、粉体試料中の窒素と酸素の濃度を分析したところ、窒素と酸素との合計において、窒素95モル%と酸素5モル%を含有していた(即ち、f/(e+f)=0.05)。
【0066】
[実施例3]
Euの代わりにEuNを用い、焼成時間を2時間としたこと以外は、実施例1と同様にして蛍光体粉末を得た。この原料混合粉末の窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数で示される酸素含有量は、5モル%だった。また、焼成時の原料中酸素存在割合は、各原料中の酸素濃度と各原料の混合割合から算出することにより5モル%である。
【0067】
得られた蛍光体中に生成している結晶相を粉末X線回折法で同定した結果、CaAlSiNの結晶が生成していることが確認された。蛍光分光光度計でこの蛍光体の波長465nm励起による蛍光特性を測定したところ、市販のCe付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体のピーク強度を100とした場合に、得られた蛍光体のピーク強度は112と発光強度が高く、ピーク波長649nmの赤色光を示した。また、得られた蛍光体試料20mgをスズカプセルに投入し、これをニッケルバスケットに入れたものを、LECO社製TC−436型酸素窒素分析計を用いて、粉体試料中の窒素と酸素の濃度を分析したところ、窒素と酸素との合計において、窒素95モル%と酸素5モル%を含有していた(即ち、f/(e+f)=0.05)。
【0068】
[実施例4]
Euの代わりにEuNを用い、窒素圧カを10気圧、焼成時間を2時間としたこと以外は、実施例1と同様にして蛍光体粉末を得た。この原料混合粉末の窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数で示される酸素含有量は、5モル%だった。また、焼成時の原料中酸素存在割合は、各原料中の酸素濃度と各原料の混合割合から算出することにより5モル%である。
【0069】
得られた蛍光体中に生成している結晶相を粉末X線回折法で同定した結果、CaAlSiNの結晶が生成していることが確認された。蛍光分光光度計でこの蛍光体の波長465nm励起による蛍光特性を測定したところ、市販のCe付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体のピーク強度を100とした場合に、得られた蛍光体のピーク強度は109と発光強度が高く、ピーク波長650nmの赤色光を示した。また、得られた蛍光体試料20mgをスズカプセルに投入し、これをニッケルバスケットに入れたものを、LECO社製TC−436型酸素窒素分析計を用いて、粉体試料中の窒素と酸素の濃度を分析したところ、窒素と酸素との合計において、窒素95モル%と酸素5モル%を含有していた(即ち、f/(e+f)=0.05)。
【0070】
上記の結果を表1にまとめて示す。
【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の複合窒化物蛍光体の製造方法により、高輝度の発光を示し使用時の劣化の少ない複合窒化物蛍光体を安価に提供することが可能になる。本発明の製造方法により生産される複合窒化物蛍光体は、従来のサイアロン蛍光体より高輝度に発光し、特にEuを付活元素として選択した場合には、高輝度で長波長の赤色発光を示す。また、励起源に曝された場合でも、この蛍光体は、輝度が低下することがない。従って、本発明により製造される複合窒化物蛍光体は、蛍光灯、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付活元素の単体及び/又は化合物、2価の金属の窒化物、3価の金属の窒化物、並びに、4価の金属の窒化物を含む原料混合粉末を焼成して、下記一般式(I)で示される微量酸素を含有する複合窒化物蛍光体を製造する方法であって、
原料混合粉末を嵩密度0.05g/cm以上1g/cm以下の状態とし、
焼成温度を1200℃以上1750℃以下とし、
被焼成原料中の窒素と酸素の合計モル数に対する酸素のモル数が1%以上20%以下となるように被焼成原料中に酸素を存在させて
焼成することを特徴とする複合窒化物蛍光体の製造方法。
(I)
(一般式(I)において、Mは付活元素、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素であり、a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
0.5≦b≦2
0.5≦c≦2
0.5≦d≦2
1.5≦e≦6
0<f≦1.2
0<f/(e+f)≦0.2)

【公開番号】特開2011−32488(P2011−32488A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245274(P2010−245274)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【分割の表示】特願2007−195569(P2007−195569)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】