説明

複合粒子の製造方法及び複合粒子

【課題】基材粒子と該基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を、高い効率で容易に製造することができる複合粒子の製造方法を提供する。また、該複合粒子の製造方法により製造された複合粒子を提供する。
【解決手段】基材粒子と前記基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を製造する方法であって、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を調製する工程と、前記疎水化子粒子と重合性単量体とを混合して重合性単量体混合物を調製する工程と、前記重合性単量体混合物を親水性媒体中に分散させて重合性単量体混合物液滴の分散液を調製する工程と、前記重合性単量体混合物液滴において前記疎水化子粒子を表面に偏在させる工程と、前記疎水化子粒子が表面に偏在した重合性単量体混合物液滴を重合させて複合粒子を得る工程とを有する複合粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材粒子と該基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を、高い効率で容易に製造することができる複合粒子の製造方法に関する。また、該複合粒子の製造方法により製造された複合粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
基材粒子の表面の一部を子粒子により被覆した粒子(以下、「複合粒子」ともいう。)は、基材粒子に耐熱性、耐磨耗性、絶縁性、導電性、撥水性、接着性、分散性、光沢、着色等の性能を付与することができ、種々の充填剤、改質剤としてフィルム、粘着剤、接着剤、塗料等に用いられたり、又は、化粧品の基材等としても好適に用いられている。
【0003】
複合粒子を製造する方法として、例えば、特許文献1には、重合性液滴の表面に子粒子を付着させた後、該重合性液滴を重合させる方法が開示されている。この方法によれば、基材粒子の表面に子粒子を強固に結合させることができるとともに、基材粒子表面への子粒子の付着量を制御することができる。しかしながら、この方法では、重合性液滴を分散させた分散液中に、大量の子粒子を添加する必要があり、添加した子粒子の大部分は付着に供されないという問題があった。
【0004】
特許文献2には、ハイブリダイザ等を用いて基材粒子の表面に子粒子を衝突させることにより付着される方法(メカノケミカル法)が記載されている。しかしながら、この方法では、衝突時の衝撃により基材粒子や子粒子が変形してしまう恐れがあり、均一な粒径や形状の複合粒子が得にくいという問題があった。また、基材粒子と子粒子との結合が物理的な結合力のみでなることから極めて弱く、単粒子化工程や媒体中への分散工程等において子粒子が基材粒子から剥がれ落ちてしまうことがあるという問題もあった。
【0005】
特許文献3には、樹脂粒子と金属及び/又は金属酸化物粒子とを水中または有機溶媒中へ分散させ、疎水性相互作用又はイオン相互作用により、金属及び又は金属酸化物粒子を樹脂粒子表面へ集積させる方法も知られている。しかし、この方法の場合、樹脂粒子と金属及び又は金属酸化物粒子間が点接触となるため結合力が弱く、弱い衝撃等でも金属及び又は金属酸化物層が剥がれやすいという問題もあった。
【特許文献1】特開平9−319144号公報
【特許文献2】特開平5−220375号公報
【特許文献3】特開2006−41252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基材粒子と該基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を、高い効率で容易に製造することができる複合粒子の製造方法を提供することを目的とする。また、該複合粒子の製造方法により製造された複合粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材粒子と前記基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を製造する方法であって、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を調製する工程と、前記疎水化子粒子と重合性単量体とを混合して重合性単量体混合物を調製する工程と、前記重合性単量体混合物を親水性媒体中に分散させて重合性単量体混合物液滴の分散液を調製する工程と、前記重合性単量体混合物液滴において前記疎水化子粒子を表面に偏在させる工程と、前記疎水化子粒子が表面に偏在した重合性単量体混合物液滴を重合させて複合粒子を得る工程とを有する複合粒子の製造方法である。
なお、本明細書において「基材粒子と前記基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子」の「被覆」とは、基材粒子の表面近傍に被覆粒子が存在する状態を示し、基材粒子の表面外側に子粒子が存在する状態及び基材粒子の表面内側から内接するように子粒子が存在する状態をも含む。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の複合粒子の製造方法では、まず、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を調製する工程を行う。上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子は、得られる複合粒子の子粒子を形成するものである。
【0009】
上記金属微粒子を構成する金属は特に限定されず、例えば、8族〜11族、14族の金属及びこれらを主成分とした合金が挙げられる。具体的には、例えば、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、珪素、ゲルマニウム、錫、及び、半田等の合金が挙げられる。
【0010】
上記金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物は特に限定されず、例えば、4族〜14族の金属の酸化物及びその合金の酸化物や、他の金属をドーピングされた酸化物等が挙げられる。具体的には、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化(インジウム−錫)、酸化(亜鉛−アルミニウム)、酸化(亜鉛−ガリウム)等が挙げられる。
【0011】
本発明の複合粒子を導電性粒子として用いる場合には、上記金属微粒子は、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、半田からなることが好ましく、上記金属酸化物微粒子は、酸化(インジウム−錫)、酸化(亜鉛−アルミニウム)、酸化(亜鉛−ガリウム)からなることが好ましい。
【0012】
本発明の複合粒子を化学反応触媒として用いる場合には、上記金属微粒子は、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金からなることが好ましく、上記金属酸化物微粒子は、酸化チタンからなることが好ましい。
【0013】
本発明の複合粒子を分離用粒子や分析用粒子として用いる場合には、上記金属微粒子は、金、銀、白金からなることが好ましく、上記金属酸化物微粒子は、酸化珪素、酸化鉄からなることが好ましい。
【0014】
本発明の複合粒子を化粧品用として用いる場合には、上記金属酸化物微粒子は、酸化珪素、酸化チタン、酸化鉄からなることが好ましい。
【0015】
上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の粒径の好ましい下限は5nmである。上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の粒径が5nm未満であると、導電性、触媒特性等の効果が期待できなくなることがある。上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の粒径の好ましい上限は、基材粒子の粒径の20%である。上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の粒径が基材粒子の20%を超えると、後述する重合性単量体混合物液滴において、金属微粒子又は金属酸化物微粒子が表面に偏在しにくくなることがある。
【0016】
上記疎水性官能基は、上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学結合して疎水化させる性質を有するものであれば特に限定されない。例えば、アルキル基、アルキリデン基、アルキリジン基、アルカニル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリル基、アリールアルキル基、アリーレン基、アレーン基、アルカリール基、アクリロイル基、アルケニル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0017】
上記疎水性官能基は、重合性官能基であることが好ましい。上記疎水性官能基が重合性官能基である場合には、得られる複合粒子において基材粒子と該基材粒子を被覆する子粒子とを共有結合させて、より強固に接合させることができる。
上記重合性官能基は、例えば、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。なかでも、後述する重合性単量体との共重合性が良好であることから、アクリロイル基又はメタクリロイル基が好適に用いられる。
【0018】
上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を得る方法は特に限定されない。一段の化学反応であってもよく、多段の化学反応であってもよい。
例えば、金属微粒子は多くの場合、最表層部に酸化皮膜を形成している。従って、例えば、金属微粒子又は金属酸化物粒子を、アルカリ処理等することにより表面に容易にヒドロキシル基を導入することができる。このようなヒドロキシル基が導入された金属微粒子又は金属酸化物微粒子と、該ヒドロキシル基と反応する基と疎水性官能基とを有する化合物とを反応させることにより、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に疎水性官能基を導入することができる。
【0019】
上記ヒドロキシル基と反応する基と疎水性官能基とを有する化合物は、例えば、アルコキシシリル基と疎水性官能基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を得る方法は、アミノプロピルトリエトキシシラン等を用いて金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面にアミノ基を導入した後、エチレングリコールジアクリレート等によりアクリロイル基を導入したり(マイケル付加反応)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応してメタクリロイル基を導入したりする方法も挙げられる。
【0021】
上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を得る方法は、イオン結合を形成する官能基と疎水性官能基とを有する化合物を金属微粒子又は金属酸化物微粒子と反応させる方法も挙げられる。
上記イオン結合を形成する官能基は、例えば、ビニルピリジン、アクリルアミド、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を得る方法は、p−アミノチオフェノール等を用いて金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面にアミノ基を導入し、エチレングリコールジアクリレート(マイケル付加反応)や2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等を反応させ、アクリロイル基やメタクリロイル基を導入するといった、多段化学反応による導入方法が例示される。
【0023】
本発明の複合粒子の製造方法では、次いで、上記疎水化子粒子と重合性単量体とを混合して重合性単量体混合物を調製する工程を行う。上記重合性単量体は、基材粒子を形成するものである。
上記疎水化子粒子は疎水性表面を有することから、上記重合性単量体との親和性が高く、均一に分散させることができる。
【0024】
上記重合性単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、メチルペンテン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素、フッ化ビニル、塩化ビニル等のハロゲン化ビニルや、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ビニルや、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートおよび、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに変えた、(メタ)アクリレートや、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテルや、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステルや、γ―(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体や、(メタ)アクリロニトリル、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0025】
上記重合性単量体は、例えば、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等の親水性単量体も併用してもよい。
【0026】
上記重合性単量体混合物における上記疎水化子粒子の添加量は、目的とする複合粒子の被覆率等から適宜選択する。上記疎水化子粒子の添加量の好ましい下限は上記重合性単量体100重量部に対して1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記疎水化子粒子の添加量が1重量部未満であると、実質的に子粒子層が形成されないことがあり、10重量部を超えると、上記重合性単量体中に上記疎水化子粒子が充分に均一に混合できないことがある。
【0027】
本発明の複合粒子の製造方法では、次いで、上記重合性単量体混合物を媒体中に分散させて重合性単量体混合物液滴の分散液を調製する工程を行う。
上記媒体は、上記重合性単量体と非相溶であれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、及び、これらの混合液等が挙げられる。なかでも、取り扱いが容易なことから水が好適である。
【0028】
上記媒体中に上記重合性単量体混合物液滴を安定して分散させるためには、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン、セルロース等の分散安定剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤や、アルキルスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤や、アルキルアンモニウム塩酸塩等のカチオン性界面活性剤等を添加することが好ましい。
また、上記媒体中には、更に、補助安定剤、pH調整剤、老化防止剤、酸化防止剤、防腐
剤等を通常懸濁重合法や乳化重合法において用いられる添加剤を加えてもよい。
【0029】
上記重合性単量体混合物液滴が媒体中に分散した分散液を調製する方法は特に限定されないが、上記重合性単量体混合物を媒体に添加し、攪拌により重合性液滴とする方法や、重合性単量体混合物を微細なノズルや口径の揃った多孔膜等より媒体中に押し出す方法等が挙げられる。
上記攪拌の際には、通常の攪拌羽根の他に、ホモミキサー、ホモジナイザー等用いてもよ
いし、この際に超音波を併用してもよい。
基材粒子の粒径は分散液中の重合性単量体混合物液滴の粒径に依存するため、分散安定剤及び又は界面活性剤の種類や量、又は、撹拌の方法や強度、ノズル径や口径等により容易に制御することができる。
【0030】
本発明の複合粒子の製造方法では、次いで、上記重合性単量体混合物液滴において上記疎水化子粒子を表面に偏在させる工程を行う。
金属微粒子又は金属酸化物粒子は、水相中で調整される場合が多く、親水性表面を有することが多い。また、気相法で調整された金属微粒子又は金属酸化微粒子も、その多くは表面が酸化されて親水性表面を有する。
上述のように上記疎水化子粒子は、表面に疎水性官能基が結合していることにより疎水化されている一方、もともとの金属微粒子又は金属酸化物微粒子の水酸基等により、上記重合性単量体混合物液滴中に安定して分散している一方、親水性媒体に対する親和性も有することから、次第に媒体に近い重合性単量体混合物液滴の表面付近に偏在してくる。
【0031】
本工程は、具体的には、上記分散液を調製する工程後に一定時間撹拌を継続することにより行う。上記撹拌時間は、上記疎水化子粒子が上記重合性単量体混合物液滴中を移動する速度や、目的とする複合粒子の形状等を勘案して適宜選択する。上記撹拌時間の好ましい下限は10分、好ましい上限は12時間である。上記撹拌時間が10分未満であると、上記疎水化子粒子がほとんど上記重合性単量体混合物液滴の表面付近に偏在せず、子粒子が形成されないことがあり、12時間を超えて撹拌を行っても、それ以上の変化はほとんど期待できない。
【0032】
本発明の複合粒子の製造方法では、次いで、上記疎水化子粒子が表面に偏在した重合性単量体混合物液滴を重合させて複合粒子を得る工程を行う。上記疎水化子粒子が表面に偏在した状態で重合性単量体混合物液滴を重合させることにより、基材粒子の表面が子粒子で被覆された形状の複合粒子が得られる。
【0033】
上記重合は、具体的には例えば、重合開始剤を用いて加熱又は光を照射することにより開始させる。上記加熱温度としては、用いる重合性単量体の組成や分子量、重合開始剤の種類や量等によって適宜決定されるが、通常は30〜100℃の範囲で行なわれる。
【0034】
上記重合開始剤は、上記重合性単量体混合物液滴中に含有されていてもよく、媒体中に溶解してもよい。上記重合性単量体混合物液滴中に含有させる場合には、重合性単量体混合物に溶解させた後、上記重合性単量体混合物液滴を調製する方法が挙げられる。また、媒体中に溶解させる場合には、予め媒体中に重合開始剤を溶解しておくか、上記重合性単量体混合物液滴を調製後、媒体と同じ液に溶解させ、上記重合性単量体混合物液滴の分散液に添加する方法が挙げられる。
【0035】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物や、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾアミド化合物や、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]、これらの塩酸塩、硫酸塩等の環状アゾアミド化合物や、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]等のアゾアミジン化合物;2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾカルボン酸化合物や、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)等のアゾオキシム化合物等が挙げられる。
【0036】
本発明の複合粒子の製造方法によれば、基材粒子と該基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を容易に製造することができる。また、子粒子の原料となる金属微粒子又は金属酸化物粒子の使用を必要最小限に抑えることができる。
本発明の複合粒子の製造方法では、従来の懸濁重合、乳化重合等の手法を応用することにより、容易に基材粒子の大きさを調整することができ、また、子粒子の原料とする金属微粒子又は金属酸化物微粒子の添加量を調整等することにより、子粒子による被覆の数や密度を制御することができる。更に、本発明の複合粒子の製造方法により得られた複合粒子では、基材粒子と子粒子との結合が強い。
【0037】
本発明の複合粒子の製造方法により製造されたものである複合粒子もまた、本発明の1つである。
本発明の複合粒子は、分析/分離用カラム充填剤、分析用試薬、導電粒子、化学反応触媒、化粧品材料等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、基材粒子と該基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を、高い効率で容易に製造することができる複合粒子の製造方法を提供することができる。また、該複合粒子の製造方法により製造された複合粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
(1)疎水化子粒子の調製
平均粒径450nmのコロイダルシリカ(日産化学社製)10gをメタノール300mLに超音波照射下で分散させ、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10gを添加し、60℃で24時間加熱撹拌した。反応終了後、メタノールで洗浄、乾燥することにより、表面疎水化子粒子を得た。
【0041】
(2)複合粒子の製造
スチレン25mL、エチレングリコールジメタクリレート25mL及びアゾビスイソブチロニトリル500mgの混合液に、得られた疎水化子粒子2.5gを加え、超音波照射下で分散させて重合性単量体混合物を得た。
【0042】
予めポリビニルアルコール(シグマ−アルドリッチ社製)20gを溶解させた蒸留水500mLに、得られた重合性単量体混合物の全量を添加した後、室温で1時間、240PRMの速度で撹拌して、疎水化子粒子を重合性単量体混合物液滴と蒸留水との界面に偏在させた。その後、窒素気流下、60℃で24時間重合させ、メタノールで洗浄することにより、複合粒子を得た。
【0043】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた複合粒子を観察したところ、平均粒径は120μmであり、均一な子粒子層が形成されていた。
得られた複合粒子の表面の電子顕微鏡写真を図1に、断面の電子顕微鏡写真を図2に示した。
【0044】
(実施例2)
(1)疎水化子粒子の調製
平均粒径5μmのシリカ粒子(日産化学社製)10gをトルエン300mLに超音波照射下で分散させ、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10gを添加し、110度で24時間環流撹拌した。反応終了後、メタノールで洗浄、乾燥することにより、疎水化子粒子を得た。
【0045】
(2)複合粒子の製造
スチレン25mL、エチレングリコールジメタクリレート25mL及びアゾビスイソブチロニトリル500mgの混合液に、得られた疎水化子粒子10gを加え、超音波照射下で分散させて重合性単量体混合物を得た。
【0046】
予めポリビニルアルコール(シグマ−アルドリッチ社製)20gを溶解させた蒸留水500mLに、得られた重合性単量体混合物の全量を添加した後、室温で1時間、240PRMの速度で撹拌して、疎水化子粒子を重合性単量体混合物液滴と蒸留水との界面に偏在させた。その後、窒素気流下、60℃で24時間重合させ、メタノールで洗浄することにより、複合粒子を得た。
【0047】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた複合粒子を観察したところ、平均粒径は250μmであり、均一な子粒子層が形成されていた。
得られた複合粒子の表面の電子顕微鏡写真を図3に、断面の電子顕微鏡写真を図4に示した。
【0048】
(比較例1)
スチレン25mL、エチレングリコールジメタクリレート25mL及びアゾビスイソブチロニトリル500mgの混合して重合性単量体混合物を得た。
ポリビニルアルコール20gを蒸留水500gに溶解させ、平均粒径450nmのコロイダルシリカ(日産化学社製)2.5gを超音波照射下で分散させた後、得られた重合性単量体混合物の全量を添加し、室温で1時間、240RPMの速度で撹拌した。その後、窒素気流下、60℃で24時間重合させ、メタノールで洗浄することにより、複合粒子を得た。
【0049】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた複合粒子を観察したところ、平均粒径は150μmであり、粒子の表面に極少量の子粒子が不均一に付着していた。
【0050】
(比較例2)
スチレン25mL、エチレングリコールジメタクリレート25mL及びアゾビスイソブチロニトリル500mgの混合して重合性単量体混合物を得た。
ポリビニルアルコール20gを蒸留水500gに溶解させ、平均粒径5μmのシリカ粒子(日産化学社製)10gを超音波照射下で分散させた後、得られた重合性単量体混合物の全量を添加し、室温で1時間、240RPMの速度で撹拌した。その後、窒素気流下、60℃で24時間重合させ、メタノールで洗浄することにより、複合粒子を得た。
【0051】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた複合粒子を観察したところ、平均粒径は160μmであり、粒子の表面には子粒子はほとんど認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、基材粒子と該基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を、高い効率で容易に製造することができる複合粒子の製造方法を提供することができる。また、該複合粒子の製造方法により製造された複合粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1で得られた複合粒子の表面の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られた複合粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例2で得られた複合粒子の表面の電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例2で得られた複合粒子の断面の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と前記基材粒子を被覆する子粒子とからなる複合粒子を製造する方法であって、
金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を調製する工程と、
前記疎水化子粒子と重合性単量体とを混合して重合性単量体混合物を調製する工程と、
前記重合性単量体混合物を親水性媒体中に分散させて重合性単量体混合物液滴の分散液を調製する工程と、
前記重合性単量体混合物液滴において前記疎水化子粒子を表面に偏在させる工程と、
前記疎水化子粒子が表面に偏在した重合性単量体混合物液滴を重合させて複合粒子を得る工程とを有する
ことを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項2】
疎水性官能基は、重合性官能基であることを特徴とする請求項1記載の複合粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の複合粒子の製造方法により製造されたものであることを特徴とする複合粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−138302(P2010−138302A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316531(P2008−316531)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年9月9日 社団法人高分子学会発行の「第57回高分子討論会 高分子学会予稿集第57巻」に発表
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】