説明

複合繊維及びその製造方法

【課題】光の入射方向に依存することなく、長さ方向を軸としたほぼ全周囲方向において発色し、該発色が劣化しにくい複合繊維及び該複合繊維の製造方法の提供。
【解決手段】長さ方向に直交する断面形状が略円形である芯材の樹脂層上に、長さ方向に直交する断面形状が略円環形である樹脂層を3層以上有してなり、該樹脂層のうちの隣接する2つの樹脂層の屈折率差の絶対値が0より大きい複合繊維である。該隣接する2つの樹脂層の屈折率差の絶対値が、0.05以上である態様、樹脂層の数が60以下である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光等の光が照射されたときに発色が観られる複合繊維及び該複合繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノテクノロジーの進展に伴って、構造性発色を発現する構造体を、衣服や化粧品などの審美性が要求される素材に利用する技術が提案されている。
前記構造性発色とは、それ自体に着色剤や発色剤を含んでいないにもかかわらず、その反射光に発色が観られることがあり、この場合の光を反射する構造体に生ずる発色を意味する。その発色原理としては、前記素材の表面に形成されたナノオーダーの微細構造による光の干渉(例えば、薄膜干渉や多層膜干渉による干渉)、回折(回折格子)、光散乱等が知られている。
このように、構造性発色によって所望の色を発現する構造を前記素材の表面に形成することにより、着色剤や発色剤などを用いないので、該着色剤や発色剤の廃棄などによる環境汚染を抑制することができる。
また、着色剤や発色剤を含む素材では、該着色剤や発色剤の劣化により、発色の経年低下がみられるが、構造性発色を発現する素材においては、その発色原理が、前記素材の構造自体にあるので、発色の経年劣化がほとんどみられない。
【0003】
このような構造性発色を発現する繊維の典型的な例として、屈折率が異なる二種の樹脂層を一方向に交互に積層した構造を有することによって、前記樹脂層の積層方向に入射した自然光が、各樹脂層において屈折する光と、反射する光とに分光され、それらの光が干渉によって強められた特定の波長の色を発現し、染料や顔料の光吸収による発色とは全く異なった審美性を示す繊維が開示されている(特許文献1参照)
しかし、この場合においては、構造性発色を発現するための構造として樹脂層が積層された方向が一方向であるため、その積層された方向(積層する正方向及び逆方向の二方向)以外では構造性発色が確認できず、前記素材として用いる場合にも光の入射方向を考慮しなければならないという問題があった。
したがって、審美性の効果を充分に発揮させるためにも、光の入射方向に依存することなく発色する繊維の提供が強く望まれていた。
【0004】
【特許文献1】国際公開第05/021849号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光の入射方向に依存することなく、繊維の長さ方向を軸としたほぼ全周囲方向において発色し、該発色が劣化しにくい複合繊維及び該複合繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 長さ方向に直交する断面形状が略円形である芯材の樹脂層上に、長さ方向に直交する断面形状が略円環形である樹脂層を3層以上有してなり、該樹脂層のうちの隣接する2つの樹脂層の屈折率差の絶対値が0より大きいことを特徴とする複合繊維である。
<2> 隣接する2つの樹脂層の屈折率差の絶対値が、0.05以上である前記<1>に記載の複合繊維である。
<3> 樹脂層の数が60以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の複合繊維である。
<4> 樹脂層のいずれもが同心円状に位置する前記<1>から<3>のいずれかに記載の複合繊維である。
<5> 樹脂層が、第一の材料で形成した樹脂層と、第二の材料で形成した樹脂層とで構成され、該第一の材料で形成した樹脂層と、該第二の材料で形成した樹脂層とが交互に配置された前記<1>から<4>のいずれかに記載の複合繊維である。
<6> 第一の材料が芳香環を有さないポリマーから選択され、第二の材料が芳香環を有するポリマーから選択される前記<5>に記載の複合繊維である。
<7> 保護層が、最外層に設けられてなる前記<1>から<6>のいずれかに記載の複合繊維である。
<8> 太陽光が照射された際、
長さ方向に直交する断面における、一の方向での干渉光のピーク波長X(nm)と、該一の方向と直交する他の方向での干渉光のピーク波長Y(nm)との差(X−Y)が、400nm以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の複合繊維である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の複合繊維を製造する方法であって、
芯材の樹脂層上に3層以上の樹脂層を積層して紡糸する積層紡糸工程と、
前記積層紡糸を芯材の樹脂層の長さ方向に延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする複合繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、光の入射方向に依存することなく、繊維の長さ方向を軸としたほぼ全周囲方向において発色し、該発色が劣化しにくい複合繊維及び該複合繊維の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(複合繊維)
本発明の複合繊維は、長さ方向に直交する断面形状が略円形である芯材の樹脂層上に、長さ方向に直交する断面形状が略円環形である樹脂層を3層以上有してなる。
前記「略円」とは、真円形や楕円形に限らず、丸味を帯びた形状全般を含み、具体的には、真円度が3.5未満であることを意味する。
【0009】
ここで、図1は、本発明の一例としての複合繊維の長さ方向に直交する方向における断面図である。
図1に示すように、本発明の複合繊維10は、長さ方向に直交する断面形状が略円形である芯材の樹脂層11と、該芯材の樹脂層11上に積層され、長さ方向に直交する断面形状が略円環形である複数の樹脂層(以下、「被覆樹脂層」と称することがある)として、第一の被覆樹脂層12及び第二の被覆樹脂層13とを有してなる。
本発明の複合繊維における、長さ方向に直交する方向における断面の直径としては、1mm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、1μm〜10μmが特に好ましい。前記断面の直径が、1μm未満であると、繊維の強度不足となることがあり、1mmを超えると、皮膚刺激性が発現し繊維として衣服等に使用できないことがある。
【0010】
芯材の樹脂層11及び各被覆樹脂層のうち、隣接する樹脂層の屈折率は互いに異なるように選択される。
また、隣接する樹脂層の屈折率が互いに異なるようにする方法としては、例えば複数種の樹脂層を積層することが好ましく、隣接する樹脂層の屈折率の増減が外側に向けて繰り返されることがより好ましく、2種の樹脂層を交互に積層する。即ち、芯材の樹脂層、第1の被覆樹脂層、第3の被覆樹脂層、第5の被覆樹脂層、・・・第(2n+1)の被覆樹脂層の材料を同じくし、第2の被覆樹脂層、第4の被覆樹脂層、第6の被覆樹脂層、・・・第2nの被覆樹脂層の材料を同じくすることが特に好ましい(ただし、nは自然数とする)。
【0011】
このように、本発明の複合繊維は、隣接する樹脂層の屈折率が互いに異なるように、各樹脂層が積層されてなるため、前記芯材の樹脂層及び被覆樹脂層の界面や、2つの被覆樹脂層の界面において屈折、又は反射した光が互いに干渉し合い、結果として強められた波長によって示される色が発現するいわゆる多層膜干渉を生じる構成をなしている。なお、本発明の複合繊維において発現する構造性発色は、回折や光散乱などによる作用は少ないと考えられる。
【0012】
以下、本発明の複合繊維における構造性発色(多層膜干渉)の原理について説明する。
図2は、本発明の複合繊維の長さ方向に直交する方向における断面において、入射光の光路を示す図である。なお、図2においては、説明の便宜上、芯材の樹脂層11上に2層の被覆樹脂層12,13が積層された3層構造であり、同心円状に積層された断面を巨視的に示した。
【0013】
図2に示すように、本発明の複合繊維に照射された光は、気相14中を進行して、複合繊維10に対し、所定の角度αで入射する。ここで、前記入射角度αは、複合繊維10の表面40の法線から該表面40方向へ前記光がなす角度を示す。入射した光70(入射光70)のうち、一部の光70は、気相14と第二の被覆樹脂層13との界面40(複合繊維10の表面40)で反射し、反射光71が生じる。他の一部の光70は、界面40で屈折して第二の被覆樹脂層13中を直進し、該第二の被覆樹脂層13と、第一の被覆樹脂層12との界面50において反射し、反射光72を生じる。反射光72は、第二の被覆樹脂層13中を進み、第二の被覆樹脂層13と気相14との界面40で屈折し、第二の被覆樹脂層13を透過して気相14中を直進する。つまり、薄膜状の第二の被覆樹脂層13に所定の角度で光を照射すると、第二の被覆樹脂層13の上側の界面40と下側の界面50とにおいて、それぞれ反射光71,72が生じている。
【0014】
これら反射光71,72は干渉して、条件により互いに強めあい、あるいは弱めあう。特定の波長を有する光の干渉条件は、光の入射角度、光が通過する媒質(気相14、第二の被覆樹脂層13)の屈折率、第二の被覆樹脂層13の厚みによって決まる。ここで、反射光71,72によって最も強められる条件の波長(極大波長)λmaxと、反射光71,72によって最も弱められる条件の波長(極小波長)λminとを、それぞれ式で表すと以下のようになる。
【0015】
【数1】

【0016】
【数2】

【0017】
前記数式(1)及び数式(2)において、nは第二の被覆樹脂層13の屈折率を表し、nは、気相14の屈折率を表し、αは光の入射角度を示し、dは、第二の被覆樹脂層13の厚みを表す。mは、正の整数を表す。
【0018】
また、前記複数の被覆樹脂層のうち、最も外側に形成された被覆樹脂層を保護層としてもよい。該保護層の構造としては、隣接する樹脂層との屈折率差により、構造性発色を発現する構造を有し、保存安定性や、耐蝕性を向上させる機能を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択され、最も外側に形成された被覆樹脂層のみを保護層としてもよいし、最も外側に形成された被覆樹脂層を含む複数層を保護層としてもよい。
前記保護層の材料としては、隣接する樹脂層との屈折率差により、構造性発色を発現する構造を有し、保存安定性や、耐蝕性を向上させる機能を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択され、前記保存安定性や、耐蝕性を向上させる機能を有する単一の材料でもよいし、このような単一の材料を含む2種以上の材料でもよいし、前記保存安定性や、耐蝕性を向上させる機能を有する添加剤を含んでもよい。
【0019】
<屈折率差>
本発明の複合繊維においては、各樹脂層の屈折率と、該樹脂層に隣接する樹脂層との屈折率との差の絶対値が0より大きくなるように前記各樹脂層が選択される。なお、隣接する2つの樹脂層の屈折率差の絶対値は、0.05以上が好ましい。前記屈折率差を0.05以上とすることによって、好適な構造性発色を発現するための積層数を少なくすることができ、結果として、複合繊維の細繊化を実現することができる。
【0020】
ここで、本発明の複合繊維の各樹脂層の屈折率差について、図3を参照して説明する。
図3Aは、従来の屈折率分布(GI:Graded Index)型の光ファイバーのプラスチック複合繊維の長さ方向に直交する方向における断面図、及び各層における屈折率との関係を示す図であり、図3Bは、本発明の複合繊維の長さ方向に直交する方向における断面図、及び各層における屈折率との関係を示す図である。
図3Aに示すように、従来の屈折率分布型の光ファイバーは、コア部と、該コア部を覆うように積層されたクラッド部との2層からなり、前記コア部は、外周部から中心に向かって屈折率が漸進的に大きくなるように形成されている。
一方、本発明の複合繊維では、隣接する樹脂層の屈折率差が、中心(芯材の樹脂層)から半径方向に離れるに従って、増減が交互となるように設けられている。
【0021】
<<屈折率の測定>>
前記屈折率の測定方法としては、例えば、反射光を用いたエリプソメータ法や、透過型二光束干渉顕微鏡を用いた屈折率分布の測定法が挙げられる。
【0022】
<樹脂層の層数>
前記樹脂層の層数(積層数)としては、60以下であることが好ましく、50以下がより好ましい。前記樹脂層の層数が、60を超えると、審美性を損ってしまうことがある。
【0023】
<樹脂層の厚み>
前記芯材の樹脂層の厚み(平均直径)としては、10nm以上、200μm以下が好ましく、20nm以上、10μm以下がより好ましい。前記芯材の樹脂層の厚み(平均直径)が、10μmを超えると、繊維としての手触り感が損なわれることがあり、20nm未満であると、強度不足が生じることがある。
なお、前記芯材の樹脂層の厚み(平均直径)としては、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡等で繊維方向と垂直な断面を観察としたときの直径を円周方向に任意の点数測定し、平均した値とする。
また、各被覆樹脂層の厚みとしては、10nm以上、150μm以下が好ましく、20nm以上、500nm以下がより好ましい。前記各被覆樹脂層の厚みが、20nm未満及び500nmを超えると、有効な波長領域での光干渉が起こりにくいことがある。
【0024】
<<複合繊維の繊度>>
本発明の複合繊維の繊度としては、10dtex以下が好ましく、0.2dtex〜5dtexがより好ましい。前記繊度が、10dtexより大きいと、繊維として衣服等に不適合であり、0.2dtex未満であると、強度が不足することがある。
ここで、前記繊度は、例えば恒長式表示法などにより測定することができる。
【0025】
<<複合繊維の伸度>>
本発明の複合繊維の伸度としては、200%以上が好ましく、300%以上がより好ましい。前記伸度が、200%未満であると、製造時に糸切れが多発し紡糸できないことがある。
前記伸度は、引っ張り試験機、例えば、テンシロンRTN−50(オリエンテック社製)により測定することができる。
【0026】
<<複合繊維の真円度>>
本発明の複合繊維の真円度としては、繊維方向に垂直な断面形態において、円又は楕円の中心を通る直線と円周部の交点の距離が最も長い長軸と最も短い短軸との比(長軸/短軸)が3.5未満であることが好ましく、2以下がより好ましい。前記真円度が、3.5以上であると、扁平すぎて干渉光発現が入射方向に依存し、繊維の長さ方向を軸としたほぼ全周囲方向において発色しにくくなるということがある。
前記真円度は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡等で繊維方向と垂直な断面を観察し円及び楕円の中心を通る直線と円周の交点の距離により測定することができる。
【0027】
<樹脂層>
前記樹脂層を構成する材料(以下、「樹脂組成物」と称することがある)としては、屈折率が異なる2種以上の材料の組合せであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンなど)、ポリアミド(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール(POM)、ポリエステル(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、アクリル樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、力学強度や製造の観点から、ポリエステル、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー(LCP)、アクリル樹脂が好ましく、ポリエステル、アクリル樹脂がより好ましい。また、これらのうちの二種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0028】
前記樹脂層が、第一の材料で形成した樹脂層と、第二の材料で形成した樹脂層とで構成され、該第一の材料で形成した樹脂層と、該第二の材料で形成した樹脂層とが交互に配置されていることが好ましい。
この場合、前記第一の材料が芳香環を有さないポリマーから選択され、前記第二の材料が芳香環を有するポリマーから選択されることが好ましい。
前記芳香環を有するポリマーとしては、例えばポリカーボネ−ト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリベンジルアクリレート、ポリフェニルサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、などが挙げられる。
前記芳香環を有さないポリマーとしては、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアセタール、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド(ナイロン−6等)、セルロース(アセチル置換、プロピオニル置換、ブチリル置換等)、などが挙げられる。
【0029】
<<樹脂組成物の融点>>
前記樹脂組成物の融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜350℃が好ましく、100℃〜300℃がより好ましく、100℃〜260℃が更に好ましい。前記融点が、40℃以上であると、通常の使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましい。また、前記融点が、350℃以下であると、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、例えば示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0030】
<<樹脂組成物の透過率>>
前記樹脂組成物の透過率としては、90%以上が好ましく、92%以上がより好ましい。前記透過率が、90%未満であると、干渉光の低下が起こることがある。
前記透過率は、例えばヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−65)、あるいは可視紫外吸収スペクトル測定装置(株式会社日本分光製、V−570)により測定することができる。
【0031】
<<樹脂組成物の粘度>>
前記樹脂組成物の溶融粘度としては、240℃において1×10Pa・s〜1×10Pa・sが好ましく、240℃において1×10Pa・s〜1×10Pa・sがより好ましい。前記粘度が、1×10Pa・s未満であると、紡糸時糸切れが生じることがあり、1×10Pa・sを超えると、紡糸が難しく製造困難となることがある。
前記粘度は、平板に樹脂を挟み、せん断をかけて測定する装置(例えばレオメ−タ DAR−100、レオロジカ社製)により測定することができる。
【0032】
<<樹脂組成物の質量平均分子量>>
前記樹脂組成物の質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000〜300,000が好ましく、30,000〜200,000がより好ましく、50,000〜100,000が更に好ましい。前記質量平均分子量が20,000未満であると、紡糸時糸切れが生じることがある。一方、前記質量平均分子量が300,000を超えると、溶融紡糸などができないことがある。
ここで、前記質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)法により測定することができる。
【0033】
−ポリエステル樹脂−
前記ポリエステル樹脂は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記ポリマーとして好適なポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタエレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0034】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0035】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0036】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキシンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0037】
−フッ素樹脂−
前記フッ素樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば特開2006−154590号公報に記載のフッ素樹脂などが好適に挙げられる。具体的には、炭素原子、フッ素原子を必須の構成原子とする含フッ素モノマー(a)と、炭素原子、フッ素原子、塩素原子を必須の構成原子とする含フッ素モノマー(b)との組成比を変えて重合を行うことによって所望の屈折率のフッ素樹脂を得て、各樹脂層に適用する。なお、前記フッ素樹脂は、前記含フッ素モノマー(a)、又は前記含フッ素モノマー(b)のホモポリマーでもよい。
【0038】
<発色方向の確認方法>
前記発色方向の確認方法としては、本発明の複合繊維に対して太陽光が照射された際、長さ方向に直交する断面における、一の方向での干渉光のピーク波長X(nm)と、該一の方向と直交する他の方向での干渉光のピーク波長Y(nm)とを測定し、その測定された値の差(X−Y)が、400(nm)以下であるか否かによって少なくとも直交する二方向において同様の色の構造性発色が確認されたと判別できる。したがって、長さ方向を軸とする略全周囲方向において構造性発色が確認されることを判別するためには、この測定方法を、前記長さ方向を軸とした複数の角度において実施すればよい。
ここで、前記ピーク波長X(nm)と、前記ピーク波長Y(nm)との差(X−Y)は、400nm以下(人間にとって視認しうる値の限度)が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。また、前記ピーク波長の差(X−Y)が、400nmを超えると、2面性があり好ましくない。この測定には、例えば、黒色板にサンプル繊維を40本/1cmの巻密度で、0.265cN/dtex(0.3g/de)の巻張力で巻きつけ、マクベス社製分光光度計カラーアイ3100(CE−3100)にてD65光源で測色する。あるいは可視紫外吸収スペクトル測定装置(株式会社日本分光製、V−570)と積分球を使用して測定することができる。表面光沢を含む、光源に紫外線を含む条件にて、ピーク波長と反射強度を測定することができる。
【0039】
(複合繊維の製造方法)
本発明の複合繊維の製造方法は、積層紡糸工程と、延伸工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0040】
[積層紡糸工程]
前記積層紡糸工程は、同心円状に各樹脂層が積層された円筒形状のプリフォームを作製する工程である。前記積層紡糸工程としては、コーティング法、溶融複合紡糸法などが挙げられ、これらのうちでも、溶融複合紡糸法が好ましい。
前記コーティング法は、被覆樹脂層の樹脂組成物を溶剤に溶かして、芯材の樹脂層に塗布した後、乾燥して溶剤を蒸発させる製法である。
前記溶融複合紡糸法としては、ラム押出複合紡糸法、連続複合紡糸法、界面ゲル重合法(例えば、特開2003−75656号公報等)、などが挙げられる。
【0041】
前記ラム押出複合紡糸法は、芯材の樹脂層、及び複数の被覆樹脂層の材料である樹脂組成物のロッドを形成し、それらをシリンダに挿入し、シリンダの一端においてこのロッドを溶融しながらピストンにより他端から押圧して押し出し、複合紡糸ダイ20(図4A参照)に形成された芯材の樹脂層の材料(樹脂組成物)の流入孔21、及び複数の被覆樹脂層の材料(樹脂組成物)の各流入孔22〜27に、それぞれの樹脂組成物が所定の厚みになるように定量的に供給し、順次積層して多層構造とした後に、ガイドパイプ28によって隔絶された吐出口より吐出する方法であり、吐出された糸状体は定速で引き取られながら冷却され、プリフォームが作製される。
【0042】
前記連続複合紡糸法は、押出機で連続的に各層を構成する樹脂組成物を溶融し、必要に応じて脱揮を行った後、図4Aに示すような複合紡糸ダイに、前述したラム押出複合紡糸法と同様にして定量的に供給し、順次積層して多層構造とした後にダイより吐出する方法であり、吐出された糸状体は定速で引き取られながら冷却され、プリフォームが作製される。
【0043】
前記連続複合紡糸法は、樹脂組成物の重合から紡糸までを一貫して連続的に紡糸することが容易であり、生産性に優れるとともに紡糸の工程以前に連続脱揮工程を導入することにより、残留モノマーや不純物等を十分に取り除くことができるため、透過性が高く、光学耐久性に優れた複合繊維が得られることから好適である。
前記界面ゲル重合法は、まず、第1の樹脂となる重合性モノマーを、充分な剛性のある重合容器に入れて、該容器を回転させつつ、モノマーを重合させ第1の樹脂重合体からなる円筒管を作製する。次に、該円筒管の中空部に第2の樹脂の原料となるモノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び屈折率調整剤などを注入して、円筒管内部で界面ゲル重合を行い、第2の樹脂重合体を形成する。
この重合法を繰り返して積層構造を作製することができる。
【0044】
[延伸工程]
前記延伸工程は、前記積層紡糸を芯材の樹脂層の長さ方向に延伸する工程である。
ここで、図4Bに示すように、前記積層紡糸工程で得られたプリフォーム21は、例えば、220〜260℃に調整された加熱炉30内に挿入され、リール32に巻き取られながら熱延伸処理が施され、本発明の複合繊維が作製される。なお、前記熱延伸処理における延伸速度は、各樹脂層が、目的とする厚みになるように、加熱炉30とリール32との間に設置された外径測定器31を通じて外径を測定しながら制御される。このように、紡糸後に連続的、又は一旦巻き取られた後に熱延伸処理を施すことによって、複合繊維の内部の歪みが除去される。これは複合繊維の内部に歪みが残留していると、各樹脂層の界面において、クラックが発生する等の問題が生じ、良好な構造性発色の発現が損われてしまうおそれがあるためである。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
<第一の樹脂層の材料>
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、下記組成の化合物を投入し、樹脂組成物混合溶液として濾過した後、更に超音波脱気し、前記重合容器中へ注入した。その後、十分に攪拌しながら40℃で24時間加熱重合し、第一の樹脂層の材料(第一の樹脂組成物)を得た。
【0047】
[第一の樹脂層の材料の組成]
・メチルメタクリレート(MMA、n=1.49)・・・・・・・・・・100質量部
・ジt−ブチルパーオキシド(PBD、重合開始剤)・・・・・・・・・・・1質量部
・n−ラウリルメルカプタン(n−LM、連鎖移動剤)・・・・・・・・0.5質量部
【0048】
<第二の樹脂層の材料>
攪拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応槽内に、下記組成の化合物を投入し、樹脂組成物混合溶液として濾過した後、更に超音波脱気し、前記重合容器中へ注入した。その後、十分に攪拌しながら40℃で24時間加熱重合し、第二の樹脂層の材料(第二の樹脂組成物)を得た。
【0049】
[第二の樹脂層の材料の組成]
・ベンジルメタクリレート(BzMA、n=1.56)・・・・・・・・100質量部
・ジt−ブチルパーオキシド(PBD、重合開始剤)・・・・・・・・・・・3質量部
・n−ラウリルメルカプタン(n−LM、連鎖移動剤)・・・・・・・・0.5質量部
【0050】
<積層紡糸工程>
30層複合紡糸ダイを用いて、前記第一の樹脂組成物と前記第二の樹脂組成物とが交互に積層されるように、かつ前記第一の樹脂組成物が芯材の樹脂となるように、樹脂受け入れ口に各樹脂組成物を投入し、30層構造をなす円筒形状のプリフォ−ムを作製した。
【0051】
得られたプリフォ−ムの屈折率分布を二光束透過型干渉顕微鏡(TD−20、溝尻光学株式会社製)にて測定したところ、芯材の樹脂層を一層目とした奇数層の屈折率は1.49であり、芯材の樹脂層を一層目とした偶数層の屈折率は1.56であった。
【0052】
<延伸工程>
次に、上記で得られたプリフォームを溶融延伸した。220℃〜260℃に調整された加熱炉内に該プリフォームを鉛直下向きに挿入し、延伸速度は、各被覆樹脂層が、150μm以下の厚みになるように外径を調整するために、外径測定器を通じて直径を測定しながら延伸速度を制御して、例えば、延伸張力を20g〜9000g、延伸速度は1〜6000m/分の間で調整して複合繊維を作製した。
【0053】
(実施例2)
<第一の樹脂層の材料>
重合容器としてガラスチューブを用意し、回転装置に水平にセットし、下記組成の第一の樹脂組成物を混合し、樹脂組成物混合溶液として濾過した後、更に超音波脱気し、前記重合容器中へ注入した。その後、2,000rpmの回転を与えながら40℃で24時間加熱重合し、第一の樹脂層の材料(第一の樹脂組成物)を円筒状に形成した。
【0054】
[第一の樹脂層の材料の組成]
・メチルメタクリレート(MMA、n=1.49)・・・・・・・・・・100質量部
・ジt−ブチルパーオキシド(PBD、重合開始剤)・・・・・・・・・・・1質量部
・n−ラウリルメルカプタン(n−LM、連鎖移動剤)・・・・・・・・0.5質量部
【0055】
<第二の樹脂層の材料>
重合容器としてガラスチューブを用意し、回転装置に水平にセットし、下記組成の第二の樹脂組成物を混合し、樹脂組成物混合溶液として濾過した後、更に超音波脱気し、前記重合容器中へ注入した。その後、2,000rpmの回転を与えながら40℃で24時間加熱重合し、第二の樹脂層の材料(第二の樹脂組成物)を円筒状に形成した。
【0056】
[第二の樹脂層の材料の組成]
・ベンジルメタクリレート(BzMA、n=1.56)・・・・・・・・100質量部
・ジt−ブチルパーオキシド(PBD、重合開始剤)・・・・・・・・・・・3質量部
・n−ラウリルメルカプタン(n−LM、連鎖移動剤)・・・・・・・・0.5質量部
【0057】
<積層紡糸工程>
上記第一の樹脂層及び第二の樹脂層の形成を15回繰り返し行うことで、同心円状の断面をなし、交互に屈折率の異なる多層円筒形状のプリフォ−ムを作製した。
【0058】
得られたプリフォ−ムの屈折率分布を2光束透過型干渉顕微鏡(溝尻光学株式会社製、TD−20)にて測定したところ、芯材の樹脂層を一層目とした奇数層の屈折率は1.49であり、芯材の樹脂層を一層目とした偶数層の屈折率は1.56であった。
【0059】
<延伸工程>
次に、上記で得られたプリフォームを実施例1と同様にして溶融延伸し、複合繊維を作製した。
【0060】
(実施例3)
実施例2において、隣接する二層の屈折率差の絶対値が、0.05となるように第二の樹脂層の材料を以下のように調製した組成物とした以外は、実施例1と同様にして、複合繊維を作製した。
【0061】
[第二の樹脂層の材料の組成]
・ベンジルメタクリレート(BzMA、n=1.56)/パ−フルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン(BVE、n=1.34)=91/9(w/w)・・・・100質量部
・ジt−ブチルパーオキシド(PBD、重合開始剤)・・・・・・・・・・・3質量部
・n−ラウリルメルカプタン(n−LM、連鎖移動剤)・・・・・・・・0.5質量部
【0062】
(実施例4)
実施例3において、樹脂層の数を5とした以外は、実施例3と同様にして、複合繊維を作製した。
【0063】
(実施例5)
実施例4において、樹脂層が、第一の樹脂層の材料で形成した樹脂層と、第二の樹脂層の材料で形成した樹脂層とで構成され、該第一の樹脂層の材料で形成した樹脂層と、該第二の樹脂層の材料で形成した樹脂層とが交互に配置されるように代えた以外は、実施例4と同様にして、複合繊維を作製した。
【0064】
(実施例6)
実施例3において、樹脂層の数を10とした以外は、実施例3と同様にして、複合繊維を作製した。
作製した実施例6の複合繊維の断面写真を図6に示した。この図6から、複合繊維の長さ方向に直交する断面形状が略円形である芯材の樹脂層上に、長さ方向に直交する断面形状が略円環形である樹脂層を10層積層していることが認められた。
【0065】
(実施例7)
実施例2において、重合容器としてガラスチューブの代わりにポリフッ化ビニリデンチュ−ブを用意し、実施例6と同様にして、複合繊維を作製した。
【0066】
(比較例1)
<複合繊維の作製>
比較例1として、国際公開第05/021849号パンフレット(特許文献1)の実施例1に基づき、複合繊維を作製した。
具体的には、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.5モル%共重合したポリエチレン−2,6−ナフタレートと、ナイロン−6とが、交互に21層積層され、ポリエチレングリコール(平均分子量4,000)を2.5モル%共重合したポリブチレンテレフタレートが周りを被覆している構造となるように、各々290℃、270℃、230℃にて溶融し、計量後、紡糸パック内に導入して1,200m/分で紡糸した。得られた未延伸糸を予熱温度60℃にて2倍に延伸し、150℃で熱セットして巻き取り、図7に示すような断面形状の複合繊維を得た。
【0067】
(比較例2)
実施例1において、芯材の樹脂層上に形成される被覆樹脂層を前記第二の樹脂組成物からなる一層のみに代えた以外は、実施例1と同様にして、複合繊維を作製した。
【0068】
(比較例3)
実施例1において、芯材の樹脂層及び該樹脂層上に形成される複数の被覆樹脂層の屈折率が全て略同じとなるように各樹脂層で構成した以外は、実施例1と同様にして、複合繊維を作製した。
【0069】
(比較例4)
実施例1において、芯材の樹脂層及び該樹脂層上に形成される複数の被覆樹脂層の屈折率が全て略同じとなるように各樹脂層で構成し、更にその材料にLCV(ロイコクリスタルバイオレット)を5質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、複合繊維を作製した。
【0070】
次に、実施例1〜7及び比較例1〜4において作製した各複合繊維について、表1にまとめて示す。
【0071】
【表1】

【0072】
<測定方法及び評価方法>
前記実施例1〜7及び比較例1〜4の各複合繊維について、下記の測定及び評価を行った。測定結果及び評価結果を表2に示す。
【0073】
<<繊度の測定>>
作製した各複合繊維の繊度を一定の長さ(100mm)40本の質量と各繊維の直径を光学顕微鏡にて求め、デシテックス(dtex)に換算した。
【0074】
<<伸度の測定>>
作製した各複合繊維の伸度をテンシロンRTM−50(オリエンテック社製)で測定した。
【0075】
<<真円度の測定>>
作製した各複合繊維の真円度を走査型電子顕微鏡(SEM)(S−4800、株式会社日立ハイテクノロジ−ズ製)又は光学顕微鏡(Axioskop2、カールツアイス社製)で繊維方向と垂直な断面を観察し円及び楕円の中心を通る直線と円周の交点の距離を測定した。
【0076】
<<干渉光のピーク波長の測定>>
作製した各複合繊維の長さ方向に直交する断面における、一の方向(0°)での干渉光のピーク波長X(nm)と、該一の方向と直交する他の方向(90°)での干渉光のピーク波長Y(nm)とを可視紫外吸収スペクトル測定装置(株式会社日本分光製、V−570)で測定し、これらの差(X−Y)を算出した。
【0077】
<<審美性の評価>>
図5に示すように、上記測定したピーク波長の差(X−Y)について、下記基準に基づき評価した。なお、下記評価基準に示すように、100nm以下であることが二方向において同様の色の構造性発色が確認されたと判別できることにおいて実用上好ましい。
[評価基準]
◎:ピーク波長の差が100nm以下である
○:ピーク波長の差が100nm以上、700nm未満である
×:ピーク波長の差が700nm以上である
【0078】
<<発色保存性の評価>>
耐光試験機(サンシャインウエザーメーター、スガ試験機株式会社製)で200時間光照射した前後の色を、可視・紫外吸収スペクトル測定装置で吸収極大の減少率により下記基準で評価した。
[評価基準]
◎:減少率が10%以内である
○:減少率が50%以内である
×:減少率が50%を超える
【0079】
【表2】

表2の結果から、実施例1〜7の複合繊維は、比較例1〜4に比べて、光の入射方向に依存することなく、繊維の長さ方向を軸としたほぼ全周囲方向において発色し、該発色が劣化しにくいことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の複合繊維の構成の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、構造性発色の発現の原理を説明する図である。
【図3A】図3Aは、従来の複合繊維の断面構成と各層における屈折率との関係を示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明の複合繊維の断面構成と各層における屈折率との関係を示す図である。
【図4A】図4Aは、本発明に用いられる複合紡糸ダイの構成を示す断面図である。
【図4B】図4Bは、本発明の延伸工程を示す図である。
【図5】図5は、発色方向の評価の形態を示す図である。
【図6】図6は、実施例6の複合繊維の断面写真である。
【図7】図7は、従来の複合繊維の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0081】
10 複合繊維
11 芯材の樹脂層
12 第一の被覆樹脂層
13 第二の被覆樹脂層
21 プリフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に直交する断面形状が略円形である芯材の樹脂層上に、長さ方向に直交する断面形状が略円環形である樹脂層を3層以上有してなり、該樹脂層のうちの隣接する2つの樹脂層の屈折率差の絶対値が0より大きいことを特徴とする複合繊維。
【請求項2】
隣接する2つの樹脂層の屈折率差の絶対値が、0.05以上である請求項1に記載の複合繊維。
【請求項3】
樹脂層の数が60以下である請求項1から2のいずれかに記載の複合繊維。
【請求項4】
樹脂層のいずれもが同心円状に位置する請求項1から3のいずれかに記載の複合繊維。
【請求項5】
樹脂層が、第一の材料で形成した樹脂層と、第二の材料で形成した樹脂層とで構成され、該第一の材料で形成した樹脂層と、該第二の材料で形成した樹脂層とが交互に配置された請求項1から4のいずれかに記載の複合繊維。
【請求項6】
第一の材料が芳香環を有さないポリマーから選択され、第二の材料が芳香環を有するポリマーから選択される請求項5に記載の複合繊維。
【請求項7】
保護層が、最外層に設けられてなる請求項1から6のいずれかに記載の複合繊維。
【請求項8】
太陽光が照射された際、
長さ方向に直交する断面における、一の方向での干渉光のピーク波長X(nm)と、該一の方向と直交する他の方向での干渉光のピーク波長Y(nm)との差(X−Y)が、400nm以下である請求項1から7のいずれかに記載の複合繊維。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の複合繊維を製造する方法であって、
芯材の樹脂層上に3層以上の樹脂層を積層して紡糸する積層紡糸工程と、
前記積層紡糸を芯材の樹脂層の長さ方向に延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする複合繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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