説明

複合金属シアン化物(DMC)触媒でのエポキシ官能性(ポリ)オルガノシロキサンのアルコキシル化によるオルガノシロキサン基を有する新規ポリエーテルアルコールおよびその製造方法

【課題】複合金属シアン化物(DMC)触媒でのエポキシ官能性(ポリ)オルガノシロキサンのアルコキシル化によるオルガノシロキサン基を有する新規シリコーンポリエーテルおよびその製造方法を提供。
【解決手段】エポキシ官能基を有する(ポリ)オルガノシロキサンを、複合金属シアン化物触媒の存在下で、この物質群の特徴的な加水分解、縮合または転位反応などの望ましくない副反応が観察されることなしにアルコキシル化することができ、さらに、酸化アルキレンなどのエポキシ化合物およびグリシジル化合物を、末端位にブロックで累積させ、シリコーンポリエーテル鎖を有するポリマーが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMC触媒でのエポキシ官能性(ポリ)オルガノシロキサンのアルコキシル化によるオルガノシロキサン基を有する新規ポリエーテルアルコールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単に略してポリエーテルとも往々にして称され、酸化プロピレンおよび酸化エチレンから主に形成される従来のポリエーテルアルコールは、かなり長い間知られており、工業的に大規模に生産されている。これらは特に、ポリイソシアネートとの反応を介して、ポリウレタンを製造するためか、界面活性剤を製造するための出発化合物として役立つ。
【0003】
アルコキシル化生成物(ポリエーテル)を製造するための大抵の方法は、塩基性触媒、例えば、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ金属メトキシドを使用する。
【0004】
KOHの使用は、長年にわたって特に広まっており、知られている。典型的には、ブタノール、アリルアルコール、プロピレングリコールまたはグリセロールなどの通常低分子量のヒドロキシ官能性出発物質を、アルカリ触媒の存在下で、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレンまたは種々の酸化アルキレンの混合物などの酸化アルキレンと反応させると、ポリオキシアルキレンポリエーテルが得られる。このいわゆるリビング重合における強アルカリ反応条件は、様々な副反応を促進する。酸化プロピレンからの、次いで連鎖出発物質として機能するアリルアルコールへの転位および連鎖停止反応により、比較的広いモル質量分布を伴うポリエーテルおよび不飽和副生成物が形成される。特に出発物質アルコールとしてアリルアルコールを用いると、アルカリ触媒下に実施されるアルコキシル化反応はまた、プロペニルポリエーテルをもたらす。これらのプロペニルポリエーテルは、SiC支持シリコーンポリエーテルコポリマーへとさらに処理するヒドロシリル化において非反応性の副生成物であることが判明しており、加えて、その中に存在するビニルエーテル結合の加水分解不安定性およびプロピオンアルデヒドの放出の結果として、嗅覚性製品に不快となる望ましくない源である。このことは例えば、欧州特許出願公開第1431331号明細書に記載されている。
【0005】
塩基触媒アルコキシル化の他の欠点は、疑う余地なく、中和ステップを用いて、活性塩基から生じた反応生成物を除去する必要性である。この場合、中和で形成される水を蒸留により除去し、濾過により形成される塩を除去することが絶対に必要である。
【0006】
塩基触媒反応と同様に、アルコキシル化のための酸触媒もまた知られている。例えば、ドイツ特許第102004007561号明細書は、アルコキシル化技術におけるHBFならびにルイス酸、例えばBF、AlClおよびSnClの使用を開示している。
【0007】
酸触媒ポリエーテル合成における欠点は、非対称オキシラン、例えば酸化プロピレンの開環における不十分な位置選択性であることが判明しており、このことは、いくつかの二次およびいくつかの一次OH末端を伴うポリオキシアルキレン鎖が、明確な方法で制御できない方法で得られるという作用をもたらす。塩基触媒アルコキシル化反応の場合のように、中和、蒸留および濾過の後処理シークエンスは、この場合にも不可欠である。酸化エチレンをモノマーとして酸触媒ポリエーテル合成に導入すると、望ましくない副生成物としてのジオキサンの形成が予測されうる。
【0008】
しかしながら、酸および/または塩基不安定性の系を、詳述した条件下で引き続いてアルコキシル化することは決してできない。このことは特に、酸または塩基誘発加水分解およびシロキサン骨格の転位の顕著な傾向を示す(ポリ)オルガノシロキサンなどのオルガノケイ酸誘導体の場合に当てはまる。これは、酸および塩基誘発アルコキシル化反応の両方が典型的に、水性媒体中での下流後処理(中和、塩除去、水を除去するための蒸留)を必要とすることから、ますます重大である。
【0009】
経済的に重要な群のシリコーンポリエーテルの製造では、現在の技術状況およびオルガノ変性(ポリ)シロキサンを直接的にアルコキシル化するための適切な方法の欠如により、2段階の方法レジームが使用されている。アリルアルコールなどの末端不飽和アルコールをアルコキシル化することにより予め製造されたpH中性ポリエーテルを加え、続く貴金属触媒の存在下でのヒドロシリル化反応で、モノ−またはポリ−Si−H−官能性(ポリシロキサン)上にSi−C結合が形成される。典型的には、アリルポリエーテルをヒドロシリル化する場合には避けられないアリル−プロペニル転位に注意を払い、全てのSi−H基とポリエーテルの二重結合との完全な反応を保証するために、ヒドロシリル化において、シロキサン成分のSi−H官能基に対して通常20〜35%の著しい化学量論的過剰で、ポリエーテルまたはポリエーテル混合物を使用する。このことは実際には、現在の技術状況に従い製造されたシリコーンポリエーテルでは、表面活性シリコーンポリエーテルの濃度を低下させ、ターゲット生成物の性能特性を損なう、比較的大量の未反応および転位された過剰のポリエーテルが、不可避に存在することを意味している。その界面活性特性により、組成に応じて、例えばポリウレタンフォーム安定剤、脱泡剤、湿潤剤として、または他には分散添加剤として様々に使用されるシリコーンポリエーテルへのヒドロシリル化の方法原理は、特許文献、例えば、欧州特許出願公開第A1−058771号明細書、欧州特許出願公開第A1−0600261号明細書、欧州特許出願公開第A1−0867460号明細書、欧州特許出願公開第A1−0867461号明細書、欧州特許出願公開第A1−0867462号明細書、欧州特許出願公開第A1−0867464号明細書および欧州特許出願公開第A1−0867465号明細書の様々な実施形態に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今のところ、多くの場合にポリエーテルシロキサンとしても知られているシリコーンポリエーテルを、エポキシ官能性(ポリ)オルガノシロキサンからの直接的なアルコキシル化反応によるたった1つの簡単な方法ステップで製造することができる合成方法は存在していない。したがって、本発明の目的は、概説された先行技術の欠点を克服し、新規シリコーンポリエーテル構造およびこれらのシリコーンポリエーテルを製造するための新規アルコキシル化方法の両方を提供することである。実質的に100パーセントの、高い表面活性成分含分でシリコーンポリエーテルを製造することができる方法、すなわち、今まで不可避であったポリエーテル過剰を伴わない方法を提供することもさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内容では、存在し得る共反応成分の結果、かなり広い様々な官能性および構造変動性を伴う物質が方法によりもたらされるとしても、本発明の生成物は簡略化のために、シリコーンポリエーテル、シロキサン−ポリエーテルコポリマーまたはポリエーテルシロキサンおよび/またはそれらの誘導体と称される。しかしながら、全ての生成物に共通することは、少なくとも1個の末端OH基が形成されていることである。
【0012】
さて、意外なことに、エポキシ官能基を有する(ポリ)オルガノシロキサンを、DMC触媒としても知られている既知の複合金属シアン化物触媒(double metal cyanide catalyst)の存在下で、この物質群に特徴的な加水分解、縮合または転位反応などの望ましくない副反応の傾向が観察されることなしに、有利かつ簡単な方法でアルコキシル化することができることが判明した。
【0013】
本発明により請求の範囲に記載される方法により初めて、非常に簡単かつ再現可能な方法で、反応性水素を伴う出発物質から進んで、エポキシ基を有する(ポリ)オルガノシロキサンをシリコーンポリエーテルへとアルコキシル化重合する可能性が開ける。本発明により請求の範囲に記載される方法により、エポキシ官能性(ポリ)オルガノシロキサンのみならず、酸化アルキレンなどのさらなるエポキシ化合物およびグリシジル化合物ならびに必要な場合には、他のタイプのモノマーを、末端位に、または孤立して、ブロックで累積させて、または他にランダム分布で、シリコーンポリエーテルのポリマー鎖に導入する合成柔軟性が提供される。
【0014】
したがって、本発明による方法により、過剰のポリエーテルを含まない官能化ポリ(オルガノ)シロキサンまたはポリエーテルシロキサンコポリマーに到達することができる。
【0015】
したがって、本発明による方法の反応生成物は、今まで不可避に存在している反応成分、ポリエーテル(過剰のポリエーテル)の残分を含まない。
【0016】
本発明の内容で使用可能なエポキシ官能性(ポリ)オルガノシロキサンは通常、適切なオルガノヒドロシロキサンを末端不飽和エポキシ化合物、例えばアリルグリシジルエーテルに付加することを伴うヒドロシリル化反応により得られ、工業規模で得ることができる。該方法で使用される任意のモル過剰アリルグリシジルエーテルは、最終的に、製造プロセスでの蒸留により除去する。こうして得られる官能性シロキサン化合物は、その反応性エポキシ基により、様々なさらなる反応のための価値のあるシントンおよび中間体である。
【0017】
例えば、文献には、ヘキサフルオロアンチモネート触媒によるエポキシ基を有するオルガノシロキサンの使用または開環熱開始光重合(ヤスマサ モリタら、J.Appl.Polym.Sci.2006.100(3)、2010〜2019)およびカチオン光重合(Ricardo Acosta Ortizら、Polymer(2005)、46(24)、10663〜10671)が記載されている。フランス特許第2842098号明細書には、カチオン開始およびUV開始の歯科用セメントの硬化のための反応混合物の成分としてのエポキシシリコーン化合物の使用が述べられている。様々な変法の光重合は、さらに国際公開第2003076491号パンフレット、国際公開第2002051357号パンフレットおよびSang Yong Pyunら、Macromolecular Research(2003)、11(3)、202〜205に述べられている。
【0018】
その塩基および酸不安定性により、エポキシ官能性シロキサン化合物は、アルコキシル化生成物を得るための従来のアルカリまたは酸触媒による重合には全く不適切である。意外なことに、使用される触媒が、DMC触媒としても知られている複合金属シアン化物触媒であると、エポキシ官能基を有する(ポリ)オルガノシロキサンを確かにアルコキシル化することができることが今や判明した。
【0019】
本発明で請求の範囲に記載される方法のために使用される複合金属シアン化物触媒(DMC触媒)は、その製造およびアルコキシル化触媒としての使用に関して、1960年代から知られており、例えば、米国特許第3427256号明細書、米国特許第3427334号明細書、米国特許第3427335号明細書、米国特許第3278457号明細書、米国特許第3278458号明細書または米国特許第3278459号明細書に記載されている。後年さらに開発され、例えば米国特許第5470813号明細書および米国特許第5482908号明細書に記載されているより有効なタイプのDMC触媒は特に、亜鉛−コバルトヘキサシアノ錯体である。ポリエーテロール(polyetherols)を製造するためのその著しく高い活性により、低い触媒濃度しか必要とせず、アルコキシル化方法の終了時に、従来のアルカリ触媒が必要とする触媒の中和、沈殿および濾過からなる後処理段階を省くことができる。DMC触媒アルコキシル化の高い選択性は、例えば、酸化プロピレンベースのポリエーテルが非常に低い割合の不飽和副生成物しか含有しないという事実に寄与しうる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による方法によるDMC触媒アルコキシル化のために、適切なエポキシ化合物は、一般式(I):
【0021】
【化1】

[式中、
Rは、1から40個、特に1から20個の炭素原子を有する、直鎖および分枝鎖の、飽和、一価不飽和および多価不飽和の、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル基ならびに1から20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される1個または複数の同じか異なる基であり、
Xは独立に、Rであるか、エポキシ基を有する式(II):
【0022】
【化2】

のフラグメントであり、
相互に独立に、
aは、0から5の整数であり、
bは、0から500の整数であり、
cは、0から50の整数であり、
dは、0から200の整数であり、
eは、0から18の整数であり、
但し、少なくとも1個のX基は、式(II)のエポキシ官能性フラグメントである]
のものである。
【0023】
先行技術は、複合金属シアン化物触媒を伴う触媒を使用する様々なアルコキシル化方法に関している。この場合、例えば、欧州特許出願公開第A1−1017738号明細書、米国特許第5777177号明細書、欧州特許出願公開第A1−0981407号明細書、国際公開第2006−002807号パンフレットおよび欧州特許出願公開第A−1474464号明細書が参照される。
【0024】
驚くべきことに、酸化エチレン、酸化プロピレンおよび酸化1,2−ブチレンなどの従来の酸化アルキレンだけでなく、そのアルカリおよび酸不安定性で知られている式(I)のエポキシ官能性オルガノシロキサンもまた、簡単な方法でDMC触媒の存在下でアルコキシル化することができることが判明した。このような置換シロキサン化合物の重合は、DMC触媒の条件下に、選択的かつ十分に穏やかに進行し、本発明による方法は、転位する傾向を有する加水分解不安定性オルガノシロキサン構造を得るための新規の本発明の生成物群のモノ−およびポリ−アルコキシシロキサン変性ポリオキシアルキレン化合物を製造する可能性を開く。
【0025】
したがって、DMC触媒により新規ポリエーテルシロキサンを製造するための新規方法が提供され、ここで、1種または複数の式(I)のエポキシ官能性シロキサンモノマーを個別に、または他の式(III)または(IV)のエポキシ化合物と混合して、ブロックで、またはランダムに、少なくとも1個の反応性水素を伴う式(V)の連鎖出発物質に付加する。少なくとも1個のエポキシ基を有するオルガノシロキサンモノマーはポリマー鎖にランダムに分布させることができるか、ポリマー骨格の鎖末端位に配置することができる。
【0026】
本発明による方法のさらなる目的は、複合金属シアン化物系から知られている、早い反応速度ならびに触媒失活化および除去の省略の利点を得ることである。
【0027】
本発明による方法のさらなる目的は、選択的DMC触媒アルコキシル化の反応条件下にオルガノシロキサン構造を保存し、これにより、ヒドロシリル化の経路により慣用的に製造されるポリエーテルシロキサンとは対照的に、ポリエーテルの未変換残分を含有せず、むしろ実質的に専ら表面活性で所望のターゲット生成物からなる新規な本発明の群のシリコーンポリエーテルに到達しうるようにすることである。
【0028】
エポキシ官能性(ポリ)オルガノシロキサンとして本発明により使用されるシリコーン化合物は、一般式(I):
【0029】
【化3】

[式中、
Rは、1から40個、特に1から20個の炭素原子を有する、直鎖および分枝鎖の、飽和、一価不飽和および多価不飽和の、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル基ならびに1から20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される1個または複数の同じか異なる基であり、
Xは独立に、Rであるか、エポキシ基を有する式(II):
【0030】
【化4】

のフラグメントであり、
相互に独立に、
aは、0から5の整数であり、
bは、0から500の整数であり、
cは、0から50の整数であり、
dは、0から200の整数であり、
eは、0から18の整数であり、
但し、少なくとも1個のX基は、式(II)のエポキシ官能性フラグメントである]
の化合物である。シロキサン構造中で添字a、bおよびcにより示される構造要素は、自由に入れ替え可能であり、ランダム分布またはブロックで存在してよい。
【0031】
単独で、または相互の混合物で、または式(III)および(IV)のエポキシ化合物と組み合わせて使用することができるこのような式(I)のエポキシ置換シロキサンの非排他的なリストは例えば、α,ω−ジ(グリシジルオキシプロピル)ポリ(ジメチルシロキサン)、3−グリシジルオキシプロピル−1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、5−グリシジルオキシプロピル−1,1,1,3,3,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、アリルグリシジルエーテルとシロキサン環を伴うポリ(メチルヒドロシロキサン)およびヘキサメチルジシロキサンの平衡からのコポリマーとのヒドロシリル化生成物ならびにアリルグリシジルエーテルとシロキサン環を伴うポリ(メチルヒドロシロキサン)およびα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサンの平衡からのコポリマーとのヒドロシリル化生成物を含む。
【0032】
式(I)のエポキシ官能性シロキサンを、シリコーンポリエーテルを製造するためのDMC触媒アルコキシル化において、本発明による方法により、必要な場合には、任意の望ましい順番の計量付加で、一般式(III)の酸化アルキレン:
【0033】
【化5】

[式中、
またはRおよびRまたはRは同じく、または独立に、Hであるか、さらなる置換を有してもよい飽和または場合により一価不飽和もしくは多価不飽和の、場合により一価もしくは多価の炭化水素基であり、ここで、RまたはR基はそれぞれ、一価炭化水素基である]と連続して、または混合して使用することができる。前記炭化水素基は、Yフラグメントを介して脂環的に(cycloaliphatically)架橋していてよく;Yは、存在しなくてよいか、1または2個のメチレン単位を伴うメチレン架橋であってよく;YがOである場合、RおよびRはそれぞれ独立に、1から20個、好ましくは1から10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピルもしくはブチル、ビニル、アリル基またはフェニル基である。好ましくは、式(III)中の2個のRおよびR基のうちの少なくとも1個は、水素である。特に好ましい酸化アルキレンは、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化1,2−または2,3−ブチレン、酸化イソブチレン、酸化1,2−ドデセン、酸化スチレン、酸化シクロヘキセン(この場合のR−Rは、−CHCHCHCH−基であり、したがってYは、−CHCH−である)もしくは酸化ビニルシクロヘキセンまたはこれらの混合物である。式(III)の炭化水素基RおよびRは同様に、さらなる置換を有し、ハロゲン、ヒドロキシル基またはグリシジルオキシプロピル基などの官能基を有してよい。このような酸化アルキレンには、エピクロロヒドリンおよび2,3−エポキシ−1−プロパノールが包含される。
【0034】
同様に、一般式(IV)のグリシジルエーテルおよび/またはグリシジルエステルなどのグリシジル化合物:
【0035】
【化6】

[式中、
少なくとも1個のグリシジルオキシプロピル基は、エーテルまたはエステル官能基Rを介して1から24個の炭素原子の直鎖または分枝鎖アルキル基、芳香族または脂環式基に結合している]を、式(I)で記載されるエポキシ官能性シロキサンと組み合わせて、かつ場合により式(III)の酸化アルキレンに加えて、使用することも可能である。この群の化合物には例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、C12/C14−脂肪族アルコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルまたはo−クレシルグリシジルエーテルが包含される。使用されるのが好ましいグリシジルエステルは例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルまたはネオデカン酸グリシジルである。同様に、多官能性エポキシ化合物、例えば1,2−エチルジグリシジルエーテル、1,4−ブチルジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキシルジグリシジルエーテルを使用することも可能である。
【0036】
アルコキシル化反応のために使用される出発物質または出発物質化合物は、全てが単独か、相互に混合された式(V)の化合物:
−H (V)
(式中、Hは、アルコールまたはフェノール性化合物のOH基に属する)であってよく、これは、式(V)に従い、少なくとも1個の反応性ヒドロキシル基を有する。Rは、飽和または不飽和で、場合により分枝鎖である基に対応するか、炭素鎖が酸素原子により中断されていてもよいアルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基タイプのポリエーテル基であるか、Rは、フェノール性OH基が直接結合している単一または多重に縮合している芳香族基である。アルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基を有し、出発物質化合物として使用することができるポリエーテル基の鎖長は、要望どおりの長さである。ポリエーテル、アルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基は好ましくは、1から1500個の炭素原子、より好ましくは2から300個の炭素原子、特に2から100個の炭素原子を含有する。
【0037】
出発物質化合物は、本発明の内容では、式(I)、(III)および(IV)のエポキシ官能性モノマーの本発明による付加により得られる、製造しようとするポリエーテル分子の出発を形成する物質を意味すると理解される。本発明による方法で使用される出発物質化合物は好ましくは、アルコール、ポリエーテロールまたはフェノールの群から選択される。出発物質化合物として、一価または多価ポリエーテルアルコールまたはアルコールR−H(Hは、アルコールまたはフェノールのOH基に属する)を使用することが好ましい。出発物質化合物は、単独で、または相互に混合して使用することができる。
【0038】
使用されるOH官能性出発物質化合物R−H(V)は好ましくは、その炭素骨格が酸素原子により中断されていてよく、18から10000g/mol、特に50から2000g/molのモル質量を有し、1から8個、好ましくは1から4個のヒドロキシル基を有する炭化水素化合物である。
【0039】
式(V)の化合物の例には、アリルアルコール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ−、トリ−およびポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジ−およびポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、セルロース糖、リグニンまたは、ヒドロキシル基を有し天然物質をベースとする他の化合物が包含される。
【0040】
有利には、DMC触媒アルコキシル化により予め同様に製造された1〜8個のヒドロキシル基および50から2000g/molのモル質量を有する低分子量のポリエーテロールを、出発物質化合物として使用する。
【0041】
脂肪族および脂環式OH基を伴う化合物に加えて、適切な化合物は、1〜20個のフェノール性OH官能基を有する任意の化合物である。これらには例えば、フェノール、アルキル−およびアリールフェノール、ビスフェノールAならびにノボラックが包含される。
【0042】
本発明による方法でアルコキシル化反応を開始するために、場合により懸濁媒体中で予めスラリー化した、式(V)の、出発物質または複数のOH官能性出発物質化合物および複合金属シアン化物触媒からなる出発物質混合物を、初めに反応器に充填する。使用される懸濁媒体は、ポリエーテルもしくは不活性溶媒または有利には、1種または複数の式(V)の出発物質化合物、または別法では2種の成分の混合物であってよい。式(I)、(III)または(IV)のエポキシ化合物のうちの少なくとも1種を、当初充填される出発物質混合物に計量導入する。アルコキシル化反応を開始させ、複合金属シアン化物触媒を活性化させるために、初めに通常、計量導入されるエポキシド全量のうちの一部のみを加える。この目的のために、式(III)の酸化アルキレンを使用することが好ましく、酸化プロピレンまたは酸化1,2−ブチレンを使用することが非常に特に好ましい。出発相中のエポキシドと出発物質の反応基、特に出発物質混合物中のOH基とのモル比は好ましくは、0.1から10:1、優先的には0.2から5:1、特に0.4から3:1である。エポキシドを加える前に、存在する何らかの任意の反応阻害性物質を反応混合物から例えば蒸留により除去することは有利でありうる。
【0043】
発熱反応の開始を、例えば圧力および/または温度を監視することにより検出することができる。反応器中の圧力の急激な低下は、気体の酸化アルキレンの場合には、酸化アルキレンが導入されつつあり、したがって反応が開始し、出発相の終了が達成されたことを示している。
【0044】
出発相の後に、すなわち、反応の開始の後に、所望のモル質量に応じて、さらなる式(V)の出発物質化合物およびさらなるエポキシドを同時に計量導入するか、さらなるエポキシドのみを計量導入する。式(I)、(III)および(IV)の異なるエポキシドを個々に、または任意の所望の混合物として加えることができる。本発明により使用されるエポキシ官能性シロキサンモノマーを酸化アルキレンと組み合わせて共重合させることが好ましい。例えば、反応混合物の粘度を低下させる目的で、反応を不活性溶媒中で実施することができる。適切な不活性溶媒は、炭化水素、特にトルエン、キシレンまたはシクロヘキサンである。
【0045】
本発明の生成物では、出発相に既に加えられているエポキシドを包含する計量導入されるエポキシドの合計と、使用される出発物質化合物、より特定すれば使用される出発物質化合物中のOH基の数とのモル比は好ましくは、1から10:1、特に1から10:1である。
【0046】
エポキシ化合物の添加を好ましくは60から250℃の温度、より好ましくは90から160℃の温度で進める。アルコキシル化が生じる圧力は好ましくは、0.02barから100bar、より好ましくは0.05から20bar、特に0.2から5bar(絶対)である。減圧下でアルコキシル化を実施することにより、反応を非常に確実に行うことができる。適切な場合には、アルコキシル化を不活性ガス(例えば窒素)の存在下で実施することができる。
【0047】
モノマー付加およびモノマー変換を完了するための任意の後反応の後に、未反応のモノマーの存在する何らかの残分および何らかのさらなる揮発性成分を、典型的には真空蒸留、ガスストリッピングまたは他の脱臭方法により除去する。揮発性二次成分を、バッチ式でまたは連続的に除去することができる。DMC触媒をベースとする本発明による方法では、通常、濾過を回避することが可能である。
【0048】
方法ステップは、同じまたは異なる温度で実施することができる。反応の開始時に反応器に当初充填される出発物質、DMC触媒および場合により懸濁媒体の混合物を、モノマーの計量添加の開始前に、国際公開第98/52689号パンフレットの教示に従ってストリッピングすることにより予備処理することができる。この場合、不活性ガスを、反応器供給路を介して反応混合物に加え、比較的揮発性な成分を反応混合物から、反応器系に備えられている真空系を用いて減圧を適用することにより除去する。この簡単な方法で、反応混合物から、触媒を阻害しうる物質、例えば低級アルコールまたは水を除去することが可能である。反応成分の添加の結果として、または副反応の結果として、阻害性化合物もまた、反応混合物に入りうるので、不活性ガスの添加および比較的揮発性な成分の同時除去は、特に反応の始動において有利であり得る。
【0049】
使用されるDMC触媒は全て知られているDMC触媒であり、好ましくは、亜鉛およびコバルトを含むもの、優先的にはヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛を含むものである。米国特許第5158922号明細書、米国特許第20030119663号明細書、国際公開第01/80994号パンフレットまたは前記文献に記載されているDMC触媒を使用することが好ましい。触媒は、非晶質または結晶であってよい。
【0050】
反応混合物中、触媒濃度は、好ましくは>0(0を越える)から2000ppmw(質量ppm)、好ましくは>0から1000ppmw、より好ましくは0.1から500ppmw、最も好ましくは1から200ppmwである。この濃度は、形成されるアルコキシル化生成物の全質量に対する。
【0051】
触媒を反応器に一度だけ計量導入することが好ましい。触媒の量は、方法に十分な触媒活性が生じるように調節すべきである。触媒を固体形態で、または触媒懸濁液の形態で計量導入することができる。懸濁液を使用する場合、適切な懸濁媒体は特に、式(V)の出発物質である。しかしながら、懸濁液を回避することが好ましい。
【0052】
本発明による方法は同様に、構造およびモル質量に関して制御された手法で、再現可能に製造することができることにおいて注目すべき、本発明の式(VI)のポリエーテルシロキサンを提供する。
【0053】
より特定すれば、したがって本発明による方法により、過剰なポリエーテルを含まない官能化ポリ(オルガノ)シロキサンまたはポリエーテルシロキサンコポリマーに到達することができる。
【0054】
したがって、本発明による方法の反応生成物は、その存在が今まで不可避であった反応成分、ポリエーテルの残分(過剰のポリエーテル)を含まない。モノマー単位の配列は、幅広い範囲内で変動して形成されていてよい。(I)、(III)および(IV)タイプのエポキシモノマーを、任意のブロック配列で、またはランダムにポリマー鎖に導入することができる。式(I)、(III)および(IV)の反応成分の開環を伴う反応により形成されるままにポリマー鎖に挿入された断片は、その配列において相互に自由に入れ替え可能である。
【0055】
式(I)中のXが、1つよりも多くエポキシ断片(II)に対応する場合、本発明による方法は、それぞれ出発化合物R−H(V)から出発したポリマー鎖であって、式(I)、(III)および(IV)の反応成分の開環を伴う反応により形成されてポリマー鎖に挿入された、その配列に関してのみならず自由に入れ替え可能な断片を含有するポリマー鎖が、式(I)のシロキサン骨格により定義される構造単位を介して相互に結合している、高度に官能化されたネットワークの形態で、ポリエーテルシロキサンを形成する。
【0056】
したがって、高度に複雑で、高度に官能化された高分子量構造が形成する。制御された方法で、官能性を、所望の使用分野に合わせることができる。式(I)のモノ−、ジ−またはポリエポキシ官能性オルガノシロキサンの混合物のアルコキシル化により、エポキシ官能性を調節することができる。生じるポリマー構造の架橋および複雑さの程度は、モノマーまたはモノマー混合物中のエポキシ基の平均数の増大に伴い上昇する。1から2のエポキシ官能性が好ましく、1から1.5のエポキシ官能性が非常に特に好ましい。
式(I)、(III)および(IV)の反応成分の開環を伴う反応により形成されてポリマー鎖に挿入された断片は、先行する定義の内容において、ポリエーテル構造単位の鎖のみにおいて、ブロックまたはランダム分布で生じることができるのではなく、形成された、式(I)により定義されるシロキサン構造単位を介して相互に結合している多数のポリエーテル構造単位にわたってもランダム分布で生じていてよい。
【0057】
したがって、方法生成物の構造変化の種々の性質により、式による何らかの明確な記載は不可能である。X基が断片(II)に1つのみ対応し、他は、R基に等しい式(I)のモノエポキシ官能性オルガノシロキサンの、本発明のアルコキシル化を介して生じる、本発明の式(VI)のポリエーテル構造が好ましい:
【0058】
【化7】

[式中、
断片Aは、式(VIa)の構造要素:
【0059】
【化8】

または式(VIb)の構造要素:
【0060】
【化9】

に対応し、
式(I)中のaは同時に、値1と想定される]。
【0061】
置換基R、R〜R、A、XおよびY基および添字a、b、c、dおよびeはそれぞれ、式(I)から(V)の化合物に関して前記された定義に対応し、ここで、
fは、1から200、好ましくは1から100、より好ましくは1から20、特に1から10の整数であり、
gは、0から10000、好ましくは0から1000、より好ましくは0から300、特に0から100の整数であり、
hは、0から1000、好ましくは0から100、より好ましくは0から50、特に0から30の整数であり、
但し、添字f、gおよびhを伴うフラグメントは自由に相互に入れ替え可能であり、すなわち、ポリエーテル鎖内での配列において相互に交換可能である。
【0062】
添字f、gおよびhを伴う異なるモノマー単位は、交互ブロック構造であってよいか、またはランダム分布であることができる。
【0063】
したがって、本明細書に提示されている式中で表されている添字および規定されている添字の数値範囲は、実際に存在する構造および/またはその混合物の可能なランダム分布の平均値と理解されるべきである。このことはまた、それ自体正確な用語で規定されている構造式、例えば式(VI)にも当てはまる。
【0064】
式(I)および(III)の反応成分の開環を伴う反応を介して形成される断片を含有し、添字gを伴う断片が添字fを伴う断片に対してモル過剰で存在する、本発明による方法により製造された化合物が好ましい。gとfとの比は好ましくは、2から500:1、より好ましくは5から300:1、最も好ましくは5から100:1である。添字hは、0から1000の任意の値と想定することができる。
【0065】
これらの本発明のシリコーンポリエーテル/ポリエーテルシロキサンまたはポリエーテルシロキサンコポリマーは、ヒドロシリル化経路を介して従来の方法で合成された化合物に対して、その異なる種類の化学構造により、新規の生成物群を構成する。本発明による方法により、本発明のシロキサン−ポリエーテルコポリマーのポリマー構造を、出発物質のタイプならびに利用可能なエポキシモノマーのタイプ、量および配列に応じて、多様に変動させることができ、したがって、性能の観点から重要な生成物特性を、最終使用の機能として適合させることができる。生成物の界面活性特性、通常はその親水性または疎水性は、幅広い範囲内で構造変化により影響を及ぼされることができる。現在利用可能なポリエーテルシロキサンとは対照的に、その性能特性は、遊離のポリエーテルの割合により損なわれない。新規のシリコーンポリエーテルはむしろ、表面活性化合物の濃縮物である。したがって、本発明による方法により得られるポリマーは、例えば、ポリウレタンフォーム安定剤、湿潤剤、分散添加剤、揮発分除去剤(devolatilizer)または脱泡剤として適している。
【0066】
fが0である場合、式(VI)は、シロキサン官能基により置換されていないポリエーテルに対応する。このようなポリエーテルは同時に、今までに知られている方法では不完全反応性反応成分の形態の二次成分に対応し、したがって、生成物中に残留する過剰のポリエーテルに対応する。
【0067】
本発明により請求の範囲に記載される反応で使用される反応器は原則として、反応およびそこに存在する任意の発熱性を制御することができる全ての適切な反応器タイプであってよい。
【0068】
方法技術で知られているように、反応を連続的に、半連続的に、またはバッチ式で行うことができ、利用可能な生産技術設備に柔軟に合わせることができる。
【0069】
従来の攪拌タンク反応器と同様に、国際公開第01/062826号パンフレットに記載されているような気相および内部熱交換管を備えたジェットループ反応器を使用することもまた可能である。加えて、気相−フリーループ反応器を使用することができる。
【0070】
反応成分を計量添加する際に、反応に関与する物質、すなわち、エポキシモノマー、出発物質、DMC触媒および適切な場合には懸濁媒体の良好な分布を保証すべきである。
【0071】
本発明のさらなる対象事項は、請求の範囲に記載されている。
【0072】
本発明のポリエーテルおよびそれを製造するための対応する方法を、下記で実施例により記載するが、本発明がこれらの例示的実施形態に制限されるとみなしうる可能性は何らない。
【0073】
下記で規定される範囲、一般式または化合物群は、明確に述べられている対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を選択することにより得られる全ての下位範囲および化合物の下位群も内包する。
【0074】
作業例:
下記に提示される実施例では、本発明を例により記載するが、明細書全体および請求の範囲からその適用範囲が明確である本発明が、実施例に規定されている実施形態に制限されると解釈しうる可能性は何らない。
【0075】
DMC触媒を用いる本発明の方法による、シロキサン基を有するポリエーテルアルコールの製造。平均モル質量を、標準としてのポリプロピレングリコールに対するGPC分析により決定した。後記の実験でモノマーとして使用されるエポキシ官能性シロキサンを、知られている先行技術に従い、ヘプタメチルトリシロキサンをアリルグリシジルエーテルでPt触媒によりヒドロシリル化することにより製造した。
【実施例1】
【0076】
3リットルオートクレーブに、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量750g/mol)200.0gおよびヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒0.017gを窒素下に初めに充填し、攪拌しながら130℃に加熱する。反応器を内部圧力30mbarまで排気して、存在するいずれの揮発性成分も蒸留により除去する。DMC触媒を活性化するために、酸化プロピレン50.0gの1ポーションを供給する。20分後に反応が開始した後に(内部反応器圧力の低下)、ヘプタメチルトリシロキサンおよびアリルグリシジルエーテルをベースとするエポキシシロキサン100.0gならびに酸化プロピレン368.0gを連続的に、かつ冷却しながら30分以内に、130℃および内部反応器圧力最大1.2bar(絶対)で同時に計量導入する。130〜150℃での180分間の後反応に、脱ガス段階を続ける。この段階で、残留酸化プロピレンなどの揮発性フラクションを減圧下に留去する。完成した無色、低粘度および透明なポリエーテルシロキサンを80℃未満に冷却し、反応器から排出する。生成物は、平均モル質量M4300g/molおよびM2500g/molを有する。
【実施例2】
【0077】
3リットルオートクレーブに、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量750g/mol)200.0gおよびヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒0.015gを窒素下に初めに充填し、攪拌しながら130℃に加熱する。反応器を内部圧力30mbarまで排気して、存在するいずれの揮発性成分も蒸留により除去する。DMC触媒を活性化するために、酸化プロピレン50.0gの1ポーションを供給する。20分後に反応が開始した後に(内部反応器圧力の低下)、ヘプタメチルトリシロキサンおよびアリルグリシジルエーテルをベースとするエポキシシロキサン100.0gならびに酸化1,2−ブチレン463.0gの均一な混合物を連続的に、かつ冷却しながら35分以内に、135℃および内部反応器圧力最大0.8bar(絶対)で計量導入する。135〜150℃での180分間の後反応に、脱ガス段階を続ける。この段階で、残留酸化1,2−ブチレンなどの揮発性フラクションを減圧下に留去する。完成した無色、低粘度のポリエーテルシロキサンを80℃未満に冷却し、反応器から排出する。生成物は、平均モル質量M3000g/molおよびM2000g/molを有する。
【実施例3】
【0078】
3リットルオートクレーブに、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量2200g/mol)200.0gおよびヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒0.015gを窒素下に初めに充填し、攪拌しながら130℃に加熱する。反応器を内部圧力30mbarまで排気して、存在するいずれの揮発性成分も蒸留により除去する。DMC触媒を活性化するために、酸化プロピレン58.0gの1ポーションを供給する。15分後に反応が開始した後に(内部反応器圧力の低下)、それぞれ6ポーションのヘプタメチルトリシロキサンおよびアリルグリシジルエーテルをベースとするエポキシシロキサン16.0gならびに酸化プロピレン26.0gを冷却しながら5時間以内に、交互に、125℃および内部反応器圧力最大1.0bar(絶対)で計量導入する。125〜150℃での150分間の後反応に、残留酸化プロピレンなどの揮発性フラクションを減圧下に留去するための脱ガス段階を続ける。完成したポリエーテルシロキサンを90℃未満に冷却し、反応器から排出する。ブロック構造の無色中粘度の生成物は混濁していて、平均モル質量M11200g/molおよびM3600g/molを有する。
【実施例4】
【0079】
3リットルオートクレーブに、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(平均モル質量2200g/モル)200.0gおよびヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒0.017gを窒素下に初めに充填し、攪拌しながら130℃に加熱する。反応器を内部圧力30mbarまで排気して、存在するいずれの揮発性成分も蒸留により除去する。DMC触媒を活性化するために、酸化プロピレン50.0gの1ポーションを供給する。10分後に反応が開始した後に(内部反応器圧力の低下)、ヘプタメチルトリシロキサンおよびアリルグリシジルエーテルをベースとするエポキシシロキサン200.0gならびに酸化1,2−ブチレン463.0gの均一な混合物を冷却しながら70分以内に、125℃および内部反応器圧力最大0.8bar(絶対)で計量導入する。125〜150℃での150分間の後反応の後に、酸化プロピレン78.0gを5分以内で130℃および内部反応器圧力最大1.5barで加える。130〜150℃での150分のさらなる後反応および残留エポキシドなどの揮発性フラクションを減圧下に留去するための脱ガス段階を続ける。完成したポリエーテルシロキサンを90℃未満に冷却し、反応器から排出する。混合構造の無色および低粘度の生成物は、平均モル質量M4000g/molおよびM2900g/molを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属シアン化物触媒の存在下で、エポキシ官能基を有する(ポリ)オルガノシロキサンをアルコキシル化する方法。
【請求項2】
DMC触媒により、反応性水素を伴う出発物質R−H(V)から進行して、エポキシ基を有する(ポリ)オルガノシロキサンをアルコキシル化重合することによる、請求項1に記載のシリコーンポリエーテルの製造方法。
【請求項3】
モノマーが前記シリコーンポリエーテルのポリマー鎖中で、末端に、または孤立した様式で、またはブロックで累積して、またはランダムに、分布していることを特徴とする、請求項1および2の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項4】
使用される前記エポキシ官能性(ポリ)オルガノシロキサンが、一般式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
Rは、1から40個の炭素原子を有する、直鎖および分枝鎖の、飽和、一価不飽和および多価不飽和の、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル基ならびに1から20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される1個または複数の同じか異なる基であり、
Xは独立に、Rであるか、エポキシ基を有する式(II):
【化2】

のフラグメントであり、
相互に独立に、
aは、0から5の整数であり、
bは、0から500の整数であり、
cは、0から50の整数であり、
dは、0から200の整数であり、
eは、0から18の整数であり、
前記シロキサン構造中で添字a、bおよびcにより示される構造要素は、自由に入れ替え可能であり、ランダム分布またはブロックで存在してよく、
但し、少なくとも1個のX基は、式(II)のエポキシ官能性フラグメントである]
であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1種または複数の式(I)のエポキシ官能性シロキサンモノマーをさらなる式(III):
【化3】

[式中、
またはRおよびRまたはRは同じく、または独立に、Hであるか、さらなる置換を有してもよい飽和または場合により一価不飽和もしくは多価不飽和の、場合により一価もしくは多価の炭化水素基であり、ここで、前記RまたはR基はそれぞれ、一価炭化水素基であり、ここで、前記炭化水素基は、Yフラグメントを介して脂環的に架橋していてよく;Yは、存在しなくてよいか、1または2個のメチレン単位を伴うメチレン架橋であってよく;YがOである場合、RおよびRはそれぞれ独立に、1から20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖基であり、さらに、前記炭化水素基RおよびRは、さらなる置換を有し、ハロゲン、ヒドロキシル基またはグリシジルオキシプロピル基などの官能基を有してよい]
または
式(IV)
【化4】

[式中、
少なくとも1個のグリシジルオキシプロピル基は、エーテルまたはエステル官能基Rを介して、1から24個の炭素原子の直鎖または分枝鎖アルキル基、芳香族または脂環式基に結合している]
のエポキシ化合物と個別に、または混合して、ブロックで、またはランダムに、少なくとも1個の反応性水素を伴う式(V)の連鎖出発物質に付加し、少なくとも1個のエポキシ基を有するオルガノシロキサンモノマーを、ポリマー鎖中にランダムに散乱するか、ポリマー骨格中の鎖末端位置に配置していてもよいことを特徴とする、請求項1から4の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
使用される前記出発物質R−H(V)が、その炭素鎖が酸素原子により中断されていてよく、18から10000g/モル、特に50から2000g/モルのモル質量を有し、1から8個の、脂肪族基、脂環式基またはフェノール性ヒドロキシル基を有する炭化水素化合物であることを特徴とする、請求項1から5の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
アリルアルコール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ−、トリ−およびポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジ−およびポリプロピレングリコール、1〜8個のヒドロキシル基および50から2000g/モルのモル質量を有する低分子量ポリエーテロール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、セルロース糖、リグニン、フェノール、アルキル−およびアリールフェノール、ビスフェノールAおよびノボラック、またはヒドロキシル基を有し天然物質をベースとする他のさらなる化合物を、単独で、または相互に混合して、出発物質R−H(V)として使用することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応を、1種の不活性溶媒中、または複数の不活性溶媒の混合物中で実施することを特徴とする、請求項1から7の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項9】
前記DMC触媒のために使用される溶媒または懸濁媒体が、前記出発物質R−H(V)であることを特徴とする、請求項1から7の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項10】
出発相で既に加えられたエポキシドを包含する計量導入されるエポキシドの合計のモル比が、使用される出発物質化合物に対して、より特定すれば使用される出発物質化合物のOH基の数に対して、1から10:1であることを特徴とする、請求項1から9の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応をバッチ式で、または連続的に行うことを特徴とする、請求項1から10の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項12】
前記DMC触媒濃度が、形成されるアルコキシル化生成物の全質量に対して、0超から2000ppmwまでであることを特徴とする、請求項1から11の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒を、固体の形態で、または触媒懸濁液の形態で、計量導入することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13の少なくとも一項に記載の方法により製造されるポリエーテルシロキサン。
【請求項15】
式(VI)のポリエーテルシロキサン:
【化5】

[式中、
フラグメントAは、式(VIa)の構造要素:
【化6】

または式(VIb)の構造要素:
【化7】

に対応し、
ここで、式(VIb)では、式(I)の元々のフラグメントのAは、値1と想定され、置換基R、R〜R、A、XおよびY基ならびに添字a、b、c、dおよびeはそれぞれ、式(I)から(V)の化合物に関して前記された定義に対応し、
fは、1から200の整数であり、
gは、0から10000の整数であり、
hは、0から1000の整数であり、
但し、添字f、gおよびhを伴うフラグメントは自由に相互に入れ替え可能であり、したがって、ポリエーテル鎖内での配列において相互に交換可能であり、添字f、gおよびhを伴う様々なモノマー単位は、交互にブロック構造で存在するか、ランダム分布であってよい]。
【請求項16】
請求項1から13に記載の方法のうちの一方法により製造される式(VI)のポリエーテルシロキサン。
【請求項17】
前記添字gを伴う前記フラグメントが、前記添字fを伴う前記フラグメントに対してモル過剰で存在する式(VI)のポリエーテルシロキサン。
【請求項18】
過剰のポリエーテルを含まない式(VI)のポリエーテルシロキサン。
【請求項19】
fが0である式(VI)の化合物を含まない式(VI)のポリエーテルシロキサン。
【請求項20】
ポリウレタンフォーム安定剤、湿潤剤、分散添加剤、揮発分除去剤または脱泡剤としての式(VI)のポリエーテルシロキサンの使用。

【公開番号】特開2009−249629(P2009−249629A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−83809(P2009−83809)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】