説明

複合顔料、並びにそれを用いた電子写真感光体、及び画像形成装置

【課題】複写機、レーザープリンター等の電子写真方式の画像形成装置の高画質化及び高安定化を実現できる特定のガリウムフタロシアニン化合物とアゾ化合物とからなる複合顔料等の提供。
【解決手段】例えばスルフォニルオキシ基がガリウム原子に結合したガリウムフタロシアニン化合物と、アゾ化合物とからなる複合顔料及びそれを用いた電子写真感光体である。前記のガリウムフタロシアニン化合物は、ハロゲン化ガリウムフタロシアニン及びヒドロキシガリウムフタロシアニンのいずれかと、スルフォン酸化合物を有機溶剤中で反応させることで合成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合顔料、並びに該複合顔料を用いた電子写真感光体、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましく、特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うレーザープリンター、デジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。急速に普及しているこれらのレーザープリンター、デジタル複写機は、最近では高速、高画質、高安定性への要求が急激に高くなっている。
画像形成装置に使用される電子写真感光体としては、有機系の感光材料を用いた有機感光体(OPC)が、コスト、生産性、及び低環境負荷等の理由から一般に広く応用されている。
この有機感光体に用いられる電荷発生物質としては、様々なものが開発されておりアゾ化合物、フタロシアニン顔料等の感光体特性が有用な顔料が見出されている。前記アゾ化合物としては、例えば、ベンジジン系ビスアゾ顔料(特許文献1及び2参照)、スチルベン系ビスアゾ顔料(特許文献3参照)、ジフェニルヘキサトリエン系ビスアゾ顔料(特許文献4参照)、ジフェニルブタジエン系ビスアゾ顔料(特許文献5参照)などが知られている。
【0003】
前記フタロシアニン顔料の例として、チタニルフタロシアニン顔料としては、特許文献6に記載されているA型、特許文献7に記載されているY型、特許文献8に記載されているI型、特許文献9に記載されているA型、特許文献10及び11に記載されているC型、特許文献12に記載されているB型、特許文献13に記載されているM型、特許文献14に記載されている準非晶質型などが挙げられる。無金属フタロシアニン顔料の具体例としては、X型無金属フタロシアニン顔料(特許文献15)、Τ型無金属フタロシアニン(特許文献16)などが挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の具体例としては、特許文献17及び18などに開示されている。銅フタロシアニン顔料の具体例としては、特許文献19、20及び21などに開示されている。クロロガリウムフタロシアニン顔料の具体例としては、特許文献22及び23などに開示されている。クロロインジウムフタロシアニン顔料の具体例としては、特許文献24などに開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの単独の顔料を用いた感光体は、対応波長領域が狭いため、レーザープリンター、複写機等の書き込み光の主流となる半導体レーザーが発信する長波長領域の光に対して感度が低く、使用環境や使用経時により感光体特性が変動するなどの問題があり、今後の高画質又は高速複写機用感光体としては不十分である。
これらの問題を解決するため、顔料を2種以上混合することが種々提案されている。例えば、無金属フタロシアニンとフルオレノン系アゾ顔料の混合(特許文献25及び26参照)、フタロシアニン化合物とアゾ顔料の混合(特許文献27参照)、金属フタロシアニンとペリレン顔料の混合(特許文献28参照)、キナクリドン顔料とチタニルフタロシアニン顔料の混合(特許文献29参照)、チタニルフタロシアニン顔料とそれ以外のフタロシアニン顔料の混合(特許文献30参照)などが提案されているが、未だ十分な性能を有するものは提供されていない。
【0005】
その理由の一つとして顔料を混合する方法は、ミリング等の機械的手段が主であり分子レベルの混合及び複合が不可能であり、有機光導電体としての機能を十分に発揮できていなかったと考えられる。また、アシッドペーストを併用する方法も提案されているが、濃硫酸を用いるため製造上の問題があるとともに、分解等が懸念され顔料への適用が制限される。また、フタロシアニン顔料のように結晶型により特性が大きく異なるものは、アシッドペーストに混合した場合には、所望の結晶型が得られず、結果として十分な感光体特性が得られないという問題もあった。
したがって、従来の欠点を克服した電子写真感光体を実現するべく、より優れた電荷発生物質の開発が強く望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、複写機、レーザープリンター等の電子写真方式の画像形成装置の高画質化及び高安定化を実現できる特定のガリウムフタロシアニン化合物とアゾ化合物とからなる複合顔料、並びに該複合顔料を電荷発生物質として用いた、幅広い温湿度環境及び電圧印加条件において画像劣化のない高品質なプリントを長期間にわたって出力することができる電子写真感光体、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、アゾ化合物とからなることを特徴とする複合顔料である。
【化1】

ただし、前記一般式(A)中、Xは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表す。R〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びアリール基のいずれかを表す。nは、1又は2の整数である。
<2> 支持体と、該支持体上に少なくとも感光層を有してなり、該感光層が前記<1>に記載の複合顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
<3> 電子写真感光体と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、前記<2>に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、複写機、レーザープリンター等の電子写真方式の画像形成装置の高画質化及び高安定化を実現できる特定のガリウムフタロシアニン化合物とアゾ化合物とからなる複合顔料、並びに該複合顔料を電荷発生物質として用いた、幅広い温湿度環境及び電圧印加条件において画像劣化のない高品質なプリントを長期間にわたって出力することができる電子写真感光体、及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の電子写真感光体の層構成の更に他の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の別の電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の画像形成装置の一例を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の画像形成装置の他の一例を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の画像形成装置の他の一例を説明するための図である。
【図8】図8は、プロセスカートリッジの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(複合顔料)
本発明の複合顔料は、下記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、アゾ化合物とからなる。
【0011】
<ガリウムフタロシアニン化合物>
【化2】

ただし、前記一般式(A)中、Xは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表す。R〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びアリール基のいずれかを表す。nは、1又は2の整数である。
【0012】
前記一般式(A)中、X及びR〜R16における、アルキル基及びアルコキシル基のアルキル部分としては、例えば、直鎖又は分岐状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、エイコシル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜10のアルキル基が特に好ましい。
【0013】
アルケニル基としては、例えば、直鎖又は分岐状の炭素数2〜20のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、1−エチル−2−プロペニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、エイコセニル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、などが挙げられる。
【0014】
アリール基としては、例えば、炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、アズレニル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、などが挙げられる。
【0015】
Xの置換基としては、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アリール基、カルボキシ基、又はシアノ基が挙げられ、具体的には、上述したものと同様である。
【0016】
前記ガリウムフタロシアニン化合物としては、下記一般式(B)で表される化合物が、良好な電子写真感光体特性を示す点で好ましい。
【化3】

ただし、前記一般式(B)中、Yは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表し、前記置換基としては、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アリール基、カルボキシ基、又はシアノ基が挙げられる。
これらの中でも、Yとしては、置換基を有してもよいアリール基が良好な電子写真感光体特性を示す点で特に好ましい。
前記一般式(B)中におけるアリール基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、及びハロゲン原子としては、前記一般式(A)と同様のものが挙げられる。
【0017】
前記ガリウムフタロシアニン化合物としては、下記構造式(C)から(F)で表される化合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、下記構造式(C)及び(D)が良好な電子写真感光体特性を示す点で特に好ましい。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0018】
前記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物は、ハロゲン化ガリウムフタロシアニン及びヒドロキシガリウムフタロシアニンのいずれかと、スルフォン酸化合物を有機溶剤中で反応させることで合成することができる。
前記ハロゲン化ガリウムフタロシアニンとしては、例えば、クロロガリウムフタロシアニン、ブロモガリウムフタロシアニン、ヨウ素ガリウムフタロシアニンなどが挙げられ、これらは公知の方法によって合成することができる。例えば、クロロガリウムフタロシアニンは、D.C.Acad.Sci.,(1965)、242,1026に記載の三塩化ガリウムとジイミノイソインドリンを反応させる方法により合成することができる。
前記ブロモガリウムフタロシアニンは、特開昭59−133551号公報に記載の三臭化ガリウムとフタロニトリルを反応させる方法により合成することができる。
前記ヨウ素ガリウムフタロシアニンは、特開昭60−59354号公報に記載の三ヨウ化ガリウムとフタロニトリルを反応させる方法により合成することができる。
また、前記ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、上述のハロゲン化ガリウムフタロシアニンを加水分解することで得ることができる。加水分解は酸加水分解でもよいし、アルカリ加水分解でもよい。前記酸加水分解については、例えば、Bull.Soc.Chim.France,23(1962)に記載のクロロガリウムフタロシアニンを、硫酸を用いて加水分解する方法などがある。前記アルカリ加水分解については、Inrog.Chem.(19),3131,(1980)に記載のアンモニアを用いて分解する方法などがある。
【0019】
次いで、得られたハロゲン化ガリウムフタロシアニン又はヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸化合物とを反応させることで、前記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物を合成できるが、用いる原料のガリウムフタロシアニンとしてはハロゲン化ガリウムフタロシアニンの方が好ましく用いることができる。これは、前述した通り、その製造方法によるところであり、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの製造方法においては酸やアルカリを用いた酸加水分解処理を行う際に分解物の生成が免れないからである。
これに対してハロゲン化ガリウムフタロシアニンについては加水分解の工程を設けないで製造することが可能であることから、合成原料としての分解物生成がなく、また、製造工程の少ないハロゲン化ガリウムフタロシアニンを良好に用いることができる。
【0020】
前記スルフォン酸化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタンスルフォン酸、エタンスルフォン酸、ブタンスルフォン酸、ペンタンスルフォン酸、ヘキサンスルフォン酸、ヘプタンスルフォン酸、オクタンスルフォン酸、ヘキサデカンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルフォン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルフォン酸、2−クロロエタンスルフォン酸、2−ブロモエタンスルフォン酸、ビニルスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、p−クロロベンゼンスルフォン酸、ニトロベンゼンスルフォン酸、ピリジンスルフォン酸、1−ナフタレンスルフォン酸、4−アミノナフタレン−1−スルフォン酸、アントラキノン−2−スルフォン酸、1,3−ベンゼンジスルフォン酸、1,5−ナフタレンジスルフォン酸、1,3−プロパンジスルフォン酸、1,4−ブタンジスルフォン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、p−クロロベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸が特に好ましい。
【0021】
前記ハロゲン化ガリウムフタロシアニン又はヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸化合物との量比は、前記一般式(A)のnが2のときは、スルフォン酸化合物は二分の一モル、また前記一般式(A)のnが1のときは、スルフォン酸化合物は等モル以上が適しており、用いるスルフォン酸化合物の反応性などにより異なるが1.1倍モル〜500倍モルが適している。
また、反応させる温度でスルフォン酸化合物が液体である場合は反応溶剤として用いてもよい。
【0022】
ここで用いられる有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、ニトロベンゼン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ピリジン、ピコリン又はキノリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
反応温度は0℃〜200℃、好ましくは20℃〜150℃で30分間〜50時間反応させて合成できる。
【0023】
<アゾ化合物>
本発明の複合顔料で用いられるアゾ化合物A(H)n(ただし、Aは、下記一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である。)は、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を化学的方法及び/又は熱的方法により脱カルボエステル化することで製造される。
A(E)n ・・・ 一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基であり、該残基Aは、少なくとも1つのヘテロ原子でn個のE基に結合し、該ヘテロ原子は、N及びOのいずれかであり、残基Aの一部を形成しており、E基は、それぞれ独立に、−C(=O)−O−R17(ただし、R17は、炭素数4〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す)を表す。nは、1〜10の整数である。
【0024】
前記一般式(I)で表されるアゾ化合物としては、特開2009−7523号公報に記載のものを用いることができ、これを化学的方法及び/又は熱的方法により脱カルボエステル化することでA(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物を製造することができる。
脱カルボエステル化を行う化学的方法としては、酸又は塩基などの触媒を反応させる方法があり、好ましくは酸を用いることができる。前記酸としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、安息香酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0025】
前記脱カルボエステル化を行う熱的方法としては、溶媒中で50℃〜300℃に加熱する方法があり、好ましくは70℃〜250℃の加熱条件を用いることができる。前記加熱時間としては30分間〜20時間が好ましい。
ここで用いられる有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;ブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリン又はキノリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明に用いられるアゾ化合物の残基Aは、下記一般式(2)で表される。
【化8】

ただし、前記一般式(2)中、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは、2又は3の整数を表す。
また、より好ましくは、前記一般式(2)のCpが下記一般式(3)乃至(11)の少なくともいずれかで表されるカップラー成分残基である。
【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【化11】

【化12】

【0029】
前記一般式(3)〜(6)中、X、Y、Z、p、及びqは、それぞれ以下のものを表す。
Xは、−OH、−N(R)(R)、又はNHSO−R(ただし、R及びRは、水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、Rは置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す)を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基又はCON(R)(Y)[ただし、Rは、水素原子、アルキル基もしくはその置換体又はフェニル基もしくはその置換体を表し、Yは、炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、又はN=C(R)(R)(ただし、Rは、炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体又はスチリル基もしくはその置換体、Rは、水素原子、アルキル基又はフェニル基もしくはその置換体を表すか、あるいはR及びRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]を表す。
Zは、炭化水素環もしくはその置換体又は複素環もしくはその置換体を表す。
pは、1又は2の整数を表す。
qは、1又は2の整数を表す。
【0030】
【化13】

ただし、前記一般式(7)中、Rは、置換もしくは無置換の炭化水素基を表し、Xは、前記と同じ意味を表す。
【0031】
【化14】

ただし、前記一般式(8)中、Aは、一般式(8)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基、又は窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表す(これらの環は置換又は無置換でもよい)。Xは、前記と同じ意味を表す。
【0032】
【化15】

ただし、前記一般式(9)中、Rは、アルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基又はそのエステルを表し、Arは、炭化水素環基又はその置換体を表し、Xは、前記と同じ意味を表す。
【0033】
【化16】

【化17】

ただし、前記一般式(10)及び(11)中、Rは、水素原子又は置換もしくは無置換の炭化水素基を表し、Arは、炭化水素環基又はその置換体を表す。ただし、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。
【0034】
また、より好ましくは前記一般式(2)のBが、下記一般式(12)〜(14)で表されるアゾ化合物である。これらのアゾ化合物は一般的にn型の特性を示すため、ガリウムフタロシアニン化合物と複合化させた場合、p−n接合を形成することができ非常に有効である。
【化18】

ただし、前記一般式(12)中、R11及びR12は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基又はそのエステルを表す。
【化19】

ただし、前記一般式(13)中、R19及びR20は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基又はそのエステルを表す。
【0035】
【化20】

ただし、前記一般式(14)中、R14、R15、及びR16は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基又はそのエステルを表す。
【0036】
前記一般式(I)で表されるアゾ化合物としては、アゾ化合物の主骨格が一般式(12)である式(12)−1〜(12)−14、アゾ化合物の主骨格が一般式(13)である式(13)−1〜(13)−5、アゾ化合物の主骨格が一般式(14)である式(14)−1〜(14)−5がある。
【0037】
以下、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物の具体例を示す。
Eは、カルボエステル基:−C(=O)−O−R(ただし、Rは、炭素数4〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、又はアラルキル基を表す)を表す。なお、本発明の複合顔料中では、Eはすべて水素原子となっている。
【0038】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(12)である化合物の例>
【化21】

【化22】

【化23】

【0039】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(13)である化合物の例>
【化25】

【化26】

【0040】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(14)である化合物の例>
【化27】

【化28】

【0041】
前記カルボエステル基を有する一般式(I)で表されるアゾ化合物は、例えば、特開2009−7523号公報、欧州特許第648770号公報、欧州特許第648817号公報、及び特表2001−513119号公報に記載されている方法により合成でき、例えば、非プロトン性有機溶剤中、触媒として塩基の存在下、0℃〜150℃、好ましくは10℃〜100℃の温度で、30分間〜20時間、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物と、下記一般式(15)で表されるピロ炭酸ジエステルとを、適切なモル比で反応させて合成できる。
【化29】

ただし、前記一般式(15)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
【0042】
それぞれの場合において、モル比は導入されるE(−CO・O−R)の数に左右される。好ましくはピロ炭酸ジエステルを少し過剰に用いるのが適している。
前記ピロ炭酸ジエステルは、前記アゾ化合物の例えばカルバモイル基等のN原子、ヒドロキシ基等のO原子などに反応し得、而して例えば、前記例示化合物に示される構造式(構造式中のE=CO−O−R基)のように、カルボエステル基を有するアゾ化合物を得ることができる。これから理解されるように、前記ピロ炭酸ジエステルは、前記カプラー成分残基Cp(アゾ基カップリングのオルト位やパラ位にヒドロキシ基を有するものが多い)に反応し得るが、アゾ化合物の主骨格Bにもそのような反応性部位があれば反応し得る。但し、これら例は、説明のため挙げたカルボエステル化度の高い例であり、本発明を制限するためのものではない。
【0043】
適切な非プロトン性有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル系溶媒、又はエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、又はアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリン又はキノリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ピリジン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
触媒として適切な塩基としては、例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ金属の水酸化物及び炭酸塩、アルカリ金属アミド類(例えば、ナトリウムアミド、カリウムアミド等)、水素化アルカリ金属類(例えば、水素化リチウム等)、有機脂肪族、芳香族又はヘテロ環式N−塩基類(例えば、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロウンデセン、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジン、トリエチルアミン等)などが挙げられる。これらの中でも、有機N−塩基類が特に好ましい。前記有機N−塩基類としては、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジンなどが挙げられる。
前記一般式(15)で表されるピロ炭酸ジエステルは、一般に知られている方法で製造できる。また商業的にも入手できる。Rは、上記の記載のものを示すが、好ましくは溶解性の驚くべき向上の点で分岐のアルキル基が好ましい。
【0044】
本発明の複合顔料について更に説明する。
前記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、A(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物との複合比は、特に制限はなく、目的に応じて任意に選択することができる。ガリウムフタロシアニン化合物の特性を更に引き出すことが目的である場合は、前記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物100質量部に対して、A(H)nで表されるアゾ化合物の添加量は0.1質量部〜300質量部が好ましく、10質量部〜100質量部がより好ましい。前記アゾ化合物が、0.1質量部未満であると、複合化の効果が明らかではなく、300質量部を超えると、ガリウムフタロシアニン化合物の特性が十分に発現しないことがある。
逆に、アゾ化合物の特性を更に引き出すことが目的である場合には、前記アゾ化合物100質量部に対して、前記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物の添加量は0.1質量部〜300質量部が好ましく、10質量部〜100質量部がより好ましい。前記ガリウムフタロシアニン化合物が、0.1質量部未満であると、複合化の効果が明らかではなく、300質量部を超えると、アゾ化合物の特性が十分に発現しないことがある。
【0045】
前記複合顔料を製造する際に用いられる有機溶剤としては、前記有機溶剤を用いることができるが、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、ニトロベンゼン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリクロロエタン、ピコリン又はキノリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記複合顔料を製造する際の加熱温度は、0℃〜200℃が好ましく、20℃〜150℃がより好ましく、加熱時間としては30分間〜20時間が好ましい。
【0046】
本発明の複合顔料を製造する方法としては、下記(1)〜(4)に示すように4つに大別することができる。
【0047】
(1)ハロゲン化ガリウムフタロシアニン及びヒドロキシガリウムフタロシアニンのいずれかと、スルフォン酸化合物とを反応させて一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物を製造すると共に、化学的方法及び熱的方法の少なくともいずれかにより、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物からA(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物を製造することにより得られるものが好ましい。
A(E)n ・・・ 一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基であり、該残基Aは、少なくとも1つのヘテロ原子でn個のE基に結合し、該ヘテロ原子は、N及びOのいずれかであり、残基Aの一部を形成しており、E基は、それぞれ独立に、−C(=O)−O−R17(ただし、R17は、炭素数4〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す)を表す。nは、1〜10の整数である。
即ち、ハロゲン化ガリウムフタロシアニン又はヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸化合物との反応と、一般式(I):A(E)nで表されるアゾ化合物の脱カルボエステル化を同時に行うことで本発明の複合顔料を製造することができる。
前記スルフォン酸化合物は、前記アゾ化合物の脱カルボエステル化の触媒とも機能させるのが適している。また、この反応に用いる有機溶媒としては、前記アゾ化合物の溶解性のよいものが適しており、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。
具体的には、ハロゲン化ガリウムフタロシアニン又はヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸化合物、及び一般式(I)で表されるアゾ化合物を、前記有機溶媒とともに、20℃〜150℃で反応させることにより、前記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物とA(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物とからなる本発明の複合顔料を製造することができる。
【0048】
(2)ハロゲン化ガリウムフタロシアニン及びヒドロキシガリウムフタロシアニンのいずれかとスルフォン酸化合物とを反応させることで、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物を製造する際に、A(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物が存在することにより得られるものが好ましい。即ち、A(H)nで表されるアゾ化合物の存在下でハロゲン化ガリウムフタロシアニン又はヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸化合物を反応させることで本発明の複合顔料を製造することができる。
ここで用いるアゾ化合物は、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と効率良く複合化させるために前もってボールミリング等の機械的粉砕処理をすることができる。この反応の溶媒としては、前記有機溶媒を使用することができる。
具体的には、ハロゲン化ガリウムフタロシアニン又はヒドロキシガリウムフタロシアニンとスルフォン酸化合物及びアゾ化合物を、前記有機溶媒とともに、20℃〜150℃で反応させることにより一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物とA(H)nで表されるアゾ化合物からなる本発明の複合顔料を製造することができる。
【0049】
(3)化学的方法及び熱的方法の少なくともいずれかにより下記一般式(I)で表されるアゾ化合物からA(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物を製造する際に、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物が存在することにより得られるものが好ましい。
A(E)n ・・・ 一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基であり、該残基Aは、少なくとも1つのヘテロ原子でn個のE基に結合し、該ヘテロ原子は、N及びOのいずれかであり、残基Aの一部を形成しており、E基は、それぞれ独立に、−C(=O)−O−R17(ただし、R17は、炭素数4〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す)を表す。nは、1〜10の整数である。
即ち、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物の存在下、一般式(I):A(E)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物の脱カルボエステル化を行うことで本発明の複合顔料を製造することができる。
ここで用いる溶媒としては、アゾ化合物の溶解性のよいものが適しており、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンが挙げられる。
反応触媒として、酸を用いる場合には、前述のような酸を用いることができる。具体的には、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物及び一般式(I):A(E)nで表されるアゾ化合物及び場合により酸を、上述の有機溶媒とともに、20℃〜150℃で反応させることにより一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物とA(H)nで表されるアゾ化合物からなる本発明の複合顔料を製造することができる。
【0050】
(4)一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、A(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物とが同時に複合化処理されて得られるものが好ましい。即ち、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物とA(H)nで表されるアゾ化合物を同時に複合化処理することで本発明の複合顔料を製造することができる。
ここで用いる複合化処理としては従来公知の方法から選ぶことができ、例えば、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物とA(H)nで表されるアゾ化合物とを必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの公知の分散方法を用いて分散することで本発明の複合顔料を製造することができる。
【0051】
本発明の複合顔料は、優れた特性を有し、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機太陽電池、電子写真分野の電子写真感光体などに用いられるが、これらの中でも、以下に説明するように、電子写真感光体における電荷発生物質として好適に用いられる。
【0052】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に少なくとも感光層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記感光層は、本発明の前記複合顔料を含有する。
【0053】
ここで、前記電子写真感光体の構成については図面を参照して以下に詳しく説明する。
本発明の電子写真感光体201は、図1に示すように、支持体202上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層203と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層204が積層された構成をなしている。
また、本発明の電子写真感光体201は、図2に示すように、支持体202と、電荷発生層203との間に、下引き層206、あるいは中間層を形成してもよい。
また、本発明の電子写真感光体201は、図3に示すように、電荷輸送層204の上に保護層205を形成してもよい。
更に、本発明の電子写真感光体201は、図4に示すように、支持体202上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層型感光層207を有した単層型感光体の態様をなしてもよい。
【0054】
<支持体>
前記支持体としては、体積抵抗値が1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0055】
その他、前記支持体上に導電性粉体を適当なバインダー樹脂に分散して塗工したものについても、前記導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
前記導電性層は、前記導電性粉体と前記バインダー樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、前記支持体として良好に用いることができる。
【0056】
<感光層>
次に、積層構成の感光層について説明する。
前記積層構成の感光層は、少なくとも電荷発生層、及び電荷輸送層が順次積層されることによって構成されている。
【0057】
<<電荷発生層>>
前記電荷発生層は、電荷発生物質を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷発生物質としては、本発明の前記複合顔料を用いる。
前記電荷発生物質は、本発明の複合顔料と従来公知の電荷発生物質を混合して用いてもよい。従来公知の電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料等のアゾ顔料、チタニルフタロシアニン、銅フタロシアニン、バナジルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、インジゴ顔料、ピロロピロール顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクエアリウム顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルベンザール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、セルロース系樹脂、カゼインなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記バインダー樹脂の含有量は、前記電荷発生物質100質量部に対し、0質量部〜500質量部が好ましく、10質量部〜300質量部がより好ましい。
【0059】
前記電荷発生層は、前記電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの公知の分散方法を用いて分散し、これを支持体上、もしくは下引き層や中間層上に塗布し、乾燥することにより形成される。バインダー樹脂の添加は、電荷発生物質の分散前、あるいは分散後のどちらでも構わない。
前記電荷発生層の形成に用いられる前記溶剤としては、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等の一般に用いられる有機溶剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が特に好ましい。
【0060】
前記電荷発生層の形成用塗工液は、前記電荷発生物質、溶媒及びバインダー樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていてもよい。
前記塗工液を用いて電荷発生層を塗工する方法としては、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。
前記電荷発生層の厚みは、0.01μm〜5μmが好ましく、0.1μm〜2μmがより好ましい。塗工後には、オーブン等で加熱乾燥される。前記電荷発生層の乾燥温度としては、50℃以上160℃以下が好ましい。
【0061】
<<電荷輸送層>>
前記電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を溶剤に溶解又は分散した塗工液を、塗布し、乾燥することにより形成される。前記電荷輸送層の塗工液には、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、滑剤等の添加剤を添加してもよい。
【0062】
前記電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記正孔輸送物質としては、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート又はその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物又はその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷輸送物質の含有量は、前記バインダー樹脂100質量部に対して、20質量部〜300質量部が好ましく、40質量部〜150質量部がより好ましい。
【0064】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。これらの中でも、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒の使用は好ましいものである。具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテル;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、又はそれらの誘導体が良好に用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷輸送層の厚みは、解像度や応答性の点から、10μm〜50μmが好ましく、15μm〜35μmがより好ましい。
塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等の公知の方法を用いることができるが、電荷輸送層は膜厚をある程度厚く塗る必要があるため、粘性の高い液で浸漬塗工法に塗工する方法ことが好ましい。
塗工後の電荷輸送層は、電荷発生層で用いられる熱的手段により加熱乾燥される。乾燥温度は塗工液に含有される溶媒によっても異なるが、80℃〜200℃が好ましく、110℃〜170℃がより好ましい。また、乾燥時間は、10分間以上が好ましく、20分間以上が更に好ましい。
【0066】
<単層型感光層>
前記単層型感光層は、上述した電荷発生物質、電荷輸送物質をバインダー樹脂中に分散乃至溶解させ、電荷発生機能、及び電荷輸送機能を一つの層で実現した感光体である。
前記電荷発生物質としては、本発明の前記複合顔料を用いる。
【0067】
前記感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、及びバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の溶剤に溶解ないし分散し、これを浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどの従来公知の方法を用いて塗工して形成できる。
前記電荷輸送物質には、前述した正孔輸送物質と電子輸送物質の双方が含有されることが好ましい。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
前記単層型感光層に用いられる電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、有機溶剤及び各種添加剤等に関しては、前述の電荷発生層及び電荷輸送層に含有されるいずれの材料をも使用することが可能である。
前記バインダー樹脂としては、前記電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。前記バインダー樹脂100質量部に対する電荷発生物質の含有量は、5質量部〜40質量部が好ましく、10質量部〜30質量部がより好ましい。また、前記電荷輸送物質の含有量は、0質量部〜190質量部が好ましく、50質量部〜150質量部がより好ましい。前記感光層の厚みは、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
【0068】
<<下引き層>>
本発明の感光体においては、前記支持体と前記感光層の間に、下引き層を設けることができる。
前記下引き層は、一般に、樹脂を主成分とするが、前記樹脂としては、前記下引き層上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対する耐溶剤性が高い樹脂であることが好ましい。前記樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂;共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂;ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、イソシアネート、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
前記下引き層は、前記電荷発生層及び電荷輸送層と同様に、溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。
前記下引き層には、必要に応じて、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を添加することもできる。
【0069】
<<保護層>>
本発明においては、感光体の最表面に耐摩耗性向上のために、保護層を設けることができる。前記保護層としては、電荷輸送成分とバインダー成分とを重合させた高分子電荷輸送物質型、フィラーを含有させたフィラー分散型、反応性官能基を有する構成材料を硬化させた硬化型などが知られているが、従来公知のいずれの保護層についても使用することができる。
【0070】
<<中間層>>
前記感光体においては、必要に応じて前記支持体上に、中間層を設けてもよい。該中間層は樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが好ましい。前記樹脂としては、前記下引き層と同様のものを適宜選択して用いることができる。
【0071】
前記電子写真感光体においては、耐環境性の改善のため、特に、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、表面保護層等の各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質、レベリング剤などを添加することができる。
【0072】
<プロセスカートリッジ>
本発明で用いられるプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、該電子写真感光体上に形成した静電潜像をトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段と、帯電手段、クリーニング手段、転写手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有し、画像形成装置本体に着脱可能であり、
前記電子写真感光体が、本発明の前記電子写真感光体である。
前記プロセスカートリッジとは、本発明の電子写真感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段の少なくとも1つを具備し、画像形成装置に着脱可能とした装置(部品)である。
【0073】
ここで、本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を図8に示すが、ここでは除電手段は記載されていない。
前記プロセスカートリッジは、例えば、図8に示すように、電子写真感光体101を内蔵し、帯電手段112、現像手段114、転写手段118、クリーニング手段123を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図8中、113は露光手段からの露光、117は記録紙をそれぞれ示す。前記電子写真感光体101としては、前記画像形成装置と同様なものを用いることができる。前記帯電手段112には、任意の帯電手段が用いられる。
【0074】
次に、図8に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、電子写真感光体101は、回転しながら、帯電手段112による帯電、露光手段(不図示)による露光113により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段114でトナー現像され、該トナー現像は転写手段118により、記録紙117に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の電子写真感光体101表面は、クリーニング手段123によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0075】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
本発明で用いられる画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
【0076】
本発明で用いられる画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0077】
−静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段−
前記静電潜像形成工程は、電子写真感光体上に静電潜像を形成する工程である。
前記電子写真感光体(「静電潜像担持体」、「感光体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体;ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0078】
前記アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃〜400℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を有する感光体(以下、「a−Si系感光体」と称することがある)を用いることができる。これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa−Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0079】
前記静電潜像の形成は、例えば前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記電子写真感光体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0080】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記電子写真感光体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
【0081】
前記帯電手段の形状としてはローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等のどのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電手段として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。又はブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電器とする。
前記帯電器は、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
【0082】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0083】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、前記トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0084】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0085】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0086】
前記現像器に収容させる現像剤は、前記トナーを含む現像剤であるが、該現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0087】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0088】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0089】
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0090】
前記除電工程は、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0091】
前記クリーニング工程は、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0092】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0093】
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0094】
次に、図面を用いて本発明の画像形成方法及び画像形成装置について詳しく説明する。
図5は、本発明の画像形成装置の一例を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
図5に示すように、感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電ローラ12、転写チャージャ18、及び分離チャージャ19には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電手段あるいはブラシ状の帯電手段等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0095】
帯電手段は、コロナ帯電等の非接触帯電方式やローラあるいはブラシを用いた帯電手段による接触帯電方式が一般的であり、本発明においてはいずれも有効に使用することが可能である。特に、帯電ローラは、コロトロンやスコロトロン等に比べてオゾンの発生量を大幅に低減することが可能であり、感光体の繰り返し使用時における安定性や画質劣化防止に有効である。
しかし、感光体と帯電ローラとが接触していることにより、繰り返し使用によって帯電ローラが汚染され、それが感光体に影響を及ぼし異常画像の発生や耐摩耗性の低下等を助長する原因となっていた。特に、耐摩耗性の高い感光体を用いる場合、表面の摩耗によるリフェイスがしにくいことから、帯電ローラの汚染を軽減させる必要があった。
【0096】
そこで、図6に示すように、帯電ローラ12にギャップ形成部材12aを設け、感光体1に対してギャップを介して近接配置させることによって、汚染物質が帯電ローラに付着しにくく、あるいは除去しやすくなり、それらの影響を軽減することが可能である。
この場合、感光体1と帯電ローラ12とのギャップは小さい方が好ましく、例えば、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
しかし、前記帯電ローラを非接触とすることによって、放電が不均一になり、感光体の帯電が不安定になる場合がある。このような問題は、直流成分に交流成分を重畳させることによって帯電の安定性を維持し、これによりオゾンの影響、帯電ローラの汚染の影響及び帯電性の影響を同時に軽減することが可能となる。
【0097】
一方、図5に示す画像露光部13、除電ランプ11等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも、半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。
所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
光源等は、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体1に光が照射される。ただし、除電工程における感光体1への露光は、感光体1に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印可することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
【0098】
電子写真感光体1に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
転写手段には、一般に前述の帯電器を使用することができるが、図5に示すように、転写チャージャ18と、分離チャージャ19とを併用したものが効果的である。
また、このような転写手段を用いて、感光体1からトナー像を紙に直接転写されるが、本発明においては感光体上のトナー像を一度中間転写体に転写し、その後中間転写体から紙に転写する中間転写方式であることが感光体の高耐久化、あるいは高画質化においてより好ましい。
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
【0099】
また、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。しかし、中間転写方式は、一枚のフルカラー画像を得るのに4回のスキャンが必要となるため、感光体の耐久性が大きな問題となっていた。感光体は、ドラムヒーターなしでも画像ボケが発生しにくいことから中間転写方式の画像形成装置に組み合わせて用いることが容易であり、特に有効かつ有用である。中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
図5に示す現像ユニット14により、感光体1上に現像されたトナーは、記録媒体17に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。
【0100】
このようなトナーは、クリーニングブラシ22、又はクリーニングブレード23により、感光体1から除去される。前記クリーニング工程は、クリーニングブラシだけで行われたり、クリーニングブレードと併用して行われることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。クリーニングは、前述のとおり転写後に感光体1上に残ったトナー等を除く工程であるが、上記のクリーニングブレード23、あるいはクリーニングブラシ22等によって感光体1が繰り返し擦られることにより、感光体1の摩耗が促進されたり、傷が入ったりすることによって異常画像が発生することがある。
また、クリーニング不良によって感光体の表面が汚染されたりすると異常画像の発生の原因となるだけでなく、感光体の寿命を大幅に低減させることにつながる。特に、耐摩耗性の向上のために最表面層に保護層をもうけた感光体の場合には、感光体表面に付着した汚染物質が除去されにくいことから、フィルミングや異常画像の発生を助長することになる。したがって、感光体1のクリーニング性を高めることは感光体の高耐久化及び高画質化に対し非常に有効である。
【0101】
感光体1のクリーニング性を高める手段としては、感光体表面の摩擦係数を低減させる方法が知られている。感光体表面の摩擦係数を低減させる方法としては、各種の潤滑性物質を感光体表面に含有させる方法と、外部より感光体表面に潤滑性物質を供給させる方法とに分類される。前者はエンジン廻りのレイアウトの自由度が高いため、小径感光体には有利であるが、繰り返し使用によって摩擦係数は顕著に増加するため、その持続性に課題が残されている。一方、後者は潤滑性物質を供給する部品を備える必要があるが、摩擦係数の安定性は高いことから感光体の高耐久化に対しては有効である。その中で、潤滑性物質を現像剤に含有させることによって現像時に感光体に付着させる方法は、エンジン廻りのレイアウトにも制約を受けずに、感光体表面の摩擦係数低減効果の持続性も高いため、感光体の高耐久化及び高画質化に対しては非常に有効な手段である。
【0102】
前記潤滑性物質としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素オイル等の潤滑性液体、PTFE、PFA、PVDF等の各種フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーングリース、フッ素グリース、パラフィンワックス、脂肪酸エステル類、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑性液体や固体、粉末などが挙げられる。これらの中でも、現像剤に混合させる場合には粉末状である必要があり、ステアリン酸亜鉛は悪影響が少なく、極めて有効に使用することができる。前記ステアリン酸亜鉛粉末をトナーに含有させる場合には、それらのバランスやトナーに与える影響を考慮する必要があり、前記トナーに対して0.01質量%〜0.5質量%が好ましく、0.1質量%〜0.3質量%がより好ましい。
【0103】
本発明の電子写真感光体は、高光感度及び高安定化を実現したことから小径感光体に適用できる。前記感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行う、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。前記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べて極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
【0104】
図7は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記の変形例も本発明の範疇に属するものである。
図7において、感光体1C(シアン),1M(マゼンタ),1Y(イエロー),1K(ブラック)は、ドラム状の感光体1であり、これらの感光体1C,1M,1Y,1Kは、図7中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電手段12C,12M,12Y,12K、現像手段14C,14M,14Y,14K、クリーニング手段15C,15M,15Y,15Kが配置されている。
【0105】
帯電手段12C,12M,12Y,12Kは、感光体1の表面を均一に帯電するための帯電手段を構成する。この帯電手段12C,12M,12Y,12Kと、現像手段14C,14M,14Y,14Kとの間の感光体1の裏面側より、図示しない露光手段からのレーザー光13C,13M,13Y,13Kが照射され、感光体1C,1M,1Y,1Kに静電潜像が形成されるようになっている。
【0106】
そして、このような感光体1C,1M,1Y,1Kを中心とした4つの画像形成要素10C,10M,10Y,10Kが、記録媒体搬送手段である搬送ベルト25に沿って並置されている。搬送ベルト25は、各画像形成ユニット(要素)10C,10M,10Y,10Kの現像手段14C,14M,14Y,14Kと、クリーニング手段15C,15M,15Y,15Kとの間で感光体1C,1M,1Y,1Kに当接しており、搬送ベルト25の感光体1側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ26C,26M,26Y,26Kが配置されている。各画像形成要素10C,10M,10Y,10Kは現像手段内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0107】
図7に示す構成のカラー電子写真方式の画像形成装置において、画像形成動作は次のようにして行われる。まず、各画像形成要素10C,10M,10Y,10Kにおいて、感光体1C,1M,1Y,1Kが、矢印方向(感光体1と連れ周り方向)に回転する帯電手段12C,12M,12Y,12Kにより帯電され、次に、感光体1の外側に配置された露光部(不図示)でレーザー光13C,13M,13Y,13Kにより、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0108】
次に、現像手段14C,14M,14Y,14Kにより潜像を現像してトナー像が形成される。現像手段14C,14M,14Y,14Kは、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行う現像手段で、4つの感光体1C,1M,1Y,1K上で作られた各色のトナー像は記録媒体上で重ねられる。記録媒体17は給紙コロ24によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ16で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト25に送られる。
搬送ベルト25上に保持された記録媒体17は搬送されて、各感光体1C,1M,1Y,1Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行われる。
【0109】
感光体上のトナー像は、転写ブラシ26C,26M,26Y,26Kに印加された転写バイアスと感光体1C,1M,1Y,1Kとの電位差から形成される電界により、記録紙17上に転写される。そして、4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙17は、定着手段27に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写手段で転写されずに各感光体1C,1M,1Y,1K上に残った残留トナーは、クリーニング手段15C,15M,15Y,15Kで回収される。
なお、図7の例では画像形成要素は記録媒体搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素10C,10M,10Yが停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
【0110】
更に、図7において帯電手段は感光体と当接しているが、図6に示したような帯電機構にすることにより、両者の間に適当なギャップ(10μm〜200μm程度)を設けてやることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電手段へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
【0111】
前記タンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。しかし、感光体が少なくとも4つを必要とすることから、画像形成装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。
これに対し、本発明の電子写真感光体は、高光感度及び高安定化が実現されたことにより小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇、感度劣化等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位、感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0113】
まず、本発明における一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物の合成例を以下に示す。
【0114】
(クロロガリウムフタロシアニンの合成例A)
脱水ジメチルスルフォキシド200mLに、1,3−ジイミノイソインドリン30質量部、及び三塩化ガリウム8質量部を加え、アルゴン(Ar)気流下にて150℃、12時間反応させた後、生成したクロロガリウムフタロシアニンを濾別した。このウェットケーキをメチルエチルケトン、及びN,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した後、乾燥することで22質量部(70.3質量%)のクロロガリウムフタロシアニン結晶を得た。
【0115】
(ヒドロキシガリウムフタロシアニンの合成例B)
合成例Aのクロロガリウムフタロシアニン5質量部を氷冷した濃硫酸150質量部に溶解し、この硫酸溶液を氷冷したイオン交換水500mLに徐々に滴下することでヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶を析出させた。結晶を濾別した後、ウェットケーキを2質量%のアンモニア水500mLで洗浄し、その後、イオン交換水で十分に洗浄を行った。乾燥することで4.6質量部のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を得た。
【0116】
(下記構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物の合成例)
【化30】

ジメチルスルホキシド100mLに、合成例Aのクロロガリウムフタロシアニン1.24質量部、及びp−クロロベンゼンスルフォン酸水和物23質量部を加え、110℃に加温し9時間反応させた。室温まで冷却後微量の不溶部を濾過して除いた。得られた溶液にイオン交換水約150mLを加え、室温で6時間攪拌した。生成した結晶を濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥することで1.45質量部(94質量%)のガリウムフタロシアニン化合物を得た。
この化合物について、以下の分析を行った。
MALDI−TOFMS(ネガティブ)により、m/z:772.06(理論値は772.03 :C3820ClGaNSとして)を認めた。更に元素分析を行った結果を表1に示す。
【表1】

これらの結果より、上記構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物であることを確認した。
【0117】
(下記構造式(D)で表されるガリウムフタロシアニン化合物の合成例)
【化31】

トルエン100mLに、合成例Bのヒドロキシガリウムフタロシアニン0.48質量部、及びp−トルエンスルフォン酸・1水和物2.8質量部を加え、80℃に加温し6時間反応させた。室温まで冷却後、生成した結晶を濾過し、2−ブタノン、次いで,イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥することで0.53質量部(88質量%)のガリウムフタロシアニン化合物を得た。
この化合物について、以下の分析を行った。
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、OH基に由来する約3480cm−1の吸収が消失したことを認めた。
MALDI−TOFMS(ネガティブ)(ポジティブ)により、m/z:752.05(理論値は752.09 :C3923GaNSとして)を認めた。更に元素分析を行った結果を表2に示す。
【表2】

これらの結果より、上記構造式(D)で表されるガリウムフタロシアニン化合物であることを確認した。
【0118】
(本発明におけるカルボエステル基を有するアゾ化合物の合成例)
次に、一般式(I):A(E)nで表されるカルボエステル基を有するアゾ化合物は、特開2009−7523号公報に記載の方法にて合成されるが、下記にその一例を示す。
【0119】
(1)例示化合物(12−2)の合成例C
前記構造式(12−2)で表されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−2)中のE基の全てがH(水素原子)である化合物〕1.61グラム、及びピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル4.3グラム(10倍モル)を、脱水ピリジン50mL、及び脱水N,N−ジメチルホルムアミド200mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、更に約50℃に加温し、2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約100mLを加えて、2.24グラム(収率93質量%)の赤色の粉末を得た。
得られた粉末の元素分析を行った結果を下記表3に示す。
なお、下記表3中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(12−2)で表されるカルボエステル基(E基)の全てがCであるものとし、アゾ化合物の化学式をC686313Clとして算出したものである。
【表3】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1,760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0120】
(複合顔料の合成例1)
合成例Bのヒドロキシガリウムフタロシアニン0.90質量部、p−クロロベンゼンスルフォン酸水和物5.78質量部、及び前記構造式(12−3)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−3)で表されるE基の全てがCである化合物〕0.92質量部をN,N−ジメチルホルムアミド100mL中で、130℃で7時間反応を行った。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド、及びメチルエチルケトン、更にイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで1.38質量部(78質量%)の複合顔料結晶を得た。
上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、OH基に由来する約3,480cm−1の吸収が消失し、アゾ化合物に基づく1,722cm−1、1,674cm−1、の吸収が認められた。
このことより、構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(12−3)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料であることを確認した。
【0121】
(複合顔料の合成例2)
合成例Bのヒドロキシガリウムフタロシアニン0.90質量部、p−トルエンスルフォン酸・1水和物5.17質量部、及び前記構造式(12−3)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−3)で表されるE基の全てがCである化合物〕0.92質量部をN,N−ジメチルホルムアミド100mL中で、130℃で7時間反応を行った。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド、及びメチルエチルケトン、更にイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで1.33質量部(76質量%)の複合顔料結晶を得た。
上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、OH基に由来する約3,480cm−1の吸収が消失し、アゾ化合物に基づく1,724cm−1、1,675cm−1の吸収が認められた。
このことより、構造式(D)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(12−3)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料であることを確認した。
【0122】
(複合顔料の合成例3)
合成例Bのヒドロキシガリウムフタロシアニン0.90質量部、p−クロロベンゼンスルフォン酸水和物5.78質量部、及び前記構造式(12−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物0.21質量部をN,N−ジメチルホルムアミド100mL中で、120℃で5時間反応を行った。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド、及びメチルエチルケトン、更にイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで1.15質量部(84質量%)の複合顔料結晶を得た。
上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、OH基に由来する約3,480cm−1の吸収が消失し、アゾ化合物に基づく1,723cm−1、1,676cm−1、の吸収が認められた。
このことより、構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(12−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料であることを確認した。
【0123】
(複合顔料の合成例4)
酢酸エチル100mLに、合成例Bのヒドロキシガリウムフタロシアニン0.60質量部、p−トルエンスルフォン酸・1水和物3.44質量部、及び前記構造式(12−6)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物0.83質量部を加え、8時間還流下に反応を行った。得られた結晶をメチルエチルケトン及びイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで1.44質量部(91質量%)の複合顔料結晶を得た。
上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、OH基に由来する約3,480cm−1の吸収が消失しアゾ化合物に基づく1,722cm−1、1,676cm−1、の吸収が認められた。
このことより、構造式(D)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(12−6)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料であることを確認した。
【0124】
(複合顔料の合成例5)
上記合成例4で得られた構造式(D)で表されるガリウムフタロシアニン化合物1.51質量部、及び前記構造式(12−4)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−4)で表されるE基の全てがCである化合物〕0.89質量部をN,N−ジメチルホルムアミド100mL中で、130℃で2時間、更に140℃で4時間反応を行った。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド、及びメチルエチルケトン、更にイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで1.72質量部(82質量%)の複合顔料結晶を得た。
上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物に基づく1,723cm−1、1,676cm−1の吸収が認められた。
このことより、上記構造式(D)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(12−4)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料であることを確認した。
【0125】
(複合顔料の合成例6)
上記合成例3で得られた構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物1.55質量部、及び前記構造式(13−1)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(13−1)で表されるE基の全てがCである化合物〕1.01質量部をN,N−ジメチルホルムアミド100mL中で、130℃で2時間、更に140℃で6時間反応を行った。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド及びメチルエチルケトン、更にイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで1.96質量部(87質量%)の複合顔料結晶を得た。
上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、C=O伸縮振動に基づく1,670cm−1のブロードな吸収が認められた。
このことより、上記構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(13−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料であることを確認した。
【0126】
(複合顔料の合成例7)
下記構造式(E)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(13−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料の合成例
【化32】

ジメチルスルホキシド150mLに、合成例Aのクロロガリウムフタロシアニン2.47質量部、エタンスルフォン酸17.6質量部を加え、前記構造式(13−1)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(13−1)で表されるE基の全てがCである化合物〕1.01質量部を加え、110℃に加温し8時間反応させた。冷却後蒸留水約100mLを加え、室温で1時間攪拌した。得られた結晶をイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで2.81質量部(81質量%)の複合顔料結晶を得た。
上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、C=O伸縮振動に基づく1,670cm−1のブロードな吸収が認められた。
このことより、上記構造式(E)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(13−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料であることを確認した。
【0127】
(複合顔料の合成例8)
上記構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物3.01質量部、及び前記構造式(14−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物1.11質量部を直径(φ)1mmのガラスボール、及びN,N−ジメチルホルムアミドとともにボールミル分散を2時間行った。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド及びメチルエチルケトン更にイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで3.83質量部(93質量%)の構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、構造式(14−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物とからなる複合顔料を得た。
【0128】
(実施例1)
<電子写真感光体の作製>
長さ346mm、直径(φ)40mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の中間層用塗工液を用いて浸漬塗工した後、130℃で20分間乾燥を行い、厚み3.5μmの中間層を形成した。続いて、下記組成の電荷発生層用塗工液を直径(φ)5mmのジルコニアボールとともにボールミル分散を2時間行い、この塗工液を用いて浸漬塗工した後、100℃で30分間乾燥を行い、厚み0.3μmの電荷発生層を形成した。
更に、下記組成の電荷輸送層用塗工液を用いて浸漬塗工した後、130℃で20分間乾燥を行い、厚み20μmの電荷輸送層を形成した。以上により、実施例1の電子写真感光体を作製した。
【0129】
−中間層用塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製):50質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50、固形分50質量%、DIC社製):15質量部
・メラミン樹脂(L−145−60、固形分60質量%、DIC社製):8質量部
・2−ブタノン:120質量部
【0130】
−電荷発生層用塗工液−
・合成例1で得られた複合顔料:3.0質量部
・ポリビニルブチラール(「XYHL」、UCC社製):2質量部
・メチルエチルケトン:150質量部
【0131】
−電荷輸送層用塗工液−
・ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成株式会社製、パンライトTS−2050):10質量部
・下記構造式で表される電荷輸送性化合物:7質量部
【化33】

・テトラヒドロフラン:80質量部
・シリコーンオイル(KF50−100cs、信越化学工業株式会社製):0.002質量部
【0132】
(実施例2)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、合成例2で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電子写真感光体を作製した。
【0133】
(実施例3)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、合成例3で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の電子写真感光体を作製した。
【0134】
(実施例4)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、合成例4で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の電子写真感光体を作製した。
【0135】
(実施例5)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、合成例5で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の電子写真感光体を作製した。
【0136】
(実施例6)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、合成例6で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の電子写真感光体を作製した。
【0137】
(実施例7)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、合成例7で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の電子写真感光体を作製した。
【0138】
(実施例8)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、合成例8で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の電子写真感光体を作製した。
【0139】
(比較例1)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、構造式(C)で表されるガリウムフタロシアニン化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を作製した。
【0140】
(比較例2)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、構造式(12−3)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電子写真感光体を作製した。
【0141】
(比較例3)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、Y型チタニルフタロシアニン(東洋インキ製造株式会社製、リオフォトン−TOPA)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の電子写真感光体を作製した。
【0142】
(比較例4)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、構造式(12−3)で表されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−3)で表されるE基の全てがCである化合物〕に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例4の電子写真感光体を作製した。
【0143】
(比較例5)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、以下に示す合成例9で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例5の電子写真感光体を作製した。
<複合顔料の合成例9>
合成例Aのヒドロキシガリウムフタロシアニン0.90質量部、及び前記構造式(12−3)で表されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−3)で表されるE基の全てがCである化合物〕0.92質量部をN,N−ジメチルホルムアミド100mL中で、130℃で7時間反応を行った。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド及びメチルエチルケトン、更にイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで0.78質量部の複合顔料結晶を得た。
【0144】
(比較例6)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層用塗工液の合成例1で得られた複合顔料を、以下に示す合成例10で得られた複合顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例6の電子写真感光体を作製した。
<複合顔料の合成例10>
合成例Aのクロロガリウムフタロシアニン0.90質量部、及び前記構造式(12−3)で表されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−3)で表されるE基の全てがCである化合物〕0.92質量部をN,N−ジメチルホルムアミド100mL中で、130℃で7時間反応を行った。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド及びメチルエチルケトン、更にイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで0.75質量部の複合顔料結晶を得た。
【0145】
<実機評価>
作製した実施例1〜8及び比較例1〜6の電子写真感光体を図8に示すように、潤滑剤塗布部材を取り除いたプロセスカートリッジに装着し、デジタルフルカラー複合機(imagioMPC5000、株式会社リコー製)に搭載した。
試験時のプロセス条件としては未露光部の帯電電位が−800Vとなるように帯電手段への印可電圧を設定した。現像バイアスは−600Vに設定した。通紙条件としては書き込み率6%のチャート(A4サイズ全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用いて4万枚印刷を行った。試験環境としては、常温常湿度環境(温度:23℃、相対湿度:55%RH)、高温高湿度環境(温度:30℃、相対湿度:80%RH)、及び低温低湿度環境(温度:10℃、相対湿度:15%RH)の3つの環境条件で同様の印刷試験を行った。
【0146】
<画像評価>
画像評価は4万枚の画像印刷前後において、日本画像学会発行テストチャートNo.5−2を出力して、画像濃度、解像度、及びカラー色の再現性について、以下のようにして、評価を行った。結果を表4に示す。
また、印刷試験前に未露光部の帯電電位が−500Vとなる帯電手段の印可電圧を用いて、上記と同様にして画像評価を行った。結果を表5に示す。
【0147】
<画像濃度>
4万枚の画像印刷前後において、日本画像学会発行テストチャートNo.5−2を出力して、マクベス社製の反射濃度計(小数点以下3桁まで測定できるように改造)により画像濃度を測定し、前後の画像濃度差について、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:画像濃度差が0.1未満
○:画像濃度差が0.1以上0.2未満
△:画像濃度差が0.2以上0.3未満
×:画像濃度差が0.3以上
【0148】
<解像度>
4万枚の画像印刷前後において、日本画像学会発行テストチャートNo.5−2を出力して、ハーフトーン部についてドット形成状態(ドットの散り具合やドット再現性)を観察することにより、下記基準で解像度を評価した。
〔評価基準〕
◎:ドット散りがなく非常に良好である
○:僅かにドット散りが見られるが良好である
△:ドット散りやドットの広がりが見られ悪い
×:ドット散りやドットの広がりが大きく非常に悪い
【0149】
<カラー色の再現性>
4万枚の画像印刷前後において、日本画像学会発行テストチャートNo.5−2を出力して、色度計(X−Rite社製、X−Rite938)を用いてL表色系(CIE:1976)におけるクロマチックネス指数a及びbを測定し、下記式で示される彩度Cの値を求め、下記基準により、カラー再現性を評価した。
彩度C=[(a+(b1/2
〔評価基準〕
◎:彩度Cが75以上
○:彩度Cが73以上75未満
△:彩度Cが70以上73未満
×:彩度Cが70未満
【0150】
【表4】

【0151】
【表5】

【0152】
本発明の複合顔料を電荷発生物質として用いた電子写真感光体は、高画質化及び高安定化を実現できるので、例えばレーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機、直接又は間接の電子写真多色画像現像方式を用いたフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンタ、及びフルカラー普通紙ファックス等に幅広く使用できる。
【符号の説明】
【0153】
1C、1M、1Y、1K 感光体
10C、10M、10Y、10K 画像形成要素
11 除電ランプ
12 帯電ローラ
12a ギャップ形成部材
12C、12M、12Y、12K 帯電手段
13 画像露光部
13C、13M、13Y、13K レーザー光
14 現像ユニット
14C、14M、14Y、14K 現像手段
15C、15M、15Y、15K クリーニング手段
16 レジストローラ
17 記録媒体
18 転写チャージャ
19 分離チャージャ
21 クリーニング前チャージャ
22 クリーニングブラシ
23 クリーニングブレード
24 給紙コロ
25 搬送ベルト
26C、26M、26Y、26K 転写ブラシ
27 定着手段
101 電子写真感光体
112 帯電手段
113 露光手段による露光
114 現像手段
117 記録媒体
118 転写手段
123 クリーニング手段
201 電子写真感光体
202 支持体
203 電荷発生層
204 電荷輸送層
205 保護層
206 下引き層
207 単層型感光層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0154】
【特許文献1】特開昭47−37543号公報
【特許文献2】特開昭52−55643号公報
【特許文献3】特開昭52−8832号公報
【特許文献4】特開昭58−222152号公報
【特許文献5】特開昭58−222153号公報
【特許文献6】特開昭61−239248号公報
【特許文献7】特開平1−17066号公報
【特許文献8】特開昭61−109056号公報
【特許文献9】特開昭62−67094号公報
【特許文献10】特開昭63−364号公報
【特許文献11】特開昭63−366号公報
【特許文献12】特開2005−15682号公報
【特許文献13】特開昭63−198067号公報
【特許文献14】特開平1−123868号公報
【特許文献15】米国特許第3,357,989号明細書
【特許文献16】特開昭58−182639号公報
【特許文献17】特開平5−263007号公報
【特許文献18】特開平5−279591号公報
【特許文献19】特開昭58−100134号公報
【特許文献20】特開昭61−273994号公報
【特許文献21】特開昭62−62367号公報
【特許文献22】特開昭59−44053号公報
【特許文献23】特開平1−221459号公報
【特許文献24】特開昭60−59355号公報
【特許文献25】特開平5−301292号公報
【特許文献26】特開2001−290296号公報
【特許文献27】特開平9−127711号公報
【特許文献28】特開2002−23399号公報
【特許文献29】特開2007−334099号公報
【特許文献30】特開平3−9962号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、アゾ化合物とからなることを特徴とする複合顔料。
【化1】

ただし、前記一般式(A)中、Xは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表す。R〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びアリール基のいずれかを表す。nは、1又は2の整数である。
【請求項2】
ガリウムフタロシアニン化合物が、下記一般式(B)で表される請求項1に記載の複合顔料。
【化2】

ただし、前記一般式(B)中、Yは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表し、前記置換基が、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アリール基、カルボキシ基、及びシアノ基のいずれかを表す。
【請求項3】
ガリウムフタロシアニン化合物が、下記構造式(C)及び(D)で表される化合物から選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の複合顔料。
【化3】

【化4】

【請求項4】
一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物が、ハロゲン化ガリウムフタロシアニン及びヒドロキシガリウムフタロシアニンのいずれかと、スルフォン酸化合物とを反応させて得られたものである請求項1から3のいずれかに記載の複合顔料。
【請求項5】
ハロゲン化ガリウムフタロシアニン及びヒドロキシガリウムフタロシアニンのいずれかと、スルフォン酸化合物とを反応させて一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物を製造すると共に、化学的方法及び熱的方法の少なくともいずれかにより、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物からA(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である)で表されるアゾ化合物を製造することにより得られる請求項1から4のいずれかに記載の複合顔料。
A(E)n ・・・ 一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基であり、該残基Aは、少なくとも1つのヘテロ原子でn個のE基に結合し、該ヘテロ原子は、N及びOのいずれかであり、残基Aの一部を形成しており、E基は、それぞれ独立に、−C(=O)−O−R17(ただし、R17は、炭素数4〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す)を表す。nは、1〜10の整数である。
【請求項6】
ハロゲン化ガリウムフタロシアニン及びヒドロキシガリウムフタロシアニンのいずれかとスルフォン酸化合物とを反応させることで、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物を製造する際に、A(H)n(ただし、Aは、アゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物が存在することにより得られる請求項1から4のいずれかに記載の複合顔料。
【請求項7】
化学的方法及び熱的方法の少なくともいずれかにより下記一般式(I)で表されるアゾ化合物からA(H)n(ただし、Aは、一般式(I)と同義のアゾ化合物の残基であり、Hは、水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物を製造する際に、一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物が存在することにより得られる請求項1から4のいずれかに記載の複合顔料。
A(E)n ・・・ 一般式(I)
ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基であり、該残基Aは、少なくとも1つのヘテロ原子でn個のE基に結合し、該ヘテロ原子は、N及びOのいずれかであり、残基Aの一部を形成しており、E基は、それぞれ独立に、−C(=O)−O−R17(ただし、R17は、炭素数4〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す)を表す。nは、1〜10の整数である。
【請求項8】
一般式(A)で表されるガリウムフタロシアニン化合物と、A(H)n(ただし、Aは、アゾ化合物の残基であり、Hは水素原子、nは、1〜10の整数である。)で表されるアゾ化合物とが同時に複合化処理されて得られる請求項1から7のいずれかに記載の複合顔料。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に少なくとも感光層を有してなり、該感光層が請求項1から8のいずれかに記載の複合顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項10】
電子写真感光体と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、請求項9に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−28699(P2013−28699A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165181(P2011−165181)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】