説明

複層ガラスおよび障子

【課題】 障子を構成する枠にあって剛性が低下されても、障子を構成する枠が複層ガラスの周縁部から外れないようにする。
【解決手段】 複数枚のガラス板21,21をスペーサ22の配設下に空気層Aを設けて積層すると共に周縁部23にグレチャン3を設けてなる複層ガラス2において、グレチャン3が周縁部23に位置決めされる帯状に形成の本体部31を有し、この本体部31が周縁部23に圧接されて固設され、あるいは、グレチャン3が複数枚のガラス板21,21の平面方向を横切る横方向の断面形状をアングル状にして一辺部を本体部31にすると共にこの本体部31に連続する他辺部をストッパ部32にし、本体部31が周縁部23に圧接されて固設され、ストッパ部32が周縁部23の周端に当接されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複層ガラスおよび複層ガラスを利用した障子に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の開口に設けられる障子は、枠と、この枠に保持されるガラス板とからなるが、近年では、ガラス板に関して、断熱効果の観点から複数枚のガラス板の間に空気層を有する複層ガラスが汎用される傾向にある。
【0003】
そして、複層ガラスとしては、種々の提案があるが、この複層ガラスは、従来から、グレージングチャンネル(以下、グレチャンと略称する)の利用下に枠に組付けられる(特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、複層ガラスの周縁部にグレチャンを保持させた状態で枠に嵌め込むようにして組付ける。
【0005】
その結果、複層ガラスは、グレチャンを介して枠に取り付けられた状態で、障子を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−13813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、複層ガラスをグレチャンの利用下に枠に組付けることで、障子を形成し得るが、障子の態様によっては、利用に際して些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0008】
すなわち、近年の障子にあっては、枠の構成が簡素化されることがあるが、このとき、枠の剛性が低下されると、枠が歪むなどで、枠が複層ガラスの周縁部からグレチャンごと外れることが危惧される。
【0009】
つまり、障子にあっては、複層ガラスの周縁部がグレチャンを保持した状態で枠に嵌め込まれているが、枠が歪むなどすると、枠とグレチャンとの間の摩擦力が大きいことから、枠がグレチャンごと複層ガラスの周縁部から外れることが危惧される。
【0010】
そこで、障子において、枠の構成の簡素化などで、枠の剛性が低下される傾向になっても、枠がグレチャンごと複層ガラスの周縁部から外れることを回避できる提案の開示が望まれるが、これまでにその開示がなかった。
【0011】
この発明は、上記した現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、障子を構成する枠における剛性が低下されても、これに起因する枠の外れを回避し得る複層ガラスを提供することであり、また、この複層ガラスを利用した障子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明による複層ガラスの構成を、複数枚のガラス板をスペーサの配設下に空気層を設けて積層すると共に周縁部にグレージングチャンネルを設けてなる複層ガラスにおいて、上記グレージングチャンネルが上記周縁部に位置決めされる帯状に形成の本体部を有し、この本体部が上記周縁部に圧接されて固設されてなるとする。
【0013】
そして、この発明による複層ガラスの構成を、より好ましくは、上記グレージングチャンネルが上記複数枚のガラス板の平面方向を横切る横方向の断面形状をアングル状にして一辺部を上記本体部にすると共にこの本体部に連続する他辺部をストッパ部にし、上記本体部が上記周縁部に圧接されて固設され、上記ストッパ部が上記周縁部の周端に当接されてなるとする。
【0014】
また、この発明による障子の構成を、複数枚のガラス板をスペーサの配設下に空気層を設けて積層すると共に周縁部にグレージングチャンネルを設けてなる複層ガラスと、この複層ガラスを上記グレージングチャンネル越しに保持する枠とを有してなる障子において、上記グレージングチャンネルが上記周縁部に位置決めされる帯状に形成の本体部を有し、この本体部が上記周縁部に圧接されて固設されてなるとする。
【0015】
そしてまた、この発明による障子の構成を、より好ましくは、上記グレージングチャンネルが上記複数枚のガラス板の平面方向を横切る横方向の断面形状をアングル状にして一辺部を上記本体部にすると共にこの本体部に連続する他辺部をストッパ部にし、上記本体部が上記周縁部に圧接されて固設され、上記ストッパ部が上記周縁部の周端に当接されてなるとする。
【0016】
それゆえ、この発明の複層ガラスにあっては、グレージングチャンネル(以下、グレチャンと略称する)が帯状に形成される本体部を周縁部に圧接されて固設されてなるから、グレチャンが複層ガラスの周縁部に一体にされた状態に、すなわち、一体状態に保持される。
【0017】
そして、この発明の複層ガラスにあって、グレチャンは、複層ガラスの周縁部に一体状態に設けられるから、複層ガラスの周縁部を枠に嵌め込む際にグレチャンの移動を危惧しなくて済み、周縁部にグレチャンを有する複層ガラスの枠への組付け作業を容易にする。
【0018】
そしてまた、周縁部に一体状態に設けられたグレチャンを有する複層ガラスが枠に組付けられる障子にあっては、グレチャンと枠の間に大きい摩擦力があるので、複層ガラスに一体状態に設けられたグレチャンが枠に強固に連結される状態になり、枠がグレチャンごと複層ガラスの周縁部から外れなくなる。
【0019】
したがって、障子において、構成の簡素化などで枠における剛性が低下される傾向になっても、枠がグレチャンを介して複層ガラスの周縁部に一体状態に連結される態勢になるから、枠の剛性が複層ガラスによって補われて高くなる。
【0020】
そして、グレチャンが複数枚のガラス板の平面方向を横切る横方向の断面形状をアングル状にして一辺部を本体部にすると共にこの本体部に直角に連続する他辺部をストッパ部にし、本体部が周縁部に圧接されて固設され、ストッパ部が周縁部の周端に当接されてなる場合には、グレチャンの本体部が複層ガラスの周縁部に保持されるのはもちろんのこと、このとき、ストッパ部が周縁部の周端に当接されてストッパとして機能するから、グレチャンを設けてなる複層ガラスの周縁部を枠に嵌め込む際に、グレチャンが複層ガラスの周端に係止される状態になり、グレチャンの移動阻止に完全を期することが可能になり、グレチャンを有する複層ガラスの枠への組付け作業を容易にする。
【0021】
また、グレチャンが帯状に形成される本体部のみを有する場合には、断面形状をチャンネル状にして本体部およびこの本体部に連続するストッパ部を有する場合に較して、成形性を良くする。
【0022】
さらに、グレチャンは、複層ガラスのいわゆる表裏となる周縁部にそれぞれ独立に設けられるから、断面が角U字状に形成される従来のグレチャンに比較して、複層ガラスの周縁部への圧着に際して、複層ガラスとグレチャンとの間における製品誤差による圧着不全を回避できる。
【発明の効果】
【0023】
その結果、この発明にあっては、障子を構成する枠における剛性が低下されても、これに起因する複層ガラスの周縁部からの枠の外れを回避し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明による障子を示す概略斜視図である。
【図2】図1中のX−X線位置から見た障子を一部破断して示す概略横断面図である。
【図3】図1に示す障子を一部破断して示す概略部分拡大縦断面図である。
【図4】グレチャンを設ける前の複層ガラスを一部破断して示す部分斜視図である。
【図5】グレチャンが周縁部に設けられた複層ガラスを一部破断して示す部分拡大縦断面図である。
【図6】この発明の一の実施形態によるグレチャンを示す縦断面図である。
【図7】図6に示すグレチャンを折り曲げる前の状態を示す部分正面図である。
【図8】この発明の他の実施形態によるグレチャンを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、図1に示すこの発明による障子Wは、図2に示すように、住宅における開口(符示せず)に設けられて、図示するところでは、図1中および図2中に示すように、図中に符号Iで示す屋内を図中に符号Oで示す屋外から遮蔽する窓を形成する。
【0026】
そして、この障子Wは、枠1と複層ガラス2との組立体からなり、図1中および図2中に一点鎖線矢印aで示すように、枠1がいわゆる吊元側を枢着側にして回転して言わば複層ガラス2を回転させ、住宅における躯体Bに額縁Fなどで形成される開口を開閉する。
【0027】
ちなみに、住宅における躯体Bの構成については、任意であり、また、額縁Fの構成についても任意とされて良いが、この発明において、後述する枠1がアルミ押出型材などからなることからすれば、額縁Fについてもアルミ押出型材などからなるのが好ましい。
【0028】
なお、額縁Fは、障子Wにおける枠1の当接を許容する戸当り(符示せず)を有すると共に、枠1との間における衝撃の緩和目的および防水目的のシール(図示せず)を有する。
【0029】
枠1は、アルミ押出型材あるいは合成樹脂材などからなり、図1に示すところでは、開口を形成する額縁F(図2参照)における上方側部(図示せず)に副うように位置決めされる上框1aと、額縁Fにおける下方側部に沿うように位置決めされる下框1b(図2参照)とを有してなる。
【0030】
そして、この枠1は、上框1aおよび下框1bを左右で連結して額縁Fにおける縦部(符示せず)に沿うように位置決めされる縦框、すなわち、障子Wの回転を可能にするために額縁Fに枢着される枢着側部たる吊元框1cと、反対側の可動側部たる戸先框1dとを有してなる。
【0031】
そしてまた、この枠1は、図示するところでは、吊元框1cを回転中心にするようにして戸先框1dが図中に一点鎖線矢印aで示すように旋回されるもので、たとえば、戸先框1dに設けたハンドル1e(図1参照)を押して戸先框1dを屋外O側に押し出すようにすることで、また、ハンドル1eを引いて戸先框1dを屋内I側に引き寄せるようにすることで、枠1が縦軸回転して開口を開閉する。
【0032】
なお、障子Wを形成する枠1としては、図示する態様以外のものが選択されて良く、凡そ、ハンドル1eが設けられるなどして、いわゆる開閉作動するものであれば良い。
【0033】
複層ガラス2は、図3に示すように、複数枚、すなわち、図示するところでは、二枚のガラス板21,21をスペーサ22の配設下に空気層Aを設けて積層してなる。
【0034】
このように、複層ガラス2は、複数枚のガラス板21,21をスペーサ22の配設下に空気層Aを設けて積層してなるから、空気層Aが有する断熱作用で、断熱機能を発揮する。
【0035】
そして、ガラス板21については、材質や板厚寸法などについて公知のものが利用されて良く、また、熱線入りとされて結露防止構造とされたり、空気層Aに対向する面に特殊な金属膜がコーティングされて遮熱性が高められていたりしていても良い。
【0036】
ちなみに、複層ガラス2としては、ガラス板21が三枚とされるものもあるが、複層ガラス2である限りには、ガラス板21の枚数の多少は、この発明の実施を妨げない。
【0037】
スペーサ22は、二枚のガラス板21,21の間に所定の間隔の空気層Aを出現させる限りには、任意に構成されて良いが、好ましくは、空気層Aにある気体に起因する結露現象の発現を阻止し得る構成とされるのが良く、したがって、図示しないが、たとえば、内部に乾燥剤を有しており、この乾燥剤で空気層A内の湿気を吸収可能にしても良い。
【0038】
そして、スペーサ22は、乾燥剤を有するとき、乾燥剤の交換を可能にするよう形成されてなるとしても良い。
【0039】
空気層Aは、そこにある気体の断熱作用で複層ガラス2における断熱機能を保障するもので、断熱作用に完全性を期待する上からは、外部と連通しない密封空間とされるのが良い。
【0040】
また、この空気層Aは、そこにある気体に起因する結露を防止するために、吸湿紙や吸湿布などの吸湿材を収容させてなるとしても良い。
【0041】
一方、この発明における複層ガラス2にあっては、グレチャン3が周縁部23(図4参照)に一体にされた状態に、すなわち、一体状態に設けられてなる(図3および図5参照)。
【0042】
ちなみに、ここに言う周縁部23は、図4に示すように、ガラス板21の平面を見るとき、図示する下辺および右辺の二辺と、図示しない上辺および左辺の二辺、すなわち、合計四辺と、この四辺の近隣部とを指すが、複層ガラス板2の周端2aも含むとしている。
【0043】
なお、図4に示すところにあって、複層ガラス板2の周端2aは、板ガラス21,21の周端21a,21aと、スペーサ22の周端22aとからなる。
【0044】
ところで、この発明におけるグレチャン3についてであるが、従前のグレチャンにあっては、基本的には、複層ガラス2の周縁部23にあらかじめ設けられてなることはなく、複層ガラス2の周縁部23を枠1に嵌め込む際に、複層ガラス2の周縁部23に取り付けられるとしている。
【0045】
たとえば、前記した特許文献1に開示の提案にあっては、複層ガラス(10)の周縁部に粘着材(1b)で粘着される脱落防止材(1)におけるテープ(1a)が発揮する摩擦力でグレチャン(11)が複層ガラス(10)の周縁部に保持されるとするが、この発明のように、グレチャン3が複層ガラス2の周縁部23に一体にされた状態に、すなわち、一体状態に設けられてなるとするものではない。
【0046】
以上のように、この発明にあっては、グレチャン3が複層ガラス2の周縁部23に一体状態に設けられてなるとするが、具体的には、以下のようになる。
【0047】
ちなみに、グレチャン3は、ゴム材あるいは合成樹脂材からなり、ガラス板21,21と枠1との間におけるガタ発生の防止のために、また、水密や気密などの密着のために、たとえば、ガラス21の板厚に対してグレチャン3のいわゆる適応肉厚が決められている。
【0048】
戻って、図5は、複層ガラス2の周縁部23にこの発明の一の実施形態によるグレチャン3が設けられている状態を示すが、図6に示すように、複層ガラス2の周縁部23に設けられる前のグレチャン3は、複層ガラス2の平面方向、すなわち、図6中で上下方向となる二枚のガラス板21,21の平面方向を横切る横方向、すなわち、図6中で左右方向となる断面形状をアングル状に形成されてなる。
【0049】
そして、このグレチャン3にあっては、図6中で縦辺部となる一辺部たる長辺部を本体部31にすると共に、この本体部31に直角に折れ曲がって連続する図6中で横辺部となる他辺部たる短辺部をストッパ部32にしてなる。
【0050】
そしてまた、このグレチャン3にあっては、本体部31が複層ガラス2における周縁部23の一方側表面23a(図4および図5参照)および他方側表面23b(図5参照)の両面に圧接されて固設され、ストッパ部32が複層ガラス2における周縁部23の周端2a(図4参照)に当接されてなるとする。
【0051】
このとき、このグレチャン3にあって、本体部31およびストッパ部32は、硬質部とされて、自己支持性を有することはもちろん外力で簡単に変形しないとされるので、本体部31とストッパ部32との間における変形が招来されず、特に、ストッパ部32がストッパ部として機能することになる。
【0052】
一方、このグレチャン3にあっては、本体部31の上端部を膨大部にしてシール部33に設定すると共に、このシール部33の尖端をリップ34に設定して、このリップ34のガラス板21の表面への密着で、ガラス板21とグレチャン3との間に、たとえば、雨水が浸入することを阻止する。
【0053】
そして、このグレチャン3にあっては、本体部31とシール部33との境界部部分に切り込み溝35を有し、この切り込み溝35に枠1におけるフランジ状の嵌合部1fが嵌合されるとき、このグレチャン3の枠1への連結が実現されるとしている。
【0054】
このとき、このグレチャン3にあって、シール部33および切り込み溝35が形成される境界部は、軟質部とされて、シール部33によるシール機能の発揮を可能にすると共に切り込み溝35に対する枠1におけるフランジ状の嵌合部1fの嵌合を許容する。
【0055】
また、シール部33における尖端34は、下方の本体部31におけるガラス板21に対向する接着面31aよりガラス板21側に突出すように設定されており、ガラス板21に当接するときシール部33が具有する弾性でガラス板21に密着し得るように配慮されている。
【0056】
ちなみに、グレチャン3は、押し出し成型で形成され、その際、硬質部たる本体部31およびストッパ部32と、軟質部たるシール部33および境界部(切り込み溝35)とが同時成型されるのを基本とするが、この発明の具現化にあっては、グレチャン3の製法の違いがこの発明の実施を妨げるものではない。
【0057】
つまり、グレチャン3にあって、硬質部たる本体部31を有する限りには、この本体部31に対して軟質部とされるシール部33が切り込み溝35を有しながら別体に形成されて、爾後に本体部31に対してシール部33が連結されるとしても良い。
【0058】
以上のように形成されたこの発明によるグレチャン3は、これが複層ガラス2の周縁部23に設けられるのについては、複層ガラス2の周縁部23に圧接されて固設されてなるとする。
【0059】
すなわち、この発明にあって、グレチャン3は、複層ガラス2の周縁部23に沿う状態に設けられるだけではなく、また、前記した特許文献1に開示の提案のように、複層ガラス2に粘着するテープにおける摩擦力に依存して複層ガラス2に保持されるものでもない。
【0060】
そして、この発明にあって、グレチャン3は、適宜の機械工具類の利用などでグレチャン3における本体部31を複層ガラス2の周縁部23に圧接させて固設されてなるとする。
【0061】
このとき、グレチャン3は、ホットメルトなどの適宜接着材4の利用下にガラス板21に圧接されて固設されるとし、この接着材4は、本体部31の接着面31aあるいは複層ガラス2における周縁部23に塗布され、固化したときに、ガラス板21とグレチャン3との間のせん断力に対抗してガラス板21とグレチャン3との間に異相を発生させないとしている。
【0062】
つまり、この発明にあって、グレチャン3は、複層ガラス2の周縁部23に圧接されて固設されてなるものであり、このとき、接着材4を利用するとしても、接着材4自体が外力で潰れたり伸びたりする変形をしないとする。
【0063】
それゆえ、接着材4としては、任意のものが選択されて良く、たとえば、アロンアルファ(登録商標)を選択するときには、前記したホットメルトと同様に、入手し易い利点がある。
【0064】
また、この発明が意図するところは、グレチャン3を複層ガラス2の周縁部23に圧接させて固設するところにあることからすると、接着材4を利用しないでグレチャン3を複層ガラス2の周縁部23に圧接させて固設する手法が選択されても良い。
【0065】
そして、グレチャン3が複層ガラス2の周縁部23における一方側表面23aおよび他方側表面23bの両面に設けられる場合には、対向するストッパ部32,32間には隙間Sが出現する(図5参照)。
【0066】
以上のように形成されたグレチャン3にあっては、これが複層ガラス2の周縁部23に圧接されて固設されるから、この限りにおいて、グレチャン3が複層ガラス2の周縁部23に一体にされた状態に、すなわち、一体状態に保持される。
【0067】
そして、この発明にあって、グレチャン3は、複層ガラス2の周縁部23に一体状態に設けられるから、複層ガラス2の周縁部23を枠1に嵌め込む際にグレチャン3の移動を危惧しなくて済み、グレチャン3を設けてなる複層ガラス2の枠1への組付け作業を容易にする。
【0068】
このとき、図6に示すグレチャン3にあっては、本体部31に連続して直角に折れ曲がるストッパ部32が複層ガラス2の周縁部23における周端2aに当接されて係止されるから、本体部31、つまり、グレチャン3を枠1内に押し込むようにして嵌め込む際に、グレチャン3が所定位置から移動する不具合の発生を確実に阻止し得ることになる。
【0069】
のみならず、この図6に示すグレチャン3にあっては、図7に示すように、これを切り欠き、図7中に一点鎖線矢印bで示すように、折り曲げていわゆるコーナー部3aを形成することで、図4にあって、複層ガラス2における角部2bを、図示するところでは、右辺側および下辺側のいわゆる両側から覆うようにすることが可能になる。
【0070】
この点に関して、従前のグレチャンは、この発明で言う横断面に相当する横断面の形状を角U字状にするから、上記したコーナー部3aを有するように切り欠き折り曲げ形成するのが容易でない不具合がある。
【0071】
そして、従前のグレチャンにあっては、横断面の形状を角U字状にしてなるから、これを複層ガラス2の周縁部23に、特に、立設される複層ガラス2の下端部たる周縁部23に設ける場合には、グレチャン3の内側に溜まることがある浸入水をグレチャン3の外に排水できない不具合がある。
【0072】
それに対して、この発明のグレチャン3にあっては、複層ガラス2の周縁部23に設けられるとき、対向するストッパ部32,32間に隙間Sを有するから、この隙間を排水路として利用することが可能になり、グレチャン3のいわゆる内側に浸入水を溜まらせないようにすることが可能になる。
【0073】
以上のように、この発明にあっては、グレチャン3における本体部31が複層ガラス2における周縁部23に圧接されて固設されてなるが、このことからすると、グレチャン3については、図8に示す他の実施形態のように形成されてなるとしても良い。
【0074】
すなわち、図8に示す実施形態のグレチャン3は、前記した図6に示すグレチャン3に比較して、本体部31は有するが、ストッパ部32を有しない、言うなれば、帯状に形成されてなるとする。
【0075】
この図8に示すグレチャン3は、本体部31を有する帯状に形成されてなるとしても、本体部31に連続する切り込み溝35を有し、この切り込み溝35に連続するシール部33を有し、さらに、シール部33にはリップ34を有する点で、図6に示すグレチャン3と基本形状を同じにする。
【0076】
そして、この図8に示すグレチャン3にあっても、本体部21が接着面31aを有し、この接着面31aへの接着材4の塗布を許容している。
【0077】
それゆえ、この図8に示すグレチャン3にあっても、図6に示すグレチャン3と同様に複層ガラス2の周縁部23に圧接されて固設されることで、複層ガラス2の周縁部に一体に保持される。
【0078】
そして、この図8に示すグレチャン3にあっては、図6に示すグレチャン3に比較して、押し出し成型で形成する際の素材量を少なくできると共に押し出し成型作業を容易にし、製品コストの低下を可能にする利点がある。
【0079】
なお、この発明によるグレチャン3、すなわち、図6および図8のいずれに示すグレチャン3にあっても、複層ガラス2の周縁部23における一方側表面23aおよび他方側表面23bの両面に設けられるのに際して一の断面形状に形成されることで足りる利点がある。
【0080】
そして、複層ガラス2の周縁部23にグレチャン3を設けるのにあって、たとえば、周縁部23における一方側表面23aに図6に示すグレチャン3を設け、周縁部23における他方側表面23bに図8に示すグレチャン3を設けるとしても良く、この場合には、複層ガラス2における表裏を設定できる、つまり、複層ガラス2が屋外O側となるガラス板21に遮熱用として金属膜を有してなるような場合に、枠1に組付ける前の複層ガラス2における表裏を設定できる点で有利となる。
【0081】
以上のようにこの発明によるグレチャン3にあっては、複層ガラス2の一方側表面23aおよび他方側表面23bの両面となるいわゆる表裏の周縁部23aにそれぞれ独立に圧着されるから、断面が角U字状に形成される従来のグレチャンに比較して、複層ガラス2の周縁部23への圧着に際して、複層ガラス2とグレチャン3との間における製品誤差による圧着不全を回避できる利点がある。
【符号の説明】
【0082】
1 枠
1a 上框
1b 下框
1c 吊元框
1d 戸先框
1e ハンドル
1f 嵌合部
2 複層ガラス
2a,21a,22a 周端
2b 角部
3 グレチャン
3a コーナー部
21 ガラス板
22 スペーサ
23 周縁部
23a 一方側表面
23b 他方側表面
31 本体部
31a 接着面
32 ストッパ部
33 シール部
34 リップ
35 切り込み溝
B 躯体
F 額縁
I 屋内
O 屋外
S 隙間
W 障子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス板をスペーサの配設下に空気層を設けて積層すると共に周縁部にグレージングチャンネルを設けてなる複層ガラスにおいて、
上記グレージングチャンネルが上記周縁部に位置決めされる帯状に形成の本体部を有し、
この本体部が上記周縁部に圧接されて固設されてなることを特徴とする複層ガラス。
【請求項2】
上記グレージングチャンネルが上記複数枚のガラス板の平面方向を横切る横方向の断面形状をアングル状にして一辺部を上記本体部にすると共にこの本体部に連続する他辺部をストッパ部にし、
上記本体部が上記周縁部に圧接されて固設され、
上記ストッパ部が上記周縁部の周端に当接されてなる請求項1に記載の複層ガラス。
【請求項3】
複数枚のガラス板をスペーサの配設下に空気層を設けて積層すると共に周縁部にグレージングチャンネルを設けてなる複層ガラスと、この複層ガラスを上記グレージングチャンネル越しに保持する枠とを有してなる障子において、
上記グレージングチャンネルが上記周縁部に位置決めされる帯状に形成の本体部を有し、
この本体部が上記周縁部に圧接されて固設されてなることを特徴とする障子。
【請求項4】
上記グレージングチャンネルが上記複数枚のガラス板の平面方向を横切る横方向の断面形状をアングル状にして一辺部を上記本体部にすると共にこの本体部に連続する他辺部をストッパ部にし、
上記本体部が上記周縁部に圧接されて固設され、
上記ストッパ部が上記周縁部の周端に当接されてなることを特徴とする請求項3に記載の障子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96105(P2013−96105A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238195(P2011−238195)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000101776)アルメタックス株式会社 (22)
【Fターム(参考)】