説明

複数のセンサノードを用いて監視を行う火災監視システム

【課題】センサの移設や増設を容易に行うことができる火災監視システムを実現する。
【解決手段】監視対象空間を区画する区画面に複数個設置され、センサと、センサからの検出情報を無線で送信する無線送信部とを有するセンサノード10と、無線送信部から送信された検出情報を受信する無線受信部と、無線受信部で受信された検出情報とセンサノードの設置位置を示す設置位置情報の組を複数用い、出火位置を示す出火位置情報を取得する情報処理部50と、を備え、センサは、火災によって上昇する温度を検出する温度センサであり、情報処理部50は、最高温度を検出した基準センサノードの上昇温度と他のセンサノードの上昇温度とによる上昇温度比と、他のセンサノードの設置位置情報とに基づき、出火位置情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象空間を区画する区画面(例えば、建物内の空間における天井面、或いは、トンネル内の内壁面上部)に複数のセンサノードを設置し、これらのセンサノードによって火災を監視する火災監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火災を監視するための既存の火災監視システムとしては、例えば自動火災報知設備がある。この自動火災報知設備では、火災によって変化する温度や煙濃度をセンサによって検出し、検出した温度や煙濃度が所定の閾値以上となった場合に火災状態と認識する(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−8155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の火災監視システムにおいて、監視対象空間に設置されるセンサは、監視用のコンピュータへ配線を介して接続されている。このため、一旦設置されたセンサを移設したり、センサを増設したりする場合に、大掛かりな工事が必要となってしまう。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサの移設や増設を容易に行うことができる火災監視システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明の火災監視システムは次の構成を採る。
【0007】
即ち、この火災監視システムは、
(a)監視対象空間を区画する区画面に複数個設置されるセンサノードであって、
火災によって変化する物理量を検出するセンサと、
前記センサからの検出情報を無線で送信する無線送信部と、
を有するセンサノードと、
(b)前記無線送信部から送信された前記検出情報を受信する無線受信部と、
(c)前記無線受信部で受信された前記検出情報と前記センサノードの設置位置を示す設置位置情報の組を複数用い、出火位置を示す出火位置情報を取得する情報処理部と、
備えた火災監視システムであって、
前記センサは、火災によって上昇する温度を検出する温度センサであり、
前記情報処理部は、最高温度を検出した基準センサノードの上昇温度と他のセンサノードの上昇温度とによる上昇温度比と、前記他のセンサノードの設置位置情報とに基づき、前記出火位置情報を取得することを特徴とする
【0008】
前記火災監視システムにおいて、前記センサノードは、火災発生状態における前記検出情報の取得間隔が、火災非発生状態における前記検出情報の取得間隔よりも短い構成が好ましい。
【0009】
前記火災監視システムにおいて、前記センサノードは、前記検出情報に基づいて前記火災発生状態か前記火災非発生状態かを判断し、前記火災発生状態における前記検出情報の取得間隔を、前記火災非発生状態における前記検出情報の取得間隔よりも短くするセンサ側コントローラを備えている構成が好ましい。
【0010】
前記火災監視システムにおいて、前記センサノードは、自律作動のための電池を備えている構成が好ましい。
【0011】
前記火災監視システムにおいて、前記センサノードは、商用電源を取得するための電源部と、前記商用電源によって充電される二次電池とを備えている構成が好ましい。
【0012】
前記火災監視システムにおいて、前記センサノードは、太陽電池板と、前記太陽電池板によって充電される二次電池とを備えている構成が好ましい
【0013】
前記火災監視システムにおいて、前記情報処理部は、前記基準センサノードを含む少なくとも3つのセンサノードについて取得した前記検出情報と前記設置位置情報の組を用い、前記出火位置情報を取得する構成が好ましい。
【0014】
前記火災監視システムにおいて、前記監視対象空間は、建物内の空間であり、前記センサノードは、前記空間内の天井面に複数設置される構成が好ましい。
【0015】
前記火災監視システムにおいて、前記監視対象空間は、トンネル内の空間であり、前記センサノードは、前記トンネル内の内壁面上部に複数設置される構成が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
この火災監視システムによれば、監視対象空間に複数個設置されるセンサノードは、センサからの検出情報を無線で送信する無線送信部を有している。そして、無線受信部は、無線で送信された検出情報を受信し、情報処理部に出力する。情報処理部は、検出情報と設置位置情報の組を複数用いて出火位置情報を取得する。このため、センサノードと無線受信部との間の配線をなくすことができる。これにより、センサの移設や増設を容易に行うことができる。また、センサノードが、火災によって変化する物理量を検出するセンサとして、火災によって上昇する温度を検出する温度センサを有しているから、火災を確実に認識することができる。さらに、出火位置情報を取得するにあたり、情報処理部が、基準センサノードの上昇温度と他のセンサノードの上昇温度との上昇温度比と、他のセンサノードの設置位置情報とを用いているから、簡単な演算で出火位置情報を取得することができる
【0017】
また、火災発生状態における検出情報の取得間隔を、火災非発生状態よりも短くした場合には、センサノードにおける省電力化が図れる。そして、この制御を、センサノードが有するセンサ側コントローラで行わせた場合には、情報処理部における制御負担が軽減され、大規模な監視システムの構築が容易になる。
【0018】
また、センサノードが、自律作動のための電池を備えている場合には、配線を引き回す等の手間が省け、任意の場所への設置が容易になる。
【0019】
また、センサノードが、商用電源を取得するための電源部と、前記商用電源によって充電される二次電池とを備えている構成の場合には、火災発生時において確実に動作させることができる。
【0020】
また、センサノードが、太陽電池板と、この太陽電池板によって充電される二次電池とによって構成されている場合には、センサノードを長期間に亘って動作させることができ、メンテナンス性に優れる
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】火災監視システムの構成を説明するための概念図である。
【図2】火災監視システムの構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図3Aは、センサノードの外観を説明する斜視図である。図3Bは、センサノードの取り付け状態を説明するための図である。
【図4】図4Aは、センサノードの構成を説明するブロック図である。図4Bは、センサノードが有するメモリの一部領域を説明する概念図である。
【図5】センサノードの動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】管理用サーバの動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】センサノード、管理用サーバ、監視用コンピュータの動作を説明するための図である。
【図8】建物内の空間で発生した火災を説明するための模式図である。
【図9】出火位置と各センサノードの位置関係を説明するための概念図である。
【図10】第2実施形態におけるセンサノードの使用状態を説明する図である。
【図11】第2実施形態におけるセンサノードの電気系を説明する図である。
【図12】第3実施形態におけるセンサノードの電気系の構成を説明する図である。
【図13】監視対象空間としてのトンネル内の空間を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
===火災監視システムの概要===
以下、火災監視システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで、図1は、火災監視システムの構成を説明するための概念図である。図2は、火災監視システムの構成を説明するためのブロック図である。
【0023】
まず、火災監視システムの概要について説明する。例示した火災監視システムは、センサノード10と、基地局20と、中継局30と、ゲートウェイ40と、管理用サーバ50と、監視用コンピュータ60とを有している。すなわち、この火災監視システムは、複数のセンサノード10を有するコンピュータネットワークとして構成されている。センサノード10は、物理量を検出するためのセンサを有しており、このセンサで検出した物理量を検出情報としてネットワーク上で送信する機能を有する超小型端末である。このセンサノード10は、例えば、火災の監視対象となる部屋(監視対象空間の一種であり、建物内の空間に相当する。以下、空間RMともいう。)の天井面に、複数個設置されている。
【0024】
基地局20は、各センサノード10から無線で送信される測定温度情報(検出情報に相当する。)を、アンテナ21を介して受信し、受信した測定温度情報を、アンテナ21、中継局30、及び、ゲートウェイ40等を介して管理用サーバ50へ送信する。すなわち、この基地局20は、センサノード10から無線で送信された検出情報を受信する無線受信部に相当する。中継局30は、基地局20とゲートウェイ40との通信を補助する。例えば、信号の増幅を行って遠距離間の通信が行えるようにしたり、無線通信を妨害するような遮断物が入った際には迂回路を構成したりする。ゲートウェイ40は、センサノード10側の無線ネットワークと管理用サーバ50側の有線ネットワークとを通信可能に接続するためのものである。
【0025】
管理用サーバ50は、サーバ側コントローラ51を有している。このサーバ側コントローラ51は、ゲートウェイ40を介して取得した測定温度情報を用い、出火位置を示す出火位置情報を取得する。従って、このサーバ側コントローラ51は情報処理部に相当する。監視用コンピュータ60は、監視用の情報を表示するためのものである。この監視用コンピュータ60は、管理用サーバ50と有線ネットワーク等を介して通信可能に接続されている。そして、管理用サーバ50で取得された出火位置情報や他の情報に基づき、種々の制御を行う。
【0026】
===火災監視システムの主要部===
<センサノード10について>
次にセンサノード10について具体的に説明する。ここで、図3Aは、センサノード10の外観を説明する斜視図である。図3Bは、センサノード10の取り付け状態を説明するための図である。図4Aは、センサノード10の構成を説明するブロック図である。図4Bは、センサノード10が有するメモリ131bの一部領域を説明する概念図である。
【0027】
図3Aに示すように、センサノード10は、センサノード本体11と、アンテナ12とを有している。センサノード本体11には、アンテナ12を除くセンサノード10の電気系13が収納されている。このセンサノード10は、例えば図3Bに示すように、建物内の空間RMの天井面に、ある程度の間隔を空けて取り付けられる。例えば、1〜3m位の間隔を空けて取り付けられる。なお、各センサノード10の取り付け間隔は均等でなくてもよい。これは、管理用サーバ50にて出火位置情報を取得するにあたり、複数のセンサノード10における所定時間の上昇温度と、各センサノード10の設置位置情報とを用いていることによる。出火位置情報の取得については、後で説明する。
【0028】
このセンサノード10は、基地局20との間に配線がないので、センサノード10の移設、交換或いは増設が容易に行える。このため、空間RMにおけるレイアウト変更や間仕切り変更に対し、容易に対応できる。この構成は、特に、レイアウト変更や間仕切り変更が頻繁に行われる物販店舗のような場所で有効である。
【0029】
次に、センサノード10の電気系13について説明する。図4Aに示すように、この電気系13は、センサ側コントローラ131、温度センサ132、無線送受信部133、及び、電池134によって構成されている。センサ側コントローラ131は、制御の中心となるCPU131aと、このCPU131aによって使用されるメモリ131bとを有している。ここで、メモリ131bは、センサノード10における省電力化の要請から、消費電力の少ない半導体素子によって構成される。そして、図4Bに示すように、メモリ131bの一部分は、プログラム格納領域、識別情報格納領域、閾値情報格納領域として使用されている。プログラム格納領域は、CPU131aを動作させるためのコンピュータプログラムが格納される領域である。識別情報格納領域は、各センサノード10を識別するために付与された固有の識別情報が格納される領域である。閾値情報格納領域は、温度に関する閾値を格納するための領域である。この閾値(温度閾値情報ともいう。)は、火災発生状態か火災非発生状態かの判断時に使用される。温度センサ132は、空間RMにおける設置位置(測定点)の温度を検出する。そして、この温度は、火災発生時において上昇するため、火災によって変化する物理量に相当する。従って、温度センサ132は、火災によって変化する物理量を検出するセンサに相当する。
【0030】
CPU131aは、前述したコンピュータプログラムに従って動作し、各種の制御を行う。例えば、温度センサ132からの検出信号に基づき、測定温度を示す測定温度情報を取得する。また、CPU131aは、測定温度情報と、そのセンサノード10の識別情報とを組にして、無線送受信部133に出力する。さらに、CPU131aは、取得した測定温度情報に基づき、測定温度情報の取得間隔を定める。本実施形態において、CPU131aは、測定温度情報と温度閾値情報とを比較し、測定温度情報が温度閾値情報未満であれば火災非発生状態と判断し、測定温度情報が温度閾値情報以上であれば火災発生状態と判断する。そして、火災発生状態では、測定温度情報の取得間隔を、火災非発生状態の取得間隔よりも短くする。例えば、火災非発生状態の取得間隔(以下、通常時取得間隔ともいう。)を1分〜5分程度に定め、火災発生状態の取得間隔(以下、火災時取得間隔ともいう。)を1秒〜5秒程度に定める。なお、CPU131aは、演算機能を有しているので、温度センサ132からの検出信号を複数回取得し、各検出信号の平均値から測定温度情報を取得することもできる。
【0031】
無線送受信部133は、無線制御部133aとアンテナ133bとを有している。無線制御部133aは、CPU131aからの情報を変調してアンテナ133bから送信したり、アンテナ133bを介して受信した無線信号から必要な情報を取り出したりする。すなわち、この無線送受信部133は、無線送信部として機能すると共に、無線受信部としても機能する。この無線送受信部133では、CPU131aからの測定温度情報と識別情報とが入力されると、これらの情報を基地局20へ向けて無線で送信する。電池134は、前述したセンサ側コントローラ131、温度センサ132、及び、無線送受信部133の電源に相当し、これらの各部に動作用の電源電圧を供給するものである。従って、このセンサノード10は、電池134によって自律作動ができるように構成されている。その結果、電源供給用の配線を引き回す等の手間が省け、任意の場所へ設置することが容易に行える。
【0032】
<管理用サーバ50について>
次に、管理用サーバ50について説明する。図2に示すように、管理用サーバ50は、サーバ側コントローラ51と、記録再生装置52とを有している。この記録再生装置52は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置やCD−ROMドライブ装置である。また、サーバ側コントローラ51は、制御の中心となるCPU53と、このCPU53によって使用されるメモリ54と、入出力インタフェース55とを有する。ここで、メモリ54は、半導体素子や、磁気ディスク、光磁気ディスク等、種々のものが用いられる。ここで、管理用サーバ50では、複数の空間RMについて火災の発生を監視しているため、膨大な量のデータを収集している。このため、メモリ54の一部は大容量のもので構成される。このメモリ54の一部分は、プログラム格納領域、位置情報格納領域、閾値情報格納領域、測定温度情報格納領域として使用されている。プログラム格納領域は、CPU53を動作させるためのコンピュータプログラムを格納するための領域である。位置情報格納領域は、センサノード10の設置位置を示す設置位置情報を、それぞれのセンサノード10について格納するための領域である。
【0033】
なお、本実施形態では、設置位置情報を、前述した識別情報に関連づけて格納してある。すなわち、測定温度情報格納領域には、識別情報も格納されている。これらの情報の格納は、例えば、センサノード10の設置位置を記録しておき、端末等を使用して行うことができる。そして、設置位置情報と識別情報とが関連付けられているので、CPU53は、受信した識別情報に基づき、対応する設置位置情報を取得できる。閾値情報格納領域は、温度閾値情報を格納するための領域である。本実施形態では、センサノード10に記憶された温度閾値情報と同じ情報が記憶されている。測定温度情報格納領域は、ゲートウェイ40等を介して受信した測定温度情報を格納するための領域である。
【0034】
管理用サーバ50は、測定温度情報と設置位置情報とを用いて空間RMの温度を取得する。そして、取得した温度に基づき火災発生の有無を判断し、火災発生時には出火位置を示す出火位置情報を取得する。この場合において、管理用サーバ50は、各センサノード10における温度上昇度合いに基づき、ガスコンロ等の調理器具等による発熱か、火災による発熱かを判断するようにしてもよい。また、管理用サーバ50は、空間RMの温度情報や出火位置情報を監視用コンピュータ60に送信する。
【0035】
<監視用コンピュータ60について>
次に、監視用コンピュータ60について説明する。図2に示すように、監視用コンピュータ60は、監視側コントローラ61と、表示装置62と、入力装置63と、記録再生装置64とを有している。これらの中で、表示装置62は、例えば液晶ディスプレイやCRTである。入力装置63は、例えばキーボードやマウスである。記録再生装置64は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置やCD−ROMドライブ装置である。また、監視側コントローラ61は、制御の中心となるCPU65と、このCPU65によって使用されるメモリ66と、入出力インタフェース67とを有する。ここで、メモリ66は、管理用サーバ50のものと同様に種々のものが用いられる。
【0036】
この監視用コンピュータ60は、管理用サーバ50からの空間RMの温度情報や出火位置情報に基づいて種々の動作を行う。例えば、火災が発生していない通常時では、各空間RMについて「異常なし」旨の表示をしたり、各空間RMの温度を表示したりする。一方、火災発生時には、警報を発したり、出火位置を報知したり、出火位置付近の消火設備を選択的に作動させたりする。これにより、出火位置付近に消化剤を集中散布する等、効果的な消火活動を行うことができる。すなわち、火災発生箇所へ選択的に消化剤が散布されるので、火災が発生していない箇所へ消化剤を散布せずに済み、什器等の損傷を防止できる。また、本実施形態では、複数のセンサノード10が空間RMに設置されているので、各センサノード10からの測定温度情報に基づき、適切な避難経路で誘導させることもできる。さらに、各センサノード10の温度上昇度合いに基づき延焼方向も認識することができる。このため、出火点と延焼方向について事前に連絡することにより、消防隊は現場に到着した直後から有効な消火活動が行える。
【0037】
===火災監視システムの動作===
次に、火災監視システムの動作について説明する。ここで、図5は、センサノード10の動作を説明するためのフローチャートである。図6は、管理用サーバ50の動作を説明するためのフローチャートである。図7は、センサノード10、管理用サーバ50、監視用コンピュータ60の動作を説明するための図である。
【0038】
<センサノード10の動作について>
まず、センサノード10の動作について説明する。電源が投入されると、センサ側コントローラ131は、温度センサ132からの検出信号に基づいて温度を測定する(S10)。すなわち、測定温度情報を取得する。この測定温度情報は、取得時点の検出信号に対応する温度である。しかし、これに限らず、一定期間の平均温度としてもよい。これによりノイズ等による悪影響を防止することができる。そして、センサノード10は、センサ側コントローラ131(CPU131a,メモリ131b)を有している。このため、平均温度の取得をセンサノード10内で行うことができる。これにより、管理用サーバ50の負担が軽減され、処理の効率化が図れる。測定温度情報を取得したならば、センサ側コントローラ131は、無線送受信部133を制御し、測定温度情報とセンサノード10の識別情報とを基地局20へ送信させる(S20)。これらの測定温度情報と識別情報は、基地局20で受信された後、中継局30やゲートウェイ40を介して管理用サーバ50にて受信される。測定温度情報と識別情報を送信したならば、センサ側コントローラ131は、測定温度が温度閾値以上であるか否かを判断する(S30)。本実施形態において、センサ側コントローラ131は、取得した測定温度情報とメモリ131bに格納された温度閾値情報とを比較することで判断を行う。そして、測定温度が温度閾値以上であった場合には、センサ側コントローラ131は火災時取得間隔を設定する(S40)。例えば、火災時取得間隔として1秒〜5秒の値を設定する。一方、測定温度が温度閾値未満であった場合には、センサ側コントローラ131は通常時取得間隔を設定する(S50)。例えば、通常時取得間隔として1分〜5分の値を設定する。このようにして、火災時取得間隔或いは通常時取得間隔が設定されたならば、センサ側コントローラ131は、ステップS10に戻って、前述した処理を繰り返し行う。このように、センサノード10では、測定温度に応じて定められる時間間隔毎に、取得した情報を、基地局20等を通じて管理用サーバ50へ送信している。
【0039】
<管理用サーバ50の動作について>
次に、管理用サーバ50の動作について説明する。管理用サーバ50が有するサーバ側コントローラ51では、受信すべき情報の有無を監視している。そして、センサノード10から測定温度情報及び識別情報が送信された場合、サーバ側コントローラ51は、これらの情報を受信する(S110)。そして、サーバ側コントローラ51は、受信した測定温度情報が温度閾値以上であるか否かを判断する(S120)。ここで、温度閾値未満であった場合、サーバ側コントローラ51は、監視用コンピュータ60へ温度情報及び位置情報を送信する(S130)。ここで、温度情報は、センサノード10で測定された温度を示す情報である。また、位置情報は、センサノード10が設置された位置を示す情報である。これらの情報により、監視用コンピュータ60では、空間RMの温度や「異常なし」の旨の表示をすることができる。一方、受信した測定温度情報が温度閾値以上であった場合には、サーバ側コントローラ51は、出火位置情報の取得処理を行う(S140)。この出火位置情報の取得処理において、サーバ側コントローラ51は、識別情報に基づいて、そのセンサノード10の設置位置を示す設置位置情報を取得する。そして、測定温度情報と設置位置情報の組を複数用い、出火位置を示す出火位置情報を取得する。なお、出火位置情報の取得処理については、後で説明する。出火位置情報を取得したならば、サーバ側コントローラ51は、火災の発生を示す火災情報、出火位置情報、温度情報、及び、位置情報を監視用コンピュータ60に送信する(S150)。これらの情報により、監視用コンピュータ60では、火災の発生を認識でき、各種の処理が行える。例えば、警報の発生処理、出火位置の報知処理、消火設備の選択的な制御処理、延焼方向の推定処理、及び、有効な避難経路の設定処理が行える。
【0040】
<全体の動作について>
センサノード10と管理用サーバ50とが前述した動作をすることにより、図7に示すように、火災発生時よりも前では、センサノード10から管理用サーバ50へ、温度情報と識別情報とが通常時取得間隔(1分〜5分)毎に送信される。そして、管理用サーバ50は、これらの情報を受信する毎に、測定温度情報とセンサノード10の設置位置情報とを、監視用コンピュータ60へ送信する。そして、監視用コンピュータ60は、測定温度情報と設置位置情報に基づく表示を行う。一方、火災発生後は、センサノード10から管理用サーバ50へ、温度情報と識別情報とが火災時取得間隔(1秒〜5秒)毎に送信される。そして、管理用サーバ50は、これらの情報を受信する毎に、火災情報、出火位置情報、測定温度情報、及び、設置位置情報とを、監視用コンピュータ60へ送信する。そして、監視用コンピュータ60は、これらの情報に基づく表示を行う。
【0041】
このように、例示した火災監視システムでは、火災が発生していない通常時では、比較的長い時間に設定された通常時取得間隔毎に各センサノード10が温度を取得し、火災発生時では、比較的短い時間に設定された通常時取得間隔毎に各センサノード10が温度を取得している。これにより、通常時におけるセンサノード10の電力消費を抑えつつ、火災発生時には十分な量の情報を取得できる。さらに、取得間隔の切り替えがセンサノード10側で行われているので、サーバ側に過度な負担を掛けることなく、効率よくデータを取得することができる。
【0042】
<出火位置情報の取得処理について>
次に、サーバ側コントローラ51で行われる出火位置情報の取得処理(S140)について説明する。ここで、図8は、空間RMで発生した火災を説明するための模式図である。図9は、出火位置と各センサノード10の位置関係を説明するための概念図である。この例では、図8に示すように、床面から天井面までの高さがHである箱状の空間を想定している。また、図9に示すように、空間RMの平面位置は、図の左下隅を原点(0,0)として示している。即ち、この平面位置は、空間RMの幅をx座標とし、空間RMの奥行きをy座標としたxy座標で表されている。
【0043】
出火位置情報の取得処理において、サーバ側コントローラ51は、出火位置に近い複数の測定温度情報を取得する。この場合、出火位置に近いセンサノード10ほど測定温度が高くなるので、サーバ側コントローラ51は、測定温度の高い順に、所定数の測定温度情報を取得する。本実施形態では、3つの測定温度情報を取得する。図9の例では、最高温度を測定したセンサノード10と、2番目に高い温度を測定したセンサノード10と、3番目に高い温度を測定したセンサノード10とについて、温度測定情報が取得される。これらのセンサノード10のうち、最高温度を測定したセンサノード10は、基準センサノードに相当する。また、2番目に高い温度を測定したセンサノード10、及び、3番目に高い温度を測定したセンサノード10は、他のセンサノードに相当する。そして、サーバ側コントローラ51は、そのセンサノード10の識別情報に対応する設置位置情報を、測定点の位置を示す測定点情報として取得する。便宜上、以下の説明では、最高温度を測定したセンサノード10の設置位置を測定点Pとする。また、2番目に高い温度を測定したセンサノード10の設置位置を測定点Pとし、3番目に高い温度を測定したセンサノード10の設置位置を測定点Pとする。測定温度情報及び測定点情報を取得したならば、サーバ側コントローラ51は、次式(1)の演算を行ない、出火位置を示す出火位置情報F(x,y)を取得する。
【0044】

【0045】
上記式(1)において、xは出火位置のx座標、yは出火位置のy座標である。xはi番目の測定点P(測定点Pを除く,以下同様。)におけるx座標(測定点のx座標に相当する。)、yはi番目の測定点Pにおけるy座標(測定点のy座標に相当する。)である。また、△Ts0は、測定点Pでの所定時間内における室温からの上昇温度である。△Tsiは、測定点Pでの所定時間内における室温からの上昇温度である。
【0046】
この式(1)より、サーバ側コントローラ51は、最高温度を検出したセンサノード10(基準センサノードに相当する。)での上昇温度と他のセンサノード10での上昇温度との上昇温度比(△Tsi/△Ts0)と、他のセンサノード10である2番目以降のセンサノード10の設置位置情報(測定点の位置情報)とに基づき、出火位置情報を取得していることが判る。このような演算によって出火位置情報を取得した場合、上昇温度比と2番目以降のセンサノード10の設置位置情報を用いた簡単な演算によって出火位置情報を取得できる。その結果、多くの測定点について高速での処理が可能となる。
【0047】
<出火位置を取得するための式について>
上記式(1)は、Alpertによる天井ジェットの温度減衰式から得られたものである。以下、Alpertの温度減衰式から上記式(1)を導出した過程について簡単に説明する。Alpertの温度減衰式は次式(2)で示され、測定点Pと出火位置Fとの距離rと天井高さHの比(r/H)が0.18以上の関係において、次式(3)を導くことができる。これらの式において、Qは出火位置における発熱速度(kW)、Hは天井高さ(m)、rは出火位置中心軸からの距離(m)、Tは室温である。これらの式は、出火によって生じた熱気流が天井面への衝突によって同心円状に拡がり、出火位置の中心軸からの距離rが大きくなるに従って温度が減衰することを表している。
【0048】

【0049】
式(3)における右辺は、各測定点で等しくなる。これは、この空間RMの天井高さHが一定であり、火源が同一であることによる。ここで、最高温度を示した測定点P(x,y)について、出火位置F(x,y)との距離をrとし、室温からの上昇温度を△Ts0とする。そして、式(3)を用い、出火位置F(x,y)との距離からの距離rを、距離rと等しくなるように換算する(次式(4)を参照。)。これにより、図9に一点鎖線の円で示す等温線を定めることができる。ここで、出火位置F(x,y)と他の測定点P(x,y)のそれぞれを結ぶ直線を仮定すると、各直線と等温線の交わる交点Pi´(x´,y´)は、次式(5)のように表すことができる。
【0050】

【0051】
他の測定点Pが複数ある場合、出火位置F(x,y)は交点P´(x´,y´)の平均値であると考えることができる。そこで、x座標については次式(6)のように表すことができ、この式(6)から次式(7)が得られる。式(7)中の係数Cを、上昇温度比を用いて表現することで、式(1)におけるx座標についての算出式が得られる。なお、y座標についても同様に考えられるので、説明は省略する。
【0052】

【0053】
このように、本実施形態において、出火位置F(x,y)の算出は、次の考え方に基づいて行っている。すなわち、最高温度を示した測定点P(x,y)と出火位置F(x,y)との距離rは、他の測定点P(x,y)と出火位置F(x,y)との距離rに、測定点P(x,y)での上昇温度△Ts0と他の測定点P(x,y)での上昇温度△Tsiとの比(△Tsi/△Ts0)に基づき定められる係数Cを乗じて得られた距離に等しくなるという考え方に基づいて行っている。その結果、前述した式(1)を導出することができ、簡単な演算で出火位置Fを取得できる。
【0054】
===他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0055】
<第2実施形態について>
図10は、第2実施形態におけるセンサノード10Aの使用状態を説明する図である。図11は、第2実施形態におけるセンサノード10Aの電気系13Aを説明する図である。例示したセンサノード10Aは、複数種類のセンサ132,135,136を有している点、二次電池137を搭載している点、商用電源から電源電圧を得る電源部138を有している点に特徴を有している。
【0056】
商用電源としては電灯用のものを分岐する構成が好ましい。これは、電灯の設置間隔がセンサノード10Aの設置間隔と同程度だからである。また、電灯に電源用のコネクタを設け、このコネクタにセンサノード10A側のコネクタを接続する構成としてもよい。また、複数種類のセンサとして、温度センサ132の他に、気流の速度を検出する気流速度センサ135と、煙の濃度を検出する煙濃度センサ136とを設けている。気流速度センサ135は、火災の発生によって生じる熱気流の速度を検出する。煙濃度センサ136は、火災によって変化する煙の濃度を検出する。何れのセンサも、火災によって変化する物理量を検出するセンサに相当する。
【0057】
そして、このセンサノード10Aは、火災発生時において、複数種類の物理量(温度,気流速度,煙濃度)を検出するので、火災の状況をより精度良く検出することができる。また、通常時(火災非発生時)において商用電源で動作しつつ二次電池137を充電し、火災発生等によって商用電源の供給が断たれた場合には二次電池137で動作するため、火災発生時において確実に動作させることもできる。
【0058】
<第3実施形態について>
図12は、第3実施形態におけるセンサノードの電気系13Bの構成を説明する図である。例示したセンサノードは、太陽電池板139で二次電池137を充電し、この二次電池137を電源として各部を動作させている。第2実施形態で説明したように、建物内の空間RMには電灯が設置されているので、この電灯からの光によって二次電池137を充電することができる。このため、長期間に亘ってセンサノードを動作させることができ、使い勝手に優れる。
【0059】
<監視対象空間について>
図13は、監視対象空間としてのトンネル内の空間TNを説明する図である。この図に示す例では、トンネル内の内壁面上部に、複数のセンサノード10が設置されている。このように、センサノード10が設置される場所は、天井面に限定されるものではなく、トンネル内の内壁面上部であってもよい。ここで、内壁面上部とは、トンネル高さの半分以上の部分を指す。具体的には、内壁面の最上部(湾曲面の頂部)から道路面までをトンネル高さとし、このトンネル高さの1/2以上の部分を指す。このように、センサノード10をトンネル内の内壁面上部に設置することにより、火災によって生じた熱気流や煙を早期に検出することができる。
【0060】
<演算対象となるセンサノード10の数>
前述した第1実施形態では、出火位置Fを取得するに際し、最高温度を測定したセンサノード10(基準センサノード)からの測定温度情報と、2つのセンサノード10(他のセンサノード)からの測定温度情報とを用いていた。つまり、基準センサノードを含む3つのセンサノード10からの測定温度情報を用いていた。ここで、前述した式(1)から明らかなように、測定温度情報の数は3つに限定されるものではない。4つ以上であってもよい。そして、測定温度情報を数(対象となるセンサノード10の数)を増やすことにより、出火位置Fの精度を向上させることができる。しかし、数を増やしすぎると処理速度の低下を招いてしまう。このため、測定温度情報の数は、処理速度と出火位置Fの精度とを考慮して定めることが望ましい。
【0061】
<センサノード10,10Aについて>
例示したセンサノード10,10Aは単体で構成されていたが、この構成に限定されず、照明装置等の設備と一体化してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10,10A センサノード,11 センサノード本体,12 アンテナ,
13,13A,13B センサノードの電気系,
131 センサ側コントローラ,131a CPU,131b メモリ,
132 温度センサ,133 無線送受信部,133a 無線制御部,
133b アンテナ,134 電池,135 気流速度センサ,
136 煙濃度センサ,137 二次電池,138 電源部,
139 太陽電池板,20 基地局,21 アンテナ,30 中継局,
40 ゲートウェイ,50 管理用サーバ,51 サーバ側コントローラ,
52 記録再生装置,53 CPU,54 メモリ,
55 入出力インタフェース,60 監視用コンピュータ,
61 監視側コントローラ,62 表示装置,63 入力装置,
64 記録再生装置,65 CPU,66 メモリ,
67 入出力インタフェース,RM 建物内の空間,TN トンネル内の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)監視対象空間を区画する区画面に複数個設置されるセンサノードであって、
火災によって変化する物理量を検出するセンサと、
前記センサからの検出情報を無線で送信する無線送信部と、
を有するセンサノードと、
(b)前記無線送信部から送信された前記検出情報を受信する無線受信部と、
(c)前記無線受信部で受信された前記検出情報と前記センサノードの設置位置を示す設置位置情報の組を複数用い、出火位置を示す出火位置情報を取得する情報処理部と、
備えた火災監視システムであって、
前記センサは、火災によって上昇する温度を検出する温度センサであり、
前記情報処理部は、最高温度を検出した基準センサノードの上昇温度と他のセンサノードの上昇温度とによる上昇温度比と、前記他のセンサノードの設置位置情報とに基づき、前記出火位置情報を取得することを特徴とする火災監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の火災監視システムにおいて、
前記センサノードは、
火災発生状態における前記検出情報の取得間隔が、火災非発生状態における前記検出情報の取得間隔よりも短いことを特徴とする火災監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の火災監視システムにおいて、
前記センサノードは、
前記検出情報に基づいて前記火災発生状態か前記火災非発生状態かを判断し、前記火災発生状態における前記検出情報の取得間隔を、前記火災非発生状態における前記検出情報の取得間隔よりも短くするセンサ側コントローラを備えていることを特徴とする火災監視システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の火災監視システムにおいて、
前記センサノードは、
自律作動のための電池を備えていることを特徴とする火災監視システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れかに記載の火災監視システムにおいて、
前記センサノードは、
商用電源を取得するための電源部と、
前記商用電源によって充電される二次電池と
を備えていることを特徴とする火災監視システム。
【請求項6】
請求項1から請求項3の何れかに記載の火災監視システムにおいて、
前記センサノードは、
太陽電池板と、
前記太陽電池板によって充電される二次電池と、
を備えていることを特徴とする火災監視システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の火災監視システムにおいて、
前記情報処理部は、
前記基準センサノードを含む少なくとも3つのセンサノードについて取得した前記検出情報と前記設置位置情報の組を用い、前記出火位置情報を取得することを特徴とする火災監視システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載の火災監視システムにおいて、
前記監視対象空間は、
建物内の空間であり、
前記センサノードは、
前記空間内の天井面に複数設置されることを特徴とする火災監視システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の火災監視システムにおいて、
前記監視対象空間は、
トンネル内の空間であり、
前記センサノードは、
前記トンネル内の内壁面上部に複数設置されることを特徴とする火災監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−170877(P2011−170877A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94078(P2011−94078)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【分割の表示】特願2005−208633(P2005−208633)の分割
【原出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】