説明

複数の培養器から形成されたシステム

ケース部材(3)とそのケース部材(3)内に配置された試料容器(15)収納用の試料チャンバ(12)と温度調節ユニットとその温度調節ユニットを制御するための制御電子装置(4)とをそれぞれ含んだ複数の培養器(2)からなるシステム(1)において、前記培養器(2)の試料チャンバ(12)が前記温度調節ユニットによって加熱および/または冷却可能であり、前記培養器(2)のケース部材(3)はいずれも試料チャンバ(12)への搬入およびそこからの搬出のための閉鎖可能な入出開口部(13)を備えており、前記培養器(2)のケース部材(3)が各培養器(2)の垂直な積み上げを可能にする。ここで各培養器(2)がいずれもその制御電子装置(4)と共同作用するバスシステム(6)を備え、各培養器(2)のバスシステム(6)が適宜な接続要素(7)を介して互いに結合され、システム(1)がそのシステム(1)の培養器(2)のうちの1つ(マスター培養器)のバスシステム(6)と結合された中央制御ユニット(10)を含んでいて、前記のバスシステム構造を介して前記中央制御ユニット(10)によるシステム(1)の全ての培養器(2)の制御電子装置(4)の個別制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、ケース部材とそのケース部材内に配置された試料容器収納用の試料チャンバと温度調節ユニットとその温度調節ユニットを制御するための制御電子装置とをそれぞれ含んだ複数の培養器からなるシステムに係り、前記培養器の試料チャンバは前記温度調節ユニットによって加熱および/または冷却可能であり、前記培養器のケース部材はいずれも試料チャンバへの搬入およびそこからの搬出のための閉鎖可能な入出開口部を備えており、前記培養器のケース部材が培養器の垂直な積み上げを可能にするものである。
【0002】
この種の培養器は、培養器の試料チャンバ内において定義された環境条件下で所定期間処理される、生物学、生物工学、薬学、診断技術、あるいは化学の分野の試料用に好適に使用される。そのため試料容器内に収容された試料が培養器の試料チャンバ内に挿入される。使用が液体である場合は試料容器がいずれも1つまたは複数の部分容器を含んだ液体用容器となり、例えばいわゆる“マイクロプレート”あるいは“ディープウェルマイクロプレート”となる。
【0003】
本発明の特徴と同種の構成の“マイクロプレート”を収容するための複数の培養器からなるシステムは、例えば米国特許第6518059号B1明細書によって知られている。それによれば、(機能的に同等な)複数の培養器を上下に設置することができる。さらに2つの変更例によれば、培養器の試料チャンバ内の温度が培養器毎に独立してそれぞれ固有の温度制御ユニットを介して制御可能であるか、あるいはいわゆるマスター培養器の温度制御ユニットを介して制御可能である。後者の場合、試料チャンバ内の温度が実質的に等しくなるようにのみ培養器を動作させることができる。
【0004】
前述の従来の技術の観点から本発明の目的は、可能な限り簡便に拡張あるいは縮小でき、別の自動装置との組み合わせにおいても可能な限り高い機能性を達成し、異なった環境条件をもって多様な試料を同時に処理する可能性を提供し、また多様な構造形式の培養器を柔軟に1つのシステムに統合することができる、可能な限り万能に使用可能な冒頭に述べた種類の複数の培養器からなるモジュール式システムを提供することである。
【0005】
前記の課題は、請求項1の特徴をさらに有した同種のシステムによって解決され、すなわち各培養器がいずれもその制御電子装置と共同作用するバスシステムを備え、各培養器のバスシステムが適宜な接続要素を介して互いに結合され、システムがそのシステムの培養器のうちの1つ(マスター培養器)のバスシステムと結合された中央制御ユニットを含んでいて、前記のバスシステム構造を介して前記中央制御ユニットによるシステムの全ての培養器の制御電子装置の個別制御が可能となる。
【0006】
従って本発明に係るシステムは、唯1つの培養器、いわゆるマスター培養器のみを中央制御ユニットと結合すれば充分であることを特徴とする。各培養器に内蔵され相互に結合されているバスシステムによって、中央制御ユニットを使用したシステムの全ての培養器の制御電子装置の独立した個別の制御が可能になる。それによって(モジュール性と同時に)異なった試料チャンバ内の試料を同時にそれぞれ異なった温度に曝すことが可能となる。本発明に係るシステムは、新たにシステム内に追加する培養器をその個別の制御可能性を確保するために直接中央制御ユニットに接続する必要がないため、極めて簡便に拡張することができる。むしろその制御電子装置と共同作用するバスシステムを元からシステム内に存在している培養器のバスシステムに接続すれば充分であり、それによってバスシステム構造を介しての中央制御ユニットによる新たに追加された培養器の制御電子装置の制御が可能になる。
【0007】
さらに、本発明に係るシステムは使用者に対して従来の技術によっては不可能であった、請求項1によって定義された特徴を有していて特にその制御電子装置と共同作用するものであっていずれも互換性を有しているバスシステムを備えている限り、多様な構造および機能性を有した培養器をシステム内に統合する可能性が提供される。
【0008】
従って例えば、温度制御ユニットによってその試料チャンバの加熱のみが可能である培養器を簡便な形態および方式で試料チャンバの冷却のみが可能な培養器で補完することができる。勿論培養器はその他の付加機能によって区別することができ、それについては以下において説明する。
【0009】
培養器内におけるバスシステムの具体的な構成およびバスシステムと対応する制御電子装置の接続は、当業者において多様な技術仕様のバスシステムからなる一般的な従来のバスシステム技術で実施することができる。
【0010】
ここで、新しくシステムに追加された培養器が中央制御ユニットによって自動的に認識されるとともに必要に応じて直ちにバスシステム内のアドレスが割り当てられそれを介して制御可能となることが好適である。さらに、各培養器のバスシステムがその種類あるいは機能を識別するための手段を備えていることが好適である。前記の特徴によってシステムがいわゆる“プラグアンドプレイ”機能を提供し、それによって追加の培養器の極めて簡便な使用可能化が達成される。さらに、新しく追加される培養器の空間的な位置がバスシステムに対するそれの接続に従って強制されるものである場合(後述参照)その培養器に適宜な空間座標を割り当てることができ、それによって例えば培養器の試料チャンバへの搬入および搬出のための自動ロボットシステムとの共同作業が大幅に容易化される。
【0011】
本発明に係るシステムの好適な構成形態によれば、システム内の隣接する各2つの培養器が互いに対応する差し込み要素の形式の2つの接続要素を介して結合可能であり、ここで培養器の少なくとも一部にその外殻部材の上面および下面に対を成して差し込み要素が配置され、それによってさらに上方および/または下方に積み重ねられた培養器の対応する差し込み要素に対しても(直接的な)差し込み結合を形成できるようにする。ここで勿論、積重ね体中でそれぞれ上方および下方に“隣接培養器”を有している全ての培養器が2つの前述した形式の接続要素を備えていることが好適である。その積重ね体中で上方あるいは下方で隣接している両方の培養器は実質的にその上面あるいは下面のいずれか一方のみに対応する接続要素を必要とする。しかしながらシステムの拡張性のために積重ね体の最上部の培養器も互いに対応する差し込み要素の形式の接続要素を2個備えていれば好適であり、そうすれば少なくともさらに1つの(少なくともその下面に対応する差し込み要素を備えた)別の培養器を簡便に上から積み重ねることによって追加することができる。
【0012】
前述したシステムの構成において、追加的な接続ケーブルを装備し接続する必要はない。バスシステムの結合はむしろ既に存在する積重ね体上に新しく追加する培養器の積み重ねに際して直接的に実施される。それによって特に、追加の培養器に自動的にその空間的位置に対応した空間座標を割り当てることが可能になり、その理由はそれが強制的に積重ね体の最上部の培養器の上に直接配置され、またマスター培養器に対してのそれの相対位置が既知の培養器の幾何学的寸法から(場合によってはさらにバスシステムに関して識別することができる構造形態に相関して)導出し得るためである。
【0013】
前述した培養器の接続要素の構成および配置において(可能な限り簡便なシステムの縮小の観点において)、中央制御ユニットと結合されているマスター培養器が本発明に係る複数の培養器が積み重ねられたシステム内の最下部の培養器を形成することが極めて好適である。そのため、それのバスシステムがケース部材の下面にそれを介してあるいはさらに別の接続要素を介して中央制御ユニットと結合するための差し込み要素を備えていれば好適である。
【0014】
別の好適なシステムの構成形態によれば、培養器の少なくとも一部が直線ガイドによって誘導される試料チャンバへの搬入および搬出用の引出しを備えていてそれがモータによって(好適には前面側に配置された)培養器のケース部材の入出開口部を介して引き出しおよび再び挿入可能となっている。
【0015】
それによって、システムの培養器に自動的な搬入および搬出を行うことができる。従って培養器はさらに(好適にはバスシステムを介して制御可能な)引出し用の制御電子装置を備えていて、それは既に温度調節ユニットの制御のための存在している制御電子装置とすることができ、すなわちそれが追加的な機能を果たすものとされる。試料あるいは試料容器は完全に引き出された引出しの中に(好適には中央制御ユニットによって制御される)ロボットシステムによって搬送されそこで解放される。積重ね体の最上部の培養器については場合によってその種の引出しを放棄することができ、その理由はその上面に配置された入出開口部を介して自動的な搬入および搬出が可能なためである。
【0016】
培養器の引出しは試料あるいは試料容器を持ち運ぶために適したものとすることができ、同時に試料チャンバの基底を形成することができる。従ってそれは全面にわたって形成することができる。しかしながらそれは不可欠なものではなく;例えば引出しを枠形状の受容部材としそれが試料容器を縁部領域のみで支持するようにすることもできる。
【0017】
特に、引出しが両方の直線ガイド内において垂直方向に固定的に支承され、他方水平方向においてはその動作方向に対して横断方向の1つの直線ガイド内で固定的に他方の直線ガイド内では解除可能に支承されれば好適である。それによって引出しの一定の熱膨張が許容され従って膨張による引出しの引っ掛かりが防止される。
【0018】
別の好適なシステムの構成形態によれば、引出しは完全に引き出された最終位置において該当する培養器の少なくとも1つのストッパあるいは複数のストッパに当接する。このことは適宜な精度で許容可能にされたストッパを使用して自動化されたロボットシステムとの組み合わせによる試料容器の取り扱いに際して極めて好適であり、その理由は前記の少なくとも1つのストッパによって多数の開閉動作後においても完全に引き出された状態の引出しの位置が極めて良好に再現可能であり、それによってロボットによる試料容器の不正確な把持あるいは誤った投下を防止し得るためである。
【0019】
好適なシステムの追加構成によれば、培養器の試料チャンバへの前面側の入出開口部が引出しの端面側に固定されたハッチによって閉鎖される。従って培養器のケース部材上に取り付けられたハッチとは異なってそのために独立した開放機構を備える必要はない。また引出しの閉鎖動作もハッチの能動的な閉鎖に変換することができる。
【0020】
さらに別の好適なシステムの追加構成によれば、ハッチは引出しが挿入されている状態において実質的に垂直で入出開口部を閉鎖する姿勢を取り、引出しを開けた際には実質的に水平な姿勢に跳ね上がるように旋回し得るよう引出し上の水平な軸周りに取り付けられる。そのためハッチが例えばバネ機構によって予荷重することができる。それによって実質的に水平の姿勢において試料容器の処理のために使用されるロボットシステムの把持アームを妨害することはない。
【0021】
引出しとハッチの間の旋回軸はハッチ側において(垂直状態で見て)その下側あるいは上側縁部から離間して配置することが好適である。その縁部から離間したむしろ中央への配置によって、引出しの挿入時のケース部材の入出開口部の閉鎖に際してハッチによって実質的に均等に分配された閉鎖圧力をかけることが可能になる。さらに、縁側に旋回軸を配置した場合に比べて跳ね上がりに際して必要な空間が縮小される。
【0022】
その際ハッチは引出しの挿入に際して適宜な手段により再びその垂直姿勢に戻され、それによって試料チャンバへの入出開口部が適切に閉鎖される。これはケース部材上において適宜な曲線ガイドによって実施することが好適であり、その上にハッチの一部が引出しの挿入に際して当接しそのハッチが再び垂直になるように転換される。
【0023】
前述したシステムの構成形態によれば、多様な構造のロボットあるいは把持システムと共同作用することができる。特にマイクロプレートあるいはその他の規格化された縦長の試料容器に対して既に多様なロボットシステムが知られており、それによって試料容器がその搬送に際してその縦あるいは横断側でいわゆるポートレートモードあるいはランドスケープモードで把持される。直線的に誘導され前面側にハッチが設けられた引出しによって、ポートレートモードにおける試料品の把持あるいは投下が可能となる。実質的に水平な姿勢へのハッチの跳ね上げによってさらにランドスケープモードによる試料容器の把持が可能となる。
【0024】
本発明に係るシステムの培養器は閉じた状態のハッチに対して一定の閉鎖圧力を付加する手段を備えていることが好適である。そのため、例えば電気モータとして形成された引出し用の駆動モータに閉じた状態において一定のモータ電流を供給することができ、従ってモータ駆動力によってハッチが閉じた状態に保持される。他方、充分に気密なハッチの閉鎖を達成するために(必要に応じて切換可能な)マグネット要素を培養器上および/またはハッチ上に設けることも好適である。
【0025】
別の好適なシステムの構成形態によれば、少なくとも1つの培養器の温度調節ユニットが試料チャンバの基底部に配置された加熱シートを備えており、それによって試料チャンバならびにその中に収容された試料を加熱することができる。
【0026】
好適な構成形態によれば、温度調節ユニットが2ゾーン式加熱シートあるいは少なくとも2つの加熱シートを備えており、それによって2つのゾーンを別々に加熱することができる。ここでゾーンのうちの1つが試料チャンバの基底部の周回状の縁部領域を被覆し、他方第2のゾーンは試料チャンバの基底部の内側の核領域を被覆している。所要の稼働温度への試料チャンバの加熱に際して全ての加熱ゾーンの総出力が好適に使用可能であり、他方既に到達した稼働温度を維持するためには外側の試料チャンバの縁部領域に延在している加熱ゾーンのみが目標温度に調節された動作状態に保持される。それによって試料チャンバ内における極めて均一な温度分布(従って試料の内部自体も)が達成され、その理由は最も大きな熱損失は試料チャンバの縁部領域で発生するためである。さらに、試料チャンバの角部あるいは縦側および横断側の多様な熱移行条件を補償するように、縁部領域の加熱エネルギー密度を追加的に調節することができる。
【0027】
本発明に係るシステムの少なくとも1つの培養器の温度調節ユニットはさらに冷却装置あるいは複合式の冷却/加熱装置を好適に含むこともできる。それによって試料チャンバの基底部および/または側壁のみを好適に直接冷却可能であり、他方試料チャンバの天蓋部は直接的には冷却されない。さらに、(動作電圧の正負に従って)冷却および加熱のいずれも可能にする熱電効果に基づいたペルチェモジュールが好適に使用される。(試料チャンバの基底部の外側縁部領域の加熱と同時の)側壁の冷却によって極めて均一な温度分布が達成される。核ゾーンと比較して強力な試料チャンバの基底部の縁部領域の冷却はペルチェモジュールを使用すると(加熱シートと異なって)極めて高コストなものとなる。試料チャンバの天蓋部が明確に直接的には冷却されないことによって、天蓋部上における液化ならびにそれに伴った試料容器内の試料への液体の落滴が有効に防止される。
【0028】
システムの培養器の可能な限り小さな構造高の必要性の点から、試料チャンバの基底部および/または側壁が冷却装置あるいは複合式の加熱/冷却装置自体から空間的に離間していていわゆるヒートパイプを介してそれと結合されることが可能である。従って温度調節ユニットが、冷却あるいは加熱装置/ファンユニットと、一方でその冷却あるいは加熱装置と結合され他方ではヒートパイプと接触している冷却あるいは加熱フランジを含むことが好適である。それによってその冷却あるいは加熱装置を培養器内の試料チャンバの側方あるいは後方に配置することも可能になる。前記冷却あるいは加熱フランジは冷却あるいは加熱すべき基底部と同じ高さに位置することが好適である。従って実質的に水平なヒートパイプの配設によって極めて良好な加熱あるいは冷却能力が得られる。
【0029】
別の好適なシステムの構成形態によれば、加熱および/または冷却可能な培養器のうちの少なくとも1つの絶縁材が少なくとも2つの絶縁システムからなるサンドイッチ構造を有していて、そのうちの外側のものが真空絶縁層からなる。内側の絶縁システムは塊状(中身が詰まった)の樹脂の層あるいは閉細胞状のゴムからなる層とすることができる。特に可能な限り小さな絶縁層の厚みならびにそれに従って極めて低い培養器の構造高の観点から、(内側から外側に向かって)塊状の樹脂、閉鎖細胞状のゴム、ならびに真空絶縁の合計3つの絶縁層とすることも好適である。低い培養器の構造高によって同じ数の培養器でもより低い積重ね高が達成されそれによって積重ね体の安定性がさらに高まるため、システムに対して極めて有効である。積重ね体内における隣接した培養器が場合によって異なった温度で稼働し得るため、このシステムにおいて良好な絶縁性が極めて重要である。従って前述した絶縁によって隣接する培養器間の相互の影響を低減することができる。
【0030】
閉細胞状のゴムは細胞内に閉じ込められた気泡によって良好な絶縁効果をもたらす。真空絶縁材は5ミリバール未満の気圧に減圧された細孔質の珪酸からなる遮断核部を含んでいてそれが金属蒸着された多層フィルムからなる被覆材によって気密に被覆されており;これは実用上において4mmの厚みで(追加的な絶縁手段無しで)約60℃の試料チャンバの温度までの充分に対応できることが示された。しかしながら本発明に係るシステムにおいて、そのシステムは温度調節ユニットが80℃まであるいはさらにそれ以上(例えば100℃あるいは105℃)の試料チャンバ内の温度まで達するものである少なくとも1つの培養器を含むことができる。前述した2層あるいは3層の絶縁材は通常稼働中において80℃あるいはそれ以上の試料チャンバの内部温度が第2の絶縁層の外側では60℃に低下するような寸法で樹脂および/またはゴム製の内部層が形成され、従って真空絶縁材が残りの熱を充分に遮断することができる。
【0031】
本発明に係るシステムのさらに別の好適な構成形態によれば、培養器が試料チャンバへの搬入および搬出を行うための引出しを備えていて、その引出しがつなぎリンクガイドによって誘導された試料容器の受容部を備えている。ここで前記のつなぎリンクガイドはケース部材内への引出しの水平挿入の最後の部分の間に前記受容部が垂直に降下するように作用し、ここで試料容器は中間板上あるいは試料チャンバの基底部上に載置される。試料チャンバの基底部上への試料容器の載置は、その基底部がヒートパイプを介して温度調節ユニットと不動的に結合され従って試料チャンバへの搬入および搬出のための引出しの一部として使用されない場合に特に有効である。それによって試料容器が冷却可能および/または加熱可能な試料チャンバの基底部上に直接載置され、それによってより良好な試料への熱伝導が達成されるという利点が得られる。
【0032】
しかしながら試料あるいは試料容器は(試料チャンバの基底部とは違う)中間板上に載置することもできる。この際これは(特に使用される試料容器が平坦でない下面を有する場合に)その下面の形状を試料チャンバの基底部に整合させその上面は試料チャンバ内に挿入される試料容器の上面の形状に整合させることによって、加熱および/または冷却可能な基底板の加熱および/または冷却エネルギーの可能な限り良好な伝導を確保するためのアダプタ板として形成することができる。この場合その中間板はアルミニウムまたはそれと同等あるいはさらに良好な熱伝導特性を有する材料から形成することが好適である。
【0033】
他方、前記中間板は培養器の上面に一体化された振盪盤とすることもでき、それによって試料を振盪する。そのため中間板は水平面内を移動可能に配置し、適宜な駆動システムを使用してその水平面内における振動を生成することが好適である。この振盪ユニットは(本発明に係るシステムのその他の全ての電子要素と同様に)培養器の制御電子装置を介して制御し、従って同様にバスシステムを介して中央制御装置によって制御可能であれば好適である。
【0034】
上述した試料チャンバ内に収容されている試料に対する環境条件を変化させる手段(例えば温度に対する温度調節ユニット、水平の振盪動作を生成するための追加的な振盪盤)の他に、本発明に係るシステムの少なくとも1つの培養器が別の環境条件を変化させるための少なくとも1つの別の手段を備えている。それには特に、試料に紫外線あるいは赤外線を照射するための適宜な光源、試料に多様な周波数帯の電磁界を放射するためのアンテナ、試料を例えば窒素(N)あるいはその他のガスに曝すための必要に応じて電子式に切換可能なガス流入口あるいはガス流出口、試料チャンバ内の湿度を上昇あるいは低下させるための手段等が含まれる。好適な構成形態において前記の試料チャンバ内の環境条件を変化させる手段も制御電子装置を介して、すなわち中央制御ユニットによって制御可能である。特に本発明に係るバスシステムとの関連において、それがシステムに接続される多様な培養器の構造形態および機能性を“プラグアンドプレイ”によって自動的に検出することを好適に可能にし、そのため本発明に係るシステムは極めて使用者の利便性が優れたものであることが理解される。
【0035】
前述した好適なシステムあるいは培養器の構成が任意に組み合わせ可能であることは勿論である。
【0036】
本発明に係る複数の培養器からなるシステムの補足として、さらに適宜に構成された培養器の自立的な保護も有効である。
【0037】
これは特に、ケース部材とそのケース部材内に配置された試料容器収納用の試料チャンバと温度調節ユニットとその温度調節ユニットを制御するための制御電子装置とを含んだ培養器(マスター培養器)に係り、前記試料チャンバは前記温度調節ユニットによって加熱および/または冷却可能であり、前記ケース部材は前記試料チャンバへの搬入のための閉鎖可能な入出開口部を備えており、前記ケース部材がその上に垂直に積み重ねられた少なくとも1つの別の培養器を支承するために適したものである。これがさらに、その制御電子装置と共同作用するバスシステムならびにそのバスシステムと結合された2つの接続要素を備え、ここでそのバスシステムは第1の接続要素を介して中央制御ユニットと結合されるとともに第2の接続要素を介して別の培養器(従属培養器)のバスシステムと結合され、従ってそのバスシステム構造を介して前記培養器および前記別の培養器の制御電子装置の中央制御ユニットによる個別の制御も可能となることを特徴とする。
【0038】
本発明はさらに前記マスター培養器あるいは別の従属機器に接続可能な培養器に関する。この種の培養器は、ケース部材とそのケース部材内に配置された試料容器収納用の試料チャンバと温度調節ユニットとその温度調節ユニットを制御するための制御電子装置とを含んでいて、前記試料チャンバは前記温度調節ユニットによって加熱および/または冷却可能であり、前記ケース部材は前記試料チャンバへの搬入のための閉鎖可能な入出開口部を備えており、前記ケース部材がその上に垂直に積み重ねられた少なくとも1つの別の培養器を支承するために適したものである。これがさらに、その制御電子装置と共同作用するバスシステムならびにそのバスシステムと結合された2つの接続要素を備え、そのバスシステムが両方の接続要素のそれぞれを介していずれも別の培養器のバスシステムと結合可能であることを特徴とする。
【0039】
前述したシステムに関するすべての好適な構成形態が(それがシステムの1つあるいは一部の培養器のみに係るものであったとしても)同様な方式で上記の両方の培養器に適用可能であることは勿論である。特に出願人は、現時点において本発明の主要な特徴であると理解されるもの以外の、保護可能性を有した前述した培養器の個別の構成形態を分割出願の対象として保有する。
【0040】
次に本発明に係るシステムならびに本発明に係る培養器について添付図面を参照しながら以下に記述する。
【0041】
図1には本発明に係るシステムの一実施例が概略的に前面から示されている。このシステムは垂直に積み重ねられた複数の培養器2を備えていて、それらはいずれもケース部材3ならびに(図1には示されていない)温度調節ユニットによって加熱および/または冷却可能な試料容器用の試料チャンバを備えている。ケース部材3はいずれも前面側に(ハッチ5によって)閉鎖可能な試料チャンバへの入出開口部を有している。各培養器2の温度調節ユニットはそれぞれその培養器2に内蔵された(点線で示されている)制御電子装置4によって制御可能である。各培養器2はさらにその制御電子装置4と共同作用するバスシステム6(同様に点線で示されている)を備えている。培養器2に内蔵されたバスシステム6は適宜な接続要素7を介して互いに結合され、積重ね体の最下部の培養器上に配置された接続要素8ならびに場合によって無線通信ネットワークによって代替することも可能な結合線9を介して中央制御ユニット10と結合されている。他方、その中央制御ユニット10を最下部の培養器の接続要素7上に接続することもできる。その積重ね体の最下部の培養器はこの場合マスター培養器として機能する。中央制御ユニット10を介して全ての培養器2の制御電子装置4の個別の制御が可能である。接続要素7はいずれも培養器2の上面に配置された差し込み要素7aの形式で設けられていて、それが積み重ねに際して対応する培養器2の下面の差し込み要素7bと結合可能である。培養器2のそれぞれがさらに脚部11を備えていて、それがいずれも下に配置された培養器の上面内の対応する窪み部(図1には示されていない)に係合する。その窪み部の作用によって培養器の(垂直方向および水平方向の)正確な配置が保証される。
【0042】
図2には本発明に係る培養器の第1の実施例が立体的に示されている。培養器2はケース部材3を備えていて、その中に試料を収容するための試料チャンバへ12が配置されている。試料チャンバ12への搬入および搬出を行うため培養器2のケース部材3は前面側に入出開口部13を備えていて、それを介して試料チャンバ12の基底部を形成する引出し14を引き出しおよび挿入することができる。図示されている完全に試料チャンバ12から引き出された引出し14が試料容器15を支承しており、それがバネ式クリップ16によってずれないように固定され、引出し14上に取り付けられたストッパ要素17によって培養器のケース部材3上に取り付けられたストッパ18に当接し、それによってその完全に引き出された位置を正確に固定することができる。
【0043】
引出し14の前面側の水平軸Aの周りで旋回可能に取り付けられたハッチ5は引出し14が閉じられている場合に入出開口部13を閉鎖する実質的に垂直な姿勢にあり、図示された状態においては実質的に水平な姿勢に跳ね上げられている。その跳ね上げは引出し14の引き出しに際して自動的に実施され、それは結合要素19上に取り付けられていて一方で引出し14に他方でハッチ5に対して押圧しているコイルバネ20によって達成される。軸Aを形成している結合要素19はハッチの縁部上ではなく、むしろ(ハッチの垂直方向に見て)下および上縁部から離間して設置されている。
【0044】
引出し14が試料容器12内に挿入される際にハッチ5が再び自動的にその垂直姿勢に戻り、その状態において試料チャンバ12への入出開口部13を閉鎖する。このことは曲線ガイド21の作用によって達成され、その上で引出し14の挿入の終末に際して(好適には回転可能に取り付けられた)ハッチ5の要素22が誘導される。
【0045】
試料容器15の下には試料あるいは試料チャンバ12を加熱するための(図2には示されていない)加熱シートが設けられており、それが平型ケーブル23を介して(同様に図示されていない)培養器2の制御電子装置と結合されている。
【0046】
ケース部材3の上面には別の培養器の脚部11に対応する受容部24が設けられている。前記別の培養器の脚部11の受容部24内への引っ掛かりを防止するために、受容部24のうちの1つがその中に収容された却部11を(水平レベルにおいて)固定的に支承し、他方別の受容部24がその中に収容された却部をそれら両方の受容部を結ぶ方向においては解除可能に支承するように構成されている。このことは図2において(左側に示されている)受容部24の楕円形の形状から認識することができる。さらに、培養器2の上面に差し込み要素7aが設けられており、それを介して培養器2の制御電子装置と共同作用するバスシステムがその培養器2の上に別の培養器が積み重ねられた際にその別の培養器のバスシステムと結合可能である。
【0047】
図3には、本発明に係る培養器の引出しシステムの実施例が立体的に示されている。ここで、特にそのケース部材等の培養器の多数の要素が明確化のために省略されている。引出し14は電気モータ25および伝動ベルト駆動機構26,27,28によって駆動される。この際伝動ベルト27が2つの転向輪26,28を介して誘導されており、そのうち第1の一方がケース部材上に固定的に取り付けられた電気モータ25によって駆動される。前記の伝動ベルト27は引出し14上に固定された締付けブロック29によってその引出し上に締め付けられ、前記締付けブロック29は同時に(第1のストッパ要素17と並んで)引出し14の第2のストッパ要素として機能する。
【0048】
両方のストッパ要素17,29は引出し14が完全に引き出された状態においてそれぞれケース部材上に取り付けられた培養器のストッパ18,30に当接する。引出し14は両側で直線ガイド31によって誘導され、図3には明瞭化のためにそのうち一方のみしか示されていない。
【0049】
引出し上には試料チャンバを加熱するための加熱シート32が設けられており、それが平型ケーブル23を介して基板33と結合されている。その加熱シート32は2ゾーン式加熱シートとして形成されていて、そのうちの第1のゾーン32aが加熱シート32の外側領域を加熱し、第2のゾーン32bは内側領域を加熱する。前記の平型ケーブル23は加熱シート32からまず実質的に全面的な構成となっている引出し14内の(図示されていない)開口部を介して誘導され締付けローラ34の部分で2回周回してその締付けローラ34によって引出し14の動作を妨害しないような方式でケース部材の基底部に固定されている。
【0050】
基板33上には加熱シート32を制御する培養器の(概略的に示された)制御電子装置4およびバスシステム6が設置されている。結合ケーブル35を介して電気モータ25も制御電子装置4によって制御することができる。それがさらにバスシステム6と結合されており、そのバスシステムが前述した全ての機能特徴を有するとともに2つの(図3には示されていない)接続要素7によって培養器2と結合されている。前記のバスシステム6を介して制御電子装置4が、(接続要素のうちの一方を介して直接的あるいは間接的に接続された)中央制御ユニットによって制御可能である。
【0051】
図4は本発明に係る培養器2の一実施例を示した断面図であり、試料チャンバ12を横断した断面が示されている。試料チャンバ12の内部には試料容器15が設置されており、その中に1つあるいは複数の(図示されていない)試料が収容されている。その試料容器15は引出し14上に固定された受容部35内に収納されていて、その側方縁部上にバネ式クリップ16が形成されており、それが試料容器15を側方で固定している。引出し14と受容部35の間には試料チャンバ12を加熱するための加熱シート32が配置され、それが平型ケーブル23を介して培養器2の制御電子装置と結合されている。加熱シート32が実質的に全面的に受容部35上に着合しそれがさらに試料容器15の下面にも着合することによって、加熱シートから試料容器へ(従ってさらにその中に収容されている試料への)良質な熱伝導が確保される。引出し14は両側で(ケース部材上に固定された)直線ガイド31によって誘導されていて、それが垂直方向においてはいずれも引出し14を固定的に支持するように作用する。水平方向ならびに引出し14の移動方向に対して横断方向においてはその引出し14は右側に示された直線ガイド31によって固定的に支承され左側に示された直線ガイド31によっては解除可能に支承され、それによってその方向における引出し14の一定の熱膨張が許容される。引出し14はその縁部領域が同時に直線ガイド31の一部を形成している支台36上に水平に摺動可能に接合している。可能な限り良好な引出し14の滑動特性の必要性から、引出し14をステンレス鋼とし直線ガイド31あるいは支台36は特にテフロン(登録商標)成分を含んだPETP−TX樹脂とする組み合わせが極めて好適である。同様に図4には、引出し14上に固定的に配置された両方のストッパ要素17,29のうちの図中で右側に示された直線ガイド31によって一方が同時に引出し14をその引出しの駆動ユニットの伝動ベルト27と結合するための締付けブロックとして機能する。ケース部材は上側ケース部分37と下側ケース部分38とからなり、その上面あるいは下面にそれのバスシステムをその上あるいはその下に配置された培養器のバスシステムまたは中央制御ユニットと結合するための差し込み要素7a,7bを備えている。絶縁の目的のために、試料チャンバ12は上方に向かったサンドイッチ構造においてまず塊状の樹脂からなる第1の絶縁層39とさらに第2の真空絶縁層40を備えている。塊状の樹脂からなる絶縁層39は試料チャンバ12を側方に向かっても絶縁しており、その際支台36を有する引出し14のための直線ガイド31の領域においては幾らか制限された熱遮断が計算される。塊状の樹脂からなる別の要素41,42,43,44が試料チャンバを下方に向かって絶縁する。必要に応じて第2の真空絶縁層を要素41ないし44の下側に設けることもできる。
【0052】
図5は、本発明に係る培養器の第1の実施例をより詳細に示すための分解図である。
【0053】
図6は本発明に係る培養器2の第2の実施例を右斜め下から立体的に示したものであり、それにおいては引出し14が全面的な構成ではなく枠形状に形成されている。その枠はその内周部に試料容器のための受容部45を備えている。引出し14上にはさらにつなぎリンクガイドが固定されており、それが両側にいずれも基礎板46あるいは47とその中に形成されたガイド48,49あるいは50,51を含んでいる。受容部45は4つのガイドピンホルダ52,53,54,55を備えていて、その上にいずれもつなぎリンクガイドの方向を指向したガイドピン56,57が形成されている。明瞭化のため、つなぎリンクガイドのガイド48,49内に係合している両方のガイドピン56,57が示されている。培養器2の内部にはさらに受容部45あるいはその受容部45内に配置され固定された試料容器のための(図示されていない)ストッパが設けられている。このストッパは、引出し14の閉鎖動作が終了する前に受容部45あるいは試料容器が既にそれに当接するように配置されている。それによって受容部45およびその中に収容された試料容器が引出し14の閉鎖動作の最後の部分の間にそれに対して水平に推動され、つなぎリンクガイドは引出し14に対して水平に動作する受容部45がガイド48ないし51内を動作するガイドピンによって垂直に降下するように作用する。それによって引出し14の閉鎖動作中に試料容器を試料チャンバ12の基底部あるいはその中に配置された中間板上に垂直に載置することができる。
【0054】
最後に図7には、本発明に係る培養器2の別の実施例の分解図が示されており、そのケース部材が上側ケース部分37と下側ケース部分38を有している。試料容器15内に収容されている試料は伝動ベルト駆動機構58によって駆動される引出し14によって培養器2のケース部材内に搬入あるいはそこから搬出することができ、そのために必要な前面側の入出開口部はケース部材の前面側に配置されたハッチ5によって閉鎖可能となっている。試料チャンバは(作業室の室温中において)複合式の冷却/加熱装置59によって+4℃ないし+80℃の温度範囲で冷却および加熱可能となっている。前記の複合式の冷却/加熱装置はいずれも冷却/加熱フランジ60およびヒートパイプ61を介して試料チャンバの側壁62と熱伝導性に結合されている。試料チャンバの天蓋部63は直接的には冷却されない。この試料チャンバは上方および側方に向かって(詳細に透視して図示されてはいない)サンドイッチ構造64によって絶縁されており、それは内側から外側に向かってまず塊状の樹脂、次に閉細胞状のゴム、最後に真空絶縁材を備えている。培養器の(図示されていない)制御電子装置は差し込み要素7a,7bを備えたバスシステムを介して結合されており、それらの差し込み要素はその培養器2のバスシステムを別の培養器のバスシステムと結合するように作用する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るシステムの一実施例を示した説明図である。
【図2】引出しが引き出された状態の本発明に係る培養器の第1の実施例を示した立体図である。
【図3】図2の実施例の個別要素を示した立体図である。
【図4】図2および図3の実施例を引出しが挿入された状態で示した断面図である。
【図5】図2、図3、および図4の実施例の分解図である。
【図6】本発明に係る培養器の第2の実施例を示した立体図である。
【図7】本発明に係る培養器の第3の実施例を示した立体図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材(3)とそのケース部材(3)内に配置された試料容器(15)収納用の試料チャンバ(12)と温度調節ユニットとその温度調節ユニットを制御するための制御電子装置(4)とをそれぞれ含んだ複数の培養器(2)からなり、前記培養器(2)の試料チャンバ(12)が前記温度調節ユニットによって加熱および/または冷却可能であり、前記培養器(2)のケース部材(3)はいずれも試料チャンバ(12)への搬入およびそこからの搬出のための閉鎖可能な入出開口部(13)を備えており、前記培養器(2)のケース部材(3)が各培養器(2)の垂直な積み上げを可能にするよう構成されたシステム(1)であり、
各培養器(2)がいずれもその制御電子装置(4)と共同作用するバスシステム(6)を備え、各培養器(2)のバスシステム(6)が適宜な接続要素(7)を介して互いに結合され、システム(1)がそのシステム(1)の培養器(2)のうちの1つ(マスター培養器)のバスシステム(6)と結合された中央制御ユニット(10)を含んでいて、前記のバスシステム構造を介して前記中央制御ユニット(10)によるシステム(1)の全ての培養器(2)の制御電子装置(4)の個別制御が可能であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
隣接する各2つの培養器(2)が互いに対応する差し込み要素(7a,7b)の形式の2つの接続要素を介して結合可能であり、ここで培養器(2)の少なくとも一部にそのケース部材(3)の上面および下面に対を成して差し込み要素(7a,7b)が配置され、それによってさらに上方および/または下方に積み重ねられた培養器(2)の対応する差し込み要素(7a,7b)に対しても差し込み結合を形成できることを特徴とする請求項1記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項3】
培養器(2)の少なくとも一部が直線ガイド(31)によって誘導される試料チャンバ(12)への搬入および搬出用の引出し(14)を備えていて、それがモータ(25)によって培養器(2)のケース部材(3)の入出開口部(13)を介して引き出しおよび再び挿入可能となっていることを特徴とする請求項1または2記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項4】
引出し(14)は引き出された最終位置において該当する培養器(2)の少なくとも1つのストッパ(18,30)に当接することを特徴とする請求項3記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項5】
培養器(2)のケース部材(3)内の入出開口部(13)が引出し(14)の端面側に取り付けられたハッチ(5)によって閉鎖可能であることを特徴とする請求項4記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項6】
ハッチ(5)は引出し(14)が挿入されている状態において実質的に垂直で入出開口部(13)を閉鎖する姿勢を取り、引出し(14)を開けた際には実質的に水平な姿勢に跳ね上がるような方式で旋回し得るように引出し(14)上の垂直に見て上下の縁部から離間した位置にある水平な軸(A)周りに取り付けられることを特徴とする請求項5記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項7】
システムの少なくとも1つの培養器の温度調節ユニットが試料チャンバ(12)の基底部に配置された加熱シート(32)を備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項8】
加熱シート(32)が2ゾーン式加熱シート(32)であるかあるいは温度調節ユニットが少なくとも2つの加熱シートを備えてなり、それによって2つのゾーン(32a,32b)を別々に加熱することができることを特徴とする請求項7記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの培養器(2)の温度調節ユニットが試料チャンバ(12)を冷却するための冷却装置(59)を備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項10】
少なくとも1つの培養器(2)の温度調節ユニットが試料チャンバ(12)を冷却および加熱するための複合式の冷却/加熱装置(59)を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項11】
試料チャンバ(12)の基底部および/または側壁(62)のみが直接的に冷却可能であることを特徴とする請求項9または10記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項12】
試料チャンバの基底部および/または側壁(62)が冷却装置あるいは複合式の加熱/冷却装置(59)から空間的に離間していてヒートパイプ(61)を介してそれと結合されることを特徴とする請求項11記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項13】
培養器(2)のうちの少なくとも1つの絶縁材が内側から外側に向かって少なくとも2つの絶縁材タイプ(38,40)からなるサンドイッチ構造を有していて、そのうちの外側のものが真空絶縁層(40)からなることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項14】
少なくとも1つの培養器の試料チャンバが内側から外側に向かって塊状の樹脂と、閉細胞状のゴムと、真空絶縁材のサンドイッチ構造(64)によって絶縁されることを特徴とする請求項13記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの培養器(2)の引出し(14)がつなぎリンクガイド(46−51,56,57)によって誘導された試料容器(15)の受容部(45)を備えていて、前記のつなぎリンクガイド(46−51,56,57)が試料チャンバ(12)内への引出しの水平挿入の最後の部分の間に前記受容部(45)が垂直に降下するように作用し、それによって試料容器(15)が中間板上あるいは試料チャンバ(12)の基底部上に載置されることを特徴とする請求項3記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項16】
中間板はその下面の形状が温度調節ユニットによって加熱および/または冷却される試料チャンバ(12)の基底部に整合しその上面は試料チャンバ(12)内に挿入される試料容器(15)の上面の形状に整合することを特徴とする請求項15記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項17】
中間板は試料チャンバ(12)内において水平面上で可動に配置され、駆動システムを使用してその水平面内における振動を生成し得ることを特徴とする請求項15記載の複数の培養器からなるシステム。
【請求項18】
ケース部材(3)とそのケース部材(3)内に配置された試料容器(15)収納用の試料チャンバ(12)と温度調節ユニットとその温度調節ユニットを制御するための制御電子装置(4)とを含んでいて、前記試料チャンバ(12)が前記温度調節ユニットによって加熱および/または冷却可能であり、前記ケース部材(3)は前記試料チャンバ(12)への搬入およびそこからの搬出のための閉鎖可能な入出開口部(13)を備えており、前記ケース部材(3)がその上に垂直に積み重ねられた少なくとも1つの別の培養器(2)を支承するために適するように構成された培養器(マスター培養器)(2)であり、
培養器(2)がその制御電子装置(4)と共同作用するバスシステム(6)ならびにそのバスシステム(6)と結合された2つの接続要素(7a,7b,8)を備え、ここでその培養器(2)のバスシステム(6)は第1の接続要素(7b,8)を介して中央制御ユニットと結合されるとともに第2の接続要素(7a)を介して別の培養器(従属培養器)(2)のバスシステム(6)と結合され、従ってそのバスシステム構造を介して前記中央制御ユニット(10)による前記培養器(2)および前記別の培養器(2)の各制御電子装置(4)の個別の制御が可能であることを特徴とする培養器。
【請求項19】
ケース部材(3)とそのケース部材(3)内に配置された試料容器(15)収納用の試料チャンバ(12)と温度調節ユニットとその温度調節ユニットを制御するための制御電子装置(4)とを含んでいて、前記試料チャンバ(12)が前記温度調節ユニットによって加熱および/または冷却可能であり、前記ケース部材(3)は前記試料チャンバ(12)への搬入およびそこからの搬出のための閉鎖可能な前面側の入出開口部(13)を備えており、前記ケース部材(3)がその上に垂直に積み重ねられた少なくとも1つの別の培養器(2)を支承するために適するように構成された培養器(従属培養器)(2)であり、
前記の培養器(2)がその制御電子装置(4)と共同作用するバスシステム(6)ならびにそのバスシステム(6)と結合された2つの接続要素(7a,7b)を備え、その培養器(2)のバスシステム(6)が両方の前記接続要素(7a,7b)のそれぞれを介していずれも別の培養器(2)のバスシステム(6)と結合可能であることを特徴とする培養器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−502183(P2009−502183A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524413(P2008−524413)
【出願日】平成18年7月29日(2006.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007533
【国際公開番号】WO2007/014727
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508036329)インヘコ インダストリアル ヒーティング アンド クーリング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】INHECO INDUSTRIAL HEATING AND COOLING GMBH
【Fターム(参考)】