説明

複数の斜面を有する転向膜

【課題】光をターゲット角の方向に向け直すための光方向転換物品を提供する。
【解決手段】光方向転換物品は、複数の光方向転換構造を含む入力面(各光方向転換構造は、入射照明を入射角の範囲にわたって受けるための、第1の傾斜底角β、第2の傾斜角β及び第1の半頂角αによって定義される、法線から一方向に傾斜する、2つの斜面を有する近い面と、第2の底角γ及び第2の半頂角α1によって定義される、法線から前記入力面に対して反対方向に傾斜する遠い面とを有する)を含む。本発明はさらに前記入力面に対向する出力面を提供し、前記近い面と前記遠い面は60〜70度の範囲の角度(α+α)で互いに対向し、かつ前記底角βは82〜87度の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、表面からの輝度を向上させるためのディスプレイ照明物品に関し、より詳細には、導光板からの光を向け直す複数の斜面を有する転向膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)は、コスト及び性能が絶えず改善されており、多くのコンピュータ、機器及び娯楽用途にとって好ましいタイプのディスプレイになっている。従来のラップトップコンピュータディスプレイに使用されている透過型LCDは、光をLCDの方に外側へ方向付けるためにLCDの背後に配置された光供給面を有する一種のバックライト付きディスプレイである。小型かつ低コストを維持しながら十分に均一な明るさを有する適切なバックライト装置を提供するという課題は、2つの基本的な手法のうちの一方に従って対処されている。第1の手法では、広範囲の角度にわたって本質的に一定の輝度を有する、高度に散乱された本質的にランベルトの光分布を提供するのに光供給面が使用される。軸上及び軸近傍の輝度を高めるという目的で、この第1の手法に従って、よりコリメートされた照明を提供するために、ランベルトの分布を有するこの光の一部を向け直すための幾つかの輝度増強膜が提案されている。
【0003】
バックライト照明を提供する第2の手法は、光が導光板(LGP)から狭い範囲の角度にわたって放出されるように、側面に配置されたランプ又は他の光源からの入射光を受け、かつこの光を全内部反射(TIR)を用いて内部で誘導するLGPを使用する。LGPからの出力光は、典型的に、法線に対してかなり急角度であり、例えば70度以上である。この第2の手法では、次いで、LGPから出力された放射光を法線の方向へ向け直すのに光方向転換物品の一種である転向膜が使用される。方向転向膜は、光方向転換物品又は光方向転換膜と広く呼ばれ、例えばニューヨーク州ボールドウィンのClarex,Inc.から入手可能なHSOT(高散乱光透過)導光パネルとともに設けられるようなものであり、拡散膜や製造時のドット印刷を必要とせずに、この種の均一なバックライトを提供するための改善された解決法を提供する。HSOT導光パネル及び他のタイプの方向転向膜は、プリズム構造の配列を様々な組み合わせで使用して、導光板からの光を法線方向に、又は典型的に2次元表面に対して法線に近い他の適切なターゲット角の方向に向け直す。一例として、米国特許第6,746,130号(Ohkawa)には、LGP照明用の転向膜の機能を果たす光制御シートが記載されている。
【0004】
図1を参照すると、ディスプレイ装置100における導光板10の総括的機能が示されている。光源12からの光は、入力面18に入射し、通常は図に示されるようにくさび形である導光板10の中を通過する。この光は、全内部反射(TIR)条件が頓挫し、次いで場合により反射面142から反射されるまで導光板10内を伝播し、導光板の出力面16から出射する。次いで、この光は、転向膜20まで進み、光ゲートデバイス120、例えばLCD又は他のタイプの空間光変調器あるいは光を変調する他の2次元バックライト付き構成要素を照明するように方向付けられる。ほとんどの条件下で最適に観察するためには、放射光は、法線Vを中心とする比較的狭い角度の範囲にわたって供給されるべきである。偏光子124は、液晶セルなどの光ゲートデバイス120に変調用の適切に偏光された光を供給するために、通常は照明経路に配置される。反射偏光子125は、吸収偏光子124と転向膜20との間に設けられることが多い。
【0005】
図2を参照すると、導光板10とともに使用される従来型転向膜20aの概略断面図が示されており、重要な角度及び幾何学的関係を示している。転向膜20aは、導光板10に向けて下方を向いている幾つかのプリズム構造を有し、各構造は、近い面24(図1の実施形態に示されているように、光源12に対して近接している面)及び遠い面26を有し、両面は、水平方向Sに対して頂角αと底角β及びβとによって決定されて、膜の法線方向Vから傾斜している。導光板10からの光は、中心入射角θinを中心とする小さい角度範囲にわたって入射する。転向膜20aの平面22でLCディスプレイ要素に送出される光の出射角θoutは、中心入射角θin、転向膜20aの屈折率n及び遠い面26が傾斜している底角βを含む幾つかのファクタによって決定される。放射光の出射角θoutは、転向膜20aに対する法線であることが好ましいが、出射角θoutは、ターゲット角と見なすことができ、ターゲット角は、一部の適用例では法線に対して若干傾斜していてもよい。最も一般的な転向膜の場合、ターゲット角は法線である。典型的な構成では、底角β及びβが約56度であり、頂角αが68度である。θin≒70°あたりの入射角を有する一次光線50aは、法線に近い方向に向け直される。しかしながら、θin<70°あたりの入射角を有する一部の二次光線50c、50c1は、図2に示されているような経路をとることができる。二次光線50c1は、法線方向から比較的大きい角度の方向に向け直される。さらに、二次光線50cは、光出射面92によって全反射される。従って、この既存の転向膜の光利用率は満足のいくものではない。
【特許文献1】米国特許第6,746,130号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、幾つかのタイプのディスプレイ装置及び用途に適した転向膜に関する解決法が提案されているが、改善された転向膜が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光をターゲット角の方向に向け直すための光方向転換物品を提供するものであり、該光方向転換物品は、(a)複数の光方向転換構造を含む入力面(各光方向転換構造は、(i)入射照明を入射角の範囲にわたって受けるための、第1の傾斜底角β、第2の傾斜角β及び第1の半頂角αによって定義される、法線から一方向に傾斜する、2つの斜面を有する近い面と、(ii)第2の底角γ及び第2の半頂角αによって定義される、法線から前記入力面に対して反対方向に傾斜する遠い面とを有する)と、(b)前記入力面に対向する出力面とを含み、前記近い面と前記遠い面が60〜70度の範囲の角度(α+α)で互いに対向し、かつ前記底角βが82〜87度の範囲である。
【0008】
本発明は、光をターゲット角の方向に向け直すための光方向転換物品をさらに提供するものであり、該光方向転換物品は、(a)複数の光方向転換構造を含む入力面(各光方向転換構造は、(i)入射照明を入射角の範囲にわたって受けるための、第1の傾斜底角β、第2の傾斜角β及び第1の半頂角αによって定義される、法線から一方向に傾斜する、2つの斜面を有する近い面(前記第1の傾斜底角βは、膜の基体に最も近い角度であり、前記第2の傾斜角βは、膜の基体から最も遠い角度である)と、(ii)第2の底角γ及び第2の半頂角αによって定義される、法線から前記入力面に対して反対方向に傾斜する遠い面とを有する)と、(b)出力面とを含み、β−βが少なくとも20度である。
【0009】
本発明は、光をターゲット角の方向に向け直すための光方向転換物品をさらに提供するものであり、該光方向転換物品は、(a)ピッチPを有する複数の光方向転換構造を含む入力面(各光方向転換構造は、(i)入射照明を入射角の範囲にわたって受けるための、第1の傾斜底角β、第2の傾斜角β、基体上に長さLを有する第1の投影線分、基体上に長さLを有する第2の投影線分及び第1の半頂角αによって定義される、法線から一方向に傾斜する、2つの斜面を有する近い面(前記第1の傾斜底角βは、膜の基体に最も近い角度であり、前記第2の傾斜角βは、膜の基体から最も遠い角度である)と、(ii)第2の底角γ及び第2の半頂角αによって定義される、法線から前記入力面に対して反対方向に傾斜する遠い面とを有する)と、(b)出力面とを含み、比L/Pが0.06〜0.08であり、かつ比L/Pが0.152〜0.238である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の装置は、概してプリズムのような形状の光方向転換構造を使用する。真のプリズムは、少なくとも2つの平坦な面を有する。しかしながら、光方向転換構造の1つ又は複数の表面は、すべての実施形態において平坦である必要はなく、湾曲していているか又は複合的な部分を有することができるので、より一般的な「光方向転換構造」という用語が本明細書で使用される。
【0011】
図3A〜3Dを参照すると、本発明の改良型転向膜の重要な特徴が示されている。図3Aは、光入射面94及び光出射面92を有する基体を含む本発明による転向膜90aの1つのユニットを示す。膜90aの光入射面94の側面上には、点P1、P2、P3及びP4によって表され、かつ近い面24及び遠い面26を特徴とするプリズム構造があり、近い面は、少なくとも第1の平らな部分24a及び第2の平らな部分24bからなり、第1の部分24aと水平方向Sとの間の角度βは、第2の部分24bと水平方向Sとの間の角度βよりも小さい。プリズム構造は、さらに、2つの半頂角α及びαと、ピッチP及び高さHと、3つの投影寸法L、L及びLとによって表すことができる。プリズム構造は屈折率nの材料で製作され、基体の屈折率は、nより大きくても、nと同じでも、あるいはnより小さくてもよい。プリズム構造の形状及び屈折率nは、導光板10からの一次光線50a、一次光線50aよりも大きい入射角を有する二次光線50b、及び一次光線50aよりも小さい入射角を有する二次光線50cが以下のように特徴付けられるように選択される。すなわち、一次光線50aは、近い面24の第1の部分24aによって屈折され、続いて遠い面26で全内部反射により反射され、最後にターゲット角(通常は膜の法線から5度以内)の方向に出射する。二次光線50bも近い面24の第1の部分24aによって屈折され、続いて遠い面26で全内部反射により反射され、最後に一次光線50aよりもその最初の方向からさらに屈曲した方向に出射する。二次光線50cは、近い面24の第2の部分24bによって屈折され、続いて遠い面26で全内部反射により反射され、最後に第2の部分24bが第1の部分24aと同じ斜面を有する場合よりもさらにターゲット方向に近い方向に出射する。
【0012】
転向膜90aの本発明の実施例(「I」で示す)及び比較例(「C」で示す)が、表1〜表5に示されている。これらの例の全てにおいて、屈折率nが1.5で一定に維持され、プリズムのピッチPが約50μmであるが、ピッチPは、15〜150μmの範囲、好ましくは20〜75μmの範囲、より好ましくは25〜50μmの範囲とすることができる。n及びPが一定に維持されるとき、転向膜90aの形状を特定するための4つの独立したパラメータがあり、これらのパラメータは、L/P、L/P、β及びβとなるように選択される。高さH及び角度は、次式で計算することができる。
【0013】
【数1】

【0014】
表1〜4において、列L/P、β及びβは、独立したパラメータである。
【数2】

は、α=α=90°−β及びα≡2αを確保するものとする。一番右の4つの列は、転向膜の出力を、全能力、最大強度比、最大強度角及び軸上強度比で表している。本発明の転向膜は、能力≧85%、最大強度比≧1.1及び最大強度角≦±5°を有する。
【0015】
βの影響
【0016】
【表1】

【0017】
表1において、例C1.1〜C1.4とI1.1〜I1.2は、所与のL/P=0.077及びβ=56°のときのβの影響を示す。本発明の実施例I1.1及びI1.2の転向膜は、基準:高い能力(>0.88)、大きい最大ピーク強度比(>1.15)及び法線からの小さい最大強度角(≦±3°)を満たしている。βが、好ましい83.5°〜85.5°の範囲外にあり、他のパラメータが、α=α=α/2を保つように、
【数3】

によって決定されるL/Pを除いて同じであるとき、比較例C1.1〜C1.4からの出力は、能力(>0.85)、最大強度比(>1.10)及び最大強度角(≦±5°)に関して基準をすべて満たさず、劣った性能を示す。
【0018】
/Pの影響
【0019】
【表2】

【0020】
表2において、比較例C2.1〜C2.7と本発明の実施例I2.1〜I2.14は、β=85°、β=56°のときのL/Pの影響を示す。L/Pが、好ましい0.06〜0.08の範囲外にあり、他のパラメータが、α=α=α/2を保つように、
【数4】

によって決定されるL/Pを除いて同じであるとき、能力(>0.85)、最大強度比(≧1.10)及び最大強度角(≦±5°)に関する出力は許容できない。表2は、β=84°、β=56°のときの本発明の実施例I2.15〜I2.20も含む。
【0021】
βの影響
【0022】
【表3】

【0023】
表3において、比較例C3.1〜C3.4と本発明の実施例I3.1〜I3.5は、L/P=0.076及びβ=85°のときのβの影響を示す。L/Pが、好ましい58.5°〜53.5°の範囲外にあり、他のパラメータが、α=α=α/2を保つように、
【数5】

によって決定されるL/Pを除いて同じであるとき、能力(>0.85)、最大強度比(≧1.10)及び最大強度角(≦±5°)に関する出力は許容できない。
【0024】
α≠αである非対称転向膜
【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
表4は、本発明の実施例I4.1〜I4.15に示されているように、非対称転向膜を設けると、能力(≧0.85)、最大強度比(≧1.10)及び最大強度角(≦±5°)に関して許容できる出力をもたらすことができるが、パラメータをランダムに選択すると、比較例C4.1〜C4.29に示されているように、満足のいく結果をもたらさないことを示している。概して、αとαの差は5°以内であることが好ましい。
【0028】
屈折率nの影響
【0029】
【表6】

【0030】
【表7】

【0031】
図5は、L/P=0.075、β=85°、β=56°及び
【数6】

α=α=α/2=34°のときの屈折率nの影響を示す。本発明の実施例I5.1〜I5.43は、最大強度角を法線から5°以内に保ちながら、高い能力及び高い最大強度比を得るために、屈折率nが、好ましくは1.15〜1.66の範囲、より好ましくは1.18〜1.55の範囲、最も好ましくは1.19〜1.31の範囲にあることを示している。nが1.15〜1.28であるとき、最大強度比は、1.3より大きく、1.6より大きいときもあり、この値は、n=1.5のときの最大強度比の約1.2よりもかなり大きい。比較例C5.1及びC5.2の場合、最大強度比は1.1未満である。
【0032】
本発明による転向膜90aの場合、平面のうち光出射面に最も近い平面の傾斜角は、β=85°であり、平面のうち光出射面から最も遠い他の平面の傾斜角は、β=56°である。
【0033】
従来技術の例と本発明の実施例との比較
【0034】
【表8】

【0035】
比較例C1は、それがただ1つの斜面を有していることを除いて、本発明の実施例I1.1と同じである。比較例C1は、本発明の実施例I1.1の約0.89の能力及び約1.15の最大強度比と比べて、約0.79というずっと低い能力及び約1.07という低い最大強度比を有する。
【0036】
比較例C2は、本発明の実施例I1.1及びI1.2とほとんど同じ能力及び最大強度比を有する。しかしながら、比較例C2は、約68°の頂角を有する本発明の実施例I1.1及びI1.2と比べてずっと小さい頂角(約41°)を有し、これは、本発明の転向膜の製造がより容易であることを意味する。
【0037】
本発明の転向膜の利点は、その高い最大強度比(光学利得)及びそれの容易な製造を可能にするその大きい頂角である。
【0038】
近い面に4つの斜面を有する転向膜
図3Bは、本発明による転向膜90bの別の実施形態を示す。n=1.5のときの一実施例は下表の通りである。
【0039】
【表9】

【0040】
【表10】

【0041】
平面のうち光出射面に最も近い平面の傾斜角は、β=85°であり、平面のうち光出射面から最も遠い他の平面の傾斜角は、β=56°である。従って、それらの差は29°である。さらに、他の2つの傾斜角の差は、β−β=14.51°であり、この値は、β−β=7.24°及びβ−β=7.25°より大きい。さらに、β−βは、β−β及びβ−βの約2倍である。
【0042】
近い面に曲面と2つの斜面を有する転向膜
図3Cは、本発明による転向膜90cの別の実施形態を示す。ここで、図3Aにおける点P2は、半径R2の曲面(N=1.5)に置き換えられている。
【0043】
【表11】

【0044】
【表12】

【0045】
上記の本発明の実施例I7.1〜I7.9はすべて基準を満たしているが、R/Pは、最大強度比をさらに高めるために、好ましくは0.1〜1.16882の範囲、より好ましくは0.3〜0.8の範囲、最も好ましくは0.4〜0.6の範囲であることが見出されている。
【0046】
点P3は、曲率半径Rで湾曲していてもよい。R/Pは、0.2より小さいことが好ましい。
【0047】
近い面に2つの斜面を有し、かつ遠い面に曲面又は2つの部分を有する転向膜
図3Dは、本発明による転向膜90dの別の実施形態を示す。転向膜90dは、近い面24に、転向膜90a、90b、90cのうちの1つと同じ特徴を有するとともに、1つの追加の面26aも有し、この追加の面26aは、26の他の部分とは異なる傾斜を有する平らな部分、又は凸状若しくは凹状の曲面のどちらかである。
【0048】
例示実施形態の光度分布
図4は、本発明の実施例I1.1による転向膜及び比較例C1による転向膜を通過する光に対する最大光度比対極角の曲線を示す。また、導光板から出て、次いで転向膜に入射する光の光度分布も示されている。本発明の実施例I1.1の転向膜は、ほとんどすべての角度で比較例C1の転向膜よりも高い光度をもたらすことが明瞭に見られる。
【0049】
ディスプレイ装置及び偏光子の方向
本発明の装置及び方法により、支持構成要素の幾つかの考えられる構成が、LCDに光を供給できるようになる。図5は、本発明による転向膜90を用いたディスプレイ装置60を示す概略断面図であり、転向膜90は、転向膜90a、90b、90c又は90dのいずれかとすることができる。LC空間光変調器70は、導光板10及び転向膜90から受けた光を変調する。後部偏光子72及び前部偏光子73は、LC空間光変調器70用に設けられる。
【0050】
図6Aは、光方向転換構造75に対して45度に向けられた一対の偏光子と、図6Aの図において垂直に延びる転向膜90の溝とを用いた、LC空間光変調器70の偏光透過軸172及び173を示す概略上面図である。この場合、LC空間光変調器70は、ノートブック及びモニターディスプレイで使用される基本モードであるねじれネマチック(TN)LCDとすることができる。
【0051】
図6Bは、溝に対して平行又は垂直に向けられた一対の偏光子と、転向膜90の光方向転換構造75とを用いた、LC空間光変調器70の偏光透過軸172及び173を示す概略上面図である。この場合、LC空間光変調器70は、垂直配向(VA)LCD又はIPS LC素子を使用することができる。後部偏光子の透過軸172は、断面の面と平行である。
【0052】
一実施形態では、ディスプレイ装置は一対の交差した偏光子を含み、光方向転換構造は延長方向に細長く、交差した偏光子のそれぞれは、光方向転換物品の延長方向に対して実質的に平行又は垂直に向けられる。別の実施形態では、ディスプレイ装置は一対の交差した偏光子を含み、光方向転換構造は延長方向に細長く、偏光子は光方向転換物品の延長方向に対して実質的に±45度に向けられる。
【0053】
図6Cは、別の実施形態において、弓状に細長い光方向転換構造75を有する転向膜90を示す概略上面図である。この配置は、より小型の設計を行うために、導光板10の1つ又は複数のコーナに発光ダイオード(LED)などの点光源を使用する場合に有利である。後部偏光子の透過軸172は、断面の面とほぼ平行である。
【0054】
転向膜90a〜90dを形成する材料
本発明の転向膜90a〜90dは、典型的には、約1.40〜約1.66の屈折率を有するポリマー材料を使用して製造することができる。考えられるポリマー組成物としては、限定されるものではないが、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(シクロオレフィン)、ポリカーボネート、ポリスルホン、及び様々なコポリマーが挙げられ、コポリマーとしては、アクリル酸塩、脂環式アクリル酸塩、炭酸塩、スチレン、スルホン、及び望ましい光学特性、具体的には可視域での高い透過率と低レベルのヘーズとを与えることが知られているその他の部分の様々な組み合わせが含まれる。前述のポリマーの様々な混和性ブレンドも本発明に使用され得る考えられる材料の組み合わせである。ポリマー組成物は、熱可塑性でも熱硬化性でもよい。前者は、優れた溶解プロセス可能性を必要とする適切な溶解プロセスによって製造可能であり、後者は、適切なUVキャスト及び硬化プロセス若しくは熱硬化プロセスによって製造することができる。
【0055】
本発明の転向膜90a〜90dは、1.12〜1.40の範囲の屈折率を有する材料を使用して製造され得る。材料の例は、無機材料、例えばMgFである。また、この材料は、1.48〜1.59の範囲の屈折率を有する一般的なポリマー材料と空気(n=1)との間に形成されたグレーティングを有する材料でもある。さらに、低屈折率材料(n<1.4)と約1.40〜1.50の屈折率を有する材料との混合物を使用することもできる。
【0056】
転向膜の最大強度比(又は光学利得)、最大強度角(又はピーク角度)及び能力
一般に、光分布は、空間分布及び角度分布に関して規定される。光の空間分布は、導光板の上面及び/又は下面上にマイクロ特徴を慎重に配置することによって、極めて均一に作られ、実現され得る。光の角度分布は、光度Iに関して極角θと方位角の関数として規定される。光の角度分布は、EZ Contrast 160(フランスのEldimから入手可能)を用いて測定される。極角θは、光の方向と導光板の法線Vとの間の角度である。方位角は、法線方向Vに対して垂直な面上への光の投射と導光板の長さ方向に平行な方向との間の角度である。導光板の長さ方向は、光源12及び法線方向Vに対して垂直である。また、光の角度分布は、輝度Lに関して極角θと方位角の関数として規定され得る。輝度Lと光度Iは、L=I/cos(θ)の関係がある。
【0057】
最大強度角は、光分布のピーク角度とも呼ばれ、最大光度が生じる極角と定義される。次に、各光度分布は、最大(又はピーク)光度及び最大強度(又はピーク)角を定義する。
【0058】
最大強度比は、転向膜の光学利得、すなわち正規化ピーク強度とも呼ばれ、導光板から放出された光の最大光度に対する転向膜を透過した光の最大光度の比率と定義される。その結果、転向膜の最大強度比は、光源の絶対レベルには依存せず、主として転向膜の設計自体に依存する。
【0059】
転向膜の能力は、転向膜に入射した光の総量に対する転向膜を透過した光の総量の比率である。従って、様々な転向膜の設計は、2つの重要な量、すなわち最大強度比(又は光学利得)及び転向膜を透過した光の最大強度角に関して比較され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来型ディスプレイ装置の構成要素を示す断面図である。
【図2】導光板に向けて下方を向いているプリズム構造を有する転向膜を示す概略断面図である。
【図3A】本発明によるプリズム構造の近い面に2つの斜面を有する転向膜の単一ユニットを示す概略断面図である。
【図3B】本発明によるプリズム構造の近い面に4つの斜面を有する転向膜の単一ユニットを示す概略断面図である。
【図3C】本発明によるプリズム構造の近い面に曲面と2つの斜面とを有する転向膜の単一ユニットを示す概略断面図である。
【図3D】本発明によるプリズム構造の近い面に2つの斜面を有し、かつ遠い面に2つの斜面を有する転向膜の単一ユニットを示す概略断面図である。
【図4】比較例及び本発明の実施例のデータを示す図である。
【図5】LCDディスプレイシステムにおける本発明の転向膜を示す概略断面図である。
【図6A】転向膜の光方向転換構造の溝に対して45度に向けられた一対の偏光子を備えるLCDを示す概略上面図である。
【図6B】転向膜の光方向転換構造の溝に対して平行又は垂直に向けられた一対の偏光子を備えるLCDを示す概略上面図である。
【図6C】弓状溝を有する転向膜を示す概略上面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 導光板
12 光源
14 端面
16 出力面
18 入力面
20,20a 転向膜
22 平面
24 近い面
24a 近い面の第1の平らな部分
24b 近い面の第2の平らな部分
26 遠い面
50a 一次光線
50b 二次光線
50c,50c1 二次光線
52 反射面
60 ディスプレイ装置
70 LC空間光変調器
72 後部偏光子
73 前部偏光子
75 光方向転換構造
82 点光源
90,90a,90b,90c,90d 転向膜
92 光出射面
94 光入射面
96 基体
100 ディスプレイ装置
120 光ゲートデバイス
124 偏光子
125 反射偏光子
142 反射面
172,173 透過軸
α 頂角
α 半頂角
α 半頂角
β 傾斜底角
β,β,β 傾斜角
γ 傾斜底角
n 屈折率
θin 第1の導光板に対する入射角
θout 出射角
V 膜の法線方向
S 水平方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光をターゲット角の方向に向け直すための光方向転換物品であって、
(a)複数の光方向転換構造を含む入力面(各光方向転換構造は、(i)入射照明を入射角の範囲にわたって受けるための、第1の傾斜底角β、第2の傾斜角β及び第1の半頂角αによって定義される、法線から一方向に傾斜する、2つの斜面を有する近い面と、(ii)第2の底角γ及び第2の半頂角α1によって定義される、法線から前記入力面に対して反対方向に傾斜する遠い面とを有する)と、
(b)前記入力面に対向する出力面とを含み、
前記近い面と前記遠い面が60〜70度の範囲の角度(α+α)で互いに対向し、かつ前記底角βが82〜87度の範囲である、光方向転換物品。
【請求項2】
前記近い面が、入射照明を入射角の範囲にわたって受けるための、第1の傾斜底角β、第2の傾斜角β、第3の傾斜角β、第4の傾斜角β及び第1の半頂角αによって定義される、法線から一方向に傾斜する4つの斜面を有する、請求項1に記載の光方向転換物品。
【請求項3】
前記近い面が、曲面を有する、請求項1に記載の光方向転換物品。
【請求項4】
前記光方向転換構造が、1.15〜1.46の屈折率を有する材料で形成される、請求項1に記載の光方向転換物品。
【請求項5】
前記αと前記αの差が、5度未満である、請求項1に記載の光方向転換物品。
【請求項6】
光をターゲット角の方向に向け直すための光方向転換物品であって、
(a)複数の光方向転換構造を含む入力面(各光方向転換構造は、(i)入射照明を入射角の範囲にわたって受けるための、第1の傾斜底角β、第2の傾斜角β及び第1の半頂角αによって定義される、法線から一方向に傾斜する、2つの斜面を有する近い面(前記第1の傾斜底角βは、膜の基体に最も近い角度であり、前記第2の傾斜角βは、膜の基体から最も遠い角度である)と、(ii)第2の底角γ及び第2の半頂角αによって定義される、法線から前記入力面に対して反対方向に傾斜する遠い面とを有する)と、
(b)出力面とを含み、
β−βが少なくとも20度である、光方向転換物品。
【請求項7】
β−βが、25度〜35度である、請求項6に記載の光方向転換物品。
【請求項8】
前記近い面が2つの傾斜角β及びβをさらに含み、β>β>β>βであり、かつβ−βがβ−β又はβ−βの約2倍である、請求項6に記載の光方向転換物品。
【請求項9】
前記近い面が、曲面をさらに含む、請求項10に記載の光方向転換物品。
【請求項10】
光をターゲット角の方向に向け直すための光方向転換物品であって、
(a)ピッチPを有する複数の光方向転換構造を含む入力面(各光方向転換構造は、(i)入射照明を入射角の範囲にわたって受けるための、第1の傾斜底角β、第2の傾斜角β、基体上に長さLを有する第1の投影線分、基体上に長さLを有する第2の投影線分及び第1の半頂角αによって定義される、法線から一方向に傾斜する、2つの斜面を有する近い面(前記第1の傾斜底角βは、膜の基体に最も近い角度であり、前記第2の傾斜角βは、膜の基体から最も遠い角度である)と、(ii)第2の底角γ及び第2の半頂角α1によって定義される、法線から前記入力面に対して反対方向に傾斜する遠い面とを有する)と、
(b)出力面とを含み、
比L/Pが0.06〜0.08であり、かつ比L/Pが0.152〜0.238である、光方向転換物品。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2009−109990(P2009−109990A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−237459(P2008−237459)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(307010188)ローム アンド ハース デンマーク ファイナンス エーエス (51)
【Fターム(参考)】