説明

複数の神経刺激チャンネルを独立して作動させるためのシステム及び方法

多チャンネル神経刺激システム(10)は、複数の電極(26)にそれぞれ結合されるように構成された複数の電気端子と、複数のタイミングチャンネル内に複数のパルス電気波形を発生させるように構成された同じ極性の電源回路を含む刺激出力回路(14)と、それぞれのパルス電気波形のパルスが互いに時間的に重ならない時に電極(26)から構成される異なるセットに電源回路を直列に結合するように刺激出力回路に命令し、それぞれのパルス電気波形のパルスが互いに時間的に重なる時に異なる電極セットの和集合に電源回路を結合するように刺激出力回路に命令するように構成された制御回路とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織刺激システムに関し、より具体的には、複数の神経刺激チャンネルを作動させるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能神経刺激システムは、様々な疾患及び障害において治療に有効であることが明らかにされている。ペースメーカー及び「埋め込み可能心房細動除去器(ICD)」は、多くの心臓の病状(例えば、不整脈)の治療において非常に有効であることが明らかにされている。「脊髄刺激(SCS)」システムは、慢性疼痛症候群の治療における治療方式として長い間受け入れられてきており、組織刺激の適用は、狭心症及び失禁のような更に別の用途に拡大し始めている。
【0003】
本明細書に説明する本発明により深く関連することとして、「脳深部刺激(DBS)」は、神経学的障害の治療において10年を大幅に超えて治療目的で適用されている。DBS、及び患者の脳内への電気刺激リードの埋め込みを含む他の関連処置は、パーキンソン病、本態性振戦、発作性障害、肥満、鬱病、強迫性障害、トゥレット症候群、ジストニア、及び他の衰弱性疾患のような障害を腹外側視床、淡蒼球内節、黒質網様部、視床下核(STN)、又は淡蒼球外節を含む1つ又はそれよりも多くのターゲット部位の電気刺激によって治療するのに益々使用されている。
【0004】
DBSは、病変に対する安全で可逆性の代替物であるので、多くの障害に対する卓越した治療選択肢となった。例えば、DBSは、進行性パーキンソン病の治療において最も多くの場合に実施される外科障害である。DBS外科手術を受けた患者は、世界中で約30,000人いる。従って、DBS治療選択肢における進歩から恩典を得ることになる患者は多数存在する。DBSを用いた疾患の治療を解説する更なる詳細は、米国特許第6,845,267号明細書及び第6,950,707号明細書に開示されている。
【0005】
一般的に埋め込み可能神経刺激システムは、望ましい刺激部位に埋め込まれる1つ又はそれよりも多くの電極担持刺激リードと、刺激部位から離れて埋め込まれるが、刺激リードに直接的に結合され、又はリード延長部を通じて刺激リードに間接的に結合されるかのいずれかである神経刺激器(例えば、埋め込み可能パルス発生器(IPG))とを含む。更に、神経刺激システムは、選択された刺激パラメータに従って電気刺激パルスを発生させるように神経刺激器に遠隔的に命令する外部制御デバイスを含むことができる。
【0006】
パルス電気波形の形態で、神経刺激器から電極に電気刺激エネルギを送出することができる。従って、神経組織を刺激するのに、刺激エネルギを電極に制御可能に送出することができる。ターゲット組織に電気パルスを送出するのに使用される電極の組合せは、アノード(正)、カソード(負)、又は無効(ゼロ)として機能するように選択的にプログラムすることができる電極を有する電極組合せを構成する。言い換えれば、電極組合せは、正、負、又はゼロである極性を示している。制御又は変更することができる他のパラメータは、電極アレイを通じて供給される電気パルスの振幅、持続時間、及び周波数を含む。各電極組合せを電気パルスパラメータと共に「刺激パラメータセット」と呼ぶことができる。
【0007】
一部の神経刺激システム、特に、独立して制御される電流供給源又は電圧供給源を有するものでは、電極への電流の配分(電極として機能することができる神経刺激器の場合を含む)は、電流が多くの異なる電極構成を通じて供給されるように変更することができる。異なる構成では、電極は、異なる電流配分をもたらすために、電流又は電圧を異なる相対百分率の正の電流又は電圧と負の電流又は電圧とで供給することができる(すなわち、再分割電極構成)。
【0008】
DBSの関連では、多くの脳領域に付随する1つ又はそれよりも多くの病気を治療するために、これらの脳領域を電気的に刺激することを必要とする場合がある。この目的のために、一般的に複数の刺激リードが複数の脳領域の近くに埋め込まれる。特に、下にある脳組織を損傷しないように患者の頭蓋骨に複数の穿頭孔が切開され、患者の頭蓋骨に大きい定位固定ターゲット式装置が装着され、各穿頭孔を通じて脳内の各ターゲット部位に向けてカニューレが1つずつ慎重に位置決めされる。各経路が脳の望ましい部分を通過するか否かを判断するために、一般的にマイクロ電極の記録を作成することができ、通過する場合には、刺激リードは、次に、刺激リード上に設けられた電極が、患者の脳内のターゲット部位に計画的に配置されるように、穿頭孔を通るカニューレを通じてこの経路に沿って脳の柔組織内に導入される。
【0009】
異なる刺激パラメータセットを用いた複数の脳構造(すなわち、脳の異なる機能領域)の刺激は有用であることが示されている。例えば、異なる周波数における脚橋被蓋核(PPN)及び視床下核(STN)の刺激が有益であることが示されている(Alessandro Stefani他著「重度のパーキンソン病における脚橋被蓋核及び視床下核の両側脳深部刺激(Bilateral Deep Brain Stimulation of the Pedunculopontine and Subthalamic Nuclei in Severe Parkinson’s Disease)」、Brain(2007年)、I30、1596〜1607ページを参照されたい)。別のDBS例では、振戦及び固縮の治療を最適化するために1つの周波数が使用され、一方、運動緩慢を治療するために別の周波数が使用される(米国特許第7,353,064号明細書を参照されたい)。
【0010】
従って、異なる脳構造を刺激するのに同じ刺激パラメータセットが使用される場合には、(1)1つの脳構造が最適な治療を受け、他の脳構造が貧弱な治療を受けるか、又は(2)両方の脳構造が凡庸な治療を受けるかのいずれかである可能性がある。従って、DBSの治療効果を最大にするためには、各脳構造は、異なる刺激パラメータセット(すなわち、異なる振幅、異なる持続時間、及び/又は異なる周波数)を必要とする可能性がある。
【0011】
従来技術のDBS技術が異なる刺激パラメータを用いていくつかの脳構造を刺激しようと試みる1つの方式は、複数のリードを脳の異なる領域の近くに埋め込み、異なる刺激パラメータを用いてこれらの脳構造を通じて刺激を高速に循環させることである。慢性疼痛の治療のような一部の用途では、この効果は知覚することができない場合があるが、脳は、電気信号を高速に送信する複雑なシステムであり、高速な循環の効果は、効果のない治療及び/又は発作のような副作用を不適切にもたらす可能性がある「ヘリコプター効果」を生じる可能性がある。
【0012】
従来技術のDBS技術が異なる刺激パラメータを用いていくつかの脳構造を刺激しようと試みる別の方式は、複数のリードをそれぞれ異なる刺激パラメータを用いてプログラムされた複数の神経刺激器に接続することである。しかし、この方式は、処置費用を増加させ、処置の長さを延ばし、外科手術に関連付けられた危険性を高める。
【0013】
別の手法は、異なる脳構造に電気刺激を印加する時に複数のタイミングチャンネルを使用することである。各タイミングチャンネルは、ターゲット組織に電気パルスを送出するのに使用される電極組合せ、並びに電極を通じて流れる電流の特性(パルス振幅、パルス持続時間、パルス周波数等)を識別する。従来技術の神経刺激システムは、電気パルスの発生を同時に制御することができないことから(例えば、これらの神経刺激システムが、1つのアノード電源又は1つのカソード電源のみを備えること、又はそうでなければ1つの電気パルスを形成するのに使用される1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータが、その後の重ね合わせ電気パルスを形成するのに使用される1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータで上書きされる可能性があることといういずれかの理由から)、多くの場合に、複数のタイミングチャンネルの使用は、2つ又はそれよりも多くのタイミングチャンネルの間の電気パルスの重ね合わせの可能性に起因する問題を招く可能性がある。これらの神経刺激システムは、複数のチャンネルの各々に発生するパルス電気波形をそれぞれのチャンネル内の電気パルスが互いに重なることを防ぐために時間多重化することができる。
【0014】
例えば、図1を参照すると、1つの従来技術の神経刺激コントローラ1は、出力刺激回路2を最大4つのパルス電気波形をそれぞれ4つのタイミングチャンネルにわたって4つの刺激パラメータセットに従って出力するように制御することができる。出力刺激回路2は、単一のアノード電流供給源3a及びそれに付随する復号器4a(又は復号器バンク)と、単一のカソード電流供給源3b及びそれに付随する復号器4b(又は復号器バンク)とを含む。復号器4aは、アノード電極組合せ(すなわち、活性アノード電極)を形成するデジタルコード及びアノード電極組合せにおける振幅値を復号するように構成され、復号器4bは、カソード電極組合せ(すなわち、活性カソード電極)を形成するデジタルコード及びカソード電極組合せにおける振幅値を復号するように構成される。
【0015】
神経刺激コントローラ1は、4つの刺激パラメータセットのうちの1つが有するある一定のパラメータ、特に、電極組合せ(すなわち、活性電極)と、電極組合せの活性電極の各々が有する振幅及び極性(カソード又はアノード)とを各々がデジタルに格納するいくつかのレジスタ5(この場合、4つのレジスタ1〜4)を含む。更に、神経刺激コントローラ1は、4つの刺激パラメータセットのうちの1つが有するパルス持続時間及び周波数を高/低の信号を出力することによって各々が制御するいくつかのタイマ6(この場合、4つのタイマ1〜4)を含む。
【0016】
更に、神経刺激コントローラ1は、マルチプレクサ/セレクタ7を含み、マルチプレクサ/セレクタ7は、それぞれのタイマ6によってマルチプレクサ/セレクタ7に出力される信号が高である時に、レジスタ5のうちの選択された1つが有するデジタルコンテンツ(電極組合せ、振幅、及び極性)を刺激出力回路1の復号器3に出力する(すなわち、タイマ6のうちの1つにおける論理1が、関連するレジスタ5をマルチプレクサ/セレクタ7の出力にゲートする)。次に、刺激出力回路2は、それぞれのレジスタ5のデジタルコンテンツによって形成されて復号器3によって復号される電極組合せ、振幅、及び極性、並びにそれぞれのタイマ6によって形成されるパルス幅及び周波数に従ってアノード電気パルスとカソード電気パルスとを出力する。
【0017】
更に、神経刺激コントローラ1は、刺激出力回路2によってアノードパルスとカソードパルスとが出力されることになるタイミングチャンネルをタイマ6を順次起動し、従って、それぞれのレジスタ5のデジタルコンテンツを刺激出力回路5に順次出力することによって順次選択するためのアービトレータ8を含む。アービトレータ8は、チャンネル間の電気パルスの重ね合わせを防いで、単一供給源の出力回路を用いて重ね合わせパルスを発生させようと試みることに関連付けられた上述の問題を回避するようにタイミングチャンネルを選択する。取りわけ、図1に例示す特定のアーキテクチャでは、電気パルスの重ね合わせを防ぐことにより、刺激出力回路2の復号器3に格納された現在の電気パルスの情報(すなわち、レジスタ5のうちの1つから得られたデジタルコンテンツ)が、重ね合わせ電気パルスの情報(すなわち、レジスタ5の別のものから得られるデジタルコンテンツ)が刺激出力回路2の復号器3内にその後に格納される時に、この重ね合わせパルス情報で上書きされないことを保証する。
【0018】
2つのパルス電気波形の周波数が同じか又は他方の高調波である場合には、図2のパルス電気波形で例示するように、電気パルスは、一致しないように、それぞれのチャンネル内で時間的に容易に分離させることができる。簡略化の目的で、パルス電気波形のアノード部分のみを示している。2つのパルス電気波形の周波数が同じではないか又はそうでなければ互いの高調波ではない場合には、速い方の周波数を有するパルス電気波形のパルスが、他方のパルス電気波形内のパルスを「追い抜く」ことになり、従って、図3に例示するように、それぞれのチャンネル内のパルスを同時に発生させることが必要になる機会が存在することになる。
【0019】
しかし、図1に示すように、各極性に対して1つの供給源しか存在せず、又は少なくとも、1つ又はそれよりも多くの非専用供給源(すなわち、複数の電極によって共有することができる供給源)が存在する場合には、第1の電気パルスの電極組合せ情報を第2の電気パルスに関連付けられた電極組合せ情報でデジタルに上書きする可能性に起因して、同じ極性の2つの電気パルスを発生させることができない。従って、複数のパルス電気波形を複数のチャンネル内に発生させることができたとしても、少なくとも1つのパルス電気波形が修正されない限り、これらのパルス電気波形は全て、一定の周期を維持するために関連する周波数を有するべきである。
【0020】
例えば、一実施形態では、アービトレータ8は、パルス電気波形のうちの1つ又はそれよりも多くを修正することによってチャンネル間の刺激パルスの重ね合わせを防ぐ「トークン」方法として公知の方法を使用する。この方法は、「トークン」を有するタイミングチャンネル内で電気パルスを送信し、その間に他のタイミングチャンネルが出番を待つことを可能にする。次に、「トークン」は、次のタイミングチャンネルに渡される。しかし、これらのチャンネルが、「トークン」を同時に必要とするように重なる場合には、第2のチャンネル内での電気パルスの送信は、第1のタイミングチャンネル内での電気パルスの送信の終了時点まで待たなければならない。アービトレータ8は、これをマルチプレクサ/セレクタ7の出力が使用中である間に、その後の電気パルスに関連するタイマ6を待機させることによって達成する。
【0021】
「トークン」方法は、図4を参照することで最も明快に理解することがでる。この図に示すように、第1の周波数を有する第1のパルス電気波形9aは、タイミングチャンネルA内で送信され、第2の周波数を有する第2のパルス電気波形9bは、タイミングチャンネルB内で送信されることが望ましい。タイミングチャンネルAが「トークン」を有するので、タイミングチャンネルB内で送信される第2のパルス電気波形9bのパルスをこれらのパルスが第1のパルス電気波形9aのパルスと重なる度に「押し出す」必要がある。押し出されたパルス電気波形9cで分るように、パルスが押し出されると(水平矢印に示す)、次のパルスは、タイミングにおいて新しい(押し出された)パルスを拠り所とする。それに伴って次のパルスは、前のパルスが押し出される時に1度目と、更にタイミングチャンネルA内で送信されるパルス電気波形9aのパルスと重なる時に2度目とで「2度押し出される」。その結果、第2のパルス電気波形9b内のパルスの周波数は、第1のパルス電気波形9aにおける周波数に強制され(すなわち、ロックされ)、望ましい周波数の2倍低い周波数を有するパルス電気波形9dがもたらされる。
【0022】
トークン方法を使用する1つの有害な結果は、第2のタイミングチャンネル内で送信される電気パルスの周波数が、第1のタイミングチャンネル内で送信される電気パルスの周波数に「ロック」される(すなわち、符合する)か、又は電気パルスのギャロッピング又はクランピングを受ける可能性があるということである。従って、電気パルスの発生が時間的に押し出されると、特定の規則的周波数における刺激を必要とするDBS用途において刺激される脳構造のような組織領域に対して刺激治療は無効になるか、又は有害にさえなる可能性がある(Birno MJ,Cooper SE、Rezai AR、Grill WM著「脳深部刺激のパルス間周波数変化が振戦及びモデル化ニューロン活動に影響を及ぼす(Pulse−to−Pulse Changes in the Frequency of Deep Brain Stimulation Affect Tremor and Modeled Neuronal Activity)」、J.Neurophysiology、2007年9月、98(3)、1675〜1684ページを参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6,845,267号明細書
【特許文献2】米国特許第6,950,707号明細書
【特許文献3】米国特許第7,353,064号明細書
【特許文献4】米国特許第6,895,280号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2007/0100399号明細書
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Alessandro Stefani他著「重度のパーキンソン病における脚橋被蓋核及び視床下核の両側脳深部刺激」、Brain(2007年)、I30、1596〜1607ページ
【非特許文献2】Birno MJ,Cooper SE、Rezai AR、Grill WM著「脳深部刺激のパルス間周波数変化が振戦及びモデル化ニューロン活動に影響を及ぼす」、J.Neurophysiology、2007年9月、98(3)、1675〜1684ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って、神経刺激システムにおける少なくとも1つの電源が複数の電極によって共有される神経刺激システムにおいて、複数の刺激チャンネルを独立して作動させるための改善された技術を提供する必要が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一態様により、多チャンネル神経刺激システムを提供する。神経刺激システムは、複数の電極にそれぞれ結合されるように構成された複数の電気端子と、複数のタイミングチャンネル内に複数のパルス電気波形を発生させるように構成された同じ極性の電源回路を含む刺激出力回路とを含む。パルス電気波形は、異なるパルス周波数を有することができる。一実施形態では、刺激出力回路は、電源回路と電気端子の間に結合された少なくとも1つのスイッチバンクを含む。
【0027】
更に、神経刺激システムは、それぞれのパルス電気波形のパルスが互いに時間的に重ならない時に電極の異なるセットに電源回路を直列に結合するように刺激出力回路に命令し、それぞれのパルス電気波形のパルスが互いに時間的に重なる時に異なる電極セットの和集合に電源回路を結合するように刺激出力回路に命令するように構成された制御回路を含む。
【0028】
更に、神経刺激システムは、複数の電気端子と、刺激出力回路と、制御回路とを収容するハウジングを含む。代替的に、神経刺激システムの構成要素のうちの一部は、別々のハウジングに収容することができる。一実施形態では、電源回路は、電流供給源を含む。この場合、電源回路は複数の電流分岐を含むことができ、制御回路は、電流分岐のうちの1つ又はそれよりも多くをそれぞれの電極に割り当てることによって異なる電極セットの和集合内の各電極に対する電流マグニチュードを選択するように構成することができる。
【0029】
別の実施形態では、パルス電気波形は、それぞれの複数の刺激パラメータセットによって定義され、この場合、制御回路は、刺激パラメータセットの各々から電極セットのデジタル表現を取得し、これらのデジタル表現を互いに組み合わせてデジタル表現の和集合を作成し、このデジタル表現和集合を刺激回路に出力するように構成され、刺激出力回路は、このデジタル表現和集合に従って異なる電極セットの和集合に電源回路を結合するように構成される。デジタル表現の各々は、それぞれの電極セットに対する電流振幅値のデジタル表現を含むことができ、この場合、制御回路は、電流振幅値に従って電源回路から電極の異なるセット又は異なる電極セットの和集合に電流を供給するように刺激出力回路に命令するように構成することができる。
【0030】
更に別の実施形態では、制御回路は、電極セットのデジタル表現を格納するように構成された複数のレジスタと、パルス電気波形のパルス持続時間及びパルス周波数に従って位相有効化信号を出力するように構成を行う複数のタイマとを含む。タイマの各々によって出力される位相有効化信号は、例えば、それぞれのパルス電気波形が活性である時に高とすることができる。更に、制御回路は、レジスタのそれぞれの1つの出力に結合された入力と、タイマのそれぞれの1つの出力に結合された入力とを各々が有する複数のANDゲートと、ANDゲートのそれぞれの出力に結合された入力と、刺激出力回路の入力に結合された出力とを有するORゲートとを含むことができる。
【0031】
本発明の第2の態様により、別の多チャンネル神経刺激システムを提供する。多チャンネル神経刺激システムは、複数の電極にそれぞれ結合されるように構成された複数の電気端子と、電極の異なるセットのそれぞれの複数のデジタル表現を格納するように構成された複数のレジスタと、それぞれの複数のパルス電気波形のパルス持続時間及びパルス周波数に従って位相有効化信号を出力するように構成を行う複数のタイマとを含む。パルス電気波形は、異なるパルス周波数を有することができる。一実施形態では、タイマは、互いに独立して作動される。
【0032】
更に、神経刺激システムは、レジスタのそれぞれの1つの出力に結合された入力と、タイマのそれぞれの1つの出力に結合された入力とを各々が有する複数のANDゲートと、ANDゲートのそれぞれの出力に結合された入力を有するORゲートとを含む。
【0033】
更に、神経刺激システムは、ORゲートの出力に結合された入力を有する刺激出力回路を含む。刺激出力回路は、ORゲートの出力に基づいて電気端子を通じて電極に選択的に結合するようにプログラム可能な同じ極性の電源回路を含む。更に、神経刺激システムは、複数の電気端子と、複数のレジスタと、複数のタイマと、複数のANDゲートと、ORゲートと、刺激出力回路とを収容するハウジングを含むことができる。代替的に、神経刺激システムの構成要素のうちの一部は、別々のハウジングに収容することができる。
【0034】
一実施形態では、電源回路は、電流供給源を含む。この場合、デジタル表現の各々は、それぞれの電極セットに対する電流振幅値のデジタル表現を含むことができ、電流供給回路は、ORゲートの出力に基づいて電極に電流を供給するようにプログラム可能にすることができる。電流供給回路は複数の電流分岐を含むことができ、神経刺激システムは、ORゲートの出力に基づいて電流分岐のうちの1つ又はそれよりも多くを電極の各々に割り当てるように構成された分岐分配回路を更に含むことができる。各電流分岐は、電極に結合されたスイッチバンクと、それぞれのスイッチバンクに結合された復号器とを含むことができ、分岐分配回路は、デジタルコードを復号器の各々に供給するように構成され、デジタルコードは、それぞれのスイッチバンクを通じて電源回路に結合される電極のうちの1つを形成する。
【0035】
本発明の他の及び更に別の態様及び特徴は、本発明を限定することではなく例示するように意図した以下に続く好ましい実施形態の詳細説明を読解することによって明らかになるであろう。
【0036】
図面は、本発明の好ましい実施形態の設計及び有利性を示し、これらの図面内では、類似の要素を共通の参照番号で示す。本発明の上記に列記した利点及び目的、並びに他の利点及び目的が如何に得られるかをより確実に理解するために、添付図面に例示する本発明の特定的な実施形態を参照し、上記に簡単に説明した本発明のより具体的な説明を行う。これらの図面が本発明の典型的な実施形態しか示しておらず、従って、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないという理解の下に、本発明を添付図面を使用することで更に具体的かつ詳細に説明及び解説する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】複数のタイミングチャンネル内にプログラムされる電気波形のパルス間の重ね合わせを防ぐための従来技術の制御回路のブロック図である。
【図2】波形が同じパルス周波数を有し、従って、波形パルスが重ならない従来技術のシステムによって2つのタイミングチャンネル内に発生させた2つのパルス電気波形を示すプロット図である。
【図3】波形が異なるパルス周波数を有し、従って、波形パルスが重なる従来技術のシステムによって2つのタイミングチャンネル内に発生させた2つのパルス電気波形を示すプロット図である。
【図4】複数のタイミングチャンネル内にプログラムされる電気パルス波形のパルス間の重ね合わせを防ぐための従来技術を示すタイミング図である。
【図5】本発明によって構成された脳深部刺激(DBS)システムの実施形態の平面図である。
【図6】図5のDBSシステムに使用される埋め込み可能パルス発生器(IPG)及び経皮リードの側面図である。
【図7】図6のIPGによって4つそれぞれのタイミングチャンネル内に発生させた4つの例示的なパルス電気波形を示すタイミング図である。
【図8】患者において使用状態にある図5のDBSシステムの平面図である。
【図9】図6のIPGの内部構成要素のブロック図である。
【図10】図6のIPGに収容される刺激出力回路のブロック図である。
【図11】それぞれのタイミングチャンネル内でパルスの重ね合わせを許容する方式でパルス電気波形を形成するためのIPGに収容される制御回路のブロック図である。
【図12a】図11の制御回路のレジスタに格納されたタイミングチャンネル1に対する活性電極、電極極性、及び振幅値のデジタル表現の図である。
【図12b】図11の制御回路のレジスタに格納されたタイミングチャンネル2に対する活性電極、電極極性、及び振幅値のデジタル表現の図である。
【図12c】図11の制御回路のレジスタに格納されたタイミングチャンネル3に対する活性電極、電極極性、及び振幅値のデジタル表現の図である。
【図12d】図11の制御回路のレジスタに格納されたタイミングチャンネル4に対する活性電極、電極極性、及び振幅値のデジタル表現の図である。
【図13】タイミングチャンネル1及び2に対する図12a及び図12bに例示するデジタル表現の和集合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に続く説明は、脳深部刺激(DBS)システムに関するものである。しかし、本発明は、DBSにおける用途に十分に適するが、その最も広義の態様ではそのように限定することができないことは理解されるものとする。より正確には、本発明は、組織を刺激するのに使用されるいずれの種類の埋め込み可能電気回路とも併用することができる。例えば、本発明は、ペースメーカー、細動除去器、蝸牛刺激器、網膜刺激器、連係した体肢運動をもたらすように構成された刺激器、皮質刺激器、脊髄刺激器、末梢神経刺激器、微小刺激器の一部として、又は尿失禁、睡眠時無呼吸、肩関節亜脱臼、頭痛などを治療するように構成されたいずれかの他の神経刺激器に対して使用することができる。
【0039】
最初に図5に参照すると、例示的なDBS神経刺激システム10は、一般的に、1つ又はそれよりも多くの(この場合、2つの)埋め込み可能刺激リード12、埋め込み可能パルス発生器(IPG)14、外部遠隔コントローラRC16、臨床医のプログラム作成器(CP)18、外部試験刺激器(ETS)20、及び外部充電器22を含む。
【0040】
IPG14は、アレイで配置された複数の電極26を担持する刺激リード12に1つ又はそれよりも多くの経皮リード延長部24を通じて物理的に接続される。図示の実施形態では、刺激リード12は経皮リードであり、この目的のために電極26を刺激リード12に沿って縦列で配置することができる。別の実施形態では、電極26は、単一のパドルリード上に2次元パターンで配置することができる(例えば、脳皮質刺激が必要な場合)。以下により詳細に説明するが、IPG14は、電気刺激エネルギをパルス電気波形(すなわち、電気パルスの時系列)の形態で刺激パラメータセットに従って電極アレイ26に送出するパルス発生回路を含む。
【0041】
刺激リード12には、経皮リード延長部28及び外部ケーブル30を通じてETS20を物理的に接続することができる。IPG14と類似のパルス発生回路を有するETS20もまた、電気刺激エネルギをパルス電気波形の形態で刺激パラメータセットに従って電極アレイ26に送出する。ETS20とIPG14の間の主な相違点は、ETS20が、供給される刺激の応答性を試すために、刺激リード12が埋め込まれた後かつIPG14の埋め込みの前に試行ベースに使用される埋め込み不能デバイスである点である。
【0042】
RC16は、双方向RF通信リンク32を通じてETS20を遠隔測定制御するのに使用することができる。IPG14及び刺激リード12が埋め込まれると、IPG14は、双方向RF通信リンク34を通じて遠隔測定制御するためにRC16を使用することができる。そのような制御は、IPG14を起動又は停止させ、異なる刺激パラメータセットを用いてプログラムすることを可能にする。IPG14は、プログラムされた刺激パラメータを修正して、IPG14によって出力される電気刺激エネルギの特性を能動的に制御するように作動させることができる。以下により詳細に説明するが、CP18は、手術室及び予後の診察においてIPG14及びETS20をプログラムするための詳細な刺激パラメータを臨床医に供給する。
【0043】
CP18は、IR通信リンク36を通じてRC16を通してIPG14又はETS20と間接的に通信することにより、上述の機能を実行することができる。代替的に、CP18は、RF通信リンク(図示せず)を通じてIPG14又はETS20と直接に通信を行うことができる。CP18によって供給され、臨床医によって詳細に定められた刺激パラメータは、RC16の独立型モードにおける(すなわち、CP18の支援なしの)作動によって刺激パラメータを後に修正することができるようにRC16をプログラムするのにも使用される。
【0044】
外部充電器22は、誘導リンク38を通じてIPG14を経皮的に充電するのに使用される携帯デバイスである。簡潔化の目的で、外部充電器22の詳細内容に対しては、本明細書では説明しない。IPG14をプログラムし終わり、その電源を外部充電器22によって充電又はそうでなければ補充し終わると、IPG14は、RC16又はCP18がなくても、プログラムされた通りに機能することができる。
【0045】
簡潔化の目的で、RC16、CP18、ETS20、及び外部充電器22の詳細内容に対しては、本明細書では説明しない。これらのデバイスの例示的な実施形態の詳細は、米国特許第6,895,280号明細書に開示されている。
【0046】
次に、図6を参照して、刺激リード12及びIPG14の機能を簡単に以下に説明する。刺激リードの一方12(1)は、8つの電極26(E1〜E8とラベル付けしている)を有し、他方の刺激リード12(2)は、8つの電極26(E9〜E16とラベル付けしている)を有する。リード及び電極の実際の個数及び形状は、当然ながら目標とする用途に従って変化することになる。IPG14は、電子構成要素及び他の構成要素(以下により詳細に説明する)を収容するための外側ケース40と、電極26を外側ケース40内の電子機器に電気的に接続する方式で刺激リード12の近位端が嵌合するコネクタ42とを含む。外側ケース40は、チタンのような導電性の生体適合性材料で構成され、内部電子機器が体組織及び体液から保護される密封区画を形成する。一部の場合には、外側ケース40は、電極として機能することができる。
【0047】
IPG14は、バッテリと、IPG14内にプログラムされた刺激パラメータセットに従って電気刺激エネルギをパルス電気波形の形態で電極アレイ26に送出するパルス発生回路とを含む。そのような刺激パラメータは、アノード(正)、カソード(負)として作動され、停止(ゼロ)される電極を形成する電極組合せと、各電極(再分割電極構成)に割り当てられる刺激エネルギの百分率と、パルス振幅(IPG14が電極アレイ26に定電流又は定電圧のいずれを供給するかに依存してミリアンペア又はボルトで測定される)、パルス持続時間(マイクロ秒で測定される)、及びバースト率(刺激印加持続時間X及び刺激停止持続時間Yとして測定される)を形成する電気パルスパラメータとを含むことができる。
【0048】
電気刺激は、1つをIPGケースとすることができる2つ(又はそれよりも多く)の作動電極の間で発生することになる。刺激エネルギは、単極又は多重極(例えば、二重極、三重極等)の方式で組織に送信することができる。単極刺激は、リード電極26のうちで選択された1つがIPG14のケースと共に作動され、従って、選択された電極26とケースとの間で刺激エネルギが送信される場合に発生する。二重極刺激は、リード電極26のうちの2つがアノードとカソードとして作動され、従って、選択された電極26の間で刺激エネルギが送信される場合に発生する。例えば、第1のリード12(1)上の電極E3をアノードとして作動させることができ、同時に第2のリード12(1)上の電極E11をカソードとして作動させることができる。三重極刺激は、リード電極26のうちの3つが、2つをアノードとし、残りの1つをカソードとして、又は2つをカソードとし、残りの1つをアノードとして作動される場合に発生する。例えば、第1のリード12上の電極E4及びE5をアノードとして作動させることができ、同時に第2のリード12上の電極E12がカソードとして作動される。
【0049】
刺激エネルギは、電極の間で単相電気エネルギ又は多相電気エネルギとして送出することができる。単相電気エネルギは、全てが正(アノード性)又は全てが負(カソード性)のいずれかである一連のパルスを含む。多相電気エネルギは、正と負との間で交替する一連のパルスを含む。例えば、多相電気エネルギは、カソード性(負)の刺激パルスと、組織を通じる直流電荷移動を防止し、それによって電極の劣化及び細胞の創傷を回避するために刺激パルスの後に発生するアノード性(正)の再充電パルスとを各々が含む一連の2相パルスを含むことができる。すなわち、電荷は、電極において刺激期間(刺激パルスの長さ)の間に電流によって電極−組織界面を通じて搬送され、次に、同じ電極において再充電期間(再充電パルスの長さ)の間に反対の極性の電流によって電極−組織界面から引き戻される。再充電は能動的なものとすることができ、この場合、電流は、電流供給源又は電圧供給源によって電極を通じて能動的に搬送されるか、又は再充電パルスは受動的なものとすることができ、この場合、電流は、回路に存在する結合キャパシタンスから流れる電荷の再分配によって電極を通じて受動的に搬送することができる。
【0050】
以下により詳細に解説することになるが、IPG14が埋め込まれる患者に治療を提供するために、IPG14は、4つのパルス電気波形を4つのそれぞれのタイミングチャンネルにわたって発生させるようにCP18(又は代替的に、RC16)によってプログラムすることができる。それぞれのタイミングチャンネルに割り当てられる電極組合せは、一般的に、患者内の4つの異なる領域の治療をもたらすものになる。重要な点として、IPG14は、それぞれのタイミングチャンネル内で発生する電気パルスの間の重ね合わせを許容する。
【0051】
次に、図7を参照して、ケース電極を含む電極群E1〜E16にパルス電気波形を同時に送出する4つのタイミングチャンネルを使用する一例を以下に説明する。水平軸は、1ミリ秒(ms)の増分に分割された時間であり、それに対して垂直軸は、16個の電極及びケース電極のうちの1つにいずれかが印加された場合の電流の振幅を示している。簡略化の目的で、パルス電気波形を本質的に単相であるように例示するが、パルス電気波形は、本質的に多相とすることができることを認めるべきである。
【0052】
時間t=0では、チャンネル1は、4(ミリアンペア)(mA)のパルス振幅、300マイクロ秒(μs)のパルス持続時間、及び200パルス毎秒(pps)のパルス周波数を有する電流パルスを発生させて、電極E1(4mAのアノード(正の)パルスとして出現する)とE3(−4mAのカソード(負の)パルスとして出現する)の間に供給するように設定される。時間t=1では、チャンネル2は、4mAのパルス振幅、300μsのパルス持続時間、及び250ppsのパルス周波数を有する電流パルスを発生させて、電極E14(+4mA)とE13(−4mA)の間に供給するように設定される。時間t=2では、チャンネル3は、6mAのパルス振幅、300μsのパルス持続時間、及び200ppsのパルス周波数を有する電流パルスを発生させて、電極E8(+6mA)と電極E6及びE7(それぞれ−4mA及び−2mA)の間に供給するように設定される。時間t=3では、チャンネル4は、5mAのパルス振幅、400μsのパルス持続時間、及び60ppsのパルス周波数を有する電流パルスを発生させて、電極E10(+5mA)とE8(−5mA)の間に供給するように設定される。時間t=4では、チャンネル1が、電流パルスを発生させて電極E1とE3の間に供給するように再度設定され、チャンネル2が、電流パルスを発生させて電極E14とE13の間に供給するように再度設定される。取りわけ、図7に例示すパルス電気波形は本質的に単相であるが、タイミングチャンネルの間に送出されるパルス電気波形は、本質的に多相とすることができる。
【0053】
図8に示すように、刺激リード12は、患者44の頭蓋骨48内に形成された穿頭孔46を通じて導入され、更に、電極26は、機能障害(例えば、腹外側視床、淡蒼球内節、黒質網様部、視床下核、又は淡蒼球外節)の発生源である電気活性を有するターゲット組織領域に近いように患者44の脳49の柔組織内に従来方式で導入される。こうして機能障害の関連を変更するために、刺激エネルギを電極26からターゲット組織領域に伝達させることができる。刺激リード12が穿頭孔46を出る場所の近くの空間の欠如に起因して、一般的に、IPG14は、腹部内又は臀部の上方のいずれかに手術によって作成されたポケット内に埋め込まれる。当然ながらIPG14は、患者の身体の他の場所内に埋め込むことができる。リード延長部24は、IPG14を電極リード12の出口ポイントから離れて設置することを容易にする。
【0054】
次に、図9に着目し、ここでIPG14の主内部構成要素を以下に説明する。IPG14は、データバス64上の制御回路51の制御下で、指定されたパルス振幅、パルス繰返し数、パルス幅、パルス形状、及びバースト率を有する所定のパルス波形に従って電気刺激エネルギを発生させるように構成された刺激出力回路50を含む。制御回路51は、作動させるべき電極、活性電極の極性、及び活性電極における電流の振幅を制御する制御論理52と、パルス電気波形のパルス周波数及びパルス幅を制御するタイマ論理56とを含む。刺激出力回路50によって発生させた刺激エネルギは、リード電極26に対応する電気端子55にコンデンサーC1〜C16を通じて出力され、更に、ケース電極40に出力される。以下により詳細に解説することになるが、刺激出力回路50は、少なくとも1つの非専用供給源(すなわち、リード電極26及びケース電極40のうちで選択されたもの間で時間的に切り換えることができる供給源)を各々が含むアノード電流供給回路とカソード電流供給回路とを含む。
【0055】
N個の電極のうちのいずれかをk個までの可能な群又は「チャンネル」に割り当てることができる。一実施形態では、kは、4に等しいとすることができる。チャンネルは、刺激される組織内に電界を生成するためにどの電極が電流を同期して流出又は流入させるように選択されるかを識別する。チャンネル上の電極の振幅及び極性は、例えば、CP18によって制御される通りに変更することができる。プログラム可能な特徴の候補の中でも取りわけ、所定のチャンネルの電極における電極極性、振幅、パルス繰返し数、及びパルス持続時間を含む刺激パラメータを設定するのに、CP18内の外部プログラミングソフトウエアが一般的に使用される。
【0056】
N個のプログラム可能な電極は、k個のチャンネルのうちのいずれかにおいて正(流出電流)、負(流入電流)、又は停止(電流なし)の極性を有するようにプログラムすることができる。更に、N個の電極の各々は、例えば、2つ又はそれよりも多くの電極接点が同時に電流を流出/流入させるように群にまとめられる多重極(例えば、二重極)モードで作動させることができる。代替的に、N個の電極の各々は、例えば、チャンネルに関連する電極接点がカソード(負)として構成され、ケース電極(すなわち、IPGケース)がアノード(正)として構成される単極モードで作動させることができる。
【0057】
更に、所定の電極から流出するか又は所定の電極に流入する電流パルスの振幅は、いくつかの個別の電流レベル、例えば、0から10mAの間で0.1mAの刻みの個別の電流レベルのうちの1つにプログラムすることができる。同様に、電流パルスのパルス持続時間は、好ましくは、好ましい増分、例えば、0ミリ秒(ms)から1ミリ秒(ms)まで10マイクロ秒(μs)の増分で調節することができる。同様に、パルス繰返し数は、好ましくは、例えば、0パルス毎秒(pps)から1000パルス毎秒(pps)までの許容可能制限値内で調節することができる。他のプログラム可能な特徴は、緩慢な立ち上がり/立ち下がり、バースト刺激循環(X時間にわたって起動、Y時間にわたって停止)、静止期、及び開ループ又は閉ループの検知モードを含むことができる。
【0058】
重要な点として、以下により詳細に説明するが、制御論理52及びタイマ論理56は、同じ極性(アノード又はカソードのいずれか)の電流供給源が電極26によって共有されるということにも関わらず、チャンネル内のパルス間で重ね合わせを許容するような方式で刺激出力回路50を制御する。
【0059】
更に、IPG14は、IPG14にわたる様々なノード又は他のポイント60のステータス、例えば、電源電圧、温度、バッテリ電圧などをモニタするためのモニタリング回路58を含む。更に、IPG14は、データバス64上の制御論理を制御し、データバス66を通じてモニタリング回路58からステータスデータを取得するマイクロコントローラ(μC)62の形態にある処理回路を含む。更に、IPG14は、タイマ論理56を制御する。更に、IPG14は、マイクロコントローラ62に結合されたメモリ68と発振器及びクロック回路70とを含む。それによってマイクロコントローラ62は、メモリ68、並びに発振器及びクロック回路70との組合せで、メモリ68に格納された適切なプログラムに従ってプログラム機能を実施するマイクロプロセッサシステムを構成する。代替的に、一部の用途では、マイクロプロセッサシステムによって提供される機能を適切な状態機械によって実施することができる。
【0060】
こうしてマイクロコントローラ62は、必要な制御信号及びステータス信号を発生させ、それによってマイクロコントローラ62は、選択された作動プログラム及び刺激パラメータに従ってIPG14の作動を制御することが可能になる。IPG14の作動を制御するのに、マイクロコントローラ62は、刺激出力回路50を制御論理52及びタイマ論理56との組合せに用いて電極26に刺激パルス列を個々に発生させることができ、それによって各電極26を単極ケース電極を含む他の電極26と対又は群にまとめることが可能になる。メモリ68に格納された刺激パラメータに従って、マイクロコントローラ62は、極性、振幅、速度、パルス持続時間、及び電流刺激パルスが供給されるチャンネルを制御することができる。更に、マイクロコントローラ62は、モニタリング回路58によって測定された電気パラメータデータ(又は他のパラメータデータ)のメモリ68内への記憶を容易し、モニタリング回路58から得られた未処理電気パラメータデータを分析し、そのような未処理電気パラメータデータから数値を計算するのに必要なあらゆる計算機能も提供する。
【0061】
更に、IPG14は、適切な変調搬送波信号内でプログラミングデータ(例えば、作動プログラム及び/又は刺激パラメータ)をRC16(図5に示す)から受信するための交流(AC)受信コイル72と、AC受信コイル72を通じて受信する搬送波信号を復調してプログラミングデータを回復するための充電及び順方向遠隔測定回路74とを含み、この場合、これらのプログラミングデータは、メモリ68内、又はIPG14にわたって分配された他のメモリ要素(図示せず)に格納される。
【0062】
更に、IPG14は、モニタリング回路58を通じて検知された情報データをCP18に送信するために、帰還遠隔測定回路76及び交流(AC)送信コイル78を含む。IPG14の帰還遠隔測定機能は、IPG14のステータスを検査することも可能にする。例えば、CP18がIPG14とのプログラミングセッションを開始すると、外部プログラム作成器が、再充電するための推定時間を計算することができるように、バッテリの容量が遠隔測定される。電流刺激パラメータに加えられるいずれの変更も帰還遠隔測定を通じて確認され、それによって埋め込みシステム内でそのような変更が正しく受信され、実施されたことが保証される。更に、CP18による照会時に、IPG14に格納された全てのプログラム可能な設定をCP18にアップロードすることができる。
【0063】
更に、IPG14は、IPG14に作動電力を供給するために、再充電可能電源80及び電力回路82を含む。再充電可能電源80は、例えば、リチウムイオンバッテリ又はリチウムイオンポリマーバッテリを含むことができる。再充電可能バッテリ80は、未調整電圧を電力回路82に供給する。次に、電力回路82は、IPG14内に設けられた様々な回路による必要に応じて、一部が調整され、一部が調整されない様々な電圧84を発生させる。再充電可能電源80は、AC受信コイル72によって受信される整流AC電力(又は他の手段、例えば、「インバータ回路」としても公知の効率的なACからDCへのコンバータ回路によってAC電力から変換されたDC電力)を用いて再充電される。電源80を再充電するために、AC磁場を発生させる外部充電器(図示せず)が、埋め込まれたIPG14の上の患者の皮膚に接して又はそうでなければその近くに配置される。外部充電器によって発せられるAC磁場は、AC受信コイル72内にAC電流を誘導する。充電及び順方向遠隔測定回路74は、AC電流を整流して、電源80を充電するのに使用されるDC電流を生成する。AC受信コイル72は、無線で通信(例えば、プログラミングデータ及び制御データ)を受信することと、外部デバイスからエネルギを充電することの両方に使用されるように説明したが、AC受信コイル72は、充電専用コイルとして構成することができ、一方、コイル78のような別のコイルは、双方向遠隔測定に向けて使用することができることを認めるべきである。
【0064】
図9の図は機能的なものに過ぎず、限定的であるように意図したものではないことに注意すべきである。当業者は、本明細書に提供する説明を受けて、選択された電極群上に刺激電流又は刺激電圧を生成することだけではなく、作動又は非作動電極における電気パラメータデータを測定する機能をも含み、提供し、説明した機能を実施する多くの種類のIPG回路又は均等回路を容易に作成することができるはずである。
【0065】
次に、図10を参照して、刺激出力回路50をより詳細に以下に説明する。刺激出力回路50は、プログラム可能なアノード電流供給回路102とプログラム可能なカソード電流供給回路(「電流シンク回路」としても公知)104とを使用する。極性において異なるが、カソード供給回路104は、アノード供給回路102と設計及び機能において同様である。簡略化のためかつ冗長性を避けるために、下記ではアノード電流供給回路102の構成要素とカソード電流供給回路104の構成要素とを網羅的に解説する。
【0066】
アノード電流供給回路及びカソード電流供給回路102、104の各々は、それぞれの電流供給回路102、104によって出力される電流を各々が再分割する2つの部分、すなわち、粗い電流供給源部分106と細かい電流供給源部分108とに分割される。粗い電流供給源部分106は、その名称が示す通り、粗い電流量を特定の電極に供給することを可能にする。言い換えれば、特定の電極において流出又は流入させるようにプログラムすることができる電流量は、比較的大きい増分(例えば、5%)で調節することができる。それとは対照的に、特定の電極において細かい電流供給源部分108によって流出又は流入させるようにプログラムすることができる電流量は、比較的小さい増分(例えば、1%)で調節することができる。
【0067】
アノード電流供給回路及びカソード電流供給回路102、104の各々は、それぞれの電流供給源の粗い電流供給源部分106及び細かい電流供給源部分108に供給される可変基準電流Irefを発生させるデジタルからアナログへの主基準コンバータ(DAC)110も含む。アノード電流供給源に使用されるトランジスタは、一般的に、高電圧(V+)にバイアスされるP型トランジスタで形成され、それに対してカソード電流供給源に使用されるトランジスタは、一般的に、低電圧(V−)にバイアスされるN型トランジスタで形成されることを反映して、アノード電流供給回路102の主DAC110をPDACと記し、カソード電流供給回路104の主DAC110をNDACと記す。
【0068】
各主DAC110は、デジタル制御信号に基づいて電流の増幅をプログラムするために、当業技術で公知のいずれかの構造を含むことができる。図示の実施形態では、各主DAC110は、8つの重み付き電流供給源バンク(図示せず)を含み、基準電流Irefに対して28=256通りの異なる値を出力するように主DAC110をプログラムすることができるように、デジタル制御信号は、8本の線に沿って主DAC110の重み付きバンクにそれぞれ入力される8つのビットを含む。このようにして、最終的に粗い電流供給源部分106及び細かい電流供給源部分108に供給される電流を主DAC110の利得を調節することによって更に(かつ全体的に)変更することができる。
【0069】
粗い電流供給源部分106は、各電極に対して専用又は有線接続の供給回路を含まない。代替的に、粗い電流供給源部分106は、電流ミラー116及びそれに関連するスイッチバンク118を各々が含むL個の粗い電流分岐114を通じて様々な電極の間で共有又は分配される。この例示的な事例では、L=19である。図示の実施形態では、電流ミラー116の各々は、同じ電流振幅、特に、基準電流Irefのスケーリングバージョン、例えば、5Irefを出力する。別の実施形態では、電流ミラー116によって出力される電流は、独立して変更することができる。
【0070】
取りわけ、電流ミラー116は、これらの電流ミラー116自体内で個々に調節することができない(主DAC110とは対照的に)。その代わりに電流ミラー116は、スイッチバンク118に一致した電流を供給し、特定の電流ミラー116の選択又は非選択により、その与えられたスイッチバンク118内で電流が発生する。スイッチバンク118の各々は、電極の個数に対応するN個のスイッチ(図示せず)を含む。この例示的な事例では、N=17(16個のリード電極26及びケース電極)である。従って、各スイッチバンク118は、デジタル制御信号に応答して、各スイッチバンク118の電流ミラー116とリード電極E1〜E16のうちのいずれか又はケース電極(図10には示していない)との間で電流を伝達することができる。アノード電流供給回路102の場合には、各スイッチは、その電流ミラーから電極のうちのいずれかに電流を伝達し、カソード電流供給回路104の場合には、各スイッチは、電極のうちのいずれかから各スイッチの電流ミラーに電流を伝達する。
【0071】
図示の実施形態では、各スイッチバンク118内に入力されるデジタル制御信号は、17本のそれぞれの線に沿ってスイッチバンク118のスイッチにそれぞれ入力される17個のビットを含み、17ビットのうちの1つのみが高であり、それによってそれぞれのスイッチバンク118内で閉じるべき特定のスイッチが指定され、従って、それぞれのスイッチバンク118から電流を受け取る(アノード電流供給回路102の場合)、代替的に、それぞれ、のスイッチバンク118に電流を送出する(カソード電流供給回路104の場合)対応する電極が指定される。従って、粗い電流分岐毎に一度に1つのスイッチしか閉じることができない。
【0072】
以上から、所定の電極において電流を生成するのに複数のスイッチバンク118が一緒に機能することができることを認めることができる。例えば、アノード電流供給回路102を作動させる場合に、各電流ミラー116が5Irefに等しい電流をそれぞれのスイッチバンク118に供給すると仮定すると、粗い電流供給源部分106は、L*ref=95Irefの最大電流を供給することができる。電極E2において50Irefの電流が望ましい場合には、スイッチバンク118のうちのいずれかの10個、例えば、最初の10個のスイッチバンク118(1)〜(10)又は最後の10個のスイッチバンク118(10)〜(19)の対応するスイッチを閉じることができる。同様に、複数の電極に同時に電流を供給することができる。例えば、50Irefが電極E2において望まれ、10Irefが電極E5において望まれ、15Irefが電極E8において望ましいと仮定する。これは、電極E2に対応するスイッチ(すなわち、スイッチバンクのうちの10個(例えば、118(1)〜118(10))のスイッチ)を閉じ、スイッチバンクのうちの2つ(例えば、118(11)〜118(12))の電極E5に対応するスイッチを閉じ、更に、スイッチバンクのうちの3つ(例えば、118(13)〜118(15))の電極E8に対応するスイッチを閉じることによって達成することができる。
【0073】
粗い電流分岐110の各々は、5Irefに等しい電流を出力するので、粗い電流供給源部分106の最小分解能は、5Irefである。従って、細かい電流供給源部分108は、電極における電流に細かい調節を加える機能を更に提供する。粗い電流供給源部分106とは異なり、細かい電流供給源部分108は、好ましくは、電極26の各々に有線接続される。この目的のために、細かい電流供給源部分108は、リード電極E1〜E16の各々及びケース電極(図10には示していない)に有線接続される細かい電流DAC122を含む。細かい電流DAC122は、基準電流Irefを設定するのに使用される主DAC122と類似のものとすることができる。上述の場合のように、アノード電流供給回路102の細かい電流DAC110をPDACと記し、カソード電流供給回路104の細かい電流DAC110をNDACと記す。細かい電流DAC122の各々は、基準電流Irefを受け取り、デジタル入力に応じる基準電流Irefの増分で可変電流を出力する。
【0074】
この例示的な実施形態では、DAC122の各々は、デジタル制御信号に応答して所定の範囲の可変電流を増分IrefでDAC122の各々の電極に出力するように作動させることができる個数Jの細かい電流段を有する。例えば、J=5の場合には、DAC122の各々は、そのそれぞれの電極に0Irefから5Irefまでの範囲にわたる電流を供給することができる。従って、細かい電流供給源部分108は、粗い電流供給源部分106の電流分解能(5Iref)よりも小さい電流分解能(Iref)を有する。図示の実施形態では、各DAC122内に入力されるデジタル制御信号は、5つの線に沿ってそれぞれのDAC122の5つの電流段内にそれぞれ入力される5つのビットを含み、それによって0Irefから5Irefまでの範囲にわたる6つの異なるスケーリング値を出力するようにプログラムすることができる。
【0075】
この分解能の差に起因して、所定の電極において特定の電流を設定するのに粗い電流供給源部分106と細かい電流供給源部分108の両方を使用することができる。例えば、53Irefの電流を電極E2に供給することが望ましいと仮定すると、50Irefを電極E2に送出するか又はそこから送出するように、粗い電流分岐110のうちのいずれかの10個を作動させることができる。電極E2に結合された細かい電流DAC122は、更に別の3Irefを電極E2に送出するか又はそこから送出するようにプログラムすることができ、その結果、電極E2において53Irefの望ましい合計電流がもたらされる。
【0076】
当業者は理解されるように、幾つの粗い電流段Lが使用されるか、及び幾つの細かい電流段Jが使用されるかに関しては設計選択肢の問題であり、これらの値には、最適化を適用することができる。しかし、J個の細かい電流段が使用される場合には、粗い電流供給源の個数Lは、好ましくは、(100/J)−1に等しい。従って、細かい電流段の個数Jが5に等しい場合には、粗い電流段の個数Lは19に等しくなり、それによって粗い電流供給源部分106は、電流範囲の約95%を約5%の分解能でいずれかの電極に送出するか又はそこから送出することが可能になり、細かい電流供給源部分108は、約5%の残りの電流を約1%の分解能でいずれかの電極に送出するか又はそこから送出することが可能になる。粗い電流供給源部分106内の電流ミラー116と細かい電流供給源部分108内のDAC122とへの入力として同じ基準電流Irefを使用することが好ましいが、それぞれの粗い電流供給源部分106及び細かい電流供給源部分108によって異なる基準電流を使用することができる。この場合、別々の主DACを互いにスカラーである異なる基準電流を発生させるようにプログラムすることができる。
【0077】
任意的な実施形態では、刺激出力回路50は、それぞれ電極と接地との間で結合された回復スイッチのバンク(図示せず)を更に含む。この場合、17個のビットを含むデジタル制御信号は、電極のうちのいずれかを選択的に接地に切り換えるためのスイッチにそれぞれ入力することができ、それによって選択された1つ又は複数の電極における電荷が受動的に回復される。
【0078】
刺激出力回路50の詳細を解説する更に別の開示内容は、米国特許公開第2007/0100399号明細書に見出すことができる。
【0079】
次に、図11を参照して、制御回路51(図9に関して上記に簡単に解説した)を以下に説明する。制御回路51は、マイクロコントローラ62からの刺激パラメータセットの入力に応答して、マイクロコントローラ62によって形成されたそれぞれの刺激パラメータセットによって指定されるパルス振幅、パルス持続時間、及びパルス周波数を各々が有する複数のパルス電気波形を発生させて、電極間において複数のタイミングチャンネル内で伝達するように(例えば、上述の図7に示すように)刺激出力回路50に命令するように構成される。
【0080】
図示の実施形態では、4つのタイミングチャンネル内に4つまでのパルス電気波形をそれぞれ発生させることができる。しかし、タイミングチャンネルの個数は、異なるとすることができることを認めるべきである。上述のように、刺激出力回路50は、パルス電気波形の各々を発生させる上で異なる極性の電流供給回路(アノード電流供給回路102及びカソード電流供給回路104)を利用する。アノード電流供給回路102とカソード電流供給回路104の両方の使用は、それぞれの電極に割り当てられたアノード電流振幅とカソード電流振幅の両方の制御を最大にするが、アノード電流供給回路のみ又はカソード電流供給回路のみを利用することができることを認めるべきである。刺激出力回路50は、電流ステラリングの目的で電流供給回路を利用するが、代替的に、電圧供給回路を利用することができることも認めるべきである。
【0081】
重要な点として、刺激出力回路50が、アノード電源回路又はカソード電源回路(電流又は電圧のいずれであるかに関わらず)の一方を利用するか又は両方を利用するかに関わらず、制御回路51は、タイミングチャンネル間でパルスが重なる可能性があるという懸念なしに、従って、パルス電気波形のパルス周波数を実質的に変更することになる方式でパルス電気波形を操作する必要なく、それぞれのタイミングチャンネル内でパルス電気波形を独立して発生させることを可能にする。
【0082】
特に、刺激出力回路50によって発生させるそれぞれの電気波形のパルスが互いに時間的に重なることにならない場合には、制御回路51は、それぞれのパルス電気波形の非重ね合わせパルスを発生するように従来方式でアノード供給回路102を異なるアノード電極セットに結合し、カソード供給回路104を異なるカソード電極セットに結合するように刺激出力回路50に命令する。
【0083】
例えば、再度図7を参照すると、タイミングチャンネル1は、時間t=0において作動する唯一のチャンネルであり、タイミングチャンネル2は、時間t=1において作動する唯一のチャンネルであり、従って、制御回路51は、時間t=0及びt=1それぞれの間にアノード供給回路102を異なるアノード電極セットに結合し(すなわち、あるアノード電極セットがt=0において電極E3を含み、異なるアノード電極セットがt=1においてE14を含む)、時間t=0及びt=1それぞれの間にカソード供給回路104を異なるカソード電極セットに結合する(すなわち、あるカソード電極セットがt=0において電極E1を含み、異なるカソード電極セットがt=1においてE13を含む)ように刺激出力回路50に命令することになる。それとは対照的に、時間t=4では、タイミングチャンネル1と2の両方が作動され、従って、制御回路51は、時間t=4の間にアノード供給回路102を異なるアノード電極セットの和集合に結合し(すなわち、電極E3及びE14を含むアノード電極セット)、時間t=4の間にカソード供給回路104を異なるカソード電極セットの和集合に結合する(すなわち、電極E1及びE13を含むカソード電極セット)。
【0084】
この目的のために、一般的に、制御回路51は、マイクロコントローラ62に格納されたそれぞれの複数の刺激パラメータセットに従ってマイクロコントローラ62によってプログラムされるように構成された複数の電流ステラリングレジスタ152及び複数のタイミングレジスタ154を含む。更に、制御回路51は、タイミングレジスタ154のそれぞれの1つの出力168に結合された入力166を各々が含む複数のタイマ156を含む。更に、制御回路51は、電流ステラリングレジスタ152のそれぞれの1つの出力172に結合された第1の入力170と、タイミングタイマ154のそれぞれの1つの出力176に結合された第2の入力174とを各々が含む複数のANDゲートを含む。4つのタイミングチャンネル、及び従って4つの刺激パラメータセットが存在するので、制御回路51は、4つの対応する電流ステラリングレジスタ152、4つの対応するタイミングレジスタ154、4つの対応するタイマ156、及び4つの対応するANDゲート158を含む。取りわけ、各タイミングチャンネルに対して単一のステラリングレジスタ及び単一のタイミングレジスタを使用することができるが、実際には本明細書に定める各レジスタは、いくつかの個別のレジスタを含むことができる。例えば、各電極又は電極部分集合をその独自のレジスタに関連付けることができる。本明細書の目的では、「レジスタ」という用語を個別のレジスタのセットとして、そのようなレジスタセットが1つの個別のレジスタのみを含むか又は複数の個別のレジスタを含むかに関わらず定義することができる。
【0085】
対応するタイミングチャンネル内で送信される対応するパルス電気波形に対して、電流ステラリングレジスタ152の各々は、マイクロコントローラ62に格納された対応する刺激パラメータセットに従って作動される電極に関連する情報に加えて活性電極における電流の振幅及び極性も格納する。例えば、各電流ステラリングレジスタ152は、それぞれのタイミングチャンネルの間に発生させるべきそれぞれのパルス電気波形に対して、作動させるべき電極セットのデジタル表現を格納する。一実施形態では、格納された活性電極セットのデジタル表現は、これらの電極に割り当てるべき相対電流振幅値を示す複数のバイナリ値の形態を取る。
【0086】
図示の実施形態では、各バイナリ値は、それぞれの電極に割り当てられた刺激出力回路50の粗い電流供給源分岐及び細かい電流供給源分岐の極性及び個数を定める。この例示的な事例では、ゼロバイナリ値は、対応する電極を作動させるべきではないことを示し、それに対して非ゼロバイナリ値は、対応する電極をそのバイナリ値によって形成される相対電流値(すなわち、電極に割り当てられた粗い電流分岐及び細かい電流分岐の個数)で作動させるべきことを示している。図示の実施形態では、「1」という極性値は、電極がアノードであることを示し、それに対して「0」という極性値は、電極がカソードであることを示すが、「0」という極性バイナリ値が、電極がアノードであることを示すことができ、「1」という極性値が、電極がアノードであることを示すことができることを認めるべきである。
【0087】
各電流ステラリングレジスタ152は、それぞれのタイミングチャンネルの間に発生させるべきそれぞれのパルス電気波形に対して活性電極に割り当てられる全体的デジタル電流値も格納する。図示の実施形態では、全体的デジタル電流値は、好ましくは同じものであるアノード電流供給回路102の主DACによって出力される基準電流Irefとカソード電流供給回路104の主DACによって出力される基準電流Irefとを示している。
【0088】
図12a〜図12dを参照して、電流ステラリングレジスタ152の各々によって格納されるバイナリ値の例を以下に説明する。
【0089】
図示のように、タイミングチャンネル1(図12a)では、00100という粗い電流バイナリ値、100という細かい電流バイナリ値、及び0という極性バイナリ値が電極E1に割り当てられ(すなわち、カソード電流供給回路104の4本の粗い電流分岐及び4本の細かい電流分岐が電極E1に結合されることになる)、00100という粗い電流バイナリ値、100という細かい電流バイナリ値、及び1という極性バイナリ値が電極E1に割り当てられる(すなわち、アノード電流供給回路102の4本の粗い電流分岐及び4本の細かい電流分岐が電極E3に結合されることになる)。
【0090】
タイミングチャンネル2(図12b)では、00100という粗い電流バイナリ値、100という細かい電流バイナリ値、及び0という極性バイナリ値が電極E13に割り当てられ(すなわち、カソード電流供給回路104の4本の粗い電流分岐及び4本の細かい電流分岐が電極E13に結合されることになる)、00100という粗い電流バイナリ値、100という細かい電流バイナリ値、及び1という極性バイナリ値が電極E14に割り当てられる(すなわち、アノード電流供給回路102の4本の粗い電流分岐及び4本の細かい電流分岐が電極E14に結合されることになる)。
【0091】
タイミングチャンネル3(図12c)に対しては、00100という粗い電流バイナリ値、100という細かい電流バイナリ値、及び0という極性バイナリ値が電極E6に割り当てられ(すなわち、カソード電流供給回路104の4本の粗い電流分岐及び4本の細かい電流分岐が電極E6に結合されることになる)、00010という粗い電流バイナリ値、010という細かい電流バイナリ値、及び0という極性バイナリ値が電極E7に割り当てられ(すなわち、カソード電流供給回路104の2本の粗い電流分岐及び2本の細かい電流分岐が電極E7に結合されることになる)、00111という粗い電流バイナリ値、001という細かい電流バイナリ値、及び1という極性バイナリ値が電極E8に割り当てられる(すなわち、アノード電流供給回路102の7本の粗い電流分岐及び1本の細かい電流分岐が電極E8に結合されることになる)。
【0092】
タイミングチャンネル4(図12d)に対しては、00110という粗い電流バイナリ値、000という細かい電流バイナリ値、及び0という極性バイナリ値が電極E8に割り当てられ(すなわち、カソード電流供給回路104の6本の粗い電流分岐及びゼロ本の細かい電流分岐が電極E8に結合されることになる)、00110という粗い電流バイナリ値、000という細かい電流バイナリ値、及び1という極性バイナリ値が電極E10に割り当てられる(すなわち、アノード電流供給回路102の6本の粗い電流分岐及びゼロ本の細かい電流分岐が電極E10に結合されることになる)。
【0093】
図12a〜図12dで分るように、00000という粗い電流バイナリ値及び000という細かい電流バイナリ値が全ての不活性電極に割り当てられる。タイミングチャンネルの全てに対して、アノード電流及びカソード電流の合計の半分が、主DAC110によって活性電極に対して利用可能にされるように、全体的デジタル電流値は、10000000に設定される。従って、粗い電流分岐及び細かい電流分岐の割り当ては、活性電極における相対電流振幅を形成し、それに対して主DAC110の設定は、活性電極における全体的電流振幅を最終的に形成する。
【0094】
対応するタイミングチャンネル内で送信される対応するパルス電気波形に対して、タイミングレジスタ154の各々は、マイクロコントローラ62に格納された対応する刺激パラメータセットに従うパルス周波数及びパルス持続時間に関連する情報を格納する。
【0095】
図11を再度参照すると、タイマ156の各々は、それぞれのタイミングレジスタ154に格納されたタイミング情報によって定められるパルス持続時間及びパルス周波数に従って位相有効化178の信号を出力する。すなわち、各タイマ154によって出力される位相有効化信号178は、発生させるべきパルスの持続時間に等しい時間にわたって、発生させるべきパルスの周波数に等しい周波数で高(すなわち、論理「1」)になる。従って、位相有効化信号178が高(すなわち、論理「1」)である時に、対応するレジスタ152に格納されたデジタルコンテンツは、対応するタイミングレジスタ154内に形成されたパルス持続時間に等しい期間の間、パルス周波数に等しい周波数でANDゲート158の出力180にゲートされることを認めることができる。
【0096】
更に、制御回路51は、それぞれのANDゲート158の各々の出力180に結合された入力182〜188を有するORゲート160を含む。従って、ANDゲート156のそれぞれの出力180にゲートされるそれぞれのレジスタ152のいずれかのデジタルコンテンツ(活性電極セットのデジタル表現を含む)は、ORゲート160の出力190においてビット毎に組み合わされ(例えば、ゲートされたデジタルコンテンツの第1のセットの最初のビットは、ゲートされたデジタルコンテンツの第2のセットの最初のビットとAND演算され、ゲートされたデジタルコンテンツの第1のセットの第2のビットは、ゲートされたデジタルコンテンツの第2のセットの第2のビットとAND演算され、以降同様に続く)、デジタルコンテンツの和集合が提供される(実質的に、それぞれのタイミングチャンネル内で活性電極セットの和集合が提供される)。取りわけ、現時点でレジスタ152のうちの1つだけのデジタルコンテンツがそれぞれのANDゲート158にゲートされている時には(すなわち、いずれのパルスも重なることにはならない)、ORゲート160の出力190におけるデジタルコンテンツの和集合は、単純にその1つの電流ステラリングレジスタ152のゲートされたデジタルコンテンツになる。それとは対照的に、現時点で電流ステラリングレジスタ152のうちの1つよりも多くのデジタルコンテンツがそのそれぞれのANDゲート156にゲートされている場合は(すなわち、パルスは重なる)、ORゲート160の出力190は、複数のゲートされたデジタルコンテンツの和集合になる。
【0097】
例えば、図7を再度参照すると、時間t=0の間に、ORゲート160の出力190におけるゲートされたデジタルコンテンツの和集合は、単純に第1のレジスタ152(タイミングチャンネル1に対応する)からゲートされたデジタルコンテンツ、すなわち、電極E1及びE3に関連する粗い電流分岐値、細かい電流値、及び極性値になり、時間t=1の間には、ORゲート160の出力190におけるゲートされたデジタルコンテンツの和集合は、単純に第2のレジスタ152(タイミングチャンネル2に対応する)からゲートされたデジタルコンテンツ、すなわち、すなわち、電極E13及びE14に関連する粗い電流分岐値、細かい電流値、及び極性値になる。それとは対照的に、時間t=4の間には、ORゲート160の出力190におけるゲートされたデジタルコンテンツの和集合は、図13に例示するように、第1のレジスタ152と第2のレジスタ152の両方からゲートされたデジタルコンテンツの和集合になる。取りわけ、全体的電流値が恐らくタイミングチャンネルの全てに対して同じことになるので、全体的電流値の和集合は、全体的電流値と同一であることになる。
【0098】
タイミングチャンネル毎に1つのANDゲート158のみを例示しているが、タイミングチャンネル毎に複数のANDゲートを存在させることができることに注意すべきである。例えば、電流ステアリングタイミングレジスタ内のデジタルコンテンツのある一定の部分を位相有効化信号178によって複数のANDゲート158の出力にそれぞれゲートすることができる。例えば、各タイミングチャンネルにおいて、全体的振幅バイナリ値をANDゲートの出力にゲートすることができ、粗い分岐バイナリ値及び極性値を別のANDゲートの出力にゲートすることができ、細かい分岐バイナリ値を更に別のANDゲートの出力にゲートすることができる。
【0099】
全てのタイミングチャンネルに対して1つのORゲート160のみを例示しているが、同様に、全てのタイミングチャンネルに対して複数のORゲートを存在させることができることにも注意すべきである。例えば、組み合わせるべき電流ステアリングタイミングレジスタ内のデジタルコンテンツの各部分に対してORゲートを設けることができる。例えば、ANDゲートのそれぞれの出力にゲートされる全体的振幅バイナリ値を全体的振幅バイナリ値の和集合を作成するようにORゲートの出力において組み合わせることができ、ANDゲートのそれぞれの出力にゲートされる粗い分岐バイナリ値及び極性値を粗い分岐バイナリ値及び極性値の和集合を作成するように別のORゲートの出力において組み合わせることができ、ANDゲートのそれぞれの出力にゲートされる細かい分岐バイナリ値を細かい分岐バイナリ値の和集合を作成するように更に別のORゲートにおいて組み合わせることができる。
【0100】
いずれにしても、ORゲート160は、全体的電流値の和集合、粗い分岐バイナリ値の和集合、及び細かい分岐バイナリ値の和集合を出力する。
【0101】
ORゲート160の出力190においてゲートされる全体的電流値の和集合は、8本の線に沿って主DAC110(図10を参照されたい)の各々に8つのビットを含むデジタル制御信号として直接に伝達される。例えば、図13を参照すると、利用可能な電流の半分をアノード電流供給回路102とカソード電流供給回路104とに送出するか又はこれらから送出するように、バイナリ制御信号10000000が、主DAC110の各々に伝達されることになる。
【0102】
更に、制御回路51は、ORゲート160の出力においてゲートされる粗い電流分岐値及び極性値の和集合を取得し、対応するアノードスイッチバンク118及びカソードスイッチバンク118にデジタル制御信号を送信する粗い分岐復号器及び分配回路162を含む。図示の実施形態では、粗い分岐復号器及び分配回路162は、ORゲート160の出力190から102個のビット(17個の電極×6ビット(5つの粗い分岐ビット及び1つの極性ビット)を受け取り、17個のビットを各々が含む19個のデジタル制御信号を17本の線に沿ってそれぞれのアノードスイッチバンク118(図10を参照されたい)に出力し、17個のビットを各々が含む19個のデジタル制御信号を17本の線に沿ってそれぞれのカソードスイッチバンク118(図10を参照されたい)に出力する。
【0103】
例えば、図13を参照すると、粗い分岐復号器及び分配回路162は、電極E1から粗い電流分岐114のうちの4本に電流を送出するように(カソード電流のうちの20%)、電極E1に関連する粗い電流分岐バイナリ値「00100」及び極性値「0」に従ってカソード電流供給回路104の4つのスイッチバンク118に対して線1を高にして残りの線を低にし、粗い電流分岐114のうちの4本から電極E3に電流を送出するように(アノード電流のうちの20%)、電極E3に関連する粗い電流分岐バイナリ値「00100」及び極性値「1」に従ってアノード電流供給回路102の4つのスイッチバンク118に対して線3を高にして残りの線を低にし、粗い電流分岐114のうちの4本から電極E13に電流を送出するように(アノード電流のうちの20%)、電極E13に関連する粗い電流分岐バイナリ値「00100」及び極性値「0」に従ってアノード電流供給回路102の4つのスイッチバンク118に対して線13を高にして残りの線を低にし、電極E14から粗い電流分岐114のうちの4本に電流を送出するように(カソード電流のうちの20%)、電極E14に関連する粗い電流分岐バイナリ値「00100」及び極性値「1」に従ってカソード電流供給回路104の4つのスイッチバンク118に対して線14を高にして残りの線を低にすることになる。
【0104】
更に、制御回路51は、ORゲート160の出力においてゲートされる細かい電流分岐値及び極性値の和集合を取得し、対応する細かいアノード分岐DAC122及び細かいカソード分岐DAC122にデジタル制御信号を送信する細かい分岐復号器回路164を含む。図示の実施形態では、細かい分岐復号器回路164は、ORゲート160の出力190から68個のビット(17個の電極×4ビット(3つの細かい分岐ビット及び1つの極性ビット))を受け取り、5つのビットを各々が含む17個のデジタル制御信号を細かいPDAC122(図10を参照されたい)に出力し、5つのビットを各々が含む17個のデジタル制御信号を細かいNDAC122(図10を参照されたい)に出力する。
【0105】
例えば、図13を参照すると、細かい分岐復号器回路164は、電極E1から細かい電流分岐のうちの4本に電流を送出するように(カソード電流のうちの4%)、電極E1に関連する細かい電流分岐バイナリ値「100」及び極性値「0」に従って電極E1に関連する細かいNDAC122に対して線1〜4を高にして線5を低にし、細かい電流分岐のうちの4本から電極E3に電流を送出するように(カソード電流のうちの4%)、電極E3に関連する細かい電流分岐バイナリ値「100」及び極性値「1」に従って電極E3に関連する細かいPDAC122に対して線1〜4を高にして線5を低にし、細かい電流分岐のうちの4本から電極E13に電流を送出するように(カソード電流のうちの4%)、電極E13に関連する細かい電流分岐バイナリ値「100」及び極性値「0」に従って電極E13に関連する細かいNDAC122に対して線1〜4を高にして線5を低にし、電極E14から細かい電流分岐のうちの4本に電流を送出するように(カソード電流のうちの4%)、電極E14に関連する細かい電流分岐バイナリ値「100」及び極性値「1」に従って電極E14に関連する細かいPDAC122に対して線1〜4を高にして線5を低にすることになる。
【0106】
取りわけ、あらゆる所定の時間での各電流供給源に対して、タイミングチャンネルの各々は、合計数がL(すなわち、各電流供給源における粗い電流分岐の合計数)を超えない限り、あらゆる個数の粗い電流分岐を使用することができる。従って、いずれかの所定の時間にタイミングチャンネルによって必要とされる粗い電流分岐の個数が、利用可能な粗い電流分岐の合計数を超えない限り、1つのタイミングチャンネルが別のタイミングチャンネルに影響を及ぼすことはなくなる。従って、パルスを同時に送出するようにタイミングチャンネルを作動させることができるので、パルス電気波形は、独立した周波数を有することができる。
【0107】
受動的再充電パルスが利用される場合には、いずれかの特定のタイミングチャンネル内での現時点で作動中の電極の使用は、それぞれのタイミングチャンネルに関連する電荷回復モジュール(図示せず)に格納することができることにも注意すべきである。タイミングチャンネルに関連するタイマは、作動中の電極においてこれらの電極と接地の間に結合された受動的回復スイッチ(図示せず)を有効化にすることによって受動的回復を可能にすることができる。受動的回復中には、これらの電極に対する受動的回復信号をタイマによってANDゲート(図示せず)を通じてゲートすることができ、その出力は、他のタイミングチャンネルの受動的回復信号とORゲート(図示せず)を通じて組み合わされる。次に、ORゲートの出力における受動的回復信号は、回復スイッチに送信することができる。活性パルスが電荷回復パルスと一致する場合には、活性パルスの終了時点まで受動的回復信号を自動的に抑制する(ゲートしない)ことができる。活性パルスの終了時点において回復が再開され、受動的回復段階の終了時点まで続く。
【0108】
本発明の特定的な実施形態を図示して説明したが、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定するように意図していないことは理解され、かつ当業者には本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変形及び修正を加えることができることが明らかであろう。従って、本発明は、代替、修正、及び均等物を網羅するように意図しており、それらは、特許請求の範囲によって定められる本発明の精神及び範囲に含めることができる。
【符号の説明】
【0109】
10 多チャンネル神経刺激システム
14 刺激出力回路
26 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極にそれぞれ結合されるように構成された複数の電気端子と、
複数のタイミングチャンネルに複数のパルス電気波形を発生させるように構成された同じ極性の電源回路を含む刺激出力回路と、
前記それぞれのパルス電気波形のパルスが互いに時間的に重ならない時に前記電極の異なるセットに前記電源回路を直列に結合するように前記刺激出力回路に命令し、かつ該それぞれのパルス電気波形のパルスが互いに時間的に重なる時に該異なる電極セットの和集合に該電源回路を結合するように該刺激出力回路に命令するように構成された制御回路と、
を含むことを特徴とする多チャンネル神経刺激システム。
【請求項2】
前記パルス電気波形は、それぞれの複数の刺激パラメータセットによって定義され、
前記制御回路は、前記刺激パラメータセットの各々から電極セットのデジタル表現を取得し、該デジタル表現を互いに組み合わせて該デジタル表現の和集合を作成し、かつ該デジタル表現和集合を前記刺激回路に出力するように構成され、
前記刺激出力回路は、前記デジタル表現和集合に従って前記異なる電極セットの前記和集合に前記電源回路を結合するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項3】
前記デジタル表現の各々は、前記それぞれの電極セットに対する電流振幅値のデジタル表現を含み、
前記制御回路は、前記電流振幅値に従って前記電源回路から前記電極の前記異なるセット又は該異なる電極セットの前記和集合に電流を供給するように前記刺激出力回路に命令するように構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の神経刺激システム。
【請求項4】
前記刺激出力回路は、前記電源回路と前記電気端子の間に結合された少なくとも1つのスイッチバンクを含むことを特徴とする請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項5】
前記電源回路は、電流供給回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項6】
前記電流供給回路は、複数の電流分岐を含み、
前記制御回路は、前記電流分岐のうちの1つ又はそれよりも多くを前記それぞれの電極に割り当てることによって前記異なる電極セットの前記和集合内の各電極に対する電流マグニチュードを選択するように構成される、
ことを特徴とする請求項5に記載の神経刺激システム。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記電極セットのデジタル表現を格納するように構成された複数のレジスタと、
前記パルス電気波形のパルス持続時間及びパルス周波数に従って位相有効化信号を出力するように構成された複数のタイマと、
前記レジスタのそれぞれの1つの出力に結合された入力と前記タイマのそれぞれの1つの出力に結合された入力とを各々が有する複数のANDゲートと、
前記ANDゲートのそれぞれの出力に結合された入力と前記刺激出力回路の入力に結合された出力とを有するORゲートと、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項8】
前記タイマの各々によって出力される前記位相有効化信号は、前記それぞれのパルス電気波形の前記パルスが活性である時に高であることを特徴とする請求項7に記載の神経刺激システム。
【請求項9】
前記パルス電気波形は、異なる周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項10】
前記複数の電極を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項11】
前記複数の電気端子と刺激出力回路と制御回路とを収容するハウジングを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項12】
複数の電極にそれぞれ結合されるように構成された複数の電気端子と、
前記電極の異なるセットのそれぞれの複数のデジタル表現を格納するように構成された複数のレジスタと、
それぞれの複数のパルス電気波形のパルス持続時間及びパルス周波数に従って位相有効化信号を出力するように構成された複数のタイマと、
前記レジスタのそれぞれの1つの出力に結合された入力と前記タイマのそれぞれの1つの出力に結合された入力とを各々が有する複数のANDゲートと、
前記ANDゲートのそれぞれの出力に結合された入力を有するORゲートと、
前記ORゲートの出力に結合された入力を有する刺激出力回路であって、該ORゲートの該出力に基づいて前記電気端子を通じて前記電極に選択的に結合するようにプログラム可能な同じ極性の電源回路を含む前記刺激出力回路と、
を含むことを特徴とする多チャンネル神経刺激システム。
【請求項13】
前記タイマは、互いに独立に作動されることを特徴とする請求項12に記載の神経刺激システム。
【請求項14】
前記電源回路は、電流供給回路を含むことを特徴とする請求項12に記載の神経刺激システム。
【請求項15】
前記デジタル表現の各々は、前記それぞれの電極セットに対する電流振幅値のデジタル表現を含み、前記電流供給回路は、前記ORゲートの前記出力に基づいて前記電極に電流を供給するようにプログラム可能であることを特徴とする請求項14に記載の神経刺激システム。
【請求項16】
前記電流供給回路は、複数の電流分岐を含み、
神経刺激システムが、前記ORゲートの前記出力に基づいて前記電流分岐のうちの1つ又はそれよりも多くを前記電極の各々に割り当てるように構成された分岐分配回路を更に含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の神経刺激システム。
【請求項17】
前記電流分岐の各々は、
前記電極に結合されたスイッチバンクと、
前記それぞれのスイッチバンクに結合された復号器であって、前記分岐分配回路が、前記電極のうちの1つが該それぞれのスイッチバンクを通じて前記電源回路に結合されるように定義するデジタルコードを該復号器の各々に供給するように構成される前記復号器と、
を含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の神経刺激システム。
【請求項18】
前記パルス電気波形は、異なる周波数を有することを特徴とする請求項12に記載の神経刺激システム。
【請求項19】
前記複数の電極を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の神経刺激システム。
【請求項20】
前記複数の電気端子と前記複数のレジスタと前記複数のタイマと前記複数のANDゲートと前記ORゲートと前記刺激出力回路とを収容するハウジングを更に含むことを特徴とする請求項12に記載の神経刺激システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−516233(P2013−516233A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547156(P2012−547156)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/061839
【国際公開番号】WO2011/082071
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(507213592)ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション (34)
【Fターム(参考)】