説明

複数のSnOフレーク

【課題】広い範囲のpH値で実施されることができ、かつ非常に低濃度の不純物塩化物イオンしか有さず酸への良好な溶解性の酸化第一スズ粒子を提供する。
【解決手段】20〜25℃の温度での、8.1gの70%メタンスルホン酸中の3.56gの酸化第一スズの30秒のメタンスルホン酸溶解速度を有する酸化第一スズ粒子が開示され、その製造方法も含む。時間の経過による粒子の表面上の酸化第二スズの形成を低減させる包装された酸化第一スズ粒子も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属酸化物の分野に関し、特に酸化第一スズ(SnO)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
スズのような様々な金属が電子デバイスの製造において使用されている。例えば、純粋なスズおよびスズ合金、例えば、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銀およびスズ−銀−銅などが相互接続パッケージにおけるはんだとして使用されている。このような金属は多くの場合電気めっきによって電子デバイス基体上に堆積される。典型的には、スズ電気めっき浴は二価のスズイオンを含み、場合によっては銀、銅、ビスマスおよびこれらの組み合わせのような合金形成金属のイオン、酸電解質、並びに場合によっては1種以上の様々な有機添加剤を含む。酸化第一スズ(酸化スズ(II))は一般的な二価スズイオン源である。酸化第一スズはスズ電気めっき浴に直接溶かされることができ、または別途酸に溶かされ、次いで溶液としてめっき浴に添加されることができる。
【0003】
酸化第一スズは、従来、スズ金属を塩酸のような鉱酸に溶かし、その後水酸化ナトリウムのようなアルカリで中和し、得られた生成物が加熱されて所望の酸化スズ(II)を形成することによって製造されている。この酸化第一スズは典型的には多量の残留塩化物イオンを有している。この酸化第一スズがスズ−銀もしくはスズ−銀−銅めっき浴のようなスズ合金めっき浴を製造するために使用される場合には、残留塩化物イオンが塩化銀を形成する場合があり、この塩化銀が浴から沈殿する。塩化銀の形成はめっき浴中の銀の濃度を低減させるだけでなく、その沈殿物自体の存在が望ましくない。また、ある形態の酸化第一スズは酸電解質中に容易に溶解されにくく、濁った溶液を形成する。さらに、酸化第一スズは酸化第二スズ(または酸化スズ(IV))を時間の経過と共に形成する。酸化第二スズは酸への溶解が困難であり、それをめっき浴用途に非現実的にしている。
【0004】
特開平11−310415号はSnClを塩酸に溶かし、その溶液をアンモニア水と炭酸水素アンモニウムとの混合物で中和して、中和された溶液が6〜1のpHを有しており、その後その中和された溶液を50℃を超えて加熱することによって酸化第一スズを製造する方法を開示する。この特許出願は、スズ(II)イオン:鉱酸重量比がほぼ1である非常に高いスズ濃度を有する酸溶液を開示する。得られる酸化第一スズ粒子のサイズは中和溶液のpHに応じて変化し、より小さなサイズの粒子(10μm未満)が6〜7.5のpHで得られ、より大きなサイズの粒子(10〜50μm)が10付近のpH値で得られると考えられる。特開平11−310415号は、得られた酸化第一スズを様々な有機材料、例えば、L−アスコルビン酸、グルコン酸、ヒドロキシルアミン、フェノール、アルデヒドおよび亜硝酸ナトリウムなどで表面処理して、酸化第二スズへの表面酸化を妨げることをさらに開示している。この方法で得られる酸化第一スズは依然として望ましくない濃度(25〜48ppm)の塩化物イオンを有している。さらに、表面処理として使用される有機材料はスズ含有めっき浴中で生じる場合があり、スズ含有堆積物に悪影響を及ぼす場合がある。非常に低い濃度の不純物塩化物イオンを有する酸化第一スズについての必要性が依然としてある。酸化第二スズを形成することなくある時間にわたって貯蔵されることができ、かつスズ含有めっき浴に望まれない有機材料をもたらさない酸化第一スズについての必要性もある。
【0005】
特開2009−132570号はスズ金属を塩酸(30〜40質量%)に溶かし、その溶液をアンモニア水、炭酸水素アンモニウム、またはこれらの混合物で中和して、中和溶液が6〜8のpHを有しており、その後その中和溶液を80〜100℃に加熱する(ここで、中和および加熱工程は窒素下で行われる)ことによって酸化第一スズを製造する方法を開示する。この中和溶液のpHは生じる酸化第一スズのより良好な溶解性のために重要である。そのpHが8を超える場合には、不溶性塩が形成されると述べられている。この特許出願はその中和溶液を100℃を超えて加熱するのが物理的に不可能であると主張している。特開2009−132570号によると、この方法は10〜11μmのD50を有する酸化第一スズ粒子を生じさせ、より大きなサイズの粒子は低い溶解性を有する。この公報は不純物塩化物イオンの濃度を論じていない。
【0006】
電子デバイスの製造に使用される金属のいくつかはアルファ粒子を放射する特定の放射性同位元素(アルファ粒子放射体)を低濃度で含む場合がある。このような放射性同位元素の例には、210Pbが挙げられ、これはウラン崩壊系列のメンバーであり、これはバルク金属材料(例えば、銀およびスズ)内の不純物としてのアルファ粒子放射体の主たる原因物質であり、並びに鉛の様々な一般的な汚染物質、例えば、ウラン(234,238U)、トリウム(230Th)、ラジウム(226Ra)、ラドン(222Rn)、ポロニウム(210,218Po)およびビスマス(211,212Bi)の同位体などが挙げられる。はんだは、集積回路(IC)チップをパッケージまたは基体に取り付けるために半導体デバイスパッケージングにおいて一般的に使用される。IC回路を取り付けるはんだがアルファ粒子放射体を含む場合には、このICのごく近傍にアルファ粒子が放射され、パッケージ半導体デバイスにダメージを引き起こしうる。具体的には、これら放射されるアルファ粒子は「ソフトエラー」と称される電気的状態の変化を引き起こしうる。このエラーは永続的ではないので「ソフト」と称される。しかし、これらのエラーは典型的には、少なくとも1ラウンドの誤った計算を引き起こす。これらソフトエラーは集積回路チップ製造についてますます大きな問題となっている。よって、はんだ内のアルファ粒子放射体の濃度を低減させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−310415号公報
【特許文献2】特開2009−132570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
より広い範囲のpH値で実施されることができ、かつ非常に低濃度の不純物塩化物イオンしか有さず酸への良好な溶解性の酸化第一スズ粒子を提供する酸化第一スズを製造する方法についての必要性が依然としてある。
はんだ内のアルファ粒子放射体の濃度を低減させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、a)二価スズイオンおよび鉱酸を含む酸性組成物を提供し;b)前記酸性組成物を4.75〜15のpKa値を有する塩基と接触させて、8.5〜12のpHを有するアルカリ組成物を形成し;c)複数の酸化第一スズ粒子を形成するのに充分な期間にわたって前記アルカリ組成物を100℃以上の温度に加熱し;d)場合によっては、前記複数の酸化第一スズ粒子を分離し;およびe)場合によっては、前記酸化第一スズ粒子を洗浄する;ことを含む複数の酸化第一スズ粒子を製造する方法を提供する。前記塩基は追加の水酸化物イオンを含まない。好ましくは、前記酸化第一スズ粒子は分離される。
【0010】
本発明によって、99.8%以上の平均純度、0.75〜1の平均表面スズ:酸素比率、40μm以下の平均粒子サイズ、6〜6.5g/cmの真密度、2〜2.5g/cmのかさ密度、25ppm以下の塩化物イオン含量、および50ppm以下のアルカリ含量を有する複数の酸化第一スズ粒子も提供される。
【0011】
本発明は、密封包装内に収容された、99.8%以上の平均純度、0.75〜1の平均表面スズ:酸素比率、40μm以下の平均粒子サイズ、6〜6.5g/cmの真密度、2〜2.5g/cmのかさ密度、25ppm以下の塩化物イオン含量、および50ppm以下のアルカリ含量を有する複数の酸化第一スズ粒子を含み、前記密封包装が<100cm/645cm・24hrの酸素透過性を有する材料を含んでなる製品をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は酸化第一スズ粒子の平均粒子サイズ(単位μm)対、この粒子を製造するのに使用されたモル過剰の塩基のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
他に示されない限りは全ての量は重量パーセンテージ(重量%)であり、全ての比率はモル比である。全ての数値範囲は包括的であり、かつそのような数値範囲が合計で100%になることに制約されるのが明らかである場合を除いて任意の順に組み合わせ可能である。用語「アルファ粒子放射体」および「アルファ粒子放射性材料」は交換可能に使用される。本明細書において使用される場合、ある品目を「実質的に含まない」の用語は、材料もしくは組成物がその品目を0.5%未満しか含まないことを意味する。以下の略語は以下の意味を有する:cm=センチメートル;μm=ミクロン=マイクロメートル;Å=オングストローム;ppm=100万分率;g=グラム;kg=キログラム;mL=ミリリットル;L=リットル;重量%=重量パーセント;sec.=秒;min.=分;hr=時間;および℃=摂氏度。
【0014】
酸化第一スズはスズおよびスズ合金電気めっき浴のための二価スズイオン源として典型的に使用される。エレクトロニクス産業における使用のためのこのような電気めっき浴を製造するのに有用であるために、酸化第一スズは酸電解質に容易に溶けなければならず、かつ低濃度の不純物、特にハロゲン化物およびナトリウム不純物しか含んではならない。本発明は、酸性電解質に容易に溶けて、非常に低濃度の不純物しか含まず、かつ非常に低レベルの酸化第二スズ(SnO)表面コーティングしか有さない複数の酸化第一スズ粒子を提供する。本発明の複数の酸化第一スズ粒子は99.8%以上の平均純度、0.75〜1の平均表面スズ:酸素比率、5〜40μmの平均粒子サイズ、6〜6.5g/cmの真密度、2〜2.5g/cmのかさ密度、25ppm以下の塩化物イオン含量、および50ppm以下のアルカリ含量を有する。
【0015】
複数の酸化第一スズ粒子の平均純度は、任意の従来の装置を用いて、それら粒子を誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)によって金属不純物含量について分析することによって決定される。好ましくは、複数の酸化第一スズ粒子は99.85%以上、より好ましくは99.9%以上の純度を有する。本発明の複数の酸化第一スズ粒子は、ICP−MSによって決定して、50ppm以下、好ましくは40ppm以下、より好ましくは25ppm以下、さらにより好ましくは15ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下、もっとも好ましくは5ppm以下のアルカリ、具体的にはナトリウム含量を有する。塩化物イオン含量は様々な技術、例えば、粉体X線回折およびイオンクロマトグラフィによって決定されうる。本発明の複数の酸化第一スズ粒子はイオンクロマトグラフィで決定して、25ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは15ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下の塩化物イオン含量を有する。
【0016】
表面酸化は酸化第一スズとめっき浴中の電解質として使用される酸、例えば、アルカンスルホン酸との間の反応性に重要な役割を果たす。表面酸化の量は高解像X線光電子分光法(XPS)によって定量的に決定される。酸化第二スズ(SnO)のスズ3d 5/2電子結合エネルギーは酸化第一スズ(SnO)のよりもわずかに高く、それぞれ486.9eVおよび486.2eVである。これら結合エネルギーでのXPSシグナルの比率はスズ対酸素(Sn:O、またはスズ:酸素)の比率を提供する。酸化第二スズは0.5のSn:O比率を有し、酸化第一スズは1.0のSn:O値を有する。このSn:O値が1に近づくほど、酸化第一スズ含量がより高い。複数の酸化第一スズ粒子が0.8〜1の平均表面スズ:酸素比率を有するのが好ましく、より好ましくは0.85〜1の比率である。
【0017】
従来は、酸における良好な溶解性のために10μm未満のような非常に小さな平均粒子サイズを有する複数の酸化第一スズ粒子が必要とされると考えられている。しかし、本発明者は、40μm以下の平均粒子サイズを有する複数の酸化第一スズ粒子が電解質として使用される酸、具体的にはアルカンスルホン酸に容易に溶解することを見いだした。複数の酸化第一スズ粒子が0.5〜40μm、より好ましくは1〜40μm、さらにより好ましくは1〜35μm、さらにより好ましくは1〜25μmの平均粒子サイズを有することが好ましい。粒子サイズ測定は従来の粒子サイジング装置(粒子サイジングシステムアキュサイザー780)を使用し、較正標準として水中のポリスチレン球体を使用して行われる。
【0018】
酸化第一スズ粒子の真密度もしくは骨格密度はSnO構造のみが占める、すなわち、孔、チャネルなどを除いた体積の量に基づいている。かさ密度はバルク酸化第一スズ粒子が占める体積の量を言う。酸化第一スズ粒子のバルク密度値はそれを製造するのに使用される方法に応じて変化する。本発明の複数の酸化第一スズ粒子は6〜6.5g/cmの真密度および2〜2.5g/cmのかさ密度を有する。真密度は24cmサンプルホルダを備えたヘリウムマルチピクノメータ(multipycnometer)を使用して決定される。かさ密度は、その測定体積の90%まで満たした後で水平に転がされる円筒内の試験物質の既知の重量分の体積を測定することにより決定される。
【0019】
本発明は、99.8%以上の平均純度、0.75〜1の平均表面スズ:酸素比率、40μm以下の平均粒子サイズ、6〜6.5g/cmの真密度、2〜2.5g/cmのかさ密度、25ppm以下の塩化物イオン含量、および50ppm以下のアルカリ含量を有する複数の酸化第一スズ粒子であって、当該複数の酸化第一スズ粒子が、a)二価スズイオンおよび鉱酸を含む酸性組成物を提供し;b)前記酸性組成物を4.75〜15のpKa値を有する塩基と接触させて、8.5〜12のpHを有するアルカリ組成物を形成し;c)複数の酸化第一スズ粒子を形成するのに充分な期間にわたって前記アルカリ組成物を100℃以上の温度に加熱し;d)場合によっては、前記複数の酸化第一スズ粒子を分離し;およびe)場合によっては、前記酸化第一スズ粒子を洗浄する;ことを含む工程によって製造される、複数の酸化第一スズ粒子を提供する。
【0020】
二価スズイオン(すなわち、スズ(II)イオン、または第一スズイオン)および鉱酸を含む酸性組成物が提供される。この組成物は適切なスズ塩を鉱酸に溶かすことにより調製されうる。あるいは、この組成物はスズ金属を鉱酸に溶かすことにより調製される。適するスズ塩には、限定されないが、ハロゲン化スズ、例えば、塩化第一スズおよび臭化第一スズ、硫酸第一スズ、アルカンスルホン酸第一スズ、およびアリールスルホン酸第一スズが挙げられる。ハロゲン化スズが好ましいスズ塩であり、より好ましくは塩化第一スズおよび臭化第一スズであり、最も好ましくは塩化第一スズである。スズ塩の混合物が使用されてもよい。本発明に有用なスズ化合物は様々なソースから概して市販されている。適する鉱酸には、限定されないが、ハロゲン化水素酸(hydrohalogen acid)、例えば、塩酸および臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、硫酸および硝酸が挙げられる。好ましくは、鉱酸はハロゲン化水素酸、より好ましくは塩酸もしくは臭化水素酸、最も好ましくは塩酸である。適する鉱酸は様々なソースから市販されている。二価スズイオンおよび鉱酸の酸性組成物は、スズ金属をハロゲン化水素酸に溶解することにより、より好ましくはスズ金属を塩酸に溶解することにより製造される。水も典型的には酸性組成物に添加される。好ましい実施形態においては、酸性組成物は二価スズイオン、鉱酸および水から構成される。そのような等級の水が使用されてもよいが、水が微量不純物を含まないか、もしくは少なくとも実質的に含まないことが好ましい。脱イオン(DI)水が好ましい。
【0021】
酸性組成物は、任意の順に成分を一緒にすることによって調製されうるが、スズイオン源、水、そして次いで鉱酸の順にそれらを一緒にすることが好ましい。この組成物は任意の適切な温度で、例えば、20〜35℃で調製されうるが、より高いもしくはより低い温度が使用されても良い。酸性組成物中でのスズ:鉱酸の重量比は典型的には0.3〜0.6、好ましくは0.3〜0.55、より好ましくは0.35〜0.55、さらにより好ましくは0.4〜0.5である。鉱酸が3〜8倍モル過剰で使用されるのがさらに好ましく、より好ましくは3〜5倍モル過剰である。酸性組成物が0.1〜10重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらにより好ましくは5〜10%のSnClに相当する量を含むのが好ましい。鉱酸が酸性組成物中に0.1〜20重量%の量で存在しているのがさらに好ましく、より好ましくは1〜20重量%、さらにより好ましくは5〜20重量%、さらにより好ましくは10〜20重量%である。スズ金属が二価スズイオン源として使用される場合には、スズ金属を完全に消化するのに必要な時間は、使用される過剰な鉱酸の量に応じて変化する。概して、組成物が100℃を超えて加熱される場合には、スズ金属の消化は72時間以内に、好ましくは48時間以内に、より好ましくは24時間以内に、さらにより好ましくは12時間以内に完了する。酸性組成物の調製は好ましくは酸素を実質的に含まない雰囲気において、より好ましくは酸素を含まない雰囲気において行われる。酸性組成物は、窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気において調製されるのが好ましく、より好ましくは窒素である。
【0022】
二価スズイオン源としてスズ金属が使用される場合には、スズ金属がアルファ粒子放射体低含有量であるのが好ましい。金属中に存在するアルファ粒子放射体の量は、典型的にはアルファフラックス測定によって決定され、結果はアルファ粒子カウント/単位面積/時間(cts/cm/hrまたはcph/cm)で示される。使用されるスズ金属が0.05cts/cm/hr未満のアルファフラックスを有するのが好ましく、より好ましくは0.0001〜0.02cts/cm/hrである。
【0023】
酸性組成物は弱塩基と接触させられて、8.5〜12のpHを有するアルカリ組成物を形成する。本明細書において使用される場合、用語「弱塩基」とは4.75〜15のpKaを有する任意の適切な塩基をいう。好ましくは、弱塩基は5〜12のpKa、より好ましくは5〜11のpKaを有する。様々な弱塩基が適切に使用されることができ、かつ当業者に周知である。好ましい弱塩基は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムおよび酢酸アンモニウムである。弱塩基はより好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、および炭酸水素アンモニウムから選択され、さらにより好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムから選択される。弱塩基の混合物が使用されても良い。この塩基は追加の水酸化物イオンを含まない。より好ましくは、この塩基は追加のアンモニアを含まない。「追加の水酸化物イオンを含まない」とは、水酸化物イオンが塩基として意図的に使用されないが、水酸化物イオンが化学反応の結果としてアルカリ組成物中に存在してもよいことを意味する。「追加のアンモニアを含まない」とは、アンモニアもアンモニア水も塩基として意図的に使用されないが、アンモニアが化学反応の結果としてアルカリ組成物中に存在してもよいことを意味する。最も好ましくは、この塩基は追加の水酸化物イオンを含まずかつ追加のアンモニアを含まない。適する塩基は様々なソースから市販されている。
【0024】
酸を中和しかつ8.5〜12のpHを有するアルカリ組成物を提供するのに充分な弱塩基が酸性組成物に添加される。好ましくは、アルカリ組成物は8.5〜11、より好ましくは9〜11のpH値を有する。12を超えるpHが使用される場合には、得られる酸化第一スズはメタンスルホン酸中での所望の溶解度を有さないことが認められた。この塩基は固体、または水のような適する溶媒中に溶解されて酸性組成物に添加されることができる。塩基が水溶液として添加される場合には、塩基は好ましくは1〜1000mL/分の割合で酸性組成物に添加される。酸性組成物への塩基の添加の割合は、その組成物が4〜7の範囲のpHを経験する時間量を最小限にするように選択されるべきである。複数の酸化第一スズ粒子の平均サイズが、この中和工程中に使用される過剰な塩基の量によって制御されうることが見いだされた。例えば、4倍モル過剰の塩基が使用される場合には、得られる複数の酸化第一スズ粒子は6〜8μmの平均粒子サイズを有し、および8倍モル過剰が使用される場合には、得られる粒子は18〜20μmの平均粒子サイズを有する。
【0025】
塩基の添加中の組成物の温度は典型的には20〜50℃、より好ましくは20〜45℃の範囲に維持される。塩基の添加後のアルカリ組成物の温度は典型的には20〜45℃である。好ましくは、酸性組成物と塩基との接触は、酸素を実質的に含まない、好ましくは酸素を含まない雰囲気下で行われる。窒素またはアルゴンが適切な雰囲気である。
【0026】
理論に拘束されるのを意図するものではないが、本方法に従った酸性組成物と塩基との接触は白色〜薄灰色の沈殿物を提供し、これはスズオキシヒドロキシド、例えば、Sn(OH)であると考えられる。8.5〜12の範囲のpHを有するアルカリ組成物が得られたら、加熱工程が開始されうる。
【0027】
アルカリ組成物は酸化第一スズを形成するのに充分な期間にわたって70℃以上に加熱される。好ましくは、アルカリ組成物は75〜110℃、より好ましくは100〜110℃、最も好ましくは105℃に加熱される。アルカリ組成物は任意の適切な速度で70℃以上の温度に到達するように、好ましくは100〜110℃に到達するように加熱される。70℃以上、好ましくは100〜110℃、最も好ましくは105℃の温度に到達したら、アルカリ組成物は複数の酸化第一スズ粒子を形成するのに充分な期間にわたってこの温度で維持される。この期間は典型的には1秒〜5時間、好ましくは1秒〜4時間、より好ましくは1秒〜3時間、最も好ましくは1秒〜1時間である。この期間の後に、次いで、アルカリ組成物は周囲温度、例えば、20〜35℃まで冷却される。加熱工程は好ましくは実質的に酸素を含まない、より好ましくは酸素を含まない雰囲気で行われる。窒素およびアルゴンが適切な雰囲気である。
【0028】
加熱の後で、透明から無色の液体および青黒い沈殿物を含む組成物が得られる。酸化第一スズであるこの青黒い沈殿物は場合によっては、次いで、あらゆる適切な手段によって、例えば、ろ過、デカンテーション、遠心分離、またはこれらの組み合わせによって液体から分離される。好ましくは、酸化第一スズ粒子はこの液体から分離される。得られる青黒い固体は、次いで、場合によっては、水、例えば、DI水で1回以上洗浄される。青黒い沈殿物は水で1回以上洗浄されるのが好ましい。この分離および任意の洗浄工程はそれぞれ、好ましくは酸素を実質的に含まない、より好ましくは酸素を含まない雰囲気中で行われる。
【0029】
得られる酸化第一スズは典型的には乾燥させられる。この乾燥は雰囲気圧力で行われることができ、または減圧で行われることができる。一般的には、酸化第一スズは乾燥中に、好ましくは70〜100℃、より好ましくは70〜80℃の温度に加熱される。この乾燥工程は典型的には24時間以内にわたって、好ましくは1〜24時間にわたって、最も好ましくは3〜24時間にわたって行われる。この乾燥工程が酸素を実質的に含まない雰囲気で行われるのが好ましく、好ましくは酸素を含まない。
【0030】
酸化第一スズ粒子は任意の適する形状を有することができる。例えば、酸化第一スズ粒子はプレートレット(platelet)(もしくはフレーク)形状を有することができ、または一般的には球(または、ボール様)形状を有することができる。本方法から得られる複数の酸化第一スズ粒子は酸、例えば、アルカンスルホン酸およびアリールスルホン酸に容易に溶解する。適するアルカンスルホン酸およびアリールスルホン酸には、限定されないが、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、フェニルスルホン酸、フェノールスルホン酸およびトリルスルホン酸が挙げられる。メタンスルホン酸が、スズおよびスズ合金電気めっき浴における電解質として使用される最も一般的な酸の一つである。本発明の複数の酸化第一スズ粒子は、20〜25℃の温度での、8.1gの70%メタンスルホン酸中の3.56gの酸化第一スズの、無色透明溶液を生じさせる、30秒のメタンスルホン酸溶解速度を有する。
【0031】
時間の経過に伴って、酸化第一スズ粒子の表面が酸化して、酸化第二スズ(すなわち、酸化スズ(IV))を形成するであろう。酸化第二スズは酸化第一スズほどは酸に可溶性ではない。酸化第一スズ粒子の表面上での酸化第二スズの形成はこの材料の溶解度に悪影響を及ぼす。電気めっき浴の作成または補充におけるような使用の際に、酸化第二スズ表面層を有するこのような酸化第一スズは容易に溶解せず、そして濁った溶液を形成し、これは有用であるにはろ過を必要とし、かつこの材料の全てが溶解されうるわけではないので溶液中の酸化第一スズの量を不明にする。
【0032】
本発明の酸化第一スズを保存するために、それは酸素透過性の非常に低い材料内に包装される。その包装材料が<100cm/645cm・24hr(すなわち、<100cm/100in・24hr)の酸素透過性を有することが好ましい。適する材料には、ポリエチレンテレフタラート(PET)、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタラート(BoPET)、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリフッ化ビニリデン、並びに金属化ポリマー、例えば、金属化ポリエチレンテレフタラート、金属化ナイロン、金属化ポリエチレン、および金属化ポリプロピレンが挙げられる。金属化ポリマーに典型的に使用される金属には、これに限定されないが、アルミニウム、ニッケル、クロムおよび金が挙げられる。包装材料として金属化ポリマーが使用される場合には、多層包装システムにおける外側包装材料として金属化ポリマーが使用され、かつ酸化第一スズが最初に非金属化ポリマー、例えば、PETもしくは高密度ポリエチレンの中に包装されるのが好ましい。すなわち、金属化ポリマーから酸化第一スズへの金属漏出の可能性を低減させるために、包装された酸化第一スズが、次いで、金属化ポリマー包装内に入れられる。好ましい材料はポリエチレンテレフタラート、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリフッ化ビニリデン、および金属化ポリエチレンテレフタラートである。好ましくは、本発明の酸化第一スズは、酸素を実質的に含まない雰囲気、好ましくは酸素を含まない雰囲気において包装される。適する包装には、袋、ボトルおよびアンプルが挙げられる。よって、本発明の酸化第一スズ粒子は酸化防止剤のような有機化合物を実質的に含まず、好ましくは酸化防止剤のような有機化合物を含まない。
【0033】
本発明の酸化第一スズ粒子は、スズ電気めっき浴の製造に特に有用であり、より好ましくはスズ合金電気めっき浴、例えば、スズ−銀、スズ−ビスマス、スズ−銅、およびスズ−銀−銅電気めっき浴の製造および補充に有用である。二価スズイオン源として、低いアルファ粒子放射性のスズ金属が使用される場合には、得られる複数の酸化第一スズ粒子は低いアルファ粒子放射性である。好ましくは、複数の酸化第一スズ粒子は0.05cph/cm以下のアルファ粒子放射性を有する。
【実施例】
【0034】
実施例1
機械式攪拌装置、還流凝縮器およびアクティブ窒素スイープを備えた5Lのガラス反応器に100gの顆粒のスズが入れられた。この反応器に345mLの水および460.5mLの37%塩酸が入れられた。この溶液は110℃の内部温度に加熱され、その温度で12時間にわたって保持され、その後35℃の内部温度まで冷却された。得られた溶液は、機械式攪拌装置および還流凝縮器を備えた22Lの反応器に吸引輸送された。2.7Lの水に溶かされた600.3gの炭酸ナトリウムを含むあらかじめ製造された溶液で、300mL/分の割合で、この溶液は注意深く滴定された。塩基添加中に、添加の初期段階で生じる泡を消すのに充分な攪拌が使用された。泡発生が終わった後で、残りの塩基溶液がワンショットで添加された。この溶液は105℃に加熱され、3時間にわたって還流させられ、その後、この溶液を冷却し35℃の内部温度まで戻した。粗生成物混合物がこの反応器から抜き出され、真空ろ過されて、望まれる青/黒固体を無色透明液体から分離した。得られたウェットケーキが200mLの水への懸濁とその後の真空ろ過に8回繰り返してかけられた。この洗浄された生成物は乾燥トレイに移され、70℃に設定されており、一定の窒素スイープを伴う乾燥オーブン内に12時間にわたって置かれた。得られた材料は粉体X線回折によって分析されて、この生成物が98gの青/黒結晶固体として単離された純粋な酸化第一スズであったことを示した。この得られた材料は水性メタンスルホン酸における溶解にかけられ、10秒以内に無色透明溶液を形成したことが認められた。
【0035】
実施例2
機械式攪拌装置、還流凝縮器およびアクティブ窒素スイープを備えたガラス反応器に25gの顆粒のスズが入れられた。この反応器に85gの水および115mLの37%塩酸が入れられた。この混合物は50℃に加熱され、その温度で、その溶液が無色透明になるまで72時間にわたって反応させられ、その後冷却され周囲温度まで戻された。この溶液は、磁気攪拌棒および還流凝縮器を備えたガラス反応器に移された。反応液面上での泡形成を最小限にするように添加の開始時に注意をしつつ、この溶液に187gの固体炭酸カリウムを添加した。得られた薄灰色スラリーが100℃に加熱され、1時間にわたって攪拌され、その時間の後にこの溶液が黒色の外観に変化した。この溶液は周囲温度まで冷却され、次いでこの反応器から抜き出され、真空ろ過されて所望の青/黒固体を、無色透明液体から分離した。得られたウェットケーキが100mLの水への懸濁とその後の真空ろ過に10回繰り返してかけられた。この洗浄された生成物は乾燥トレイに移され、70℃に設定されており、一定の窒素スイープを伴う乾燥オーブン内に12時間にわたって置かれた。得られた材料はPXRDによって分析されて、この生成物が27gの青/黒結晶固体として単離された純粋な酸化第一スズであったことを示した。この得られた材料は水性メタンスルホン酸における溶解にかけられ、30秒以内に無色透明溶液を形成したことが認められた。
【0036】
実施例3
機械式攪拌装置、還流凝縮器およびアクティブ窒素パージを備えたガラス反応器に1kgの低アルファ放射体スズ箔が入れられた。この反応器に3.42kgの水および6.4kgの37%塩酸が入れられた。得られた溶液37から105℃まで、0.5℃/分の割合で加熱され、次いで105℃で9時間にわたって保持され、その後25℃まで冷却された。この無色透明溶液に、27kgの水に溶かされた6kgの炭酸ナトリウムを含んでなる溶液が30分間にわたって注意深く添加された。得られた白色スラリーは、78℃の内部溶液温度が達成されるまで0.3℃/分の割合で加熱され、次いでその溶液は−0.2℃/分の割合で冷却された。この全体的な加熱/冷却シークエンスは4時間にわたって達成された。得られた黒色懸濁物はこの反応器から直接真空ろ過ポットに抜き出された。得られたウェットケーキが一定の真空ろ過条件下でウェットケーキを乱すことなく1kgの水で6回の逐次洗浄工程で洗浄された。この洗浄された生成物は乾燥トレイに移され、70℃に設定されており、アクティブ窒素スイープを伴う乾燥オーブン内に置かれ、12時間にわたって乾燥させられ、その後高密度ポリエチレンボトル内に包装するためにドライボックスに移され、次いで金属化ポリエチレンテレフタラート袋内に熱密封された。この最終的な固体はPXRDによって酸化第一スズと同定された1.0kgの青/黒結晶材料として単離された。この得られた材料は水性メタンスルホン酸と反応させられた場合に、30秒以内に無色透明溶液を形成したことが認められた。10nm表面深さでのSn:O比率がX線光電子分光(XPS)分析によって0.83であったことが見いだされた。中性子放射化分析誘導結合プラズマ質量分析(NAA−ICP−MS)によるこの材料の分析はこの材料が純度99.94%であることを示した。ナトリウムは2ppmの量で見いだされ、以下の金属が分析されたが、それぞれ検出限界未満(1ppm未満)であった:Al、B、Ba、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mg、Mn、Mo、Ni、Pb、Sr、Ti、VおよびZn。
【0037】
実施例4
塩化第一スズ二水和物(29.84g)を塩酸(37%、75mL)および水(75mL)に溶かすことにより塩化第一スズ溶液が調製された。この得られた溶液は、水(480mL)に溶かされた炭酸ナトリウム(無水物、104.8g)から構成される第二溶液で滴定された。得られた白色の不均質混合物が還流加熱され(105℃)、そして1時間保持され、その後周囲温度まで冷却された。得られた混合物はミディアムポアガラスフリットフィルタを通して真空ろ過された。このウエットケーキをフリットフィルターリザーバー内で水(100mL)に再懸濁する前に、このウエットケーキのアリコートが分析のために取り出された。真空ろ過、アリコート取り出し、再懸濁のシークエンスが全部で15アリコートが集められるまで繰り返された。これらアリコートは不純物分析のためにイオン結合プラズマ質量分析(ICP−MS)にかけられ、かつ不純物塩化物イオン分析のためにイオンクロマトグラフィ(IC)にかけられた。得られた酸化第一スズは平均で14ppmの塩化物イオン(chloride)を含んでいたと認められた。
【0038】
実施例5
使用された塩基の量が4.75、5.75および6.75当量まで増加されたことを除いて、実施例4の手順が繰り返された。それぞれの場合において、同様の結果が得られた。
【0039】
実施例6
過剰な20重量%塩酸(37%)中の10重量%スズの溶液900mLに、2713mLの水に溶かされた600gの炭酸ナトリウムが添加され、pHを>9に上げて、所望の白色スズオキシヒドロキシド中間体を完全に沈殿させた。
【0040】
実施例7
塩基が4当量過剰に使用される炭酸水素ナトリウムであることを除いて、実施例1の手順が繰り返される。
【0041】
実施例8
塩基が4.5当量過剰に使用される炭酸アンモニウムであることを除いて、実施例7の手順が繰り返される。
【0042】
実施例9
塩基が5.5当量過剰に使用される酢酸ナトリウムであることを除いて、実施例1の手順が繰り返される。
【0043】
実施例10
サンプルは、約0.1gの純粋なSnOを30mLのビーカーに秤量することにより準備された。約25mLの20%HClが添加され、ガラス棒を用いて充分に攪拌された。このビーカーはホットプレート上に2分間にわたって置かれ、この溶液を約60℃にした。さらなる攪拌がなされ、透明な溶液が得られた。0.47μmのセルロース膜フィルタが真空ろ過装置のろ過カップに配置された。この溶液はろ過カップ内に注がれ、そして真空がかけられた。このビーカーは15mLの20%HClですすがれ、このフィルタカップ内に注ぎ込まれ、このフィルタを通して吸引された。さらに2回の同様の洗浄が、それぞれ15mLの純水(18mΩ)を用いて行われた。洗浄ボトルからの純水を用いてろ過カップの側部がさらにすすがれた。真空はさらに2分間にわたって続けられた。フィルタが取り除かれ、注意深く巻かれて、中性子放射化分析のための2−ドラムポリエチレンバイアル内に入れられた。
【0044】
比較例として市販の材料の2サンプル(サンプルC−1およびC−2)を含み、サンプルの5つのバッチが使用された。C−1およびC−2のそれぞれは異なる供給者から得られた。フィルタは、それぞれのサンプルについて異なるビーカーを使用して、それぞれのサンプル調製の間でろ過システムを完全に清浄化する特別な注意を払って上述のように逐次準備された。フィルタは、2分間、30キロワット(kW)で逐次的に照射された。米国標準技術局(NIST、メリーランド州、ゲイサーズバーグ)からのスズ標準トレーサブルSn溶液が同様のバイアル内に調製され、同様に分析された。約9分の待機時間の後で、ガンマ線エネルギー分析が得られた。それぞれのフィルタにおける全てのSnの量がキャンベラソフトウェア(Canberra Software)および標準比較技術を使用して得られた。測定Snは化学量論を用いてSnOに変換され、フィルタはSnOのみを含んでいたと仮定した。SnOの量は測定されたSnO重量%を100から引くことによって得られる。結果は表1に示される。
【0045】
【表1】

【0046】
表1におけるデータは、本方法の酸化第一スズは市販の酸化第一スズと比較して、より少ない量の表面酸化(すなわち、酸化第二スズ(すなわち、SnO))を有することを明らかに示す。よって、本発明の酸化第一スズは他の市販の酸化スズ(II)材料よりも酸により容易に溶ける。
【0047】
実施例11
本発明の酸化第一スズのサンプル、並びに市販の酸化第一スズサンプルC−1およびC−2が、粒子サイズ、密度、Sn:O表面比率、酸化第一スズ%および結晶サイズを決定するために分析された。本発明の酸化第一スズは、不活性雰囲気下で金属化ポリエチレンテレフタラート袋内に熱密封された高密度ポリエチレン(HDPE)容器内に貯蔵された。比較例C−1およびC−2の両方とも二次容器のないHDPE容器内に包装された。
【0048】
粒子サイズ分析:
SnO粉体サンプルの粒子サイズ分析は、LE400−0.5センサおよびHIAC/Royco ABS2加圧ボトルスタンドサンプル送達システムを備えた粒子サイジングシステムアキュサイザー(Accusizer)780を用いて行われた。サンプルをDI水中に分散させ、この分散物をボルテックスシェーカー上で短時間振とうさせ粒子を分散させることにより、サンプルがこのアキュサイザー分析のために準備された。次いで、この分散物は、6000粒子/mL以下の粒子濃度まで水に希釈され、60mL/分の流量および120秒の分析時間を用いて分析された。粒子のサイズを特徴付けるために均等球状直径較正標準(水中のポリスチレン球)が使用され、粒子形状のための補正はなされなかった。粒子サイズ測定は約0.5〜330μmのサイズ範囲にわたって行われた。
【0049】
ピクノメトリー(真密度およびかさ密度):
真密度は24cmサンプルホルダを備えたヘリウムマルチピクノメータを用いて決定された。かさ密度は、その測定体積の90%まで満たした後で水平に転がされた円筒内の試験物質の既知の重量分の体積を測定することにより決定された。この円筒は体積測定前にタップされなかった。
【0050】
X線回折(XRD):
X線回折パターンを集めるために、コバルト密閉管線源、プライマリビームモノクロメータ、およびバンテック(Vantec)−Iリニア光位置センサを備えたブルカー(Bruker)D−8アドバンスθ−θX線回折装置が使用された。この管は30kVおよび50mAで操作され、サンプルはコバルトK−アルファ 1放射線(波長=1.78897Å)で照射された。XRDデータは5〜110°(2θ)で0.02°のステップサイズで、1秒/ステップ収集および6°の検出器ウィンドウで集められた。得られたX線回折パターンの分析は、JADE X線パターン分析ソフトウェアV9.3を用いて行われた。
【0051】
X線光電子分光法(XPS):
XPS分析は表2に示されるセッティングを用いてクラトス(Kratos)AXIS HSi XPS S/N 332272/01装置において行われた。
【0052】
【表2】

【0053】
中性子放射化分析(NAA):
サンプルは実施例10の手順に従って準備された。
【0054】
分析の結果が表3および4に報告される。市販の酸化第一スズC−1は本発明の酸化第一スズおよび市販の酸化第一スズC−2と比較して、有意により小さな粒子サイズおよび結晶サイズを有していた。
【0055】
【表3】

【0056】
真密度または骨格密度はSnO構造のみが占める体積の量に基づいている(すなわち、孔、チャネルなどを除いている)が、かさ密度はバルク粒子が占める体積の量を言う。3つのサンプルの間では、真密度値は有意に異ならなかったが、これらサンプルのかさ密度値は多様であり、本方法の酸化第一スズが最も高いかさ密度を示した。
【0057】
表面酸化はSnOとメタンスルホン酸との間の反応性に重要な役割を果たす。これら3つのサンプルの表面酸化の量は高解像XPSによって定量的に決定された。酸化第二スズ(SnO)のSn 3d 5/2電子結合エネルギーはSnOのよりもわずかに高く、それぞれ486.9eVおよび486.2eVであった。これら結合エネルギーでのXPSシグナルの比率はスズ対酸素(Sn:O)の比率に変換され、SnOは0.5の値を有し、SnOは1.0の値を有する。表3における値は本発明の酸化第一スズが最も少ない量の表面酸化を有していたことを示す。中性子放射化分析(NAA)はSnOの純度を直接評価するために使用された。
【0058】
サンプルC−1、C−2および本発明の酸化第一スズはICP−MSによって分析されて、金属不純物濃度を決定した。これらサンプルのそれぞれは以下の金属について分析された:Al、B、Ba、Be、Bi、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、L、Li、Mo、Sr、Ti、およびV、これらはそれぞれのケースについて検出限界未満(<1ppm)であった。表4はこれらサンプルのいずれかにおいて検出限界を超えて金属不純物が存在していたことを示し、「ND」は検出されなかったことを意味し、すなわち、そのサンプルについてはその金属は存在するとしても検出限界未満であったことを意味する。
【0059】
【表4】

【0060】
実施例12
酸性組成物が複数のサンプルに分けられ、各サンプルは4倍、5倍、6倍、7倍または8倍モル過剰の塩基で処理されて、実施例2の一般的手順が繰り返された。塩基の量が増えるにつれて、得られた酸化第一スズ粒子の平均粒子サイズが大きくなった。この結果は図1に示される。図1から、4倍モル過剰の塩基が6〜8μmの平均粒子サイズを提供し、8倍モル過剰の塩基が18〜20μmの平均粒子サイズを提供することが認められる。
【0061】
実施例13
酸性組成物が調製された方法と、使用された具体的な塩基とが両方とも変更されたことを除いて、実施例2の一般的な手順が複数回繰り返された。結果は表5に示される。
【0062】
【表5】

【0063】
表5においては、サンプル13−1〜13−5は本発明のサンプルであり、サンプルC−3〜C−7は比較例である。消化方法は二価のスズイオンがどのように酸性組成物に添加されたかを示し、A=スズ金属を濃(37%)HClに溶かす;B=スズ金属を20%HCl溶液に溶かす;およびC=SnCl・2HOをHClに溶かす。それぞれのサンプルについてスズ:酸(HCl)の重量比は同じであった。塩基は固体としてまたは水溶液として酸性組成物に添加された。表5における最終pHは加熱前のアルカリ組成物のpHである。収率は加熱および分離後の酸化第一スズ粒子の最終収率である。これらデータは酸化第一スズ粒子の全収率が本発明の方法でより高かったことを示す。
【0064】
実施例14
実施例13からのサンプル13−2、13−4およびC−3、並びに3種類の異なる市販の酸化第一スズサンプルである比較例C−8、C−9およびC−10が走査型電子顕微鏡観察によって分析されて、酸化第一スズ粒子の平均サイズを決定した。サンプルC−8およびC−9はサンプルC−2と同じ供給者からのものである。表6に示されるデータから、本発明の酸化第一スズは比較の酸化第一スズよりも小さい平均粒子サイズを有することが明らかである。また、本方法は、2〜4μmの平均粒子サイズを有するものである相対的により小さな酸化第一スズ粒子の製造を、従来の方法を用いて可能にするよりも高いpH値で可能にする。
【0065】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
99.8%以上の平均純度、0.75〜1の平均表面スズ:酸素比率、40μm以下の平均粒子サイズ、6〜6.5g/cmの真密度、2〜2.5g/cmのかさ密度、25ppm以下の塩化物イオン含量、および50ppm以下のアルカリ含量を有する複数の酸化第一スズ粒子。
【請求項2】
前記表面スズ:酸素比率が0.8〜1である請求項1に記載の複数の酸化第一スズ粒子。
【請求項3】
20〜25℃の温度での、8.1gの70%メタンスルホン酸中の3.56gの酸化第一スズの、無色透明溶液を生じさせる、30秒のメタンスルホン酸溶解速度を有する、請求項1に記載の複数の酸化第一スズ粒子。
【請求項4】
0.05cph/cm未満のアルファ粒子放射体を有する請求項1に記載の複数の酸化第一スズ粒子。
【請求項5】
99.9%以上の平均純度を有する請求項1に記載の複数の酸化第一スズ粒子。
【請求項6】
15ppm以下の塩化物イオン含量を有する請求項1に記載の複数の酸化第一スズ粒子。
【請求項7】
25ppm以下のアルカリ含量を有する請求項1に記載の複数の酸化第一スズ粒子。
【請求項8】
有機化合物を実質的に含まない請求項1に記載の複数の酸化第一スズ粒子。
【請求項9】
密封包装内に収容された、99.8%以上の平均純度、0.75〜1の平均表面スズ:酸素比率、40μm以下の平均粒子サイズ、6〜6.5g/cmの真密度、2〜2.5g/cmのかさ密度、10ppm以下の塩化物イオン含量、および50ppm以下のアルカリ含量を有する複数の酸化第一スズ粒子を含み、前記密封包装が<100cm/100in・24hrの酸素透過性を有する材料を含んでなる製品。
【請求項10】
前記材料がポリエチレンテレフタラート、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリフッ化ビニリデン、および金属化ポリマーから選択される請求項9に記載の包装された製品。
【請求項11】
前記金属化ポリマーが金属化ポリエチレンテレフタラート、金属化ナイロン、金属化ポリエチレン、および金属化ポリプロピレンから選択される請求項10に記載の包装された製品。

【図1】
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【公開番号】特開2013−79186(P2013−79186A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−217123(P2012−217123)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)