説明

複素環化合物の製造方法

【課題】 複素環化合物の製造方法を提供すること、詳しくは、カルボン酸またはそのエステル類とグアニジン類を原料とする一段反応で、複素環化合物を少ない工程数で簡便かつ安価に、生産性良く高収率で製造することができる新規な製造方法を提供すること。
【解決手段】 下記一般式[I]
1−COOR2・ ・ ・ [I]
で表されるカルボン酸またはそのエステル類と、下記一般式[II]
3−NH−N(−R4)−C(=X)−NH−R5 ・ ・ ・ [II]
で表されるグアニジン類(X:NH)又はセミカルバジド類(X:S又はO)とを反応させ、下記一般式[III]


のいずれかで表される窒素含有複素環化合物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、潤滑油添加剤として有用な複素環化合物の製造方法に関する発明であり、少ない工程数で簡便かつ安価に、生産性良く高収率で製造することができる新規な製造方法である。
【背景技術】
【0002】
複素環(例えば、ピリジン類、ピロール類、ピリミジン類、ピラゾール類、ピリダジン類、イミダゾール類、ピラジン類、トリアジン類、トリアゾール類、テトラゾール類など)骨格を有する化合物に油溶性基(親油基)を付加した化合物は、耐摩耗性、摩擦低減性、塩基価維持性、酸化安定性に優れる潤滑油用添加剤として有用である。これらの化合物は、一般に、複素環化合物と置換有機基とを、触媒や縮合剤等の存在下または非存在下で反応させることにより、製造される。
しかしながら、上記製造方法により複素環化合物を製造した場合、低収率であるとともに、副生成物および不純物をかなりの割合で含む粗組成物を与える。また、複素環化合物またはその官能基に水素化ナトリウムやブチルリチウム等を反応させ、それに置換有機基としてハロゲン化アルキル等を反応させると、比較的収率が向上するものの、塩化ナトリウム類の処理や目的物の精製に多額の費用がかかるといった問題がある。
このように、潤滑油用添加剤としての複素環化合物の製造方法はこれまで生産性において満足できるものはなかった。
【0003】
複素環化合物の潤滑油への適用例は下記の特許文献に記載されている。
特許文献1には、含油軸受油用の腐食防止剤としてベンゾトリアゾールが使用されている。特許文献2には、ベンゾトリアゾール誘導体の冷凍機油組成物への適用が記載されており、耐摩耗性の効果を主張している。特許文献3には、チアジアゾールやベンゾトリアゾールを含有し、耐摩耗性に優れるアクティブサスペンション用の流体組成物に関する記載がある。
非特許文献1には、インドールにハロゲン化アルキルを反応させる製造方法の記載があるが、この方法で製造しようとすると、ハロゲン化ナトリウム類の処理や目的物の精製のために溶媒交換、ろ過、中和、水洗、乾燥等といった煩雑な工程が必要となる。
このように、潤滑油用添加剤としての複素環化合物の生産性の良い製造方法に言及したものはなかった。
【0004】
【特許文献1】特開昭64−29497号公報
【特許文献2】特開平06−100881号公報
【特許文献3】特開平08−165483号公報
【非特許文献1】Org. Synth., col. vol. 5, 769 (1973)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複素環化合物の製造方法を提供することであり、詳しくは、カルボン酸またはそのエステル類とグアニジン類又はセミカルバジド類を原料とする一段反応で、複素環化合物を少ない工程数で簡便かつ安価に、生産性良く高収率で製造することができる新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複素環化合物の製造方法は、下記一般式[I]
1−COOR2・ ・ ・ [I]
[式中、R1は炭素数6〜50の有機基を示し、アミノ基、アミド基、アルコール性ヒドロキシ基、カルボニル基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル結合、エーテル結合及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を含んでいてもよい。
2は水素原子または炭素数1〜6の有機基を示す。]
で表されるカルボン酸またはそのエステル類と、
下記一般式[II]
3−NH−N(−R4)−C(=X)−NH−R5 ・ ・ ・ [II]
[式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基又は、アルコール性ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホン基及びスルホニル基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を示し、R5は、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基、又はアミノ基、アルコール性ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホン基及びスルホニル基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を示し、かつR3及びR5は少なくとも一方が水素原子である。
XはNH、硫黄原子又は酸素原子である。]
で表されるグアニジン類又はセミカルバジド類とを反応させる方法である。この反応により、下記一般式[III]
【化1】

[式中、R1は前記一般式[I]におけるものと同じである。R3、R4及びR5はそれぞれ前記一般式[II]におけるものと同じである。
1はNH2、SH又はOHである。]
のいずれかで表される窒素含有複素環化合物を得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法は、複素環化合物が少ない工程数で簡便かつ安価に、生産性良く高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複素環化合物の製造方法は、下記一般式[I]
1−COOR2・ ・ ・ [I]
[式中、R1は炭素数6〜50の有機基を示し、アミノ基、アミド基、アルコール性ヒドロキシ基、カルボニル基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル結合、エーテル結合及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を含んでいてもよい。R2は水素原子または炭素数1〜6の有機基を示す。]
で表されるカルボン酸またはそのエステル類と、下記一般式[II]
3−NH−N(−R4)−C(=X)−NH−R5 ・ ・ ・ [II]
[式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基又は、アルコール性ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホン基及びスルホニル基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を示し、R5は、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基、又はアミノ基、アルコール性ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホン基及びスルホニル基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を示し、かつR3及びR5は少なくとも一方が水素原子である。XはNH、硫黄原子又は酸素原子である。]
で表されるグアニジン類又はセミカルバジド類とを反応させる方法である。この反応により、下記一般式[III]
【化2】

[式中、R1は前記一般式[I]におけるものと同じである。R3、R4及びR5はそれぞれ前記一般式[II]におけるものと同じである。X1はNH2、SH又はOHである。]
のいずれかで表される窒素含有複素環化合物を得ることができる。
【0009】
上記一般式[I]中において、R1は炭素数6〜50の有機基を示し、アミノ基、アミド基、アルコール性ヒドロキシ基、カルボニル基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル結合、エーテル結合及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を含んでいてもよい。R1の炭素数を6以上とすることにより、潤滑油基油に対する充分な溶解性を有し、炭素数を50以下とすることにより、優れた耐摩耗性を有する化合物となり、摩擦低減性、塩基価維持性等も確保される。R1は、より好ましくは炭素数8〜30の炭化水素基であり、具体的には、オクチル、デシル、ドデシル、ドデセニル、テトラデセン、テトラデセニル、ヘキサデセン、ヘキサデセニル、オクタデシル、オクタデセニル、オレイル、ステアリル、イソステアリル、デセンダイマー、デセントリマー、ブテンオリゴマー基等の炭化水素基であり、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。
また、R2としては水素原子または炭素数1〜6の有機基が良く、これ以上に大きくなると反応性が劣ってしまう。
【0010】
上記一般式[II]中において、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基又は、アルコール性ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホン基及びスルホニル基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を示し、R5は、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基、又はアミノ基、アルコール性ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホン基及びスルホニル基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を示し、かつR3及びR5は少なくとも一方が水素原子である。
3及びR4の好ましい官能基の例としては、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、アルコール性ヒドロキシ、メルカプト、スルホン、スルホニル等が挙げられる。
5の好ましい官能基の例としては、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、エチルアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ポリエチレンポリアミノ、ジエチレントリアミノ、トリエチレンテトラアミノ、テトラエチレンペンタアミノ、アミノエチルピペラジニル、アルコール性ヒドロキシ等が挙げられる。
上記一般式[II]中において、XはNH、硫黄原子又は酸素原子であり、こうした化合物は下記のように互変異性を示すことが知られている。
【化3】

4が水素原子の場合には、R4の側での互変異性も同様に起る。
【0011】
本発明における反応生成物は、一般式[I]で表されるカルボン酸またはそのエステル類と一般式[II]で表されるグアニジン類又はセミカルバジド類をモル比[I]:[II]=1:5〜5:1の割合で、好ましくは,1:2〜2:1の割合で反応させて得られる。モル比[I]:[II]を1:5以上かつ5:1以下とすることにより、本発明の耐摩耗剤の有効成分量が少なくなるのを防ぎ、耐摩耗性、摩擦低減性、塩基価維持性を示すために多量添加する必要性がなくなる。
【0012】
反応は、50〜250℃、好ましくは100〜200℃で行う。本反応は、無触媒でも、酸または塩基といった触媒の存在下でも行うことができる。また、反応を行うに際しては溶剤、例えば、炭化水素油、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール等の有機溶剤を使用することもできる。
反応生成物はそのままでも、さらに純度を高めるために、カラムや蒸留により精製することもできる。
【0013】
更に、本発明の耐摩耗剤の一つの形態である複素環化合物の硼素、珪素、モリブデン、亜鉛、カルシウムの中から選ばれる少なくとも一種を含む化合物との塩は、上記のようにして得られた複素環化合物に硼素、珪素、モリブデン、亜鉛、カルシウムの中から選ばれる少なくとも一種を含む化合物を複素環化合物に対してモル比1:0.01〜10の割合で、好ましくは1:0.05〜5の割合で反応させて得られる反応生成物である。
複素環化合物と硼素、珪素、モリブデン、亜鉛、カルシウムの中から選ばれる少なくとも一種を含む化合物との反応は50〜250℃、好ましくは100〜200℃で行なわれる。
反応を行うに際して溶剤、例えば、炭化水素油、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の有機溶剤を使用することもできる。
硼素、珪素、モリブデン、亜鉛、カルシウムの中から選ばれる少なくとも一種を含む化合物のうち、硼素含有化合物としては、例えば、酸化硼素、ハロゲン化硼素、硼酸、硼酸無水物、硼酸エステルなどを使用することができる。珪素含有化合物としては、例えば、酸化珪素、ハロゲン化珪素、珪酸、珪酸無水物、珪酸エステルなどを使用することができる。モリブデン含有化合物としては、例えば、酸化モリブデン、ハロゲン化モリブデン、モリブデン酸などを使用することができる。亜鉛含有化合物としては、例えば、酸化亜鉛、ハロゲン化亜鉛などを使用することができる。カルシウム含有化合物としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウムなどを使用することができる。
【0014】
本発明の複素環化合物の製造方法は、好ましくは、一般式[I]におけるR1が炭素数8〜24の炭化水素基である。炭素数8〜24の炭化水素基の具体例としては、ドデシル、ドデセニル、テトラデセン、テトラデセニル、ヘキサデセン、ヘキサデセニル、オクタデシル、オクタデセニル、オレイル、ステアリル、イソステアリル、デセンダイマー基等が挙げられる。
本発明の複素環化合物の製造方法は、好ましくは、一般式[I]におけるR2が水素原子である。
本発明の複素環化合物の製造方法は、好ましくは、一般式[II]において、R3、R4及びR5が、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜18の炭化水素基であり、かつR3及びR5の少なくとも一方は水素原子である。
【0015】
本発明の複素環化合物の製造方法は潤滑油用途である。
本発明の複素環化合物を含む潤滑油添加剤組成物は、これら添加剤を潤滑剤基油である炭化水素油や合成油に0.01〜20質量%の割合で配合して潤滑剤組成物を調製することができる。その際の好ましい配合量は0.05〜10質量%の範囲である。さらに好ましい配合量は0.1〜5質量%の範囲である。
ここで、炭化水素油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、芳香族系鉱油などの潤滑油のいずれでもよく、溶剤精製、水素化精製又は水素化分解などのいかなる精製方法を経たものでも使用することができる。合成油としては、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル油、グリコール系又はポリオレフィン系合成油などを使用することができる。
【0016】
上記の複素環化合物を炭化水素油や合成油の潤滑油留分あるいはそれらの混合物に配合したものは、内燃機関用潤滑油組成物(例えば、ディーゼルエンジン用潤滑油組成物、ガソリン用潤滑油組成物)、ギヤ油、軸受油、変速機油、ショックアブソーバー油及び工業用潤滑油として使用することができる。
【0017】
本発明においては、潤滑油に通常配合される酸化防止剤、耐摩耗剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動点向上剤及びその他の添加剤を使用してもよく、本発明の窒素含有環状化合物の効果を阻害するものではない。
【実施例】
【0018】
以下に本発明の実施例及び比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
500mLのフラスコに、オレイン酸 56.5g(0.2mol)、アミノグアニジン重炭酸塩 28.4g(0.21mol)、水 20mL、キシレン 100mLを入れ、窒素気流下、100℃で1時間反応した。次いで、水およびキシレンを除去しながら180℃に昇温して5時間反応した。反応混合物の酸価消失を反応終点とした。
生成物の1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトルを図1に、IR(赤外吸収)スペクルを図2に載せる。生成物は、5-(8-ヘプタデセン)-3-アミノ-1,2,4-トリアゾールであった。
【0020】
実施例2
オレイン酸の代わりにイソステアリン酸 56.8g(0.2mol)を使用した以外は、実施例1と同様に反応を行い、5-(15-メチル-ヘキサデシル)-3-アミノ-1,2,4-トリアゾールを得た。
【0021】
実施例3
オレイン酸の代わりにオレイン酸エチル 62.1g(0.2mol)を、水の代わりに水酸化ナトリウム水溶液(NaOH 0.8g/水20mL)を使用し、反応生成物をキシレンに溶かして水洗した以外は、実施例1と同様に反応を行い、5-(8-ヘプタデセン)-3-アミノ-1,2,4-トリアゾールを得た。
【0022】
実施例4
オレイン酸の代わりに2-エチルヘキサン酸 28.8g(0.2mol)を使用した以外は、実施例1と同様に反応を行い、5-(1-エチルペンチル)-3-アミノ-1,2,4-トリアゾールを得た。
【0023】
実施例5
500mLのフラスコに、オレイン酸メチル63.7g(0.2mol)、チオセミカルバジド 20.0g(0.2mol)、メタノール 20mL、28%ナトリウムメトキシド 6.2gを入れ、窒素気流下、80℃で16時間反応した。降温後、濃塩酸(36%)44gを加え室温で1時間反応した。有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、キシレンを留去して5-(8-ヘプタデセン)-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールを得た。
【0024】
実施例6
200mLのフラスコに、実施例1で得られた5-(8-ヘプタデセン)-3-アミノ-1,2,4-トリアゾール 16.0g(0.05mol)、硼酸 1.55g(0.025mol)を入れ、窒素気流下、80℃で1時間反応した。次いで、150℃に昇温して3時間反応し、次いで、水を減圧留去した。生成物の硼素含有量は1.6重量%であった。
【0025】
実施例7
200mLのフラスコに、実施例1で得られた5-(8-ヘプタデセン)-3-アミノ-1,2,4-トリアゾール 16.0g(0.05mol)、三酸化モリブデン 0.9g(0.00625mol)、水 1.8g(0.1mol)を入れ、窒素気流下、80℃で1時間反応した。次いで、100℃に昇温して2時間反応し、次いで、水を減圧留去した。生成物のモリブデン含有量は3.5重量%であった。
【0026】
比較例1
500mLのフラスコに、水素化ナトリウム(NaH) 1.3g(0.055mol)、ジメチルフォルムアミド(DMF) 100mLを入れた。それに、DMF100mLに溶解した3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール 5.0g(0.05mol)を滴下し、100℃で2時間反応した。
次いで、反応混合物にオレイルブロマイド 16.6g(0.05mol)を滴下し、100℃で4時間反応した。
DMFを留去後、トルエン 200mLに溶解して十分に水洗した。
硫酸マグネシウムで乾燥後、トルエンを留去して、1−オレイル−3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールと4−オレイル−3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールの混合物を得た。
【0027】
比較例2
500mLのフラスコに、NaH 1.4g(0.037mol),DMF 20mLを入れた。それにDMF 30mLに溶解したベンゾイミダゾール 4.2g(0.036mol)を滴下し、室温で30分間反応した。
次いで、反応混合物にトルエン 15mLに溶解した2−デシル−1−ブロモテトラデカン 12.6g(0.03mol)を滴下し、100℃で7時間反応した。
溶媒を留去後、ヘキサン 300mLに溶解して水洗した。
硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して1−(2−デシルテトラデシル)ベンゾイミダゾールを得た。
【0028】
比較例3
1Lのフラスコに、ジイソプロピルアミン 7.4g(0.073mol),THF 100mLを入れた。それに−30℃でブチルリチウム 44mL(1.67Mヘキサン溶液;0.073mol)を滴下し、同温で30分間攪拌した。
次いで、γ―ピコリン 5.1g(0.055mol)のTHF溶液(80mL)を加え、−10℃で1時間30分攪拌した。次に、2−デシル−1−ブロモテトラデカン15.0g(0.036mol)のTHF溶液(80mL)を滴下し、室温で1時間、40℃で4時間反応した。
反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、ヘキサンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し4−(3−デシルペンタデシル)ピコリンを得た。
【0029】
上述のように、実施例は比較例に比べ、少ない工程数で簡便に、生産性良く高収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で得られた生成物の1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示すチャートである。
【図2】実施例1で得られた生成物のIR(赤外吸収)スペクルを示すチャートである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本製造方法は少ない工程数で簡便かつ安価に、生産性良く高収率で複素環化合物を得ることができる。しかも、本発明の製造方法で得られた複素環化合物は、耐摩耗性、摩擦低減性、塩基価維持性、酸化安定性に優れている。したがって、潤滑剤用添加剤や燃料油添加剤として好適であり、これを含有する潤滑剤や燃料油組成物にも優れた効果を発揮するものである。特に、これを鉱油系の炭化水素油や合成系の潤滑油基油あるいはそれらの混合物に配合したものは、内燃機関、ギヤ油、軸受、変速機、ショックアブソーバー及び工業用駆動系伝達機関において耐摩耗性を向上させ、優れた摩擦特性及び塩基価維持性能を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]
1−COOR2・ ・ ・ [I]
[式中、R1は炭素数6〜50の有機基を示し、アミノ基、アミド基、アルコール性ヒドロキシ基、カルボニル基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル結合、エーテル結合及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を含んでいてもよい。
2は水素原子または炭素数1〜6の有機基を示す。]
で表されるカルボン酸またはそのエステル類と、
下記一般式[II]
3−NH−N(−R4)−C(=X)−NH−R5 ・ ・ ・ [II]
[式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基又は、アルコール性ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホン基及びスルホニル基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を示し、R5は、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基、又はアミノ基、アルコール性ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホン基及びスルホニル基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基又はそれらを有してもよい炭化水素基を示し、かつR3及びR5は少なくとも一方が水素原子である。
XはNH、硫黄原子又は酸素原子である。]
で表されるグアニジン類又はセミカルバジド類とを反応させることを特徴とする複素環化合物の製造方法。
【請求項2】
複素環化合物が、下記一般式[III]
【化1】

[式中、R1は前記一般式[I]におけるものと同じである。R3、R4及びR5はそれぞれ前記一般式[II]におけるものと同じである。
1はNH2、SH又はOHである。]
のいずれかで表される請求項1に記載の複素環化合物の製造方法。
【請求項3】
複素環化合物が、硼素、珪素、モリブデン、亜鉛及びカルシウムの中から選ばれる少なくとも一種を含む化合物との塩である請求項1または2に記載の複素環化合物の製造方法。
【請求項4】
一般式[I]において、R1が炭素数8〜24の炭化水素基である請求項1〜3のいずれかに記載の複素環化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式[I]において、R2が水素原子である請求項1〜4のいずれかに記載の複素環化合物の製造方法。
【請求項6】
一般式[II]において、R3、R4及びR5が、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜18の炭化水素基であり、さらにR3及びR5の少なくとも一方が水素原子である請求項1〜5記載の複素環化合物の製造方法。
【請求項7】
潤滑油用途である請求項1〜6のいずれかに記載の複素環化合物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−51750(P2009−51750A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218515(P2007−218515)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)