説明

要因推定装置、要因推定プログラム、要因推定プログラムを記録した記録媒体、および要因推定方法

【課題】人と機械の協調型診断において、人と機械の作業分担および作業順を最適化する。
【解決手段】工程管理装置10は、確信度予測変化量演算部64aにて、未入力条件の1つ(着目未入力条件)に特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各不良要因について求め、その和(確信度予測変化量)を、入力効果値演算部64bにて、ユーザが着目未入力条件に対応する特徴量を決定し、入力するのに要するコストであるユーザコストと、当該着目未入力条件に対応する特徴量を検査結果データに基づいて算出するのに要するコストである機械コストとの小さい方で割って算出する着目未入力条件の入力効果値を、未入力条件毎に求め、入力効果値が最大となる未入力条件を決定する入力項目選択部64を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断対象のシステムにおいて発生した不良結果から不良要因を推定する要因推定装置、要因推定プログラム、要因推定プログラムを記録した記録媒体、および要因推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインにおいて、歩留まりを向上させるために工程の改善処理が必要とされている。工程の改善処理としては、まず製造品の不良の要因となる工程を特定し、その要因を取り除くように機器の調整や清掃などが行われる。
【0003】
しかしながら、複数の工程からなる製造工程においては、不良の要因の候補として、製造装置の部品の欠陥、製造装置の設定の問題、および搬送経路での問題など、多種多様な要因が考えられる。例えば回路基板の表面実装システムの工程は、プリント工程−実装工程−リフロー工程に分かれている。プリント工程では、基板上に半田ペーストが塗られ、実装工程では、基板上に部品が設置される。最後のリフロー工程では、熱を加えることによって半田を溶かして部品が接着される。このような表面実装システムにおいて、ブリッジ不良が起こった場合、ブリッジ不良を起こす要因としては、マスクずれ、下型よごれなど多く考えられるが、この内の1つあるいは複数が根本の要因となる。
【0004】
不良の要因となる現象が現れると、製造品に不良の症状が現れるのはもちろんのこと、製造装置の動作履歴や検査装置の検査履歴に対しても何らかの影響を与えることになる。これらの不良品の症状に関するデータ、および、製造装置の動作履歴や検査装置の検査履歴に関するデータは膨大なものとなり、不良の発生に関する分析を行うことも困難である。
【0005】
ここで、生産管理に関する経験が豊富な生産管理担当者(熟練者)は、不良要因が不良品、製造装置、検査装置に与える影響の関係、およびその影響の解釈の仕方を経験的に知っており、効率的に工程改善を実施することが可能である。しかしながら、経験の浅い生産管理担当者は、要因を1つずつ吟味して要因の特定を行うことになり、工程の改善処理に多大な時間を費やすことになる。
【0006】
また、高度なノウハウや技術が必要となる装置の故障診断や工程改善のための不良要因の特定は熟練者が行っていたが、2007年問題と言われる、熟練者不足が懸念されている。そのため、熟練者レベルの要因推定を、初中級者でも可能にしたいという要求がある。
【0007】
したがって、生産現場において、いかなる熟練度の生産管理担当者であっても、異常要因の推定を高確度かつ高効率で実現可能な手法が要望されている。このような手法として、以下に示す特許文献1には、各工程(プリント工程−実装工程−リフロー工程)に設けられた検査機から情報を取得し、それにより推論を行う方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、表面実装システムにおいて、要因推定に必要とされる情報を全て検査機から取得できるとは限らない。例えば、基板の正面から撮影した半田の面積なら画像処理の技術を利用することで収集できるが、基板の反りといった情報は、人間が基板の側面から確認する必要がある。ここで、基板の反りを検知するための構成を設けることも考えられるが、検査機のコストを必要以上に大きくすることは好ましくない。よって、検査機からの検査結果データに加えて、人間からの情報の入力を行うことが好ましい。すなわち、要因推定を行うためには、機械と人との協調型の推論を行うことが必要となる。
【0009】
人間からの情報の入力によって要因推定を行う際には、いかにして質問数を減らしかつ精度良く推論を実施するかが問題となる。例えば以下に示す特許文献2には、質問順序を決定する方法として事前に発生頻度による評価値を持たせる方法が提案されている。
【特許文献1】特開平6−196900号公報(公開日:平成6(1994)年7月15日)
【特許文献2】特開平6−103073号公報(公開日:平成6(1994)年4月15日)
【特許文献3】特開平6−168226号公報(公開日:平成6(1994)年6月14日)
【特許文献4】特表2000−511304号公報(公表日:平成12(2000)年8月29日)
【特許文献5】特開平6−301546号公報(公開日:平成6(1994)年10月28日)
【非特許文献1】“Communications of the ACM, 38:49-57(1995)” D.Heckerman,J.Breese,K.Rommelse、“Decision-theoretic Trouble shooting”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の診断技術として、事例ベース推論、ルールベース推論、ベイジアンネットなどを用いた診断方法がある。また、診断を行うためには、入力となるデータが必要であるが、このデータはセンサなどによって自動で取得するものと、人が観察した結果を人が入力することで取得するものとを組み合わせることが一般的である。
【0011】
そして、上記非特許文献1では、ベイジアン・ネットワークに基づいて、人が行う観測や修理のコストを鑑みて、効果的なアクション(観測や修理)を通じて、診断を行う仕組みが提案されている。
【0012】
非特許文献1の仕組みは、固定された一般的なユーザを想定している。つまり、システムが提案するアクション(観測や修理)を、常にユーザが実施可能であるという前提になっている。しかし、通常は、ユーザには個人差があり、提示されるアクションが必ず実施できるとは限らない。逆に、どんなユーザでも実施可能なアクションだけを提示する場合、特定のユーザのみが実施可能なアクションは、どれ程効果的であっても提示されないことになる。
【0013】
また、従来の診断システムは、システムを利用することで、ユーザは診断の知識やスキルが向上しないという前提になっている。つまり、ユーザが経験を積んで、診断に効果的なアクションが実施可能となっても、システムはそのようなアクションを提示しない。
【0014】
なお、上記特許文献3には、各作業の所要時間と時間単位、各時間単位の能力、作業割り当て制約条件から、最小化基準で作業分担を決定する最適負荷平準化計画立案方法および装置が記載されている。
【0015】
しかし、特許文献3では、人が作業する場合における作業能力の個人差は考慮されていない。また、人が作業する場合、人の能力は経験を積むことで成長するが、能力を適宜観測して更新することについて言及していない。また、人が作業する場合、人の能力を向上させるOJT(On the Job Training)を行うことがあるが、能力を向上させることを目的とした最適化にはなっていない。
【0016】
また、上記特許文献4には、エージョントを用いて個別の教育を提供するエージェントベースのインストラクションシステムと方法が記載されている。
【0017】
しかし、特許文献4は、教師から学生へ提供する学習コンテンツを個別に選択していることが特徴であり、学生ができないことをエージョントが代替するものではない。また、タスクを実行する主体が学生であって、システムと学生の協調作業でタスクを完遂するものではない。
【0018】
また、上記特許文献5には、観測データと目標値を入力とし、知識ベースをもとにプラント制御を行うプラント運転シミュレーション用人工知能ソフトウェアシェルが記載されている。
【0019】
しかし、特許文献5では、人からの入力は目標値のみであり、タスク実行に人が積極的に関与しない。また、観測データとして機械から取得できるデータだけを用いているため、タスク実行に人の判断を介入させる余地はなく、単純なタスクの実行に限定されている。
【0020】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、人と機械の協調型診断において、ユーザの能力に応じて人と機械の作業分担を最適化することができる要因推定装置、要因推定プログラム、要因推定プログラムを記録した記録媒体、および要因推定方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明に係る要因推定装置は、診断対象のシステムにおいて発生した結果から要因を推定する要因推定装置であって、上記システムにおいて発生し得る複数の結果のそれぞれに対して、要因の候補を1つ以上対応付けるとともに、各結果から該結果に対応する各要因に至る要因推定の診断パスを、条件分岐によるネットワーク構造の知識として示す要因推定知識情報を記録する推定知識記録部と、上記推定知識記録部に記録されている上記要因推定知識情報に基づいて結果から要因を推定する要因推定処理を行う推論処理手段と、要因に至る推論の確からしさを示す指標である確信度を要因毎に算出する確信度演算手段と、上記推論処理手段によって要因推定処理が行われる過程において、上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量を、ユーザから取得する入力制御手段と、上記推論処理手段によって要因推定処理が行われる過程において、上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量を、上記システムに関する検査から得られた検査結果データに基づいて算出する特徴量演算手段と、ユーザが条件に対応する特徴量を決定し、上記入力制御手段を介して入力するのに要するコストであるユーザコストを当該条件に対応付けて記録するユーザコスト記録部と、上記特徴量演算手段が条件に対応する特徴量を算出するのに要するコストである機械コストを当該条件に対応付けて記録する機械コスト記録部と、上記入力制御手段および特徴量演算手段によって特徴量が取得も算出もされていない条件である未入力条件から1つ選択した着目未入力条件に特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各要因について求め、その和である確信度予測変化量を算出する確信度予測変化量演算手段と、上記着目未入力条件に対応するユーザコストおよび機械コストを、上記ユーザコスト記録部および上記機械コスト記録部からそれぞれ取得し、該ユーザコストおよび該機械コストの小さい方で、上記確信度予測変化量演算手段によって算出した上記確信度予測変化量を割って、上記着目未入力条件の入力効果値を算出する入力効果値演算手段と、上記確信度予測変化量演算手段および上記入力効果値演算手段によって、各未入力条件をそれぞれ着目未入力条件として、入力効果値を未入力条件毎に求め、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力条件を決定する条件選択手段を備えることを特徴としている。
【0022】
また、本発明に係る要因推定方法は、診断対象のシステムにおいて発生した結果から要因を推定する要因推定装置における要因推定方法であって、推定知識記録部に記録されている、上記システムにおいて発生し得る複数の結果のそれぞれに対して、要因の候補を1つ以上対応付けるとともに、各結果から該結果に対応する各要因に至る要因推定の診断パスを、条件分岐によるネットワーク構造の知識として示す要因推定知識情報に基づいて結果から要因を推定する要因推定処理を行う過程において、要因に至る推論の確からしさを示す指標である確信度を要因毎に算出する確信度演算ステップと、上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量が、ユーザから取得されておらず、かつ、上記システムに関する検査から得られた検査結果データに基づいて算出もされていない条件である未入力条件から、1つ選択した着目未入力条件に、特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各要因について求め、その和である確信度予測変化量を算出する確信度予測変化量演算ステップと、ユーザが上記着目未入力条件に対応する特徴量を決定し、入力するのに要するコストであるユーザコストをユーザコスト記録部から取得するとともに、当該着目未入力条件に対応する特徴量を算出するのに要するコストである機械コストを機械コスト記録部から取得し、該ユーザコストおよび該機械コストの小さい方で、上記確信度予測変化量演算ステップにて算出した上記確信度予測変化量を割って、上記着目未入力条件の入力効果値を算出する入力効果値演算ステップと、上記確信度予測変化量演算ステップおよび上記入力効果値演算ステップにて、各未入力条件をそれぞれ着目未入力条件として、入力効果値を未入力条件毎に求め、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力条件を決定する条件選択ステップとを含むことを特徴としている。
【0023】
上記の構成または方法によれば、要因推定装置は、特徴量が入力されていない条件の1つである着目未入力条件に特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各要因について求め、その和(確信度予測変化量)を、ユーザが着目未入力条件に対応する特徴量を決定し、入力するのに要するコストであるユーザコストと、当該着目未入力条件に対応する特徴量を検査結果データに基づいて算出するのに要するコストである機械コストとの小さい方で割って算出する着目未入力条件の入力効果値を未入力条件毎に求め、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力条件を決定する。
【0024】
ここで、特徴量には、温度や面積等の数値による定量的な指標に加えて、「大きい(large)」「普通(mid)」「小さい(small)」や「Yes」「No」等の定性的な指標も含むものとする。また、検査結果データは、システムに関する検査、例えばシステムあるいはシステムによる処理物に対する検査から得られたものである。また、検査結果データは、予め記録装置に蓄積されていてもよいし、演算に必要になった時に検査して取得してもよい。
【0025】
よって、特徴量が得られた場合の確信度が、その特徴量を得るためのコストに対して、最も効率の良い未入力条件を特定できる。これにより、要因推定の診断パスに関係なく、コストパフォーマンスが高い未入力条件から順に特徴量を取得することが可能となる。また、演算で使用するコストとして、ユーザが特徴量を決定するコストと機械が特徴量を決定するコストの小さい方を使用する。これにより、特徴量の取得をユーザから行うのか、機械から行うのかを、特徴量を取得すべき未入力条件の特定と同時に行うことができる。
【0026】
したがって、人と機械の協調型診断において、ユーザの能力(知識やスキルなど)に応じて、人と機械の作業分担と未入力条件の処理順序を最適化できるため、効率的な診断が可能となる。
【0027】
さらに、本発明に係る要因推定装置は、上記入力制御手段によって取得された特徴量または上記特徴量演算手段によって算出された特徴量に基づいて、該特徴量が対応する条件を満たす度合いを示す適合度を算出する適合度演算手段を備え、上記確信度演算手段は、上記診断パスに含まれる条件に対する適合度の集合を代表する値を確信度とするものであることを特徴としている。
【0028】
上記の構成によれば、さらに、特徴量が対応する条件を満たす度合いを示す適合度の代表値を各診断パス(すなわち、要因)の確信度とする。よって、確信度の算出が容易である。なお、適合度の代表値としては、例えば、最小値や平均値などが挙げられる。
【0029】
さらに、本発明に係る要因推定装置は、上記条件選択手段は、上記ユーザコストが上記機械コストより小さいとき、上記入力制御手段に、特徴量を取得すべき条件に対応する質問をユーザに提示させるものであることを特徴としている。
【0030】
上記の構成によれば、さらに、取得すべき特徴量を質問に対する回答として、ユーザから取得できる。
【0031】
さらに、本発明に係る要因推定装置は、上記入力制御手段が特徴量を取得すべき条件に対応する質問をユーザに提示した時点から、ユーザが回答を入力した時点までの時間を計測し、該計測した時間に応じてユーザコストを決定し、該決定したユーザコストを当該条件に対応付けて記録するユーザコスト管理手段を備えることを特徴としている。
【0032】
上記の構成によれば、さらに、ユーザが特徴量の入力にどのくらい時間がかかったかを計測することで、ユーザの能力を測定できる。そして、この時間に基づき、ユーザコストを更新できる。なお、ユーザコストには、回答時間[秒]をそのまま利用してもよいが、その他の換算等によって求めてもよい。
【0033】
よって、経験を積むことで向上するユーザの能力に適切に対応することが可能となる。
【0034】
さらに、本発明に係る要因推定装置は、上記入力効果値演算手段は、上記ユーザコスト記録部から取得したユーザコストから所定値だけ減じた値をユーザコストとして用いることを特徴としている。
【0035】
上記の構成によれば、さらに、ユーザコストを実際よりも所定値だけ小さく設定するため、ユーザの実際のレベルよりも高いレベルの質問が提示されることになる。なお、所定値としては、例えば“(目標レベル−現在レベル)×入力条件毎の係数”を利用できる。
【0036】
よって、ユーザに実際より高い能力レベルでの作業を経験させることにより、能力向上を促進することができる。したがって、診断作業を通じたOJTを実現することが可能となる。
【0037】
なお、本発明に係る要因推定装置は、被対象物に対して処理を行う処理システムにおいて発生した結果から要因を推定する工程管理装置に好適である。
【0038】
なお、上記要因推定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記要因推定装置をコンピュータにて実現させる要因推定プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0039】
以上のように、本発明に係る要因推定装置は、診断対象のシステムシステムにおいて発生し得る複数の結果のそれぞれに対して、要因の候補を1つ以上対応付けるとともに、各結果から該結果に対応する各要因に至る要因推定の診断パスを、条件分岐によるネットワーク構造の知識として示す要因推定知識情報を記録する推定知識記録部と、上記推定知識記録部に記録されている上記要因推定知識情報に基づいて結果から要因を推定する要因推定処理を行う推論処理手段と、要因に至る推論の確からしさを示す指標である確信度を要因毎に算出する確信度演算手段と、上記推論処理手段によって要因推定処理が行われる過程において、上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量を、ユーザから取得する入力制御手段と、上記推論処理手段によって要因推定処理が行われる過程において、上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量を、上記システムに関する検査から得られた検査結果データに基づいて算出する特徴量演算手段と、ユーザが条件に対応する特徴量を決定し、上記入力制御手段を介して入力するのに要するコストであるユーザコストを当該条件に対応付けて記録するユーザコスト記録部と、上記特徴量演算手段が条件に対応する特徴量を算出するのに要するコストである機械コストを当該条件に対応付けて記録する機械コスト記録部と、上記入力制御手段および特徴量演算手段によって特徴量が取得も算出もされていない条件である未入力条件から1つ選択した着目未入力条件に特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各要因について求め、その和である確信度予測変化量を算出する確信度予測変化量演算手段と、上記着目未入力条件に対応するユーザコストおよび機械コストを、上記ユーザコスト記録部および上記機械コスト記録部からそれぞれ取得し、該ユーザコストおよび該機械コストの小さい方で、上記確信度予測変化量演算手段によって算出した上記確信度予測変化量を割って、上記着目未入力条件の入力効果値を算出する入力効果値演算手段と、上記確信度予測変化量演算手段および上記入力効果値演算手段によって、各未入力条件をそれぞれ着目未入力条件として、入力効果値を未入力条件毎に求め、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力条件を決定する条件選択手段を備える構成である。
【0040】
また、本発明に係る要因推定方法は、推定知識記録部に記録されている、診断対象のシステムにおいて発生し得る複数の結果のそれぞれに対して、要因の候補を1つ以上対応付けるとともに、各結果から該結果に対応する各要因に至る要因推定の診断パスを、条件分岐によるネットワーク構造の知識として示す要因推定知識情報に基づいて結果から要因を推定する要因推定処理を行う過程において、要因に至る推論の確からしさを示す指標である確信度を要因毎に算出する確信度演算ステップと、上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量が、ユーザから取得されておらず、かつ、上記システムに関する検査から得られた検査結果データに基づいて算出もされていない条件である未入力条件から、1つ選択した着目未入力条件に、特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各要因について求め、その和である確信度予測変化量を算出する確信度予測変化量演算ステップと、ユーザが上記着目未入力条件に対応する特徴量を決定し、入力するのに要するコストであるユーザコストをユーザコスト記録部から取得するとともに、当該着目未入力条件に対応する特徴量を算出するのに要するコストである機械コストを機械コスト記録部から取得し、該ユーザコストおよび該機械コストの小さい方で、上記確信度予測変化量演算ステップにて算出した上記確信度予測変化量を割って、上記着目未入力条件の入力効果値を算出する入力効果値演算ステップと、上記確信度予測変化量演算ステップおよび上記入力効果値演算ステップにて、各未入力条件をそれぞれ着目未入力条件として、入力効果値を未入力条件毎に求め、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力条件を決定する条件選択ステップとを含む方法である。
【0041】
それゆえ、特徴量が得られた場合の確信度が、その特徴量を得るためのコストに対して、最も効率の良い未入力条件を特定できる。これにより、要因推定の診断パスに関係なく、コストパフォーマンスが高い未入力条件から順に特徴量を取得することが可能となる。また、演算で使用するコストとして、ユーザが特徴量を決定するコストと機械が特徴量を決定するコストの小さい方を使用する。これにより、特徴量の取得をユーザから行うのか、機械から行うのかを、特徴量を取得すべき未入力条件の特定と同時に行うことができる。
【0042】
したがって、人と機械の協調型診断において、ユーザの能力(知識やスキルなど)に応じて、人と機械の作業分担と未入力条件の処理順序を最適化できるため、効率的な診断が可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、プリント基板の生産ラインを有する生産システムに適用される工程管理システムについて説明するが、本発明は、プリント基板の生産システムに限定されるものではなく、被対象物の処理工程の管理全般に適用することが可能である。なお、被対象物の処理工程とは、例えば、工業製品の生産工程、鉱工業製品、農産物、または原料の検査工程、廃棄対象物(例えば、工場廃棄物、工場廃水、廃ガス、ゴミ等)の処理工程、廃棄対象物の検査工程、設備の検査工程、リサイクル工程等を意味する。
【0044】
(生産システムの構成)
まず、図2を参照しながら、本実施形態に係る工程管理システムが適用されるプリント基板の生産システム(処理システム)1について説明する。生産システム1における生産ラインは、プリント基板を製造する各工程(印刷工程、実装工程、リフロー工程等)を含んでいる。同図に示す例では、生産システム1は、基板上に半田をペーストする半田印刷工程を行う印刷装置11、基板上に電子部品を実装する部品実装工程を行う装着装置12、基板上の電子部品を半田付けするリフロー工程を行う半田付け装置13、および生産システム1の管理を行う工程管理装置(要因推定装置)10を備えている。印刷装置11、装着装置12、および半田付け装置13は、生産システム1の製造品の流れにおける上流から下流に向けてこの順序で配置されている。
【0045】
また、印刷装置11の近傍には印刷検査装置14aが配置され、装着装置12の近傍には装着検査装置14bが配置され、半田付け装置13の近傍には半田付け検査装置14cが配置されている。印刷検査装置14aは、印刷装置11にて処理された基板の品質を検査するものである。装着検査装置14bは、装着装置12にて処理された基板を検査するものである。半田付け検査装置14cは、半田付け装置13にて処理された基板を検査するものである。なお、以下では、印刷検査装置14a、装着検査装置14b、および半田付け検査装置14cを区別する必要のない場合には、単に検査装置14と称する。
【0046】
また、工程管理装置10は、生産システム1全体を統括管理するとともに、後述する要因推定処理および分析処理を行う。この工程管理装置10は、生産管理者としてのユーザから各種情報の入力や指示入力を受け、各種処理を行う。
【0047】
工程管理装置10、印刷装置11、装着装置12、半田付け装置13、印刷検査装置14a、装着検査装置14b、および半田付け検査装置14cは、通信回線によって互いに接続されることによって通信ネットワークを形成している。なお、通信ネットワークとしては、各装置が互いに通信可能な形態であればどのようなものでもよく、例えばLAN(Local Area Network)が形成される形態が想定される。
【0048】
なお、工程管理装置10とは別に、ユーザが操作入力を行う端末装置を上記通信ネットワークに接続した状態で別に設け、この端末装置によって工程管理装置10へのデータ入力や各種画面表示が行われる形態としてもよい。
【0049】
また、上記の例では、印刷装置11、装着装置12、および半田付け装置13のそれぞれに対応して検査装置14を設けた構成となっているが、生産システム1において少なくとも1つの検査装置14が設けられていればよい。例えば、少なくとも半田付け検査装置14cが設けられていれば、最終的な製造結果に発生している不良を検出することが可能となる。
【0050】
(工程管理装置の構成)
次に、図1を参照しながら、工程管理装置10の構成について以下に説明する。
【0051】
工程管理装置(要因推定装置)10は、診断対象のシステムにおいて発生した不良結果から不良要因を推定する。同図に示すように、工程管理装置10は、制御部30、検査結果入力部(検査結果入力手段)40、入力部21、表示部22、推定知識記録部23、質問データ記録部24、推論過程一時記憶部25、工程状態データベース(検査結果記録部)26、ユーザプロファイル記録部(ユーザコスト記録部)27、および機械コスト記録部28を備えた構成となっている。
【0052】
入力部21は、ユーザからの指示入力、および情報入力などを受け付けるものであり、例えばキーボードやボタンなどのキー入力手段や、マウスなどのポインティングデバイスなどによって構成される。表示部22は、工程管理装置10における各種処理内容を表示するものであり、例えば液晶表示装置、CRT(Cathode Ray Tube)などの表示装置によって構成される。
【0053】
検査結果入力部40は、生産システム1における製造過程の検査結果に関するデータを受け付けるものであり、印刷結果入力部41、装着結果入力部42、半田付け結果入力部43、および製造装置履歴入力部44を備えている。印刷結果入力部41は、印刷検査装置14aによる検査結果を受け付ける。装着結果入力部42は、装着検査装置14bによる検査結果を受け付ける。半田付け結果入力部43は、半田付け検査装置14cによる検査結果を受け付ける。製造装置履歴入力部44は、印刷装置11、装着装置12、および半田付け装置13から、製造履歴に関する情報を受け付ける。
【0054】
なお、検査結果入力部40は、印刷装置11、装着装置12、半田付け装置13、印刷検査装置14a、装着検査装置14b、および半田付け検査装置14cの少なくとも1つの装置から検査結果に関する情報を受け付けるようになっていればよい。例えば、半田付け検査装置14cから半田付け結果に関する検査結果データのみを受け付けるようになっていれば、最終的な製造結果に発生している不良に関する検査結果データを取得することが可能となる。
【0055】
推定知識記録部23は、要因推定知識情報を記録している。要因推定知識情報は、複数の不良結果のそれぞれに対して、その要因を探索するための情報であり、因果ネットワークとして記録されている。すなわち、推定知識記録部23は、診断対象のシステムにおいて発生し得る複数の不良結果のそれぞれに対して、不良要因の候補を1つ以上対応付けるとともに、各不良結果から該不良結果に対応する各不良要因に至る要因推定の診断パスを、条件分岐によるネットワーク構造の知識として示す要因推定知識情報を記録する。なお、因果ネットワークの詳細については後述する。
【0056】
質問データ記録部24は、要因推定を行う上でユーザに対して提示される質問情報を質問データベースとして記録している。この質問データベースに含まれる各質問情報は、推定知識記録部23に記録されている要因推定知識情報とリンクされており、因果ネットワークにおけるノード間の条件に対応している。なお、後述するように、質問情報に対する回答が入力項目の入力値であり、ノード間の条件に対応付けて設定される特徴量となる。
【0057】
推論過程一時記憶部25は、推論部32において行われる推論処理において、推論の進行に応じて得られている推論過程情報を記憶するものである。
【0058】
工程状態データベース26は、検査結果入力部40によって受け付けられた、生産システム1における製造過程の検査結果に関するデータ(検査結果データ)を記録するデータベースである。すなわち、工程状態データベース26には、印刷検査装置14aによる検査結果、装着検査装置14bによる検査結果、半田付け検査装置14cによる検査結果、印刷装置11、装着装置12、および半田付け装置13から、製造履歴に関する情報が記録される。
【0059】
ユーザプロファイル記録部27は、ユーザが条件に対応する特徴量を決定し、質問入出力制御部51を介して入力するのに要するコストであるユーザコストを当該条件(すなわち、入力項目)に対応付けて記録する。本実施形態では、上記ユーザコストは、ユーザを特定するためのユーザID(ユーザ識別情報)、およびユーザの能力のレベルを示すユーザレベルとともに、ユーザプロファイル(図11(a))の形式でユーザ毎に記録される。ユーザプロファイル記録部27は、不揮発性の記録媒体によって実現され、他の記録部と同様に工程管理装置10に固定された例えばハードディスク装置などであってよいが、工程管理装置10に着脱自在のユーザ毎に用意されたICカードなどであってもよい。なお、ユーザプロファイル記録部27がユーザ毎に用意される場合、ユーザIDは省略できる。そして、後述するように、ユーザコストやユーザレベルを更新する場合には、ユーザプロファイル記録部27として書き換え可能な記録媒体が利用される。
【0060】
機械コスト記録部28は、特徴量演算部35が条件に対応する特徴量を算出するのに要するコストである機械コストを当該条件に対応付けて記録する。
【0061】
上記の推定知識記録部23、質問データ記録部24、工程状態データベース26、および機械コスト記録部28は、例えばハードディスク装置などの不揮発性の記録媒体によって実現される。また、推論過程一時記憶部25は、例えばRAM(Random Access Memory)などのワークメモリによって実現される。
【0062】
制御部30は、工程管理装置10における処理を制御するものであり、入力表示制御部(入力制御手段)31、推論部32、知識変換部33、質問生成部34、および特徴量演算部(特徴量演算手段)35を備えている。
【0063】
知識変換部33は、推定知識記録部23に記録されている要因推定知識情報を読み出し、推論知識としてのプロダクションルールを生成する。プロダクションルールは、詳細は後述するが、要因推定の推論処理をコンピュータに行わせるのに適したデータ形式の情報である。
【0064】
質問生成部34は、推論部32からの要求に応じて、推論処理の各過程に対応した質問情報を質問データ記録部24から読み出し、質問を生成する。
【0065】
特徴量演算部35は、推論部32からの要求に応じて、工程状態データベース26に記録されている検査結果データを読み出し、統計演算などを行うことによって、必要とされる特徴量を算出する。すなわち、特徴量演算部35は、推論処理部61によって要因推定処理が行われる過程において、要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量を、診断対象であるシステムあるいは該システムによる処理物を検査して得られた検査結果データに基づいて算出する。この検査結果データは、検査結果入力部40によって取得され、工程状態データベース26に蓄積されている。
【0066】
入力表示制御部31は、入力部21からの入力情報を受け付けるとともに、表示部22に対して表示制御を行うものであり、質問入出力制御部(入力制御手段)51および要因出力制御部52を備えている。
【0067】
質問入出力制御部51は、推論部32からの指示に応じて質問を表示部22に表示するとともに、該質問に対する回答入力を受け付けて推論部32へ伝送する処理を行う。すなわち、質問入出力制御部51は、推論処理部61によって要因推定処理が行われる過程において、要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量を、ユーザから取得する。
【0068】
ここで、特徴量には、温度や面積等の数値による定量的な指標に加えて、「大きい(large)」「普通(mid)」「小さい(small)」や「Yes」「No」等の定性的な指標も含むものとする。質問の画面では、入力すべき特徴量を選択肢の形式で画面から選択可能に表示してもよい。なお、入力項目の特徴量は、推論過程一時記憶部に記憶されるが、特徴量が未入力である場合、「Null」が格納される。これにより、各入力項目の特徴量が入力済であるか未入力であるかを判断することができる。
【0069】
要因出力制御部52は、推論部32からの指示に応じて推定される要因の候補および各要因に関する情報を表示部22に表示する。
【0070】
推論部32は、要因を推定する推論処理を行うものであり、推論処理部(推論処理手段)61、適合度演算部(適合度演算手段)62、確信度演算部(確信度演算手段)63、入力項目選択部(条件選択手段)64、およびユーザプロファイル管理部(ユーザプロファイル管理手段、ユーザコスト管理手段)65を備えている。
【0071】
推論処理部61は、要因推定処理を統括的に制御する処理を行う。具体的には、推論処理部61は、推定知識記録部23に記録されている要因推定知識情報に基づいて不良結果から不良要因を推定する要因推定処理を行う。
【0072】
適合度演算部62は、ネットワークの特定のノード間に対応付けられている入力項目に対する特徴量が得られた場合に、該特徴量に応じて、接続されているノードに対する適合度を算出する処理を行う。すなわち、適合度演算部62は、質問入出力制御部51によって取得された特徴量または特徴量演算部35によって算出された特徴量に基づいて、該特徴量が対応する条件を満たす度合いを示す適合度を算出する。
【0073】
確信度演算部63は、推定される各要因に対して、要因推定処理によって得られた適合度に基づいて確信度を算出する処理を行う。すなわち、確信度演算部63は、不良要因に至る推論の確からしさ(尤もらしさ)を示す指標(スコア)である確信度を不良要因毎に算出する(確信度演算ステップ)。なお、確信度演算部63は、診断パスに含まれる条件に対する適合度の集合を代表する値を確信度としてもよい。その他、事後確率または事後確率に基づいたスコア、あるいは、ユークリッド距離等の距離に基づいたスコアなどを確信度としてもよい。
【0074】
入力項目選択部64は、入力項目選択処理を行う(条件選択ステップ)。そのため、入力項目選択部64は、確信度予測変化量演算部(確信度予測変化量演算手段)64aおよび入力効果値演算部(入力効果値演算手段)64bを備えている。
【0075】
確信度予測変化量演算部64aは、質問入出力制御部51および特徴量演算部35によって特徴量が取得も算出もされていない条件である未入力条件から1つ選択した着目未入力条件に特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各不良要因について求め、その和である確信度予測変化量を算出する(確信度予測変化量演算ステップ)。
【0076】
入力効果値演算部64bは、着目未入力条件に対応するユーザコストおよび機械コストを、ユーザプロファイル記録部27および機械コスト記録部28からそれぞれ取得し、該ユーザコストおよび該機械コストの小さい方で、確信度予測変化量演算部64aによって算出した確信度予測変化量を割って、着目未入力条件の入力効果値を算出する(入力効果値演算ステップ)。
【0077】
このように、入力項目選択部64は、確信度予測変化量演算部64aおよび入力効果値演算部64bによって、各未入力条件をそれぞれ着目未入力条件として、入力効果値を未入力条件毎に求め、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力条件を決定する。そして、入力項目選択部64は、ユーザコストが機械コストより小さいとき、質問入出力制御部51に、特徴量を取得すべき条件に対応する質問をユーザに提示させる。また、機械コストがユーザコストより小さいとき、特徴量演算部35に、必要な検査結果データを工程状態データベース26から取得させ、特徴量を算出させる。なお、ユーザコストと機械コストが等しいときは、いずれの経路で特徴量を求めてもよいが、ユーザ教育の観点から質問入出力制御部51から取得するようにしてもよい。
【0078】
ユーザプロファイル管理部65は、ユーザプロファイル管理処理を行う。具体的には、ユーザプロファイル管理部65は、ユーザプロファイル記録部27に記録されているユーザコストのデータの読み出し、書き込みを行う。また、ユーザプロファイル管理部65は、タイマー(図示せず)を備え、後述するユーザコスト更新モードでは、質問入出力制御部51が特徴量を取得すべき条件に対応する質問をユーザに提示した時点から、ユーザが回答を入力した時点までの時間を計測し、該計測した時間に応じてユーザコストを決定し、該決定したユーザコストを当該条件に対応付けて記録する。これにより、特徴量の入力を行うユーザの熟練度に合わせた質問を提示することができるため、人と機械の作業分担をユーザ毎に最適化できる。
【0079】
さらに、入力効果値演算部64bは、後述する教育モードでは、ユーザプロファイル記録部27から取得したユーザコストから所定値だけ減じた値をユーザコストとして用いる。この所定値(目標削減量)としては、例えば“(ユーザレベル目標−ユーザレベル)×入力項目毎の係数”が利用できる。ここで、ユーザレベルは、現在のユーザレベルであり、ユーザプロファイルから取得できる。ユーザレベル目標は、目標とすべきレベルであり、現在のユーザレベルよりも高いレベルである。入力項目毎の係数は、各入力項目で共通であるレベルの差分(ユーザレベル目標−ユーザレベル)を、各入力項目のユーザコストの目標削減量に変換するための係数であり、入力項目毎にあらかじめ入力効果値演算部64bに設定されている。これにより、ユーザコストが実際よりも小さくなり、実際のレベルより高いレベルの質問が提示されることになる。なお、上記所定値の求め方としては、入力項目毎にあらかじめ設定しておいた、ユーザレベルおよびユーザレベル目標を2変数とする関数あるいはテーブルに従って決定してもよい。
【0080】
なお、上記の推論処理、適合度算出処理、確信度算出処理、入力項目選択処理、およびユーザプロファイル管理処理の詳細については後述する。
【0081】
(因果ネットワーク)
次に、推定知識記録部23に記録されている要因推定知識情報としての因果ネットワークについて説明する。因果ネットワークは、各不良結果から該不良結果の要因(以降、不良要因と称する)に至る推論の過程をネットワーク構造の知識として示す情報である。因果ネットワークには、不良結果から不良要因に至る診断パスの途中に複数のノードが存在している。このノードにおいて診断パスの分岐が生じることによって、特定の不良結果から複数の不良要因に至る診断パスが形成されることになる。なお、因果ネットワークは、親のノードがたかだか1つであるツリー構造の知識として示す情報であってもよい。
【0082】
なお、各ノードは特定の現象を示しており、或るノードに対応する現象の要因が、該ノードの診断パスにおける下流側のノードに対応する現象である可能性が高い場合に、この2つのノード間の適合度が高いことになる。
【0083】
図3は、因果ネットワークの一例を模式的に表している。同図において、d1が不良結果を示しており、c1〜c4が不良要因を示しており、s1〜s5がノードに対応する現象を示している。同図に示す例では、d1の不良結果に対して、c1〜c4の不良要因が候補として想定されており、各不良要因に対応する診断パスがs1〜s5のノードの連鎖によって構成されている。この因果ネットワークの場合、図4に示すように5通りの診断パスが含まれている。
【0084】
ここで、例えばd1の不良結果に対して、直接c1〜c4の不良要因を接続するような知識構造とした場合、各不良要因に対する適合度を判定するための条件は極めて複雑なものとなる。これに対して、上記のようなネットワーク構造の知識構造とした場合、不良結果を引き起こす現象、各現象を引き起こす現象、および各現象を引き起こす不良要因の適合度を判定するための条件は、それぞれに関して見れば比較的単純なものとなる。よって、比較的単純な条件を検証していくことによって要因推定の推論処理を行うことが可能となり、熟練度の低いユーザであっても適切に要因を絞っていくことが可能となる。
【0085】
(プロダクションルールの生成)
次に、知識変換部33による、因果ネットワークの診断パスからプロダクションルールを生成する処理について説明する。プロダクションルールは、前記したように、要因推定の推論処理をコンピュータに行わせるのに適したデータ形式の情報である。知識変換部33は、推定知識記録部23に記録されている因果ネットワークの情報から対象となる診断パスの情報を読み出し、該診断パスに対応するプロダクションルールを生成する。
【0086】
プロダクションルールは、特定の診断パスにおいて、不良結果から不良要因に至る間の各ノード間の条件の情報と、これらの条件を全て満たした場合に真となる不良要因の情報とを含んだものである。したがって、各ノード間の条件が全て満たされたか否かという単純な判定を行うことによって、該当不良要因が真であるか否かを判定することが可能となり、コンピュータ処理に適合した情報となっている。
【0087】
図5(a)は、診断パスの一例を示している。同図に示す例では、d1の不良結果からs1〜s3の現象としてのノードをこの順で経由してc1の不良要因に至る診断パスとなっている。また、各ノード間の条件に対応する診断知識として、f1〜f4に関する条件に関する情報が設定されている。すなわち、d1の不良結果がs1の現象に由来するものであると推定するためには、f1=largeという条件を満たす必要があり、以降同様に、s1からs2への推定のための条件がf2=large、s2からs3への推定のための条件がf3=large、s3からc1への推定のための条件がf4=largeとなっている。
【0088】
以上のような診断パス情報に基づいて、知識変換部33は図5(b)に示すようなプロダクションルールを生成する。プロダクションルールは、不良結果から不良要因に至る診断パスに含まれる全てのノード間の条件をandで結合した条件を満たした場合に、該当不良要因が真である、という情報となる。図5(b)に示すプロダクションルールでは、f1=large、f2=large、f3=large、およびf4=largeの全ての条件を満たした場合に、c1が真である、という情報が示されている。
【0089】
なお、ノード間の条件として、andで結合された複数の条件が設定されている場合には、プロダクションルールは、このandで結合された複数の条件も含めて、不良結果から不良要因に至る診断パスに含まれる全てのノード間の条件をandで結合した条件を満たした場合に、該当不良要因が真である、という情報となる。
【0090】
図6(a)に示す例では、s1からs2への推定のための条件がf2=large and f5=largeとなっている。この場合のプロダクションルールは、図6(b)に示すように、f1=large、f2=large、f5=large、f3=large、およびf4=largeの全ての条件を満たした場合に、c1が真である、という情報となる。
【0091】
また、ノード間の条件として、orで結合された複数の条件が設定されている場合には、orで結合されたそれぞれの条件に対応したプロダクションルールが生成される。すなわち、各プロダクションルールは、不良結果から不良要因に至る診断パスに含まれる、orで結合された複数の条件が設定されているノード間以外の全てのノード間の条件、および、orで結合された条件のいずれか1つの条件をandで結合した条件を満たした場合に、該当不良要因が真である、という情報となる。また、orで結合された複数の条件の数だけプロダクションルールが生成されることになる。
【0092】
図7(a)に示す例では、s1からs2への推定のための条件がf2=large or f5=largeとなっている。この場合、図7(b)に示すように、f1=large、f2=large、f3=large、およびf4=largeの全ての条件を満たした場合に、c1が真である、というプロダクションルールと、f1=large、f5=large、f3=large、およびf4=largeの全ての条件を満たした場合に、c1が真である、というプロダクションルールとの2つが生成される。
【0093】
また、補足パスが存在する場合には、該補足パスに含まれる条件を、同一の不良要因に至る診断パスに対応するプロダクションルールに対してand結合したプロダクションルールが生成される。なお、診断パスのノードは、不良から要因にたどり着くための中間の現象を定義したものである。しかしながら、中間の現象ではなく、全体の傾向など直接要因に関係する現象が記述される知識が存在する。これが補足パスとして記述される。
【0094】
図8(a)に示す例では、補足パスとして、s4の現象からc1の不良要因に至る診断パスが存在し、この条件がf5=largeとなっている。この場合、図8(b)に示すように、f1=large、f2=large、f3=large、f4=large、およびf5=largeの全ての条件を満たした場合に、c1が真であるというプロダクションルールが生成される。
【0095】
(適合度の算出処理)
次に、適合度演算部62による適合度の算出処理について説明する。適合度とは、上記のプロダクションルールにおける、各ノード間に設定されている条件を満たす度合いを示している。この適合度は、0以上1以下の数字で表され、数が大きいほど条件を満たす度合いが高いものとする。
【0096】
ここで、条件が、完全に満たすか完全に満たさないかの2通りの選択肢しかない場合には、適合度は1または0の2通りとなる。これに対して、本実施形態では、ファジィ理論を利用することによって、適合度が0より大きく1より小さい値となるような条件に対する回答が許容されるようになっている。これにより、条件に対する回答があいまいとなるような場合にも、そのあいまいな状態が反映された推論結果を得ることが可能となる。よって、あいまいな回答を極端な回答に強制する必要がなくなるので、不適切な推論が行われることを防止することが可能となる。また、適合度の数値は、次のノードへの推論の確かさの度合いを示すことになるので、適合度の数値を推論の適否を判定する材料として利用することができる。
【0097】
具体的には、まず、該当条件に対する回答の候補となる言語値にはそれぞれメンバーシップ関数が設定される。そして、各言語値に対する適合度は、回答として入力された言語値に応じて、メンバーシップ関数を参照することによって算出される。詳しく説明すると、まず、回答として入力された言語値に対する適合度は1.0となる。そして、回答として入力された言語値以外の言語値に対する適合度は、該言語値に対応するメンバーシップ関数と、入力された言語値に対応するメンバーシップ関数とのminをとり、そのmax値を算出することによって得られるものとする。ここで、回答として入力された言語値に対応するメンバーシップ関数と、入力された言語値に対応するメンバーシップ関数とで交わりがない場合には、適合度を0.0とする。
【0098】
各条件に対する回答の候補となる言語値およびそれぞれのメンバーシップ関数に関する情報は、推定知識記録部23に記録される。そして、適合度演算部62は、推定知識記録部23に記録されているこれらの情報を読み出すことによって、適合度の算出を行う。また、適合度演算部62は、算出された適合度の情報を、該適合度に対応する条件の情報とともに、推論過程一時記憶部25に記録する。
【0099】
ここで、一例として、「〜は大きいか?」という条件が設定されており、これに対する回答として、「大きい(large)」「普通(mid)」「小さい(small)」の3通りが想定される場合における適合度の算出処理について説明する。図9(a)および図9(b)は、「大きい(large)」「普通(mid)」「小さい(small)」の3通りの回答に対するメンバーシップ関数の一例を示している。図9(a)に示す例の場合、回答が「大きい(large)」であると、largeとしての適合度は1.0、midとしての適合度は0.5、smallとしての適合度は0.0となる。また、図9(b)に示す例の場合、回答が「大きい(large)」であると、largeとしての適合度は1.0、midとしての適合度は0.7、smallとしての適合度は0.3となる。
【0100】
(確信度の算出処理)
次に、確信度演算部63による確信度の算出処理について説明する。確信度とは、各不良要因に対応して設けられる値であり、該不良要因が、推定対象としての不良結果の不良要因である可能性の高さを示す値である。すなわち、確信度とは、推論結果である不良要因に至る推論の確からしさを示す指標である。
【0101】
確信度は、次のようにして求められる。まず、推定対象としての不良結果から該当不良要因に至る診断パスに対応するプロダクションルールが抽出される。そして、抽出されたプロダクションルールに含まれる条件のうち、適合度が算出された条件が抽出され、これらのうちで最も小さい値となる適合度が確信度として設定される。なお、推定対象としての不良結果から該当不良要因に至る診断パスに対応するプロダクションルールが複数存在する場合には、それぞれのプロダクションルールに対して確信度が算出され、算出された確信度のうちで最も大きい確信度が、該当不良要因に対する確信度として設定される。
【0102】
なお、確信度演算部63は、推論過程一時記憶部25に記録されている適合度の情報および該適合度に対応する条件の情報を読み出すことによって、必要とされる適合度を取得し、確信度を算出する。また、算出された確信度は、対応する不良要因の情報とともに、推論過程一時記憶部25に記録される。
【0103】
例えば、図7(a)および図7(b)に示した例の場合、c1の不良要因に対する確信度は次のように求められる。まず、f1〜f5の全ての条件に対する適合度が抽出される。ここで、これらの適合度をg1〜g5とする。すると、c1の不良要因に対する確信度certainty factorは、
certainty factor(c1)=max(min(g1,g2,g3,g4),min(g1,g3,g4,g5))
によって求められる。
【0104】
なお、上記の例では、抽出されたプロダクションルールに含まれる条件の適合度のうちで最も小さい値となる適合度が確信度として設定されるようになっているが、これに限定されるものではなく、該プロダクションルールに含まれる適合度の集合を代表する値、例えば平均値などであってもよい。
【0105】
(確信度予測変化量の算出処理)
次に、確信度予測変化量演算部64aによる確信度予測変化量の算出処理について説明する。確信度予測変化量とは、各入力項目(すなわち、条件)に対応して設けられる値であり、該入力項目に対する特徴量が得られた場合に、各不良要因に対する確信度の変化量の総和を示す値である。すなわち、確信度予測変化量は次式で表される。
確信度予測変化量(s)=Σc|確信度予測値(s)−現在の確信度|。
ここで、Σcは不良要因についての総和を示している。確信度予測値とは、未入力項目から1つ選択された着目未入力項目(着目未入力条件)に特徴量が設定された状態の確信度である。
【0106】
具体的には、確信度予測変化量演算部64aは、まず、推論過程一時記憶部25に記録されている各不良要因に対する現在の確信度の情報を読み出すことによって、必要とされる確信度を取得する。図10は、推論過程一時記憶部25に記憶されている現在の確信度の具体例を示している。図示のように、確信度は、不良要因毎に格納されている。
【0107】
次に、確信度予測変化量演算部64aは、着目未入力項目に対してデータが得られたと仮定して、適合度演算部62にて適合度を算出させ、確信度演算部63にて確信度を算出させる。この確信度が上記の確信度予測値となる。そして、確信度予測変化量演算部64aは、上記の演算式に従って確信度予測変化量を算出する。これを、未入力項目毎に繰り返す。なお、算出された確信度予測変化量は、対応する入力項目の情報(具体的には入力項目の項目ID)とともに、推論過程一時記憶部25に記録される。
【0108】
(入力効果値の算出処理)
次に、入力効果値演算部64bによる入力効果値の算出処理について説明する。入力効果値とは、各入力項目(すなわち、条件)に対応して設けられる値であり、確信度予測変化量をその着目未入力項目に対応する特徴量を得るために要するコストで割った値である。そして、コストには、当該特徴量に対応するユーザコストと機械コストとの小さい方を用いる。すなわち、入力効果値は次式で表される。
入力効果値(s)=確信度予測変化量(s)/min(ユーザコスト(s),機械コスト(s))。
【0109】
具体的には、入力効果値演算部64bは、まず、推論過程一時記憶部25に記録されている各未入力項目に対する確信度予測変化量の情報を読み出す。また、入力効果値演算部64bは、ユーザが着目未入力項目に対応する特徴量を決定し、入力するのに要するコストであるユーザコストをユーザプロファイル記録部27から読み出すとともに、当該着目未入力項目に対応する特徴量を検査結果データに基づいて特徴量演算部35が算出するのに要するコストである機械コストを機械コスト記録部28から読み出す。
【0110】
次に、入力効果値演算部64bは、ユーザコストと機械コストを比較し、その小さい方によって、確信度予測変化量を割って、入力効果値を算出する。そして、入力効果値演算部64bは、入力効果値を未入力項目毎に求める。なお、算出された入力効果値は、対応する入力項目の情報(具体的には入力項目の項目ID)とともに、推論過程一時記憶部25に記録される。
【0111】
ここで、図11(a)(b)は、ユーザプロファイルの例を示すテーブルである。同図に示すように、ユーザプロファイルには、ユーザコストが入力項目に対応付けられて記録されている。なお、図11(a)(b)は、図4に示した診断パスに対応している。
【0112】
ユーザコストは、例えば、ユーザの作業時間[秒]、さらに具体的には、質問入出力制御部が未入力項目に対応する質問をユーザに提示した時点から、ユーザが回答を入力した時点までの時間[秒]として定義できる。ただし、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0113】
そして、本実施形態では、ユーザの能力の高さに応じてユーザコストが下がるものとする。すなわち、熟練者のユーザコストは小さく、初級者のユーザコストは大きい。また、ユーザレベルは、ユーザの能力の高さに応じてユーザレベルが上がるものとする。すなわち、熟練者のユーザレベルは大きく、初級者のユーザレベルは小さい。
【0114】
図11(b)は、ユーザコスト更新モードにおいて図11(a)からユーザコストが下がり(s1,s3)、ユーザプロファイルが更新された状態を示している。なお、図11(b)では、ユーザレベルも更新されている。
【0115】
また、図12(a)(b)は、機械コストの例を示すテーブルである。同図に示すように、機械コストは入力項目に対応付けられて記録されている。なお、図12(a)(b)は、図4に示した診断パスに対応している。
【0116】
機械コストは、例えば、特徴量演算部35の演算時間[秒]として定義できる。ただし、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、検査装置の使用にかかる費用を反映させてもよい。
【0117】
図12(a)は、特徴量演算部35の演算によって取得可能なものを“0”[秒]、取得不可能なものを“∞”[秒]のように、簡略に定義した場合の例である。これに対して、図12(b)は、詳細に定義した例である。
【0118】
なお、教育モードの場合、入力効果値は次式で表される。
入力効果値(s)=確信度予測変化量(s)/min(ユーザコスト(s)−目標削減量(s),機械コスト(s))。
目標削減量(s)=係数(s)×(ユーザレベル目標−ユーザレベル)。
ここで、上記の係数(s)は、各入力項目で共通であるレベルの差分(ユーザレベル目標−ユーザレベル)を、各入力項目のユーザコストの目標削減量に変換するための係数である。具体的には、係数(s)は、上記レベルの差分だけユーザのレベルが上がったときに、求めたい入力項目の回答時間が短縮されると予想される時間に相当する値が得られるように設定されている。係数(s)は、入力項目毎にあらかじめ入力効果値演算部64bに設定されている。なお、目標削減量(s)は、入力項目毎にあらかじめ設定しておいた、ユーザレベルおよびユーザレベル目標を2変数とする関数あるいはテーブルに従って決定してもよい。
【0119】
(入力項目選択処理)
次に、入力項目選択部64による入力項目選択処理について説明する。具体的には、入力項目選択部64は、推論過程一時記憶部25に記録されている各未入力項目に対する入力効果値の情報を読み出す。そして、入力効果値が最大の未入力項目を選択する。なお、入力効果値が最大の未入力項目だけではなく、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力項目を選択してもよい。
【0120】
そして、入力項目選択部64は、上記選択した未入力項目に対応するユーザコストが機械コストより小さいとき、質問入出力制御部51に当該未入力項目に対応する質問をユーザに提示させる。このとき、詳細には、入力項目選択部64は、上記選択した未入力項目の入力項目IDと、特徴量を質問入出力制御部51から取得すべき旨の指示とを推論処理部61へ送り、その後、推論処理部61の制御により、質問の提示および特徴量の取得が行われる。
【0121】
これに対して、入力項目選択部64は、上記選択した未入力項目に対応する機械コストがユーザコストより小さいとき、特徴量演算部35に当該未入力項目に対応する特徴量を演算させる。このとき、詳細には、入力項目選択部64は、上記選択した未入力項目の入力項目IDと、特徴量を特徴量演算部35から取得すべき旨の指示とを推論処理部61へ送り、その後、推論処理部61の制御により、特徴量の取得が行われる。
【0122】
以上より、図11(a)および図12(a)の場合、入力項目s1〜s5がすべて未入力であるとき、入力効果値演算部64bは、各入力項目のユーザコストと機械コストを比較して、入力項目s1〜s3にはユーザコストを使用し、入力項目s4〜s5には機械コストを使用する。そして、入力項目選択部64は、入力項目s1〜s3のいずれかの特徴量を取得する場合にはユーザから取得するように、入力項目s4〜s5のいずれかの特徴量を取得する場合には特徴量演算部35に演算させるように制御する。
【0123】
(要因推定処理の流れ)
次に、図13に示すフローチャートを参照しながら、要因推定処理の流れについて説明する。要因推定処理が開始されると、まずステップ1(以降、S1のように称する)において、入力表示制御部31によって表示部22に対して質問画面(図17、図18)が表示される。この質問画面における質問表示領域には、不良結果を入力する領域が設けられる。この不良結果を入力する領域に対して、ユーザによって不良結果が入力され、この入力情報が質問入出力制御部51によって受け付けられる(S2)。そして、不良結果情報が、推論処理部61によって推論過程一時記憶部25に記憶される。
【0124】
不良結果が入力されると、推論処理部61は、該当不良結果に対する因果ネットワークの情報を推定知識記録部23から抽出する(S3)。この際に、推論処理部61は、知識変換部33によってプロダクションルールに変換された因果ネットワークの情報を取得する。そして、推論部32は、抽出した因果ネットワークに基づいて推論処理を実行する(S4)。推論処理の終了後、要因出力制御部52が診断結果の画面(図17、図18)を表示部22に表示させる(S5)。その後、要因推定処理を終了する。
【0125】
ここで、工程管理装置10の推論処理には、3つのモード(基本モード、ユーザコスト更新モード、教育モード)がある。以下、この3つのモードを順に説明する。
【0126】
(1)基本モード
図14に示すフローチャートを参照しながら、基本モードにおける推論処理(S4)の流れについて説明する。
【0127】
推論処理が開始されると、まず、ユーザプロファイル管理部65がユーザプロファイル記録部27からユーザプロファイルを読み込む(Sa1)。また、推定知識記録部23から入力項目の一覧を読み込む(Sa2)。また、推論過程一時記憶部25に記憶されている入力項目値(特徴量)のデータをクリアする(Sa3)。
【0128】
次に、確信度予測変化量演算部64aが、未入力項目の確信度予測値を計算し、未入力項目の現在の確信度と確信度予測値とから確信度予測変化量を計算する(Sa4)。その後、入力効果値演算部64bが、未入力項目の確信度予測変化量をユーザコストおよび機械コストの小さい方で割って、各未入力項目の入力効果値を算出する(Sa5)。
【0129】
次に、入力項目選択部64が、入力効果値が最大の未入力項目を選択する(Sa6)。なお、このとき、最大の未入力項目だけではなく、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力項目を選択してもよい。
【0130】
そして、選択した未入力項目のユーザコストと機械コストとに基づいて、特徴量の取得先を決定する(Sa7)。具体的には、機械コストがユーザコストより小さいとき、特徴量の取得先として機械を選択し、Sa8へ進む。一方、ユーザコストが機械コストより小さいとき、特徴量の取得先としてユーザを選択し、Sa10へ進む。
【0131】
Sa7で特徴量の取得先として機械が選択された場合、特徴量演算部35が、特徴量の計算に必要なデータを工程状態データベース26から取得して(Sa8)、特徴量を計算する(Sa9)。
【0132】
一方、Sa7で特徴量の取得先としてユーザが選択された場合、質問入出力制御部51が、特徴量を取得するための質問文を質問データ記録部24から読み込み(Sa10)、該質問文をユーザに提示して(Sa11)、該質問文の回答として特徴量を取得する(Sa12)。
【0133】
次に、推論処理部61が、特徴量演算部35の計算結果またはユーザの回答結果を特徴量として、入力項目に対応付けて推論過程一時記憶部25に記憶する(Sa13)。その後、推論処理部61が、推論を実施し(Sa14)、推論結果を表示する(Sa15)。以上のSa4〜Sa15の処理を繰返し、未入力項目がなくなれば、推論処理を終了する(Sa15)。
【0134】
以上のように、基本モードでは、特徴量を取得するためのユーザコストおよび機械コストに基づいて、特徴量を取得する作業の人と機械との分担および未入力項目の処理順を最適化することができる。よって、ユーザの能力(知識やスキルなど)に応じた、効率的な診断を行うことが可能となる。
【0135】
(2)ユーザコスト更新モード
図15に示すフローチャートを参照しながら、ユーザコスト更新モードにおける推論処理(S4)の流れについて説明する。ユーザコスト更新モードの流れは、基本モードの流れ(図14)と比較して、Sb1が追加されている点のみが異なる。よって、相違点のみ説明する。
【0136】
Sb1は、Sa7において特徴量の取得先としてユーザが選択された場合に行われるステップであり、ユーザの回答結果と回答時間からユーザコストを更新し、ユーザプロファイルに記録する。この更新されたユーザコストは、次回の推論の際に使用される(図中の破線矢印)。
【0137】
ユーザの回答結果と回答時間からユーザコストを更新する方法としては、例えば、質問を提示してからユーザが回答を入力するまでの時間(回答時間)を測定し、回答時間がユーザコストの値より小さく、かつ、回答結果が適切であれば、回答時間を新たなユーザコストとする。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ユーザコストを更新するか否かを、ユーザの過去の回答履歴を考慮して判定してもよい。また、ユーザコストを更新する場合でも、回答時間をそのまま採用するのではなく、あらかじめ設定された規定値から選択してもよい。
【0138】
以上のように、ユーザコスト更新モードでは、特徴量をユーザが入力できたかどうか、入力にどのくらい時間がかかったかなどを観測することで、ユーザの能力を動的に認識し、ユーザコストを更新することができる。よって、経験を積むことで向上するユーザの能力に適切に対応することが可能となる。
【0139】
(3)教育モード
図16に示すフローチャートを参照しながら、教育モードにおける推論処理(S4)の流れについて説明する。教育モードの流れは、ユーザコスト更新モードの流れ(図15)と比較して、Sc1が追加されるとともに、Sa5の代わりにSc2を行う点のみが異なる。よって、相違点のみ説明する。
【0140】
Sc1は、推論処理の最初に行うステップであり、ユーザレベル目標を読み込む。ユーザレベル目標は、診断開始時等に入力部21を介してユーザが入力してもよいし、ユーザプロファイル記録部27等から読み込んでもよい。
【0141】
Sc2では、ユーザレベルおよびユーザレベル目標に基づいて決定される目標削減量だけユーザコストを減じたコストを用いて、入力効果値の算出を行う。これにより、ユーザコストが実際よりも小さく設定されるため、実際のレベルより高いレベルの質問が提示されることになる。
【0142】
以上のように、教育モードでは、作業効率だけでなく、ユーザの能力(知識やスキルなど)のレベルと、ユーザのあるべき能力レベルに対する作業経験による能力向上効果の観点を含めて、人と機械それぞれの作業分担、作業順を最適化することができる。よって、診断作業を通じたOJTを実現することが可能となる。
【0143】
(診断結果の表示例)
次に、図17および図18を参照しながら、診断結果の表示例について説明する。この診断画面には、質問表示領域と、診断結果表示領域とが設けられている。
【0144】
質問表示領域には、要因推定処理の過程においてユーザに対して提示された質問およびそれに対するユーザの回答の履歴が表示される。質問入出力制御部51は、推論過程一時記憶部25に記録されている履歴を読み出すことによって履歴の表示を行う。
【0145】
診断結果表示領域には、選択された不良要因に至る診断パスが表示される。この診断パスは、推論処理部61によって因果ネットワークから抽出され、抽出された診断パスは要因出力制御部52によって診断結果表示領域に表示される。
【0146】
また、この診断パス上には、各ノード間のパスに対応する適合度の数値情報が表示されるとともに、適合度の大きさに応じた線の太さで該当パスが表示される。なお、適合度の表示形態は上記の例に限定されるものではなく、適合度情報の表示およびパスの線の太さ表示のいずれか一方のみでもよく、その他、適合度をユーザが認識可能な形態であればどのような表示形態であってもよい。
【0147】
このように、特定の不良要因に対する質問回答履歴および診断パスの情報が表示されることによって、ユーザに対して要因推定結果の正当性を提示することが可能となる。
【0148】
なお、図17は、不良結果d1に関して、不良要因c1に対する診断結果例を示しており、図18は、「ブリッジ不良」という不良結果に関して、「部品の汚れ」という不良要因に対する診断結果例を示している。これらの図に示すように、診断パスに含まれる全ての入力項目の特徴量が得られていない状態であっても、診断結果が表示されてもよく、また、診断パスに含まれる全ての入力項目の特徴量が得られた状態で診断結果が表示されてもよい。入力項目の特徴量が得られるか否かは、各入力項目の入力効果値に依存する。
【0149】
(因果ネットワークの具体例)
次に、図19を参照しながら、因果ネットワークの具体例について説明する。同図に示す例では、不良結果としての「ブリッジ不良」についての因果ネットワークが示されている。この例において、「ブリッジ不良」に対して、「実装位置ずれ」、「リード曲がり」、「ペーストのフラックス活性度が低い」、「部品の酸化」、「部品の汚れ」、「ペーストの面積が大きい」、「ペーストの位置ずれ」、および「ヒーターの温度設定が高い」の8個の不良要因が候補となっている。そして、「ブリッジ不良」という不良結果から、上記8個の不良要因に至るまでの診断パスがネットワーク構造の知識として設定されている。
【0150】
図19に示す例において、「実装位置ずれ」、「リード曲がり」、および「ペーストのフラックス活性度が低い」の3つの不良要因に至る診断パスから得られるプロダクションルールは、
IF((リードとランドの接触がある)=Yes & (部品位置ずれ)=(大きい)) then (実装位置ずれ)
IF((リードとランドの接触がある)=Yes & (部品位置ずれ)=(普通)) then (リード曲がり)
IF((ペーストが無いランドがある)=Yes & (ランドに不濡れがある)= Yes & (ペーストのフラックスの活性度)=(低い)) then (ペーストのフラックス活性度が低い)
となる。
【0151】
また、図19に示す例において、「ペーストの面積が大きい」という不良要因に至る診断パスは2通り存在するので、これらから得られるプロダクションルールは次の2つ、すなわち、
IF((熱だれ性が規定値外である)=Yes & (ペーストの量)=(多い)) then (ペーストの面積が大きい)
IF((リードの肩までペーストがぬれ上がる現象がある)=Yes & (リフロー炉の温度)=(普通)) then (ペーストの面積が大きい)
となる。
【0152】
また、図19に示す例において、「ヒーターの温度設定が高い」という不良要因に至る診断パスは、補足パスも含んでいるので、これから得られるプロダクションルールは、
IF((リードの肩までペーストがぬれ上がる現象がある)=Yes & (リフロー炉の温度)=(高い) & (ヒーターの設定値)=(高い) & (基板全体でペーストがぬれ上がる現象がある)= Yes) then (ペーストの面積が大きい)
となる。
【0153】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0154】
例えば、上記実施形態では、生産ラインにおける不良結果から不良要因を推定する工程管理システムについて説明しているが、本発明は、「不良結果」および「不良要因」に限定されず、何らかの「結果」からその「要因」を推定する診断システムに広く適用できる。また、本発明は、製造工程の管理システムに限定されるものではなく、例えば、コンピュータシステムやネットワークシステム等の故障診断ツール、顧客クレームへの対応を支援するためのソフトウェア、定期点検を行う作業員を支援するためのシステム、カスタマイズ製品の販売を支援するためのツールなど、結果から要因の推定を行う種々の装置などに適用することが可能である。
【0155】
なお、本発明は、推論条件を保持する手段と、上記条件で推論するために必要な情報Aを生成する手段と、効率を考慮して、情報Aの収集先と収集順を決定する手段と、情報Aを外部装置(センサなど)から入手する手段と、情報Aをユーザから入手する手段と、ユーザの能力(スキル)レベルと、情報Aの収集可否と収集に要する時間を保持する手段と、ユーザの能力(スキル)レベルを保持する手段と、推論条件と情報Aから推論を実行する手段と、推論結果を表示する手段とを備えた推論システムとして構成されてもよい。
【0156】
また、本発明は、推論条件を保持する手段と、上記条件で推論するために必要な情報Aを生成する手段と、情報Aの収集先と収集順を効率を考慮して決定する手段と、情報Aを外部装置(センサなど)から入手する手段と、情報Aをユーザから入手する手段と、ユーザから収集する情報Aについて、ユーザからの収集の可否や収集に要する時間を保持する手段と、推論条件と情報Aから推論を実行する手段と、推論結果を表示する手段とを備えた推論システムとして構成されてもよい。
【0157】
さらに、上記推論システムは、情報Aをユーザから入手時に、ユーザから入手できたかどうかと、収集に要する時間とを得る手段と、ユーザの能力レベルを動的に更新する手段とを備えていてもよい。
【0158】
さらに、上記推論システムは、ユーザの育成のための取得能力目標を保持する手段と、前記取得能力目標の中から1つ以上の目標を目標Bとして選定する手段と、目標Bを取得すると同時に、推論の効率を考慮して、情報Aの収集先と収集順を決定する手段とを備えていてもよい。
【0159】
さらに、上記推論システムは、目標Bを取得するための教育用情報を提示してもよい。
【0160】
さらに、上記推論システムは、製造ラインの診断を行うものであってもよい。
【0161】
最後に、工程管理装置10の制御部30が備える各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0162】
すなわち、制御部30は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである制御部30の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記制御部30に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0163】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0164】
また、制御部30を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明に係る要因推定装置は、生産ラインにおける不良要因を推定する工程管理システムに好適であるが、これに限定されず、顧客クレーム対応処理を支援するシステム、定期点検を行う作業員を支援するシステム、カスタマイズ製品の販売を支援するシステムなど、要因の推定を行う種々の装置などに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の一実施形態に係る工程管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記工程管理装置を含む生産システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】因果ネットワークの一例を模式的に示す図である。
【図4】図3に示す因果ネットワークから得られる診断パスを示す図である。
【図5】(a)は、診断パスの一例を示す図であり、(b)は、(a)の診断パスによって生成されるプロダクションルールを示す図である。
【図6】(a)は、診断パスの他の例を示す図であり、(b)は、(a)の診断パスによって生成されるプロダクションルールを示す図である。
【図7】(a)は、診断パスのさらに他の例を示す図であり、(b)は、(a)の診断パスによって生成されるプロダクションルールを示す図である。
【図8】(a)は、診断パスのさらに他の例を示す図であり、(b)は、(a)の診断パスによって生成されるプロダクションルールを示す図である。
【図9】(a)および(b)は、「大きい(large)」「普通(mid)」「小さい(small)」の3通りの回答に対するメンバーシップ関数の一例を示す図である。
【図10】上記工程管理装置における推論過程一時記憶部に記憶されている現在の確信度の具体例を表形式で示す図である。
【図11】(a)(b)は、上記工程管理装置におけるユーザプロファイル記録部に記録されているユーザプロファイルの例を示す図である。
【図12】(a)(b)は、上記工程管理装置における機械コスト記録部に記録されている機械コストの例を示す図である。
【図13】要因推定処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】基本モードにおける推論処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】ユーザコスト更新モードにおける推論処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】教育モードにおける推論処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】不良要因に対する診断結果を表示する診断画面の例を示す表示画面図である。
【図18】上記診断画面の具体例を示す表示画面図である。
【図19】因果ネットワークの具体例を示す知識構造図である。
【符号の説明】
【0167】
10 工程管理装置(要因推定装置)
11 印刷装置
12 装着装置
13 装置
14 検査装置
14a 印刷検査装置
14b 装着検査装置
14c 検査装置
21 入力部
22 表示部
23 推定知識記録部
24 質問データ記録部
25 推論過程一時記憶部
26 工程状態データベース(検査結果記録部)
27 ユーザプロファイル記録部(ユーザコスト記録部)
28 機械コスト記録部
30 制御部
31 入力表示制御部
32 推論部
33 知識変換部
34 質問生成部
35 特徴量演算部(特徴量演算手段)
40 検査結果入力部(検査結果入力手段)
41 印刷結果入力部
42 装着結果入力部
43 半田付け結果入力部
44 製造装置履歴入力部
51 質問入出力制御部(入力制御手段)
52 要因出力制御部
61 推論処理部(推論処理手段)
62 適合度演算部(適合度演算手段)
63 確信度演算部(確信度演算手段)
64 入力項目選択部(条件選択手段)
64a 確信度予測変化量演算部(確信度予測変化量演算手段)
64b 入力効果値演算部(入力効果値演算手段)
65 ユーザプロファイル管理部(ユーザコスト管理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象のシステムにおいて発生した結果から要因を推定する要因推定装置であって、
上記システムにおいて発生し得る複数の結果のそれぞれに対して、要因の候補を1つ以上対応付けるとともに、各結果から該結果に対応する各要因に至る要因推定の診断パスを、条件分岐によるネットワーク構造の知識として示す要因推定知識情報を記録する推定知識記録部と、
上記推定知識記録部に記録されている上記要因推定知識情報に基づいて結果から要因を推定する要因推定処理を行う推論処理手段と、
要因に至る推論の確からしさを示す指標である確信度を要因毎に算出する確信度演算手段と、
上記推論処理手段によって要因推定処理が行われる過程において、上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量を、ユーザから取得する入力制御手段と、
上記推論処理手段によって要因推定処理が行われる過程において、上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量を、上記システムに関する検査から得られた検査結果データに基づいて算出する特徴量演算手段と、
ユーザが条件に対応する特徴量を決定し、上記入力制御手段を介して入力するのに要するコストであるユーザコストを当該条件に対応付けて記録するユーザコスト記録部と、
上記特徴量演算手段が条件に対応する特徴量を算出するのに要するコストである機械コストを当該条件に対応付けて記録する機械コスト記録部と、
上記入力制御手段および特徴量演算手段によって特徴量が取得も算出もされていない条件である未入力条件から1つ選択した着目未入力条件に特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各要因について求め、その和である確信度予測変化量を算出する確信度予測変化量演算手段と、
上記着目未入力条件に対応するユーザコストおよび機械コストを、上記ユーザコスト記録部および上記機械コスト記録部からそれぞれ取得し、該ユーザコストおよび該機械コストの小さい方で、上記確信度予測変化量演算手段によって算出した上記確信度予測変化量を割って、上記着目未入力条件の入力効果値を算出する入力効果値演算手段と、
上記確信度予測変化量演算手段および上記入力効果値演算手段によって、各未入力条件をそれぞれ着目未入力条件として、入力効果値を未入力条件毎に求め、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力条件を決定する条件選択手段とを備えることを特徴とする要因推定装置。
【請求項2】
上記入力制御手段によって取得された特徴量または上記特徴量演算手段によって算出された特徴量に基づいて、該特徴量が対応する条件を満たす度合いを示す適合度を算出する適合度演算手段を備え、
上記確信度演算手段は、上記診断パスに含まれる条件に対する適合度の集合を代表する値を確信度とするものであることを特徴とする請求項1に記載の要因推定装置。
【請求項3】
上記条件選択手段は、上記ユーザコストが上記機械コストより小さいとき、上記入力制御手段に、特徴量を取得すべき条件に対応する質問をユーザに提示させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の要因推定装置。
【請求項4】
上記入力制御手段が特徴量を取得すべき条件に対応する質問をユーザに提示した時点から、ユーザが回答を入力した時点までの時間を計測し、該計測した時間に応じてユーザコストを決定し、該決定したユーザコストを当該条件に対応付けて記録するユーザコスト管理手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の要因推定装置。
【請求項5】
上記入力効果値演算手段は、上記ユーザコスト記録部から取得したユーザコストから所定値だけ減じた値をユーザコストとして用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の要因推定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の要因推定装置がコンピュータによって実現され、当該コンピュータを上記の各手段として機能させるための要因推定プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の要因推定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項8】
診断対象のシステムにおいて発生した結果から要因を推定する要因推定装置における要因推定方法であって、
推定知識記録部に記録されている、上記システムにおいて発生し得る複数の結果のそれぞれに対して、要因の候補を1つ以上対応付けるとともに、各結果から該結果に対応する各要因に至る要因推定の診断パスを、条件分岐によるネットワーク構造の知識として示す要因推定知識情報に基づいて結果から要因を推定する要因推定処理を行う過程において、
要因に至る推論の確からしさを示す指標である確信度を要因毎に算出する確信度演算ステップと、
上記要因推定知識情報に含まれる条件に対応する特徴量が、ユーザから取得されておらず、かつ、上記システムに関する検査から得られた検査結果データに基づいて算出もされていない条件である未入力条件から、1つ選択した着目未入力条件に、特徴量が設定された状態の確信度である確信度予測値と現時点の確信度との差を各要因について求め、その和である確信度予測変化量を算出する確信度予測変化量演算ステップと、
ユーザが上記着目未入力条件に対応する特徴量を決定し、入力するのに要するコストであるユーザコストをユーザコスト記録部から取得するとともに、当該着目未入力条件に対応する特徴量を算出するのに要するコストである機械コストを機械コスト記録部から取得し、該ユーザコストおよび該機械コストの小さい方で、上記確信度予測変化量演算ステップにて算出した上記確信度予測変化量を割って、上記着目未入力条件の入力効果値を算出する入力効果値演算ステップと、
上記確信度予測変化量演算ステップおよび上記入力効果値演算ステップにて、各未入力条件をそれぞれ着目未入力条件として、入力効果値を未入力条件毎に求め、入力効果値が大きいものから1または複数の未入力条件を決定する条件選択ステップとを含むことを特徴とする要因推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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