説明

覆土材料

【課題】最終処分場の即日・中間・最終の各覆土材料として河川由来の用水泥を焼却した灰、用水泥焼却灰を用いる。河川由来または湖沼由来のものが好ましく、有害物質の含有もなく、粒径が細かいため、飛散防止に好都合であり、植栽用としても優れている。従来と比べて埋立地の安定化が更に促進できると共に、悪臭の発散、鳥獣害、蠅・蚊等の発生を抑え、廃棄物の飛散・流出を抑止すると共に、覆土材料として有機物を含まずそれ自身が廃棄物化しない覆土材料であり、用水泥の利用範囲の拡大ができる最終処分場の覆土材料を提供する。
【解決手段】最終処分場の覆土材料として、用水泥焼却灰を用い、この用水泥焼却灰により覆土を形成する。すなわち、最終処分場の覆土材料として廃棄物を覆う覆土材料に関し、用水泥焼却灰を用いる事を特徴とする最終処分場の覆土材料であり、より詳しくは最終処分場において、悪臭の発散、鳥獣害、蠅・蚊等の発生を抑え、廃棄物の飛散・流出を抑止すると共に、それ自身が廃棄物化しない覆土材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の最終処分場、特に、管理型廃棄物最終処分場において廃棄物を覆う覆土材料に関し、より詳しくは最終処分場において、悪臭の発散、鳥獣害、蠅・蚊等の発生を抑え、廃棄物の飛散・流出を抑止すると共に、それ自身が廃棄物化しない覆土材料に関する。
【背景技術】
【0002】
最終処分場は一般に、地表を適度な深さに掘り下げて凹面を形成させ、その底部から順に廃棄物を堆積して埋め立てている。このような最終処分場においては、廃棄物中に存在する未燃分や廃容器に付着した食物等に起因する鳥獣害や蠅・蚊の発生等の衛生上の問題があり、また廃棄物が飛散及び汚水流出して作業員や周辺環境に悪影響を及ぼす問題も残っている。このような公害問題を避けたい人々は、処分場新設を建設に反対したりして、困難化している。
【0003】
そこで、廃棄物の飛散防止のため、また悪臭の発散、鳥獣害、蠅・蚊等の発生防止のために、廃棄物の堆積量が一定量に達した場合や、日々の埋立て作業終了時に廃棄物堆積層の上に覆土層を設けており、この覆土層には、従来は一般的に山野等の造成で不要となった土等を用いている。これらからの土は一般に水分を含み、一定の重さと稠密性を有するので、覆土層としての土は廃棄物の飛散や悪臭の発散を一定度抑止するが、水分を含んだ土は延展性に劣り、廃棄物を満遍なく覆うには相当量を必要とするし、本質的に通気性が悪いために有機廃棄物の分解に時間がかかり、埋立て効率が低下している。
【0004】
これに対し、高温焼成木炭を覆土助剤として土に混合して活性化覆土となる埋立処分工法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは、高温焼成木炭が悪臭等の吸着と分解を促進させるが、高温焼成木炭が相当比率必要なことや事前に土と混合しておかなければならないなどのコスト的な問題もあるし、高温焼成木炭の嵩高さや混和物の延展性から土単独より廃棄物処分場の容積の利用効率を悪化させる。
【0005】
また、水性エマルジョン樹脂と水不溶性粒状物とを廃棄物に散布し、硬化させて廃棄物を覆う代替覆土材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これは、廃棄物に対し薄く均一かつ強固に被覆させることができるが、その特性ゆえに廃棄物中の悪臭は逃げ場がなく、かつ水性エマルジョン樹脂自体には悪臭の分解作用を有さないので、一時的に悪臭の発散を防止できても、この上に更に廃棄物を廃棄した際などに重機等により代替覆土材料の皮膜が破れれば、一挙に悪臭が噴出する可能性がある。
【0006】
また、不織布または織編物からなり、引裂強度が特定以上の覆土代替材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。これは、廃棄物処分場の容積をできるだけ確保でき、重機によっても容易に破れることなく、廃棄物を良好に覆うことが可能であるが、覆土代替材が軽いので、目串や重しで固定しても、風の侵入によりそれ自身及び廃棄物の飛散は避けられない。また、通気性が良いが臭気の吸着性は有さないので、悪臭の発散防止には何ら寄与しない。更に、この覆土代替材が微生物分解性を有さなければ、それ自身が廃棄物化してしまうし、たとえそれに微生物分解性を付与しておいても、廃棄物に対する微生物分解性の負荷が悪化する。
【0007】
また、構成単糸繊度、目付け及び吸水倍率を特定した覆土代替用材料が提案されている(例えば、特許文献4参照)。これは、上記覆土代替材より柔軟で廃棄物との密着性が良く、また良好な吸水性を利用してその表面に水を付与することにより簡便にして廃棄物の飛散を防止できるが、水を付与しても通気性の点では実質変わらず、また上記覆土代替材より脆弱なため鳥獣害抑止効果に劣り、加えてそれ自身の廃棄物化も避けられない。
【0008】
以上のように、水性エマルジョン樹脂等による被覆や、不織布等の有機布帛、高温焼成木炭などは覆土としての使用には高価であり、また悪臭の発散、鳥獣害、廃棄物の飛散の何れかも劣る。更に、覆土代替材料が有機性であればそれ自身の分解を含め廃棄物全体の分解が遅れて、処分場としての使用が終了しても通常の土地利用ができるまでの期間が25年以上と長くなり、埋立地有効利用の面でも問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−216440号公報
【特許文献2】特開2002−186928号公報
【特許文献3】特開2003−103230号公報
【特許文献4】特開2007−105688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記従来の問題点を解決し、悪臭の発散、鳥獣害、蠅・蚊等の発生を抑え、廃棄物の飛散・流出を抑止すると共に、覆土材料として有機物を含まずそれ自身が廃棄物化しない覆土材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、覆土材料として用水泥焼却灰を用いることにより本発明をするに至った。
すなわち、請求項に係わる最終処分場の覆土材料として廃棄物を覆う覆土材料に関し、用水泥焼却灰を用いた事を特徴とする最終処分場の覆土材料であり、より詳しくは最終処分場において、悪臭の発散、鳥獣害、蠅・蚊等の発生を抑え、廃棄物の飛散・流出を抑止すると共に、それ自身が廃棄物化しない覆土材料に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の覆土材料は、本質的に用水源由来の土質成分であり、用水泥に有機成分が含まれていたとしてもその燃焼残渣は実質的に土質成分と見なせるが、焼却によりサラサラの状態になるので廃棄物上での流動性・延展性を有し、造成排土よりも少量で被覆性に優れると共に覆土作業性が大幅に向上する。また、用水源由来の土泥成分には粘土質が多く、これを焼成することにより粘土質に多くの細孔が生じるが、この細孔は悪臭の吸着能に優れ、かつ覆土層に通気性と透水性をもたらすので、悪臭の発散を抑止することができる。更に、用水源に問題がなければ本発明の覆土材料は無害であり、また当然のことながら焼却により本発明の覆土材料には微生物分解性有機成分はなく、それ自身が廃棄物化しないと共に、廃棄物の微生物分解性の負荷を悪化させない秀逸な効果を有する。
【0013】
なお、本発明の覆土材料は本質的に土質成分であるので、サラサラゆえの覆土材料の飛散、延いては廃棄物の飛散は、覆土層表面に用水等または用水を含む用水泥を散布することで防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る廃棄物最終処分場における覆土材料を利用し、適用した一例を示す斜めから見た概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態を説明する。
【0016】
本発明に係る用水泥焼却灰の平均粒径は、10〜500μm(平均粒径50質量%)が好ましく、より好ましくは20〜400μmである。また粒度分布が他の廃棄物焼却灰より狭く、同条件で焼成した他の廃棄物焼却灰は、500μm(平均粒径50質量%)以上の範囲の粗粒が多く、また粒度分布が広い傾向が伺えた。平均粒径が細かく、分布が狭いことで、サラサラな覆土材料が得られ、廃棄物上での流動性・延展性を有し、造成排土よりも少量で被覆性に優れると共に覆土作業性が大幅に向上する。
【0017】
本発明の用水泥焼却灰は、焼却法や焼成条件で、ある程度粒径が制御可能である。例えば、用水泥の粒径等に関し、採取方法、採取季節等により平均粒径や粒度分布が変動し、例えば、雪解けの頃や大雨後の増水時等は粗粒分が多くなるので、細粒泥層のみ採取する方法もある。また例えば焼成前の粒径が大きい場合、温度を下げ、例えば350℃ぐらいでじっくり燃焼する。粒径が小さい場合、例えば、700℃以上に温度を上げ、一挙に燃焼するなど行い、目的の焼成後粒径の制御が可能である。また覆土する場合、他の廃棄物焼却灰より、粗粒が少なく密になり飛散防止が図れる。そのため、本発明は、そのまま用水泥焼却灰を使用できる。
【0018】
本発明に係る用水泥の焼却温度は、350〜1,200℃程度であるが、450〜1,200℃が好ましく、450〜600℃が好適である。300℃より低いと炉温制御や、共存有機物の完全燃焼が困難になるし、1,200℃程度以上になると、用水泥中の特に粘土質鉱物の多孔質性が悪化して好ましくない。
【0019】
本発明に係る用水泥焼却灰のBET比表面積が、10〜400m/gであることが好ましい。更に好ましくは15〜400m/gである。10m/g未満では、保水性、透水性、消臭性の改善効果が弱くなる。また、400m/gを超えると前記効果が飽和し、かつ焼成するための製造コストの上昇を招き好ましくない。乾燥時間の必要以上の短縮や乾燥温度上昇は品質上、コスト上良くない傾向がある。
【0020】
本発明に使用される用水泥としては湖沼または河川由来の用水泥が好ましい。より好ましくは河川由来の用水泥である。河川由来の用水泥は粒径が細かく、他の泥土、土壌より粒度分布がそろっており、焼却灰の粒径が本発明の効果を発現しやすい。他、土壌または海底砂は粒子径が大きく、粒度分布が広く好ましくない。
【0021】
図1は、本発明に係る覆土材料を使用した廃棄物最終処分場に覆土工法を適用した一例を示す横から見た面の概念図である。
【0022】
図1において、最終処分場であり、廃棄物を埋立てる埋立地と雨水流下を防止するダム、雨水排水設備、不透水性堰堤、遮水壁、浸出液・排ガス処理設備とにより本体が構成される。埋立地の底部は、複数の分岐管で構成され、複数の通水孔を有する浸出液排水管が敷設され、排水管の末端は、不透水性堰堤の下部を通って、排水ポンプを設置しているピットに接続しており、排水ポンプは浸出液処理施設に接続している。
【0023】
また埋立地は、複数の通気・通水孔を埋設し、排水とガス抜きが兼用した状態で埋設されており、浸出液・排ガス処理設備が作られている。
【0024】
次に本発明に係る覆土材料を使用した廃棄物最終処分場の覆土工法について説明する。埋立地に廃棄された廃棄物を水平に敷きならして即日覆土と交互に積み重ねるサンドイッチ方式、または廃棄物を積み上げ転圧してセル状にした後廃棄物層に即日覆土を施すセル方式とがあるが、今回はセル方式で説明する。
【0025】
埋立地の底部が透水層であった場合に、埋立地の底部に施される遮水工部に浸出液集排水管を埋設して、降雨による浸透水と地下からの湧水を、できるだけ速やかに埋立地系外に排出するようにされた埋立地内に、底部から順に廃棄物を投棄して、上述のセル状に形成した後、通気性と透水性に富む用水泥焼却灰による即日覆土を行う。
【0026】
本発明の覆土材料は、本質的に用水源由来の土質成分であり、用水泥に有機成分が含まれていたとしてもその燃焼残渣は実質的に土質成分と見なせるが、焼却によりサラサラの状態になるので廃棄物上での流動性・延展性を有し、造成排土よりも少量で被覆性に優れると共に覆土作業性が大幅に向上する。
【0027】
しかし、即日覆土及び中間覆土に通気性と透水性に富んだ用水泥焼却灰を使用すれば、用水泥焼却灰は炭化生成物の分類とされるため、通気性が良いので、排ガスは廃棄物層の表面あるいはガス抜き手段から容易に放出されて、廃棄物層内は好気性雰囲気に保たれて、廃棄物の分解が進んで安定化が促進される。また並行して、透水性が良いために、雨水の浸透水やごみからの浸出液の場外への排出も容易になる。
【0028】
その上、用水泥焼却灰は、用水泥を焼却することで、腐敗臭が低減でき、更に廃棄物から発生してくる腐敗臭を吸着し、臭気を低減できる。用水源由来の土泥成分には粘土質が多く、これを焼成することにより粘土質に多くの細孔が生じるが、この細孔は悪臭の吸着能に優れ、かつ覆土層に通気性と透水性をもたらすので、悪臭の発散を抑止することができる。夏場など特に臭気の低減が大きい。
【0029】
また用水泥では、植物が生育しやすく、最終覆土後に緑化等を改めて行う手間が省ける。
【0030】
そのため、埋立地の廃棄物埋立てが完了すれば、廃棄物層の表面全体に最終覆土を行った後、表面流出水排水溝及び植樹などの環境対策を施すが、この最終覆土に用水泥焼却灰は特徴である通気性及び透水性が良好なために、表層の土壌改良に資することができる。また用水源に問題がなければ本発明に係る覆土材料は無害であり、当然のことながら焼却により本発明に係る覆土材料には微生物分解性有機成分はなく、それ自身が廃棄物化しないと共に、廃棄物の微生物分解性の負荷を悪化させない秀逸な効果を有する。
【0031】
なお、本実施の形態では、セル方式で説明したが、本発明の廃棄物最終処分場の覆土工法はサンドイッチ方式にも適用でき、幅広く活用できる。
【実施例】
【0032】
乾留炉内において、還元雰囲気温度600℃の条件で燃焼し、用水泥から、用水泥焼却灰を作製した。平均粒径測定にはマイクロトラック社製MT3000を使い、得られた用水泥焼却灰の平均粒径は、120μm(平均粒径50質量%)のものが得られた。また粒度分布で見ると、20〜200μmの範囲が多いものが得られた。
【0033】
得られた用水泥焼却灰を、日本ベル社製Belsorp maxのBET比表面積計で比表面積を測定したところ、70m/gの比表面積が確認できた。
【0034】
同じ厚みの覆土層を使い、被覆層を形成後、従来の覆土すなわち建設発生土(山土、土壌など)と用水泥焼却灰の透水性を確認したところ、用水泥焼却灰の透水性が従来の覆土より速いことが確認された。これは透気性が優れていることを示している。また表面に如雨露で散水したが、本発明は表面の流水による浸蝕も従来の覆土より僅少であった。またこのサンプルを屋外に放置し、4週間を経てはじめと同様に表面と如雨露で散水したが、本発明は表層流れは、従来の覆土より僅少であった。
【0035】
またこれら得られた用水泥焼却灰を、廃棄物に覆土し、臭気強度を確認したところ、従来の覆土と比べ、同レベル(レベル1;やっと感知できるにおい)で比較したところ、本発明の覆土は25cm、従来の覆土では50cm以上必要であり、覆土層の厚みが少なくて済み、臭気の吸収が優れていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を覆う覆土材料に関し、最終処分場の覆土材料として、用水泥焼却灰を用いる事を特徴とする最終処分場の覆土材料。
【請求項2】
該用水泥焼却灰の粒子径が10〜500μm(平均粒径50質量%)である事を特徴とする請求項1記載の覆土材料。
【請求項3】
該用水泥焼却灰のBET比表面積が10〜400m/gである事を特徴とする請求項1記載の覆土材料。
【請求項4】
該用水泥を還元雰囲気下350℃以上1,200℃以下の温度で焼成した用水泥焼却灰を用いる事を特徴とする請求項1記載の覆土材料。
【請求項5】
該用水泥が、湖沼または河川由来によるものである事を特徴とする請求項1記載の覆土材料。

【図1】
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【公開番号】特開2012−50958(P2012−50958A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197723(P2010−197723)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】