覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置
【課題】打設コンクリートの締め固め作業を安定的にかつ効率よく行うことが可能な覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を提供する。
【解決手段】打設コンクリートに挿入された締固め用バイブレータは、打設コンクリート内で前進および後退を可能とする。よって、コンクリート充填作業の遅速に拘わらず、打設コンクリート内で適切な位置に締固め用バイブレータを移動でき、全ての部位での打設コンクリートに高密度な締め固め作業を施せる。すなわち、打設コンクリートの全ての部位で、打設コンクリートの充填後の所定時間内に締固め用バイブレータを適切な時間だけ作動させて締め固めできる。
【解決手段】打設コンクリートに挿入された締固め用バイブレータは、打設コンクリート内で前進および後退を可能とする。よって、コンクリート充填作業の遅速に拘わらず、打設コンクリート内で適切な位置に締固め用バイブレータを移動でき、全ての部位での打設コンクリートに高密度な締め固め作業を施せる。すなわち、打設コンクリートの全ての部位で、打設コンクリートの充填後の所定時間内に締固め用バイブレータを適切な時間だけ作動させて締め固めできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置、詳しくは覆工型枠(スライドセントル)を用いたトンネル内周壁のコンクリート覆工に際して使用される覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置としては、例えば特許文献1(特開2006−336258号公報)に記載されたものが知られている。
このものでは、トンネル内に設置した型枠と、トンネルの内周壁面(吹き付けコンクリート内周面)との間に設けたコンクリート打設室(打設空間)内に、この型枠の開口から進入させて複数のガイドを配設する。そして、これらの複数のガイドに沿ってコンクリート締固め用バイブレータをコンクリート打設室外から前向きに挿入してセットした後、コンクリート打設室内にコンクリートを充填する。この充填作業の進行に応じて、コンクリート締固め用バイブレータをコンクリート打設室内からコンクリート打設室外にコンクリート打設室内のガイドに沿って後向きに引き出す。そして、バイブレータの引き抜きが完了した後、コンクリート打設室内で打設コンクリート内に残ったガイドを型枠の開口まで退避させてその開口をガイドにより閉塞する。
【0003】
図10および図11にはこの装置を模式的に示している。これらの図では、セントル(型枠)101の天井部にあって、所定長さの棒状のバイブレータ102をパイプ103の先端に把持し、これを把持器104により所定ストロークずつ後方に向かって引き抜くものである。パイプ103は、そのバイブレータ102のセット時にセントル101外面に設けた複数の支持金具(ガイド)105に全長にわたって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−336258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置にあっては、コンクリートの充填前に挿入・セットしたバイブレータをコンクリート充填後は打設したコンクリートの中から専ら引き抜くことにより、打設コンクリートの締固めを行っていた。
すなわち、この従来のバイブレータ装置にあっては、バイブレータは型枠(セントル)の区画板に設けられた支持板に支持されており、単に、バイブレータをパイプに挿入してこのパイプの後端を後退させることで、打設されたコンクリートからバイブレータを引き出すものに過ぎなかった。
【0006】
この結果、バイブレータを、打設コンクリート内で前進させることはできず、打設コンクリートの適切な締め固めを行うことができなかった。すなわち、いったん後退させたバイブレータを前進させることができない構造であるため、打設コンクリートについて適切な締め固めができない部分を発生させる可能性があった。特に、コンクリート打設作業での中断または不連続性が発生した場合、コンクリートの充填よりもバイブレータの引き抜きが先行する場合の打設コンクリートの品質に対して問題が生じるおそれがあり、コンクリートの充填とバイブレータの引き抜き速度をマッチさせるための作業が煩雑化していた。また、パイプを支持する支持板(支持金具)については、打設コンクリートから下方に引き出す構造のため、当該部分に空隙を生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、打設コンクリート中にてバイブレータを前進・後退動させることにより、打設コンクリートの締め固め状態を安定化させる(高密度化)ことができることを知見し、この発明を完成させた。また、バイブレータをスライドセントルのアーチ天井部にて周方向に移動可能と構成することで、単一のバイブレータを周方向で複数の位置にて作動させることができることを可能とした。
【0008】
この発明は、打設コンクリートの締め固め作業を安定的にかつ効率よく行うことができる覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、半円筒形状であってアーチ状外面を有するスライドセントルが、トンネルに挿入されることにより、このトンネルの地山とこのスライドセントルのアーチ状外面との間に画成された打設空間に地山覆工用のコンクリートが打設されるコンクリート打設構造において、上記打設空間に打設された打設コンクリートの内部に挿入されてこの打設コンクリートに振動を付加することにより、この打設コンクリートを締め固める締固め用バイブレータと、この締固め用バイブレータを上記打設コンクリートに対して挿入・引き抜き可能としたバイブレータ進退手段とを備えた覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、トンネルの地山とスライドセントルの外周面との間の打設空間に打設された打設コンクリート内に挿入されたバイブレータは、この打設コンクリート内で前進、後退を行うことができる。したがって、コンクリートの充填作業の遅速に拘わらず、適切にバイブレータを前進後退動させることができ、全ての部位での打設コンクリートに対して高度の締め固め作業を行うことができる。すなわち、全ての部位で、打設コンクリートの充填後の所定時間内にバイブレータを作動させて締め固めを行うことができ、充填作業が遅延した場合はいったん後退させたバイブレータを前進させることにより、当該部位での締め固め作業を適切に行うこともできる。
なお、設置するバイブレータはスライドセントルの大きさにもよるが通常2本を平行に配置する。大型のセントルについては4本としてもよく、それらのバイブレータ間の間隔は打設コンクリートの容量などにより適宜設定する。
【0011】
バイブレータとしては、特殊バイブレータを用いる。例えば周波数変換器により高周波数での振動子の回転を可能とした「HBM400Z×LH」である。バイブレータの設置位置はアーチ天井部とすることができる。アーチ天井部の打設コンクリートの締め固め作業が作業者による場合は、苦渋作業となるからである。また、打設コンクリートにあっては、特に吹き上げ方式ではアーチ天井部の締め固めが重要である。側壁部の打設コンクリートの締め固めは作業者による作業にて行うことができる。
【0012】
バイブレータを挿入・引き抜き可能とするバイブレータ進退手段は、バイブレータを長尺のガイドパイプの先端に配置し、このガイドパイプをキャリッジに搭載して構成する。さらに、このキャリッジをケーブルにてケーブル巻き取り用のチルクライマ(商品名;巻き取り巻き上げ機)によりスライドセントルの軸線方向に沿って走行移動させることにより、バイブレータを同方向、すなわち打設コンクリート内に挿入し、また打設コンクリートから引き出すことができる。
このバイブレータ進退手段は、この他に、例えばシリンダのピストンロッドの先端に連結したリンクをバイブレータに連結することで構成することもできる。この場合、バイブレータの前後方向での移動ストロークを確保するためのピストンロッドのストロークを増幅するリンク機構を設けることなども考えられる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記バイブレータ進退手段は、上記スライドセントルの妻部であってそのアーチ天井部からスライドセントルの軸線方向に延びて突出するバイブレータガイドと、このバイブレータガイドに沿って往復動自在に支持され、その先端に上記締固め用バイブレータが取り付けられたガイドパイプと、このガイドパイプの後端部に取り付けられ、このガイドパイプを上記バイブレータガイドに沿って往復動させる駆動機構とを備えた請求項1に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明にあっては、バイブレータ進退手段を、バイブレータガイドと、このバイブレータガイドに支持されたガイドパイプと、このガイドパイプを往復動させる駆動機構とを含む構成とした。この結果、駆動機構によりガイドパイプを往復動させることで、締固め用バイブレータを上記打設コンクリート中で前進および後退させることができる。
駆動機構としては、ケーブルおよびチルクライマ(巻き取り巻き上げ機)、または、その他のシリンダ、電動モータなどのアクチュエータによるケーブル駆動またはリンク駆動、さらには、ラックピニオン機構などを使用することができる。要するに、駆動機構は締固め用バイブレータを連結したガイドパイプを往復直線運動させ得るものであれば良い。
【0015】
請求項3に記載の発明は、上記バイブレータガイドを上記アーチ天井部から上記軸線方向に向かって突出した状態でその外周に沿って所定角度範囲で移動可能とした請求項2に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置である。
バイブレータガイドの周方向への移動角度は例えば10〜30度とすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、バイブレータガイドをアーチ天井部から軸線方向に向かって突出した状態で、そのアーチ天井部の外周方向に沿って移動させることができる。この結果、バイブレータをアーチ天井部での外周方向で任意の角度位置に配設することができる。例えば1本のバイブレータでも外周方向での複数位置で打設コンクリートを締め固めることができる。これは省設備、省コストに資することとなる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、上記スライドセントルの妻部に設けられて、その外周方向に延びる横行用レールと、上記バイブレータガイドを支持するとともにこの横行用レールを走行する横行用ローラと、この横行用ローラを横行用レールに沿って走行させる横行用シリンダとを備えた請求項3に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置である。
【0018】
請求項4に記載の装置によれば、バイブレータガイドを支持する横行用ローラを横行用レール上で走行させることにより、バイブレータガイドはスライドセントルの妻部においてその外周方向に移動することができる。この場合、アーチ天井部での移動角度範囲は横行用レールの長さに基づいて任意とすることができる。なお、バイブレータはバイブレータガイドに沿って前進および後退することができることは言うまでもない。
上記打設空間における任意の部位で打設コンクリートを締め固めることができる。特に大型で大口径のトンネルの覆工において有効である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜4に記載の発明によれば、打設コンクリート内に挿入された締固め用バイブレータは、この打設コンクリート内で前進および後退を行うことができる。したがって、コンクリートの充填作業の遅速に拘わらず、打設コンクリート内で適切な位置に締固め用バイブレータを移動させることができ、全ての部位での打設コンクリートに対して高密度の締め固め作業を行うことができる。すなわち、打設コンクリートの全ての部位で、打設コンクリートの充填後の所定時間内に締固め用バイブレータを適切な時間だけ作動させて締め固めを行うことができる。例えば、コンクリート充填作業が遅延した場合はいったん後退させたバイブレータを前進させることにより、当該部位での締め固め作業を適切に行うこともできる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、駆動機構によりガイドパイプを往復動させることで、その先端に設けた締固め用バイブレータを上記打設コンクリート中で前進、後退させることができる。
【0021】
請求項3〜4に記載の発明によれば、バイブレータガイドをアーチ天井部の外周方向に沿って移動させることができる結果、締固め用バイブレータをアーチ天井部での外周方向で任意の角度位置に配設することができる。例えば1本のバイブレータでも外周方向での複数位置で打設コンクリートを締め固めることができる。すなわち、トンネルサイズによるアーチ天井部の広さについても少ない締め固め用バイブレータを用いて打設コンクリートに対して締め固めを行うことができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、バイブレータガイドはスライドセントルの妻部においてその外周方向に移動することができる。この場合、アーチ天井部での移動角度範囲は横行用レールの長さに基づいて任意とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の概略構成を説明するための斜視図である。
【図2】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の主要部を示す斜視図である。
【図3】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の主要部を説明するための模式図である。
【図4】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置のバイブレータの配置を示す模式図である。
【図5】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を示すその側面図である。
【図6】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を示す図6のB−B矢視図である。
【図7】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置のバイブレータガイド部を説明するための拡大図である。
【図8】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の横行ローラ部を示す斜視図である。
【図9】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の洗浄装置を示す模式図である。
【図10】従来の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を説明するための斜視図である。
【図11】従来の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の作用を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を図1〜図9を参照して具体的に説明する。
【実施例】
【0025】
図1はこの発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の概略構成を説明するための斜視図である。
この図に示すように、トンネルの地山に対してH型鋼支保工を介してコンクリートを所定厚さに吹き付けた後、この吹き付けコンクリート面に対してスライドセントル(半円筒形状の型枠)20を用いて所定の厚さ(覆工厚は30〜45cm)にコンクリートを打設する。この打設コンクリートに対して、特にトンネル天端部のコンクリートに対しては、二次覆工コンクリートの施工では天端吹き上げ方式によるコンクリートの打設が行われるため、バイブレータによるコンクリートの均一な締め固めが必要とされている。よって、スライドセントル20のアーチ状外周面の天端部(天井部)には1対の締固め用バイブレータ21,22が配置されている。
これらの締固め用バイブレータ21,22は、天井部において所定の間隔だけ離れて平行に水平に配置されており、それぞれ長尺のガイドパイプ23,24の先端に固定されている。各ガイドパイプ23.24の後端は、スライドセントル20の妻部(切羽側)から水平方向に突出して後述する駆動機構などに連結され、この駆動機構などにより、図中矢印で示すその軸方向(半円筒形状のスライドセントル20の軸線方向とも一致する)に前進および後退可能に構成されている。つまり、バイブレータ21,22は打設コンクリート中からの引き抜きのみならず、打設コンクリート中での前進が可能に構成されている。この場合、スライドセントル20の外周面(吹き付けコンクリート層との間の打設空間)には、これらのバイブレータ21,22およびガイドパイプ23,24を支持する部材などは配置されていない。バイブレータ21,22およびガイドパイプ23,24は打設コンクリート中に浮いた状態で、すなわち後述するバイブレータガイドに片持ち支持された状態で打設コンクリートの締め固めを行うこととなる。
【0026】
図2は、セントル20の妻面からその軸方向に水平に突出する平行な一対のバイブレータガイド25,26、および、これらのバイブレータガイド25,26をその上面から所定高さ位置に支持するトラス架台30を示す。
セントル20の天井部より少し低い高さ位置ではトラス架台30が所定長さだけ水平に突出しており、このトラス架台30にトラス架台30とほぼ同じ長さの1対のバイブレータガイド(レール)25,26が互いに所定間隔離れて平行になるよう所定高さ位置(地山との間の隙間に相当する高さ位置)で支持されている。なお、このトラス架台30は、いわゆるH型鋼などを組み付けたトラス構造による角柱体形状の架台であって、セントル20内の支持構造体(図示していない)により片持ち状に突出して支持されている。
【0027】
図3には、これらのバイブレータ21,22の前進後退を可能とするバイブレータ進退手段31を模式的に示している。すなわち、各バイブレータ21,22は1本の長尺なパイプであるガイドパイプ23,24の各先端に同軸的にそれぞれ固定されており、これらのガイドパイプ23,24はそれぞれ1対のキャリッジ32に搭載されている。各キャリッジ32は上記バイブレータガイド25,26にそれぞれ走行自在に保持されており、かつ各キャリッジ(キャリア)32はエンドレスのケーブル33を介してチルクライマ(チルコーポレーション社製の汎用型巻き取り機)34に連結されている。よって、各キャリッジ32は、チルクライマ34の運転稼働により、上記バイブレータガイド25,26にガイドされて、上記ガイドパイプ23の軸線方向に往復移動可能とされている。
詳しくは、キャリッジ32の長さ方向(ガイドパイプ23,24の軸方向と同一方向)の一端に係止されたケーブル33は、トラス架台30に配設された複数のガイドローラ35を介してチルクライマ34のケーブルの一端に連結されている。キャリッジ32の他端に係止されたケーブル34aは、同じくトラス架台30に配設された複数のガイドローラ35を介してその角度を変更してチルクライマ34のケーブルの他端に連結されている。したがって、キャリッジ32は、これらのガイドローラ35間に水平にまた垂直に張設されたケーブル33.34aにより水平方向(ガイドパイプ23,24の軸線方向)に沿って所定距離だけ往復移動可能に構成されていることとなる。キャリッジ32の移動距離(ストローク)はセントル20の軸線方向の長さに依存するが、この場合、トラス架台30の上面でガイドローラ35間に所定間隔離れて配設されたリミッタスイッチ36,36にキャリッジ32が当接することで調整されている。
なお、後述するように、バイブレータ21,22はウレタンヘッドを有して形成することにより打設コンクリート中での浮力を得る。また、ガイドパイプ23,24は、打設コンクリート中においても浮力を生じるとともに、曲げ防止のために、例えば直径54mm、厚さ8mmで、高強度素材(例えばS−45C)で形成されている。
【0028】
図4には、このバイブレータ21,22とアーチ形状のセントル20との垂直断面での配置を示している。2本のバイブレータ21,22はセントル20外周面の天井部でこれから所定高さ(高さは調整可能)だけ離間して地山(すなわち吹き付けコンクリート内周面)との間の打設空間に配置されている。また、これらのバイブレータ21,22はセントル20のアーチ状外周面の天井部にあってその外周方向に沿って(矢印方向)所定角度範囲だけ移動可能に配設されている。
【0029】
図5には、図3に示したバイブレータ進退手段31を具体的に示している。この図に示すように、覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を構成するトラス架台30は、鉄骨(H型鋼など)をトラス構造として細長い箱形に組み立てたものであって、その長さ方向の一端部が半円筒形状のスライドセントル20の内部に挿入されてその天井部の下方に図示していない支持構造体により固定されている。トラス架台30の長さ方向の他端部はセントル20の切羽側の妻面より所定の長さだけ水平にセントル20の軸線方向に沿って外方に向かって突出している。この結果、このトラス架台30は片持ち梁形状に設けられていることとなる。
トラス架台30は、平行な2本の上側レール41と、これらの下方に多数の垂直柱43などを介して固着された平行な2本の下側レール42とを有している。上側レール41の上面には前後方向(トラス架台の延びる方向)に所定間隔離間して配設された一対のガイドパイプ受け台44,45を介して上記バイブレータガイド(レール)25,26が設けられている。なお、バイブレータガイド25,26はトラス架台30の上面で所定間隔を有して横方向に一対並設されている。
トラス架台30の長さ方向、すなわちセントル20の軸線方向に沿って延びる所定長さのバイブレータガイド25,26には、その長さ方向において適宜の間隔で多数のベアリングブラケットが設けられ、これらのベアリングブラケットを介してこれらのガイドパイプ23,24がその長さ方向に沿ってスムーズに前進および後退が自在となるように支持されている。これらのベアリングブラケットは市販品を用い、ベアリングを保持するブラケット枠はトラス架台30の上面に固定されている。これらのガイドパイプ23,24の先端には締固め用の棒状のバイブレータ(上記特殊バイブレータ)21,22が固着されており、これらのバイブレータ21,22が硬化前の打設コンクリート中に挿入され、打設コンクリートを締め固める。所定長さで所定曲げ強度を有するガイドパイプ23,24の後端下面には上記キャリッジ32が固着されており、各キャリッジ32を介してガイドパイプ23,24がバイブレータガイド25,26に沿ってそれぞれ走行自在に支持されている。キャリッジ32の走行はキャリッジ32に連結されたケーブル33,34aによりなされ、ケーブル33,34aはトラス架台30に配設された多数のガイドローラ35を介して無端状に掛け渡されており、ケーブルの両端はチルクライマ34に巻回されている。チルクライマ34の回転駆動によりケーブル33,34aを介してキャリッジ32、すなわちこれと一体のガイドパイプ23,24は前進後退の往復動を行うこととなる。
【0030】
ガイドパイプ23,24の先端部の内部にはそれぞれバイブレータモータが収納され、これらのバイブレータモータはキャプタイヤケーブル50により電源などに接続されている。キャプタイヤケーブル50はその前端部がガイドパイプ23,24の内部に挿入され、その後端部がケーブル送り装置51に連結されている。ケーブル送り装置51はトラス架台30に取り付けられている。
なお、セントル20の妻側でセントル20のアーチ状外面と吹き付けコンクリート層との間の隙間であるコンクリート打設空間(覆工コンクリート部)に対して上記バイブレータ21,22が挿入・引き出し可能とされている。また、バイブレータ21,22等の駆動制御を行うための制御盤53はトラス架台30の下側レール42などに固定されている。
【0031】
図6には、トラス架台30の矩形のフレームで構成された突出端部の構造を示す。この突出端にあっては、2本のバイブレータ21,22に対してこれをそれぞれ前進後退させるための上記2本のケーブル33,33は、それぞれガイドローラ35,35を介してやや斜めに上下方向に延びている。
【0032】
図7には、セントル20の妻部での上記打設空間へのバイブレータ21,22の挿入部の構造を示している。この図に示すように、バイブレータ21,22の先端部分では公知の振動体60に弾頭状のウレタンゴムのヘッド61が植え込みボルト62で固定されており、振動体60は防振ゴム継ぎ手を介して上記キャプタイヤケーブル50の先端に接続されている。すなわち、ここで使用する特殊バイブレータ21,22は周波数200/240Hzの高周波バイブレータである。このバイブレータ21,22は、セントル20天端部の妻部に設けられたシャッターである妻板63を開放して打設空間に挿入される。したがって、バイブレータ21,22の引き抜き後は、このシャッター63が閉じられる。なお、図中に示すようにこの打設空間には複数の鉄筋64が敷設されているが、バイブレータ21,22はこれら鉄筋64と非干渉の高さに挿入される。なお、この高さは調整可能である。
【0033】
図8には、上述したガイドパイプ受け台44,45を示している。これらのガイドパイプ受け台44,45は、トラス架台30の上レール41上において横方向に延びて設置された上側に凸に湾曲した2本の横行レール70と、これら2本の横行レール70に跨って搭載されて走行自在とされた横行ローラ体71とを備えている。また、この横行ローラ体71の上面には、上記バイブレータガイド25,26を所定高さ位置まで立ち上げるためのアップダウン機構27−1がそれぞれ設けられている。すなわち、アップダウン機構27−1は、下端が横行ローラ体71に固着され、上端がバイブレータガイド25,26に固着された垂直な支柱を、断面がコの字形状の鋼材であるアップダウンインナー27とこれが挿入される同じ形状のアップダウンアウター28とで構成してある。上側のアップダウンインナー27の高さを、これらを上下に連結するアップダウンアジャストボルト27−2のねじ込み量に応じて調整する構成である。また、横行レール70の下面とトラス架台30の上面に固着された部材との間には敷駒(鋼材製のスペーサ)29が介在されており、この敷駒29の着脱によっても上記バイブレータガイド25,26の高さを調整可能とされている。
なお、これらのバイブレータガイド25,26には、上述のように、ガイドパイプ23,24がそれぞれ走行自在に支持されている。
横行ローラ体71は下部に回転自在の複数のローラ72を有し、横行用モートルシリンダ73により走行駆動される。このシリンダ73のピストンロッド73aの伸縮により上記横行レール70に沿って所定距離内で走行する。この場合、トラス架台30での前後方向に離間してパイプ受け台44,45が設けられているが、これらの受け台44,45での各横行シリンダ73の駆動は同期して行われることにより、ガイドパイプ23,24、すなわちバイブレータ21,22がセントル20の天端でその周方向に所定角度範囲で移動することとなる。
【0034】
図9には、妻板シャッタ部に近接して設けた洗浄装置80が開示されている。この洗浄装置80は、円柱形状のバイブレータ21,22およびガイドパイプ23,24外面に付着したコンクリートを洗浄するものである。すなわち、セントル20の切羽側の妻板に取り付けられたシャッタ81は挿入口を開閉自在に上下動するもので、バイブレータがこの挿入口より抜き取られると、シャッタ81が上昇して挿入口を閉止する。洗浄装置80の洗浄用ハケ82は円還状であって前後方向に所定間隔離れて一対設けられ、これらのハケ82の間に洗浄水を流す円還状のノズル83が配設されている。円柱状のバイブレータ21,22およびガイドパイプ23,24はこのハケ82の中心孔を通って引き抜かれる際、付着コンクリートはハケ(所定の曲げ強度を有するブラシ)82により物理的に剥離され洗浄水により流されることで洗浄されることとなる。なお、ノズル83にはボールバルブ84を介して洗浄水が供給源より供給されている。
【0035】
以上の構成に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置にあっては、トンネル地山に対してコンクリートを吹き付け、鉄筋を組み立てた後、スライドセントル20がトンネル内にセットされる。このとき、このスライドセントル20には側壁部開口と天端部の吹き上げ口が形成されており、さらにこのスライドセントル20の切羽側の妻部からはトラス架台30が水平に突出してセットされ、このトラス架台30には、覆工コンクリート締め固め用バイブレータ装置が装着されている。このセントル20のセットの結果、2個のバイブレータ21,22はセントル天端部で打設空間に片持ち状に挿入、支持されている。バイブレータ21,22は最大に突出し空間内で坑口側のセントル20の妻部に配置されている。このようにして1対のバイブレータ21,22がセットされる。
次に、覆工コンクリートの打設が行われる。この打設は覆工コンクリートの側壁部からアーチ部へと順番に打設される。このとき、側壁開口を介して手動のバイブレータを使用して作業員による締め固めが行われる。そして、天井部では吹き上げ口よりコンクリートの吹き上げによる打設空間への充填が行われる。このとき、バイブレータ21,22は起動スイッチがonとされ、所定の高周波振動を打設コンクリートに付加することとなり、打設コンクリートの締め固めが天井部でも行われる。
バイブレータ21,22の稼働とともに、打設コンクリートがこの打設空間で切羽側にもさらに充填されると、バイブレータ21,22は上記進退手段31、すなわちチルクライマ34を駆動してキャリッジ32を切羽側に引き出す。その結果、バイブレータ21,22は振動を与えながら打設コンクリート中を所定速度で後退して引き出されることとなる。このとき、2本のバイブレータ21,22は周方向で所定角度開いており、かつ、同時に引き抜きが行われる。コンクリートの再注入、再打設は上記打設空間を埋めるまで行われる。
最後に妻部までコンクリートが打設され、バイブレータ21,22による締め固めが終了すると、バイブレータ21,22は上記チルクライマ34により妻口の挿入口から引き抜かれることなり、シャッタ81が閉じられて、その後コンクリートの養生が行われる。なお、付着コンクリートの洗浄は引き抜きと同時に並行して行われる。これらの結果、天井部であっても、打設コンクリートを均一に充分に締め固めることができる。また、上記作業において、打設コンクリートの注入、充填作業と同期してバイブレータ21,22の引き抜きを行うが、もし充填が不十分とされて再注入がなされる場合は、チルクライマ34を逆転駆動させてバイブレータ21,22を前進させることにより、再度の締め固めを行うことができる。さらに、一端引き抜いたバイブレータ21,22を角度を変更して打設コンクリートの他の部位に対して前進挿入させることもできる。少ないバイブレータ21,22を使用して複数角度位置での締め固め、すなわち広大な天井部での打設コンクリートに対しても均一な締め固めを行うことができる。設備の簡素化により省コストを達成できる。また、当然にも人的作業による場合に比較して作業時間の短縮を図ることができる。
【0036】
このように、この実施例にあっては、半円筒形状であってアーチ状外面を有するスライドセントルが、トンネルに挿入されることにより、このトンネルの地山とこのスライドセントルのアーチ状外面との間に画成された打設空間に地山覆工用のコンクリートが打設されるコンクリート打設構造において適用される。
そして、この打設空間に打設された打設コンクリートの内部に挿入されてこの打設コンクリートに振動を付加することにより、この打設コンクリートを締め固める締固め用バイブレータを備えている。
さらに、この締固め用バイブレータを上記打設コンクリートに対して挿入・引き抜き可能としたバイブレータ進退手段を有し、このバイブレータ進退手段は、上記スライドセントルの妻部であってそのアーチ天井部からスライドセントルの軸線方向に延びて突出するバイブレータガイドと、このバイブレータガイドに沿って往復動自在に支持され、その先端に上記締固め用バイブレータが取り付けられたガイドパイプと、このガイドパイプの後端部に取り付けられ、このガイドパイプを上記バイブレータガイドに沿って往復動させる駆動機構とを備えている。
さらに、この装置にあっては、上記バイブレータガイドを上記アーチ天井部の外周に沿って所定角度範囲で移動可能とした。すなわち、上記スライドセントルの妻部に取り付けられて、その外周方向に延びる横行用レールと、上記バイブレータガイドを支持するとともにこの横行用レールを走行する横行用ローラと、この横行用ローラを横行用レールに沿って走行させる横行用シリンダとを備えている。
また、この装置では、覆工が終了して、坑内を坑口に向けてスライドセントルを移動させ、坑外で解体したい場合、スライドセントルは、脱型ダウン状態で移動可能であるが、振動体を含むバイブレータ装置は、アップダウン機構により既覆工面よりダウン操作により全体をダウンさせ、既覆工区間を通過することもできる。
さらには、急激に地山状況が悪くなり、覆工巻厚が通常より大きく設計変更された場合、鉄筋の上端(天端)を往復させたい場合は、敷駒とアップダウン機構によりアップさせることで、鉄筋の下端を往復させるだけでなく、希望の高さにバイブレータを挿入することができる。
そして、この発明にあっては、上記実施例の他に態様を変更することも含まれる。この場合、バイブレータを前進、後退させるものであれば、どのような構成における装置も本発明に含まれることとなる。
【符号の説明】
【0037】
20 スライドセントル、
21,22 バイブレータ、
23,24 ガイドパイプ、
25,26 バイブレータガイド、
30 トラス架台。
【技術分野】
【0001】
この発明は覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置、詳しくは覆工型枠(スライドセントル)を用いたトンネル内周壁のコンクリート覆工に際して使用される覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置としては、例えば特許文献1(特開2006−336258号公報)に記載されたものが知られている。
このものでは、トンネル内に設置した型枠と、トンネルの内周壁面(吹き付けコンクリート内周面)との間に設けたコンクリート打設室(打設空間)内に、この型枠の開口から進入させて複数のガイドを配設する。そして、これらの複数のガイドに沿ってコンクリート締固め用バイブレータをコンクリート打設室外から前向きに挿入してセットした後、コンクリート打設室内にコンクリートを充填する。この充填作業の進行に応じて、コンクリート締固め用バイブレータをコンクリート打設室内からコンクリート打設室外にコンクリート打設室内のガイドに沿って後向きに引き出す。そして、バイブレータの引き抜きが完了した後、コンクリート打設室内で打設コンクリート内に残ったガイドを型枠の開口まで退避させてその開口をガイドにより閉塞する。
【0003】
図10および図11にはこの装置を模式的に示している。これらの図では、セントル(型枠)101の天井部にあって、所定長さの棒状のバイブレータ102をパイプ103の先端に把持し、これを把持器104により所定ストロークずつ後方に向かって引き抜くものである。パイプ103は、そのバイブレータ102のセット時にセントル101外面に設けた複数の支持金具(ガイド)105に全長にわたって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−336258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置にあっては、コンクリートの充填前に挿入・セットしたバイブレータをコンクリート充填後は打設したコンクリートの中から専ら引き抜くことにより、打設コンクリートの締固めを行っていた。
すなわち、この従来のバイブレータ装置にあっては、バイブレータは型枠(セントル)の区画板に設けられた支持板に支持されており、単に、バイブレータをパイプに挿入してこのパイプの後端を後退させることで、打設されたコンクリートからバイブレータを引き出すものに過ぎなかった。
【0006】
この結果、バイブレータを、打設コンクリート内で前進させることはできず、打設コンクリートの適切な締め固めを行うことができなかった。すなわち、いったん後退させたバイブレータを前進させることができない構造であるため、打設コンクリートについて適切な締め固めができない部分を発生させる可能性があった。特に、コンクリート打設作業での中断または不連続性が発生した場合、コンクリートの充填よりもバイブレータの引き抜きが先行する場合の打設コンクリートの品質に対して問題が生じるおそれがあり、コンクリートの充填とバイブレータの引き抜き速度をマッチさせるための作業が煩雑化していた。また、パイプを支持する支持板(支持金具)については、打設コンクリートから下方に引き出す構造のため、当該部分に空隙を生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、打設コンクリート中にてバイブレータを前進・後退動させることにより、打設コンクリートの締め固め状態を安定化させる(高密度化)ことができることを知見し、この発明を完成させた。また、バイブレータをスライドセントルのアーチ天井部にて周方向に移動可能と構成することで、単一のバイブレータを周方向で複数の位置にて作動させることができることを可能とした。
【0008】
この発明は、打設コンクリートの締め固め作業を安定的にかつ効率よく行うことができる覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、半円筒形状であってアーチ状外面を有するスライドセントルが、トンネルに挿入されることにより、このトンネルの地山とこのスライドセントルのアーチ状外面との間に画成された打設空間に地山覆工用のコンクリートが打設されるコンクリート打設構造において、上記打設空間に打設された打設コンクリートの内部に挿入されてこの打設コンクリートに振動を付加することにより、この打設コンクリートを締め固める締固め用バイブレータと、この締固め用バイブレータを上記打設コンクリートに対して挿入・引き抜き可能としたバイブレータ進退手段とを備えた覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、トンネルの地山とスライドセントルの外周面との間の打設空間に打設された打設コンクリート内に挿入されたバイブレータは、この打設コンクリート内で前進、後退を行うことができる。したがって、コンクリートの充填作業の遅速に拘わらず、適切にバイブレータを前進後退動させることができ、全ての部位での打設コンクリートに対して高度の締め固め作業を行うことができる。すなわち、全ての部位で、打設コンクリートの充填後の所定時間内にバイブレータを作動させて締め固めを行うことができ、充填作業が遅延した場合はいったん後退させたバイブレータを前進させることにより、当該部位での締め固め作業を適切に行うこともできる。
なお、設置するバイブレータはスライドセントルの大きさにもよるが通常2本を平行に配置する。大型のセントルについては4本としてもよく、それらのバイブレータ間の間隔は打設コンクリートの容量などにより適宜設定する。
【0011】
バイブレータとしては、特殊バイブレータを用いる。例えば周波数変換器により高周波数での振動子の回転を可能とした「HBM400Z×LH」である。バイブレータの設置位置はアーチ天井部とすることができる。アーチ天井部の打設コンクリートの締め固め作業が作業者による場合は、苦渋作業となるからである。また、打設コンクリートにあっては、特に吹き上げ方式ではアーチ天井部の締め固めが重要である。側壁部の打設コンクリートの締め固めは作業者による作業にて行うことができる。
【0012】
バイブレータを挿入・引き抜き可能とするバイブレータ進退手段は、バイブレータを長尺のガイドパイプの先端に配置し、このガイドパイプをキャリッジに搭載して構成する。さらに、このキャリッジをケーブルにてケーブル巻き取り用のチルクライマ(商品名;巻き取り巻き上げ機)によりスライドセントルの軸線方向に沿って走行移動させることにより、バイブレータを同方向、すなわち打設コンクリート内に挿入し、また打設コンクリートから引き出すことができる。
このバイブレータ進退手段は、この他に、例えばシリンダのピストンロッドの先端に連結したリンクをバイブレータに連結することで構成することもできる。この場合、バイブレータの前後方向での移動ストロークを確保するためのピストンロッドのストロークを増幅するリンク機構を設けることなども考えられる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記バイブレータ進退手段は、上記スライドセントルの妻部であってそのアーチ天井部からスライドセントルの軸線方向に延びて突出するバイブレータガイドと、このバイブレータガイドに沿って往復動自在に支持され、その先端に上記締固め用バイブレータが取り付けられたガイドパイプと、このガイドパイプの後端部に取り付けられ、このガイドパイプを上記バイブレータガイドに沿って往復動させる駆動機構とを備えた請求項1に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明にあっては、バイブレータ進退手段を、バイブレータガイドと、このバイブレータガイドに支持されたガイドパイプと、このガイドパイプを往復動させる駆動機構とを含む構成とした。この結果、駆動機構によりガイドパイプを往復動させることで、締固め用バイブレータを上記打設コンクリート中で前進および後退させることができる。
駆動機構としては、ケーブルおよびチルクライマ(巻き取り巻き上げ機)、または、その他のシリンダ、電動モータなどのアクチュエータによるケーブル駆動またはリンク駆動、さらには、ラックピニオン機構などを使用することができる。要するに、駆動機構は締固め用バイブレータを連結したガイドパイプを往復直線運動させ得るものであれば良い。
【0015】
請求項3に記載の発明は、上記バイブレータガイドを上記アーチ天井部から上記軸線方向に向かって突出した状態でその外周に沿って所定角度範囲で移動可能とした請求項2に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置である。
バイブレータガイドの周方向への移動角度は例えば10〜30度とすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、バイブレータガイドをアーチ天井部から軸線方向に向かって突出した状態で、そのアーチ天井部の外周方向に沿って移動させることができる。この結果、バイブレータをアーチ天井部での外周方向で任意の角度位置に配設することができる。例えば1本のバイブレータでも外周方向での複数位置で打設コンクリートを締め固めることができる。これは省設備、省コストに資することとなる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、上記スライドセントルの妻部に設けられて、その外周方向に延びる横行用レールと、上記バイブレータガイドを支持するとともにこの横行用レールを走行する横行用ローラと、この横行用ローラを横行用レールに沿って走行させる横行用シリンダとを備えた請求項3に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置である。
【0018】
請求項4に記載の装置によれば、バイブレータガイドを支持する横行用ローラを横行用レール上で走行させることにより、バイブレータガイドはスライドセントルの妻部においてその外周方向に移動することができる。この場合、アーチ天井部での移動角度範囲は横行用レールの長さに基づいて任意とすることができる。なお、バイブレータはバイブレータガイドに沿って前進および後退することができることは言うまでもない。
上記打設空間における任意の部位で打設コンクリートを締め固めることができる。特に大型で大口径のトンネルの覆工において有効である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜4に記載の発明によれば、打設コンクリート内に挿入された締固め用バイブレータは、この打設コンクリート内で前進および後退を行うことができる。したがって、コンクリートの充填作業の遅速に拘わらず、打設コンクリート内で適切な位置に締固め用バイブレータを移動させることができ、全ての部位での打設コンクリートに対して高密度の締め固め作業を行うことができる。すなわち、打設コンクリートの全ての部位で、打設コンクリートの充填後の所定時間内に締固め用バイブレータを適切な時間だけ作動させて締め固めを行うことができる。例えば、コンクリート充填作業が遅延した場合はいったん後退させたバイブレータを前進させることにより、当該部位での締め固め作業を適切に行うこともできる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、駆動機構によりガイドパイプを往復動させることで、その先端に設けた締固め用バイブレータを上記打設コンクリート中で前進、後退させることができる。
【0021】
請求項3〜4に記載の発明によれば、バイブレータガイドをアーチ天井部の外周方向に沿って移動させることができる結果、締固め用バイブレータをアーチ天井部での外周方向で任意の角度位置に配設することができる。例えば1本のバイブレータでも外周方向での複数位置で打設コンクリートを締め固めることができる。すなわち、トンネルサイズによるアーチ天井部の広さについても少ない締め固め用バイブレータを用いて打設コンクリートに対して締め固めを行うことができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、バイブレータガイドはスライドセントルの妻部においてその外周方向に移動することができる。この場合、アーチ天井部での移動角度範囲は横行用レールの長さに基づいて任意とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の概略構成を説明するための斜視図である。
【図2】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の主要部を示す斜視図である。
【図3】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の主要部を説明するための模式図である。
【図4】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置のバイブレータの配置を示す模式図である。
【図5】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を示すその側面図である。
【図6】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を示す図6のB−B矢視図である。
【図7】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置のバイブレータガイド部を説明するための拡大図である。
【図8】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の横行ローラ部を示す斜視図である。
【図9】この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の洗浄装置を示す模式図である。
【図10】従来の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を説明するための斜視図である。
【図11】従来の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の作用を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を図1〜図9を参照して具体的に説明する。
【実施例】
【0025】
図1はこの発明の一実施例に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置の概略構成を説明するための斜視図である。
この図に示すように、トンネルの地山に対してH型鋼支保工を介してコンクリートを所定厚さに吹き付けた後、この吹き付けコンクリート面に対してスライドセントル(半円筒形状の型枠)20を用いて所定の厚さ(覆工厚は30〜45cm)にコンクリートを打設する。この打設コンクリートに対して、特にトンネル天端部のコンクリートに対しては、二次覆工コンクリートの施工では天端吹き上げ方式によるコンクリートの打設が行われるため、バイブレータによるコンクリートの均一な締め固めが必要とされている。よって、スライドセントル20のアーチ状外周面の天端部(天井部)には1対の締固め用バイブレータ21,22が配置されている。
これらの締固め用バイブレータ21,22は、天井部において所定の間隔だけ離れて平行に水平に配置されており、それぞれ長尺のガイドパイプ23,24の先端に固定されている。各ガイドパイプ23.24の後端は、スライドセントル20の妻部(切羽側)から水平方向に突出して後述する駆動機構などに連結され、この駆動機構などにより、図中矢印で示すその軸方向(半円筒形状のスライドセントル20の軸線方向とも一致する)に前進および後退可能に構成されている。つまり、バイブレータ21,22は打設コンクリート中からの引き抜きのみならず、打設コンクリート中での前進が可能に構成されている。この場合、スライドセントル20の外周面(吹き付けコンクリート層との間の打設空間)には、これらのバイブレータ21,22およびガイドパイプ23,24を支持する部材などは配置されていない。バイブレータ21,22およびガイドパイプ23,24は打設コンクリート中に浮いた状態で、すなわち後述するバイブレータガイドに片持ち支持された状態で打設コンクリートの締め固めを行うこととなる。
【0026】
図2は、セントル20の妻面からその軸方向に水平に突出する平行な一対のバイブレータガイド25,26、および、これらのバイブレータガイド25,26をその上面から所定高さ位置に支持するトラス架台30を示す。
セントル20の天井部より少し低い高さ位置ではトラス架台30が所定長さだけ水平に突出しており、このトラス架台30にトラス架台30とほぼ同じ長さの1対のバイブレータガイド(レール)25,26が互いに所定間隔離れて平行になるよう所定高さ位置(地山との間の隙間に相当する高さ位置)で支持されている。なお、このトラス架台30は、いわゆるH型鋼などを組み付けたトラス構造による角柱体形状の架台であって、セントル20内の支持構造体(図示していない)により片持ち状に突出して支持されている。
【0027】
図3には、これらのバイブレータ21,22の前進後退を可能とするバイブレータ進退手段31を模式的に示している。すなわち、各バイブレータ21,22は1本の長尺なパイプであるガイドパイプ23,24の各先端に同軸的にそれぞれ固定されており、これらのガイドパイプ23,24はそれぞれ1対のキャリッジ32に搭載されている。各キャリッジ32は上記バイブレータガイド25,26にそれぞれ走行自在に保持されており、かつ各キャリッジ(キャリア)32はエンドレスのケーブル33を介してチルクライマ(チルコーポレーション社製の汎用型巻き取り機)34に連結されている。よって、各キャリッジ32は、チルクライマ34の運転稼働により、上記バイブレータガイド25,26にガイドされて、上記ガイドパイプ23の軸線方向に往復移動可能とされている。
詳しくは、キャリッジ32の長さ方向(ガイドパイプ23,24の軸方向と同一方向)の一端に係止されたケーブル33は、トラス架台30に配設された複数のガイドローラ35を介してチルクライマ34のケーブルの一端に連結されている。キャリッジ32の他端に係止されたケーブル34aは、同じくトラス架台30に配設された複数のガイドローラ35を介してその角度を変更してチルクライマ34のケーブルの他端に連結されている。したがって、キャリッジ32は、これらのガイドローラ35間に水平にまた垂直に張設されたケーブル33.34aにより水平方向(ガイドパイプ23,24の軸線方向)に沿って所定距離だけ往復移動可能に構成されていることとなる。キャリッジ32の移動距離(ストローク)はセントル20の軸線方向の長さに依存するが、この場合、トラス架台30の上面でガイドローラ35間に所定間隔離れて配設されたリミッタスイッチ36,36にキャリッジ32が当接することで調整されている。
なお、後述するように、バイブレータ21,22はウレタンヘッドを有して形成することにより打設コンクリート中での浮力を得る。また、ガイドパイプ23,24は、打設コンクリート中においても浮力を生じるとともに、曲げ防止のために、例えば直径54mm、厚さ8mmで、高強度素材(例えばS−45C)で形成されている。
【0028】
図4には、このバイブレータ21,22とアーチ形状のセントル20との垂直断面での配置を示している。2本のバイブレータ21,22はセントル20外周面の天井部でこれから所定高さ(高さは調整可能)だけ離間して地山(すなわち吹き付けコンクリート内周面)との間の打設空間に配置されている。また、これらのバイブレータ21,22はセントル20のアーチ状外周面の天井部にあってその外周方向に沿って(矢印方向)所定角度範囲だけ移動可能に配設されている。
【0029】
図5には、図3に示したバイブレータ進退手段31を具体的に示している。この図に示すように、覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置を構成するトラス架台30は、鉄骨(H型鋼など)をトラス構造として細長い箱形に組み立てたものであって、その長さ方向の一端部が半円筒形状のスライドセントル20の内部に挿入されてその天井部の下方に図示していない支持構造体により固定されている。トラス架台30の長さ方向の他端部はセントル20の切羽側の妻面より所定の長さだけ水平にセントル20の軸線方向に沿って外方に向かって突出している。この結果、このトラス架台30は片持ち梁形状に設けられていることとなる。
トラス架台30は、平行な2本の上側レール41と、これらの下方に多数の垂直柱43などを介して固着された平行な2本の下側レール42とを有している。上側レール41の上面には前後方向(トラス架台の延びる方向)に所定間隔離間して配設された一対のガイドパイプ受け台44,45を介して上記バイブレータガイド(レール)25,26が設けられている。なお、バイブレータガイド25,26はトラス架台30の上面で所定間隔を有して横方向に一対並設されている。
トラス架台30の長さ方向、すなわちセントル20の軸線方向に沿って延びる所定長さのバイブレータガイド25,26には、その長さ方向において適宜の間隔で多数のベアリングブラケットが設けられ、これらのベアリングブラケットを介してこれらのガイドパイプ23,24がその長さ方向に沿ってスムーズに前進および後退が自在となるように支持されている。これらのベアリングブラケットは市販品を用い、ベアリングを保持するブラケット枠はトラス架台30の上面に固定されている。これらのガイドパイプ23,24の先端には締固め用の棒状のバイブレータ(上記特殊バイブレータ)21,22が固着されており、これらのバイブレータ21,22が硬化前の打設コンクリート中に挿入され、打設コンクリートを締め固める。所定長さで所定曲げ強度を有するガイドパイプ23,24の後端下面には上記キャリッジ32が固着されており、各キャリッジ32を介してガイドパイプ23,24がバイブレータガイド25,26に沿ってそれぞれ走行自在に支持されている。キャリッジ32の走行はキャリッジ32に連結されたケーブル33,34aによりなされ、ケーブル33,34aはトラス架台30に配設された多数のガイドローラ35を介して無端状に掛け渡されており、ケーブルの両端はチルクライマ34に巻回されている。チルクライマ34の回転駆動によりケーブル33,34aを介してキャリッジ32、すなわちこれと一体のガイドパイプ23,24は前進後退の往復動を行うこととなる。
【0030】
ガイドパイプ23,24の先端部の内部にはそれぞれバイブレータモータが収納され、これらのバイブレータモータはキャプタイヤケーブル50により電源などに接続されている。キャプタイヤケーブル50はその前端部がガイドパイプ23,24の内部に挿入され、その後端部がケーブル送り装置51に連結されている。ケーブル送り装置51はトラス架台30に取り付けられている。
なお、セントル20の妻側でセントル20のアーチ状外面と吹き付けコンクリート層との間の隙間であるコンクリート打設空間(覆工コンクリート部)に対して上記バイブレータ21,22が挿入・引き出し可能とされている。また、バイブレータ21,22等の駆動制御を行うための制御盤53はトラス架台30の下側レール42などに固定されている。
【0031】
図6には、トラス架台30の矩形のフレームで構成された突出端部の構造を示す。この突出端にあっては、2本のバイブレータ21,22に対してこれをそれぞれ前進後退させるための上記2本のケーブル33,33は、それぞれガイドローラ35,35を介してやや斜めに上下方向に延びている。
【0032】
図7には、セントル20の妻部での上記打設空間へのバイブレータ21,22の挿入部の構造を示している。この図に示すように、バイブレータ21,22の先端部分では公知の振動体60に弾頭状のウレタンゴムのヘッド61が植え込みボルト62で固定されており、振動体60は防振ゴム継ぎ手を介して上記キャプタイヤケーブル50の先端に接続されている。すなわち、ここで使用する特殊バイブレータ21,22は周波数200/240Hzの高周波バイブレータである。このバイブレータ21,22は、セントル20天端部の妻部に設けられたシャッターである妻板63を開放して打設空間に挿入される。したがって、バイブレータ21,22の引き抜き後は、このシャッター63が閉じられる。なお、図中に示すようにこの打設空間には複数の鉄筋64が敷設されているが、バイブレータ21,22はこれら鉄筋64と非干渉の高さに挿入される。なお、この高さは調整可能である。
【0033】
図8には、上述したガイドパイプ受け台44,45を示している。これらのガイドパイプ受け台44,45は、トラス架台30の上レール41上において横方向に延びて設置された上側に凸に湾曲した2本の横行レール70と、これら2本の横行レール70に跨って搭載されて走行自在とされた横行ローラ体71とを備えている。また、この横行ローラ体71の上面には、上記バイブレータガイド25,26を所定高さ位置まで立ち上げるためのアップダウン機構27−1がそれぞれ設けられている。すなわち、アップダウン機構27−1は、下端が横行ローラ体71に固着され、上端がバイブレータガイド25,26に固着された垂直な支柱を、断面がコの字形状の鋼材であるアップダウンインナー27とこれが挿入される同じ形状のアップダウンアウター28とで構成してある。上側のアップダウンインナー27の高さを、これらを上下に連結するアップダウンアジャストボルト27−2のねじ込み量に応じて調整する構成である。また、横行レール70の下面とトラス架台30の上面に固着された部材との間には敷駒(鋼材製のスペーサ)29が介在されており、この敷駒29の着脱によっても上記バイブレータガイド25,26の高さを調整可能とされている。
なお、これらのバイブレータガイド25,26には、上述のように、ガイドパイプ23,24がそれぞれ走行自在に支持されている。
横行ローラ体71は下部に回転自在の複数のローラ72を有し、横行用モートルシリンダ73により走行駆動される。このシリンダ73のピストンロッド73aの伸縮により上記横行レール70に沿って所定距離内で走行する。この場合、トラス架台30での前後方向に離間してパイプ受け台44,45が設けられているが、これらの受け台44,45での各横行シリンダ73の駆動は同期して行われることにより、ガイドパイプ23,24、すなわちバイブレータ21,22がセントル20の天端でその周方向に所定角度範囲で移動することとなる。
【0034】
図9には、妻板シャッタ部に近接して設けた洗浄装置80が開示されている。この洗浄装置80は、円柱形状のバイブレータ21,22およびガイドパイプ23,24外面に付着したコンクリートを洗浄するものである。すなわち、セントル20の切羽側の妻板に取り付けられたシャッタ81は挿入口を開閉自在に上下動するもので、バイブレータがこの挿入口より抜き取られると、シャッタ81が上昇して挿入口を閉止する。洗浄装置80の洗浄用ハケ82は円還状であって前後方向に所定間隔離れて一対設けられ、これらのハケ82の間に洗浄水を流す円還状のノズル83が配設されている。円柱状のバイブレータ21,22およびガイドパイプ23,24はこのハケ82の中心孔を通って引き抜かれる際、付着コンクリートはハケ(所定の曲げ強度を有するブラシ)82により物理的に剥離され洗浄水により流されることで洗浄されることとなる。なお、ノズル83にはボールバルブ84を介して洗浄水が供給源より供給されている。
【0035】
以上の構成に係る覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置にあっては、トンネル地山に対してコンクリートを吹き付け、鉄筋を組み立てた後、スライドセントル20がトンネル内にセットされる。このとき、このスライドセントル20には側壁部開口と天端部の吹き上げ口が形成されており、さらにこのスライドセントル20の切羽側の妻部からはトラス架台30が水平に突出してセットされ、このトラス架台30には、覆工コンクリート締め固め用バイブレータ装置が装着されている。このセントル20のセットの結果、2個のバイブレータ21,22はセントル天端部で打設空間に片持ち状に挿入、支持されている。バイブレータ21,22は最大に突出し空間内で坑口側のセントル20の妻部に配置されている。このようにして1対のバイブレータ21,22がセットされる。
次に、覆工コンクリートの打設が行われる。この打設は覆工コンクリートの側壁部からアーチ部へと順番に打設される。このとき、側壁開口を介して手動のバイブレータを使用して作業員による締め固めが行われる。そして、天井部では吹き上げ口よりコンクリートの吹き上げによる打設空間への充填が行われる。このとき、バイブレータ21,22は起動スイッチがonとされ、所定の高周波振動を打設コンクリートに付加することとなり、打設コンクリートの締め固めが天井部でも行われる。
バイブレータ21,22の稼働とともに、打設コンクリートがこの打設空間で切羽側にもさらに充填されると、バイブレータ21,22は上記進退手段31、すなわちチルクライマ34を駆動してキャリッジ32を切羽側に引き出す。その結果、バイブレータ21,22は振動を与えながら打設コンクリート中を所定速度で後退して引き出されることとなる。このとき、2本のバイブレータ21,22は周方向で所定角度開いており、かつ、同時に引き抜きが行われる。コンクリートの再注入、再打設は上記打設空間を埋めるまで行われる。
最後に妻部までコンクリートが打設され、バイブレータ21,22による締め固めが終了すると、バイブレータ21,22は上記チルクライマ34により妻口の挿入口から引き抜かれることなり、シャッタ81が閉じられて、その後コンクリートの養生が行われる。なお、付着コンクリートの洗浄は引き抜きと同時に並行して行われる。これらの結果、天井部であっても、打設コンクリートを均一に充分に締め固めることができる。また、上記作業において、打設コンクリートの注入、充填作業と同期してバイブレータ21,22の引き抜きを行うが、もし充填が不十分とされて再注入がなされる場合は、チルクライマ34を逆転駆動させてバイブレータ21,22を前進させることにより、再度の締め固めを行うことができる。さらに、一端引き抜いたバイブレータ21,22を角度を変更して打設コンクリートの他の部位に対して前進挿入させることもできる。少ないバイブレータ21,22を使用して複数角度位置での締め固め、すなわち広大な天井部での打設コンクリートに対しても均一な締め固めを行うことができる。設備の簡素化により省コストを達成できる。また、当然にも人的作業による場合に比較して作業時間の短縮を図ることができる。
【0036】
このように、この実施例にあっては、半円筒形状であってアーチ状外面を有するスライドセントルが、トンネルに挿入されることにより、このトンネルの地山とこのスライドセントルのアーチ状外面との間に画成された打設空間に地山覆工用のコンクリートが打設されるコンクリート打設構造において適用される。
そして、この打設空間に打設された打設コンクリートの内部に挿入されてこの打設コンクリートに振動を付加することにより、この打設コンクリートを締め固める締固め用バイブレータを備えている。
さらに、この締固め用バイブレータを上記打設コンクリートに対して挿入・引き抜き可能としたバイブレータ進退手段を有し、このバイブレータ進退手段は、上記スライドセントルの妻部であってそのアーチ天井部からスライドセントルの軸線方向に延びて突出するバイブレータガイドと、このバイブレータガイドに沿って往復動自在に支持され、その先端に上記締固め用バイブレータが取り付けられたガイドパイプと、このガイドパイプの後端部に取り付けられ、このガイドパイプを上記バイブレータガイドに沿って往復動させる駆動機構とを備えている。
さらに、この装置にあっては、上記バイブレータガイドを上記アーチ天井部の外周に沿って所定角度範囲で移動可能とした。すなわち、上記スライドセントルの妻部に取り付けられて、その外周方向に延びる横行用レールと、上記バイブレータガイドを支持するとともにこの横行用レールを走行する横行用ローラと、この横行用ローラを横行用レールに沿って走行させる横行用シリンダとを備えている。
また、この装置では、覆工が終了して、坑内を坑口に向けてスライドセントルを移動させ、坑外で解体したい場合、スライドセントルは、脱型ダウン状態で移動可能であるが、振動体を含むバイブレータ装置は、アップダウン機構により既覆工面よりダウン操作により全体をダウンさせ、既覆工区間を通過することもできる。
さらには、急激に地山状況が悪くなり、覆工巻厚が通常より大きく設計変更された場合、鉄筋の上端(天端)を往復させたい場合は、敷駒とアップダウン機構によりアップさせることで、鉄筋の下端を往復させるだけでなく、希望の高さにバイブレータを挿入することができる。
そして、この発明にあっては、上記実施例の他に態様を変更することも含まれる。この場合、バイブレータを前進、後退させるものであれば、どのような構成における装置も本発明に含まれることとなる。
【符号の説明】
【0037】
20 スライドセントル、
21,22 バイブレータ、
23,24 ガイドパイプ、
25,26 バイブレータガイド、
30 トラス架台。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半円筒形状であってアーチ状外面を有するスライドセントルが、トンネルに挿入されることにより、このトンネルの地山とこのスライドセントルのアーチ状外面との間に画成された打設空間に地山覆工用のコンクリートが打設されるコンクリート打設構造において、
上記打設空間に打設された打設コンクリートの内部に挿入されてこの打設コンクリートに振動を付加することにより、この打設コンクリートを締め固める締固め用バイブレータと、
この締固め用バイブレータを上記打設コンクリートに対して挿入・引き抜き可能としたバイブレータ進退手段とを備えた覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置。
【請求項2】
上記バイブレータ進退手段は、
上記スライドセントルの妻部であってそのアーチ天井部からスライドセントルの軸線方向に延びて突出するバイブレータガイドと、
このバイブレータガイドに沿って往復動自在に支持され、その先端に上記締固め用バイブレータが取り付けられたガイドパイプと、
このガイドパイプの後端部に取り付けられ、このガイドパイプを上記バイブレータガイドに沿って往復動させる駆動機構とを備えた請求項1に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置。
【請求項3】
上記バイブレータガイドを上記アーチ天井部から上記軸線方向に向かって突出した状態でその外周に沿って所定角度範囲で移動可能とした請求項2に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置。
【請求項4】
上記スライドセントルの妻部に設けられて、その外周方向に延びる横行用レールと、
上記ガイドレールを支持するとともにこの横行用レールを走行する横行用ローラと、
この横行用ローラを横行用レールに沿って走行させる横行用シリンダとを備えた請求項3に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置。
【請求項1】
半円筒形状であってアーチ状外面を有するスライドセントルが、トンネルに挿入されることにより、このトンネルの地山とこのスライドセントルのアーチ状外面との間に画成された打設空間に地山覆工用のコンクリートが打設されるコンクリート打設構造において、
上記打設空間に打設された打設コンクリートの内部に挿入されてこの打設コンクリートに振動を付加することにより、この打設コンクリートを締め固める締固め用バイブレータと、
この締固め用バイブレータを上記打設コンクリートに対して挿入・引き抜き可能としたバイブレータ進退手段とを備えた覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置。
【請求項2】
上記バイブレータ進退手段は、
上記スライドセントルの妻部であってそのアーチ天井部からスライドセントルの軸線方向に延びて突出するバイブレータガイドと、
このバイブレータガイドに沿って往復動自在に支持され、その先端に上記締固め用バイブレータが取り付けられたガイドパイプと、
このガイドパイプの後端部に取り付けられ、このガイドパイプを上記バイブレータガイドに沿って往復動させる駆動機構とを備えた請求項1に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置。
【請求項3】
上記バイブレータガイドを上記アーチ天井部から上記軸線方向に向かって突出した状態でその外周に沿って所定角度範囲で移動可能とした請求項2に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置。
【請求項4】
上記スライドセントルの妻部に設けられて、その外周方向に延びる横行用レールと、
上記ガイドレールを支持するとともにこの横行用レールを走行する横行用ローラと、
この横行用ローラを横行用レールに沿って走行させる横行用シリンダとを備えた請求項3に記載の覆工コンクリート締固め用バイブレータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−255380(P2010−255380A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109778(P2009−109778)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(599056149)東和機電工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(599056149)東和機電工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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