説明

見切り部材セットとその施工方法

【課題】畳や床材等のフロア部材を床下地上に敷き込む場合において、直線部分を簡単かつきれいに施工できる見切り部材セットを提案する。
【解決手段】 請求項1に記載の見切り部材セット(A)は、
床下地(G)上に敷設されるフロア部材(1)の辺(2)に沿い、該辺(2)を上から覆う上板(5)及び上板(5)の下面から垂設された垂下係止部(6)とで構成された長尺のカバー材(4)と、
前記フロア部材(1)の該辺(2)に沿って敷設される下板(10)及び下板(10)の上面から立設され、前記垂下係止部(6)が挿入係合される係合溝(12)が凹設された起立係止片(11)とで構成された下受材(9)とで構成され、
前記起立係止片(11)の根元に沿って下板(10)に切り溝(13)が刻設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
畳や畳フロアと言われるような薄畳等のフロア部材を木質フロアと共に、或いは既に敷設されている木質フロアの一角に前記フロア部材を施工する場合の見切り部材セットとその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋風の木質フロアを敷設した床の一角に畳や畳フロアと言われるような薄畳等を施工して和を演出することや、リフォームの一環として既設の木質床材の一部を取り除いてその部分に畳フロアを施工するような事がよく行われている。このような場合、畳フロアの施工位置において、壁面との隙間を埋めたり、隣り合う畳や木質床材等との境界をきれいに仕上げるための部材として畳縁部材や見切り部材がある。
【0003】
このような畳縁部材や見切り部材の一例として下型と上型から構成されたものがあり、この例における下型は帯状下板とこれから一体的に立設され、先端に係合溝を設けた係合片からなる略逆T字型の長尺物であり、上型は帯状上板とその下面から垂設され前記下型の係合溝に嵌り込んで係合される被係合片からなる略T字型の長尺物である(特許文献1)。
【0004】
この畳縁部材にあっては、下型を床下地上に敷き込み、畳や木質床材を帯状下板の両側上に設置し、上型の被係合片を下型の係合片に係合させて仕上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−195485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
処が、施工現場では木質床材と畳は必ずしも同時に施工するとは限らない。また、リフォームのため既設床材の一部を剥がして改めて床材や畳を敷き込む場合もある。このような場合、上記の略逆T字型の下型では帯状下板の片側を既設床材端部の下面に挿入出来ないため施工が出来ず、別途、専用の下型を用意しなければならないという問題があった。
【0007】
そこで本発明は畳や床材等のフロア部材を床下地上に敷き込む場合において、さほどの精度を要求されることなくフロア部材の直線部分を簡単かつきれいに施工出来る見切り部材セットとその施工方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の見切り部材セット(A)は、
床下地(G)上に敷設されるフロア部材(1)の辺(2)に沿い、該辺(2)を上から覆う上板(5)及び上板(5)の下面から垂設された垂下係止部(6)とで構成された長尺のカバー材(4)と、
前記フロア部材(1)の該辺(2)に沿って敷設される下板(10)及び下板(10)の上面から立設され、前記垂下係止部(6)が挿入係合される係合溝(12)が凹設された起立係止片(11)とで構成された下受材(9)とで構成され、
前記起立係止片(11)の根元に沿って下板(10)に切り溝(13)が刻設されていることを特徴とする。
【0009】
これにより必要に応じていずれかの切り溝(13)の処をカッターで切ったり、折割ることで切り溝(13)から先の部分を分離出来、床下地(G)に既設部分(3)が先に施工されていてその部分に下板(10)を敷き込めないような場合や壁際でも起立係止片(11)を既設部分(3)や壁(7)に沿わせることが出来、或いは既設部分(3)間に隙間(m)がある場合でもその隙間(m)に差し込むことが出来て問題なく素早く施工出来る(図6、7参照)。なお、分離しない場合は、通常の見切り部材セット(A)と同様に施工することが出来る。すなわち、フロア部材(1)の下に敷くことも出来るし(図5参照)、壁(7)と下板(10)の側縁とを突き付けることで、スペーサ(8)を用いなくても素早く施工することが出来る(図8参照)。
【0010】
請求項2は、請求項1の見切り部材セット(A)において、切り溝(13)が起立係止片(11)の両側において、前記起立係止片(11)の両側に延びる下板(10)にそれぞれ形成されていることを特徴とするもので(図4参照)、必要に応じて垂下係止部(6)の両側において下板(10)を分離出来、前述のように既設部分(3)間に隙間(m)がある場合でもその隙間(m)に差し込むことが出来て隙間(m)を埋め、この垂下係止部(6)だけの下受材(9)を利用してカバー材(4)を取り付けて畳フロア(1a)の辺(2)を覆うことが出来る。勿論、新設の畳フロア(1a)を隣接させて敷設した後でも、その下に下板(10)を敷き込めない事情があったとしてもその間に垂下係止部(6)だけの下受材(9)を挿入して塞ぐことも出来る。なお、垂下係止部(6)と起立係止片(11)は図示実施形状に限られず、係合出来る機能があればよく、例えば、特許文献1の図1のような短い形状、図4のような凹条を設けた形状、雌雄が逆になった形状でもよいことはいうまでもない。
【0011】
請求項3は、請求項1〜2の見切り部材セット(A)において、下板(10)が起立係止片(11)の両側に延出された延出片部(10a)(10b)で構成され、該延出片部(10a)(10b)の幅(S1)(S2)が互いに異なることを特徴とするもので、幅(S1)(S2)の違いで下板(10)を構成する延出片部(10a)(10b)のいずれが外側で、他が内側であるかを瞬時に判別することが出来素早く施工出来る。しかも、幅(S1)(S2)の広い延出片部(10a)にはタッカーが打ち易くなるので、素早く施工出来るという利点もある。
【0012】
請求項4は、請求項1〜3の下受材(9)及びカバー材(4)で構成された見切り部材セット(A)の施工方法であって、
前記下受材(9)から下板(10)の少なくともいずれかの延出片部(10a)(10b)を切り溝(13)で分離し、然る後、前記下受材(9)を既設部分(3)や壁(7)或いは既設部分(3)間の隙間(m)に沿って設置し、次いでカバー材の垂下係止部(6)を前記下受材(9)の起立係止部(11)に係合させることを特徴とするもので、既設部分(3)や壁(7)に沿って施工する場合でも少なくともいずれかの延出片部(10a)(10b)を単に切り溝(13)から分離するだけで済むので、素早く施工出来る。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明の見切り部材セットを使用すれば、畳或いは薄畳や木質フロア等のフロア部材を床下地上に敷き込む場合において、直線部分を簡単かつきれいに施工出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における下受材とカバー材の施工状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に使用されるカバー材の正面図である。
【図3】本発明に使用される下受材の正面図である。
【図4】本発明に使用される他の下受材の正面図である。
【図5】本発明の第1の施工状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の施工状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の施工状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第4の施工状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に従って説明する。見切り部材セット(A)は、長尺のカバー材(4) 及び下受材(9)の2部材で構成されており、その材質は軟質或いは硬質の樹脂などからなる成型品である。本実施例では、ABS樹脂又はAAS樹脂或いは木粉入り樹脂が用いられる。見切り部材セット(A)が用いられる対象となるフロア部材(1)は正方形または長方形の部材で、畳や畳フロアといわれる「薄畳」と呼ばれるもの(これを符号(1a)で示す。)や、木質フロア(1b)などで、例えば前述のように部屋の床下地(G)上に木質フロア(1b)を敷くと共にその一角に薄畳(1a)を敷設して洋風の中に「和」を取り入れるような場合に用いられる。勿論、部屋の床全体を同種のフロア部材(1)で敷設する場合に使用することも可能であるし、既設の床の一角をリフォームして薄畳(1a)や新たな木質フロア(1b)などのフロア部材(1)を敷設することも可能である。
【0016】
長尺のカバー材(4)はフロア部材(1)の該辺(2)を上から覆う上板(5)及び上板(5)の下面中央において、その長手方向全長にわたって一体的に垂設された垂下係止部(6)とで構成されている。上板(5)の両側縁下面側には全長にわたって断面三角形で下側先端に行く程次第に幅が狭くなる爪縁部(5a)が一体的に突設されている。また、上板(5)の上面両側縁部分は側辺に向かって下り傾斜に形成されている。垂下係止部(6)は先端が矢じり状に形成され、該部分における膨出した返し部分(6a)が垂下係止部(6)の下端側縁全長の少なくとも一方(図では両側)にわたって形成されている。返し部分(6a)は後述する下受材(9)の起立係止片(11)の係合溝(12)に係合した時に嵌め殺しにならないようにその係合面(6b)は下り傾斜で、垂下係止部(6)に対する「なす角度」で鈍角に形成されている。
【0017】
下受材(9)は、細長い帯状の下板(10)と、該下板(10)の上面にてその全長にわたって立設された起立係止片(11)とで構成されており、起立係止片(11)の先端面には全長にわたって係合溝(12)が凹設されている。起立係止片(11)は1枚でもよいが、本実施例は並立する2枚で構成されており、その内面に前述の返し部分(6a)が係合する縦断面略三角形の係合凸畝(11a)が全長にわたって膨出されている。係合凸畝(11a)の上下の斜面(11b)(11c)の間の角度は鈍角に形成されており、下側の斜面(11c)は返し部分(6a)の係合面(6b)に適合するようになっている。前述のように起立係止片(11)が2枚で構成されている場合は、カバー材(4)の垂下係止部(6)の挿入時に起立係止片(11)のそれぞれが外側に大きく撓んで挿入が容易になる。
【0018】
そして下板(10)の起立係止片(11)から外側に延出しているそれぞれの部分が下板(10)を構成する延出片部(10a)(10b)で、その幅(S1)(S2)が互いに異なるように形成されおり、更に起立係止片(11)の根元部分において、一方の延出片部(10a)又は他の延出片部(10b)の上面に全長にわたって或いは部分的に連続して切り溝(13)が形成されている。勿論、起立係止片(11)の根元部分に対応する位置において、延出片部(10a)の下面に全長にわたって或いは部分的に連続して切り溝(13)を形成してもよいし、延出片部(10a)(10b)の両方に形成してもよい。また、図示していないが、切り溝(13)を起立係止片(11)の根元以外の部分に更に形成しておき、適宜切除幅を選択出来るようにしてもよい。切り溝(13)の形状は溝底に向かうにつれて次第に幅狭となり、その方向は例えば切り溝(13)の延出片部(10a)側の側面が延出片部(10a)の側面の延長線上になるように形成されている。このようにすれば切り溝(13)で延出片部(10a)を切除したとき、切除面が延出片部(10a)の側面に倣うようになる。なお、切り溝(13)は全長にわたって形成される他、所定の間隔を以って形成してもよく、その場合には貫通させてもよい。本実施例では幅の狭い方の延出片部(10a)側に切り溝(13)が形成されている。勿論、逆であってもよい。
【0019】
しかして、図5のように木質フロア(1b)と畳フロア(1a)或いは畳フロア(1a)同士や木質フロア(1b)同士のように同じ高さの場合には下受材(9)の延出片部(10a)を取り除くことなくそのまま施工することになる。即ち、床下地(G)上の所定位置に下受材(9)を配置し、幅広の延出片部(10b)をタッカー止め(或いは両面テープ、接着剤など既知の方法で下地面に固定)し、続いて延出片部(10a)(10b)上にフロア部材(1)を敷設する。この時、下受材(9)の配置に当たって延出片部(10a)(10b)の幅(S1)(S2)が異なるので、一目で下受材(9)の配置の方向が判別する。
【0020】
このように下受材(9)の配置が終われば、カバー材(4)の垂下係止部(6)を下受材(9)の起立係止片(11)の係合溝(12)に順次嵌め込んで行く。カバー材(4)が嵌め込まれて行くと側縁の爪縁部(5a)がカバー材(4)の全長にわたってフロア部材(1)の表面に隙間なく食い込む。
【0021】
図6は第2の施工例で、既にフロア部材(3)が施工されており、それに隣接して畳フロア(1a)(勿論、畳フロア(1a)でなく、木質フロア(1b)その他のフロア部材(1)を施工してもよいことは言うまでもない。)を施工する場合である。この場合は、既設のフロア部材(3)の下に敷き込めないので、切り溝(13)から延出片部(10b)を切除し、切除側を既設のフロア部材(3)の側面に沿わせて配置し、残る延出片部(10a)をタッカー止めする。然る後、前述のように畳フロア(1a)を敷設した後、カバー材(4)を嵌め込む。
【0022】
図7は第3の施工例で、既にフロア部材(3)が隣接して施工されており(或いは新設のフロア部材(1)の敷き込みを行う場合で何らかの事情で下板(10)を敷き込めない場合)、その間に隙間(m)がある場合である。この場合は、フロア部材(3)又は(1)の下に敷き込めないので、切り溝(13)から両延出片部(10a)(10b)を切除し、残る起立係止片(11)をその隙間(m)に挿入し、然る後、前述のようにカバー材(4)を嵌め込む。
【0023】
図8は第4の施工例で、畳フロア(1a)(勿論、畳フロア(1a)でなく、木質フロア(1b)その他のフロア部材(1)を施工してもよいことは言うまでもない。)を壁際に沿って敷設する場合である。この場合は、第1施工例と同様、延出片部(10a)を切除することなくこれを壁(7)に沿わせて下受材(9)を配置、タッカー止めなどによる固定作業をし、然る後、カバー材(4)を嵌め込む。この場合、カバー材(4)の上板(5)と下受材(9)の延出片部(10b)との間に空間が生ずるが、該空間が閉じられているので、スペーサ(8)のようなものを用いる必要がない。
【符号の説明】
【0024】
(A)・・・見切り部材セット
(G)・・・床下地
(1)・・・フロア部材
(2)・・・辺
(4)・・・カバー材
(5)・・・上板
(6)・・・垂下係止部
(9)・・・下受材
(10)・・・下板
(11)・・・起立係止片
(12)・・・係合溝
(13)・・・切り溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地上に敷設されるフロア部材の辺に沿い、該辺を上から覆う上板及び上板の下面から垂設された垂下係止部とで構成された長尺のカバー材と、
前記フロア部材の該辺に沿って敷設される下板及び下板の上面から立設され、前記垂下係止部が挿入係合される係合溝が凹設された起立係止片とで構成された下受材とで構成され、
前記起立係止片の根元に沿って下板に切り溝が刻設されていることを特徴とする見切り部材セット。
【請求項2】
切り溝が起立係止片の両側において、前記起立係止片の両側に延びる下板にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の見切り部材セット。
【請求項3】
下板が起立係止片の両側に延出された延出片部で構成され、該延出片部の幅が互いに異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の見切り部材セット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の下受材及びカバー材で構成された見切り部材セットの施工方法であって、
前記下受材から下板の少なくともいずれかの延出片部を切り溝で分離し、然る後、前記下受材を既設部分や壁或いは前記既設部分間の隙間に沿って設置し、次いでカバー材の垂下係止部を前記下受材の起立係止部に係合させることを特徴とする見切り部材セットの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23917(P2013−23917A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160063(P2011−160063)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】