説明

規則的な構造の有機膜を備える画像形成デバイス

【課題】液体ゼログラフィー用途のための、「耐溶媒性」の規則的な構造の有機膜(SOF)を含む画像形成体、感光体、光伝導体などに関する。複写の欠陥を防ぎ、画像形成体の寿命が短くなることが避けられる。
【解決手段】複数のセグメントおよび複数のリンカーが、共有結合による有機骨格として整列した、耐溶媒性の規則的な構造の有機膜(SOF)を含む最も外側の層を有し、この規則的な構造の有機膜が、複数セグメント分の厚みであってもよい、ゼログラフィー液体浸漬現像機のための画像形成体。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本明細書には、基板と;電荷発生層と;電荷移動層と;場合により、オーバーコート層とを備え、最も外側の層が、複数のセグメントと、複数のリンカーとが共有結合による有機骨格(COF)として整列したものを含む、耐溶媒性の規則的な構造の有機膜(SOF)を含む画像形成表面である、液体トナーをゼログラフィー方式で印刷するための画像形成体が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】図1は、SOFが組み込まれた感光体の側面図をあらわす。
【図2】図2は、SOFが組み込まれた感光体の単純化された側面図をあらわす。
【図3】図3は、SOFが組み込まれた感光体の単純化された側面図をあらわす。
【図4】図4は、コントロール実験の混合物の生成物のFT−IRスペクトルを比較したグラフであり、N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンのみを液体反応混合物に加えたもの(上)、ベンゼン−1,4−ジメタノールのみを液体反応混合物に加えたもの(中央)、SOFを形成するのに必要な成分を液体反応混合物に加えたもの(下)である。
【図5】図5は、N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、p−キシリルセグメントと、エーテルリンカーとを含むSOFのFT−IRスペクトルをあらわすグラフである。
【図6】図6は、N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、n−ヘキシルセグメントと、エーテルリンカーとを含むSOFのFT−IRスペクトルをあらわすグラフである。
【図7】図7は、N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、4,4’−(シクロヘキサン1,1−ジイル)ジフェニルと、エーテルリンカーとを含むSOFのFT−IRスペクトルをあらわすグラフである。
【図8】図8は、トリフェニルアミンセグメントと、エーテルリンカーとを含むSOFのFT−IRスペクトルをあらわすグラフである。
【図9】図9は、トリフェニルアミンセグメントと、ベンゼンセグメントと、イミンリンカーとを含むSOFのFT−IRスペクトルをあらわすグラフである。
【図10】図10は、トリフェニルアミンセグメントと、イミンリンカーとを含むSOFのFT−IRスペクトルをあらわすグラフである。
【図11】図11は、SOFオーバーコート層の光伝導性を示す、PIDCをあらわすグラフである。
【図12】図12は、ワックス添加剤を含有するSOFオーバーコート層の光伝導性を示す、PIDCをあらわすグラフである。
【図13】図13は、SOFオーバーコート層の光伝導性を示す、PIDCをあらわすグラフである。
【図14】図14は、実施例26および54で製造されたSOFの二次元X線散乱データをあらわすグラフである。
【図15】図15は、種々のオーバーコート層の光伝導性を示す、PIDCをあらわすグラフである。
【図16】図16は、種々のSOFオーバーコート層について得られた繰り返しデータをあらわすグラフである。
【0003】
本開示は、一般的に、液体ゼログラフィー用途のための、「耐溶媒性」の規則的な構造の有機膜(SOF)を含む画像形成体、感光体、光伝導体などに関する。
【0004】
「耐溶媒性」は、(1)SOFおよび/またはSOF組成物の一部分であった任意の原子および/または分子が染み出すこと、および/または、(2)SOFおよび/またはSOF組成物の一部分であった任意の分子がなんらかの形態で相分離し、SOFが組み込まれている層が、溶媒/応力によって欠けたり、分解したりしやすくなることが実質的に存在しないことを指す。用語「実質的に存在しない」は、SOFを含む画像形成体(またはSOF画像形成層)が、約24時間以上(約48時間、または約72時間)の期間、液体現像剤または溶媒に連続的にさらされるか、または浸された後に、SOFの原子および/または分子が染み出す量が約0.5%未満であることを指すか、または、SOFを含む画像形成体(またはSOF画像形成層)が、約24時間以上(約48時間、または約72時間)の期間、液体現像剤または溶媒にさらされるか、または浸された後に、SOFの原子および/または分子が染み出す量が約0.1%未満であることを指すか、または、SOFを含む画像形成体(またはSOF画像形成層)が、約24時間以上(約48時間、または約72時間)の期間、液体現像剤または溶媒にさらされるか、または浸された後に、SOFの原子および/または分子が染み出す量が約0.01%未満であることを指す。
【0005】
「有機キャリア液」は、液体現像剤および/またはインクで使用される有機液体または溶媒を指し、アルケン、直鎖脂肪族炭化水素、分枝鎖脂肪族炭化水素が挙げられ、ここで、直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素は、約1〜約30個の炭素原子を有していてもよく、または、約4〜約20個の炭素を有していてもよく;また、トルエン、キシレン(またはo−、m−、p−キシレン)のような芳香族、および/またはこれらの混合物;アイソパー溶媒またはイソパラフィン系炭化水素、またはISOPAR商標シリーズのような非極性液体(アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーMを含む(Exxon Corporationによって製造され、これらの炭化水素液体は、イソパラフィン系炭化水素フラクションの範囲の狭い一部であると考えられる))、NORPAR商標シリーズの液体(Exxon Corporationから入手可能なn−パラフィン組成物である)、Phillips Petroleum Companyから入手可能なSOLTROL商標シリーズの液体、Shell Oil Companyから入手可能なSHELLSOL商標シリーズの液体、炭素原子が約10〜約18個のイソパラフィン系炭化水素溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。有機キャリア液は、所望な場合、1種類以上の溶媒の混合物(すなわち、溶媒系)であってもよい。それに加え、所望な場合、もっと極性の高い溶媒を用いてもよい。もっと極性の高い使用可能な溶媒の例としては、ハロゲン化溶媒および非ハロゲン化溶媒(テトラヒドロフラン、トリクロロエタンおよびテトラクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、アセトン、メタノール、エタノール、ベンゼン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、N−メチルアセトアミドなどが挙げられる。溶媒は、1種類、2種類、3種類またはそれ以上の異なる溶媒で構成されていてもよく、および/または、上述の溶媒の他の種々の混合物で構成されていてもよい。
【0006】
より特定的には、本開示は、剛性またはドラム型の光伝導体に関し、単一層または複数層の可とう性ベルト型画像形成体、または基板のような任意要素の支持媒体と、光発生層と、電荷移動層と、ポリマーコーティング層と、任意要素の接着層と、任意要素の正孔遮断層またはアンダーコート層とで構成され、画像形成体の最も外側の層としてSOFを備えていてもよいデバイスに関する。本明細書に示されている画像形成体、感光体、光伝導体は、耐摩耗性に優れ、寿命が長く、画像形成体で1つ以上の表面層に、最終的に作られる印刷物で目視できるような傷を生じ、望ましくない印刷結果を与えてしまうような傷がつくことがなくなるか、または最小限になり、優れた電気特性を可能にし、長い間電気的に動かした後のサイクルアップが最小限になり、駆動時の消失に対する耐性が増し、耐溶媒性、機械的なロバスト性が向上している。さらに、本明細書に開示されている画像形成体または光伝導体は、多くの場合に、優れた低いV(残留電位)を有し、適切な場合には、Vのサイクルアップを実質的に防ぎ、感度が高く、ゴースト画像が発生する性質が許容可能なレベルで低く、望ましいトナー洗浄性を示す。
【0007】
ロバスト性および電気特性(PIDC)に優れた、耐溶媒性のSOF感光体オーバーコート層(OCL)組成物を開示する。種々の分子ビルディングブロックから誘導したSOFオーバーコート層組成物を用い、感光体に対してアイソパー適合性試験(液体トナーの代用試験材料として、Isopar C、GおよびMを選択した)を行なったが、感光体の損傷はみられなかった。液体ゼログラフィーのための、SOF層を備える画像形成体は、優れた光放電特性を維持しつつ、SOFの特に高い耐溶媒性を利用するものである。
【0008】
画像形成体は、デジタル装置を含むゼログラフィー方式の装置で有用な、(耐溶媒性SOF、または以下「SOF」を最も外側の層として有する)中間転写ベルト、シート、ローラー、またはフィルムであってもよい。「耐溶媒性」SOFを含む本明細書の画像形成体は、多くの異なるプロセスおよび構成要素(例えば、感光体、定着体、転写固着体、バイアス転写体、バイアス帯電体、現像体、画像保持体、搬送部材、クリーニング部材)、および接触型の静電印刷用途、ゼログラフィー用途(デジタルなどを含む)のための他の部材のための、ベルト、ローラー、ドレルト(drelt)(ドラムとベルトのハイブリッド)などとして有用な場合がある。さらに、本明細書の画像形成体は、液体および乾燥粉末を用いるゼログラフィーアーキテクチャに用いることができる。
【0009】
画像形成体は、液体現像インクまたはこれらの混合物で使用される水系キャリア液または有機キャリア液(例えば、イソパラフィン系炭化水素、例えば、アイソパー)のいずれかと接触することによって引き起こされる、欠け、ひび割れ、活性化合物の結晶化、活性化合物の相分離、活性化合物の抽出に対し、優れた耐性を示す。したがって、画像形成体は、SOFを用いない画像形成体に比べ、優れた機械的一体性や、電気特性を有している。アリールアミンを含有する化合物をSOFに組み込んでもよく、それにより、液体現像剤の有機キャリア液が、アリールアミンを含有する化合物のような活性な低分子を染み出させる傾向が増すという状況を防ぐことができる。
【0010】
活性な低分子、例えば、典型的には、電荷移動層で使用される分子(N,N’−ジフェニル−N,N’−bis(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン;ビス−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン;2,5−ビス−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾール;1−フェニル−3−(4’−ジエチルアミノスチリル)−5−(4”−ジエチルアミノフェニル)−ピラゾリン;1,1−ビス−(4−(ジ−N,N’−p−メチルフェニル)−アミノフェニル)−シクロヘキサン;4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン;1,1−ジフェニル−2(p−N,N−ジフェニルアミノフェニル)−エチレン;N−エチルカルバゾール−3−カルボキサアルデヒド−1−メチル−1−フェニルヒドラゾン)が画像形成体表面に結晶化し、次いで、液体現像インクにアリールアミンが移動することは、SOFを用いることによって避けることができる。それに加え、画像形成体のSOFは、インクビヒクル(例えば、C10〜C14の分枝鎖炭化水素)を、画像形成体表面に、欠けやひび割れ(例えば、眼で見て検出される欠けおよびひび割れ)が生成しないように使用することができるように選択されてもよい。それにより、複写の欠陥を防ぎ、画像形成体の寿命が短くなることが避けられる。画像形成体または感光体が分解すると、画像形成体が物理的に完全に破壊されてしまう前に、バックグラウンドが高くなったり、他の印刷欠陥が生じたりという現象があらわれる。
【0011】
また、本明細書に示す画像形成体を用い、画像形成し、印刷する液体ゼログラフィー法も、本開示の範囲に含まれる。
【0012】
「SOF」は、一般的に巨視的なレベルで膜である、共有結合による有機骨格(COF)を指す。「巨視的なレベル」は、SOFの肉眼での見た目を指す。COFは、「微視的なレベル」または「分子レベル」では(強力な拡大装置の使用を必要とするか、または分散方法を用いて評価した場合)網目であるが、本発明のSOFは、この膜が、例えば、微視的なレベルのCOF網目よりも何桁も大きな範囲を覆っているため、基本的に「巨視的なレベル」では異なっている。本明細書に記載の実施形態で使用可能な、本明細書に記載のSOFは、耐溶媒性であり、すでに合成されている典型的なCOFとはかなり異なる巨視的な形態を有している。
【0013】
さらに、キャッピングユニットがSOFに導入されると、SOFの骨格は、キャッピングユニットが存在する箇所で局所的に「中断される」。これらのSOF組成物は、外来分子が、キャッピングユニットが存在する箇所でSOF骨格に結合しているため、「共有結合によってドープされて」いる。キャッピングされたSOF組成物は、構成要素であるビルディングブロックを変えることなく、SOFの特性を変えることができる。
【0014】
SOFは、1ミリメートル〜数メートル、または数百メートルよりもかなり大きな長さにわたって延ばすことが可能な、連続的な共有結合による有機骨格を有する、実質的にピンホールを含まないSOFであってもよく、またはピンホールを含まないSOFであってもよい。SOFは、大きなアスペクト比を有する傾向があり、典型的には、SOFの2方向の寸法が、第3の寸法よりもかなり大きい。SOFは、COF粒子の集合体よりも、巨視的な縁や、不連続の外側表面が顕著に少ない。
【0015】
「実質的にピンホールを含まないSOF」または「ピンホールを含まないSOF」は、その下にある基板表面に堆積した反応混合物から生成する。「実質的にピンホールを含まないSOF」は、生成したSOFの下にある基板から取り外されてもよく、取り外されなくてもよいSOFを指し、1平方センチメートルあたり、2個の隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きなピンホール、孔またはギャップを実質的に含んでいないか、または、1cmあたり、直径が約250ナノメートルより大きなピンホール、孔またはギャップが10個未満であるか、または、1cmあたり、直径約100ナノメートルよりも大きなピンホール、孔またはギャップが5個未満である。「ピンホールを含まないSOF」は、1平方マイクロメートルあたり、2個の隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きなピンホール、孔またはギャップを含まないか、または、1平方マイクロメートルあたり、直径が約500Å、約250Åまたは約100Åよりも大きなピンホール、孔またはギャップを含まないSOFを指す。
【0016】
SOFは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個、または、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子を含んでいてもよい。SOFは、ボロキシン、ボラジン、ボロシリケート、ボロン酸エステルを含まないSOFであってもよい。
【0017】
SOFは、セグメント(S)と、官能基(Fg)とを有する分子ビルディングブロックを含んでいてもよい。分子ビルディングブロックには、少なくとも2個のFg(x≧2)が必要であり、1種類のFgを含んでいてもよいし、または2種類以上のFgを含んでいてもよい。Fgは、分子ビルディングブロックの反応性化学部分であり、SOF形成プロセス中、セグメントを接続する化学反応に関与する。セグメントは、分子ビルディングブロックの一部分であり、Fgを支え、Fgとは関連しないすべての原子を含む。分子ビルディングブロックのセグメントの組成は、SOFを形成した後も変わらない。
【0018】
Fgは、分子ビルディングブロックの反応性化学部分であり、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与してもよい。Fgは、1個の原子で構成されていてもよく、Fgは、2個以上の原子で構成されていてもよい。Fgの例としては、ハロゲン、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸、エステル、カーボネート、アミン、アミド、イミン、尿素、アルデヒド、イソシアネート、トシレート、アルケン、アルキンが挙げられる。
【0019】
分子ビルディングブロックは、複数の化学部分を含有しているが、これらの化学部分の部分集合のみが、SOF形成プロセス中にFgであることを意図している。ある化学部分が、官能基とみなされるかどうかは、SOF形成プロセスで選ばれる反応条件によって変わる。Fgは、反応性部分(SOF形成プロセス中の官能基)である化学部分を示す。
【0020】
SOF形成プロセスにおいて、官能基の組成は、原子が失われるか、または原子が付け加えられるか、またはその両者によって変わる場合があり、または、官能基が完全に失われる場合もある。SOFにおいて、以前はFgに属していた原子が、セグメントを接続する化学部分であるリンカー基に属するようになる。分子ビルディングブロックの一部である原子または原子群が、SOFのリンカー基内にとどまっていてもよい。
【0021】
キャッピングユニットは、SOFに通常存在する共有結合したビルディングブロックの規則的な網目を「中断する」分子である。キャッピングされたSOF組成物は、導入されるキャッピングユニットの種類および量によって特性を変えることが可能な、調整可能な材料である。キャッピングユニットは、1種類または2種類以上のFgおよび/または化学部分を含んでいてもよい。
【0022】
キャッピングユニットは、SOFに加えられ、最終的にSOFとなるいずれかの分子ビルディングブロックの構造に無関係な構造を有していてもよい。
【0023】
キャッピングユニットは、分子ビルディングブロックの1つの構造に実質的に対応しているが、1つ以上のFgが失われているか、またはSOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応(最初に存在するビルディングブロックの官能基との反応)に関与しない異なる化学部分または官能基と置き換わっているような構造を有していてもよい。
【0024】
キャッピングユニットは、キャッピングユニットの混合物、または、第1、第2、第3、第4のキャッピングユニットなどの組み合わせを含んでいてもよく、この場合、キャッピングユニットの構造はさまざまである。キャッピングユニットまたは複数のキャッピングユニットの組み合わせの構造は、SOFの化学的特性および物理的特性を高めるか、または弱めるように選択されてもよく、または、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与するのに適していないか、または補助的でもないような化学部分または官能基の属性を変え、キャッピングユニットの混合物を生成してもよい。このように、SOF骨格に導入されるキャッピングユニットの種類は、SOFに望ましい特性を導入するか、またはSOFの望ましい特性を調整するように選択されてもよい。
【0025】
SOFは、SOFの縁に位置していないセグメントを含有していてもよく、このセグメントが、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。2型および3型のSOFは、SOFの縁に位置していないセグメントを少なくとも1個有しており、このセグメントが、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。SOFは、理想的な三角形のビルディングブロック、ひずみのある三角形のビルディングブロック、理想的な四面体のビルディングブロック、ひずみのある四面体のビルディングブロック、理想的な四角形のビルディングブロック、ひずみのある四角形のビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1つの対称形のビルディングブロックを含んでいてもよい。
【0026】
SOFは、すべてのセグメントが同一の構造を有している複数のセグメントと、同一の構造であってもよく、同一の構造でなくてもよい複数のリンカーとを含んでいてもよく、SOFの縁にないセグメントは、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。SOFは、構造が異なる少なくとも第1および第2のセグメントを含む複数のセグメントを含んでいてもよく、第1のセグメントは、SOFの縁にない場合には、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。
【0027】
SOFは、構造が異なる少なくとも第1および第2のリンカーを含む複数のリンカーと、構造が異なる少なくとも第1および第2のセグメントを含む複数のセグメントとを含んでいてもよく、第1のセグメントは、SOFの縁にない場合には、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続しており、この接続のうち、少なくとも1つは第1のリンカーを介しており、この接続のうち、少なくとも1つは第2のリンカーを介しているか、または、すべてのセグメントが同一の構造を有しているセグメントを含んでおり、SOFの縁にないセグメントは、リンカーによって少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続しており、この接続のうち、少なくとも1つは第1のリンカーを介しており、この接続のうち、少なくとも1つは第2のリンカーを介している。
【0028】
セグメントは、分子ビルディングブロックの一部分であり、Fgを支え、Fgとは関連しないすべての原子を含む。さらに、分子ビルディングブロックのセグメントの組成は、SOFを形成した後も変わらない。SOFは、第2のセグメントと構造が同じであるか、または異なる第1のセグメントを含んでいてもよい。第1のセグメントおよび/または第2のセグメントの構造は、第3のセグメント、第4のセグメント、第5のセグメントなどと同じであってもよく、異なっていてもよい。また、セグメントは、ある偏った特性を与えることが可能な分子ビルディングブロックの一部分でもある。
【0029】
SOFの例示的なセグメントは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個(水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子)を含む。
【0030】
リンカーは、分子ビルディングブロックおよび/またはキャッピングユニットに存在するFg間で化学反応が起こると、SOF中に出現する化学部分である。
【0031】
リンカーは、共有結合、1個の原子、または共有結合した原子群を含んでいてもよい。共有結合リンカーは、1個の共有結合であってもよく、2個の共有結合であってもよく、すべての関与するビルディングブロック上のFgが完全に失われると出現する。化学部分リンカーは、1個の共有結合、2個の共有結合またはこれら二者の組み合わせによって結合した1個以上の原子を有する。化学部分リンカーは、エステル、ケトン、アミド、イミン、エーテル、ウレタン、カーボネートなど、またはこれらの誘導体のような化学基であってもよい。
【0032】
2個のヒドロキシルFgを用い、酸素原子を介してSOF中のセグメントを接続する場合、リンカーは、酸素原子である(エーテルリンカー)。SOFは、第2のリンカーと構造が同じであるか、または異なる第1のリンカーを含んでいてもよい。第1のリンカーおよび/または第2のリンカーの構造は、第3のリンカーなどと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
キャッピングユニットは、全体的なSOF骨格が十分に維持されるならば、任意の望ましい量でSOF中に結合していてもよい。キャッピングユニットは、すべてのリンカーのうち、少なくとも0.1%に結合していてもよいが、SOF中に存在するすべてのリンカーの約40%を超えるリンカーには結合しておらず、または、約0.5%〜約30%、または約2%〜約20%に結合していてもよい。実質的にすべてのセグメントが、少なくとも1つのキャッピングユニットに結合していてもよく、ここで、用語「実質的にすべての」は、SOFのセグメントのうち、約95%を超えるか、または約99%を超えることを指す。
【0034】
例示的なリンカーは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個(水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子)を含んでいてもよい。
【0035】
SOFは、任意の適切なアスペクト比を有しており、例えば、約30:1より大きいか、または約50:1より大きいか、または約70:1より大きいか、または約100:1より大きいか、または約1000:1より大きい。SOFのアスペクト比は、平均厚み(最も短い寸法)に対する、SOFの平均幅または平均直径(厚みに対して二番目に大きな寸法)の比率であると定義される。SOFの最も長い寸法は長さであり、SOFのアスペクト比の計算には考慮されない。
【0036】
一般的に、SOFは、約500μm、または約10mm、または約30mmよりも大きな幅、長さまたは直径を有する。SOFは、以下の厚みを有する:セグメント1個分の厚みをもつ層の場合、約10Å〜約250Å、または約20Å〜約200Å、複数個のセグメントの厚みをもつ層の場合、約20nm〜約5mm、約50nm〜約10mm。
【0037】
SOFは、単一層であってもよく、複数の層を含んでいてもよい。複数の層で構成されるSOFは、物理的に接続されていてもよく(例えば、双極子による結合および水素結合)、化学的に接続されていてもよい。物理的に結合している層は、層間の相互作用または接着性が弱いという特徴があり、したがって、物理的に結合している層は、互いに剥離しやすい場合がある。化学的に結合している層は、化学結合(例えば、共有結合またはイオン結合)を有しているか、または隣接する層を強く接続する、多くの物理的なエンタングルメントまたは分子間(高分子)エンタングルメントを有していると予想される。
【0038】
SOFは、単一層であってもよく(セグメント1個分または複数個分の厚み)、または複数の層であってもよい(それぞれの層が、セグメント1個分または複数個分の厚みである)。「厚み」は、例えば、膜の最も小さな寸法を指す。また、膜の厚みは、膜の断面を観察する場合には、その膜の軸に沿って計測されるセグメントの数で定義されてもよい。「単一層」のSOFは、セグメント1個分の厚みをもつ膜である。この軸に沿って2個以上のセグメントが存在するSOFは、「複数個のセグメント」の厚みをもつSOFである。
【0039】
物理的に結合している複数層のSOFを調製する例示的な方法は、(1)第1の硬化サイクルで硬化してもよい、基板となるSOF層を作成することと、(2)この基板層に、第2の反応性の濡れた層を作成した後、第2の硬化サイクルを行い、望ましい場合、この第2の工程を繰り返し、第3の層、第4の層などを作成することとを含む。物理的に積み重ねられた複数層のSOFは、約20Åを超える厚みを有していてもよく、または、約20Å〜約10cm、約1nm〜約10mm、または約0.1mm〜約5mmの厚みを有していてもよい。
【0040】
化学的に結合している複数層のSOFを調製する方法は、(1)第1の反応性の濡れた層から、表面にFgが存在する(ぶら下がっているFgを有する)基板となるSOF層を作成することと、(2)この基板層に、基板のSOF層の表面にぶら下がっているFgと反応することが可能なFgを有する分子ビルディングブロックを含む第2の反応性の濡れた層から、第2のSOF層を作成することとを含む。キャッピングされたSOFは、基板層の役目を果たしてもよく、基板層のSOF形成プロセス中にセグメントを接続する特定の化学反応に関与するのに適切でもなく、または補助的でもなかったFgを第2の層の分子ビルディングブロックと反応するのに利用し、化学的に結合した複数層のSOFを作成してもよい。第2のSOF層を作成するのに用いられる配合物は、基板層のFgと反応可能であり、また、第2の層に化学的に結合している第3の層に存在し得るさらなるFgとも反応可能な分子ビルディングブロックを含んでいるべきである。化学的に積み重ねられた複数層のSOFは、約20Åを超える厚みを有していてもよく、または、約20Å〜約10cm、約1nm〜約10mm、または約0.1mm〜約5mmの厚みを有していてもよい。このプロセスでは、原理的に、物理的または化学的に積み重ねることが可能な層の数に制限はない。
【0041】
SOFまたはキャッピングされたSOFの表面に存在する、ぶら下がっているFgまたは化学部分は、特定の種類の分子または個々の分子が、基板層または任意のさらなる基板層またはSOF層に共有結合する傾向が高まるように(または、共有結合しにくくなるように)改変されてもよい。反応性のぶら下がっているFgを含んでいてもよい基板層(例えば、SOF層)の表面は、キャッピング化学基で表面処理することによって反応性が抑えられてもよい。ぶら下がっているヒドロキシアルコール基を有するSOF層は、塩化トリメチルシリルで処理され、ヒドロキシル基が安定なトリメチルシリルエーテルとしてキャッピングされることによって反応性が抑えられてもよい。または、基板層の表面を非化学的な結合剤で処理し、ぶら下がっているFgが次の層と反応しないようにしてもよい。
【0042】
分子ビルディングブロックの対称性は、分子ビルディングブロックのセグメント周囲にある官能基(Fg)の位置に関連する。対称的な分子ビルディングブロックは、Fgの位置が、規則的な幾何学形状の棒状部分の端、頂点と関連するようなFgであってもよく、ひずみのある棒状部分またはひずみのある幾何学形状の頂点と関連するようなFgであってもよい。例えば、4個のFgを含む分子ビルディングブロックのうち、最も対称形の選択肢は、Fgが四角形の端点または四面体の頂点と重なるものである。
【0043】
対称形ビルディングブロックは、以下の2つの理由で用いられる。(1)分子ビルディングブロックのパターン化は、規則的な形状の接続が、網状物質の化学においてよりよく理解されたプロセスであるため、良好であると予想されると思われるため、(2)対称性の低いビルディングブロックのずれた構造/配向は、SOF内に多くの可能な接続欠陥が起こるように適合し得るため、分子ビルディングブロック間の完全な反応が起こりやすいため。SOFは、理想的な三角形のビルディングブロック、ひずみのある三角形のビルディングブロック、理想的な四面体のビルディングブロック、ひずみのある四面体のビルディングブロック、理想的な四角形のビルディングブロック、ひずみのある四角形のビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1つの対称形のビルディングブロックを含んでいてもよい。
【0044】
化学物質の接続は、Fg間の反応によって、膜生成プロセス中、または膜生成プロセス後にSOFからほとんどを蒸発させるか、または取り去ることが可能な揮発性副生成物を生じるか、または複製生物が生成しないように行ってもよい。化学物質を接続する反応としては、エステル、イミン、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、アセタール、シリルエーテルを生成するような縮合反応、付加/脱離反応、付加反応が挙げられる。
【0045】
官能基間の反応によって、膜生成プロセスの後に、ほとんどがSOF内に組み込まれたままであるような、非揮発性の副生成物が生成する。化学物質を接続する反応としては、炭素−炭素結合を生成するような置換反応、メタセシス反応、金属触媒によるカップリング反応が挙げられる。
【0046】
また、SOFは、高い熱安定性を有し(典型的には、大気条件で、400度よりも高い)、有機溶媒への溶解性が低く(化学薬品安定性)、多孔性であってもよい(可逆的にゲストを取り込むことができる)。
【0047】
加えられる機能性は、従来のCOFに固有ではない特性を示し、分子組成物が、得られたSOFに上述の加えられる機能性を与えるような分子ビルディングブロックを選択することによって行ってもよい。加えられる機能性によって、加えられる機能性に「偏った特性」を有する分子ビルディングブロックの集合体を生じてもよい。また、加えられる機能性によって、この加えられる機能性に「偏った特性」を有さない分子ビルディングブロックの集合体を生じるが、得られたSOFが、SOF内へのセグメント(S)とリンカーとの接続の結果として、この加えられる機能性を有していてもよい。さらに、加えられる機能性の発生は、この加えられる機能性に「偏った特性」を有する分子ビルディングブロックを用いる効果と組み合わせることによって生じてもよく、この偏った特性は、セグメントおよびリンカーがSOFに接続すると、改変されるか、または高まる。
【0048】
分子ビルディングブロックの「偏った特性」との用語は、特定の分子組成物について存在することが知られている特性、またはセグメントの分子組成物を観察すれば、当業者ならば合理的に特定可能な特性を指す。用語「偏った特性」および「加えられる機能性」は、同じ一般的な特性(例えば、疎水性、電気活性など)を指すが、「偏った特性」は、分子ビルディングブロックの観点で用いられ、「加えられる機能性」は、SOFの観点で用いられる。
【0049】
SOFの疎水性(超疎水性)、親水性、疎油性(超疎油性)、脂溶性、光発色性および/または電気活性(導体、半導体、電荷移動材料)といった性質は、SOFの「加えられる機能性」をあらわし得る特性の例である。
【0050】
疎水性(超疎水性)は、水または他の極性種をはじく特性、(1)水を吸収し、および/またはその結果膨潤することができないこと、(2)水または他の水素結合種と強い水素結合を形成することができないことを指す。
【0051】
親水性は、水または他の極性種、またはこのような種に簡単に濡れる表面を引きよせ、吸着するか、または吸収する特性を指す。また、親水性とは、水または他の水素結合種と強い水素結合を形成するか、または多くの水素結合を形成することが可能なことを意味する。
【0052】
疎油性(油分をはじく性質)は、油または他の非極性種をはじく特性を指す。
【0053】
脂溶性(油分に溶ける性質)は、油または他の非極性種を引きつける特性を指す。
【0054】
光発色性は、電磁放射線に露光すると、可逆的な色変化を示す能力を指す。光発色性分子を含むSOF組成物を調製し、電磁放射線に露光し、可逆的な色変化を示してもよい。
【0055】
電気活性は、電荷(電子および/または正孔)を移動する特性を指す。電気活性材料としては、導体、半導体、電荷移動材料が挙げられる。導体は、電位差がある状態で、容易に電荷を移動させる材料であると定義される。半導体は、本質的に電気伝導性ではないが、電位差がある状態や、刺激(電場、電磁波、熱など)を加えると電気伝導性になる材料であると定義される。電荷移動材料は、電位差がある状態で、別の材料(例えば、染料、顔料または金属)から電荷が注入されると、その電荷を移動させることができる材料であると定義される。
【0056】
導体は、電位差計を用い、約0.1〜約10S/cmのシグナルが得られる材料である。
【0057】
半導体は、さらに、刺激が加えられた状態で、電位差計を用い、約10−6〜約10S/cmのシグナルが得られる材料であると定義されてもよい。または、半導体は、刺激にさらされた場合に、飛行時間技術を用いて測定すると、10−10〜約10cm−1−1の範囲の電子移動性および/または正孔移動性を有する材料であると定義されてもよい。
【0058】
さらに、電荷移動材料は、飛行時間技術を用いて測定すると、10−10〜約10cm−1−1の範囲の電子移動性および/または正孔移動性を有する材料であると定義されてもよい。ある状況下で、電荷移動材料も半導体に分類される場合があることを注記しておかねばならない。
【0059】
加えられる機能として疎水性を有するSOFは、疎水性に偏った特性を有し、および/またはマイクロメートル未満からマイクロメートル程度のスケールで、硬く、ざらつきがあるか、または多孔性の表面を有するような分子ビルディングブロックを用いて調製されてもよい。疎水性であり、マイクロメートル未満からマイクロメートル程度のスケールで、硬く、ざらつきがあるか、または多孔性の表面を有するような材料について記載した論文は、著者がCassieおよびBaxterのもの(Cassie,A.B.D.;Baxter,S.Trans.Faraday Soc.,1944,40,546)に記載されている。
【0060】
高度にフッ素化されたセグメント(加えられる機能として疎水性を有するSOFを導いてもよい)は、セグメントに存在するフッ素原子の数を、セグメントに存在する水素原子の数で割った値が1より大きいセグメントである。
【0061】
このようなフッ素化されたセグメントとしては、テトラフルオロヒドロキノン、ペルフルオロアジピン酸水和物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールが挙げられる。
【0062】
マイクロメートル未満からマイクロメートル程度のスケールで、硬く、ざらつきがあるか、または多孔性の表面を有するSOFも疎水性であってもよい。硬く、ざらつきがあるか、または多孔性のSOF表面によって、膜表面にぶら下がっているFgが存在するか、またはSOFの構造からぶら下がっているFgを有していてもよい。パターンの種類およびパターン化の程度は、分子ビルディングブロックの幾何形状および接続する化学の効率に依存して変わる。表面の粗さまたはざらつきをもたらす特徴の大きさは、約100nm〜約10μm、または約500nm〜約5μmである。
【0063】
極性置換基を有するセグメントは、偏った特性として親水性を有しており、加えられる機能として親水性を有するSOFを生じてもよい。極性置換基は、水と水素結合を生成することが可能な置換基を指し、ヒドロキシル、アミノ、アンモニウム、カルボニル(ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、カーボネート、尿素)が挙げられる。
【0064】
加えられる機能として電気活性を有するSOFは、偏った特性として電気活性を有する分子ビルディングブロックによって調製されてもよく、および/または、セグメントおよびリンカーを組み合わせた集合体から電気活性が生じてもよい。
【0065】
加えられる機能として正孔移動性を有するSOFは、トリアリールアミン、ヒドラゾンを含むセグメントコアを選択することによって得られてもよく(米国特許第7,202,002号)、エナミンを含むセグメントコアを選択することによって得られてもよい(米国特許第7,416,824号)。
【化1】


トリアリールアミンを含むセグメントコア:
【化2】


式中、Ar、Ar、Ar、Ar、Arは、それぞれ独立して、置換されているか、または置換されていないアリール基をあらわし、または、Arは、独立して、置換されているか、または置換されていないアリーレン基をあらわし、kは、0または1をあらわし、Ar、Ar、Ar、Ar、Arのうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む。Arは、置換されたフェニル環、置換された/置換されていないフェニレン、置換された/置換されていない一価の結合した芳香族環(例えば、ビフェニル、ターフェニルなど)、または置換された/置換されていない縮合した芳香族環(ナフチル、アントラニル、フェナントリルなど)であってもよい。
【0066】
加えられる機能として正孔移動性を有する、アリールアミンを含むセグメントコアとしては、アリールアミン:トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[p−ターフェニル]−4,4’’−ジアミン;ヒドラゾン:N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン;オキサジアゾール:2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール、スチルベンなどが挙げられる。
【0067】
正孔移動性に偏った、トリアリールアミンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックは、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化3】

【0068】
ヒドラゾンを含むセグメントコア:
【化4】


式中、Ar、Ar、Arは、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基をあらわし、Rは、水素原子、アリール基またはアルキル基をあらわし、場合により置換基を含んでいてもよく;Ar、Ar、Arのうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む;および関連するオキサジアゾール:
【化5】


式中、Ar、Arは、それぞれ独立して、Fg(上に定義したもの)を含むアリール基をあらわす。
【0069】
正孔移動性に偏った、ヒドラゾンコアおよびオキサジアゾールコアを含む分子ビルディングブロックは、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化6】

【0070】
エナミンを含むセグメントコア:
【化7】


式中、Ar、Ar、Ar、Arは、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基、または場合により1個以上の置換基を含むヘテロ環基をあらわし、Rは、水素原子、アリール基またはアルキル基をあらわし、場合により置換基を含んでいてもよく;Ar、Ar、Ar、Arのうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む。
【0071】
正孔移動性に偏った、エナミンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックは、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化8】

【0072】
加えられる機能として電子移動性を有するSOFは、以下の一般構造を有するニトロフルオレノン、9−フルオレニリデンマロニトリル、ジフェノキノン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを含むセグメントコアを選択することによって得てもよい。
【化9】


なお、ジフェニルキノンのカルボニル基は、SOF形成プロセス中にFgとしても作用可能であることを注記しておく。
【0073】
加えられる機能として半導体性を有するSOFは、以下の一般構造を有するアセン、チオフェン/オリゴチオフェン/縮合チオフェン、ペリレンビスイミド、またはテトラチオフルバレン、およびこれらの誘導体を含むセグメントコアを選択することによって得てもよい。
【化10】

【0074】
SOFは、p型半導体であってもよく、n型半導体であってもよく、アンバイポーラ型半導体であってもよい。SOF半導体の種類は、分子ビルディングブロックの性質に依存する。電子供与性を有する分子ビルディングブロックとしては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基が挙げられ、これらがSOFに存在すると、SOFをp型半導体にする場合がある。電子求引性を有する分子ビルディングブロックとしては、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、フッ素化アルキル基、フッ素化アリール基が挙げられ、これらは、SOFをn型の半導体にする場合がある。
【0075】
半導体性に偏った、アセンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックは、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化11】

【0076】
半導体性に偏った、チオフェン/オリゴチオフェン/縮合チオフェンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックは、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化12】

【0077】
半導体性に偏った、ペリレンビスイミドコアセグメントを含む分子ビルディングブロックの例は、以下の化学構造から誘導されてもよい。
【化13】

【0078】
半導体性に偏った、テトラチオフルバレンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックは、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化14】

【0079】
式中、Arは、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基、または場合により1個以上の置換基を含むヘテロ環基をあらわす。SOFまたは耐溶媒性SOFを製造するプロセスは、典型的には、複数の作業または工程を含んでおり、これらの作業または工程を任意の適切な順序で行ってもよく、または、2つ以上の作業を同時に行ってもよく、非常に近い時間に行ってもよい。
【0080】
キャッピングされたSOFおよび/またはコンポジットSOFを製造するプロセスは、典型的には、キャッピングされていないSOFを製造するために用いられるのと同じ数の作業または工程を含む。得られるSOF中の望ましいキャッピングユニットの分布に依存して、工程a、bまたはcのいずれかの間にキャッピングユニットおよび/または第2の成分を加えてもよい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分の分布が、得られたSOF全体に実質的に均一であることが望ましい場合、キャッピングユニットは、工程aの間に加えてもよい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分の分布がもっと不均一であることが望ましい場合、工程bおよびcの間にキャッピングユニットおよび/または第2の成分を加えてもよい。
【0081】
上述の作業または工程は、大気圧、大気圧を超える圧力、または大気圧より低い圧力で行ってもよい。約0.1atm〜約2atm、または約0.5atm〜約1.5atm、または約0.8atm〜約1.2atmの圧力を利用してもよい。
【0082】
プロセスの作業A:液体コーティング反応混合物の調製:反応混合物は、液体に溶解するか、懸濁するか、または混合するような複数の分子ビルディングブロックを含む。複数の分子ビルディングブロックは、1種類であってもよく、または2種類以上を含んでいてもよい。1種類以上の分子ビルディングブロックが液体である場合、さらなる液体の使用は任意である。場合により、プレSOFの形成を可能にし、および/または上述の作業Cの間のSOF形成速度を変えるために、反応混合物に触媒を加えてもよい。用語「プレSOF」は、互いに反応し、出発原料である分子ビルディングブロックよりも高い分子量を有し、他のビルディングブロックまたはプレSOFとさらに反応してSOFを得ることが可能なような複数のFgを含有するような、少なくとも2種類の分子ビルディングブロックを指していてもよく、実質的に欠陥がないSOF、または欠陥がないSOFであってもよく、および/または、分子ビルディングブロックのFgの「活性化」によって、膜形成プロセスの反応性が高まったり、変わったりする。活性化としては、官能基部分の解離、触媒の事前の会合、溶媒分子、液体、第2の溶媒、第2の液体、第2の成分、または官能基の反応性を変える任意の部分との会合が挙げられる。プレSOFの形成は、分子ビルディングブロック間の反応、または分子ビルディングブロックのFgの「活性化」を含んでいてもよく、これら両方を含んでいてもよい。「プレSOF」の配合は、複数の様式で達成されてもよく、例えば、反応混合物を加熱すること、反応混合物にUVを照射すること、または分子ビルディングブロックを部分的に反応させる任意の他の手段、および/または濡れた層を基板に堆積させる前に、反応混合物中のFgを活性化させることを含んでいてもよい。場合により、反応混合物に添加剤または第2の成分を加え、得られるSOFの物理的特性を変えてもよい。
【0083】
反応混合物の成分(分子ビルディングブロック、場合により、液体、場合により、触媒、場合により、添加剤)を容器内で混合する。反応混合物の成分を加える順序は、さまざまであってもよいが、典型的には、SOFを調製するプロセスが、プレSOFを含むか、またはプレSOFの形成を含む場合、触媒を、存在する場合には、反応混合物を濡れた膜として堆積させる前に、反応混合物に加えてもよい。プレSOFを得るための触媒が存在する条件、または存在しない条件で、化学線、熱、化学薬品によって、または任意の他の手段によって、分子ビルディングブロックを反応させてもよい。触媒が存在しない状態で作成したプレSOFおよび分子ビルディングブロックを、分子ビルディングブロックおよびプレSOFを溶解しやすくする触媒が存在しない状態で、液体中で加熱してもよい。分子ビルディングブロックおよびプレSOFを溶解しやすくするために、触媒が存在する状態で作成したプレSOFおよび分子ビルディングブロックを、分子ビルディングブロックおよび/またはプレSOFがさらに顕著な量反応しないような温度で加熱してもよい。また、反応混合物を混合し、攪拌し、粉砕などを行い、反応混合物を濡れた膜として堆積させる前に、配合物成分を均一に分散させてもよい。
【0084】
反応混合物を濡れた膜として堆積させる前に加熱してもよい。これにより、1つ以上の分子ビルディングブロックを溶解しやすくしてもよく、および/または、濡れた層を堆積させてプレSOFを作成する前に、反応混合物を部分的に反応させることによって、反応混合物の粘度を高くしてもよい。あらかじめ反応させておいた分子ビルディングブロックのプレSOFに組み込まれた反応混合物中の分子ビルディングブロックの重量%は、20%未満であってもよく、約15%〜約1%、約10%〜約5%であってもよい。95%のプレSOF分子の分子量は、5,000ダルトンであるか、2,500ダルトンであるか、または1,000ダルトンである。プレSOFを調製し、反応混合物中の分子ビルディングブロックの保持量を増やしてもよい。
【0085】
官能基の活性化によってプレSOFを作成する場合には、活性化されるFgのモル%は、50%未満であってもよく、約30%〜約10%、または約10%〜約5%であってもよい。
【0086】
プレSOFを作成する2つの方法(分子ビルディングブロック間の反応による、プレSOFの作成、または、分子ビルディングブロックのFgを“活性化”させることによる、プレSOFの作成)を組み合わせて行ってもよく、プレSOFの構造に組み込まれた分子ビルディングブロックは、活性化されたFgを含んでいてもよい。また、分子ビルディングブロック間の反応による、プレSOFの作成、および、分子ビルディングブロックのFgを“活性化”させることによる、プレSOFの作成を同時に行ってもよい。
【0087】
プレSOFを作成する時間は、約10秒〜約48時間、または約30秒〜約12時間、または約1分〜約6時間続いてもよい。
【0088】
反応混合物は、堆積した濡れた層を支えるような粘度を有することが必要である。反応混合物の粘度は、約10〜約50,000cps、約25〜約25,000cps、または約50〜約1000cpsの範囲である。
【0089】
分子ビルディングブロックおよびキャッピングユニットを保持すること、または反応混合物中の「保持量」は、分子ビルディングブロックと、場合により、キャッピングユニットおよび触媒との合計重量を、反応混合物の合計重量で割ったものであると定義される。ビルディングブロックの保持量は、約3〜100%、約5〜約50%、または約15〜約40%の範囲であってもよい。液体の分子ビルディングブロックが反応混合物の唯一の液体成分として用いられる場合、ビルディングブロックの保持量は、約100%であろう。キャッピングユニットが反応混合物にいつ加えられるかによって、キャッピングユニットの保持量は、約3〜約80%、約5〜約50%、または約15〜約40重量%の範囲であってもよい。
【0090】
キャッピングユニット保持量の理論的な上限値は、液体SOF配合物中、分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続基の数を2まで減らすキャッピングユニットのモル数である。このような保持量では、実質的に、分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続可能なFgの数を(それぞれのキャッピング基と反応させることによって)使いつくすことによって、SOFの形成が有効に抑えられるであろう。(キャッピングユニットの保持量が、液体SOF配合物中の分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続基が2モルよりも過剰にならないようにするのに十分な量である)このような場合、キャッピングユニットで完全にキャッピングされたオリゴマー、線形ポリマー、分子ビルディングブロックが、SOFの代わりに優先的に生成するだろう。
【0091】
プレSOFは、1つ以上の加えられる機能を有するビルディングブロックから作られてもよい。分子ビルディングブロックの偏った特性は、プレSOFに加えられる機能と同じであってもよい。または、SOFの加えられる機能は、分子ビルディングブロックの偏った特性とは違っていてもよい。
【0092】
反応混合物中で用いられる液体は、純粋な液体であってもよく、および/または溶媒混合物であってもよい。適切な液体は、沸点が約30〜約300℃、約65℃〜約250℃、または約100℃〜約180℃であってもよい。
【0093】
液体としては、アルカン;芳香族化合物;エーテル;エステル;ケトン;アミン;アミド;アルコール;ニトリル;ハロゲン化芳香族;ハロゲン化アルカン;水が挙げられる。
【0094】
また、第1の溶媒、第2の溶媒、第3の溶媒などを含む混合した液体を、反応混合物中で用いてもよい。第1の溶媒は、沸点が第2の溶媒より高くてもよい。
【0095】
「実質的に除去する」は、それぞれの溶媒を少なくとも90%、または約95%除去することを指す。「実質的に残っている」は、それぞれの溶媒が、2%を超えない量で除去されるか、または1%を超えない量で除去されることを指す。
【0096】
SOFの特性を操作するために、濡れた層がSOFに変換する速度を遅くするか、または速くするために、混合した液体を用いてもよい。縮合および付加/脱離によって化学物質を接続する場合、水、1級アルコール、2級アルコールまたは3級アルコールを含む液体を用いてもよい。
【0097】
場合により、濡れた層を乾燥したSOFにすることを促進するために、反応混合物中に触媒が存在していてもよい。触媒は、均一系であってもよく、不均一系であってもよく、ブレンステッド酸;ルイス酸;ブレンステッド塩基;ルイス塩基;金属;金属塩;金属錯体であってもよい。典型的な触媒の保持量は、反応混合物中の分子ビルディングブロックの保持量の約0.01%〜約25%、または約0.1%〜約5%の範囲である。触媒は、最終的なSOF組成物中に存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0098】
場合により、添加剤または第2の成分(ドーパント)が、反応混合物および濡れた層に存在していてもよい。また、このような添加剤または第2の成分を、乾燥SOFに組み込んでもよい。「添加剤」または「第2の成分」は、SOFに共有結合していないが、組成物にランダムに分布している原子または分子を指す。第2の成分(例えば、従来の添加剤)の既知の特性を利用するために、その成分を用いてもよい。このような添加剤を用い、電気特性(電気伝導性、半導体性、電子移動性、正孔移動性)、表面エネルギー(疎水性、親水性)、引張強度、熱伝導性といった、SOFの物理特性を変えてもよく、このような添加剤は、衝撃改質剤、強化繊維、滑沢剤、帯電防止剤、カップリング剤、湿潤剤、かぶり防止剤、難燃剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、殺生物剤、染料、顔料、臭気物質、脱臭剤、核形成剤などであってもよい。
【0099】
SOFは、SOFが酸化しないように保護するために、酸化防止剤を第2の成分として任意の望ましい量または有効な量で含有していてもよく、または、SOFの約0.25重量%〜約10重量%、約1重量%〜約5重量%の量で含有していてもよい。
【0100】
SOFは、任意の適切なポリマー系材料を、総固形分の重量%として、SOFの約1〜約50重量%、または約2〜約10重量%の量で、さらに含んでいてもよい。総固形分は、第2の成分およびSOFの量を含む。
【0101】
第2の成分は、SOFに均一に分布していてもよく、不均一に分布していてもよく、線形または非線形の勾配をもって分布していてもよい。SOFは、カーボンナノチューブ、またはナノチューブの微視的な粒子構造であるナノファイバー凝集物をさらに含んでいてもよい。
【0102】
SOFは、金属粒子を第2の成分としてさらに含んでいてもよく、このような金属粒子としては、貴金属、非貴金属、およびこれらのアロイが挙げられる。SOFは、酸化物および硫化物を、任意の望ましい量または有効な量でさらに含んでいてもよく、または、SOFの約0.25重量%〜約20重量%、または約1重量%〜約15重量%の量で含んでいてもよい。SOFは、半金属または金属に似た元素を、任意の望ましい量または有効な量でさらに含んでいてもよく、または、SOFの約0.25重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約5重量%の量で含んでいてもよい。
【0103】
SOFは、第2の成分として正孔移動性分子または電子受容体をさらに含んでいてもよく、このような電荷移動性分子としては、主鎖または側鎖に多環芳香族環(例えば、アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネンなど)または窒素を含有するヘテロ環(例えば、インドール化合物、カルバゾール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ピラゾリン化合物、チアジアゾール化合物、トリアゾール化合物、ヒドラゾン化合物)を含む化合物から選択される正孔移動材料が挙げられる。典型的な正孔移動材料としては、電子供与材料が挙げられ、例えば、カルバゾール;N−エチルカルバゾール;N−イソプロピルカルバゾール;N−フェニルカルバゾール;テトラフェニルピレン;1−メチルピレン;;ペリレン;クリセン;アントラセン;テトラフェン;2−フェニルナフタレン;アゾピレン;1−エチルピレン;アセチルピレン;2,3−ベンゾクリセン;2,4−ベンゾピレン;1,4−ブロモピレン;ポリ(N−ビニルカルバゾール);ポリ(ビニルピレン);ポリ(ビニルテトラフェン);ポリ(ビニルテトラセン)、ポリ(ビニルペリレン)が挙げられる。適切な電子移動材料としては、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン;2,4,5,7−テトラニトロ−フルオレノン;ジニトロアントラセン;ジニトロアクリデン;テトラシアノピレン;ジニトロアントラキノン;ブチルカルボニルフルオレンマロノニトリル(米国特許第4,921,769号を参照)のような電子受容体;正孔移動材料が挙げられる(米国特許第4,265,990号、米国特許第4,306,008号;第4,304,829号;第4,233,384号;第4,115,116号;第4,299,897号;第4,081,274号、第5,139,910号、第4,921,773号、第4,464,450号を参照)。正孔移動材料または電子受容体は、SOFコンポジット中に任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、または、SOFの約0.25重量%〜約50重量%、または約1重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0104】
SOFは、SOFの約0.1〜約1.0重量%の量で殺生物剤をさらに含んでいてもよい。
【0105】
SOFは、有機低分子を、任意の望ましい量または有効な量でさらに含んでいてもよく、または、SOFの約0.25重量%〜約50重量%、または約1重量%〜約10重量%の量で含んでいてもよい。
【0106】
第2の成分は、濡れた膜を作成するために使用される液体配合物に入れられてもよく、これにより、SOFを作成する変化が促進される。第2の成分(ドーパント、添加剤など)は、反応混合物に溶解していてもよく、溶解していなくても(懸濁していても)よい。第2の成分は、膜の網目に結合していない。第2の成分を、セグメントに4個のメトキシ基(−OMe)を有する複数のビルディングブロック(例えば、N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン)を含有する反応混合物に加えてもよく、濡れた膜で変化が促進されると、p−キシリルセグメントを含むビルディングブロックの2個のアルコール(−OH)基(例えば、1,4−ベンゼンジメタノール)と排他的に反応する。ビルディングブロックを連結するために起こる化学は、酸触媒によるエステル交換反応である。−OH基は、−OMeとしか反応せず(その逆に、−OMe基は、−OHとしか反応せず)、第2の成分とは反応しないため、これらの物質分子ビルディングブロックは、1つの経路でのみ反応することができる。したがって、SOFは、SOF構造に組み込まれた第2の成分および/またはSOFの周囲にある第2の成分を残すような様式で、分子を規則的に並べるようにプログラミングされている。このように分子をパターン化させ、第2の成分を組み込む能力によって、従来のポリマーおよび利用可能な代替品と比較して、優れた性能を与え、特性を今までに例のないレベルで制御することができる。
【0107】
第2の成分は、反応混合物と濡れた層に存在していてもよい。このような添加剤、ドーパント、または第2の成分も、乾燥SOFに組み込まれてもよい。第2の成分は、反応混合物の中、濡れた層の中、または乾燥SOFの中で均一であってもよく、不均一であってもよい。キャッピングユニットとは対称的に、用語「添加剤」または「第2の成分」は、SOFに共有結合しておらず、組成物中にランダムに分布する原子または分子を指す。
【0108】
第2の成分は、標的とする性能を満たすようにするために、キャッピングされたSOFの目的とする特性を強めるか、または組み合わせるために、同様の特性または別個の特性(相乗効果、または改良した効果、キャッピングされたSOFの固有の特性または偏った特性を強める能力)を有していてもよい。例えば、キャッピングされたSOFに酸化防止剤化合物をドープすると、化学分解経路を防ぐことによって、キャッピングされたSOFの寿命が延びるだろう。さらに、反応混合物からキャッピングされたSOFを作成するという変化を促進している間に起こる反応をうまく調節することによって、キャッピングされたSOFの形態学的性質を高めるために、添加剤を加えてもよい。
【0109】
プロセスの作業B:反応混合物を濡れた膜として堆積:多くの液体堆積技術を用い、種々の基板に、反応混合物を濡れた膜として塗布してもよい。
【0110】
基板としては、ポリマー、紙、金属、金属アロイ、周期律表のIII族〜VI族の元素がドープされた形態およびドープされていない形態、金属酸化物、金属カルコゲニド、あらかじめ調製しておいたSOFまたはキャッピングされたSOFが挙げられる。基板の厚みは、ほぼ10マイクロメートル〜10ミリメートルまでであってもよく、例示的な厚みは、約50〜約100マイクロメートルである。
【0111】
多くの液体堆積技術を用い(例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ウェブコーティング、浸漬コーティング、カップコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコーティング、スタンピングなどを含む)、反応混合物を基板に塗布してもよい。濡れた層の厚みは、約10nm〜約5mm、約100nm〜約1mm、または約1μm〜約500μmの範囲であってもよい。
【0112】
上述のプロセスBの作業を終えた後に、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を導入してもよい。この様式でキャッピングユニットおよび/または第2の成分を組み込むことは、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を均一に、または不均一に、または濡れた膜の上に特定の模様として分散させる任意の手段によって達成してもよい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を導入した後、プロセスCの作業を再開しつつ、次のプロセスの作業を行ってもよい。
【0113】
反応混合物を基板に塗布した後、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を任意の適切な方法によって濡れた層に加えてもよく、濡れた層の上面にキャッピングユニットおよび/または第2の成分を分布させることによって、濡れた層に加えてもよい。生成した濡れた層にキャッピングユニットおよび/または第2の成分を、均一な様式または不均一な様式で(種々のパターンを含む)塗布してもよく、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の濃度または密度は、濡れた層の上に、所与の幅でキャッピングユニットおよび/または第2の成分の濃度が高い部分と低い部分が交互に並ぶ帯状のパターンを形成するように、特定の領域では小さい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を濡れた層の上面に塗布すると、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の一部分が濡れた層に拡散するか、沈み、それによって、SOFの厚み内でキャッピングユニットおよび/または第2の成分が不均一に分散し、その結果、濡れた層を乾燥SOFに変化するのを促進した後に得られるSOFに、線形または非線形の濃度勾配が得られてもよい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を、堆積した濡れた層の上側表面に加えてもよく、濡れた層の変化を促進すると、キャッピングユニットおよび/または第2の成分が乾燥SOFで不均一に分散したSOFが得られる。濡れた膜の密度、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の密度に依存して、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の大部分が、乾燥SOFの上側半分(基板と反対側)に残ってもよく、または、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の大部分が、乾燥SOFの下側半分(基板に隣接する側)に残ってもよい。
【0114】
プロセスの作業C:濡れた膜から乾燥SOFへの変化を促進:「促進する」は、分子ビルディングブロックおよび/またはプレSOFの反応を容易にする任意の適切な技術を指す。また、「促進する」は、乾燥膜を形成するために、任意の液体を除去することも指す。分子ビルディングブロックおよび/またはプレSOFの反応、液体の除去は、連続して行われてもよく、同時に行われてもよい。「乾燥SOF」は、液体の含有量がSOFの約5%未満、または約2%未満の、実質的に乾燥したSOFを指す。
【0115】
乾燥SOFまたは乾燥SOFの所与の領域(例えば、表面から、SOFの厚みの約10%に等しい深さまで、または、SOFの厚みの約5%に等しい深さまで、SOF中の上側4分の1)では、キャッピングユニットとセグメントとのモル比が、約1:100〜約1:1、または約1:50〜約1:2、または約1:20〜1:4であってもよい。
【0116】
濡れた層から乾燥SOFを形成するのを促進することは、任意の適切な技術によって行われてもよい。濡れた層から乾燥SOFを形成するのを促進することは、典型的には、オーブンでの乾燥、赤外線(IR)などを用いた、温度が40〜350℃、60〜200℃、85〜160℃での熱処理を含む。合計加熱時間は、約4秒〜約24時間、または1分〜120分、または3分〜60分の範囲であってもよい。
【0117】
第2の成分が存在する場合、第2の成分の分子の大きさは、濡れた層から乾燥SOFを形成するのを促進させている間に、第2の成分がSOFの骨格に取り込まれ、その結果、取り込まれた第2の成分が、液体トナーまたは溶媒にさらされている間にSOFから漏れ出さないように選択されてもよい。
【0118】
種々の種類のIRエミッタを用いてもよく、炭素IRエミッタまたは短波IRエミッタに関する例示的な情報を以下の表にまとめている(表1)。
【表1】

【0119】
濡れた層の堆積物を支えるために、接着性の低い適切な基板を用いる場合、自立型のSOFを得ることができる。
【0120】
場合により、自立型SOF、または可とう性基板によって支持されるSOFを、ロールに加工してもよい。SOFを切断し、つなぎ合わせる方法は、米国特許第5,455,136号に記載したのと同様の方法である。SOFベルトを、1つのSOFから、多層SOFから、またはウェブから得たSOFシートから加工してもよい。このようなシートは、所望な場合、長方形の形状であってもよく、任意の特定の形状であってもよい。SOFのすべての側面が同じ長さであってもよく、一対の平行な側面が、他方の一対の平行な側面よりも長くてもよい。SOFを、ある形状に加工してもよく、またはSOFシートの反対側の縁部を重ねてつなぎ合わせることによって、ベルトに加工してもよい。つなぎ目は、典型的には、接合点で縁部を重ねてつなぎ合わせる作られる。接続は、任意の適切な手段によって行われてもよい。典型的な接続技術としては、溶接(超音波による溶接を含む)、のり付け、テープによる接着、圧力と熱による融着などが挙げられる。例えば、超音波溶接のような方法は、その速度、きれいさ(溶媒を使わない)、薄くて狭いつなぎ目が得られるという点で、可とう性シートを接続するのに望ましい一般的な方法である。
【0121】
SOF形成プロセス中、SOFを基板として用い、多層SOFを得てもよい。多層SOFの層は、化学的に結合していてもよく、物理的に接触していてもよい。化学的に結合した多層SOFは、基板SOF表面に存在するFgを、第2のSOF層を作成するのに必要な、堆積した濡れた層中に存在する分子ビルディングブロックと反応させることが可能な場合に、生成する。物理的に接触している多層SOFは、互いに化学的に結合していなくてもよい。
【0122】
場合により、SOF基板は、第2のSOF層が化学的に結合して多層SOFを形成できる、または、多層SOFの形成を促進するように、濡れた層を堆積する前に化学的に処理してもよい。
【0123】
または、SOF基板は、第2のSOF層が化学的に結合しないように、濡れた層を堆積する前に化学的に処理し(表面の反応性を抑え)、物理的に接触した多層SOFを作成してもよい。
【0124】
その他の方法(例えば、2つ以上のSOFの積層)を利用し、物理的に接触する多層SOFを調製してもよい。
【0125】
電子写真式画像形成体(例えば、感光体)の代表的な構造を図1〜3に示す。これらの画像形成体は、屈曲防止層1、支持基板2、電気伝導性接地板3、電荷遮断層4、接着層5、電荷発生層6、電荷移動層7、オーバーコート層8、アース片9とを備えた状態で提供される。図3において、画像形成層10(電荷発生材料と電荷移動材料の両方を含む)は、別個の電荷発生層6および電荷移動層7の代わりに配置されている。
【0126】
図からわかるように、感光体の加工では、電荷発生材料(CGM)および電荷移動材料(CTM)を、CGMおよびCTMが異なる層であるような積層型構造で、基板表面に堆積させてもよく(例えば、図1および図2)、または、CGMおよびCTMが同じ層であるような単一相の構造で堆積させてもよい(例えば、図3)。感光体は、電気伝導層の上に、電荷発生層6を塗布し、場合により、電荷移動層7を塗布することによって調製されてもよい。電荷発生層と、存在する場合、電荷移動層とを、任意の順序で塗布してもよい。
【0127】
いくつかの用途では、電気絶縁性であるか、わずかに半導体性であるような、膜を形成する有機ポリマーまたは無機ポリマーを含んでいる、任意要素の屈曲防止層1を与えてもよい。屈曲防止層は、平坦性および/または耐摩耗性を付与する。
【0128】
屈曲防止層1を、基板2の背面(画像形成層とは反対側)に形成してもよい。屈曲防止層は、膜形成樹脂に加え、接着を促進するポリエステル添加剤を含んでいてもよい。屈曲防止層として有用な膜形成樹脂の例としては、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニルカーボネート)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリデンジフェニルカーボネート)、これらの混合物などが挙げられる。
【0129】
添加剤は、屈曲防止層中に、屈曲防止層の約0.5〜約40重量%の範囲で存在してもよい。添加剤としては、耐摩耗性をさらに高め、および/または電荷緩和特性を付与することが可能な有機粒子および無機粒子が挙げられる。有機粒子としては、テフロン粉末、カーボンブラック、グラファイト粒子が挙げられる。無機粒子としては、絶縁性および半導体性の金属酸化物粒子、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられる。別の半導体性添加剤は、酸化されたオリゴマー塩であってもよい(米国特許第5,853,906号を参照)。オリゴマー塩は、酸化されたN,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ビフェニルジアミン塩である。
【0130】
添加剤として有用な、典型的な接着促進剤としては、duPont 49,000(duPont)、Vitel PE−100、Vitel PE−200、Vitel PE−307(Goodyear)、これらの混合物などが挙げられる。膜形成樹脂を添加するために、膜形成樹脂の重量に基づいて、通常は、約1〜約15重量%の接着促進剤が選択される。
【0131】
屈曲防止層の厚みは、典型的には、約3μm〜約35μm、または約10μm〜約20μm、または約14μmである。
【0132】
屈曲防止性コーティングを、膜形成樹脂および接着促進剤を溶媒(例えば、塩化メチレン)に溶解することによって調製した溶液として塗布してもよい。この溶液を、ウェブコーティングによって、または当該技術分野で既知の他の方法によって、感光体デバイスの支持基板の裏面(画像形成層の反対側)に塗布してもよい。オーバーコート層および屈曲防止層のコーティングは、電荷移動層と、電荷発生層と、接着層と、遮断層と、接地板と、基板とを備える多層感光体にウェブコーティングすることによって同時に行われてもよい。次いで、濡れた膜コーティングを乾燥させ、屈曲防止層1を得る。
【0133】
まず、基板2(すなわち、支持板)を与えることによって、感光体を調製する。基板は、不透明であってもよく、または実質的に透明であってもよく、例えば、米国特許第4,457,994号;第4,871,634号;第5,702,854号;第5,976,744号;第7,384,717号に記載されるような、所与の必要な機械特性を有する任意のさらなる適切な材料を含んでいてもよい。
【0134】
基板は、無機組成物または有機組成物のような、非電気伝導性材料の層、または電気伝導性の層を含んでいてもよい。非電導性材料を用いる場合、このような非電導性材料の上に電気伝導性接地板を与えることが必要な場合がある。電導性材料を基板として用いる場合、別個の接地層は必要としない場合がある。
【0135】
基板は、可とう性であってもよく、剛性であってもよく、シート、巻物、終端のない可とう性ベルト、ウェブ、円筒形等を含む、任意の多くの異なる形状を有していてもよい。感光体を、剛性で、不透明の伝導性基板(例えば、アルミニウムドラム)にコーティングしてもよい。
【0136】
ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタンなどを含む種々の樹脂を非電気伝導性材料として用いてもよい。このような基板は、E.I.duPont de Nemours & Co.から入手可能なMYLAR商標、ICI Americas Inc.から入手可能なMELINEX商標、またはAmerican Hoechst Corporationから入手可能なHOSTAPHAN商標として知られる市販の二軸配向のポリエステルを含んでいてもよい。基板に含まれてもよい他の材料としては、TEDLAR商標としてE.I.duPont de Nemours & Co.から入手可能なフッ化ポリビニル、MARLEX商標としてPhillips Petroleum Companyから入手可能なポリエチレンおよびポリプロピレン、RYTON商標としてPhillips Petroleum Companyから入手可能なポリフェニレンスルフィド、KAPTON商標としてE.I.duPont de Nemours & Coから入手可能なポリイミドのようなポリマー系材料が挙げられる。また、上述のように、あらかじめ表面に伝導性接地板をコーティングしておいた絶縁性プラスチックドラムに、感光体をコーティングしてもよい。このような基板は、つなぎ目があってもよく、つなぎ目がなくてもよい。
【0137】
伝導性基板を使用する場合、任意の適切な伝導性材料を用いてもよい。伝導性材料としては、限定されないが、金属酸化物、硫化物、ケイ化物、四級アンモニウム塩組成物、ポリアセチレンまたはその熱分解生成物および分子がドープされた生成物のような伝導性ポリマー、電荷移動複合体、ポリフェニルシラン、およびポリフェニルシランから得られる、分子がドープされた生成物を含むバインダー樹脂に含まれる、金属フレーク、粉末または繊維、またはアルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、真ちゅう、金、ステンレス鋼、カーボンブラック、グラファイトなどが挙げられる。また、伝導性プラスチックドラムだけではなく、アルミニウムのような金属から作られる伝導性金属ドラムを用いてもよい。
【0138】
基板の厚みは、必要な機械的性能および経済的な考慮事項を含め、多くの因子に依存する。基板の厚みは、典型的には、直径の小さなローラー(例えば、直径が19mmのローラー)の周囲を回転させる場合、最適な可とう性、誘発される表面曲げ応力を最小限にするには、約65μm〜約150μm、または約75μm〜約125μmの範囲にある。可とう性ベルト用基板は、最終的な光伝導性デバイスに悪影響を与えない限り、かなりの(200μmを超える)厚みを有していてもよく、最低限の厚み(50μm未満)を有していてもよい。ドラムを用いる場合、厚みは、必要な剛性を得るのに十分なものであるべきであり、約1mmから約6mmであってもよい。
【0139】
層が塗布されるべき基板表面を、層への接着性を高めるために洗浄してもよい。洗浄は、基板層表面に対し、プラズマ放電、イオン衝撃などを行うことによって、または溶媒による洗浄によって行ってもよい。
【0140】
金属層を作成するために使用される任意の技術にかかわらず、一般的に、空気にさらされると、ほとんどの金属の外側表面に金属酸化物の薄層が生成する。したがって、金属層の下にある他の層が「連続した」層であると特徴づけられる場合に、これらの下にある連続した層が、実際には、酸化性金属層の外側表面に形成された金属酸化物の層と接触している可能性があることを意図している。
【0141】
調製した感光体は、電気伝導性または非電気伝導性の基板を含んでいる。非電気伝導性基板を用いる場合、電気伝導性接地板3を使用しなければならず、この接地板が伝導性基板として作用する。伝導性基板を用いる場合、基板が伝導層として作用する場合があるが、さらに伝導性接地板を与えてもよい。
【0142】
電気伝導性接地板を用いる場合、基板の上に配置される。電気伝導性接地板に適した材料としては、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、銅など、およびこれらの混合物およびアロイが挙げられる。
【0143】
溶液コーティング、蒸着、スパッタリングのような既知のコーティング技術によって、接地板を塗布してもよい。電気伝導性接地板を塗布する方法は、減圧蒸着による方法である。
【0144】
接地板の厚みは、電気伝導体に望ましい光学的な透明度および可とう性に依存し、かなり広範囲にわたって変わってもよい。可とう性光応答性画像形成デバイスの場合、伝導層の厚みは、約20Å〜約750Åであってもよく、または、電気伝導性、可とう性、光透過度を最適に組み合わせるためには、約50Åから約200Åであってもよい。しかし、接地板は、所望な場合、不透明であってもよい。
【0145】
任意の電気伝導性接地板層を堆積させた後、この層に電荷遮断層4を塗布してもよい。正に帯電した感光体のための電子遮断層によって、正孔が、感光体の画像形成表面から伝導性層に移動することができる。負に帯電した感光体の場合、正孔が伝導層から反対側の光伝導層に移動するのを防ぐ障壁を形成することが可能な任意の適切な正孔遮断層を利用してもよい。
【0146】
遮断層を用いる場合、遮断層は、電気伝導層の上に配置されていてもよい。「〜の上」は、多くの異なる種類の層と組み合わせて本明細書で使用される場合、層が連続的である場合に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、用語「〜の上」は、層の相対的な位置を指すものであり、特定されていない中間層を含むことを包含する。
【0147】
遮断層4としては、米国特許第4,338,387号;第4,286,033号;第4,291,110号に開示されているような、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタンなどのようなポリマー;窒素を含有するシロキサンまたは窒素を含有するチタン化合物、またはトリメトキシシリルプロピルエチレンジアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イソプロピル4−アミノベンゼンスルホニルチタネート、ジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート、イソプロピルジ(4−アミノベンゾイル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−エチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリアントラニルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジメチル−エチルアミノ)チタネート、チタン−4−アミノベンゼンスルホネートオキシアセテート、チタン4−アミノベンゾエートイソステアレートオキシアセテート、γ−アミノブチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0148】
遮断層は、連続した層であってもよく、厚みは、約0.01〜約10μm、または約0.05〜約5μmであってもよい。
【0149】
遮断層4を、噴霧、浸漬コーティング、引き抜き棒によるコーティング、グラビアコーティング、シルクスクリーン、エアナイフによるコーティング、逆回転ロールコーティング、真空蒸着、化学処理などのような任意の適切な技術によって塗布してもよい。薄層を得る際に簡便になるように、遮断層を希釈溶液の形態で塗布してもよく、コーティングを蒸着させた後、溶媒を従来の技術(減圧、加熱など)で除去する。一般的に、遮断層材料と溶媒との重量比が、約0.5:100〜約30:100、または約5:100〜約20:100であることが、スプレーコーティングおよび浸漬コーティングの条件を満たしている。
【0150】
顆粒状粒子、針状粒子、バインダー樹脂および有機溶媒で構成されるコーティング溶液を用い、電荷遮断層が形成された電子写真式感光体を作成する方法が提供される。
【0151】
有機溶媒は、C1〜3低級アルコールの共沸混合物と、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トルエン、テトラヒドロフランからなる群から選択される別の有機溶媒の混合物であってもよい。上述の共沸混合物は、液相の組成と、気相の組成が、特定の圧力で、一定の沸点を有する混合物を与えるために互いに一致しているような混合物の溶液である。35重量部のメタノールと、65重量部の1,2−ジクロロエタンからなる混合物は、共沸溶液である。共沸組成物が存在すると、均一に蒸発し、それによって、コーティングの欠陥がなく、電荷遮断コーティング溶液の貯蔵安定性が向上した、均一な電荷遮断層が生成する。
【0152】
遮断層に含まれるバインダー樹脂は、単一の樹脂層として作られる遮断層と同じ材料から作られていてもよい。特に、(i)ポリアミド樹脂が、遮断層の上に画像形成層を作成するのに使用する溶液に溶解せず、膨潤もしないこと、(ii)ポリアミド樹脂が、伝導性支持材と優れた接着性を有し、可とう性を有すること、というバインダー樹脂に必要な種々の条件を満足するために、ポリアミド樹脂を用いてもよい。ポリアミド樹脂では、アルコール可溶性のナイロン樹脂を用いてもよく(6−ナイロン、6,6−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンなどと重合させたナイロンコポリマー);化学変性させたナイロン、例えば、N−アルコキシメチル変性させたナイロン、N−アルコキシエチル変性させたナイロンを用いてもよい。使用可能な別の種類のバインダー樹脂は、フェノール系樹脂またはポリビニルブチラール樹脂である。
【0153】
バインダー樹脂、顆粒状粒子、針状粒子を溶媒に分散させ、遮断層のコーティング溶液を作成し、このコーティング溶液を用いて伝導支持板をコーティングし、これを乾燥させることによって、電荷遮断層を作成する。溶媒中の分散性を高め、時間経過にともなってコーティング溶液がゲル化することを防ぐように、溶媒を選択する。さらに、コーティング溶液の組成物が、時間経過にともなって変化するのを防ぐために共沸溶媒を用いてもよく、これによって、コーティング溶液の貯蔵安定性が向上し、コーティング溶液が再生してもよい。
【0154】
「n型」は、優先的に電子を移動させる材料を指す。典型的なn型材料としては、ジブロモアントアントロン、ベンズイミダゾールペリレン、酸化亜鉛、酸化チタン、アゾ化合物(例えば、クロロジアンBlue)およびビスアゾ顔料、置換された2,4−ジブロモトリアジン、多核芳香族キノン、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0155】
「p型」は、正孔を移動させる材料を指す。典型的なp型有機顔料としては、金属を含まないフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、ガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、銅フタロシアニンなどが挙げられる。
【0156】
接着を促進するために、遮断層と電荷発生層の間に中間層5を与えてもよい。または、浸漬コーティングされたアルミニウムドラムを、接着層を用いることなく利用してもよい。
【0157】
さらに、必要な場合、任意の隣接する層を確実に接着させるために、感光体中の任意の層の間に接着層を与えてもよい。これに代えて、またはこれに加え、接着すべきそれぞれの層の片側または両側に接着性材料を組み込んでもよい。このような任意要素の接着層は、厚みが約0.001μm〜約0.2μmであってもよい。接着材料を適切な溶媒に溶解し、手で塗布するか、噴霧、浸漬コーティング、引き抜き棒によるコーティング、グラビアコーティング、シルクスクリーン、エアナイフによるコーティング、真空蒸着、化学処理、ロールコーティング、ワイヤー巻き上げ棒によるコーティングなどで塗布し、乾燥させて溶媒を除去することによって、このような接着層を塗布してもよい。適切な接着剤としては、膜形成ポリマー、例えば、ポリエステル、dupont 49,000(E.I.duPont de Nemours & Co.から入手可能)、Vitel PE−100(Goodyear Tire and Rubber Co.から入手可能)、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。接着層は、Mが約50,000〜約100,000、または約70,000、Mが約35,000のポリエステルで構成されていてもよい。
【0158】
画像形成層は、電荷発生材料、電荷移動材料、または電荷発生材料と電荷移動材料の両方を含む1つ以上の層を指す。
【0159】
n型またはp型の電荷発生材料を本発明の感光体で使用してもよい。
【0160】
電荷発生材料および電荷移動材料が、異なる層(電荷発生層および電荷移動層)である場合、電荷移動層は、SOFを含んでいてもよい。さらに、電荷発生材料および電荷移動材料が同じ層である場合、この層は、SOFを含んでいてもよい。
【0161】
具体的な有機光伝導性電荷発生材料としては、Sudan Red、Dian Blue、Janus Green Bなどのようなアゾ顔料;Algol Yellow、Pyrene Quinone、Indanthrene Brilliant Violet RRPなどのようなキノン顔料;キノシアニン顔料;ベンズイミダゾールペリレンのようなペリレン顔料;インジゴ、チオインジゴなどのようなインジゴ顔料;Indofast Orangeなどのようなビスベンゾイミダゾール顔料;銅フタロシアニン、アルミノクロロ−フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどのようなフタロシアニン顔料;キナクリドン顔料;またはアズレン化合物が挙げられる。適切な無機光伝導性電荷発生材料としては、硫化カドミウム、カドミウムスルホセレニド、セレン化カドミウム、結晶性セレンおよびアモルファスセレン、酸化鉛および他のカルコゲニドが挙げられる。適切なセレンアロイとしては、セレン−ヒ素、セレン−テルル−ヒ素、セレン−テルルが挙げられる。
【0162】
任意の適切な不活性樹脂バインダー材料を、電荷発生層で用いてもよい。典型的な有機樹脂系バインダーとしては、ポリカーボネート、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ、ポリビニルアセタールなどが挙げられる。
【0163】
コーティング組成物として有用な分散物を作成するために、溶媒を電荷発生材料とともに用いる。溶媒は、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸アルキル、およびこれらの混合物であってもよい。酢酸アルキル(酢酸ブチルおよび酢酸アミルのような)は、アルキル基に炭素原子を3〜5個有していてもよい。組成物中の溶媒の量は、組成物の重量を基準として、約70重量%〜約98重量%であってもよい。
【0164】
組成物中の電荷発生材料の量は、溶媒を含む組成物の重量を基準として、約0.5重量%〜約30重量%の範囲である。乾燥した光伝導性コーティングに分散させた光伝導性粒子(すなわち、電荷発生材料)の量は、選択される特定の光伝導性顔料粒子に応じて、ある程度まで変動する。チタニルフタロシアニンおよび金属を含まないフタロシアニンのようなフタロシアニン有機顔料を利用した場合、乾燥した光伝導性コーティングが、乾燥した光伝導性コーティングの総重量を基準として、すべてのフタロシアニン顔料を約30重量%〜約90重量%含む場合に、満足のいく結果が得られる。光伝導特性が、1平方センチメートルあたりコーティングされた顔料の相対量に影響を与えるため、乾燥させた光伝導性コーティング層が厚い場合には、顔料保持量が低いものを利用してもよい。逆に、乾燥させた光伝導層が薄い場合には、顔料保持量が高いことが望ましい。
【0165】
一般的に、光伝導剤の平均粒径が、約0.6μmであり、光伝導性コーティングが浸漬コーティングによって塗布される場合に満足のいく結果が得られる。光伝導剤の平均粒径は、約0.4μm未満であってもよい。また、光伝導剤の粒径は、分散させた乾燥した光伝導性コーティングの厚みよりも小さい。
【0166】
電荷発生層では、電荷発生材料(「CGM」)と、バインダーとの重量比は、30(CGM):70(バインダー)〜70(CGM):30(バインダー)の範囲である。
【0167】
電荷発生層(本明細書で、光伝導層とも呼ばれる)と電荷移動層とを備える多層感光体の場合、厚みが、約0.1μm〜約10μmの乾燥させた光伝導層コーティングを用いると、満足のいく結果が得られる場合がある。光伝導層の厚みは、約0.2μm〜約4μmである。しかし、これらの厚みは、顔料の保持量によっても変わる。したがって、顔料の保持量が多いと、光伝導コーティングの厚みを薄くすることができる。
【0168】
コーティング組成物のバインダーおよび溶媒に光伝導性粒子を分散させるために、任意の適切な技術を利用してもよい。典型的な分散技術としては、ボールミル、ロールミル、垂直磨砕機による混合、サンドミルなどを用いた技術が挙げられる。ボールロールミルを用いた典型的な混合時間は、約4〜約6日間である。
【0169】
電荷移動材料としては、有機ポリマー、非ポリマー系材料、または光によって励起された正孔の注入を補佐することが可能であるか、または光伝導性材料から電子を移動させ、これらの正孔または電子を、有機層を介して表面電荷を選択的に散逸させることが可能なSOFが挙げられる。
【0170】
具体的な電荷移動材料としては、主鎖または側鎖に多環芳香族環(例えば、アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネンなど)または窒素を含有するヘテロ環(例えば、インドール化合物、カルバゾール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ピラゾリン化合物、チアジアゾール化合物、トリアゾール化合物、ヒドラゾン化合物)を含む化合物のような正孔移動材料が挙げられる。
【0171】
任意の適切な不活性樹脂バインダーを電荷移動層で使用してもよい。塩化メチレンに可溶性の典型的な不活性樹脂バインダーとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリスルホンなどが挙げられる。分子量は、約20,000〜約1,500,000までさまざまであってもよい。
【0172】
電荷移動層では、電荷移動材料(「CTM」)と、バインダーとの重量比は、30(CTM):70(バインダー)〜70(CTM):30(バインダー)の範囲である。
【0173】
電荷移動層と電荷発生層とを基板に塗布するために、任意の適切な技術を用いてもよい。典型的なコーティング技術としては、浸漬コーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、回転式アトマイザーなどを挙げることができる。コーティング技術は、さまざまな範囲の固体に使用することができる。固体含有量は、分散物の総重量を基準として、約2重量%〜約30重量%である。「固体」は、電荷移動コーティング分散物の電荷移動粒子およびバインダー成分を指す。これらの固体の濃縮物は、浸漬コーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングなどで有用である。一般的に、ロールコーティングには、もっと濃度の高いコーティング分散物を用いてもよい。堆積したコーティングの乾燥は、オーブンによる乾燥、赤外線照射による乾燥、風乾などの任意の適切な従来技術によって行われてもよい。一般的に、移動層の厚みは、約5μm〜約100μmであるが、これらの範囲から外れた厚みを用いてもよい。一般的に、電荷移動層の厚みと、電荷発生層の厚みとの比率は、約2:1〜約200:1に維持され、ある場合には、約400:1の大きさである。
【0174】
代表的な電荷移動性SOFとしては、多環芳香族環(例えば、アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネンなど)または窒素を含有するヘテロ環(例えば、インドール化合物、カルバゾール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ピラゾリン化合物、チアジアゾール化合物、トリアゾール化合物、ヒドラゾン化合物)を含むセグメントを有する化合物から選択される正孔移動材料が挙げられる。典型的な正孔移動性SOFセグメントとしては、カルバゾール;N−エチルカルバゾール;N−イソプロピルカルバゾール;N−フェニルカルバゾール;テトラフェニルピレン;1−メチルピレン;;ペリレン;クリセン;アントラセン;テトラフェン;2−フェニルナフタレン;アゾピレン;1−エチルピレン;アセチルピレン;2,3−ベンゾクリセン;2,4−ベンゾピレン;1,4−ブロモピレンのような電子供与材料が挙げられる。適切な電子移動性SOFセグメントとしては、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン;2,4,5,7−テトラニトロ−フルオレノン;ジニトロアントラセン;ジニトロアクリデン;テトラシアノピレン;ジニトロアントラキノン;ブチルカルボニルフルオレンマロノニトリルのような電子受容体が挙げられる(米国特許第4,921,769号を参照)。他の正孔移動性SOFセグメントとしては、米国特許第4,265,990号に記載されているアリールアミン、または、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミンが挙げられ、ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどからなる群から選択される。他の既知の電荷移動性SOFセグメントが選択されてもよい(米国特許第4,921,773号および第4,464,450号を参照)。
【0175】
SOF電荷移動層は、
(a)それぞれセグメントと複数のFgとを含む、電荷移動性に偏った特性を有する複数の分子ビルディングブロックを含む液体を含有する反応混合物を調製することと;
(b)この反応混合物を濡れた膜として堆積させることと;
(c)分子ビルディングブロックを含む濡れた膜が、複数のセグメントと複数のリンカーとが共有結合による有機骨格として整列したものを含むSOFを含む乾燥膜へと変化することを促進させることとによって調製されてもよく、巨視的なレベルで、この共有結合による有機骨格が膜である。
【0176】
この保持量は、反応混合物の合計重量を基準として、約2〜約50重量%である。「保持量」は、電荷移動性を有するSOF反応混合物の分子ビルディングブロック成分を指す。これらの保持量は、浸漬コーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングなどで有用である。一般的に、ロールコーティングには、もっと濃度の高いコーティング分散物を用いてもよい。堆積したコーティングの乾燥は、オーブンによる乾燥、赤外線照射による乾燥、風乾などの任意の適切な従来技術によって行われてもよい。一般的に、電荷移動性のSOF層の厚みは、約5μm〜約100μm、約10μm〜約70μm、または約10μm〜約40μmである。一般的に、電荷発生層の厚みを基準とした、電荷移動層の厚みの比率は、約2:1〜200:1に維持されてもよく、400:1程度の大きさに維持されてもよい。
【0177】
本明細書に記載の材料および手順を用い、バインダ、電荷発生材料および電荷移動材料を含む1つの画像形成層を有する感光体を製造してもよい。1個の画像形成層のための分散物の固体含有量は、分散物の重量を基準として、約2重量%〜約30重量%の範囲であってもよい。
【0178】
画像形成層が、電荷発生層と電荷移動層の機能を組み合わせた単一層である場合、この層に含まれる成分の具体的な量は、電荷発生材料(約5重量%から約40重量%まで)と、電荷移動材料(約20重量%〜約60重量%)と、バインダー(画像形成層の残り)である。
【0179】
本明細書に記載の材料および手順を用い、電荷生成材料および電荷移動性のSOFを含む1つの画像形成層を有する感光体を製造してもよい。1個の画像形成層のための分散物の固体含有量は、分散物の重量を基準として、約2重量%〜約30重量%の範囲であってもよい。
【0180】
画像形成層が、電荷発生層と電荷移動層の機能を組み合わせた単一層である場合、この層に含まれる成分の具体的な量は、電荷生成材料(約2重量%から約40重量%まで)と、加えられる機能として電荷移動性を有する分子ビルディングブロック(約20重量%〜約75重量%)である。
【0181】
1つ以上のオーバーコート層8を用いてもよく、この層を利用する場合、電荷発生層または電荷移動層の上に配置される。この層は、電気的に絶縁性であるか、またはわずかに半導体性を有するSOFを含む。
【0182】
このような保護性のオーバーコート層は、場合により、電荷移動性セグメントを含む複数の分子ビルディングブロックを含む、SOFを形成する反応混合物を含む。
【0183】
添加剤は、オーバーコート層中に、オーバーコート層の約0.5〜約40重量%の範囲で存在してもよい。添加剤としては、耐摩耗性をさらに高め、および/または電荷緩和特性を付与することが可能な有機粒子および無機粒子が挙げられる。有機粒子としては、テフロン粉末、カーボンブラック、グラファイト粒子が挙げられる。無機粒子としては、絶縁性および半導体性の金属酸化物粒子、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられる。別の半導体性添加剤は、酸化されたオリゴマー塩であってもよく(米国特許第5,853,906号を参照)が挙げられる。オリゴマー塩は、酸化されたN,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ビフェニルジアミン塩であってもよい。
【0184】
SOFオーバーコート層は、
(a)それぞれセグメントと複数のFgとを含む、電荷移動性に偏った特性を有する複数の分子ビルディングブロックを含む液体を含有する反応混合物を調製することと;
(b)この反応混合物を濡れた膜として堆積させることと;
(c)分子ビルディングブロックを含む濡れた膜が、複数のセグメントと複数のリンカーとが共有結合による有機骨格として整列したものを含むSOFを含む乾燥膜へと変化することを促進させることとによって調製されてもよく、巨視的なレベルで、この共有結合による有機骨格が膜である。
【0185】
約2μm〜約15μm、または約3μm〜約8μmのオーバーコート層は、耐ひっかき性および耐摩耗性を付与することに加え、電荷移動による分子の浸出、結晶化、電荷移動層の割れを防ぐのに有効である。
【0186】
アース片9は、膜形成バインダーと、電気伝導性粒子とを含んでいてもよい。伝導性粒子を分散させるために、セルロースを用いてもよい。電気伝導性アース層8に、任意の適切な電気伝導性粒子を使用してもよい。アース片8は、米国特許第4,664,995号に列挙されているものを含む材料を含んでいてもよい。典型的な電気伝導性粒子としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、銅、銀、金、ニッケル、タンタル、クロム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、インジウムスズオキシドなどが挙げられる。
【0187】
電気伝導性粒子は、任意の適切な形状であってもよい。典型的な形状としては、不規則な形、顆粒、球状、楕円形、立方体、フレーク、フィラメント状などが挙げられる。電気伝導性粒子は、電気伝導性アース層が、過剰に不規則な外側表面を有さないようにするために、電気伝導性アース層の厚みよりも小さな粒径を有していてもよい。平均粒径が約10μmより小さいと、一般的に、乾燥したアース層の外側表面で、電気伝導性粒子の過剰な突出部を避けることができ、乾燥させたアース層のマトリックスを通って、粒子を比較的均一に分散させることができる。アース片で使用すべき伝導性粒子の濃度は、利用する特定の伝導性材料の導電性のような因子によって変わる。
【0188】
アース層は、厚みが、約7μm〜約42μm、または約14μm〜約27μmであってもよい。
【0189】
画像保持体から液体トナー画像を受け入れるための、スライドしない転写融着アセンブリを有する、液浸現像(LID)による再生機が提供される。この転写融着アセンブリは、ベルトループを形成し、内側表面と、トナー画像を保有する外側表面とを備える、連続した中間転写ベルトを備えていてもよく、SOFと;第1の直径を有し、ベルトループと画像保持体との間に、トナー画像を受け入れるニップを形成するための、ベルトループの内側表面と接触するように取り付けられた第1の裏当てローラーと;第1の裏当てローラーと反対側に取り付けられ、ベルトループと外側ローラーとの間に転写ニップを形成するために、ベルトループの内側表面と接触する第2の裏当てローラーとを備えていてもよい。第2の裏当てローラーは、ベルトのための大きな駆動ドラムを備えていてもよく、ベルトがスライドしたり、滑ったりするのを防ぐことによって、高品質の転写融着したトナー画像を生成し、比較的小さな直径の駆動ロールから得られる結果とは異なる画像が保証されるように、第1の裏当てローラーの第1の直径よりも何倍も大きい第2の直径を有している。
【0190】
液浸現像(LID)再生機の特徴の詳細は、米国特許第6,002,907号に記載されている。
【0191】
LID再生機は、高固体含有量(HSC)の画像供与現像装置を組み込んでいてもよく、多色LID機であってもよく、単色LID機であってもよい。カラー複写プロセスは、一般的に、コンピューターで作成したカラー画像を画像処理ユニットに入力するか、または、透明な平板表面に複写するカラードキュメントを置くことによって開始される。光源、ハロゲンランプまたはタングステンランプ、そこからの光を含むスキャンアセンブリを、カラードキュメントにあてる。カラードキュメントから反射した光は、一連のレンズを通り、二色プリズムを通って1番目、2番目、3番目の鏡で反射し、電荷結合素子(CCD)に向かい、ここで、情報が読み取られる。反射した光を、二色プリズムおよび/またはCCDで三原色に分けてもよい。
【0192】
それぞれのCCDは、入射光の強度に比例するアナログ電圧を出力してもよい。それぞれのCCDから得られるアナログ信号を、アナログ/デジタル変換器によって、各ピクセル(画素)について8ビットデジタル信号に変換してもよい。それぞれのデジタル信号を、画像処理ユニットに入れてもよい。青色、緑色、赤色の強度信号を表していてもよいデジタル信号を、画像処理ユニットで、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の4種類のビットマップに変換してもよい。このビットマップは、各ピクセルについて、露光値をあらわしており、色成分および色の分離をあらわしている。画像処理ユニットは、シェーディング補正ユニット、下色除去ユニット(UCR)、マスキングユニット、ディザリングユニット、灰色レベル処理ユニット、当該技術分野で既知の他の画像処理サブシステムを含んでいてもよい。画像処理ユニットは、その後の画像のビットマップ情報を格納していてもよく、リアルタイムモードで操作することもできる。
【0193】
LID機は、光伝導性画像形成体または光伝導性感光体を備えており、これらは、SOFを含んでいてもよく、多層であってもよく、基板と、伝導層と、場合により接着層と、場合により正孔遮断層と、電荷発生層と、電荷移動層と、光伝導性表面または画像形成表面と、場合により、屈曲防止裏当て層とを備えていてもよい。感光体は移動可能であってもよい。移動性感光体を、まず、帯電ユニットによって帯電させてもよい。次いで、画像処理ユニットによって制御されるラスタ出力スキャナー(ROS)デバイスは、帯電した感光体上にある電荷を選択的に消去することによって、第1の相補性カラー画像のビットマップ情報を書きだしてもよい。ROSは、ラインスクリーン登録モードでのピクセルによって、画像情報のピクセルを書きだしてもよい。帯電していない部分が現像される反転現像(DAD)を用いてもよく、帯電している部分がトナーで現像される正現像(CAD)を用いてもよいことを注記しておくべきである。
【0194】
第1の静電潜像が記録された後、感光体は、静電潜像を現像ステーションに進める。現像ステーションでは、第1の潜像を帯電したトナー粒子で現像するための第1の高固体含有量の供与現像装置が与えられてもよい。この高固体含有量の供与現像装置は、回転可能な供与体と、液体現像材料の低固体含有量(LSC)の層(例えば、ブラックトナー現像材料)を、ある供給源から、現像ゾーンまたはニップへと進めるために、ある方向に回転するベルトまたはローラーとを備えている。高固体含有量の供与現像装置は、低固体含有量(LSC)現像材料源を含み、LSC現像材料を含むハウジングを備えている。上述の低固体含有量の液体現像材料は、典型的には、潜像を、通常は感光体上で現像するために、特定の色の微細な固体粒子状トナー材料を約2重量%含み、これが炭化水素液体キャリアのようなキャリアに分散した材料である。
【0195】
すべての比率は、他の意味であると示されていない限り、重量による。「パターン化」は、セグメントが連結している順序を指す。したがって、パターン化されたSOFは、セグメントAがセグメントBにのみ接続した組成物を包含し、逆に、セグメントBがセグメントAにのみ接続した組成物を含有する。さらに、たった1個のセグメント(いわゆるセグメントA)が存在するシステムが使用される場合、AはAとのみ反応することが意図されるため、これもパターン化されたものであろう。
【実施例】
【0196】
実施例1は、2個のビルディングブロック間をエーテル化によって接続する化学を促進するように成分を組み合わせた2型SOFの合成について記載している。酸触媒および加熱作用が存在する状態で、実施例1に記載した方法でSOFを得る。
【0197】
(実施例1)
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合した。ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.47g、3.4mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH);(1.12g、1.7mmol)]、17.9gの1−メトキシ−2−プロパノール。混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1−メトキシ−2−プロパノール溶液0.31gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。
【0198】
(作業B)反応混合物を濡れた膜として堆積。8milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR商標基板の反射側に塗布した。
【0199】
(作業C)濡れた膜を乾燥SOFに変化させるのを促進すること。濡れた層を支えている金属化したMYLAR商標基板を、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約3〜6μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立型SOFとして剥離してもよい。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部分のフーリエ変換赤外スペクトルを図4に示している。
SOF内でパターン化された、用いられる分子ビルディングブロックからのセグメントを含むことを示すために、3つのコントロール実験が行われた。すなわち、実施例1の作業Aと同じ手順を用いて3つの液体反応混合物が調製された。ただし、これら3つの配合物は下記のように修飾された。
・(コントロール反応混合物1;実施例2)ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノールを含まなかった。
・(コントロール反応混合物2;実施例3)ビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンを含まなかった。
・(コントロール反応混合物3;実施例4)触媒であるp−トルエンスルホン酸を含まなかった。
【0200】
実施例2〜4は、膜が得られなかった。その代わり、ビルディングブロックの沈殿した粒子が、基板に堆積した。
【0201】
それぞれの3種類のコントロール反応混合物について、実施例1に概略を説明した作業BおよびCを行った。しかし、すべての場合において、SOFは生成せず、単に、基板にビルディングブロックが析出した。これらの結果から、ビルディングブロックは、上に述べた処理条件ではビルディングブロック自体と反応することはできず、プロモーター(p−トルエンスルホン酸)が存在しない状態では、ビルディングブロックが反応することもできないという結果が得られた。したがって、実施例1に記載した活性は、ビルディングブロック(ベンゼン−1,4−ジメタノールおよびN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン)が、互いに反応するように促進された場合にのみ反応することが可能な活性である。パターン化されたSOFは、セグメントであるp−キシリルおよびN4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンが互いに接続した場合にのみ生じる。フーリエ変換赤外スペクトルを、SOFのコントロール実験の生成物(図5)と比較すると、出発物質のFgが存在しない(特に、ベンゼン−1,4−ジメタノールに由来するヒドロキシルバンドが存在しない)ことが示され、さらに、上述のようにセグメント間の接続性の進行をさらに支持するものである。また、SOFのスペクトルにヒドロキシルバンドがまったく存在しないことは、非常に高い割合でパターン化されていることを示している。
【0202】
実施例6(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックである1,6−n−ヘキサンジオール[セグメント=n−ヘキシル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.21g、1.8mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH);(0.58g、0.87mmol)]、8.95gの1−メトキシ−2−プロパノール。混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1−メトキシ−2−プロパノール溶液0.16gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)20milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR商標基板の反射側に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている金属化したMYLAR商標基板を、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約4〜5μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立型SOFとして剥離してもよい。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部分のフーリエ変換赤外スペクトルを図6に示している。
【0203】
実施例9:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックである4,4’−(シクロヘキサン1,1−ジイル)ジフェノール[セグメント=4,4’−(シクロヘキサン1,1−ジイル)ジフェニル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.97g、6mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH);(1.21g、1.8mmol)]、7.51gの1,4−ジオキサン。混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1,4−ジオキサン溶液0.22gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR商標基板の反射側に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている金属化したMYLAR商標基板を、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約12〜20μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立膜として剥離してもよい。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部分のフーリエ変換赤外スペクトルを図7に示している。
【0204】
(実施例26)
(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックである4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメタノール[セグメント=(4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメチル);Fg=アルコール(−OH);(1.48g、4.4mmol)]、8.3gの1,4−ジオキサン。混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1,4−ジオキサン溶液0.15gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)15milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR商標基板の反射側に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている金属化したMYLAR商標基板を、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約6〜15μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立膜として剥離してもよい。SOFの色は緑色であった。この膜のフーリエ変換赤外スペクトルを図8に示している。二次元X線散乱データを図14に示しており、バックグラウンドより上のシグナルは存在せず、このことは、任意の検出可能な周期を有する規則的な分子が存在しないことを示している。
【0205】
実施例30:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるテレフタルアルデヒド[セグメント=ベンゼン;Fg=アルデヒド(−CHO);(0.18g、1.3mmol)]、第2のビルディングブロックであるトリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン;Fg=アミン(−NH);(0.26g、0.89mmol)]、2.5gのテトラヒドロフラン。均一溶液が得られるまで、混合物を振り混ぜた。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1−テトラヒドロフラン溶液0.045gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)5milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR商標基板の反射側に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている金属化したMYLAR商標基板を、あらかじめ120℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約6μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立膜として剥離してもよい。SOFの色は赤色から橙色であった。この膜のフーリエ変換赤外スペクトルを図9に示している。
【0206】
実施例31:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックである4,4’,4’’−ニトリロトリベンズアルデヒド[セグメント=トリフェニルアミン;Fg=アルデヒド(−CHO);(0.16g、0.4mmol)]、第2のビルディングブロックであるトリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン;Fg=アミン(−NH);(0.14g、0.4 mmol)]、1.9gのテトラヒドロフラン。均一溶液が得られるまで、混合物を振り混ぜた。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。(作業B)5milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR商標基板の反射側に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている金属化したMYLAR商標基板を、あらかじめ120℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約6μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立膜として剥離してもよい。SOFの色は赤色であった。この膜のフーリエ変換赤外スペクトルを図10に示している。
【0207】
実施例36:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるトリス−[(4−ヒドロキシメチル)−フェニル]−アミン[セグメント=トリ−(p−トリル)−アミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);5.12g];添加剤であるCymel303(55mg)およびSilclean3700(210mg)、触媒であるNacure XP−357(267mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(13.27g)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、55℃で65分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)反応混合物を、カップコーター(Tsukiage coating)を用い、引っ張り速度240mm/分で市販の30mmドラム感光体に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが約6.9μmのSOFを得た。図11は、このSOFオーバーコート層の光伝導性をあらわす光放電曲線(PIDC)である(75msでの電圧(露光して測定する))。
【0208】
実施例37:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるトリス−[(4−ヒドロキシメチル)−フェニル]−アミン[セグメント=トリ−(p−トリル)−アミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);4.65g];添加剤であるCymel303(49mg)およびSilclean 3700(205mg)、触媒であるNacure XP−357(254mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(12.25g)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、55℃で65分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。ポリエチレンワックス分散物(平均粒径=5.5マイクロメートル、i−プロピルアルコール中、固形分40%、613mg)を反応混合物に加え、これを10分間超音波処理し、回転機で30分間混合した。(作業B)この反応混合物を、カップコーター(Tsukiage coating)を用い、引っ張り速度240mm/分で市販の30mmドラム感光体に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、SOFにワックス粒子が均一に組み込まれた、厚みが約6.9μmの膜を得た。図12は、このSOFオーバーコート層の光伝導性をあらわす光放電曲線(PIDC)である(75msでの電圧(露光して測定する))。
【0209】
実施例38:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);3.36g]、ビルディングブロックであるN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラフェニル−ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg−ヒドロキシル(−OH);5.56g];添加剤であるCymel303(480mg)およびSilclean 3700(383mg)、触媒であるNacure XP−357(480mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(33.24g)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、55℃で65分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)この反応混合物を、カップコーター(Tsukiage coating)を用い、引っ張り速度485mm/分で市販の30mmドラム感光体に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが6.0〜6.2μmの膜を得た。図13は、このSOFオーバーコート層の光伝導性をあらわす光放電曲線(PIDC)である(75msでの電圧(露光して測定する))。
【0210】
実施例49:(作業A)反応混合物を含む液体を調製する試み。以下のものを混合した。ビルディングブロックであるトリス−[(4−ヒドロキシメチル)−フェニル]−アミン[セグメント=トリ−(p−トリル)−アミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);5.12g];添加剤であるCymel303(55mg)、Silclean 3700(210mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(13.27g)。分子ビルディングブロックを完全に溶解する試みにおいて、この混合物を65分かけて55℃まで加熱した。しかし、完全には溶解しなかった。触媒であるNacure XP−357(267mg)を加え、不均一な混合物をローリングウェーブ式回転機でさらに10分間混合した。この例では、加熱工程の後に触媒を加えた。溶解していない分子ビルディングブロックの量があるため、コーティング前に溶液を濾過しなかった。(作業B)濡れた膜としての反応混合物の堆積。反応混合物を、カップコーター(Tsukiage coating)を用い、引っ張り速度240mm/分で市販の30mmドラム感光体に塗布した。(作業C)濡れた膜から乾燥膜への変化を促進。濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、均一な膜は得られなかった。粒子を含む不均一な膜が生成した領域と、まったく膜を形成しない他の領域とが存在していた。
【0211】
実施例50:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるtris−[(4−ヒドロキシメチル)−フェニル]−アミン[セグメント=トリ−(p−トリル)−アミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);5.12g];添加剤であるCymel303(55mg)およびSilclean 3700(210mg)、触媒であるNacure XP−357(267mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(13.27g)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、55℃で65分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。反応混合物の粘度が、加熱工程後に増加した(加熱前後の溶液の粘度は測定していなかった)ことを注記しておく。(作業B)反応混合物を、カップコーター(Tsukiage coating)を用い、引っ張り速度240mm/分で市販の30mmドラム感光体に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが約6.9μmのSOFを得た。
【0212】
実施例51:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン [セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);1.84g]、ビルディングブロックである3,3’−(4,4’−(ビフェニル−4−イルアザンジイル)ビス(4,1−フェニレン))ジプロパン−1−オール[セグメント=3,3’−(4,4’−(ビフェニル−4−イルアザンジイル)ビス(4,1−フェニレン))ジプロピル;Fg=ヒドロキシ(−OH);(2.41g)、触媒であるp−トルエンスルホン酸(10wt%ドワノール溶液、460mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(16.9g−50ppmのDC510を含有)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で5分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、70℃で30分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)この反応混合物を、Hiranoウェブコーターを用いて製品をコーティングしたウェブ感光体に塗布した。シリンジポンプの速度:4.5mL/分。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に1.5m/分の速度で2分間供給した。これらの作業によって、厚みが2.1マイクロメートルのSOFオーバーコート層を感光体の上に与えた。
【0213】
実施例52:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);5.0g]、ビルディングブロックであるベンゼンジメタノール[セグメント=p−キシリル;Fg−ヒドロキシル(−OH);2.32g]、触媒であるp−トルエンスルホン酸(10wt%ドワノール溶液、720mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(22.5g−50ppmのDC510を含有)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で5分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、40℃で5分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)この反応混合物を、Hiranoウェブコーターを用いて製品をコーティングした製品ウェブ感光体に塗布した。シリンジポンプの速度:5mL/分。(作業C)濡れた層を支えている感光体を、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に1.5m/分の速度で2分間供給した。これらの作業によって、厚みが2.2マイクロメートルのSOFオーバーコート層を感光体の上に与えた。
【0214】
実施例53:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);5.0g]、ビルディングブロックであるベンゼンジメタノール[セグメント=p−キシリル;Fg−ヒドロキシル(−OH);2.32g]、触媒であるp−トルエンスルホン酸(10wt%ドワノール溶液、720mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(22.5g−50ppmのDC510を含有)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で5分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、40℃で5分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)この反応混合物を、Hiranoウェブコーターを用いて製品をコーティングした製品ウェブ感光体に塗布した。シリンジポンプの速度:10mL/分。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に1.5m/分の速度で2分間供給した。これらの作業によって、厚みが4.3マイクロメートルのSOFオーバーコート層を感光体の上に与えた。
【0215】
SOFでオーバーコートされた感光体サンプルは、アイソパーC、G、またはMに24時間接触させた後にも、観察可能な損傷はみられなかった。さらに、CTLからのビルディングブロックまたはセグメントの結晶化は観察されなかった。以前のオーバーコート層を用いて観察した場合にも、アイソパーC、G、またはMに24時間接触させた後に結晶化せず、測定可能な損傷は、なんらみられなかった。
【0216】
実施例54:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックである4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメタノール[セグメント=(4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメチル);Fg=アルコール(−OH);(1.48g、4.4mmol)]、水0.5g、1,4−ジオキサン7.8g。この混合物を振り混ぜ、均一な溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1,4−ジオキサン溶液0.15gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)15milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR商標基板の反射側に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている金属化したMYLAR商標基板を、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約4〜10μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立膜として剥離してもよい。SOFの色は緑色であった。二次元X線散乱データを図14に示している。図14からわかるように、2θは、約17.8であり、dは約4.97オングストロームであり、このことは、SOFが、約0.5nmの周期を有する規則的な分子を有することを示す。
【0217】
実施例55:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックである4−ヒドロキシベンジルアルコール[セグメント=トルエン;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.0272g、0.22mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH3);(0.0728g、0.11mmol)]、0.88gの1−メトキシ−2−プロパノール、シルクリーンの10wt%1−メトキシ−2−プロパノール溶液0.01g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、55℃まで加熱する。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過する。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1−メトキシ−2−プロパノール溶液0.01gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)5milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、アルミニウム基板に塗布した。(作業C)濡れた層を支えているアルミニウム基板を、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。
【0218】
実施例56:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックである4−(ヒドロキシメチル)安息香酸[セグメント=4−メチルベンズアルデヒド;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.0314g、0.206mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH3);(0.0686g、0.103mmol)]、0.88gの1−メトキシ−2−プロパノール、シルクリーンの10wt%1−メトキシ−2−プロパノール溶液0.01g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、55℃まで加熱する。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過する。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1−メトキシ−2−プロパノール溶液0.01gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)5milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、アルミニウム基板に塗布した。(作業C)濡れた層を支えているアルミニウム基板支持体を、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。
【0219】
実施例57:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックである1,4−ジアミノベンゼン[セグメント=ベンゼン;Fg=アミン(−NH);(0.14g、1.3mmol)]、第2のビルディングブロックである1,3,5−トリホルミルベンゼン[セグメント=ベンゼン;Fg=アルデヒド(−CHO);(0.144g、0.89mmol)]、2.8gのNMP。均一溶液が得られるまで、この混合物を振り混ぜる。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過する。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の2.5wt%NMP0.02gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)反応混合物を、速度を変えることが可能なスピンコーターの回転ユニットに取り付けた石英プレートに、100RPMで30分間回転させ、塗布した。(作業C)濡れた層を支えている石英プレートを、あらかじめ180℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、120分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが400nmの黄色の膜が得られ、これを水に浸し、基板から剥離することができる。
【0220】
実施例58:実施例1に記載したプロセスおよびビルディングブロックに関し、コンポジットSOFを調製した。これらの場合、使用した溶媒はジオキサンであった。すべてのSOFを調製し、20milのバードバーを用い、濡れた層を堆積させ、この濡れた層の変化を130℃で40分間促進させることによって、金属化したMYLAR基板に、反応混合物中の合計固形保持率30%、第2の成分からの固形保持率が10%になるように塗布した。濡れた層からSOFを形成する変化を促進させる前に、第2の成分を反応混合物に含ませることによって、第2の成分を導入した。6種類の異なるコンポジットSOFを製造し、それぞれ異なる第2の成分を含んでいた:コンポジットSOF1は、正孔移動分子(N4,N4’−ジフェニル−N4,N4’−ジ−m−トリル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)を含み、コンポジットSOF2は、ポリマー(ポリスチレン)を含み、コンポジットSOF3は、ナノ粒子(C60 Buckminsterフラーレン)を含み、コンポジットSOF4は、有機低分子(ビフェニル)を含み、コンポジットSOF5は、金属粒子(銅微粉末)を含み、コンポジットSOF6は、電子受容体(キノン)を含む。いくつかの第2の成分は、反応混合物に可溶性であり、いくつかは反応混合物に分散した(可溶性ではなかった)。製造した6種類のコンポジットSOFは、実質的にピンホールのないSOFであり、コンポジット材料がSOFに組み込まれていた。いくつかの場合(例えば、銅微粉末コンポジットSOF)の場合、第2の成分(ドーパント)の分散物は、目でみて明らかであった。これらのSOFの厚みは、15〜25マイクロメートルの範囲であった。
【0221】
実施例59:(作業A)液体を含む反応混合物の調製:以下のものを混合した。SOFビルディングブロックであるトリス−(4−ヒドロキシメチル)トリフェニルアミン[セグメント=トリフェニルアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);0.200g];フォトクロミック分子1〜5(以下を参照)(0.02g)、触媒であるp−トルエンスルホン酸(0.01g);1−メトキシ−2−プロパノール(0.760g)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、55℃で5分間加熱した。この溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)反応混合物を濡れた膜として堆積:5milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、3milMYLAR基板に塗布した。(作業C)濡れた膜から乾燥SOFへの変化を促進。濡れた層を支えているMylarシートを、あらかじめ120℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、5分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが3〜5μmの膜を得た。以下のフォトクロミック分子をSOFに組み込んだ。
【0222】
【化15】

【0223】
すべての配合物は、実質的にピンホールのない膜を形成したが、表2(以下)からわかるように、フォトクロミック分子(4)および(5)が最もよい性能を発揮した。
【表2】

【0224】
分子(4)および(5)を用いたフォトクロミックSOFのUV−可視光スペクトルは、明らかに、フォトクロミックSOF膜の着色能(UVAで書き込んだ後、約600nmに中心がある広範囲の吸収が存在)、および消去能を示している(可視光で消去すると、約600nmの吸収が消失)。フォトクロミック応答は、書き込み/消去速度および画像のコントラストという観点で、ポリマーマトリックス系と匹敵するものであった。このことは、SOF膜が、これらのDTE型のフォトクロミック材料の性能に影響を与えないことを示している。
【0225】
化学薬品/環境/機械力に対する安定性を試験するために、フォトクロミックSOFをアセトン中に15分間置いた。実験による観察結果を以下の表(表3)に詳細に示す。分子(5)を含むフォトクロミックSOFは、膜の一体性およびフォトクロミック挙動を完全に保存している。分子(4)を含むフォトクロミックSOFは、フォトクロミック成分がしみ出し、その結果、フォトクロミック活性が失われる。
【表3】

【0226】
分子(5)を含むフォトクロミックSOFをアセトンに入れ、5分間超音波処理した。これは、ポリマーフォトクロミック系は耐えられないであろう厳しい試験である。溶媒を除去した後、分子(5)を含むフォトクロミックSOFは、本質的に、SOFの完全性を保っており、UV LEDデバイスにさらされた場合とほぼ同じレベル書き込んでいる(すなわち、フォトクロミック活性は保存されている)。SOF構造に化学結合しているフォトクロミック分子(5)から誘導されるフォトクロミックSOFは、SOFからしみ出さず、厳しい化学薬品(アセトン溶媒)に耐えることができ、機械的(超音波)によるストレスにも耐えることができる。
【0227】
実施例60:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);表4に列挙した量で]、表4に示されているようなキャッピングユニット;添加剤であるSilclean 3700、触媒であるNacure XP−357およびドワノール。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、65℃で60分間加熱した。この混合物を回転機に入れ、室温まで冷却した。この溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)反応混合物をアルミニウム基板に塗布した。(作業C)濡れた層を支えているアルミニウム基板を、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、4〜10μmの厚みを有する膜を得た。
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】

【0228】
上述のすべての配合物は、眼で観察して、ピンホールのないSOFが得られていた。SOFのFT−IR分光法は、膜で検出された−OH基が、大きく弱まっているか、または完全に失われているため、THM−TBDビルディングブロックとキャッピングユニットとの結合はうまくいっており、効率的であることを示していた。
【0229】
キャッピングされたSOFの熱安定性は、キャッピングユニットを含まないTHM−TBD SOFに匹敵していた。400℃までは分解はみられず、このことは、高度に結合した材料であるという指標である。
【0230】
膜の機械特性は、キャッピング基を導入することによって大きく影響を受けた。自立型の膜で、応力−ひずみデータを集めることによって、キャッピングされたSOF膜の機械特性を評価した。一般的に、キャッピングユニットを含むSOF膜は、靱性が大きく、THM−TBDのみから構築された純粋なSOF膜よりも線形応力−ひずみ曲線が小さかった。この機械データは、キャッピングユニットをSOFに入れることによって得られる微視的なレベルでの変化が、膜の巨視的なレベルに直接影響を及ぼしていることを明らかに示している。
【0231】
実施例61:(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);表5〜8に列挙した量で]、キャッピングユニット、添加剤であるSilclean 3700、触媒であるNacure XP−357、ドワノール(表3〜6に示されるように)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、65℃で60分間加熱した。この混合物を回転機に入れ、室温まで冷却した。この溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)この反応混合物を、カップコーター(Tsukiage coating)を用い、引っ張り速度485mm/分で市販の30mmドラム感光体に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に急速に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが6〜7μmの膜が得られた。
【0232】
【表5】

【0233】
【表6】

【0234】
【表7】

【0235】
【表8】

【0236】
上述のすべての配合物は、眼で観察して、ピンホールのないSOFが得られていた。SOFのFT−IR分光法は、膜で検出された−OH基が、大きく弱まっているか、または完全に失われているため、THM−TBDビルディングブロックとキャッピングユニットとの結合はうまくいっており、効率的であることを示していた。図15は、このキャッピングされたSOFオーバーコート層の光伝導性をあらわす光放電曲線(PIDC)である(75msでの電圧(露光して測定する))。このデバイスの電気特性は優れている(低Vrおよびサイクルアップなし)。それぞれ、図15および図16のPIDCおよび繰り返しデータを参照。
【0237】
キャッピングされたSOF OCLのBCR摩耗データは、(両方の種類のキャッピングユニットについて)キャッピングユニットの保持量という観点で、最も大きな摩耗率を示す。高保持量と低保持量とで、摩耗の程度および違いは小さく、このことは、キャッピングユニット保持量をさらに増やすことによって摩耗率が大きくなることにはかなりの自由度が存在することを示しており、また、必要なHTMの量(費用)を下げるだろう。
【0238】
印刷試験には、印刷品質の問題はなんら存在せず、オーバーコーティングされていないP/Rデバイスと本質的に同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体トナーのゼログラフィー印刷のための画像形成体であって、
基板と;
電荷発生層と;
電荷移動層と;
場合により、オーバーコート層とを備えており;
最も外側の層が、複数のセグメントと、複数のリンカーとが共有結合による有機骨格(COF)として整列したものを含む耐溶媒性の規則的な構造の有機膜(SOF)を含む画像形成表面である、画像形成体。
【請求項2】
前記電荷移動層が前記最も外側の層であり、前記電荷移動層が、約10〜約40μmの厚みである、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項3】
前記電荷発生層と前記電荷移動層とがあわさって、約10〜約40μmの厚みを有する単一層になっている、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項4】
前記単一層が、前記最も外側の層である、請求項3に記載の画像形成体。
【請求項5】
前記電荷発生層が、約400nm〜約800nmの電磁放射線を吸収する、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項6】
前記SOFがコンポジットSOFである、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項7】
前記SOFが、加えられる機能として電気活性を有する、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項8】
加えられる機能である前記電気活性が、正孔移動性または電子移動性である、請求項7に記載の画像形成体。
【請求項9】
前記SOF骨格が、キャッピングユニットを含む、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項10】
オーバーコート層を含み、前記最も外側の層が前記オーバーコート層であり、前記オーバーコート層が、約1〜約10μmの厚みである、請求項1に記載の画像形成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−42946(P2012−42946A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167696(P2011−167696)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】