説明

規格外繊維からなる平滑基材

【課題】本発明は、高品質画像用の平滑基材を提供する。この基材は、規格外繊維を用いても、高品質画像に要求される平滑性及び他の物理的特性を提供する。
【解決手段】基材は繊維からなり、繊維が約0.9mmを超える繊維長−加重平均を有し、基材が約2.0ミクロンRa未満の粗度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、“BINDER SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK”と題され、米国特許仮出願第60/479,118号に関連した、2003年6月17日提出の米国特許仮出願第60/479,119号、及び、“PIGMENT SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK”と題された米国特許仮出願第60/478,991号の利益を請求する。これらの仮出願の開示は、引用文献によりここに含まれている。
【0002】
本出願は、“BINDER SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK”と題された米国特許出願第________号、及び、“PIGMENT SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK”と題された米国特許出願第________号に同時に関連する。これらの出願の開示は、引用文献によりここに含まれている。
【0003】
本発明は、高品質画像用の平滑基材、特に、規格外繊維からなる平滑基材に関するものである。
【背景技術】
【0004】
従来の銀ハロゲン写真、インクジェット印刷、染料昇華、熱染料転写、又は、その他の方法により得られる写真品質印刷は、印刷紙のような基材を形成する基礎原料の平滑性に依存する。この基礎原料は、一般的にセルロース繊維からなり、その上側及び/又は下側に、ポリオレフィン又はポリエステルフィルムが押し出され又は積層されたものである。画像塗膜は、ポリフィルムの片面又は両面上に塗工される。画像塗膜の例には、感光乳剤、水性又は顔料系インク受容層、感熱染料記録層、又は画像形成法に適切な他の特異的な塗膜が含まれる。基材の平滑性は、最終的な画像の外観及び表面の均一性を決定する。
【0005】
繊維に代えて原材料への金属顔料の付加が表面の平滑性を改善し得ることは公知である。しかしながら、基材の秤量、厚さ及び剛性が特異的である場合には、この方法では問題が発生してしまう。また、フィラー顔料が多すぎる場合には、所望の秤量及び平滑性を得るために厚さ及び剛性が減少してしまう。
【0006】
紙基材において達成される高いレベルの平滑性は、セルロース繊維の特性、基材を構成する繊維分布の均一性(構造)、及び、基材のカレンダー加工又は高密度化処理により影響を受ける。繊維は、特徴的な長さ及び気孔壁厚さを有する空洞管と考えられる。
【0007】
構造(紙基材内の繊維分布の均一性)、繊維長及び繊維壁厚さが平滑性に寄与することは公知である。繊維分布をより均一にすると、構成が良好になり、紙表面上に粗面を生じる高低差が発生する機会が減少する。針葉樹繊維は広葉樹繊維よりも著しく長く、このため、平滑性が所望の特性である場合には、広葉樹繊維が好適である。また、短い繊維は、凝集の少ない傾向に起因し、及び、より堅く充填し得る特性により、良好な構成に寄与する。繊維の気孔壁厚さは、乾燥中及び高密度化中の圧縮時における圧縮性又は平坦化性に影響を及ぼす。薄い気孔壁を有する繊維は、容易に圧縮され、密度の高い良好な基材を製造するのに対し、厚い気孔壁を有する繊維は堅く、陥没を防ぐ。また、薄い気孔壁を有する広葉樹繊維は、グラムあたりの繊維が多く、構造及び平滑性により寄与する。繊維特性が基材の平滑性に寄与するように最適化するためには、写真品質紙に用いられる基材は、一般に短い及び/又は薄い気孔壁を有する繊維からなる。
【0008】
したがって、所望の平滑性を有する均一な基材シートを提供する従来技術は、短い繊維を用いている。これらの従来の方法によれば、Kajaaniの繊維分析機により測定される、所望の繊維長−加重平均は、0.4〜0.58mm(例えば、特許文献1〜3参照。)、0.5mm以上(例えば、特許文献4及び5参照。)、又は、0.4〜0.9mm(例えば、特許文献6参照。)の長さであることが報告されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,391,532号
【特許文献2】米国特許第6,364,997号
【特許文献3】米国特許第6,107,014号
【特許文献4】米国特許第5,250,496号
【特許文献5】米国特許第6,107,014号
【特許文献6】特開平61−69649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高品質画像用の平滑基材を提供する。この基材は、規格外繊維を用いても、高品質画像に要求される平滑性及び他の物理的特性を提供し得ることを特徴としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基材は、繊維からなり、繊維が約0.9mmを超える繊維長−加重平均を有し、基材が約2.0ミクロンRa未満の粗度を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
ある実施形態によれば、本発明の基材は、0.9mmを超える長さ−加重平均を有する繊維からなり、約1.2〜1.5ミクロンRaの粗面度を有する。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、基地は、約10×10繊維/グラム未満の密度を有する繊維からなる。本発明のある態様によれば、本発明の基材はフィラー顔料が実質的に含まれていなくても、所望の平滑性を発揮する。
【0014】
本発明の他の態様によれば、記録材料の形成に用いられる基材の製造方法が開示されている。この方法には、約1mmを超える長さ加重平均繊維長を有する繊維からなる繊維スラリーを供給する工程と、繊維のウェブを形成する工程と、約1.2〜1.5ミクロンRaの粗面度を有する基材を提供するための平滑処理をウェブに施す工程とが含まれる。また、この方法には、改良処理後の繊維が約0.9mmを超える長さ加重平均繊維長を有するような改良工程が含まれていてもよい。
【0015】
本発明の他の態様によれば、画像形成システム用に支持材料が提供される。この支持材料には、約0.9mmを超える長さ加重平均及び約1.2〜1.5ミクロンRaの粗面度を有する繊維からなる基材と、この基材の少なくとも片面上の画像形成又は画像受容塗膜層とが設けられ、この画像形成又は画像受容塗膜層は、感光乳剤、インクジェット受容塗膜、感熱染料記録層及び顔料系インク受容層からなる一群から選択されたものである。
【0016】
本発明の特定の実施形態によれば、この支持材料には、基材と、この支持材料の片面又は両面上の画像形成又は画像受容塗膜層との間に、ポリオレフィン又はポリエステル塗膜層がさらに設けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
好適に実施形態の記載においては、明瞭にするためにある専門用語が用いられる。このような専門用語には、この実施形態のみならず、同様の結果を達成するために同様の目的で同様の様式により操作する全ての技術的同等物が含まれることが意図される。
【0018】
関連技術におけるここに挙げられた全ての文書は引例に含まれるが、いずれかの文書の引用が本発明に関する従来技術であるとは解釈されない。
【0019】
「規格外繊維」とは、平滑な写真品質紙の製造に一般的に用いられない繊維を意味する。より具体的には、規格外繊維は、約1.0mmを超えた非改良平均繊維長を有するものである。
【0020】
「平均繊維長」とは、KajaaniのModel FS-200繊維分析機のような好適な繊維長分析装置により測定された、長さ−加重平均繊維長を意味する。
【0021】
「密度」とは、グラム当たりの繊維数を意味する。
【0022】
本発明の基材は、高品質画像を提供するために、平滑基材シートが要求される画像形成システムに用いられる。例えば、この基材は、感光乳剤、水性又は顔料系インク受容層、感熱染料記録層、又は画像形成方法に適切な他の特異的な塗膜とともに用いられる。
【0023】
高品質画像を生み出す紙の基材は、非常に平滑な表面を必要とする。これらの紙の製造に用いられる繊維は、一般的に天然のセルロース繊維であるが、合成繊維を用いることもできる。この基材は、長網抄紙機又は円網抄紙機上で製造される。所望のレベルの平滑性の達成は、繊維の特性、繊維の処理、及び、基材の高密度化方法に依存している。
【0024】
本発明の基材には、基材製造に一般的に用いられる様々な添加剤を用いることができる。この基材の製造工程中に、最終的な製品用途に依存して、耐水性及び湿潤又は乾燥強度を付与するために、並びに、目標の色彩及び輝度を達成するために、化学物質を添加することができる。例えば、のり剤、乾燥及び湿潤強化剤、フィラー、pH調整剤、顔料、染料及び蛍光増白剤が添加できる。所望の特性を有する基材を得るために必要な添加剤及びその量は当業者に公知である。
【0025】
従来の写真基材の繊維含有量分析によると、素材種が34%ユーカリ、24%楓、23%ポプラ、12%カバノキ、5%ブナ及び2%トリネコであるという結果が示される。これらの種類の非改良繊維長を示す。ユーカリ科は、0.65mm程度の平均繊維長を有する短い広葉樹繊維を提供する。楓は約0.9mmであり、ポプラは約1.0mmである。他の広葉樹繊維種は、1.0mmを超えた長さである。ユーカリ、楓、ポプラ及びカバノキの気孔壁厚さは、3〜4μmの範囲内である。
【0026】
本発明の特異的な実施形態による基材の繊維含有量分析によると、素材種が72%樫、10%黄ポプラ、9%ゴム、4%楓、残りが少量の他の様々な広葉樹種であるという結果が示される。本発明のこの態様による他の基材の分析によると、存在する繊維の種のパーセンテージが多少変化するが、全ての基材における主な種が楓であり、上記で挙げられた4種が本発明のこれらの実施形態による繊維の83%以上であり、一般的には90%を超えるという結果が示される。非改良繊維長は、樫が1.25mm、黄ポプラが1.9mm及びゴムが1.85mmである。樫、黄ポプラ及びゴムの平均繊維気孔壁厚さは、概ね6.0ミクロンである。したがって、本発明の基材の繊維組成は、写真品質画像に必要な平滑基材の製造に必須である、従来技術に記載された繊維組成とは著しく異なる。従来技術に基づいて、写真品質画像用の基材の製造を期待する当業者は、短い繊維を用い、より短い繊維を用いることによる良好な結果を期待するであろう。これに対して、本発明は、用いた繊維は比較的に長く、一般的に写真品質紙に適しないとみなされる、所望の平滑性を発揮する基材に関するものである。この長い繊維は一般的に従来の写真品質紙に用いられる短い繊維よりも高価ではないことから、長い繊維を用いることはコスト的に有利である。
【0027】
本発明のある態様による基材は、全繊維含有量に対して、少なくとも50%の規格外繊維、好ましくは少なくとも80%の規格外繊維、ある実施形態においては少なくとも90%の規格外繊維を含む。
【0028】
繊維密度、又はグラム当たりの繊維は、高品質画像用の従来の基材に用いられる繊維と本発明に用いられる繊維との差異を示す繊維特性の他の測定である。従来の繊維の密度は、一般的に約10×10繊維/グラムを超える。これに対して、本発明の基材に用いられる主な繊維の密度は、約10×10繊維/グラム未満であり、一般的には約7×10繊維/グラム未満である。本発明のある態様による基材には、全繊維含有量に対して、約10×10繊維/グラム未満の密度を有する繊維が少なくとも50%、好ましくは約10×10繊維/グラム未満の密度を有する繊維が少なくとも80%含まれる。
【0029】
従来の紙の製造工程においては、基材の製造に数工程が必要である。本発明のある実施形態の目的のためには、改良工程が重要な工程の一つである。繊維は、抄紙機加熱箱に送り込まれ、紙ウェブを形成する前に、改良される。改良工程に間に、パルプ化及び漂白工程において予め処理された繊維を、繊維の特性をさらに変化させるために繊維を何度も剪断するリファイナーに通過させる。改良は、分裂(fillibrate)による繊維表面積の増大によって、又は、繊維長の低減によって、繊維の特性を変化させる。ある場合においては、切断機能を用いることにより繊維長を低減するために、特別に設計されたリファイナーが用いられる。高品質画像用の基材を製造する従来の抄紙工程によれば、改良処理は一般的に2つの改良方法の組み合わせが含まれる。第1工程は、繊維を分裂(fillibrate)し、繊維長を低減させる円盤状の改良である。第2の改良工程は、米国特許第6,107,014号に開示された繊維を短く又は切断する円錐状のリファイナー又はミキサーを用いる。上記した繊維混合物を用いた場合には、従来の繊維混合物は、0.4〜0.58mmの好適な繊維長−加重平均を有する。高品質画像用基材の製造技術に関しての引用文献では、繊維長−加重平均は0.5mm以下である(米国特許第5,250,496号及び第5,288,690号)。本発明の基材においては、切断改良工程を削除してもよい。本発明のある態様による改良処理は、約0.9mmを超える長さ−加重平均を有する繊維混合物からなる基材を生じる。従来技術で一般的に用いられる改良工程を削除しつつ所望の平滑性を有する基材を提供することには、本発明のある態様により得られた他の利点がある。
【0030】
原料基材紙の秤量は、一般的に約50〜250g/mであり、好ましくは約100〜200g/mである。本発明は、これらの秤量に限定されず、より軽い秤量の紙又はより重い秤量の紙に適用することができる。
【0031】
本発明の基材は、基材の平滑性を改良するため、特に画像形成に用いられる基材用の顔料塗膜とともに供給される。この顔料塗膜には、乾燥塗膜の約8〜30重量%のバインダーが顔料塗膜組成物中に含まれる。バインダーに対する顔料の比率は、約100:15〜100:40であり、好ましくは約100:20〜100:30である。
【0032】
本発明の顔料塗膜組成物には、当業者に公知な顔料塗膜に一般的に用いられるバインダーと顔料が含まれる。この顔料組成物に含まれる顔料としては、これに限定されるものではないが、炭酸カルシウム顔料、クレイ、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、サチンホワイト、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、水酸化亜鉛、等が挙げられる。
【0033】
この顔料組成物に含まれるバインダーとしては、これに限定されるものではないが、スチレン−ブタジエン重合体、アクリル重合体、スチレン−アクリル重合体、酢酸ビニル及びエチレン−酢酸ビニル重合体が挙げられる。
【0034】
本発明の一態様においては、塗膜に用いられるバインダーはアクリルラテックスである。アクリルラテックスの例示としては、これに限定されるものではないが、アクリルエステル、変性アクリルエステル、アクリルエステル共重合体、変性アクリルエステル共重合体が挙げられる。有用なバインダーの例示としては、Rhoplex B-15P、Rhoplex P-554、Rhoplex 60-Aが挙げられる。特に好適なアクリルラテックスは、Rphm and Haas社から市販されているRhoplex B15-Pである。バインダーは、塗膜の全固体含有物に対して約8〜30重量%、好ましくは約15〜25重量%で用いられる。ある塗工においては、バインダーは約20〜30重量%で用いられる。本発明の特定の実施形態においては、塗膜組成物には、“BINDER SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK”と題された米国特許出願第________号に記載バインダーも含まれる。
【0035】
本発明に有用な顔料としては、特に限定されず、塗工紙の最終用途に好適ないずれの顔料でも用いることができる。本発明の一実施形態においては、塗工顔料には、一般に譲渡され同時に提出された“PIGMENT SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK”と題された米国特許出願第________号に記載された、基材の平滑性の改良に特に有用な顔料が含まれる。本発明のこの態様における有用な顔料の例示としては、限定されるものではないが、炭酸カルシウムが沈殿したアラゴナイトの針状異方性粒子、高アスペクト比のクレイ、中空球状のポリスチレン顔料の低かさ密度顔料、及びこれらの組み合わせが上げられる。本発明のより具体的な態様においては、こられの顔料の組み合わせからなる特定の顔料が供給される。針状沈殿炭酸カルシウム、中空球状ポリエチレン顔料及び高アスペクト比のクレイの濃度を特定範囲とすることにより、塗工された写真基材の粗面度が最小化される。本発明の特定の実施形態においては、表面粗度を最小化するために、全顔料重量に対して約10〜14%の高アスペクト比のクレイ、約18〜22%の中空球状ポリスチレン顔料、及び約65〜75%の炭酸カルシウム沈殿アラゴナイトを含有する塗工顔料を用いることができる。本発明によれば、従来技術を用いても一般的に達成されないレベルの平滑性が提供される。
【0036】
本発明の特に有用な他の実施形態においては、乾燥塗工顔料に対して約20〜30%のアクリルバインダー、約40〜80%の炭酸カルシウム沈殿アラゴナイト、及び約15〜25%の中空球状ポリスチレン顔料を含有する塗工顔料を有する塗工紙が提供される。
【0037】
本発明の基材は、高品質画像を提供するために平滑基材シートに要求されるいずれの画像形成システムにおいても使用することができる。例えば、これは、感光乳剤、水性又は顔料系インク受容層、感熱染料記録層、又は画像形成方法に好適な他の特異的な塗膜とともに用いることができる。特に、本発明により製造された基材は、写真調製品に変換することができ、又は、写真調インクジェット製品を製造するために用いることができる。
【0038】
ここに記載された塗工顔料は、ゲートロールコーター、ビルブレイドコーター、エアーナイフコーター等のような従来の塗工装置を用いて、非塗工基材に塗工することができる。
この塗工顔料は、約4〜15lb/3300ft、好ましくは約8〜10lb/3300ftの塗工重量で一般的に塗工される。
【0039】
基材(又は塗工紙)の最終平滑性は、ウェブを形成するために抄紙装置上で形成され、乾燥された後に、ウェブ(又は塗工紙)に様々な平滑処理を施すことにより一般的に達成される。特に有用な方法には、互いに積み重ねられ、紙を圧縮し、より平滑にするための圧力を生成する複数のロールにより形成されたロール間隙間に紙ウェブを通過させる間のカレンダリングとして公知な高密度化処理が含まれる。この圧縮工程は、積み重ねられた4つ以上の金属製ロールにより一般に達成される(米国特許出願第5,060,565号)。このような積み重ねにおいては、ロール間隙及び圧縮力は、どんな力が負荷されても、ロール重量に起因して下向きに連続するロール間隙を増大する。米国特許出願5,200,258号においては、非類似な材料の2つのロールから形成されたロール間隙(例えば、金属製及びポリマー樹脂被覆ロール)、及びその後の2つの金属性ロールから形成されたロール間隙を用いた工程が記載されている。これは、非常に標準的な基材の製造に用いられる工程である。本発明の一態様においては、ポリマー樹脂被覆ロール及び金属製ロールにより、又は、2つの金属製ロールにより、形成されたロール間隙の連続によって、紙が圧縮される。従来のカレンダリングにおいては、ポリマー樹脂被覆ロール及び金属製ロールにより形成されたロール間隙によって、ポリマー被覆ロールに接するウェブに微細な平滑性が改良されることは公知である。2つの金属製ロールにより形成されたロール間隙は、抄紙における粗面から生じる中程度の粗面度を大幅に改良する。本発明の特別な実施形態においては、平滑処理には、カレンダー処理において、紙ウェブを複数のロール間隙に通過させる工程が含まれ、最初の間隙は金属製ロールに隣接したポリマー被覆ロールにより形成され、残りの2つの間隙は隣接する一組の金属製ロールにより形成される。したがって、最初は、残りの2つのロール間隙において改良される大きな及び中程度の平滑性とともに、微細な平滑性が改良される。ロール間隙圧力を制御するために、カレンダーロール重量及び負荷圧力が個々のロール間隙負荷の測定の因子だけではない装置が用いられる。上記のカレンダリング処理は、複数の金属製ロール間隙を通して紙がカレンダー処理された場合に生じるロール焼け効果なしに、高レベルの平滑性を可能にする。
【0040】
本発明の一態様における塗工紙は、上記の繊維及び塗工顔料組成物を用いて得られた平滑性の改良により利点がある。このより平滑な紙によれば、ほとんどの画像形成工程においてより高品質な画像を提供することができる。写真基材の平滑性は、高品質画像形成に特に重要である。基材又は塗工紙の表面粗度又はRaは、紙の比較的微細な間隔の表面凹凸の測定値である。Raは、基材又は最終製品紙の中心線粗度である。表面粗度測定は、紙表面上の最大の変化の示度を提供する。より低いRa値は、より平滑な基材又は塗工紙を示している。
【0041】
本発明の一態様においては、基材は、約1.2〜1.5ミクロンRaの粗度を有する基材を提供するための平滑処理を施す。所望の平滑性を有する基材を提供するために、カレンダー負荷は、一般的に約1000〜1500pliの範囲である。Raは、基材又は最終製品紙の中心線粗度で示される。Raは、3.0ミクロン以下、好ましくは2.0ミクロン以下、より好ましくは1.5ミクロン以下である。
【0042】
本発明の一実施形態においては、基材(又は塗工紙)の片面又は両面に、ポリマー樹脂層がさらに塗工されている。平滑表面を提供するために基材にポリマーフィルムを塗工するいずれの方法も用いることができるが、ポリマーフィルムは、一般的に延伸又は積層工程により基材に塗工される。一層以上のポリマー塗工層を、基材(又は塗工紙)に塗工することができる。本発明のこの態様において有用なポリマーは、特に限定されるものではなく、紙基材上に延伸、積層又は塗工し得るいずれのポリマーも用いることができる。
【0043】
ポリオレフィン樹脂は、感光乳剤が塗工される写真支持体の製造において、一般的に用いられる。ポリオレフィン樹脂層の形成に有用なポリオレフィン樹脂には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリペンテン、二種類以上のオレフィンの共重合体及びこれらの混合物のようなオレフィンのホモポリマーが含まれる。様々な密度及び融点のポリマーを用いることができる。写真支持体の製造においては、ポリエステル樹脂又はフィルムも用いることができる。ポリマー樹脂層には、顔料、アミド類、脂肪酸の金属塩、酸化防止剤、光沢剤、紫外線吸収剤等のような他の添加物が含まれる。二酸化チタンは、鮮明度又は画像解像度を改良するために、ポリマー樹脂層にたびたび添加される。Unoらによる米国特許出願第4,994,357号には、様々なポリオレフィン塗工組成物及び写真支持体の製造におけるこれら組成物の使用が記載されている。
【0044】
ポリマー層は、約5〜30lb/3300ft、好ましくは15〜25lb/3300ftの乾燥塗工量で塗工される。ポリマー層は、単層として延伸することができ、又は複層として共延伸することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0046】
本発明の実施形態による基材は、UBM表面平滑性装置のレーザーを用いて試験した。典型的な写真基材及び本発明の基材の平滑性を1.3〜1.4ミクロンRaの範囲で測定した。スタイラスプローブを用いた他の表面測定法も使用した。スタイラス法により、粗度を3つのカテゴリー又は長さR1、R2及びR3に分類した。R1は最大の粗度を示し、R3は最小の「微細な」粗度を示す。各粗度においては、R値が小さいほど、基材紙が平滑であることを示す。3つの参照基材の平均値は、R1が36、R2が37、R3が48であった。これに対して、本発明の3つの基材の平均値は、R1が29、R2が36、R3が46であった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
本発明の様々な態様及び実施形態並びにこれらの利点を記載したように、本発明には、添付された請求項の意図及び範囲内において、様々な修飾、置換及び修正が可能であることを、当業者は認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維からなり、繊維が約0.9mmを超える繊維長−加重平均を有し、基材が約2.0ミクロンRa未満の粗度を有することを特徴とする基材。
【請求項2】
前記基材は、約1.5ミクロンRa未満の粗度を有することを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記基材は、約1.2〜1.5ミクロンRaの粗度を有することを特徴とする請求項2に記載の基材。
【請求項4】
前記基材は、全繊維含有物に対して少なくとも50%の規格外繊維を含有することを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項5】
前記基材は、少なくとも50%の約10×10繊維/グラム未満の密度を有する繊維を含有することを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項6】
前記基材は、フィラー顔料を実質的に含有していないことを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項7】
約1mmを超える長さ−加重平均繊維長を有する繊維からなる繊維スラリーを供給する工程と、
上記繊維のウェブを形成する工程と、
約2.0ミクロンRa未満の粗度を有する基材を提供するように平滑処理を上記ウェブに施す工程とを備えることを特徴とする記録材料形成に用いられる基材の製造方法。
【請求項8】
前記基材は、約1.5ミクロンRa未満の粗度を有することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記基材は、約1.2〜1.5ミクロンRaの粗度を有することを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記繊維スラリーを改良する工程をさらに備え、
改良処理後の繊維が、約0.9mmを超える長さ−加重平均繊維長を有することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
前記繊維スラリーは、フィラー顔料を実質的に含有しておらず、その結果、前記基材は、フィラー顔料を実質的に含有していないことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
前記基材の少なくとも片面に、塗工顔料組成物を塗工する工程をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項13】
前記塗工顔料組成物は、炭酸カルシウム沈殿アラゴナイト、中空球状顔料及びバインダーからなることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記バインダーは、アクリルエステル、変性アクリルエステル、アクリルエステル共重合体、変性アクリルエステル共重合体及びその混合物から選択されたアクリルバインダーからなることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記塗工顔料組成物は、塗工顔料組成物の乾燥重量に対して、約20〜30%のアクリルバインダー、約15〜25%の中空球状顔料、及び約40〜80%の炭酸カルシウム沈殿アラゴナイトからなることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
約0.9mmを超える長さ−加重平均繊維長を有する繊維からなり、約2.0ミクロンRa未満の粗度を有する基材と、
画像形成又は画像受容塗膜が感光乳剤、インク受容塗膜、感熱染料記録層及び顔料系インク受容層から選択された画像形成又は画像受容塗膜層とを備えたことを特徴とする画像形成システム用の支持材料。
【請求項17】
前記支持材料は、紙の少なくとも片面上において顔料とバインダーとからなり、顔料塗工紙を形成する塗工顔料組成物をさらに含有することを特徴とする請求項16に記載の支持材料。
【請求項18】
前記支持材料は、塗工紙上の塗工顔料と支持材料の片面又は両面上の画像形成又は画像受容塗膜層との間に配置された、ポリマー塗工層をさらに備えることを特徴とする請求項17に記載の支持材料。
【請求項19】
前記ポリマー塗工層は、ポリオレフィン又はポリエステル塗工層を備えることを特徴とする請求項18に記載の支持材料。
【請求項20】
前記塗工顔料の塗工量は、約4〜15lb/3300ftであることを特徴とする請求項16に記載の支持材料。
【請求項21】
前記塗工顔料は、全塗工顔料の乾燥重量に対して、約40〜80%の炭酸カルシウム沈殿アラゴナイトと、約15〜25%の中空球状顔料とからなることを特徴とする請求項20に記載の支持材料。
【請求項22】
前記塗工顔料は、全塗工顔料に対して、約20〜30%のアクリルバインダーをさらに含有することを特徴とする請求項21に記載の支持材料。
【請求項23】
前記塗工顔料は、乾燥塗工顔料の約8〜30重量%で塗工顔料組成物中にバインダーをさらに含有することを特徴とする請求項20に記載の支持材料。
【請求項24】
前記塗工顔料は、実質的にクレイを含有しないことを特徴とする請求項18に記載の支持材料。
【請求項25】
前記基材は、約1.5ミクロンRa未満の粗度を有することを特徴とする請求項18に記載の支持材料。
【請求項26】
前記基材は、約1.2〜1.5ミクロンRaの粗度を有することを特徴とする請求項25に記載の支持材料。
【請求項27】
前記基材は、全繊維含有物に対して、少なくとも50%の規格外繊維を含有することを特徴とする請求項18に記載の支持材料。
【請求項28】
前記基材は、少なくとも50%の約10×10繊維/グラム未満の密度を有する繊維を含有することを特徴とする請求項18に記載の支持材料。

【公表番号】特表2007−520642(P2007−520642A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517359(P2006−517359)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/019406
【国際公開番号】WO2004/113610
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505468978)ニューページ コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】