説明

視力検査装置

【課題】 小児等の視力検査時に小児等に不安を感じさせずに正確な視力検査を行うことができる視力検査装置を提供する。
【解決手段】 視標を、視力値と相関がある等間隔Dの視力検査用視標102として表示し、前記視力検査用視標を視力値と相関がある速度で移動させ、視力検査用視標102の縞模様が視認できたか否かが入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の視力を検査する視力検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被験者の視力を検査する視力検査装置としては、下記の特許文献1、非特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1、非特許文献1に記載された視力検査装置は、黒色の円環に切れ目の入ったランドルト環を検査視標として用い、患者が切れ目の方向を識別できた際に、口頭や指差し、入力装置などでその方向を回答するものである。
【0004】
特許文献1には、測定者が観察者の被検眼を拡大観察することで屈折力等を測定する眼科装置が記載されている。この眼科装置は、小児の眼科測定にも適するために、装置の一部が取り外せるようになっている。この装置の一部を取り外すことで小児の視界が広がり、測定者を見ることができるようになり、検査の不安感を低減することができるとしている。
【0005】
また、非特許文献1には、小児の反応、態度により視力を判定する方法がある。この方法は、哺乳瓶や玩具などを小児の眼前にもっていって上下左右に動かし、目や頭で追視するかの反応を見るものや、細長い縞模様の帯を小児の眼前で左右に動かして、眼振が起こるかどうか観察するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3575825号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】眼科検査法ハンドブック第2版 編集:丸尾敏夫、松井瑞夫、小口芳久、湖崎克 医学書院、pp.24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の眼科装置では、視力検査中の小児の不安感を低減するために視界を広くしているが、眼前に装置を設置するために不安感を完全に無くすことはできない。
【0009】
非特許文献1の方法では、小児にとっては日常状態で検査を受けることができるため、検査による不安感は特に発生しないが、測定者は小児の眼前に注意を引くものを動かしつつ、小児の反応を見るために、手間が発生し、また技量による影響も発生する。
【0010】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、小児等の視力検査時に小児等に不安を感じさせずに正確な視力検査を行うことができる視力検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する第1の発明に係る視力検査装置は、視力検査のための視標を表示する表示手段と、前記表示手段に表示する視標を、視力値と相関がある等間隔の視力検査用視標として表示し、前記視力検査用視標を視力値と相関がある速度で移動させる表示制御手段と、前記視力検査用視標の縞模様が視認できたか否かが入力される操作手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明に係る視力検査装置であって、第2の発明は、前記表示制御手段は、前記視力検査視標を右眼用視標と左眼用視標とに両眼分離した視標を前記表示手段に表示させ、被験者に装着され、前記右眼用視標を被験者の右眼により視認させ、前記左眼用視標を被験者の左眼により視認させる両眼分離手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
第1又は第2の発明に係る視力検査装置であって、第3の発明は、前記表示制御手段は、前記視力検査用視標における視力値と相関がある間隔を変更することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、視力値と相関がある等間隔の視力検査用視標を表示し、当該視力検査用視標を視力値と相関がある速度で移動させ、被験者の視線から視力を測定できるので、小児等の視力検査時に小児等に不安を感じさせずに正確な視力検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態として示す視力検査装置の構成を示す図である。
【図2】視力検査用視標の表示画面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本発明を適用した視力検査装置は、被験者の視力を検査するものである。ここで、視力を検査する手法としては、医師等の測定者が被験者の様子を見て視力を検査する他覚式と、被験者が自ら回答することによって視力を検査する自覚式とがある。本発明に係る視力検査装置は、他覚式によって視力を検査するものである。特に、視力検査装置は、口や身振りで回答できない被験者(小児や赤ん坊など)に対して、眼の動きを測定者が見て、視力の検査結果を得る。また、この視力検査装置は、視力検査を理解できない幼い小児や、視力検査を怖がる小児に実施することが有効である。
【0018】
本発明を適用した視力検査装置は、例えば図1に示すように構成される。この視力検査装置は、表示手段としての立体視ディスプレイ1と、表示制御手段としての制御装置2と、両眼分離手段としての立体視メガネ3と、操作手段としての操作部4とを含む。
【0019】
立体視ディスプレイ1は、視力検査のための視標を表示する。ここで、視力検査のための視標は、図2に示す表示範囲100に表示する指標のうち、視力値と相関がある等間隔Dの視力検査用視標102である。この視力検査用視標102は、当該視力検査用視標を視力値と相関がある速度で移動させる。視力検査用視標102の移動処理は、制御装置2によって行われる。視力検査用視標102には、小児等が視認するために興味を引くような乗り物の絵柄101が視力検査用視標102に付加されている。
【0020】
また、制御装置2は、視力検査用視標102を立体視ディスプレイ1に表示させるときに、当該視力検査用視標102の間隔D及び移動速度を変更する。制御装置2は、測定者によって計測したい被験者の視力が入力されることによって、当該入力された視力で縞模様が視認可能な視力検査用視標102の間隔D及び移動速度を設定する。そして、制御装置2は、設定した間隔Dの視力検査用視標102を生成して、当該視力検査用視標102を、設定した移動速度で移動させる。
【0021】
更に、制御装置2は、絵柄101及び視力検査用視標102を、右眼用視標と左眼用視標とに両眼分離した視標で立体視ディスプレイ1に表示させても良い。これにより、立体視メガネ3を被験者に装着させ、右眼用視標を被験者の右眼により視認させ、前記左眼用視標を被験者の左眼により視認させることができる。これにより、被験者は両眼を開いた状態で片眼毎の視力検査ができる。
【0022】
なお、図1に示す例では、立体視ディスプレイ1を使用しているが、プロジェクタ及びスクリーンで実現しても良い。また、レンチキュラー方式のディスプレイを使用してもよい。
【0023】
立体表示方式として時分割方式を採用した場合、立体視メガネ3の左眼部分及び右眼部分を液晶シャッタとする。制御装置2は、右眼用視標及び左眼用視標の表示タイミングと、立体視メガネ3の右眼部分及び左眼部分の液晶シャッタの動作とを同期させる。制御装置2は、被験者の左眼に左眼用視標を見せるときには、立体視ディスプレイ1に左眼用視標を表示すると共に、当該左眼用液晶シャッタを開にすると共に右眼用液晶シャッタを閉にする。また、制御装置2は、被験者の右眼に右眼用視標を見せるときには、立体視ディスプレイ1に右眼用視標を表示すると共に、当該右眼用液晶シャッタを開にすると共に左眼用液晶シャッタを閉にする。
【0024】
また、立体表示方式として偏光方式を採用した場合、立体視メガネ3の左眼部分を左眼用偏光フィルムとし、立体視メガネ3の右眼部分を右眼用偏光フィルムとする。そして、制御装置2は、被験者の左眼に左眼用視標を見せるときには、当該左眼用偏光フィルムと同じ偏光方向で左眼用視標を表示させる。また、制御装置2は、被験者の右眼に右眼用視標を見せるときには、当該右眼用偏光フィルムと同じ偏光方向で右眼用視標を表示させる。
【0025】
操作部4は、測定者又は被験者に操作されるジョイスティック等の方向レバー、マウス、又は方向キー等からなる。被験者は、視力検査用視標102が表示されて移動しているときに、視力検査用視標102の縞模様が視認できた場合に、その旨の操作を行う。
【0026】
ここで、視力検査用視標102のように白黒の縞模様の視標を提示して立体視ディスプレイ1上を移動させるのは、被験者の視線を動かすためである。被験者は、視力検査用視標102の縞模様が見えていれば、視力検査用視標102の移動に従って視線を動かす。これにより、測定者は、被験者には、当該視力検査用視標102の間隔D及び移動速度で特定される視力に相当した視力を有する。したがって、測定者は、操作部4を操作して、設定した視力を有することを入力する。
【0027】
一方、立体視ディスプレイ1に視力検査用視標102を表示して移動させたときに、当該視力検査用視標102の間隔D及び移動速度で特定される視力を有していない場合、被験者には、視力検査用視標102の縞模様が視認できない。この場合、被験者の視線は、移動しない。したがって、測定者は、被験者が当該視力検査用視標102の間隔D及び移動速度で特定される視力に相当した視力を有していないと判断できる。したがって、測定者は、操作部4を操作して、設定した視力を有しないことを入力する。
【0028】
以上のように、この視力検査装置によれば、視力値と相関がある等間隔Dの視力検査用視標102を表示し、当該視力検査用視標102を視力値と相関がある速度で移動させ、被験者の視線から視力を測定できる。したがって、この視力検査装置によれば、小児等の視力検査時に小児等に不安を感じさせずに正確な視力検査を行うことができる。
【0029】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 立体視ディスプレイ
2 制御装置
3 立体視メガネ
4 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視力検査のための視標を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示する視標を、視力値と相関がある等間隔の視力検査用視標として表示し、前記視力検査用視標を視力値と相関がある速度で移動させる表示制御手段と、
前記視力検査用視標の縞模様が視認できたか否かが入力される操作手段と
を備えることを特徴とする視力検査装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記視力検査視標を右眼用視標と左眼用視標とに両眼分離した視標を前記表示手段に表示させ、
被験者に装着され、前記右眼用視標を被験者の右眼により視認させ、前記左眼用視標を被験者の左眼により視認させる両眼分離手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の視力検査装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記視力検査用視標における視力値と相関がある間隔を変更することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の視力検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−100758(P2012−100758A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249950(P2010−249950)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)