説明

視覚誘発脳磁計測システム

【課題】被験者の起き臥しの邪魔となることがなく、画像をスクリーンに投影して行う視覚刺激検査のたびに、スクリーン架台を移動する必要のない視覚誘発脳磁計測システムを提供する。
【解決手段】磁気シールド空間内に配置された脳磁計と、この脳磁計を構成するヘルメットに被験者の頭部を挿入し、前記被験者に視覚刺激を与えて誘発脳磁場を測定する視覚誘発脳磁場計測システムにおいて、前記脳磁計の前記ヘルメットが配置された上側面に反射板及びスクリーンを収納し、視覚刺激検査に際しては、前記反射板とスクリーンを所定位置まで移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳磁計などの生態磁気計測に使用する視覚誘発脳磁計測システムに関し、被験者の安全と計測効率の向上を図った視覚誘発脳磁計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体における脳の神経活動は、未だ不明な点が有り、更なる解明が望まれている。近年、人間の脳の神経活動によって発生する磁気を計測する生体磁気計測の1分野として、被験者に画像を見せ、脳が誘発する微弱な磁場(磁界)を計測することにより、脳の神経活動を解明しようとするものがある。
【0003】
例えば、人間の脳の神経活動によって発生する磁気を計測する生体磁気計測の1分野として、被験者に視覚刺激用の画像を見せ、その反応を測定する視覚反応測定がある。
これは具体的には、パターンアピアランス刺激及びパターンリバーサル刺激と呼ばれるものである。
【0004】
パターンアピアランス刺激とは、500±100(ms)毎に、チェッカーボードパターンと等輝度の無構造刺激を交互に呈示し、この刺激に対して被験者が誘発する脳磁場(磁界)の変化を測定するものである。また、パターンリバーサル刺激とは、500±100(ms)毎に、チェッカーボードパターンの暗部と明部とを入れ換えた刺激に対して被験者が誘発する脳磁場(磁界)の変化を測定するものである。
【0005】
視覚誘発脳磁界の計測には、種々の視覚パターンを高速に提示できる視覚刺激呈示装置が必要である。また、生体磁気は環境磁気に比べ100万分の1と微弱なため、通常磁気シールド装置内で計測される。被験者に画像を見せる場合、画像提示装置としてCRTディスプレイやプロジェクタ等が使用されるが、CRTを用いた刺激装置は、心理学や脳は測定等には有効であるが、強い磁界を発生するため、微弱な磁界を計測する脳磁界計測には適さない。
【0006】
そのため、それらの装置は磁気シールド装置の外部に設置される。視覚関連の脳磁界測定では、プロジェクタ式テレビを用いたり、開放型の特殊な磁気シールドルームとプロジェクタを併用したり、SQUID装置とCRTとを5m以上離して使用している。
【0007】
図2は視覚誘発脳磁計測システムの従来例を示す斜視図である。図2において、1はヘルメット1aを有する脳磁計である。被験者横臥台2には被験者(図示せず)が頭部をヘルメット1a側に向けて横臥する。そして、測定時には被験者横臥台2がヘルメット1a側に例えば25cm程度移動し頭の一部がヘルメット1a内に挿入される。
【0008】
被験者横臥台2を跨いで門状に形成されたスクリーン架台3の中央付近にはスクリーン5及び反射板4が配置されており、スクリーン架台3は矢印A方向に移動可能とされている。そして、被験者が被験者横臥台2に横臥した状態でスクリーン5を裏面から観察できる位置に配置される。これら脳磁計1、被験者横臥台2、スクリーン架台3は磁気シールド室内に配置されている。
【0009】
なお、プロジェクタ6は実際にはシールド室の外部に配置されており、このプロジェクタ6から投影される画像(例えば漢字、ひらがな、千鳥格子等)がシールド室内に入射して反射板4で反射してスクリーン5に投影するようになっている。被験者はその投影された画像の視覚刺激に反応して微弱な磁界を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−173398号公報
【特許文献2】特開平09−000500号公報
【特許文献3】特開平09−000501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、このような視覚誘発脳磁計測システムにおいては、測定が終了した後、被験者が起き上がろうとしてスクリーン架台に頭をぶつける可能性がある。従って、測定終了後はスクリーン架台3を後方(足側)に移動させている。
【0012】
即ち、従来の構成では被験者を覆うように設置されたスクリーン架台3が被験者の起き臥しの邪魔となった。そのため、画像をスクリーンに投影して行う視覚刺激検査のたびに、スクリーン架台を移動する必要があった。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、被験者の起き臥しの邪魔にならず、スクリーン架台の移動が不要な反射板およびスクリーンの収納構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、請求項1に記載の視覚誘発脳磁計測システムの発明においては、
磁気シールド空間内に配置された脳磁計と、この脳磁計を構成するヘルメットに被験者の頭部を挿入し、前記被験者に視覚刺激を与えて誘発脳磁場を測定する視覚誘発脳磁場計測システムにおいて、前記脳磁計の前記ヘルメットが配置された上側面に反射板及びスクリーンを収納し、視覚刺激検査に際しては、前記反射板とスクリーンを所定位置まで移動させることを特徴とする。
【0015】
請求項2においては、請求項1に記載の視覚誘発脳磁計測システムの発明において、
前記反射板およびスクリーンは視覚刺激検査終了後は元の位置に戻され、カバーで覆われるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1,2の発明によれば、脳磁計のヘルメットが配置された上側面に反射板及びスクリーンを収納し、視覚刺激検査に際しては、反射板とスクリーンを所定位置まで移動させ、測定終了後は元の位置に戻るように構成したので、被験者の起き臥しの邪魔にならず、架台の移動を不要とし計測効率の向上を図った反射板およびスクリーンの収納構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の視覚誘発脳磁計測システムの実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】従来の視覚誘発脳磁計測システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1(a,b)は本発明の視覚誘発脳磁計測システムの実施形態の一例を示す斜視図である。
図1(a)において、11は脳磁計であり、図2に示す従来例の脳磁計1とはヘルメット1aの上部側面に矩形状の穴11aを設けた点のみが異なり機能は同一である。
【0019】
穴11a内には反射板4aおよびスクリーン5aが収納されており、通常は穴11の上辺に沿って設けられたカバー10により覆われている(図1b参照)。このカバーは上辺を支点として回動させたとき支柱12aを伸縮させることにより任意の位置で開度を維持可能に形成されている。
【0020】
また、反射板4aおよびスクリーン5aはカバー10を所定の開度に維持した状態で被験者がプロジェクター(図示省略)からの画像観察が可能な所定の位置まで突出可能に形成されており、突出した状態では被験者横臥台(図2参照)に横臥した被験者が反射板4aを介してスクリーン5aに写し出される画像を観察できるように維持される。突出のための動作は支柱12bの伸縮により行うものとする。
【0021】
上述の構成によれば、従来のような被験者を覆うように設置されたスクリーン架台が不要なので、被験者の起き臥しの邪魔となることがなく、画像をスクリーンに投影して行う視覚刺激検査のたびに、スクリーン架台を移動する必要がない。
【0022】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば、反射板とスクリーンを突出させる構成は図示のものに限るものではなく必要に応じて任意な構成をとることができる。要は被験者の起き臥しの邪魔となることがなく、画像を観察できるものであれば良い。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0023】
1,11 脳磁計
1a ヘルメット
2 被験者横臥台
3 スクリーン架台
4 反射板
5 スクリーン
6 プロジェクター
10 カバー
11a 穴
12 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気シールド空間内に配置された脳磁計と、この脳磁計を構成するヘルメットに被験者の頭部を挿入し、前記被験者に視覚刺激を与えて誘発脳磁場を測定する視覚誘発脳磁場計測システムにおいて、前記脳磁計の前記ヘルメットが配置された上側面に反射板及びスクリーンを収納し、視覚刺激検査に際しては、前記反射板とスクリーンを所定位置まで移動させることを特徴とする視覚誘発脳磁計測システム。
【請求項2】
前記反射板およびスクリーンは視覚刺激検査終了後は元の位置に収納されカバーで覆われるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の視覚誘発脳磁計測システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−269087(P2010−269087A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125716(P2009−125716)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】