説明

視覚障害者の学習用具、視覚障害者の学習用具セット

【課題】実物を触ることができないもの、触っても全体を把握することができないものを含め、その形状と名称を効率よく学習するための視覚障害者の学習用具を提供する。
【解決手段】視覚障害者の学習用具1は、視覚障害者が指で凸形絵柄部7を触り、その形状を把握する。そして、点字部9に触れて凸形絵柄部7の名称を認識し、更に凸形絵柄部7の名称を表す凸形文字部11に触って平仮名の形状を把握する。 このように視覚障害者の学習用具1を用いれば、視覚障害者は凸形絵柄部7が示すものの形状、そのものが示す名称、その名称を表す文字の形状を、一度に学習することができる。また、健常者は凸形文字部11と点字部9とを合わせて見ることによって点字の学習を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は視覚障害者の学習用具、視覚障害者の学習用具セットに係り、特に学習対象の形状と名称とを同時に把握することができる視覚障害者の学習用具、視覚障害者の学習用具セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載された点字学習装置があり、この点字学習装置を用いれば点字の配列を容易に修得することができる。当然のことであるが点字によってものの名称だけを学習しても、その名称が如何なるものを示すのかは理解することができない。従って、その名称が示す実物を触る等して、形状等を把握する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−232599
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、視覚障害者が実物の形状と、その名称を効率よく学習するためのものはなかった。
また、例えば猛獣のように触ることができないもの、大きな建造物のように触っても全体を把握することができないものも少なくない。よって、このような実物を触ることができないもの、触っても全体を把握することができないものの形状と名称を効率よく学習するための視覚障害者の学習用具の登場が切望されていた。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、実物を触ることができないもの、触っても全体を把握することができないものを含め、その形状と名称を効率よく学習するための視覚障害者の学習用具の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、絵柄を凸部によって形成した凸形絵柄部と、前記凸形絵柄部が示すものの名称を点字によって表した点字部と、前記凸形絵柄部が示すものの名称を表す平仮名等の文字を凸部によって形成した凸形文字部と、前記凸形絵柄部、前記点字部及び前記凸形文字部が並んで設けられたカード状の本体部とから構成されていることを特徴とする視覚障害者の学習用具である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した視覚障害者の学習用具において、合成樹脂によって構成されていることを特徴とする視覚障害者の学習用具である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した視覚障害者の学習用具の同じもの2枚を一組として、複数組を備えたことを特徴とする視覚障害者の学習用具セットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の視覚障害者の学習用具によれば、視覚障害者は凸形絵柄部が示すものの形状、そのものが示す名称、その名称を表す文字の形状を、一度に学習することができる。また、健常者は凸形文字部と点字部とを合わせて見ることによって点字の学習を行うことができる。
更に、視覚障害者の学習用具セットによれば、視覚障害者の学習用具をばらばらになるように並べて、これを順次触り、同じ視覚障害者の学習用具を探し当てるというトランプゲームの神経衰弱様のゲームを行うことができる。従って、視覚障害者は遊びながらゲーム感覚で、凸形絵柄部が示すものの形状、そのものが示す名称、その名称を表す文字の形状を、学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る視覚障害者の学習用具の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る視覚障害者の学習用具セットを用いて学習する方法を説明するための図である。
【図3】図2の学習用具セットを収納ボックスに収容した状態を示す斜視図である。
【図4】図3の収納ボックスを複数個、棚に収納した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る視覚障害者の学習用具1、視覚障害者の学習用具セット3を図面にしたがって説明する。
図1に示す視覚障害者の学習用具1はプラスチックによって構成されている。
符号5はカード状の本体部を示し、この本体部5の表面にはライオンの絵柄から成る凸形絵柄部7が形成されている。凸形絵柄部7は本体部5に対し一体に形成された凸部によって構成されている。凸形絵柄部7は、目鼻が最も前面に突出し、顔、たてがみ、胴・尾の順で背面側に位置している。すなわち、この順で厚さ寸法が小さくなっている。
【0011】
凸形絵柄部7の下(本体部5の下端面側)には、ライオンの名称を示す点字部9が形成され、更にその下には「らいおん」の平仮名から成る凸形文字部11が形成されている。点字部9、凸形文字部11は本体部5に対し一体に形成された凸部によって構成されている。
【0012】
視覚障害者の学習用具1の高さ寸法Hは85mm、幅寸法Wは55mm、厚さ寸法Tは3mmであり、凸形絵柄部の最も厚い部分の高さ寸法が1.7mm、点字部の高さ寸法が0.6mm、凸形文字部11の高さ寸法が0.4mmである。
【0013】
この視覚障害者の学習用具1は、視覚障害者が指で凸形絵柄部7を触り、その形状を把握する。そして、点字部9に触れて凸形絵柄部7の名称を認識し、更に凸形絵柄部7の名称を表す凸形文字部11に触って平仮名の形状を把握する。
このように視覚障害者の学習用具1を用いれば、視覚障害者は凸形絵柄部7が示すものの形状、そのものが示す名称、その名称を表す文字の形状を、一度に学習することができる。また、健常者は凸形文字部11と点字部9とを合わせて見ることによって点字の学習を行うことができる。
また、ライオンのように通常は実際に触ることができないものの、全体の形状を把握することが可能である。
【0014】
図2に視覚障害者の学習用具セット3を示す。
この視覚障害者の学習用具セット3は、上記のライオンの絵柄から成る凸形絵柄部7を有する視覚障害者の学習用具1の他に、キリンの絵柄から成る凸形絵柄部7aを有する視覚障害者の学習用具1a、ヒツジの絵柄から成る凸形絵柄部7bを有する視覚障害者の学習用具1b、ゾウの絵柄から成る凸形絵柄部7cを有する視覚障害者の学習用具1c及びコアラの絵柄から成る凸形絵柄部7dを有する視覚障害者の学習用具1dをそれぞれ2枚一組として合計五組で構成されている。
また、視覚障害者の学習用具1、1a、1b、1c、1dは、それぞれの本体部5に形成された凸形絵柄部7、7a、7b、7c、7dに対応する名称を示す点字部9、9a、9b、9c、9d及び凸形文字部11、11a、11b、11c、11dを有している。
【0015】
視覚障害者の学習用具セット3では、視覚障害者の学習用具1、1a、1b、1c、1dをばらばらになるように並べて、これを順次触り、同じ視覚障害者の学習用具を探し当てるというトランプゲームの神経衰弱様のゲームを行うことができる。従って、視覚障害者は遊びながらゲーム感覚で、凸形絵柄部7が示すものの形状、そのものが示す名称、その名称を表す文字の形状を学習することができる。
【0016】
図3に視覚障害者の学習用具セット3を収納する収納ボックス13を示す。
この収納ボックス3は本体15、仕切り部17、蓋19とから成る。本体15は仕切り部17を隔てた左右の空間に視覚障害者の学習用具1、1a、1b、1c、1dを収容できるサイズに形成されている。
また、蓋19の上面、前面、背面、左右の側面に点字部21と凸形文字部23によって、収納ボックス13に収容される視覚障害者の学習用具セットの種類である「どうぶつ」と記載されている。
【0017】
図4に収納ボックス13を収容する棚25を示す。
この棚25には4つの収納ボックス13、13a、13b、13cが収容されている。収納ボックス13aには三角形や星形等の「かたち」の種類を表す凸形絵柄部、凸形文字部及び点字部が形成された本体部から成る視覚障害者の学習用具が同じもの2枚を一組として合計五組で構成される視覚障害者の学習用具セットが収容されている。
【0018】
収容ボックス13bには大根、キャベツ等の「やさい」の種類を表す凸形絵柄部、凸形文字部及び点字部が形成された本体部から成る視覚障害者の学習用具が同じもの2枚を一組として合計五組で構成される視覚障害者の学習用具セットが収容されている。
収容ボックス13cにはリンゴ、バナナ等の「くだもの」の種類を表す凸形絵柄部、凸形文字部及び点字部が形成された本体部から成る視覚障害者の学習用具が同じもの2枚を一組として合計五組で構成される視覚障害者の学習用具セットが収容されている。
【0019】
そして、収納ボックス13a、13b、13cのそれぞれの蓋19a、19b、19cの上面、前面、背面、左右の側面に点字部21と凸形文字部23によって、収納ボックス13に収容される視覚障害者の学習用具セットの種類である「かたち」、「やさい」、「くだもの」とそれぞれ記載されている。
上記のように収納ボックス13、13a、13b、13cと棚25を用いれば、視覚障害者の学習用具セット3等を整理して収容することができ、また視覚障害者でも学習用具セット3等を所定の収納ボックスに対し、容易に出し入れすることが可能である。
【0020】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、視覚障害者の学習用具のサイズは上記実施の形態で示したものに限定されず、変更可能である。
また、視覚障害者の学習用具セットの種類は上記実施の形態で示したものに限らず自由に設定可能であり、また1つの視覚障害者の学習用セットを構成する組数は五組に限定されるものではないのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は視覚障害者の学習用具、視覚障害者の学習用具セットの製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1、1a、1b、1c、1d…視覚障害者の学習用具
3…視覚障害者の学習用具セット
5…カード状の本体部
7、7a、7b、7c、7d…凸形絵柄部
9、9a、9b、9c、9d…点字部
11、11a、11b、11c、11d…凸形文字部
13、13a、13b、13c…収納ボックス
15…収納ボックスの本体
17…仕切り部
19…蓋
21…蓋の点字部
23…蓋の凸形文字部
25…棚
H…視覚障害者の学習用具の高さ寸法
W…視覚障害者の学習用具の幅寸法
T…視覚障害者の学習用具の厚さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絵柄を凸部によって形成した凸形絵柄部と、前記凸形絵柄部が示すものの名称を点字によって表した点字部と、前記凸形絵柄部が示すものの名称を表す平仮名等の文字を凸部によって形成した凸形文字部と、前記凸形絵柄部、前記点字部及び前記凸形文字部が並んで設けられたカード状の本体部とから構成されていることを特徴とする視覚障害者の学習用具。
【請求項2】
請求項1に記載した視覚障害者の学習用具において、合成樹脂によって構成されていることを特徴とする視覚障害者の学習用具。
【請求項3】
請求項1または2に記載した視覚障害者の学習用具の同じもの2枚を一組として、複数組を備えたことを特徴とする視覚障害者の学習用具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−98566(P2012−98566A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246992(P2010−246992)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(310021685)有限会社小林製作所 (1)
【出願人】(507267827)