説明

視覚障害者用歩行支援装置

【課題】歩道の出っ張りや窪みを検知して通知する視覚障害者用歩行支援装置を提供する。
【解決手段】視覚障害者が、図3(a)の出っ張りや溝のない平坦な歩道面を歩行すると、視覚障害者用歩行支援装置10の計測距離はda(m)となり、図3(b)の出っ張りの歩道面を歩行すると、出っ張りの直前での視覚障害者用歩行支援装置10の計測距離はd(m)となり、図3(c)の溝がある歩道面を歩行すると、溝の直前での視覚障害者用歩行支援装置10の計測距離はd(m)となる。視覚障害者用歩行支援装置10が、歩道面の出っ張りを検知すると平坦のときの計測距離da(m)より短い計測距離d(m)となり、歩道面の溝を検知すると平坦のときの計測距離da(m)より長い計測距離d(m)となる。視覚障害者用歩行支援装置10は、計測距離により障害物が出っ張りであるか溝であるかを検知し、振動子12を振動させることで視覚障害者に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者が歩行するときに障害物を検知し視覚障害者に通知することで、視覚障害者の歩行を支援する視覚障害者用歩行支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者が屋外を歩行する際には、杖をつくことによって、周囲にある障害物を確認しながら歩行している。このため、視覚障害者の周囲にある障害物を検知し、検知した障害物の情報を視覚障害者に通知できるようにした視覚障害者用歩行支援装置が提供されるようになった。しかし、このような視覚障害者用歩行支援装置において、上り階段、下り階段、壁、溝などの比較的大きな障害物を検知することができるが、歩道の出っ張りや窪みといった障害物を検知することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−158472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術では、白杖に視覚障害者用歩行支援装置を備え、視覚障害者用歩行支援装置にはセンサーと、複数の振動子が取り付けられ、センサーが設定範囲に障害物があるかを検知し設定範囲に対応させた振動子を振動させることで、どの方向に障害物があるかを視覚障害者に通知することができる。しかし、特許文献1の視覚障害者用歩行支援装置では、歩道にある窪みや出っ張りといった障害物までを検知することが困難であった。また、白杖と視覚障害者用歩行支援装置が一体構造となっているので、視覚障害者用歩行支援装置が故障してしまった場合、または白杖が破損した場合に、視覚障害者用歩行支援装置や白杖だけを交換することができないという問題があった。更に、センサーが取り付けられている視覚障害者用歩行支援装置は、そのセンサーを視覚障害者が進む方向に向けないと障害物を正確に検知することができない。このため、視覚障害者は視覚障害者用歩行支援装置が取り付けられている白杖が回転しないように気を付けて歩行している。しかし、白杖が回転してしまったことに気付かずに、センサーを視覚障害者が進む方向に向けないで歩行してしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる視覚障害者用歩行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、本体とケーブルで接続された障害物通知手段を備えた視覚障害者用歩行支援装置であって、前記本体は、前記本体と歩道面までの距離を計測する距離計測手段と、前記距離により前記歩道面の凸形状または凹形状の障害物を検知し、検知した前記障害物に基づいて障害物検知情報を設定する障害物検知処理手段と、前記障害物検知情報を前記障害物通知手段に送信する障害物検知情報送信手段と、前記障害物通知手段は、前記障害物検知情報送信手段から前記障害物検知情報を受信すると前記障害物検知情報に基づいて前記障害物の存在又は有無を通知することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、前記本体は装着部を備え、前記装着部により杖を固定することで前記杖に前記本体を装着することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置の前記本体は回転検出手段と、前記回転検出手段が検出した前記杖の回転の有無と前記回転が有るときはその方向の情報である回転検出情報を通知する回転検出通知手段と、前記回転検出情報を前記回転検出通知手段に送信する回転検出情報送信手段と、前記回転検出通知手段は、前記回転検出情報送信手段から前記回転検出情報を受信すると前記回転検出情報に基づいて回転の有無と前記回転が有るときはその方向を通知することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置の前記本体は、電力の消費を抑制する状態であるスリープモードと前記スリープモードを解除するモード遷移手段を備えることを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置の前記モード遷移手段は、予め決められた時間に計測された距離が全て同じであるときに、前記スリープモードに遷移することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置の前記本体は振動検出手段を備え、前記振動検出手段が前記本体の振動を検出したときに、前記モード遷移手段が前記スリープモードを解除することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、接触したかを感知する接触感知手段を備え、前記接触感知手段が接触を感知したときに、前記モード遷移手段が前記スリープモードを解除することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置の前記接触感知手段は、前記杖のグリップ部に圧力センサーを装着することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、前記障害物通知手段が振動子であり前記障害物検知情報が振動周波数の信号であるときに、前記障害物通知手段が前記障害物検知情報送信手段から前記振動周波数の信号を受信すると、前記振動子が前記振動周波数で振動することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、前記回転検出通知手段が振動子であり前記回転検出情報が振動周波数の信号であるときに、前記回転検出通知手段が前記回転検出情報送信手段から前記振動周波数の信号を受信すると、前記振動子が前記振動周波数で振動することを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、前記振動周波数の信号が第1振動周波数のときには凸形状の障害物、第2振動周波数のときには凹形状の障害物、第3振動周波数のときには前記杖が左方向に回転、第4振動周波数のときには前記杖が右方向に回転の通知であることを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置の前記振動子は、前記杖のグリップ部に装着されることを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置の前記本体に、前記振動子の振動をテストするスイッチを有する振動子テスト手段を備え、前記振動子テスト手段の前記スイッチをオンにすると、テスト用の前記振動周波数の信号が前記振動子に送信されることで前記振動子の振動をテストすることを特徴としている。
また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置の前記距離計測手段は、赤外線を用いて前記距離を計測する距離計測センサーであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歩道の表面(以下、歩道面という)にある出っ張りや窪みといった視覚障害者が歩行するときに障害となる障害物についても検知でき、また、杖に着脱可能な視覚障害者用歩行支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態である視覚障害者用歩行支援装置の外観図である。
【図2】本発明の実施形態である視覚障害者用歩行支援装置を白杖に装着した状態の外観図である。
【図3】本発明の実施の形態である歩道面の出っ張りと溝を検知する方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態である視覚障害者用歩行支援装置の主要な機能を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施形態である計測距離データ保存エリアの構成を示す構成図である。
【図6】本発明の実施形態における障害物検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態である白杖の回転を検出する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について図面を参照して説明する。
【0010】
まず、視覚障害者用歩行支援装置10について説明する。図1は、視覚障害者用歩行支援装置10の外観図である。図1(a)は視覚障害者用歩行支援装置10の正面図である。図1(b)は視覚障害者用歩行支援装置10の右側面図である。視覚障害者用歩行支援装置10は、図1に示すように、本体11と振動子12から構成され、本体11と振動子12はケーブル13で接続されている。本体11には、赤外線により歩道面との距離を計測するセンサー、本体11を制御するマイクロコンピュータを搭載した制御部、振動子12に対して所定の周波数の信号を送信する振動子送信部、及び本体11に加えられた振動を検出する振動検出部115などが内蔵されている。本体11の機能構成については、後述する。
【0011】
図1に示すように、本体11の右側面には、白杖20に装着するための装着部14が備えられている。装着部14は、本体11に固定された固定部141と、固定部141に嵌め合わされる嵌合部142とから構成されている。固定部141及び嵌合部142には円弧状の断面形状を有した凹部が設けられている。固定部141の凹部と嵌合部142の凹部とは、組み合わされて白杖20が挿通される挿通孔143を構成する。嵌合部142は、固定部141にネジ144で固定され、挿通孔143に挿通された白杖20を固定部141とで挟持する。
【0012】
本体11の前面には、距離計測センサーで送受信される赤外線の送受信部15が設けられている。送受信部15の前面には、上下に並んで配置された透過部151と透過部152を備え、この透過部151と透過部152を通して赤外線が送受信される。本体11の上面には、視覚障害者用歩行支援装置10の電源をON・OFFするスイッチ16が備えられている。スイッチ16は、前後方向にレバー操作されることでONとOFFとを切り換える。また、本体11の上面からは、振動子12に接続されるケーブル13が延びている。振動子12は、振動することによって視覚障害者に障害物の存在を通知するものである。振動子12は、本体11からケーブル13を経由して所定の周波数の信号を受信すると、その受信した信号の周波数に切り替えることで振動周波数を変えることができる。また、この周波数が「0」のときは、振動子12は振動を停止する。ケーブル13は、データを送受信するための信号ケーブルである。
【0013】
図2は、視覚障害者用歩行支援装置10を白杖20に装着した状態の外観図である。図2は、視覚障害者用歩行支援装置10の装着部14の挿通孔143に白杖20を挿通させ、視覚障害者が白杖20のグリップ21を握って手が触れる位置に、振動子12を装着した状態である。振動子12をグリップ21に装着する方法としては、例えばベルトに振動子12を貼り付け、そのベルトをグリップ21に巻き付けるなど、あらゆる方法で装着することが可能である。このように白杖20に容易に視覚障害者用歩行支援装置10を装着することができる。
【0014】
次に、視覚障害者用歩行支援装置10により歩道面までの距離を計測することで出っ張りや溝などの障害物を検知する方法について、図3を用いて説明する。視覚障害者がこの視覚障害者用歩行支援装置10を白杖20に装着して歩行すると、視覚障害者用歩行支援装置10から赤外線が歩道面の方向に送信される。そして、視覚障害者用歩行支援装置10は、歩道面から反射される赤外線を受信する。赤外線は、超音波などに比べ送信方向にほぼ直進しその角度が広がらないため、赤外線が歩道面に反射される範囲(図3に示す「反射エリア」)が狭いので、歩道面の出っ張りや溝だけに赤外線を反射させることができる。このような特性のある赤外線を用いたセンサーを使用することで、視覚障害者用歩行支援装置10は、赤外線の送信から受信までの時間を計測でき、視覚障害者用歩行支援装置10から歩道面までの距離を計測できる。例えば、視覚障害者が、図3(a)に示すような出っ張りや溝のない平坦な歩道面を歩行すると、視覚障害者用歩行支援装置10の計測距離はda(m)となる。次いで、視覚障害者が、図3(b)に示すような凸形状の出っ張りの歩道面を歩行すると、その凸形状の出っ張りでの視覚障害者用歩行支援装置10の計測距離はd(m)となる。次いで、視覚障害者が、図3(c)に示すような凹形状の溝がある歩道面を歩行すると、凹形状の溝での視覚障害者用歩行支援装置10の計測距離はd(m)となる。つまり、視覚障害者用歩行支援装置10が歩道面の出っ張りを検知すると、平坦のときの計測距離da(m)より短い計測距離d(m)となる。また、視覚障害者用歩行支援装置10が歩道面の溝を検知すると、平坦のときの計測距離da(m)より長い計測距離d(m)となる。このように、視覚障害者用歩行支援装置10は、計測距離により障害物が出っ張りであるか溝であるかを検知することができる。
計測距離に対応する検知障害物と振動子12の振動周波数との対応を(表1)に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
歩道面を平坦と判定する計測距離の範囲(以下、設定範囲という)を予め決めておき、その設定範囲の上限値をr(m)、設定範囲の下限値をr(m)とする。表1に示すように、計測距離がこの設定範囲内(r≦計測距離≦r)であれば、検知障害物は無しと判定され、振動子12を振動させないように、本体11から振動子12への信号の周波数を「0」とする。これにより振動子12の振動周波数は「0」となる。また、計測距離がこの設定範囲の下限値より小さい(計測距離<r)ときには、「出っ張り(凸形状)」の障害物が検知されたと判定され、本体11から振動子12への信号の周波数「f」とすることにより振動子12の振動周波数は「f」となる。また、計測距離がこの設定範囲の上限値より大きい(r<計測距離)ときには、「溝(凹形状)」の障害物が検知されたと判定され、本体11から振動子12への信号の周波数「f」とすることにより振動子12の振動周波数は「f」となる。このように、本体11から振動子12への信号を「f」と「f」のような異なる周波数とすることで、振動子12の振動周波数が変化するので、視覚障害者は障害物が「出っ張り」であるか「溝」であるかを区別することができる。
【0017】
次に、視覚障害者用歩行支援装置10の本体11の主要な機能構成について、図4を用いて説明する。
【0018】
本体11は、距離計測センサー111、距離計測信号入力部112、振動子送信部113、制御部114、振動検出部115、メモリ116、及び回転検出部117から構成されている。距離計測センサー111には送信部111aと受信部111bが設けられている。制御部114には障害物検知処理部114aが設けられている。メモリ116には計測距離データ保存エリア116aが設けられている。
【0019】
距離計測センサー111は、送信部111aから赤外線を送信し、その赤外線が歩道面から反射されて受信部111bが受信するまでの時間を計測することで、視覚障害者用歩行支援装置10から歩道面までの距離を計測するセンサーである。送信部111aから出力される赤外線は、図1に示す透過部151を通して送信され、歩道面から反射される赤外線は図1に示す透過部152を通して受信部111bが受信する。
【0020】
距離計測信号入力部112は、制御部114の障害物検知処理部114aからの要求により、距離計測センサー111から計測距離を入力し、障害物検知処理部114aに出力する。振動子送信部113は、振動子12を所定の周波数で振動させるための信号を制御部114からケーブル13を経由して振動子12に送信する。
【0021】
制御部114は、マイクロコンピュータを搭載し、本体11全体を制御する。制御部114は、動作モードとスリープモードを備え、動作モードは本体11の各機能を動作させている状態であり、スリープモードは本体11の振動検出部115以外の機能を停止させている状態である。スリープモードは、視覚障害者が視覚障害者用歩行支援装置10を装着した白杖20を使用していないときに、視覚障害者用歩行支援装置10の電力の消費を抑制するためのモードである。制御部114の障害物検知処理部114aは、距離計測信号入力部112に対して計測距離の要求を出力し、距離計測信号入力部112から計測距離を入力する。また、障害物検知処理部114aは、検知障害物に対応して振動子12を周波数で振動させる信号を振動子送信部113に出力する。障害物検知処理部114aが実行する障害物検知処理の流れについては、後述する。
【0022】
振動検出部115は、本体11を白杖20に装着し、視覚障害者用が歩行することによる振動を、圧電素子などにより制御部114に対して電圧を発生させることにより検知し、制御部114のスリープモードを解除する。
【0023】
メモリ116は、制御部114が実行するプログラムやプログラムで用いられるデータを記憶している書き換え可能な不揮発性メモリである。また、メモリ116には、計測距離データ保存エリア116aが設けられ、障害物検知処理部114aにより「計測距離データ」が保存される。回転検出部117の機能については、図7の白杖20の回転を検出する方法の説明で記載する。
【0024】
次に、計測距離データ保存エリア116aの構成について説明する。図5に、計測距離データ保存エリア116aの構成を示す。計測距離データ保存エリア116aは、「インデックスNo.(I)」、及び「計測距離データ」の項目から構成されている。また、「計測距離データ」には、「保存時間」、及び「計測距離」の項目が設けられている。「インデックスNo.(I)」は、「計測距離データ」毎に付けられるユニークな番号で、1からnまでの番号が順番に設定されている。「保存時間」は、障害物検知処理部114aが計測距離データ保存エリア116aに「計測距離」を保存した時間である。「計測距離」は、距離計測センサー111が計測した距離である。例えば、計測距離データ保存エリア116aの「インデックスNo.(I)」の「3」においては、障害物検知処理部114aにより「h時m分S秒」に保存された「計測距離」が「d(m)」であることを示している。
【0025】
次に、障害物検知処理部114aが実行する障害物検知処理について説明する。図6に、障害物検知処理のフローチャートを示す。以下、障害物検知処理のフローチャートのステップ順に、障害物検知処理の流れを説明する。
【0026】
図1に示す視覚障害者用歩行支援装置10のスイッチ16がOFFからONに操作されると、本体11に電源が投入され、制御部114が障害物検知処理部114aを起動する。障害物検知処理部114aが起動されると、障害物検知処理部114aが障害物検知処理を開始する。
【0027】
(ステップS101)
障害物検知処理部114aは、インデックスNo.(I)に「1」を設定し、初期化する。
【0028】
(ステップS102)
次いで、障害物検知処理部114aは、距離計測信号入力部112に対して「計測距離」を要求し、距離計測信号入力部112から「計測距離」を入力する。
【0029】
(ステップS103)
次いで、障害物検知処理部114aは、メモリ116の計測距離データ保存エリア116aのインテックスNo.(I)番目の「保存時間」に現在時刻、また「計測距離」にステップS102で距離計測信号入力部112から入力した「計測距離」を保存する。
【0030】
(ステップS104)
次いで、障害物検知処理部114aは、メモリ116の計測距離データ保存エリア116aの「保存時間」から過去30分間の「計測距離データ」が保存されているかを判定する。過去30分間の「計測距離データ」が保存されている(ステップS104のYes)ときは、過去30分間の「計測距離」を取り出すステップ105に進む。また、過去30分間の「計測距離データ」が保存されていない(ステップS104のNo)ときは、今回の「計測距離」が設定範囲内であるかを判定するステップ109に進む。
【0031】
(ステップS105)
次いで、過去30分間の「計測距離データ」が保存されているときは、障害物検知処理部114aは、メモリ116の計測距離データ保存エリア116aから過去30分間の「計測距離」を取り出す。
【0032】
(ステップS106)
次いで、障害物検知処理部114aは、過去30分間の「計測距離」が全て同じ値であるかを判定する。過去30分間の「計測距離」が全て同じ値である(ステップS106のYes)ときは、振動子12の振動を停止させるステップS107に進む。過去30分間の「計測距離」が全て同じ値でない(ステップS106のNo)ときは、ステップS102で入力した今回の「計測距離」が設定範囲内であるかを判定するステップ109に進む。
【0033】
(ステップS107)
次いで、障害物検知処理部114aは、振動子12が振動している場合にその振動を停止させるため、振動周波数に「0」を設定し、振動子送信部113に振動周波数「0」の信号を出力する。振動子送信部113は、この振動周波数「0」の信号を振動子12に送信する。
【0034】
(ステップS108)
次いで、障害物検知処理部114aは、制御部114をスリープモードにモード遷移させることで、本体11の振動検出部115以外の機能を停止させ待ち状態とする。そして、振動検出部115が本体11の振動を検知すると、制御部114のスリープモードが解除され、障害物検知処理部114aは、ステップS102から処理を再開する。
【0035】
(ステップS109)
次いで、障害物検知処理部114aは、ステップS102で入力した今回の「計測距離」が設定範囲内(r≦計測距離≦r)であるかを判定する。今回の「計測距離」が設定範囲内である(ステップS109のYes)ときは、振動子12の振動を停止させるステップS110に進む。今回の「計測距離」が設定範囲内でない(ステップS109のNo)ときは、今回の「計測距離」が設定範囲の下限値より小さいかを判定するステップS111に進む。
【0036】
(ステップS110)
次いで、障害物検知処理部114aは、振動子12を停止させるため、振動周波数に「0」を設定し、振動子送信部113に振動周波数「0」の信号を出力する。振動子送信部113は、この振動周波数「0」の信号を振動子12に送信する。次に、障害物検知処理部114aは、インデックスNo.(I)を更新するステップS114に進む。
【0037】
(ステップS111)
次いで、障害物検知処理部114aは、ステップS102で入力した今回の「計測距離」が設定範囲の下限値より小さいか(計測距離<r)を判定する。今回の「計測距離」が設定範囲の下限値より小さい(ステップS111のYes)ときは、振動子12を振動周波数fで振動させるステップS112に進む。今回の「計測距離」が設定範囲の下限値より小さくない(ステップS111のNo)ときは、振動子12を振動周波数f2で振動させるステップS113に進む。
【0038】
(ステップS112)
次いで、障害物検知処理部114aは、振動子12を振動周波数fで振動させるため、振動周波数に「f」を設定し、振動子送信部113にこの振動周波数「f」の信号を出力する。振動子送信部113は、この振動周波数「f」の信号を振動子12に送信する。次に、障害物検知処理部114aは、インデックスNo.(I)を更新するステップS114に進む。
【0039】
(ステップS113)
次いで、障害物検知処理部114aは、振動子12を振動周波数fで振動させるため、振動周波数に「f」を設定し、振動子送信部113にこの振動周波数を出力する。振動子送信部113は、この振動周波数を振動子12に送信する。次に、障害物検知処理部114aは、インデックスNo.(I)を更新するステップS114に進む。
【0040】
(ステップS114)
次いで、障害物検知処理部114aは、インデックスNo.(I)に「1」を加算して更新すると、ステップS102に戻る。このように、障害物検知処理部114aは、視覚障害者用歩行支援装置10のスイッチ16により、本体11の電源がOFFされるまで障害物検知処理が実行される。
【0041】
以上により、距離計測センサー111が計測した計測距離が設定範囲内であれば、障害物が無いと判定され、振動子12は振動しない。また、計測距離がこの設定範囲の下限値より小さい場合は、「出っ張り(凸形状)」の障害物が有ると判定され、振動子12は「f」の振動周波数で振動する。また、計測距離がこの設定範囲の上限値より大きい場合は、「溝(凹形状)」の障害物が有ると判定され、振動子12は「f」の振動周波数で振動する。このような障害物検知処理により、視覚障害者は、出っ張りや溝の障害物の有無、障害物が有るときにはその障害物が出っ張りであるか溝であるかを判別することができる。更に、30分間の「計測距離」が全て同じであるとき、視覚障害者が視覚障害者用歩行支援装置10を装着した白杖20を使用していないと判定し、制御部114をスリープモードに遷移させることで、視覚障害者用歩行支援装置10の電力の消費を抑制することができる。また、本体11の振動を検知したときには、視覚障害者が視覚障害者用歩行支援装置10を装着した白杖20を使用していると判定し、自動でスリープモードを解除することができる。
【0042】
なお、本発明の実施形態では、振動子12の振動周波数により出っ張りや溝の障害物を視覚障害者に通知するようにしたが、振動子12に限定せずに音声、または振動子12と音声などあらゆる障害物通知手段を用いて視覚障害者に通知することも可能である。
【0043】
また、本発明の実施形態の距離計測センサー111は、赤外線を用いて視覚障害者用歩行支援装置10から歩道面までの距離を計測しているが、歩道面の狭い範囲の地点との距離を計測できるものであれば、どのような距離計測センサーでも用いることが可能である。
【0044】
また、視覚障害者用歩行支援装置10では、スリープモードに遷移する条件を、30分間の「計測距離」が全て同じ値であるときとしているが、30分に限らずこの時間は任意に設定することが可能である。更に、視覚障害者用歩行支援装置10では、スリープモードの遷移及びスリープモードの解除を自動で行っているが、手動でスリープモードの遷移及びスリープモードの解除を行うようにすることも可能である。例えば、本体11にスイッチを設け、そのスイッチが押下されることで本体11のスリープモードを解除することも可能である。更に、白杖20のグリップ21に圧力センサーを設け、視覚障害者がグリップ21を握ることで圧力センサーに圧力がかけられ、圧力センサーにより信号が視覚障害者用歩行支援装置10の本体に送信され、本体11のスリープモードを解除するようにすることも可能である。
【0045】
また、本体11にテストスイッチを設け、そのテストスイッチを「ON」とすることで振動子12を振動させ、視覚障害者用歩行支援装置10に異常がないかを確認できるようにすることも可能である。
【0046】
また、振動子12をグリップに装着するようにしたが、これに限らず視覚障害者が振動子12の振動を検知できるところであれば任意の箇所に装着することも可能である。
【0047】
次に、本実施形態における白杖20の回転を検出する方法について、図7を用いて説明する。図7(1)は、白杖20に視覚障害者用歩行支援装置10を装着し、白杖20を上から見た外観図である。図7(1)は、視覚障害者用歩行支援装置10の距離計測センサー111の位置が、視覚障害者の進む方向に向けられている状態を示している。図7(2)は、白杖20が左方向に回転することで、視覚障害者用歩行支援装置の距離計測センサー111の位置が、視覚障害者の進む方向に向けられていない状態を示している。図7(3)は、白杖20が右方向に回転することで、視覚障害者用歩行支援装置の距離計測センサー111の位置が、視覚障害者の進む方向に向けられていない状態を示している。このような白杖20の回転の有無を検知するには、図7に示すように視覚障害者用歩行支援装置10の本体11に回転玉17を設け、この回転玉17の位置を図4に示す本体11の回転検出部117により検出することで行う。白杖20が回転せずに距離計測センサー111が正しい方向に向いていれば、回転玉17は図7(1)に示す本体11の真ん中に位置する。白杖20が左方向に回転して距離計測センサー111が左方向に向いていれば、回転玉17は図7(2)に示す本体11の左側に位置する。白杖20が右方向に回転して距離計測センサー111が右方向に向いていれば、回転玉17は図7(3)に示す本体11の右側に位置する。このように、白杖20の正面が向いている方向により回転玉17の位置が異なるので、回転検出部117がこの回転玉17の位置を検出することで、白杖20の回転の有無と回転しているときにはその方向を検出することができる。
【0048】
次いで、回転検出部117が検出した情報に基づいて、図4に示す本体11の振動子送信部113に信号を送信する。このように振動子送信部113に信号を送信することで振動子12が振動する。例えば、回転検出部117が白杖20は回転していないことを検出したときには、振動子12を停止させるため、振動周波数に「0」を設定し、振動子送信部113に振動周波数「0」の信号を出力する。振動子送信部113は、この振動周波数「0」の信号を振動子12に送信することで振動子12は振動を停止する。回転検出部117が白杖20の正面が左方向に回転していることを検出したときには、振動子12を振動周波数fで振動させるため、振動周波数に「f」を設定し、振動子送信部113にこの振動周波数「f」の信号を出力する。振動子送信部113は、この振動周波数「f」の信号を振動子12に送信することで振動子12は「f」の振動周波数で振動する。回転検出部117が白杖20の正面が右方向に回転していることを検出したときには、振動子12を振動周波数fで振動させるため、振動周波数に「f」を設定し、振動子送信部113にこの振動周波数「f」の信号を出力する。振動子送信部113は、この振動周波数「f」の信号を振動子12に送信することで振動子12は「f」の振動周波数で振動する。
【0049】
なお、振動子12の振動周波数により白杖20の回転の有無と回転しているときにはその方向を視覚障害者に振動子12で通知するようにしたが、振動子12に限定せずに音声、または振動子12と音声などあらゆる障害物通知手段を用いて視覚障害者に通知することも可能である。
【0050】
このような本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、歩道面にある小さな出っ張りや窪みといった視覚障害者が歩行するときに障害となる障害物についても検知し、視覚障害者に通知することができる。また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、杖と一体型でなく杖に着脱可能なので、杖のコスト及び杖に視覚障害者用歩行支援装置を固定するための加工コストがなくなり低価格で提供できる。また、本発明の視覚障害者用歩行支援装置は、どのような杖にも装着することができるので、視覚障害者が使い慣れた杖に容易に装着することができる。また、杖だけが破損した場合でも、容易に他の杖に本発明の視覚障害者用歩行支援装置を付け替えることができる。また、視覚障害者が視覚障害者用歩行支援装置を装着した杖を予め決められた時間を経過して使用しないときには、視覚障害者用歩行支援装置を省エネのスリープモードに遷移させることで、スイッチを切り忘れた場合でも電力の消費を抑制することができる。更に、センサーが取り付けられた杖が回転したときに視覚障害者に通知され、視覚障害者が杖を正しい位置に戻すことができるので、視覚障害者は白杖を常に進む方向に向けて歩行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、視覚障害者用歩行支援装置に好適であるが、障害物や対象物を検知する視覚障害者用歩行支援装置に限られるものではなく、障害物や対象物を検知する電気機器装置一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10・・・・・視覚障害者用歩行支援装置
11・・・・・本体
12・・・・・振動子
13・・・・・ケーブル
14・・・・・装着部
15・・・・・送受信部
16・・・・・スイッチ
17・・・・・回転玉
20・・・・・白杖
21・・・・・グリップ
111・・・・・距離計測センサー
111a・・・・送信部
111b・・・・受信部
112・・・・・距離計測信号入力部
113・・・・・振動子送信部
114・・・・・制御部
114a・・・・障害物検知処理部
115・・・・・振動検出部
116・・・・・メモリ
116a・・・・計測距離データ保存エリア
117・・・・・回転検出部
141・・・・・固定部
142・・・・・嵌合部
143・・・・・挿通孔
144・・・・・ネジ
151・・・・・透過部
152・・・・・透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体とケーブルで接続された障害物通知手段を備えた視覚障害者用歩行支援装置であって、
前記本体は、
前記本体と歩道面までの距離を計測する距離計測手段と、
前記距離により前記歩道面の凸形状または凹形状の障害物を検知し、検知した前記障害物に基づいて障害物検知情報を設定する障害物検知処理手段と、
前記障害物検知情報を前記障害物通知手段に送信する障害物検知情報送信手段と、
前記障害物通知手段は、前記障害物検知情報送信手段から前記障害物検知情報を受信すると前記障害物検知情報に基づいて前記障害物の存在又は有無を通知することを特徴とする視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項2】
前記本体は装着部を備え、
前記装着部により杖を固定することで前記杖に前記本体を装着することを特徴とする請求項1に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項3】
前記本体は回転検出手段と、
前記回転検出手段が検出した前記杖の回転の有無と前記回転が有るときはその方向の情報である回転検出情報を通知する回転検出通知手段と、
前記回転検出情報を前記回転検出通知手段に送信する回転検出情報送信手段と、
前記回転検出通知手段は、前記回転検出情報送信手段から前記回転検出情報を受信すると前記回転検出情報に基づいて回転の有無と前記回転が有るときはその方向を通知することを特徴とする請求項2に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項4】
前記本体は、電力の消費を抑制する状態であるスリープモードと前記スリープモードを解除するモード遷移手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項5】
前記モード遷移手段は、予め決められた時間に計測された距離が全て同じであるときに、前記スリープモードに遷移することを特徴とする請求項4に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項6】
前記本体は振動検出手段を備え、
前記振動検出手段が前記本体の振動を検出したときに、前記モード遷移手段が前記スリープモードを解除することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項7】
接触したかを感知する接触感知手段を備え、
前記接触感知手段が接触を感知したときに、前記モード遷移手段が前記スリープモードを解除することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項8】
前記接触感知手段は、前記杖のグリップ部に圧力センサーを装着することを特徴とする請求項7に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項9】
前記障害物通知手段が振動子であり前記障害物検知情報が振動周波数の信号であるときに、
前記障害物通知手段が前記障害物検知情報送信手段から前記振動周波数の信号を受信すると、前記振動子が前記振動周波数で振動することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項10】
前記回転検出通知手段が振動子であり前記回転検出情報が振動周波数の信号であるときに、
前記回転検出通知手段が前記回転検出情報送信手段から前記振動周波数の信号を受信すると、前記振動子が前記振動周波数で振動することを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか一項に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項11】
前記振動周波数の信号が第1振動周波数のときには凸形状の障害物、第2振動周波数のときには凹形状の障害物、第3振動周波数のときには前記杖が左方向に回転、第4振動周波数のときには前記杖が右方向に回転の通知であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項12】
前記振動子は、前記杖のグリップ部に装着されることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項13】
前記本体に、前記振動子の振動をテストするスイッチを有する振動子テスト手段を備え、
前記振動子テスト手段の前記スイッチをオンにすると、テスト用の前記振動周波数の信号が前記振動子に送信されることで前記振動子の振動をテストすることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の視覚障害者用歩行支援装置。
【請求項14】
前記距離計測手段は、赤外線を用いて前記距離を計測する距離計測センサーであることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の視覚障害者用歩行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9826(P2013−9826A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144462(P2011−144462)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(306024148)公立大学法人秋田県立大学 (74)