説明

視野角切替型表示装置及び端末装置

【課題】 長期間使用してもフリッカーが発生することがない視野角切替型表示装置、及びそれを搭載した端末装置を提供する。
【解決手段】 表示装置1において、面光源2、透過する光の指向性を高める視角制御手段41、透明状態となって入射された光をそのまま透過させるか、半透明な白濁状態となって入射された光を散乱させて通過させるかを切り替える切替素子8、表示パネル42をこの順に配置する。そして、駆動部21が切替素子8に印加する交流電圧の周波数F2を、表示パネル42の駆動周波数F1よりも高くする。例えば、周波数F2を周波数F1の2倍以上とし、周波数F1のn倍(nは2以上の整数)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認可能な視野角を切り替えることができる視野角切替型表示装置及びそれを搭載した端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、表示装置における秘密保護機能が求められている。例えば、ATM(Automated Teller Machine:自動窓口機)等の金融端末機を操作する際には、暗証番号等の秘匿情報を入力する必要があり、これが他人から視認されることを避けなければならない。また、携帯電話等においては、着信メール等の画像情報を他人から視認されることを防止する機能が求められている。更に、PDA(Personal Digital Assistance:個人用情報端末)及びノート型パーソナルコンピューター等の携帯型の端末装置においても、電車等の公共交通機関内で使用する際には、同様の機能が求められている。
【0003】
一方で、これらの表示装置を複数の人数で同時に視認可能とすることも求められている。携帯電話によるテレビ観賞はこの例である。また、ノート型パーソナルコンピューターのデータ画面を複数人数で眺める場合もある。
【0004】
このような相反する表示機能を満たすものとして、視野角切替機能を備えた視野角切替型の表示装置が開発されている。これは、視野角を制御することにより、秘匿性が高い情報を個人で見る場合の狭視野モードと、公開性が高い情報を複数人数で見る場合の広視野モードとを切り替えることができる表示装置である。
【0005】
特許文献1(特開平9−197405号公報)においては、このような視野角切替型の表示装置が提案されている。図14は、特許文献1に記載の表示装置を示す側面図である。図14に示すように、この従来の表示装置においては、光源101、この光源101から出射した光の指向性を高める第1の光学素子102、第1の光学素子102から入射した光をそのまま透過させるか散乱させるかを切り替える第2の光学素子103、第2の光学素子103から出射された光を透過させることによって画像を表示する透過型の液晶表示パネル104がこの順に配置されている。第1の光学素子102は例えば直線状ルーバーフィルムである。また、第2の光学素子103は、印加される電圧によって、透明状態となって入射した光をそのまま透過させるか、白濁状態となって入射した光を散乱させるかを切り替えるものである。これを実現する具体的な素子は、例えば高分子分散液晶、ポリマーネットワーク液晶、カプセル型液晶等の散乱型液晶素子である。
【0006】
次に、この表示装置の動作原理を説明する。狭視野モードにおいては、第2の光学素子は透明状態となる。このため、光源101から出射した光は、第1の光学素子102により指向性が高められ、高い指向性を保ったまま第2の光学素子103を透過し、表示パネル104に入射する。表示パネル104は複数の画素により画像を形成し、入射光が表示パネル104を透過することによってこの画像を表示するが、これによって入射光の指向性が大きく変わることはない。このため、画面に垂直な方向(以下、表示装置正面という)に位置する観察者には画像が付加された光が到達するため、この観察者は表示画像を視認することができるが、表示装置正面から外れた位置(以下、斜め位置という)に位置する観察者には画像が付加された光が届かず、この観察者は表示画像を視認することができない。
【0007】
一方、広視野モードにおいては、第2の光学素子は散乱状態になる。このため、第1の光学素子によって指向性が高められた光は、第2の光学素子により指向性が損なわれて散乱光となる。この散乱光が表示パネルに入射し、表示パネルから広い角度範囲で出射する。このため、表示装置正面の観察者のみならず斜め位置の観察者も画像を視認することが可能となる。
【0008】
また、特許文献2(特開平6−59287号公報)には、他の視野角切替型の表示装置が提案されている。図15は、特許文献2に記載の表示装置を示す側面図である。図15に示すように、この従来の表示装置においては、光源111、ゲスト−ホスト液晶素子112、表示パネル113がこの順に配置されている。ゲスト−ホスト液晶素子112は、細長い形状を持つ二色性色素分子を含有している。表示パネル113は透過型の液晶表示パネルである。
【0009】
この表示装置においては、光源111から拡散光が出射され、ゲスト−ホスト液晶素子112に入射する。このとき、ゲスト−ホスト液晶素子112中の二色性色素分子がゲスト−ホスト液晶素子112の基板面に対して略垂直に配向していると、基板面の法線方向に入射された光は弱く吸収され、基板面の法線方向から傾斜した方向に入射された光は強く吸収される。このため、光源111から出射された光は、ゲスト−ホスト液晶素子112を通過することにより、その指向性が高められる。そして、ゲスト−ホスト液晶素子112から出射した光は、指向性が高いまま表示パネル113を透過して画像が付加される。従って、表示装置正面の観察者のみがこの画像を視認することができ、斜め位置の観察者は画像を視認することができない。これが、狭視野モードに相当する。
【0010】
一方、ゲスト−ホスト液晶素子112中の二色性色素分子がその基板面に対して略平行に配向していると、二色性色素分子の基板面内方位が表示パネル113の入射側に配置された偏光板(図示せず)の吸収軸方位と一致していれば、特別に新たに生じる光損失もなく、画像の表示が可能となる。この際、二色性色素分子は基板面に平行に配向しているため、斜めに入射した光が強く吸収されることがない。従って、表示装置正面の観察者のみならず、斜め位置の観察者も画像を視認することができる。これが、広視野モードに相当する。
【0011】
上述の如く、特許文献1及び2のいずれに開示された表示装置によっても、視認角度範囲を制御することができ、狭視野・広視野の切替が可能となる。
【0012】
【特許文献1】特開平9−197405号公報
【特許文献2】特開平6−59287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の従来の技術には以下に示すような問題点がある。上述の散乱型液晶素子及びゲスト−ホスト液晶素子は、通常、表示パネルに用いられる液晶よりも多くのイオン性不純物を含んでいる。イオン性不純物は、表示装置の作製当初から液晶中に含まれている場合もあるが、表示装置の作製後に外部から混入する場合もある。このようなイオン性不純物は、印加された電界により容易に基板との界面付近まで移動する。一般に、散乱型液晶素子及びゲスト−ホスト液晶素子にも、通常の表示パネルの液晶と同様に、正負交替電界が印加される。このため、長期的に見れば、イオン性不純物は移動しないように思われる。しかし、直流成分を全く含まない正確な正負交替電界を供給することは、実用上極めて困難である。従って、表示装置を長期間に渡って使用すれば、いずれはイオン性不純物の偏在が生じる。液晶中においてイオン性不純物が偏在すると、正負交替電界を印加しても対称な光学応答を得ることができなくなる。このように、表示装置の作製当初には設計どおりの正負対称な光学応答が得られても、時間を経るに従って光学応答が非対称となり、フリッカーが発生する。
【0014】
また、表示装置を携帯端末等に搭載するためには、表示装置を薄型化し、且つ機械的耐久性を高めなくてはならない。このため、上述の散乱型液晶素子又はゲスト−ホスト液晶素子の基板は、透明樹脂、例えばプラスチックにより形成することが好ましい。しかしながら、基板をプラスチックにより形成すると、ガラス基板を使用した場合と比較して基板の透湿性が低くなるため、液晶素子中にイオン性不純物が混入しやすくなる。このため、上述のイオン性不純物の偏在に起因するフリッカーの問題が、より深刻になる。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、長期間使用してもフリッカーが発生することがない視野角切替型表示装置、及びそれを搭載した端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る視野角切替型表示装置は、入射された光をそのまま透過させるか散乱させるかを切り替え可能な切替素子と、この切替素子から出射した光を透過させることにより画像を表示する表示パネルと、前記切替素子に交流電圧を印加するか否かを切り替えることによりこの切替素子を透過状態とするか散乱状態とするかを切り替える駆動部と、を有し、前記駆動部が前記切替素子に印加する前記交流電圧の周波数が、前記表示パネルの駆動周波数よりも高いことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、交流電圧の周波数を表示パネルの駆動周波数よりも高くすることにより、切替素子に正電位を印加したときと負電位を印加したときとの光学応答の非対称性が、視聴者にフリッカーとして認識されにくくなる。これにより、フリッカーの発生を抑制することができる。
【0018】
また、前記交流電圧の周波数が60Hzよりも高いことが好ましい。これにより、フリッカーの発生をより確実に防止することができる。
【0019】
更に、前記交流電圧の周波数が、前記表示パネルの駆動周波数の2倍以上であることが好ましい。これにより、表示画像の変動周波数が表示パネルの駆動周波数以上となり、フリッカーの発生をより確実に防止することができる。このとき、前記交流電圧の周波数が、前記表示パネルの駆動周波数のn倍(nは2以上の整数)であることがより好ましい。
【0020】
更にまた、前記切替素子が、透明なプラスチックからなる2枚の基板と、この基板間に配置された液晶層と、を有することが好ましい。これにより、切替素子を薄型化すると共に、機械的耐久性を高めることができる。
【0021】
本発明に係る端末装置は、前記視野角切替型表示装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、長期間使用してもフリッカーが発生することがない視野角切替型表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る表示装置を概略的に示す側面図であり、図2は、この表示装置を詳細に示す断面図であり、図3は、この表示装置を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る表示装置1においては、表示装置1の前方、即ち、視聴者側に向けて光を平面上に出射する面光源2が設けられており、面光源2の前方には、透過する光の指向性を高める視角制御手段41が設けられている。また、視角制御手段41の前面には、接着層7を介して切替素子8が接着されている。切替素子8は、透明状態となって入射された光をそのまま透過させるか、半透明な白濁状態となって入射された光を散乱させて通過させるかを切り替えるものである。更に、切替素子8の前方には、表示パネル42が設けられている。表示パネル42は透過型又は半透過型の表示パネルであり、切替素子8から出射される光を透過させることにより、この光に画像を付加するものである。更にまた、表示装置1には、切替素子8及び表示パネル42を駆動する駆動部21が設けられている。
【0025】
以下、表示装置1の構成について、より詳細に説明する。図2に示すように、面光源2においては、例えばCCFL(Cold-Cathode Fluorescent Lamp:冷陰極蛍光灯)等の冷陰極管3が設けられている。冷陰極管3は水銀蒸気を含んでおり、この水銀蒸気から生じる紫外光により蛍光体を励起させて可視光を発光するものである。また、面光源2には、導光板4が設けられている。導光板4は、例えば透明なプラスチックからなる板状の部材であり、その主面の法線は前方を向いている。冷陰極管3は導光板4の側方に配置されており、導光板4の側面に光を入射するようになっている。導光板4は、側面から入射された光をその前面(光出射面)から面状に出射するものである。更に、導光板4の前方には、2枚のプリズムシート5が設けられている。プリズムシート5は、導光板4から出射した光の主な進行方向を前方に向けるものである。冷陰極管3、導光板4及びプリズムシート5により、面光源2が構成されている。
【0026】
また、視角制御手段41として、直線状ルーバーシート6が設けられている。直線状ルーバーシート6は、透明な樹脂シート6a内に可視光を吸収する帯状の吸収体6bが複数本、相互に平行に埋め込まれたものであり、吸収体6bが延びる方向及びその配列方向は、いずれも前方に直交する方向となっている。樹脂シート6aは、波長が400nm以下の光を吸収する材料、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)により形成されている。これにより、冷陰極管3から漏洩した紫外光を吸収することができる。直線状ルーバーシート6の厚さは例えば0.1mm以上である。
【0027】
更に、切替素子8においては、2枚の透明なプラスチック基板9a及び9bが相互に離隔して且つ平行に設けられており、その間に高分子分散液晶層10が封入されている。高分子分散液晶層10は、樹脂10a中に液晶液滴10bが分散されたものである。また、プラスチック基板9a及び9bにおける相互に対向する面には、夫々電極11a及び11bが設けられている。なお、接着層7にはプラスチック基板9aが接着されている。
【0028】
更にまた、表示パネル42として、半透過型液晶パネル12が設けられている。そして、切替素子8のプラスチック基板9bに接するようにフレーム状の弾性樹脂材13が設けられており、切替素子8は弾性樹脂材13を介して半透過型液晶パネル12に固定され支持されている。弾性樹脂材13は、クッション性のある材料、例えば、シリコン樹脂又は弾性ゲル等により形成されている。
【0029】
半透過型液晶パネル12においては、透明な樹脂からなる2枚の透明基板14a及び14bが相互に平行に且つ離隔して配置されており、その間に液晶層15が設けられている。透明基板14aの外側、即ち後方側には偏光板16aが設けられており、弾性樹脂材13に接している。一方、透明基板14bの外側、即ち前方側には偏光板16bが設けられており、表示装置1の画面の最前面を構成している。また、透明基板14aの液晶層15側の表面には画素電極(図示せず)が設けられており、透明記版14bの液晶層15側の表面には対向電極(図示せず)が設けられている。これにより、半透過型液晶パネル12の表示領域においては、複数のセルがマトリクス状に設定されている。そして、各セルには、反射領域17及び透過領域18が設定されている。反射領域17における透明基板14aと液晶層15との間には、前方から入射し液晶層15を透過した外光を前方に向けて反射する反射材19が設けられている。
【0030】
更にまた、駆動部21には、液晶パネル駆動部22及び切替素子駆動部23が設けられている。液晶パネル駆動部22は、外部から入力される画像データ24に基づいて、半透過型液晶パネル12に駆動信号を供給して半透過型液晶パネル12に画像を形成させるものである。また、切替素子駆動部23は、切替素子8の電極11a及び11bに電圧を印加することにより、切替素子8を透明状態とするか散乱状態とするかを切り替えるものである。例えば、切替素子駆動部23が電極11a及び11bに電圧を印加しないときは、切替素子8が透明状態となる。一方、切替素子駆動部23が電極11a及び11bに電圧を印加すると、切替素子8が散乱状態となる。このとき、切替素子駆動部23は電極11a及び11bに交流電圧を印加する。
【0031】
液晶パネル駆動部22が半透過型液晶パネル12を駆動する駆動周波数をF1とし、切替素子駆動部23が切替素子8に印加する交流電圧の周波数をF2とするとき、周波数F2を、半透過型液晶パネル12を駆動する周波数F1よりも高い周波数とする。即ち、F2>F1とする。周波数F2は周波数F1の2倍以上であることが好ましく(F2≧2×F1)、nを2以上の整数とするとき、周波数F2は周波数F1のn倍であることがより好ましい。即ち、F2=n×F1(nは2以上の整数)であることが好ましい。周波数F1は例えば60Hzであり、周波数F2は例えば240Hzである。
【0032】
図3に示すように、切替素子8と切替素子駆動部23とはケーブル25により接続されている。そして、表示装置1においては、面光源2における冷陰極管3が配置されている辺と、切替素子8からケーブル25を引き出す辺とは、同じ側に配置されている。これにより、表示面の周辺額縁幅が小さくなるようになっている。
【0033】
次に、上述の如く構成された本実施形態に係る表示装置の動作について、図1を参照して説明する。先ず、狭視野モードの動作について説明する。狭視野モードにおいては、切替素子駆動部23は、切替素子8の電極11a及び11bに電圧を印加しない。これにより、切替素子8は透明状態となる。また、面光源2の冷陰極管3が導光板4に向けて光を出射する。このとき、冷陰極管3内の水銀蒸気が紫外線を生じ、この紫外線が蛍光体を励起して可視光を出力するが、水銀蒸気が発する紫外線もこの可視光に混合して冷陰極管3から出射される。
【0034】
冷陰極管3から出射した光は、導光板4内にその側面から入射し、その前面から面状に出射される。そして、プリズムシート5によって光の進行方向の主方向が前方になる。次いで、この光が直線状ルーバーシート6を通過することにより、前方から大きく傾斜した方向に進行する光は吸収体6bに吸収され、前方からの傾斜角度が一定の範囲内である方向に進行する光のみが樹脂シート6aを透過する。これにより、光の指向性が高まる。また、この光のうち、紫外線成分は樹脂シート6aにより吸収され遮断される。
【0035】
直線状ルーバーシート6から出射された指向性が高い光は、接着層7を透過して、切替素子8に入射する。切替素子8は透明状態であるため、光は高い指向性を維持したまま切替素子8を透過し、半透過型液晶パネル12に入射し、透過領域18において液晶層15を透過し、前方に出射される。
【0036】
一方、前方から半透過型液晶パネル12に入射した外光は、液晶層15を透過した後、反射領域17において反射材19により反射されて再び液晶層15を透過し、前方に向けて出射される。
【0037】
この状態で、液晶パネル駆動部22が、外部から入力された画像データ24に基づいて、半透過型液晶パネル12を駆動する。これにより、面光源2から出射され、半透過型液晶パネル12の透過領域18を透過する光、及び外部から入射され反射領域17において反射される光に画像を付加することができる。このとき、切替素子8から出射された光はその指向性が高いため、半透過型液晶パネル12から出射される光も指向性が高く、表示装置1の正面方向には出射されるが、斜め方向にはほとんど出射されない。これにより、表示装置正面に位置する視聴者に対してのみ画像を表示することができ、斜め位置からの覗き見を防止することができる。
【0038】
次に、広視野モードの動作について説明する。広視野モードにおいては、切替素子駆動部23は、切替素子8の電極11a及び11bに、周波数がF2である交流電圧を印加する。これにより、切替素子8は散乱状態となる。この状態で、冷陰極管3が光を出射し、液晶パネル駆動部22が画像データ24に基づいて半透過型液晶パネル12を駆動する。上述の如く、この周波数F2は、半透過型液晶パネル12の駆動周波数F1以上であり、例えば周波数F1の2倍以上であり、例えば周波数F1のn倍(nは2以上の整数)である。例えば、周波数F1は60Hzであり、周波数F2は240Hzである。
【0039】
広視野モードにおいても、冷陰極管3から出射された光が接着層7を透過するまでの動作は、狭視野モードと同じである。切替素子8から散乱状態で、即ち、低い指向性で出射された光は、半透過型液晶パネル12に入射し、その透過領域18を透過した後、前方に向けて出力される。このとき、半透過型液晶パネル12から出力される光は指向性が低く、表示装置1の正面方向に出射されると共に、斜め方向にも出射される。これにより、表示装置正面に位置する視聴者及び斜め位置に位置する視聴者の双方に対して画像を表示することができる。
【0040】
以下、本発明の構成要件における数値限定理由について説明する。
【0041】
切替素子の駆動周波数F2:液晶パネルの駆動周波数F1より高い(F2>F1)
上述の如く、切替素子8中には不可避的にイオン性不純物が混入し、その量は経時的に増大する。このため、高分子分散液晶層10の抵抗率が経時的に低下する。切替素子8中にイオン性不純物が存在していても、切替素子に常に完全に対称な正負交替電圧を印加していれば、イオン性不純物が片方の電極側に偏在することがなく、切替素子に正電圧を印加しても負電圧を印加しても、切替素子は同等の光学応答を示す。しかしながら、切替素子に直流成分を全く含まない正負交替電圧を印加することは実用上困難である。このため、切替素子中のイオン性不純物は、印加電圧中の直流成分により次第に片側の電極近傍に偏在していく。イオン性不純物が偏在すると、切替素子は正電圧印加時と負電圧印加時とで異なった光学応答を示し、透過率が異なるようになる。そして、従来、切替素子は液晶パネルと同一周波数の正負交替電圧で駆動されているため、上述の光学応答の非対称性は視聴者にフリッカーとして認識されてしまう。
【0042】
これに対して、切替素子の駆動周波数F2を液晶パネルの駆動周波数F1よりも高くすれば、切替素子が劣化してイオン性不純物が増加し且つ偏在しても、切替素子の光学応答における非対称性が視聴者に認識されにくくなる。従って、本発明においては、切替素子の駆動周波数F2を液晶パネルの駆動周波数F1よりも高くする。周波数F2は60Hzより高いことが好ましい。
【0043】
切替素子の駆動周波数F2:液晶パネルの駆動周波数F1の2倍以上(F2≧2×F1)
本表示装置の透過率は、切替素子の透過率と表示パネルの透過率との積で表すことができる。そして、前述の如く、切替素子は正電圧と負電圧とで透過率が変動する可能性がある。一方、表示パネルは特定の駆動周波数で画面を更新することにより画像を表示する。このため、表示パネルの駆動周波数(F1)と切替素子の駆動周波数(F2)が異なる場合には、表示装置全体としての透過率は、周波数(F1+F2)と周波数|F2−F1|とで変動することとなる。周波数(F1+F2)は周波数F1より高い高周波であるために、視聴者に認識されることがない。一方、周波数|F2−F1|は低周波であり、その値によっては視聴者にフリッカーとして認識されてしまう可能性がある。
【0044】
そこで、周波数F2を周波数F1の2倍以上とすれば、表示変動周波数|F2−F1|はF1以上となり、フリッカーとして視認されなくなる。これにより、表示変動が生じても違和感なく画像を視認することができる。従って、切替素子の駆動周波数F2は、液晶パネルの駆動周波数F1の2倍以上とすることが好ましい。
【0045】
切替素子の駆動周波数F2:液晶パネルの駆動周波数F1のn倍(nは2以上の整数)(F2=n×F1)
周波数F2を周波数F1のn倍にすれば、周波数|F2−F1|は周波数F1の自然数倍となる。これにより、画像の透過率が変動する周波数が、画像の内容が変化する周波数の自然数倍となり、視聴者が認識する違和感をより一層低減することができる。従って、切替素子の駆動周波数F2は、液晶パネルの駆動周波数F1のn倍(nは2以上の整数)とすることが好ましい。
【0046】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、表示の視野角を狭角及び広角に切り替えることができるため、狭視野角モードにして覗き見を防止することと、広視野角モードにして複数人により画像を同時に観賞することとを、両方実現することができる。
【0047】
また、上述の原理により、本実施形態においては、フリッカーの発生を防止することができる。
【0048】
更に、本実施形態においては、切替素子8の基板をプラスチック基板9a及び9bとしており、また、半透過型液晶パネル12の透明基板14a及び14bを樹脂により形成しているため、表示装置1の薄型化及び軽量化を図り、且つ、機械的耐久性を高めることができる。
【0049】
しかしながら、切替素子8の基板をプラスチックにより形成すると、いくつかの問題点が発生する。そこで、本実施形態においては、これらの問題点を解消するために、いくつかの対策を講じている。以下、切替素子8の基板をプラスチック基板とすることに起因する問題点と、その対策について説明する。
【0050】
一般に、液晶は紫外線照射によって劣化する。しかし、通常の画像表示用の液晶パネルにおいては、透明基板の両側に偏光板が貼られており、この偏光板が効果的な紫外線遮断材として機能する。このため、液晶が著しい紫外線照射環境に晒されることはない。ところが、本実施形態においては、光源と表示パネルとの間に散乱型液晶が配置されている。このため、冷陰極管において蛍光体を励起するための紫外光の一部が散乱型液晶材に直接入射して、液晶の紫外線劣化を引き起こす。特に、本実施形態において切替素子に含まれる高分子分散液晶層は、散乱型液晶であるため紫外線露光により製造されている。このため、切替素子のプラスチック基板には、紫外線が透過できる基板が使用されている。従って、冷陰極管と切替素子との間に紫外線を吸収する部材が配置されていなければ、高分子分散液晶層中の液晶液滴が紫外線により劣化してしまう。なお、切替素子にゲスト−ホスト液晶を使用する場合でも、同様の問題が生じる。この場合には、液晶材に加え二色性色素材の劣化も引き起こされる。
【0051】
これに対して、本実施形態においては、直線状ルーバーシート6の樹脂シート6aを、紫外線を吸収する材料により形成している。このため、冷陰極管3から出射された紫外線を直線状ルーバーシート6により遮断することができる。これにより、切替素子8が紫外線に曝されることがなく、切替素子8の液晶液滴10bが紫外線により劣化することがない。
【0052】
また、プラスチックはガラスと比較して透湿性が高い。このため、切替素子の基板をプラスチックにより形成すると、内部の液晶動作を長期間保証することができない。なお、通常、液晶パネルにプラスチック基板を用いる場合は、防湿性を高めるために、プラスチック基板の内面に酸化シリコン膜等を被覆する。但し、この場合は、プラスチック基板の内面に、酸化シリコン膜及び透明電極層の二層以上を形成することが必要となる。このように、多層化による信頼性確保は、高価なプラスチック基板を必要とする。
【0053】
そこで、本実施形態においては、切替素子8のプラスチック基板9aの全面を、接着層7を介して直線状ルーバーシート6に接着している。これにより、切替素子8における背面側のプラスチック基板の実効的な厚さが厚くなり、背面側からの透湿を防止することができる。これにより、前面側のプラスチック基板にのみ防湿被覆を施せばよく、背面側のプラスチック基板には防湿被覆を施す必要がなくなる。このため、コストを低く抑えつつ、信頼性を確保することができる。特に、本実施形態においては、直線状ルーバーシート6の厚さが0.1mm以上であるため、十分な防湿性能を得ることができる。この結果、切替素子の経時劣化を抑制することができ、表示装置の信頼性を向上させることができる。
【0054】
更に、散乱型液晶は機械的衝撃に弱いという問題点がある。上述の如く、散乱型液晶にはポリマー分散型液晶、ポリマーネットワーク液晶、カプセル型液晶等が知られている。これらの液晶に共通する構造は、液晶相と樹脂相とからなることである。これにより、散乱・透明の切替を、液晶相と樹脂相との屈折率の不整合・整合により実現している。このうち樹脂相は固定構造であるため特に機械的衝撃に弱く、しかも一度破壊されると復元することがない。通常、散乱型液晶の厚さは、厚くても数十ミクロン程度である。この極めて薄い固体の樹脂層が、機械的に安定に保持されなければならない。ところが、プラスチック基板間に樹脂層を配置した場合は、機械的な課題が生じる。プラスチック基板は外力等により容易に曲がり及び撓み等の変形が生じる。このため、ガラス基板間に散乱型液晶材を配置した場合と比べて、はるかに脆弱なものとなってしまう。なお、ゲスト−ホスト液晶材の場合には、内部に樹脂相のような固定構造はないものの、プラスチック基板が容易に変形するような状況においては、表示ムラが発生する。即ち、プラスチック基板が撓み、ゲスト−ホスト液晶材に厚い部分と薄い部分とが生じた場合には、表示が不均一となり問題となる。視野角切替型の表示装置は、携帯型又は可搬型の端末装置に使用される場合が多いため、落下及び使用時の衝撃を考慮しなければならず、この機械的衝撃への脆弱さが課題となっている。
【0055】
そこで、本実施形態においては、切替素子8を、弾性樹脂材13を介して半透過型液晶パネル12に固定している。これにより、切替素子8を機械的なストレスから保護することができる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は本実施形態に係る表示装置を示す断面図である。図4に示すように、本実施形態に係る表示装置31においては、プリズムシート5と直線状ルーバーシート6との間に拡散板32が配置されている。拡散板32は、波長が400nm以下の光を吸収すると共に可視光を透過させる樹脂材料、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)により形成されている。これにより、冷陰極管3から漏洩した紫外光を吸収することができる。なお、本実施形態においては、直線状ルーバーシート6の樹脂シート6aは、前述の第1の実施形態と同様に紫外線を吸収する材料により形成されていてもよく、紫外線を吸収しない材料により形成されていてもよい。
【0057】
また、表示装置31においては、面光源2、拡散板32、直線状ルーバーシート6、切替素子8及び弾性樹脂材13を収納するフレーム33が設けられている。フレーム33は、リアフレーム33aにフロントフレーム33bが嵌合することにより、枠状に形成されている。リアフレーム33は、面光源2、拡散板32、直線状ルーバーシート6、切替素子8及び弾性樹脂材13の側面及び面光源2の背面の周辺部を覆うものである。フロントフレーム33bは、切替素子8及び弾性樹脂材13の側面及び前面の周辺部を覆うものである。切替素子8の前面は、弾性樹脂材13を介してフロントフレーム33bに接着され固定されている。
【0058】
更に、表示装置31においては、前述の第1の実施形態における接着層7の替わりに、弾性樹脂材36が設けられている。即ち、弾性樹脂材36は、直線状ルーバーシート6と切替素子8との間に配置されている。これにより、切替素子8は、弾性樹脂材36を介して直線状ルーバーシート6に対して固定されている。
【0059】
更にまた、表示装置31においては、前述の第1の実施形態における半透過型液晶パネル12の替わりに、透過型液晶パネル34が設けられている。
【0060】
更にまた、表示装置31においては、前述の第1の実施形態における切替素子駆動部23の替わりに、切替素子駆動部35が設けられている。切替素子駆動部35は、透過型液晶パネル34から駆動同期信号を取り出し、この駆動同期信号の4逓倍周波数の信号を作り出し、この信号に基づいて切替素子8に駆動電圧を供給するものである。このため、透過型液晶パネル34が例えば60Hzの周波数で駆動されれば、切替素子8は透過型液晶パネル34と同期し且つ240Hzの周波数で駆動される。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0061】
次に、本実施形態の動作及び効果について説明する。表示パネルによっては、リセット期間を設定している場合がある。この場合には、切替素子の駆動周波数F2を表示パネルの駆動周波数F1の倍数としても、切替素子と表示パネルの駆動タイミングが同期されていなければ、正電位を印加するフレームと負電位を印加するフレームとで表示装置の透過率が異なってしまう。これに対して、本実施形態においては、切替素子の駆動タイミングを表示パネルの駆動タイミングに同期させることにより、正電位を印加するフレームと負電位を印加するフレームとで透過率が異なることを避けることができる。これにより、フリッカーの発生をより確実に防止することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、切替素子8を、弾性樹脂材13を介してフレーム33のフロントフレーム33bに対して固定すると共に、弾性樹脂材36を介して直線状ルーバーシート6に対して固定している。即ち、切替素子8を弾性樹脂材13及び36によって支持している。これにより、切替素子8を機械的なストレスから保護することができると共に、切替素子の背面側の防湿性を向上させることができる。この結果、構成部品点数を増やすことなく、表示装置31の信頼性を向上させることができる。本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0063】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係る表示装置を示す側面図である。なお、図5においては、図を簡略化するために、駆動部が図示されていない。後述する図6乃至図13についても同様である。図5に示すように、本実施形態においては、視角制御手段41(図1参照)が設けられておらず、面光源2が接着層7を介して切替素子8の背面側のプラスチック基板(図示せず)に接着されている。これにより、切替素子8の背面側プラスチック基板の実効的な厚さが厚くなり、背面側からの透湿を防止することができる。また、この表示装置には、表示パネル42が設けられている。表示パネル42は、前述の第1の実施形態における半透過型液晶パネル12と同じものであってもよく、前述の第2の実施形態における透過型液晶パネル34と同じものであってもよく、液晶パネル以外の透過型の表示パネルであってもよい。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0064】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図6は、本実施形態に係る表示装置を示す側面図である。図6に示すように、本実施形態においては、接着層7が切替素子8の背面側ではなく、前面側に配置されている。これにより、切替素子8は、その前面側のプラスチック基板の全面が接着層7を介して表示パネル42の背面に接着されている。これにより、切替素子8の前面側プラスチック基板の実効的な厚さが厚くなり、前面側からの透湿を防止することができる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0065】
なお、本実施形態において、表示パネル42がその前面側及び背面側に偏光板が設けられた液晶パネルであり、切替素子8は接着層7を介して背面側の偏光板に接着されている場合は、この背面側の偏光板の厚さが0.1mm以上であることが好ましい。これにより、切替素子8の前面側からの透湿を防止する機能が十分に大きくなる。
【0066】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係る表示装置を示す側面図である。図7に示すように、本実施形態においては、視角制御手段41(図1参照)が設けられておらず、その替わりに、面光源3と切替素子8との間に紫外線吸収シート43が設けられている。紫外線吸収シート43は、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)により形成されている。これにより、面光源3の冷陰極管から出射される紫外線を、紫外線吸収シート43により遮断することができ、切替素子8を紫外線から防護することができる。この結果、紫外線による切替素子8の劣化を防止することができ、表示装置の信頼性を確保することが可能となる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。なお、紫外線吸収シート43を切替素子8に接着してもよい。これにより、紫外線吸収シート43に、紫外線遮断機能だけでなく防湿機能を持たせることができる。
【0067】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図8は、本実施形態に係る表示装置を示す断面図である。図8に示すように、本実施形態においては、前述の第2の実施形態と比較して、フロントフレームが省略されており、また、切替素子8の背面側の全面に弾性樹脂材44が配置されており、この弾性樹脂材44を介して、切替素子8が面光源2に固定されている点が異なっている。これにより、弾性樹脂材44が機械的衝撃を吸収するため、切替素子8に大きな力が加わらず、切替素子8内の樹脂10a(図2参照)が破壊することを防止できる。また、温度が上下した際に切替素子8とリアフレーム33aとの間に生じる膨張差及び収縮差、並びに切替素子8と面光源2との間に生じる膨張差及び収縮差を、弾性樹脂材13が吸収することができる。このため、温度が変化しても切替素子に熱応力が加わらず、切替素子の破損を回避することができる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第2の実施形態と同様である。
【0068】
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係る表示装置を示す断面図である。図9に示すように、本実施形態においては、前述の第6の実施形態と比較して、弾性樹脂材44が切替素子8の背面の周辺部にのみ設けられている点が異なっている。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第6の実施形態と同様である。
【0069】
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。図10は、本実施形態に係る表示装置を示す断面図である。図10に示すように、本実施形態においては、視角制御手段41と切替素子8とが接着層7により貼り合わされており、この接着物が弾性樹脂材45を介して面光源2に対して固定されている。これにより、視角制御手段41と切替素子8との接着物が、弾性樹脂材45により支持されている。この結果、防湿性が優れ、機械的衝撃及び熱膨張差に強い表示装置を得ることができる。
【0070】
次に、本発明の第9の実施形態について説明する。図11は、本実施形態に係る表示装置を示す断面図である。図11に示すように、本実施形態においては、切替素子8が弾性樹脂材13によって表示パネル42に固定されている。弾性樹脂材13は、表示パネル42の背面側の周辺部に枠状に設けられている。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0071】
次に、本発明の第10の実施形態について説明する。図12は、本実施形態に係る表示装置を示す側面図である。図12に示すように、本実施形態においては、切替素子8が弾性樹脂材46を介して表示パネル42に固定されている。弾性樹脂材46は、表示パネル42の背面側の全面に設けられている。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0072】
なお、前述の各実施形態において、導光板に紫外線吸収機能を持たせてもよい。また、前述の各実施形態においては、面光源としてサイドライト型の光源を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、直下型の光源を使用してもよい。直下型光源は、複数の光源素子とその上方に配置され輝度の均一化を図る拡散板とから構成されている。直下型の光源を使用する場合は、拡散板に紫外線吸収機能を持たせてもよい。いずれの場合も、面光源の一部に紫外光吸収機能を持たせることにより、紫外光吸収層を新たに設ける必要がなく部品点数を増やさずに切替素子の劣化を防ぐことができる。
【0073】
更に、面光源の指向性を改善するためのプリズムシートに紫外光吸収機能を持たせることも可能である。これは、構成材料の選択又は紫外光吸収物質を構成材料に混入させることにより実現可能である。これにより、新たに部品点数を増やすことなく、信頼性を確保することができる。
【0074】
更にまた、前述の各実施形態においては、切替素子として、電圧が印加されていないときに透明状態となり、電圧が印加されているときに散乱状態となる散乱型液晶素子を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、電圧が印加されていないときに散乱状態となり、電圧が印加されているときに透明状態となる散乱型液晶素子を使用してもよい。また、切替素子として、細長い形状を持つ二色性色素分子を備えたゲスト−ホスト液晶素子を使用してもよい。
【0075】
更にまた、前述の各実施形態において、接着層又は弾性樹脂材の厚さを10ミクロン以上とすることが好ましい。これにより、平面間の光干渉によるフリンジ縞を目立たなくすることができる。例えば、図10に示す第8の実施形態において、弾性樹脂材45の厚さを10ミクロン以上に設定することにより、面光源2の前面と視角制御手段41の背面との間の光干渉によるフリンジ縞の発生を抑制することができる。同様な効果は、接着層7の厚さを10ミクロン以上としても得ることができる。例えば、図10において、接着層7の厚さを10ミクロン以上とすることにより、視角制御手段41の前面と切替素子8の背面との間の光干渉を抑制することができる。
【0076】
次に、本発明の第11の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明に係る端末装置の実施形態である。図13は、本実施形態に係る端末装置を示す斜視図である。図13に示すように、本実施形態に係る端末装置は、ノート型パーソナルコンピューター(ノートPC)51である。このノートPC51には、操作部52と、この操作部52の端縁に回動可能に連結された表示部53とが設けられており、表示部53には、視野角切替型の表示装置1が組み込まれている。この表示装置1は、前述の第1の実施形態に係る表示装置1(図1乃至図3参照)と同じものである。表示装置1における直線状ルーバーシート6の吸収体6b(図2参照)の延設方向は、ノートPC51の画面の垂直方向54と略一致している。本実施形態の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0077】
なお、直線状ルーバーシートと表示パネルとの間の干渉によるモアレが気になる場合には、吸収体6bの延設方向を画面の垂直方向54から10度以下の角度で傾斜させてもよい。これにより、モアレを軽減することができる。また、直線状ルーバーシート6と切替素子8との間に新たに拡散シートを配置して、モアレを解消してもよい。更に、ノートPC51の表示部53には、前述の第2乃至第10のいずれかの実施形態に係る表示装置を組み込んでもよい。特に、本実施形態に係る端末装置が携帯・可搬型の端末装置である場合には、野外で使用されることが多く、信頼性が優れたものであることが求められる。このような端末装置に上述の第1乃至第10の実施形態に係る表示装置を適用することにより、前記要求に応える端末装置を得ることができる。
【0078】
また、本実施形態においては、端末装置がノート型パーソナルコンピューターである例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、携帯電話又はPDA等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置を概略的に示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る表示装置を詳細に示す断面図である。
【図3】この表示装置を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る表示装置を示す側面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る表示装置を示す側面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る表示装置を示す側面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第7の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。
【図10】本発明の第8の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。
【図11】本発明の第9の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。
【図12】本発明の第10の実施形態に係る表示装置を示す側面図である。
【図13】本発明の第11の実施形態に係る端末装置を示す斜視図である。
【図14】特許文献1に記載の表示装置を示す側面図である。
【図15】特許文献2に記載の表示装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1;表示装置
2;面光源
3;冷陰極管
4;導光板
5;プリズムシート
6;直線状ルーバーシート
6a;樹脂シート
6b;吸収体
7;接着層
8;切替素子
9a、9b;プラスチック基板
10;高分子分散液晶層
10a;樹脂
10b;液晶液滴
11a、11b;電極
12;半透過型液晶パネル
13;弾性樹脂材
14a、14b;透明基板
15;液晶層
16a、16b;偏光板
17;反射領域
18;透過領域
19;反射材
21;駆動部
22;液晶パネル駆動部
23;切替素子駆動部
24;画像データ
25;ケーブル
31;表示装置
32;拡散板
33;フレーム
33a;リアフレーム
33b;フロントフレーム
34;透過型液晶パネル
35;切替素子駆動部
36;弾性樹脂材
41;視角制御手段
42;表示パネル
43;紫外線吸収シート
44、45、46;弾性樹脂材
51;ノート型パーソナルコンピューター
52;操作部
53;表示部
54;垂直方向
101;光源
102;第1の光学素子
103;第2の光学素子
104;液晶表示パネル
111;光源
112;ゲスト−ホスト液晶素子
113;表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された光をそのまま透過させるか散乱させるかを切り替え可能な切替素子と、この切替素子から出射した光を透過させることにより画像を表示する表示パネルと、前記切替素子に交流電圧を印加するか否かを切り替えることによりこの切替素子を透過状態とするか散乱状態とするかを切り替える駆動部と、を有し、前記駆動部が前記切替素子に印加する前記交流電圧の周波数が、前記表示パネルの駆動周波数よりも高いことを特徴とする視野角切替型表示装置。
【請求項2】
前記交流電圧の周波数が60Hzよりも高いことを特徴とする請求項1に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項3】
前記交流電圧の周波数が、前記表示パネルの駆動周波数の2倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項4】
前記交流電圧の周波数が、前記表示パネルの駆動周波数のn倍(nは2以上の整数)であることを特徴とする請求項3に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記切替素子の駆動タイミングを前記表示パネルの駆動タイミングに同期させるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項6】
前記切替素子が、透明なプラスチックからなる2枚の基板と、この基板間に配置された液晶層と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項7】
一方の前記基板が前記表示パネルに接着されていることを特徴とする請求項6に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項8】
前記切替素子に対して光を出射する光源を有し、一方の前記基板が前記光源に接着されていることを特徴とする請求項6に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項9】
前記切替素子に入射する光の指向性を高める視角制御手段を有し、一方の前記基板が前記視角制御手段に接着されていることを特徴とする請求項6に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項10】
前記切替素子に対して光を出射する光源を有し、この光源から前記切替素子までの光路において紫外線が吸収されるようになっていることを特徴とする請求項6に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項11】
前記光路に介在するように配置された紫外線吸収シートを有することを特徴とする請求項10に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項12】
一方の前記基板が前記紫外線吸収シートに接着されていることを特徴とする請求項11に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項13】
前記光源は、冷陰極管と、この冷陰極管から入射された光を前記切替素子に向けて面状に出射する導光板と、を有し、前記導光板が紫外線を吸収する材料により形成されていることを特徴とする請求項10に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項14】
前記光源は、冷陰極管と、この冷陰極管から入射された光を面状に出射する導光板と、この導光板から入射された光を前記切替素子に向けて出射する光学素子と、を有し、前記光学素子が紫外線を吸収する材料により形成されていることを特徴とする請求項10に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項15】
前記切替素子に入射する光の指向性を高める視角制御手段を有し、この視角制御手段が紫外線を吸収する材料により形成されていることを特徴とする請求項10に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項16】
前記切替素子を支持する弾性樹脂材を有することを特徴とする請求項6に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項17】
前記切替素子が前記弾性樹脂材を介して前記表示パネルに固定されていることを特徴とする請求項16に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項18】
前記切替素子に入射する光の指向性を高める視角制御手段を有し、前記切替素子が前記弾性樹脂材を介して前記視角制御手段に固定されていることを特徴とする請求項16に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項19】
前記切替素子に入射する光の指向性を高める視角制御手段を有し、前記切替素子と前記視角制御手段とは相互に接合されており、この接合物が前記弾性樹脂材により支持されていることを特徴とする請求項16に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項20】
前記切替素子に対して光を出射する光源を有し、前記切替素子が前記弾性樹脂材を介して前記光源に固定されていることを特徴とする請求項16に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項21】
前記切替素子を収納するフレームを有し、前記切替素子が前記弾性樹脂材を介して前記フレームに固定されていることを特徴とする請求項16に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項22】
前記弾性樹脂材の厚さが10ミクロン以上であることを特徴とする請求項16乃至21のいずれか1項に記載の視野角切替型表示装置。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の視野角切替型表示装置を有することを特徴とする端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−323031(P2006−323031A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144746(P2005−144746)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】