覗き見防止カバー及び自動取引装置
【課題】操作者の視認性・操作性を低下させることがなく、屋外設置時の装置と壁の隙間を塞ぐ枠や、ブース設置時の上部に付けられた盗撮カメラ等による、暗証番号等の盗み取りや覗き見を防止する。
【解決手段】入力装置3の入力キー11を覆って第三者からの覗き見や盗撮を防止する覗き見防止カバーであって、可視方向を規制する複数の可視方向規制シート15を、前記入力キー11に入力操作する操作者の目線方向22が前記可視方向となる角度に配置した覗き見防止カバー9を構成する。
【解決手段】入力装置3の入力キー11を覆って第三者からの覗き見や盗撮を防止する覗き見防止カバーであって、可視方向を規制する複数の可視方向規制シート15を、前記入力キー11に入力操作する操作者の目線方向22が前記可視方向となる角度に配置した覗き見防止カバー9を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動取引装置で使用される暗証番号が暗証番号入力時に不正に入手されるのを防止するセキュリティ性が高い覗き見防止カバー及び自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ATM(現金自動預払機)など自動取引装置の急速な普及に伴い、偽造カードと、不正に入手した暗証番号とを使った不正取引が大きな社会問題になっている。
【0003】
例えば、操作者が自動取引装置の取引過程で暗証番号を入力する際に不正行為者により暗証番号が覗き見されるおそれがあった。また、屋外に設置された自動取引装置では、装置周辺に設置された盗撮カメラによって暗証番号が盗み撮られるおそれがあった。この暗証番号が不正に入手されると、例えばスキミングによる偽造カードの作成やカード強盗等により不正に現金が引き出されてしまう。
【0004】
このようなことから暗証番号の保護対策として、暗証番号を入力させるキーパッドの周囲を半透明のキーパッドカバーで立体的に覆うことにより、暗証番号のキー入力操作が覗き見されるのを防止するようにした自動取引装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかし、キーパッドの周囲を半透明な素材で覆うカバー形状にすると、操作者の目線方向や操作方向となる開口部の大きさや開口方向が制限されて操作者の視認性や操作性が悪くなる。
【0006】
例えば視認性を改善するために、カバー上部に切欠きや穴などの開口部を設けたり、カバー素材に透明・スモーク材料を使用したりすることが考えられるが、自動取引装置の周辺に盗撮カメラが設置された場合には、その盗撮カメラからの盗撮を完全に阻止できない。
【0007】
ことに、キーパッドの周囲をカバーで覆うだけでは、そのカバー自体の内部など操作者の死角となる位置に盗撮カメラが取り付けられると盗撮されてしまう可能性がある。
【0008】
また、盗撮カメラが取り付けられたことを検出する不正検出用カメラを用いる技術などが考えられているが、適切な盗撮防止効果が得られていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−287646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこでこの発明は、操作者の視認性、操作性を損なわず、盗撮カメラからの盗撮や覗き見による暗証番号の盗み取りを防止できる覗き見防止カバー及び自動取引装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、暗証番号入力部を覆って覗き見を防止する覗き見防止カバーであって、可視方向を規制する複数の可視方向規制面を、前記暗証番号入力部に入力操作する操作者の目線方向が前記可視方向となる角度に配置して構成する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、操作者の視認性、操作性を損なわず、盗撮カメラからの盗撮や覗き見による暗証番号の盗み取りを防止できる覗き見防止カバー及び自動取引装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自動取引装置の正面図。
【図2】自動取引装置の制御ブロック図。
【図3】覗き見防止カバーの実装状態とその要部拡大斜視図。
【図4】覗き見防止カバーの縦断側面図。
【図5】覗き見防止カバーの裏側を示す斜視図。
【図6】覗き見防止カバーの上面側を示す斜視図。
【図7】可視シートの実装状態と操作者の可視範囲を示す説明図。
【図8】自動取引装置の屋外設置時の使用状態を示す概略説明図。
【図9】盗撮カメラを発見できる覗き見防止カバーの一例を示す説明図。
【図10】盗撮カメラを発見できる覗き見防止カバーの他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は建物の壁面に前面の顧客操作パネルのみが露出されて使用される屋外設置型の自動取引装置1を示している。この自動取引装置1は防犯性に加えて省スペース化や雨対策を考慮して備えられ、前面中央に略垂直に液晶表示画面等の表示部4が備えられる。この表示部4に取引科目の表示や操作ガイダンスが表示される。
【0016】
さらに、前面下部の右側には入力装置3が備えられ、この入力装置3より暗証番号や入出金取引に必要な取引情報が入力操作される。さらに、この入力装置3に対しては、その周囲を覆う覗き見防止カバー9(図3から図7参照)が備えられている。取引科目の選択は、表示部4の左右に配置されている選択キー10を操作することで行われる。
【0017】
カード取引ユニット5は、表示部4よりさらに下側の位置にカード挿入口5aを有し、ここに挿入されたキャッシュカードを受け付け、そのカード情報を読み取る。このキャッシュカードには金融機関番号、操作者の口座番号などが記録されており、このカード情報は取引される口座の特定、操作者の認証などに用いられる。
【0018】
明細発行ユニット6は、カード取引ユニット5よりさらに右側の位置に明細票発行口6aを有し、操作者の取引内容に従い、支払金額、入金金額、残高等の取引内容及び取引日時を、明細票に印字して発行する。
【0019】
紙幣取扱ユニット8は、カード取引ユニット5よりさらに下側の位置に入出金口8aを有し、操作者に対して紙幣の授受を行う。そして、入金時には、入出金口8aより受け入れた操作者の紙幣を識別し、取引が確定されると金種ごとに分類して装置内に保管する。また、出金時には、操作者の指定した金額分の紙幣を入出金口8aに繰り出して操作者に受け取らせる。
【0020】
図2は自動取引装置1の主要な構成を表わす制御ブロック図である。
この自動取引装置1は紙幣の入出金取引を制御する機能を有している。その構成として、装置内の各部を制御する制御部2と、入力装置3と、表示部4と、カード取引ユニット5と、明細発行ユニット6と、通信部7と、紙幣取引ユニット8とを備えている。
【0021】
このうち、制御部2は自動取引装置1の各部を制御する。また、通信部7を介してセンタに備えられているホストコンピュータと通信して操作者の暗証番号を検証する。
【0022】
図3は入力装置3の入力部分が不正に盗撮されたり覗き見されたりするのを防止する覗き見防止カバー9の実装状態を示している。ここで保護対象となる入力装置3は、自動取引装置1の前面L形状の顧客操作パネル25の下部に突出している水平パネル面上に備えられている。この入力装置3は指定された番号をタッチ入力させる入力キー11であり、平面視四角形状を有するシート状のテンキーで構成することができる。
【0023】
この入力キー11を中心とする周囲に、外部からは見えないように覆う覗き見防止カバー9が備えられる。この覗き見防止カバー9は入力キー11の両側を覆うように不透明な壁を垂直に立上げた左側壁9aと右側壁9bと、奥側に不透明な壁を垂直に立ち上げた奥壁9cと、さらに上方の空間部を覆うように配置される階段状のカバー壁12とで、入力キー11の上方空間の四方を立体的に覆っている。
【0024】
この覗き見防止カバー9で覆われていない正面の開口部分は、手が入る程度の操作者専用の入力操作空間3aとして開放されている。したがって、入力キー11は操作者側から見て、覗き見防止カバー9により、左右両側、奥側及び上面側が覆われ、正面のみが開口されている。
【0025】
なお、入力キー11部の奥側が顧客操作パネル25で塞がれる場合は、奥壁9cを省略したカバー形状にすることができる。また、覗き見防止カバー9を顧客操作パネル25に組み込んで一体形成してもよい。
【0026】
前記左側壁9aと右側壁9bと奥壁9cは、不透明壁材を用いるか、透明な壁材に塗装や印刷を施して不透明にするか、壁材の表面にシボ加工等の処理を施して不透明な壁にするとよい。この際、不透明な壁を設けることにより外部の光が透過し難くなる場合は乳白色の壁材を使用するとよい。また、入力キー11を照らす照明を設けてもよい。
【0027】
さらに、図3では入力装置3の実装位置を、操作者側から見て自動取引装置1の右側に配置した例を示しているが、自動取引装置1の前後、左右、上下位置の何れの位置に配置してもよい。
【0028】
入力装置3が右側の実装位置の場合は、操作者の左後方から不正行為者が入力キー11の部分を覗こうとしても、操作者によって隠れるため見えないが、操作者の入力姿勢により右後方からは覗き見されるおそれがあることを考慮して右側壁9bを操作者側に引き寄せるように十分延設させて、右側壁9bで覆う領域を左側壁9aよりも増やすように対処している。このように入力装置3の実装位置によっては左側壁9aや右側壁9bの一方を長くさせることが望ましい。
【0029】
特に、覗き見防止カバー9の上面を覆うカバー壁12に関しては、不正行為に対する様々な工夫を施して的確な覗き見防止効果が得られるようにしている。このカバー壁12の具体的な構造を図4から図7を参照して以下に説明する。
【0030】
このカバー壁12は、図4に示すように可視方向を規制する可視方向規制面としての複数の可視プレート13と、不可視面としての複数の不可視プレート14とを交互に配置して階段状に構成している。
【0031】
ここに用いられる可視プレート13は、入力キー11に入力操作する操作者の目線方向22と略直角に面対向する角度に配置される透明の樹脂板である。これら複数の可視プレート13は何れも左側壁9aと右側壁9bとの間を接続する横長の長方形を有し、且つ略同角度で同間隔にそれぞれ配置して構成される。
【0032】
そして、これらの各可視プレート13の裏面に可視範囲と不可視範囲を定める可視方向規制シート15(図7にて後述する)を貼り付けることにより可視範囲となる操作者の目線方向22を所望の角度に規制するようにしている。
【0033】
これにより、操作者の目線方向22からは各可視プレート13が面対向し、しかも各可視プレート13に貼り付けられている可視方向規制シート15の可視範囲を同操作者の目線方向22からのみ透過許容されて入力キー11を見ることができる。
【0034】
これに対し、操作者の目線方向22から外れた他の位置からでは可視プレート13を見ても、その可視プレート13上の可視方向規制シート15の不可視範囲が対向するため透過規制されて入力キー11は見えない。
【0035】
なお、この可視方向規制シート15はフィルム等の別の素材でもよく、また可視プレート13の裏面に限らず表面に貼り付けて配置してもよい。さらに、この可視方向規制シート15は貼り付けて配置する以外に、該可視方向規制シート15を挟持して配置するなど適宜の固定手段で配置することができる。
【0036】
一方、不可視プレート14は、操作者の目線方向22と平行する角度に配置される不透明化した樹脂板である。これら複数の不可視プレート14は左側壁9aと右側壁9bとの間を接続する横長の長方形を有し、且つ略同角度で同間隔にそれぞれ配置して構成される。
【0037】
この不可視プレート14は、図5に示すように、透明樹脂板の裏面に例えば凹凸加工(エンボス加工)を施して不透明にした波型不可視面16により形成することができる。この不可視面の作成に際しては、不透明材を用いてもよく、透明材に塗料を着色するか、着色シートを貼り付けるか、あるいはシボ加工を施して不透明化してもよい。
【0038】
これにより、不正行為者の目線方向27から不可視プレート14を介して入力キー11を見ようとしても不可視プレート14の波型不可視面16に遮られて内方の入力キー11を見ることはできない。また、不可視プレート14は操作者の目線方向22と平行する位置関係にあるから操作者の目線方向22をほとんど遮らず、操作者の視認性を妨げない。
【0039】
なお、不可視プレート14に施す着色、着色シート、シボ加工は、表面側にしてもよいが、裏面側とすることで不正加工による透明化を防止できる。
【0040】
このように互いに段差状に配置された各可視プレート13と各不可視プレート14とは、各可視プレート13間を各不可視プレート14で略直角にそれぞれ接続して階段状のカバー壁12を構成したものである。
【0041】
ことに、各可視プレート13は、図4に示すように、操作者の目線方向22に対し、略直角に面対向する。最も内方を見易い角度で対応することになる。このため、操作者からの可視プレート13の面の可視面積が広くなり、効率のよい可視範囲となる。
【0042】
さらに、ここに用いられるカバー壁12は製作上の観点から、可視プレート13と不可視プレート14のプレート素材に共通する同一の透明樹脂材を用いて製作性の向上を図っている。そして、不可視プレート14にはシボ加工等により波型不可視面16を施して階段状に一体成形した後、可視プレート13には可視方向規制シート15を貼り付けて配置するとよい。
【0043】
さらに、カバー壁12は操作者の目線方向22に平面対向する可視プレート13と、操作者の目線方向22に略平行する不可視プレート14とを交互に組み合わせた階段状を有して屋根のように平面的に配設される。図4ではカバー壁12の正面開口側を高く、奥側が低くなるように傾斜させて配置した例を示している。
【0044】
これにより、覗き見防止カバー9の入力操作空間3aの入口が広くなり、操作者の手を入れ易くしている。また、奥側の内方空間を狭くして盗撮カメラ等を取り付け難くしている。さらに、入力装置3の高さによって操作者の目線方向22が異なるため、カバー壁12の大きさや角度は自動取引装置1の設置条件等に応じて構成するとよい。
【0045】
さらに、覗き見防止カバー9の上面に略水平に位置するカバー壁12の階段状の部分は、V字形と逆V字形とが交互に形成される構成上、V字形の凹み部に雨水が溜まり、視認性を阻害する恐れがある。このため、図6に示すようにV字形の凹み部の両端には排水口26を開口して雨水の排水を可能にし、自動取引装置1が屋外に設置されても可視プレート13面上での視認性が低下しないようにしている。このとき、排水口26の位置や形状及び排水孔の数は覗き見防止カバー9の設置条件に対応させて任意に設けるとよい。
【0046】
ここで、覗き見防止カバー9の上面が仮に平面であれば、前後左右の上方から内部の入力キー11を覗き見ることが可能になってしまう。これに対し、覗き見防止カバー9の上面を階段状にすると、前後方向に渡って繰り返し山形状の段差が生じ、その山形状の前面に傾斜する可視プレート13が操作者の目線方向22に面対向する。これにより、操作者の目線方向22からのみ階段状の各可視プレート13を透過して覗き見防止カバー9で覆われた内部の入力キー11を見ることができる。
【0047】
この際、後面側となる位置から覗き見たり、盗撮しようと試みたりしても不可視プレート14が対応するため、内部の入力キー11を覗き見ることはできない。さらに、側面方向から覗き見たり、盗撮しようと試みたりしても山形状の傾斜面を見ることになるため、内部の入力キー11を覗き見ることはできない。
【0048】
次に、カバー壁12を構成している可視プレート13での可視範囲を規制する可視方向規制シート15について説明する。
図7は可視方向規制シート15の可視範囲20を構成する透明なシートまたはフィルムによる可視層15aと、不可視範囲21を構成する着色された不透明なシートまたはフィルムによる不可視層15bとを交互に配列して一体化したシートである。
【0049】
この可視方向規制シート15は特開2003−131202号公報の技術を用いたシートを使用するものであり、この可視方向規制シート15を可視プレート13のプレート面に平面的に貼り付けて配置することにより、操作者の目線方向22は可視方向規制シート15の可視層15aを透過する可視範囲(可視角)20にあるため入力キー11を見ることができる。これ以外は不可視層15bにより遮られて透過規制されるため不可視範囲21となって入力キー11を見ることができない。
【0050】
前記可視範囲20は、可視方向規制シート15のシート面23に対し、可視層15aと不可視層15bとが配列されている傾斜角度θ1を変えることにより、所望の可視範囲20に設定することができる。また、不正行為者の目線方向27から見ようとする不可視範囲21からでは盗撮を規制する盗撮防止角度θ2となる可視方向規制シート15の配置角度に設定する。
【0051】
さらに、シボ加工により不可視プレート14をスリガラス状にした場合、外部の光を透過させて入力キー11の部分が暗くならないようにすることができる。なお、そのシボ加工面に透明なテープを貼られた場合は透けて見える不具合が生じ得るが、波型不可視面16とすることにより凹凸面であり透明なテープを平面で貼れない。このため、悪戯や不正な行為を防止して不透明な状態を維持することができる。また、波型不可視面16は透明なテープを面で貼れない加工であれば、その不可視面の形状は他の加工であってもよい。
【0052】
このように構成された自動取引装置1で取引した際の暗証番号の盗撮防止動作を、図8を参照して説明する。
操作者が自動取引装置1の正面に立って入力操作する際、操作者は入金取引、出金取引等の取引利用する内容を取引ガイダンスにしたがって実行する。そして、暗証番号を入力する時、操作者は自動取引装置1の正面の位置から入力キー11を見る。このとき、操作者の目線方向22は可視方向規制シート15の可視範囲20で見通すことができるため、覗き見防止カバー9のカバー壁12を透過して入力キー11を明瞭に見ることができる。このため、操作者は自動取引装置1の正面位置から暗証番号を容易に入力することができる。
【0053】
ことに、不正行為の一手段として屋外に設置された自動取引装置1の例えば図8の上部に示す上方取付枠18に盗撮カメラ19が取り付けられた場合、その盗撮カメラ19から見下ろす撮影範囲は可視範囲20を外れた位置から見ることになる。
【0054】
つまり、盗撮カメラ19は外部から入力キー11を盗撮しようとすると、高位の上方取付枠18にしか取り付けることができない。これに対し、操作者の目線方向22は上方取付枠18より低い人の高さに制限され、自ずと見る角度が異なる。この結果、盗撮カメラ19は操作者の目線方向22とは異なり、不可視範囲21に位置することになる。このため、上方取付枠18の上部の盗撮カメラ19からは入力キー11の撮影はできず、操作者のみ入力キー11を見て入力操作することができる。このため、暗証番号の入力操作に支障はなく、盗撮されるおそれもない。なお、自動取引装置1の横方向は盗撮カメラ19の取付け対応部位が存在しない。
【0055】
このように自動取引装置1を屋外に設置した場合に、装置と壁の隙間を塞ぐ上方取付枠18やブース設置時の上部に盗撮カメラ19が取り付けられたとしても、入力キー11を見ることができない方向となり、盗撮カメラ19による暗証番号等の盗み取りや覗き見を防止することができる。このため、自動取引装置1は高セキュリティの運用が図れる。そして、このセキュリティの高い暗証番号の入力操作を確保することにより、操作者の安定した視認性・操作性を確保しながら操作者が指定した取引処理を実行することができる。
【0056】
図9は覗き見防止カバー9での異物発見状態の一例を示している。例えば、覗き見防止カバー9の死角となり得る奥側に仮に内部盗撮カメラ24が取付けられていても、操作者がカバー壁12の可視プレート13を見た際に、可視方向規制シート15を透過して覗き見防止カバー9の奥まで全て視認できる。このため、操作者からは奥まで見通すことができ、操作者は不正な内部盗撮カメラ24が取付けられていることを一目で気付くことができる。
【0057】
特に、不可視プレート14が操作者の目線方向22と平行であるから可視プレート13を透過して見る範囲に死角がなく、内部盗撮カメラ24が内部のどこに取り付けられても覗き見防止カバー9の外から発見できる。したがって、犯罪の抑制にもなる。
【0058】
図10は他の覗き見防止カバー9での異物発見状態の一例を示している。この覗き見防止カバー9の上面を構成しているカバー壁12は、各可視プレート13のプレート面が一端から他端へ向かって序々に角度が異なって配置され、操作者の視点である一点から放射状に広がる該操作者の目線方向22にそれぞれ対向させて形成している。
【0059】
この際、操作者の視点高さは同じであるため、見る高さ方向を変えると、その高さに応じて少しずつ操作者の目線方向22の角度が異なる。したがって、放射状に広がる操作者の目線方向22に応じた角度に少しずつ角度を異ならせて各可視プレート13の向きを対応させると、操作者の目線方向22に対向する可視プレート13の対向面が直角となる。これにより、各可視プレート13の各対向面が操作者にとって最も見易い角度となる。
【0060】
したがって、図10における覗き見防止カバー9の、例えば奥側の上下部分にそれぞれ内部盗撮カメラ24が取付けられている場合でも、操作者がカバー壁12の可視プレート13を見た際に、どの位置の可視プレート13であっても奥まで見通すことができ、操作者は不正な内部盗撮カメラ24が取り付けられていることを一目で気付くことができる。このため、内部盗撮カメラ24が取り付けられるような不正行為があっても直ちに発見して対処することができる。
【0061】
また、自動取引装置1は入力装置3を含む各部のデザインや大きさの変更に伴い、覗き見防止カバー9も同様にデザインや大きさが変更されるが、操作者の目線方向22が可視方向となるように面対向する可視プレート13の配置関係を確保していれば支障はない。
【0062】
上述のように、覗き見防止カバー9を階段状に形成し、さらに一方の可視プレート13に可視方向規制シート15を実装し、他方を不可視プレート14にすることにより、操作者のみ入力キー11を見ることができ、外からは覗き見や盗撮はできない盗撮防止効果の優れた高セキュリティの覗き見防止効果を得ることができる。
【0063】
また、覗き見防止カバー9は操作者から内方を見通すことができるため、この覗き見防止カバー9の内方に内部盗撮カメラ24が取り付けられても一目で気付いて不正行為が行われようとしていることを直ちに発見できる。このため、自動取引装置1での暗証番号を不正に入手しようとする不正行為に対して的確な覗き見防止構造と盗撮防止構造とを有して対処できる高信頼性及び高セキュリティを確保した運用が図れる。
【0064】
また、可視プレート13で明瞭に視認できる方向を制限すると共に、不可視プレート14で広い範囲に視認が可能な方向を制限するため、操作者の目線方向22以外から入力キー11が見られることを精度よく防止できる。
【0065】
詳述すると、可視プレート13を見る方向が悪いと、該可視プレート13に貼り付けられている可視方向規制シートの可視層15aを見る面積が少なくなり、不可視層15bを見る面積が増えて暗く見難くなる。これにより、可視プレート13での覗き見防止性を高める機能が得られる。
【0066】
さらに、見る方向が悪いと操作者の目線方向22から平行して見えなかった不可視プレート14の面が見え始めるため益々見難くなる。これにより、不可視プレート14の面が加わって覗き見防止性を高める機能が得られる。すなわち、この不可視プレート14は不可視層15bよりも十分に大きく十分に広い間隔で配置されているため、複数の不可視プレート14によって見えない部分がストライプ状に発生する。
【0067】
このように、階段状にすることにより見る角度が悪くなると、視野角を制限する偏向フィルムとして機能する可視プレート13だけでなく不可視プレート14が見え始めて覗き見防止効果を高めるという2重の効果的な覗き見防止機能を有している。このため、角度の異なる2つのプレート13,14面の向きを有効に利用でき、覗き見防止性能が高くなり、操作者の目線方向22以外から入力キー11が見られることを的確に防止できる。
【0068】
また、この覗き見防止カバー9は上面が階段状だから高強度で傷が付き難く壊れ難い。平面なら擦り傷が付きやすく割れやすいが、そのようなことがない。さらに、カバー壁12は階段状の両端が左側壁9aと右側壁9bに固定支持されるため十分な強度が得られる。
【0069】
この発明の構成は上述の実施例の構成に限定されるものではなく、請求項に記載された技術的思想に基づいて応用することができる。例えば、上述の実施例では入出金取引する制御機能を有する自動取引装置1を示したが、これに限らず、入金取引機能のみ、または出金取引機能のみを有する自動取引装置にも適用することができる。さらに、入力キー11はタッチ入力式に限らず、キーボード式の入力装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
ATMなどの暗証番号を入力する自動取引装置の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…自動取引装置
3…入力装置
9…覗き見防止カバー
11…入力キー
12…カバー壁
13…可視プレート
14…不可視プレート
15…可視方向規制シート
16…波型不可視面
20…可視範囲
21…不可視範囲
22…操作者の目線方向
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動取引装置で使用される暗証番号が暗証番号入力時に不正に入手されるのを防止するセキュリティ性が高い覗き見防止カバー及び自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ATM(現金自動預払機)など自動取引装置の急速な普及に伴い、偽造カードと、不正に入手した暗証番号とを使った不正取引が大きな社会問題になっている。
【0003】
例えば、操作者が自動取引装置の取引過程で暗証番号を入力する際に不正行為者により暗証番号が覗き見されるおそれがあった。また、屋外に設置された自動取引装置では、装置周辺に設置された盗撮カメラによって暗証番号が盗み撮られるおそれがあった。この暗証番号が不正に入手されると、例えばスキミングによる偽造カードの作成やカード強盗等により不正に現金が引き出されてしまう。
【0004】
このようなことから暗証番号の保護対策として、暗証番号を入力させるキーパッドの周囲を半透明のキーパッドカバーで立体的に覆うことにより、暗証番号のキー入力操作が覗き見されるのを防止するようにした自動取引装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかし、キーパッドの周囲を半透明な素材で覆うカバー形状にすると、操作者の目線方向や操作方向となる開口部の大きさや開口方向が制限されて操作者の視認性や操作性が悪くなる。
【0006】
例えば視認性を改善するために、カバー上部に切欠きや穴などの開口部を設けたり、カバー素材に透明・スモーク材料を使用したりすることが考えられるが、自動取引装置の周辺に盗撮カメラが設置された場合には、その盗撮カメラからの盗撮を完全に阻止できない。
【0007】
ことに、キーパッドの周囲をカバーで覆うだけでは、そのカバー自体の内部など操作者の死角となる位置に盗撮カメラが取り付けられると盗撮されてしまう可能性がある。
【0008】
また、盗撮カメラが取り付けられたことを検出する不正検出用カメラを用いる技術などが考えられているが、適切な盗撮防止効果が得られていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−287646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこでこの発明は、操作者の視認性、操作性を損なわず、盗撮カメラからの盗撮や覗き見による暗証番号の盗み取りを防止できる覗き見防止カバー及び自動取引装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、暗証番号入力部を覆って覗き見を防止する覗き見防止カバーであって、可視方向を規制する複数の可視方向規制面を、前記暗証番号入力部に入力操作する操作者の目線方向が前記可視方向となる角度に配置して構成する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、操作者の視認性、操作性を損なわず、盗撮カメラからの盗撮や覗き見による暗証番号の盗み取りを防止できる覗き見防止カバー及び自動取引装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自動取引装置の正面図。
【図2】自動取引装置の制御ブロック図。
【図3】覗き見防止カバーの実装状態とその要部拡大斜視図。
【図4】覗き見防止カバーの縦断側面図。
【図5】覗き見防止カバーの裏側を示す斜視図。
【図6】覗き見防止カバーの上面側を示す斜視図。
【図7】可視シートの実装状態と操作者の可視範囲を示す説明図。
【図8】自動取引装置の屋外設置時の使用状態を示す概略説明図。
【図9】盗撮カメラを発見できる覗き見防止カバーの一例を示す説明図。
【図10】盗撮カメラを発見できる覗き見防止カバーの他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は建物の壁面に前面の顧客操作パネルのみが露出されて使用される屋外設置型の自動取引装置1を示している。この自動取引装置1は防犯性に加えて省スペース化や雨対策を考慮して備えられ、前面中央に略垂直に液晶表示画面等の表示部4が備えられる。この表示部4に取引科目の表示や操作ガイダンスが表示される。
【0016】
さらに、前面下部の右側には入力装置3が備えられ、この入力装置3より暗証番号や入出金取引に必要な取引情報が入力操作される。さらに、この入力装置3に対しては、その周囲を覆う覗き見防止カバー9(図3から図7参照)が備えられている。取引科目の選択は、表示部4の左右に配置されている選択キー10を操作することで行われる。
【0017】
カード取引ユニット5は、表示部4よりさらに下側の位置にカード挿入口5aを有し、ここに挿入されたキャッシュカードを受け付け、そのカード情報を読み取る。このキャッシュカードには金融機関番号、操作者の口座番号などが記録されており、このカード情報は取引される口座の特定、操作者の認証などに用いられる。
【0018】
明細発行ユニット6は、カード取引ユニット5よりさらに右側の位置に明細票発行口6aを有し、操作者の取引内容に従い、支払金額、入金金額、残高等の取引内容及び取引日時を、明細票に印字して発行する。
【0019】
紙幣取扱ユニット8は、カード取引ユニット5よりさらに下側の位置に入出金口8aを有し、操作者に対して紙幣の授受を行う。そして、入金時には、入出金口8aより受け入れた操作者の紙幣を識別し、取引が確定されると金種ごとに分類して装置内に保管する。また、出金時には、操作者の指定した金額分の紙幣を入出金口8aに繰り出して操作者に受け取らせる。
【0020】
図2は自動取引装置1の主要な構成を表わす制御ブロック図である。
この自動取引装置1は紙幣の入出金取引を制御する機能を有している。その構成として、装置内の各部を制御する制御部2と、入力装置3と、表示部4と、カード取引ユニット5と、明細発行ユニット6と、通信部7と、紙幣取引ユニット8とを備えている。
【0021】
このうち、制御部2は自動取引装置1の各部を制御する。また、通信部7を介してセンタに備えられているホストコンピュータと通信して操作者の暗証番号を検証する。
【0022】
図3は入力装置3の入力部分が不正に盗撮されたり覗き見されたりするのを防止する覗き見防止カバー9の実装状態を示している。ここで保護対象となる入力装置3は、自動取引装置1の前面L形状の顧客操作パネル25の下部に突出している水平パネル面上に備えられている。この入力装置3は指定された番号をタッチ入力させる入力キー11であり、平面視四角形状を有するシート状のテンキーで構成することができる。
【0023】
この入力キー11を中心とする周囲に、外部からは見えないように覆う覗き見防止カバー9が備えられる。この覗き見防止カバー9は入力キー11の両側を覆うように不透明な壁を垂直に立上げた左側壁9aと右側壁9bと、奥側に不透明な壁を垂直に立ち上げた奥壁9cと、さらに上方の空間部を覆うように配置される階段状のカバー壁12とで、入力キー11の上方空間の四方を立体的に覆っている。
【0024】
この覗き見防止カバー9で覆われていない正面の開口部分は、手が入る程度の操作者専用の入力操作空間3aとして開放されている。したがって、入力キー11は操作者側から見て、覗き見防止カバー9により、左右両側、奥側及び上面側が覆われ、正面のみが開口されている。
【0025】
なお、入力キー11部の奥側が顧客操作パネル25で塞がれる場合は、奥壁9cを省略したカバー形状にすることができる。また、覗き見防止カバー9を顧客操作パネル25に組み込んで一体形成してもよい。
【0026】
前記左側壁9aと右側壁9bと奥壁9cは、不透明壁材を用いるか、透明な壁材に塗装や印刷を施して不透明にするか、壁材の表面にシボ加工等の処理を施して不透明な壁にするとよい。この際、不透明な壁を設けることにより外部の光が透過し難くなる場合は乳白色の壁材を使用するとよい。また、入力キー11を照らす照明を設けてもよい。
【0027】
さらに、図3では入力装置3の実装位置を、操作者側から見て自動取引装置1の右側に配置した例を示しているが、自動取引装置1の前後、左右、上下位置の何れの位置に配置してもよい。
【0028】
入力装置3が右側の実装位置の場合は、操作者の左後方から不正行為者が入力キー11の部分を覗こうとしても、操作者によって隠れるため見えないが、操作者の入力姿勢により右後方からは覗き見されるおそれがあることを考慮して右側壁9bを操作者側に引き寄せるように十分延設させて、右側壁9bで覆う領域を左側壁9aよりも増やすように対処している。このように入力装置3の実装位置によっては左側壁9aや右側壁9bの一方を長くさせることが望ましい。
【0029】
特に、覗き見防止カバー9の上面を覆うカバー壁12に関しては、不正行為に対する様々な工夫を施して的確な覗き見防止効果が得られるようにしている。このカバー壁12の具体的な構造を図4から図7を参照して以下に説明する。
【0030】
このカバー壁12は、図4に示すように可視方向を規制する可視方向規制面としての複数の可視プレート13と、不可視面としての複数の不可視プレート14とを交互に配置して階段状に構成している。
【0031】
ここに用いられる可視プレート13は、入力キー11に入力操作する操作者の目線方向22と略直角に面対向する角度に配置される透明の樹脂板である。これら複数の可視プレート13は何れも左側壁9aと右側壁9bとの間を接続する横長の長方形を有し、且つ略同角度で同間隔にそれぞれ配置して構成される。
【0032】
そして、これらの各可視プレート13の裏面に可視範囲と不可視範囲を定める可視方向規制シート15(図7にて後述する)を貼り付けることにより可視範囲となる操作者の目線方向22を所望の角度に規制するようにしている。
【0033】
これにより、操作者の目線方向22からは各可視プレート13が面対向し、しかも各可視プレート13に貼り付けられている可視方向規制シート15の可視範囲を同操作者の目線方向22からのみ透過許容されて入力キー11を見ることができる。
【0034】
これに対し、操作者の目線方向22から外れた他の位置からでは可視プレート13を見ても、その可視プレート13上の可視方向規制シート15の不可視範囲が対向するため透過規制されて入力キー11は見えない。
【0035】
なお、この可視方向規制シート15はフィルム等の別の素材でもよく、また可視プレート13の裏面に限らず表面に貼り付けて配置してもよい。さらに、この可視方向規制シート15は貼り付けて配置する以外に、該可視方向規制シート15を挟持して配置するなど適宜の固定手段で配置することができる。
【0036】
一方、不可視プレート14は、操作者の目線方向22と平行する角度に配置される不透明化した樹脂板である。これら複数の不可視プレート14は左側壁9aと右側壁9bとの間を接続する横長の長方形を有し、且つ略同角度で同間隔にそれぞれ配置して構成される。
【0037】
この不可視プレート14は、図5に示すように、透明樹脂板の裏面に例えば凹凸加工(エンボス加工)を施して不透明にした波型不可視面16により形成することができる。この不可視面の作成に際しては、不透明材を用いてもよく、透明材に塗料を着色するか、着色シートを貼り付けるか、あるいはシボ加工を施して不透明化してもよい。
【0038】
これにより、不正行為者の目線方向27から不可視プレート14を介して入力キー11を見ようとしても不可視プレート14の波型不可視面16に遮られて内方の入力キー11を見ることはできない。また、不可視プレート14は操作者の目線方向22と平行する位置関係にあるから操作者の目線方向22をほとんど遮らず、操作者の視認性を妨げない。
【0039】
なお、不可視プレート14に施す着色、着色シート、シボ加工は、表面側にしてもよいが、裏面側とすることで不正加工による透明化を防止できる。
【0040】
このように互いに段差状に配置された各可視プレート13と各不可視プレート14とは、各可視プレート13間を各不可視プレート14で略直角にそれぞれ接続して階段状のカバー壁12を構成したものである。
【0041】
ことに、各可視プレート13は、図4に示すように、操作者の目線方向22に対し、略直角に面対向する。最も内方を見易い角度で対応することになる。このため、操作者からの可視プレート13の面の可視面積が広くなり、効率のよい可視範囲となる。
【0042】
さらに、ここに用いられるカバー壁12は製作上の観点から、可視プレート13と不可視プレート14のプレート素材に共通する同一の透明樹脂材を用いて製作性の向上を図っている。そして、不可視プレート14にはシボ加工等により波型不可視面16を施して階段状に一体成形した後、可視プレート13には可視方向規制シート15を貼り付けて配置するとよい。
【0043】
さらに、カバー壁12は操作者の目線方向22に平面対向する可視プレート13と、操作者の目線方向22に略平行する不可視プレート14とを交互に組み合わせた階段状を有して屋根のように平面的に配設される。図4ではカバー壁12の正面開口側を高く、奥側が低くなるように傾斜させて配置した例を示している。
【0044】
これにより、覗き見防止カバー9の入力操作空間3aの入口が広くなり、操作者の手を入れ易くしている。また、奥側の内方空間を狭くして盗撮カメラ等を取り付け難くしている。さらに、入力装置3の高さによって操作者の目線方向22が異なるため、カバー壁12の大きさや角度は自動取引装置1の設置条件等に応じて構成するとよい。
【0045】
さらに、覗き見防止カバー9の上面に略水平に位置するカバー壁12の階段状の部分は、V字形と逆V字形とが交互に形成される構成上、V字形の凹み部に雨水が溜まり、視認性を阻害する恐れがある。このため、図6に示すようにV字形の凹み部の両端には排水口26を開口して雨水の排水を可能にし、自動取引装置1が屋外に設置されても可視プレート13面上での視認性が低下しないようにしている。このとき、排水口26の位置や形状及び排水孔の数は覗き見防止カバー9の設置条件に対応させて任意に設けるとよい。
【0046】
ここで、覗き見防止カバー9の上面が仮に平面であれば、前後左右の上方から内部の入力キー11を覗き見ることが可能になってしまう。これに対し、覗き見防止カバー9の上面を階段状にすると、前後方向に渡って繰り返し山形状の段差が生じ、その山形状の前面に傾斜する可視プレート13が操作者の目線方向22に面対向する。これにより、操作者の目線方向22からのみ階段状の各可視プレート13を透過して覗き見防止カバー9で覆われた内部の入力キー11を見ることができる。
【0047】
この際、後面側となる位置から覗き見たり、盗撮しようと試みたりしても不可視プレート14が対応するため、内部の入力キー11を覗き見ることはできない。さらに、側面方向から覗き見たり、盗撮しようと試みたりしても山形状の傾斜面を見ることになるため、内部の入力キー11を覗き見ることはできない。
【0048】
次に、カバー壁12を構成している可視プレート13での可視範囲を規制する可視方向規制シート15について説明する。
図7は可視方向規制シート15の可視範囲20を構成する透明なシートまたはフィルムによる可視層15aと、不可視範囲21を構成する着色された不透明なシートまたはフィルムによる不可視層15bとを交互に配列して一体化したシートである。
【0049】
この可視方向規制シート15は特開2003−131202号公報の技術を用いたシートを使用するものであり、この可視方向規制シート15を可視プレート13のプレート面に平面的に貼り付けて配置することにより、操作者の目線方向22は可視方向規制シート15の可視層15aを透過する可視範囲(可視角)20にあるため入力キー11を見ることができる。これ以外は不可視層15bにより遮られて透過規制されるため不可視範囲21となって入力キー11を見ることができない。
【0050】
前記可視範囲20は、可視方向規制シート15のシート面23に対し、可視層15aと不可視層15bとが配列されている傾斜角度θ1を変えることにより、所望の可視範囲20に設定することができる。また、不正行為者の目線方向27から見ようとする不可視範囲21からでは盗撮を規制する盗撮防止角度θ2となる可視方向規制シート15の配置角度に設定する。
【0051】
さらに、シボ加工により不可視プレート14をスリガラス状にした場合、外部の光を透過させて入力キー11の部分が暗くならないようにすることができる。なお、そのシボ加工面に透明なテープを貼られた場合は透けて見える不具合が生じ得るが、波型不可視面16とすることにより凹凸面であり透明なテープを平面で貼れない。このため、悪戯や不正な行為を防止して不透明な状態を維持することができる。また、波型不可視面16は透明なテープを面で貼れない加工であれば、その不可視面の形状は他の加工であってもよい。
【0052】
このように構成された自動取引装置1で取引した際の暗証番号の盗撮防止動作を、図8を参照して説明する。
操作者が自動取引装置1の正面に立って入力操作する際、操作者は入金取引、出金取引等の取引利用する内容を取引ガイダンスにしたがって実行する。そして、暗証番号を入力する時、操作者は自動取引装置1の正面の位置から入力キー11を見る。このとき、操作者の目線方向22は可視方向規制シート15の可視範囲20で見通すことができるため、覗き見防止カバー9のカバー壁12を透過して入力キー11を明瞭に見ることができる。このため、操作者は自動取引装置1の正面位置から暗証番号を容易に入力することができる。
【0053】
ことに、不正行為の一手段として屋外に設置された自動取引装置1の例えば図8の上部に示す上方取付枠18に盗撮カメラ19が取り付けられた場合、その盗撮カメラ19から見下ろす撮影範囲は可視範囲20を外れた位置から見ることになる。
【0054】
つまり、盗撮カメラ19は外部から入力キー11を盗撮しようとすると、高位の上方取付枠18にしか取り付けることができない。これに対し、操作者の目線方向22は上方取付枠18より低い人の高さに制限され、自ずと見る角度が異なる。この結果、盗撮カメラ19は操作者の目線方向22とは異なり、不可視範囲21に位置することになる。このため、上方取付枠18の上部の盗撮カメラ19からは入力キー11の撮影はできず、操作者のみ入力キー11を見て入力操作することができる。このため、暗証番号の入力操作に支障はなく、盗撮されるおそれもない。なお、自動取引装置1の横方向は盗撮カメラ19の取付け対応部位が存在しない。
【0055】
このように自動取引装置1を屋外に設置した場合に、装置と壁の隙間を塞ぐ上方取付枠18やブース設置時の上部に盗撮カメラ19が取り付けられたとしても、入力キー11を見ることができない方向となり、盗撮カメラ19による暗証番号等の盗み取りや覗き見を防止することができる。このため、自動取引装置1は高セキュリティの運用が図れる。そして、このセキュリティの高い暗証番号の入力操作を確保することにより、操作者の安定した視認性・操作性を確保しながら操作者が指定した取引処理を実行することができる。
【0056】
図9は覗き見防止カバー9での異物発見状態の一例を示している。例えば、覗き見防止カバー9の死角となり得る奥側に仮に内部盗撮カメラ24が取付けられていても、操作者がカバー壁12の可視プレート13を見た際に、可視方向規制シート15を透過して覗き見防止カバー9の奥まで全て視認できる。このため、操作者からは奥まで見通すことができ、操作者は不正な内部盗撮カメラ24が取付けられていることを一目で気付くことができる。
【0057】
特に、不可視プレート14が操作者の目線方向22と平行であるから可視プレート13を透過して見る範囲に死角がなく、内部盗撮カメラ24が内部のどこに取り付けられても覗き見防止カバー9の外から発見できる。したがって、犯罪の抑制にもなる。
【0058】
図10は他の覗き見防止カバー9での異物発見状態の一例を示している。この覗き見防止カバー9の上面を構成しているカバー壁12は、各可視プレート13のプレート面が一端から他端へ向かって序々に角度が異なって配置され、操作者の視点である一点から放射状に広がる該操作者の目線方向22にそれぞれ対向させて形成している。
【0059】
この際、操作者の視点高さは同じであるため、見る高さ方向を変えると、その高さに応じて少しずつ操作者の目線方向22の角度が異なる。したがって、放射状に広がる操作者の目線方向22に応じた角度に少しずつ角度を異ならせて各可視プレート13の向きを対応させると、操作者の目線方向22に対向する可視プレート13の対向面が直角となる。これにより、各可視プレート13の各対向面が操作者にとって最も見易い角度となる。
【0060】
したがって、図10における覗き見防止カバー9の、例えば奥側の上下部分にそれぞれ内部盗撮カメラ24が取付けられている場合でも、操作者がカバー壁12の可視プレート13を見た際に、どの位置の可視プレート13であっても奥まで見通すことができ、操作者は不正な内部盗撮カメラ24が取り付けられていることを一目で気付くことができる。このため、内部盗撮カメラ24が取り付けられるような不正行為があっても直ちに発見して対処することができる。
【0061】
また、自動取引装置1は入力装置3を含む各部のデザインや大きさの変更に伴い、覗き見防止カバー9も同様にデザインや大きさが変更されるが、操作者の目線方向22が可視方向となるように面対向する可視プレート13の配置関係を確保していれば支障はない。
【0062】
上述のように、覗き見防止カバー9を階段状に形成し、さらに一方の可視プレート13に可視方向規制シート15を実装し、他方を不可視プレート14にすることにより、操作者のみ入力キー11を見ることができ、外からは覗き見や盗撮はできない盗撮防止効果の優れた高セキュリティの覗き見防止効果を得ることができる。
【0063】
また、覗き見防止カバー9は操作者から内方を見通すことができるため、この覗き見防止カバー9の内方に内部盗撮カメラ24が取り付けられても一目で気付いて不正行為が行われようとしていることを直ちに発見できる。このため、自動取引装置1での暗証番号を不正に入手しようとする不正行為に対して的確な覗き見防止構造と盗撮防止構造とを有して対処できる高信頼性及び高セキュリティを確保した運用が図れる。
【0064】
また、可視プレート13で明瞭に視認できる方向を制限すると共に、不可視プレート14で広い範囲に視認が可能な方向を制限するため、操作者の目線方向22以外から入力キー11が見られることを精度よく防止できる。
【0065】
詳述すると、可視プレート13を見る方向が悪いと、該可視プレート13に貼り付けられている可視方向規制シートの可視層15aを見る面積が少なくなり、不可視層15bを見る面積が増えて暗く見難くなる。これにより、可視プレート13での覗き見防止性を高める機能が得られる。
【0066】
さらに、見る方向が悪いと操作者の目線方向22から平行して見えなかった不可視プレート14の面が見え始めるため益々見難くなる。これにより、不可視プレート14の面が加わって覗き見防止性を高める機能が得られる。すなわち、この不可視プレート14は不可視層15bよりも十分に大きく十分に広い間隔で配置されているため、複数の不可視プレート14によって見えない部分がストライプ状に発生する。
【0067】
このように、階段状にすることにより見る角度が悪くなると、視野角を制限する偏向フィルムとして機能する可視プレート13だけでなく不可視プレート14が見え始めて覗き見防止効果を高めるという2重の効果的な覗き見防止機能を有している。このため、角度の異なる2つのプレート13,14面の向きを有効に利用でき、覗き見防止性能が高くなり、操作者の目線方向22以外から入力キー11が見られることを的確に防止できる。
【0068】
また、この覗き見防止カバー9は上面が階段状だから高強度で傷が付き難く壊れ難い。平面なら擦り傷が付きやすく割れやすいが、そのようなことがない。さらに、カバー壁12は階段状の両端が左側壁9aと右側壁9bに固定支持されるため十分な強度が得られる。
【0069】
この発明の構成は上述の実施例の構成に限定されるものではなく、請求項に記載された技術的思想に基づいて応用することができる。例えば、上述の実施例では入出金取引する制御機能を有する自動取引装置1を示したが、これに限らず、入金取引機能のみ、または出金取引機能のみを有する自動取引装置にも適用することができる。さらに、入力キー11はタッチ入力式に限らず、キーボード式の入力装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
ATMなどの暗証番号を入力する自動取引装置の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…自動取引装置
3…入力装置
9…覗き見防止カバー
11…入力キー
12…カバー壁
13…可視プレート
14…不可視プレート
15…可視方向規制シート
16…波型不可視面
20…可視範囲
21…不可視範囲
22…操作者の目線方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗証番号入力部を覆って覗き見を防止する覗き見防止カバーであって、
可視方向を規制する複数の可視方向規制面を、前記暗証番号入力部に入力操作する操作者の目線方向が前記可視方向となる角度に配置した
覗き見防止カバー。
【請求項2】
前記複数の可視方向規制面は、互いに段差状に配置され、
各可視方向規制面間を接続する不可視面が設けられ、
前記各不可視面は、前記可視方向と略平行に配置された
請求項1記載の覗き見防止カバー。
【請求項3】
透明素材により一体的に形成され、
前記可視方向規制面には可視方向規制シートが配置され、
前記不可視面には着色または凹凸加工がなされた
請求項2記載の覗き見防止カバー。
【請求項4】
前記可視方向規制面と前記不可視面が交互に階段状に配置された
請求項2または3記載の覗き見防止カバー。
【請求項5】
前記複数の可視方向規制面は、
一端から他端へ向かって序々に角度が異なって配置され、一点から放射状に広がる前記操作者の可視方向にそれぞれ対向している
請求項1から4の何れか1項に記載の覗き見防止カバー。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の覗き見防止カバーを備えた自動取引装置。
【請求項1】
暗証番号入力部を覆って覗き見を防止する覗き見防止カバーであって、
可視方向を規制する複数の可視方向規制面を、前記暗証番号入力部に入力操作する操作者の目線方向が前記可視方向となる角度に配置した
覗き見防止カバー。
【請求項2】
前記複数の可視方向規制面は、互いに段差状に配置され、
各可視方向規制面間を接続する不可視面が設けられ、
前記各不可視面は、前記可視方向と略平行に配置された
請求項1記載の覗き見防止カバー。
【請求項3】
透明素材により一体的に形成され、
前記可視方向規制面には可視方向規制シートが配置され、
前記不可視面には着色または凹凸加工がなされた
請求項2記載の覗き見防止カバー。
【請求項4】
前記可視方向規制面と前記不可視面が交互に階段状に配置された
請求項2または3記載の覗き見防止カバー。
【請求項5】
前記複数の可視方向規制面は、
一端から他端へ向かって序々に角度が異なって配置され、一点から放射状に広がる前記操作者の可視方向にそれぞれ対向している
請求項1から4の何れか1項に記載の覗き見防止カバー。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の覗き見防止カバーを備えた自動取引装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−14547(P2012−14547A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151705(P2010−151705)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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