説明

親水化処理剤

【課題】金属材料表面に、優れた初期親水性と親水持続性、及び優れた耐臭気性を付与することができる親水化処理剤を提供すること。
【解決手段】メルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂ブロックと1分子中に少なくとも1のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーが重合してなるポリアニオン樹脂ブロックとのブロック共重合体、及びポリアクリル酸を含む親水化処理剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水化処理剤、及び該親水化処理剤を用いた親水化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機や自動車用エアコン等に用いられるエバポレータや熱交換器は、通常、熱交換器の表面積をできるだけ広く確保するためにアルミニウム製のフィンが狭い間隔で保持され、さらに、これらのフィンに冷媒を供給するためのアルミニウムチューブが入り組んで配置された複雑な構造となっている。室内空調機やカーエアコンの稼働時に空気中の水分は、上記フィン表面に凝縮水として付着するが、この際、水濡れ性の劣るフィン表面では、凝縮水が略半球状の水滴となって、フィン間にブリッジ状に存在することにより、通風抵抗を増大させてしまう。このようにフィン表面の水濡れ性の悪さ、すなわち親水性不足は、熱交換効率を低下させ、ひいては製品クレームに直結する。
【0003】
アルミニウムやその合金を含むアルミニウム系金属材料は、本来耐食性に優れた金属材料であるが、当該材料を用いたフィン表面に凝縮水が長時間滞留すると、酸素濃淡電池が形成するため、大気中の汚染成分が次第に付着、濃縮されて水和反応や腐食反応が促進される。この腐食生成物は、フィン表面に堆積し、熱交換を阻害するほか、特に暖気運転時に、白い微粉として送風口から排出されるため問題となっていた。
【0004】
さらに、熱交換器の製造過程において形成されるアルミニウム系酸化物、ろう材のアルミニウム−シリコン合金等の偏析物がフィン表面に残留することにより、フィン表面等に主にアルミニウム酸化物からなる白錆が発生し、この白錆が熱交換器の劣化原因の一つとなっていた。また、白錆が水分を吸着することにより、カビ繁殖及び臭気物質(例えば、たばこ、汗、香水等)の吸着が起こりやすくなり、これらに起因する不快臭が建物や自動車内にもたらされることが問題となっていた。
【0005】
上記の問題を解決するために、アルミニウムフィン表面に親水性・水濡れ性、耐食性、耐臭気性等を付与する目的で、フィン表面の親水化処理が従来行われてきた。
例えば、特許文献1には、所定のポリビニルアルコールと、Ca、Al、Mg、Fe及びZnのリン酸化合物の塩と、ホウ酸の塩等とを含む親水化処理剤が提案されている。しかし、当該親水化処理剤は、一定の親水性と耐臭気性を示すものの、用いられる所定のポリビニルアルコールが高結晶性樹脂であるため水に難溶であり、可溶化のため親水化処理剤の製造時に加熱溶解させる必要があり、製造時の生産効率化の妨げとなっていた。
特許文献2には、所定のモノマーを共重合して得られる、親水性、汚染物質が付着した後であっても長期にわたり初期親水性を保持しうる親水持続性、及び密着性に優れた親水皮膜を形成する架橋性樹脂微粒子、及びこれを用いた親水化処理剤が提案されている。しかし、当該親水化処理剤は、初期親水性、親水持続性、及び密着性に優れているが、耐臭気性の点で十分ではなかった。
【0006】
特許文献3には、ポリビニルアルコールと、水溶性ポリマーと、水溶性架橋剤との混合水溶液で処理されてなるアルミニウム製熱交換器及びその製造方法が開示されている。しかし、該混合水溶液により形成する樹脂皮膜は、水分を吸収してヒドロゲル化しやすい性質を有するため、耐臭気性の点で十分ではなかった。
特許文献4には、所定のポリビニルアルコール系重合体を一成分とするブロック共重合体の製法が提案され、該共重合体が、金属の表面コート剤、防曇剤等の被覆剤及び疎水性樹脂の親水性付与剤として使用しうることが示唆している。しかし、これらの用途への適用は一般開示に留まっており、アルミニウム系金属表面の親水化処理剤に用いられる樹脂組成物としての用途についての記載は一切なく、このような樹脂組成物が親水持続性、耐臭気性等に優れた親水化処理剤として有用であることは知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−285139号公報
【特許文献2】特開2005−2151号公報
【特許文献3】特開平6−26381号公報
【特許文献4】特開昭59−189113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況の下で、アルミニウム系はもちろんのこと、アルミニウム系以外の金属材料表面に、優れた初期親水性と親水持続性、及び優れた耐臭気性を付与することができる親水化処理剤、及びこれを用いた親水化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアルコール樹脂ブロック等を含む所定のブロック共重合体、及びポリアクリル酸を含む親水化処理剤が、前記目的を解決しうることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)メルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂ブロックと1分子中に少なくとも1のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーが重合してなるポリアニオン樹脂ブロックとのブロック共重合体、及びポリアクリル酸を含む親水化処理剤、
(2)ブロック共重合体の含有量が、10〜95質量%(樹脂固形分換算)であり、ポリアクリル酸の含有量が、5〜90質量%(樹脂固形分換算)である上記(1)に記載の親水化処理剤、
(3)ブロック共重合体が、片末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂の存在下、重合性モノマーをラジカル重合させて得られるものであり、ブロック共重合体中のポリアニオン樹脂ブロックの含有量が10〜98質量%(樹脂固形分換算)である上記(1)又は(2)に記載の親水化処理剤、
(4)さらに架橋性樹脂微粒子を、1〜35質量%(樹脂固形分換算)含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の親水化処理剤、及び
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の親水化処理剤で、アルミニウム系金属材料表面を処理して親水化することを特徴とするアルミニウム系金属材料表面の親水化処理方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属材料表面に、優れた初期親水性と親水持続性、及び優れた耐臭気性を付与することができる親水化処理剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、本明細書においては、「親水性」の用語は、特に断りがない限り、初期親水性及び経時後の親水性(親水持続性)を含む広義の親水性を意味するものとする。
【0013】
本発明の親水化処理剤は、メルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂ブロックと1分子中に少なくとも1のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーが重合してなるポリアニオン樹脂ブロックとのブロック共重合体、及びポリアクリル酸を含むものである。
【0014】
[ブロック共重合体]
本発明に用いられるブロック共重合体は、メルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂ブロックと1分子中に少なくとも1のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマー成分が重合してなるポリアニオン樹脂ブロックとからなるブロック共重合体である。
本発明の親水性処理剤中、当該ブロック共重合体の含有量は、下限10質量%、上限95質量%であることが好ましく、下限30質量%、上限70質量%であることがより好ましく、下限40質量%、上限60質量%がさらに好ましく、下限45質量%、上限55質量%が特に好ましい。
ブロック共重合体中のポリビニルアルコール樹脂ブロックの含有量は、樹脂固形分換算で、下限が2質量%、上限が90質量%であることが好ましく、下限が2質量%、上限が30質量%であることがより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂ブロックの含有量が上記範囲内にあると、ポリビニルアルコール樹脂ブロックが有する造膜性が発現するため、形成される親水皮膜が膜状態を保持できるようになるので、金属基材への密着性が良好となり、親水性がより長く持続する。
また、ブロック共重合体中のポリアニオン樹脂ブロックの含有量は、樹脂固形分換算で、下限が10質量%、上限が98質量%であることが好ましく、下限が70質量%、上限が95重量%であることがより好ましい。ポリアニオン樹脂ブロックの含有量が上記範囲内にあれば、親水性に優れ、耐臭気性に優れる親水皮膜を得ることができる。
【0015】
[ブロック共重合体:ポリビニルアルコール樹脂ブロック]
本発明に用いられる片末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂は、例えば、チオール酢酸、チオールプロピオン酢酸、チオール酪酸、チオール吉草酸等のチオール酸の存在下に、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルモノマーを重合して得たポリビニルエステル系重合体をケン化して得ることができる。また市販の製品、例えば、商品名「クラレMポリマー」(株式会社クラレ製)等を使用することも可能である。
【0016】
[ブロック共重合体:ポリアニオン樹脂ブロック]
本発明にかかるポリアニオン樹脂ブロックは、1分子中に少なくとも1のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーが重合してなる樹脂ブロックである。
カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの四級化物等の(メタ)アクリル酸エステル;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホアルキル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそのナトリウム塩、p−スチレンスルホン酸及びそのナトリウム塩及び/又はカリウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いても、併用してもよい。
【0017】
カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーとしては、AMPS、アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が好ましく挙げられ、なかでもAMPS及びアクリル酸が好ましい。重合性モノマーがAMPSを含む場合、重合性モノマー中のAMPSの含有量は、下限が40質量%、上限が100質量%であることが好ましく、下限が50質量%、上限が80質量%であることがより好ましく、下限については60質量%であることがさらに好ましく、下限については75質量%であることが特に好ましい。重合性モノマー中のAMPSの含有量が上記範囲内にあれば、親水性及び耐臭気性に優れた皮膜が得られる。
【0018】
[ブロック共重合体:製造方法]
本発明に用いられるブロック共重合体は、通常公知の重合方法により得ることができ、片末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂の存在下、重合性モノマー成分をラジカル重合して得ることが好ましい。当該ラジカル重合は、ポリビニルアルコール樹脂を溶解しうる溶剤、例えば水、ジメチルスルホキシド等を主体とする媒体中で重合を行うことが好ましい。また、重合方式としては回分式、半連続式、連続式等公知のものが挙げられる。
【0019】
ラジカル重合においては、通常用いられるラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物;メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等の過酸化物;過酸化水素、臭素酸カリウム等が挙げられる。
水系で重合を行う場合は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、臭素酸カリウム等の酸化剤を用いることが好ましく、なかでも臭素酸カリウムは、通常の重合条件下ではラジカルを発生せず、ポリビニルアルコール樹脂中の片末端のメルカプト基とのレドックス反応によってのみ分解し、ラジカルを発生することから、本発明にかかるブロック共重合体を調製する上で好ましい。
【0020】
片末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂の存在下、重合性モノマー成分をラジカル重合させる際に、重合系が酸性であることが好ましく、全ての重合操作を好ましくはpH6以下、より好ましくはpH4以下で実施する。この範囲内にあれば、重合効率を良好に保つことができる。
【0021】
[架橋性樹脂微粒子]
本発明の親水化処理剤は、さらに架橋性樹脂微粒子を含有することが好ましい。
本発明に用いられる架橋性樹脂微粒子としては、一般に用いられる有機樹脂微粒子を用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物等の微粒子を挙げることができる。また、架橋性樹脂微粒子としては、下記式(1)で表されるモノマー(a)30〜95質量%、下記式(2)及び/又は、下記式(3)で表されるポリオキシアルキレン鎖及び重合性二重結合を有するモノマー(b)5〜60質量%、ならびに、(メタ)アクリル酸を含有する、モノマー(c)0〜50質量%からなるモノマー成分を共重合して得られる樹脂を用いた微粒子を特に好ましく挙げることができる。
【0022】
このように表される架橋性樹脂微粒子は、下記モノマー(a)のメチロール基、エチロール基と下記モノマー(b)のカルボキシル基、水酸基等の官能基とが反応したり、メチロール基、エチロール基同士が縮合反応したり、あるいは下記モノマー(c)のカルボキシル基、水酸基と反応したりすることから、本発明の親水化処理剤の成分として使用した場合、水不溶性の強固な親水皮膜を形成することができる。また、上記架橋性樹脂微粒子は、親水性が高く、未反応官能基を比較的多く有するため、本発明の親水化処理剤の成分として使用した場合、他の親水性樹脂と反応することで、親水性が損なわれることがなく、汚染後の親水持続性を大幅に向上させることができる。さらに、上記架橋性樹脂微粒子は、水に対する膨潤率が比較的小さいことから、形成される親水皮膜が水に溶解してしまうことを抑制しうる。
【0023】
[架橋性樹脂微粒子:モノマー(a)]
モノマー(a)は、下記式(1)で表されるモノマーである。
【0024】
【化1】

【0025】
ここで、式中、R1は、水素又はメチル基を表す。R2は、CH2又はC24を表す。式(1)で表されるモノマーは、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド又はN−ヒドロキシエチルメタクリルアミドである。上記式(1)で表されるモノマー(a)を使用した場合において、得られる架橋性樹脂微粒子を含有する親水化処理剤を用いると、親水持続性及び密着性に優れた皮膜を形成することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
[架橋性樹脂微粒子:モノマー(b)]
モノマー(b)は、好ましくは下記式(2)及び/又は(3)で表されるポリオキシアルキレン鎖及び重合性二重結合を有するモノマーである。該モノマー(b)は、架橋性樹脂微粒子に、優れた水分散安定性と親水性とを付与する。
【0027】
モノマー(b)の好ましい一態様である式(2)は以下のように表される。
【0028】
【化2】

【0029】
ここで、式中、R3及びR4は、同一又は異なっていてもよく、水素又はメチル基を表す。R5は、水素、メチル基、SO3H、SO3Na又はSO3NH4を表す。nは、6〜300の整数を表し、下限は30であり、上限は200であることが好ましい。この範囲内にあれば、分散安定性及び親水性が良好であり、架橋性樹脂微粒子を容易に調製することが可能となる。
【0030】
また、モノマー(b)の好ましい一態様である式(3)は以下のように表される。
【0031】
【化3】

【0032】
ここで、式中、R6及びR8は、同一又は異なっていてもよく、水素又はメチル基を表す。R9は、水素、メチル基、SO3H、SO3Na又はSO3NH4を表す。R7は、CH2又は下記化学式;
【0033】
【化4】

を表す。mは、6〜300の整数を表す。分散安定性、及び親水性の観点から、下限は30であることが好ましく、上限は200であることが好ましい。
【0034】
モノマー(b)としては、上記した化合物以外に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、モノマー(b)は、ポリオキシアルキレン鎖を50質量%以上含有することが好ましく、下限80質量%、上限99質量%含有することがより好ましい。ここで、例えば50質量%以上とは、使用されるモノマー(b)の全固形分質量100質量%中に、ポリオキシアルキレン鎖の部分の全固形分質量が50質量%以上であることをいう。上記範囲内であれば、親水皮膜の親水性が低下することがない。
【0036】
[架橋性樹脂微粒子:モノマー(c)]
モノマー(c)は、1分子中に重合性不飽和結合を有し、上記式(1)で表されるモノマー(a)及び上記モノマー(b)と共重合させることができる化合物であれば特に限定されない。モノマー(c)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボン酸基、酢酸ビニル基等のビニルモノマー、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン、不飽和二重結合含有界面活性剤、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ビニルスルホン酸、N−アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2アクリルアミド2メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。また、(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステル等、通常のラジカル重合に用いられる不飽和モノマーも例示される。なかでも、得られる架橋性微粒子の親水性を向上させることができる点から、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
架橋性樹脂微粒子中のモノマー(a)の含有量は、下限30質量%、上限95質量%であることが好ましく、下限30質量%、上限90質量%であることがより好ましく、下限40質量%、上限80質量%がさらに好ましい。架橋性樹脂微粒子中のモノマー(a)の含有量が上記範囲内にあれば、親水化処理剤が形成する親水皮膜の汚染後における親水持続性が低下することがなく、優れた密着性が得られ、また、架橋性樹脂微粒子の製造が容易となる。
架橋性樹脂微粒子中のモノマー(b)の含有量は、下限5質量%、上限60質量%であることが好ましく、下限10質量%、上限40質量%がより好ましい。上記範囲内にあれば、親水化処理剤中での架橋性微粒子の分散性が良好に保つことができ、親水化処理剤が形成する親水皮膜の親水性を優れたものにすることができる。また、該親水皮膜の密着性が良好となるので、汚染後における親水性の持続性が優れたものとなる。
また、架橋性樹脂微粒子中のモノマー(c)の含有量は、下限0質量%、上限50質量%が好ましく、上限30質量%がより好ましい。この範囲内にあれば、得られる架橋性樹脂微粒子の親水性、架橋性が低下することなく、親水化処理剤が形成する親水皮膜の汚染後における親水持続性が低下を防止することができる。
【0038】
本発明に用いられる架橋性樹脂微粒子は、水膨潤率が1.5以下であることが好ましい。水膨潤率を上記範囲内とすることにより、親水皮膜を形成した際に、該親水皮膜が水分に晒されたとしても、皮膜の密着性の低下が抑制される。1.5以下の水膨潤率は、上記式(1)で表されるモノマー(a)、モノマー(b)、及びモノマー(c)を上述の配合比で、反応条件を適宜設定することによって得ることができる。上記水膨潤率は、下限1.0、上限1.3であることがより好ましい。ここで、水膨潤率は、水膨潤率=水溶液中粒子径/溶剤中平均粒子径として算出した値である。また、平均粒子径は、電気泳動光散乱光度計photal ELS−800(大塚電子社製)を用いて測定した値である。
【0039】
[架橋性樹脂微粒子:製造方法]
本発明に用いられる架橋性樹脂微粒子は、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド30〜95質量%、ポリオキシアルキレン鎖及び重合性二重結合を有するモノマー(b)5〜60質量%、ならびにモノマー(c)0〜50質量%を、分散安定剤の不存在下に、使用するモノマーは溶解するが生成する共重合体を実質的に溶解しない水混和性有機溶媒中又は水混和性有機溶媒/水混合溶媒中で重合させることにより製造することができる。
【0040】
上記モノマー(a)、モノマー(b)、及びモノマー(c)からなるモノマー成分の共重合は、通常、ラジカル重合開始剤の存在下に行われる。上記ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、通常使用されているものすべてを使用することができ、ブロック共重合体の重合において用いるものと同様のものを用いることができる。その使用量は、モノマー成分に対して通常0.2〜5質量%の範囲内とすることができる。
【0041】
本発明の架橋性微粒子の製造において、上記モノマー(a)、モノマー(b)及びモノマー(c)からなるモノマー成分の共重合は、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル等)等のエーテル系溶媒、メトキシプロパノール、これらと水との混合溶媒等の溶媒中で行うことができる。
上記架橋性微粒子の製造における重合に際し、分散剤を併用してもよい。上記分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸等の分散樹脂やアニオン、カチオン、ノニオン各種界面活性剤等を挙げることができる。
【0042】
上記共重合における重合温度は、使用する重合開始剤の種類等によって変えることができるが、通常、下限70℃、上限140℃の範囲内の温度が適当である。70℃未満であると、架橋性が不十分となり、140℃を超えると、反応の制御が難しい。上記下限は、90℃であることがより好ましく、上記上限は、120℃であることがより好ましい。反応時間は、通常0.2〜5時間である。0.2時間未満であると、架橋性が不十分となり、5時間を超えても、反応は変わらず、経済的に不利である。重合温度を90℃以上とすることによって、粒子内架橋を進行させることができる。重合温度が70℃未満の場合には通常、重合中に粒子内架橋反応がほとんど進行しないので、通常、重合反応後に、生成重合体を90℃以上の温度で0.2〜5時間加熱して粒子内架橋を進行させる操作を行う。
【0043】
また、重合反応中や重合反応後における重合体粒子の粒子内架橋反応をより速やかに進行させるため、重合反応系に必要に応じて架橋反応触媒を加えてもよい。上記架橋反応触媒としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の強酸触媒;スルホエチルメタクリレート等の重合性二重結合含有強酸触媒等を挙げることができる。
【0044】
このようにして得られる架橋性樹脂微粒子の粒子径としては特に限定されないが、架橋性樹脂微粒子の安定性の点から、一般に0.03〜1μm、好ましくは0.05〜0.6μmの範囲内である。また、粒子径は、電気泳動光散乱光度計photal ELS−800(大塚電子社製)を用いて測定した値である。
【0045】
[ポリアクリル酸]
本発明の親水化処理剤には、ポリアクリル酸が含有される。該ポリアクリル酸は、単独重合体でも共重合体でもよい。共重合体の場合に用いられるその他のモノマーは、アクリル酸と共重合するものであれば特に制限はないが、好ましくはアクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、アルキルエステルである。
また、ポリアクリル酸が共重合体の場合、該共重合体中のポリアクリル酸の含有量は20〜100%(モルベース)が好ましく、80〜100%(モルベース)がより好ましい。上記範囲内にあれば、親水皮膜の親水持続性、及び密着性の低下を抑制することができる。
【0046】
ポリアクリル酸は、酸価200mgKOH/g以上又は水酸基価200mgKOH/g以上であることが好ましい。これにより、形成される親水皮膜の親水持続性、密着性をより向上させることができる。また、該ポリアクリル樹脂の酸価は、下限200mgKOH/g、上限800mgKOH/gが好ましく、水酸基は、下限200mgKOH/g、上限1500mgKOH/gであることが好ましい。
このようなポリアクリル酸としては、公知の方法で製造したものを用いることもできるし、市販品(「ジュリマー(商品名)」:日本純薬株式会社製など)を用いてもよい。
【0047】
[その他の親水性樹脂]
本発明の親水化処理剤は、さらにその他の親水性樹脂を含有することができる。
その他の親水性樹脂は、親水性を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基及び/又は水酸基を含有する不飽和重合性モノマー又は不飽和重合性水性高分子化合物、カルボキシル基及び/又は水酸基を含有する天然性高分子化合物又はその誘導体、水性アルキド樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリブタジエン樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性エポキシ樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性フェノール樹脂、水性アミノ樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアクリル酸(メタクリル酸)変性物(誘導体を含む)等を挙げることができる。
【0048】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を含有する不飽和重合性モノマー又は不飽和重合性水性高分子化合物としては、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂を一部ケン化したポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール及び前記ブロック共重合体以外のポリビニルアルコール誘導体、ならびにポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
上記ブロック共重合体以外のポリビニルアルコール誘導体としては、例えば、ポリビニルアルコール中の水酸基の一部にポリオキシエチレン等のポリオキシエチレン鎖をグラフトさせた構造を有するポリオキシエチレン変性ポリビニルアルコール等が挙げられ、具体的には商品名「エコマティーWO−320RN」(日本合成化学工業社製)が挙げられる。
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を含有する天然性高分子化合物又はその誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)等のセルロース誘導体、メチルセルロース誘導体等を挙げることができる。
上記ポリアクリル酸(メタクリル酸)変性物(誘導体を含む)は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩のほか、アクリレート(アクリル酸エステル)、アルコキシアクリレート等が挙げられる。
【0049】
上記親水性樹脂は、ポリビニルアルコール及び前記ブロック共重合体以外のポリビニルアルコール誘導体、セルロース誘導体、及びポリアクリル変性物(誘導体を含む)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これにより、形成される親水皮膜の親水持続性、密着性をより向上させることができる。
これらの親水性樹脂の酸価は、下限200mgKOH/g、上限800mgKOH/gが好ましい。この範囲内にあれば、親水皮膜の親水持続性、及び密着性の低下を抑制することができる。また、親水性樹脂の水酸基は、同様の理由で、下限200mgKOH/g、上限1500mgKOH/gであることが好ましい。
【0050】
[親水化処理剤]
本発明の親水化処理剤は、上記のようにして得られたメルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂ブロックと重合性モノマー成分が重合してなるポリアニオン樹脂ブロックとからなるブロック共重合体、ポリアクリル樹脂、ならびに必要に応じて配合される架橋性樹脂微粒子、親水性樹脂、及び各種添加剤等を下記の含有量となるように、従来公知の方法に従い配合して得られる。
【0051】
本発明の親水性処理剤中のブロック共重合体の含有量は、樹脂固形分換算で、下限10質量%、上限95質量%であることが好ましく、下限30質量%、上限70質量%がより好ましく、下限40質量%、上限60質量%がさらに好ましく、下限45質量%、上限55質量%が特に好ましい。親水性処理剤中のポリアクリル酸の含有量は、樹脂固形分換算で、5〜90質量%が好ましく、下限10質量%、上限70質量%がより好ましく、下限30質量%、上限40質量%がさらに好ましい。
【0052】
親水化処理剤が、架橋性樹脂微粒子を含有する場合は、その含有量は、樹脂固形分換算で、下限1質量%、上限35質量%がより好ましく、下限5質量、上限20質量%がさらに好ましく、下限10質量%、上限15質量%がよりさらに好ましい。
また、親水化処理剤がその他の親水性樹脂を含有する場合、その含有量は親水化処理剤中、樹脂固形分換算で、5〜30質量%が好ましく、下限10質量%、上限25質量%がより好ましく、下限15質量%、上限25質量%がさらに好ましい。その他の親水性樹脂の含有量が上記範囲内にあれば、親水皮膜の親水持続性の低下、及び親水化処理剤の加工性の低下を抑制することができる。
【0053】
本発明の親水性処理剤は、溶媒中に溶解して使用することができる。該親水化処理剤中の含有量は、樹脂固形分換算で、作業性、経済性等の観点から、1〜50質量%が好ましく、下限5質量%、上限30質量%がより好ましい。
【0054】
溶媒は特に限定されないが、廃液処理等の観点から水を主体とするものが好ましい。また、造膜性を向上させ、より均一で平滑な皮膜を形成するために溶剤を併用してもよい。かかる溶剤としては、塗料に一般的に用いられ、水と均一に混合することができるものであれば特に限定されず、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系の有機溶剤等を挙げることができる。
【0055】
本発明の親水化処理剤は、付加される機能に応じて、その他の成分を必要量添加してもよい。例えば、界面活性剤、コロイダルシリカ、酸化チタン、糖類等の親水添加剤;タンニン酸、イミダゾール類、トリアジン類、トリアゾール類、グアニン類、ヒドラジン類、フェノール樹脂、ジルコニウム化合物、シランカップリング剤等の防錆添加剤;メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート、アミン、フェノール樹脂、シリカ、アルミニウム、ジルコニウム等の架橋剤;抗菌剤、防カビ剤、防腐剤、分散剤、潤滑剤、消臭剤、溶剤、顔料、染料、防バクテリア剤、酸化防止剤、表面粗化材、耐食性付与のインヒビター等を挙げることができる。
【0056】
このようにして得られた本発明の親水化処理剤は、金属材料表面に、塗布することで、該金属材料表面に優れた親水性と長期にわたる親水性の持続性(親水持続性)、優れた耐臭気性、及び優れた貯蔵安定性を付与することができる親水皮膜を形成することができる。本発明の親水化処理剤は、金属材料のうち、アルミニウム又はその合金に対して好ましく用いることができ、さらに、空調機や自動車用エアコン等に用いられるエバポレータや熱交換器の金属フィン、より好ましくはアルミニウムフィンに対して好適に用いられる。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0058】
[ブロック共重合体の調製]
合成例1
撹拌装置および窒素送気管を備えたガラス製反応容器において、片末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、品名:クラレMポリマー M−205)固形分換算5質量部を、窒素雰囲気下70℃でイオン交換水500質量部に溶解させた。これを70℃に維持して、イオン交換水300質量部に20質量部のアクリル酸(AA)及び75質量部の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を溶解させたモノマー水溶液、ならびに重合開始剤として純水50質量部に溶解させた過硫酸アンモニウム水溶液を、それぞれ別口から、90分かけて滴下し、さらに1時間加熱撹拌して重合させ、イオン交換水を加え、固形分10質量%のブロック共重合体を得た。
なお、用いたポリビニルアルコールは、平均重合度は500、ケン化度は88mol%であり、ヨウ素酸化による方法で求められたポリビニルアルコール中のメルカプト基の量は4.1×10-5当量/gであった。
【0059】
合成例2〜8および比較合成例1〜3として、合成例1で用いた原料の各配合量(いずれも固形分換算)を第1表に記載の条件に変更した以外は合成例1と同様に行いブロック共重合体を得た。
なお、比較合成例1では、ポリビニルアルコールとして、メルカプト基を含有しないポリビニルアルコール(商品名「クラレポバール」:株式会社クラレ製)を用いた。
【0060】
[架橋性樹脂微粒子の調製]
メトキシプロパノール200質量部にN−メチロールアクリルアミド70質量部及びメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(繰り返し単位数が100のポリエチレン鎖)30質量部を溶解させたモノマー溶液と、メトキシプロパノール50質量部に「ACVA」(大塚化学社製アゾ系開始剤)1質量部を溶解させた溶液とをそれぞれ別口から、窒素雰囲気下105℃でメトキシプロパノール150質量部に3時間かけて滴下し、更に1時間加熱攪拌して重合させた。得られた分散液において、架橋性微粒子の平均粒子径250nm、架橋性微粒子の水膨潤率1.10、粘度フォードカップNo.4で17秒、固形分濃度20質量%であった。なお、架橋性微粒子の平均粒子径は、photal ELS−800(大塚電子社製電気泳動光散乱光度計)で測定した(以下も同様に測定した)。
【0061】
[ポリアクリル酸の合成]
純水300質量部にアクリル酸80質量部及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチル20質量部を溶解させたモノマー溶液と、純水50質量部に過硫酸アンモニウム1質量部を溶解させた溶液とをそれぞれ別口から、窒素雰囲気下70℃でイオン交換水300質量部に90分かけて滴下し、さらに1時間加熱攪拌して重合させ、イオン交換水を加え、樹脂固形分換算で10質量%のポリアクリル酸を調製した。得られたポリアクリル酸は、固形分酸価620、固形分水酸基価110、重量平均分子量20000〜100000であった。
[その他の親水性樹脂]
その他の親水性樹脂としては、AA/AMPS共重合体(商品名「アロンA6012」、東亜合成株式会社製)、CMC(商品名「サンローズAPP−84」:日本製紙株式会社製)を用いた。
【0062】
実施例1〜16、比較例1〜8
上記合成例等で得られた各成分を、第2表に示した配合比で混合して、第2表に示した樹脂固形分濃度となるようにイオン交換水を加えて、親水化処理剤を得た。得られた親水化処理剤について、下記評価方法による評価を行った。実施例1〜16の評価の結果を第2表−1に、比較例1〜8の評価の結果を第2表−2に示す。
【0063】
(評価方法)
各実施例で得られた親水化処理剤について、以下の方法で評価した。
(1)試験板の作製
150mm四方(厚み:0.13mm)の1000系アルミニウム基材を、サーフクリーナーEC370(日本ペイント社製)1%溶液を用いて70℃で5秒間脱脂し、アルサーフ4130(日本ペイント社製)10%溶液を用いて60℃で5秒間ジルコニウム処理した。次いで、各実施例・比較例の親水化処理剤を、バーコーター#4で塗布し、240℃で20秒間加熱して乾燥硬化させて、試験板を得た。
(2)初期親水性の評価(接触角の測定)
親水化処理物を水道水流水に72時間接触させた後、水滴との接触角を測定した。水接触角は、自動接触角計(型番:DSA20E、KRUSS社製)を用いて測定した。接触角の値が小さいほど親水性が高いといえる。本発明においては上記水接触角の値は50度以下であれば良好であると判断し、30度以下が好ましく、25度以下であることがより好ましいとする。
(3)親水持続性の評価(接触角の測定)
試験板を流水に8時間接触させた後、シャーレに汚染物質としてフタル酸ジオクチル、ヘキサデカノール及びステアリン酸を各5g入れ、このシャーレに入れた試験板を80℃で16時間乾燥させ(汚染物質の一部が揮発する)、この流水接触及び乾燥を1サイクルとした。1、5、及び10サイクル後の接触角を測定し、大気環境中の汚染による親水性の劣化について調べた。水接触角は、自動接触角計(型番:DSA20E、KRUSS社製)を用いて測定し、上記(2)の親水性の評価と同様に親水性を評価した。
(4)イオン交換水中への浸漬による親水持続性の評価
水環境に長期間暴露された後の親水持続性を評価するために、イオン交換水中で親水持続性の評価を行った。液温を20℃に保ったイオン交換水中に試験板を72時間ないし240時間浸漬し、水切りした後、80℃に保持した乾燥機中で15分間乾燥させた。取り出した上記試験板を空冷させた後、直ちに自動接触角計(型番:DSA20E、KRUSS社製)を用いて測定し、上記(2)の親水性の評価と同様に親水性を評価した。
(5)密着性の評価
試験板を、1分間沸水中に浸漬した後、荷重500gをかけて紙で試験板を擦り、1往復を1回とした。試験板の素地が見えるまでの往復回数を下記の基準で評価した。
○ :10回以上
× :10回未満
(6)耐臭気性の評価
イオン交換水2Lに対して、タバコ(品名:マイルドセブン、日本たばこ産業株式会社製)の煙をバブリングさせて(14本/2時間)、煙成分を水に溶解させた。試験板を流水に12時間接触させた後、該試験板に煙成分の溶解した水を噴霧するとともに、タバコの煙を送風しながら、8分間送風乾燥させた。その後、試験板を流水に2時間接触させた後自然乾燥させた。これら一連の工程を1サイクルとし、1、5、及び10サイクル後の試験板について、パネラー5人が下記の基準で評価し、その平均値を耐臭気性の評価とした。
0 :無臭
1 :やっとかすかに臭いを感じる
2 :かすかに臭いを感じる
3 :明らかに臭いを感じる
4 :強い臭いを感じる
5 :非常に強い臭いを感じる
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
第2表−1より、実施例1〜16で得られた親水化処理剤は、初期親水性、親水持続性、密着性、及び耐臭気性の全ての点で優れた結果を示した。一方、比較例1〜8で得られた親水化処理剤は、親水化、親水持続性、及び耐久性の点で、実施例に比べていずれも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、金属材料表面に、優れた初期親水性と親水持続性、及び優れた耐臭気性を付与することができる親水化処理剤を得ることができる。本発明の親水化処理剤は、金属材料表面、特にアルミニウム、及びアルミニウムを用いた熱交換用のフィンの親水化処理に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂ブロックと1分子中に少なくとも1のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーが重合してなるポリアニオン樹脂ブロックとのブロック共重合体、及びポリアクリル酸を含む親水化処理剤。
【請求項2】
ブロック共重合体の含有量が、10〜95質量%(樹脂固形分換算)であり、ポリアクリル酸の含有量が、5〜90質量%(樹脂固形分換算)である請求項1に記載の親水化処理剤。
【請求項3】
ブロック共重合体が、片末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂の存在下、重合性モノマーをラジカル重合させて得られるものであり、ブロック共重合体中のポリアニオン樹脂ブロックの含有量が10〜98質量%(樹脂固形分換算)である請求項1又は2に記載の親水化処理剤。
【請求項4】
さらに架橋性樹脂微粒子を、1〜35質量%(樹脂固形分換算)含有する請求項1〜3のいずれかに記載の親水化処理剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の親水化処理剤で、アルミニウム系金属材料表面を処理して親水化することを特徴とするアルミニウム系金属材料表面の親水化処理方法。

【公開番号】特開2009−126948(P2009−126948A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303553(P2007−303553)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】