説明

親水化処理用ポリマー組成物

【目的】 親水性と耐水溶解性に優れた親水性処理用ポリマー組成物を得る。
【構成】 ポリアクリル酸ポリマーなどの高分子(a)、この高分子(a)と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得る、ポリエチレンオキサイドやポリビニルピロリドンなどの高分子(b)並びに分子中にカルボン酸基及びカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有する高分子(c)からなる群より選択される少なくとも2種の高分子の組み合わせ、または高分子(c)単独〔I〕と、ポリマーコンプレックスの形成を抑制するアンモニアなどの揮発性塩基〔II〕とを主成分として含有することを特徴としており、アルミニウム等の金属表面上に塗布した後、加熱することによって水分とともに揮発性塩基を揮発させ、ポリマーコンプレックスを形成して水不溶性にすることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばアルミニウム製熱交換器フィン材などのアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面を親水化し、水滴の発生を抑制もしくは防止するために用いることのできる親水化処理用ポリマー組成物および親水性ポリマー被膜の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】空調機などの熱交換器のフィンには、冷房時に大気中の水分が凝集し、水滴による目詰まりを生じ易いことが知られている。このような目詰まりの結果、通風抵抗が増大し熱交換器の交換効率が低下したり、あるいは騒音の発生および水滴の飛散による汚染などの問題を生じる。このような問題の発生を防止するため、熱交換器のフィン材の表面を親水化処理し、水濡れ性を向上させる処理方法が従来より、数多く提案されている。
【0003】例えば、特公昭53−48177号公報、特公昭55−1347号公報、特開昭58−126989号公報、および特開昭59−13078号公報などでは、水ガラスなどの珪酸塩を用いて親水化処理する方法が開示されている。
【0004】また有機樹脂を用いた親水化処理方法としては、例えば、特開平3−26381号公報、および特開平1−299877号公報に、ポリビニルアルコールと特定の水溶性ポリマーおよび水溶性架橋剤を組み合わせて用いる方法が開示されている。また特開平2−107678号公報、および特開平2−202967号公報には特定の親水性モノマーよりなる親水性重合体部分と疎水性重合体部分からなるブロック共重合体と金属キレート型架橋剤を組み合わせて用いる方法が開示されている。さらに、特開平1−104667号公報、特開平1−268747号公報、および特開平1−270977号公報などには、ポリアクリルアミド系樹脂を用いる方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公報において提案されているような珪酸塩などの親水性の良好な無機系処理剤では、特有の臭気があり、また被膜の分解により微粉末が飛散するという問題があった。さらに、アルミニウム板を親水化処理した後に熱交換器に加工形成する、いわゆるプレコート処理にこの無機系処理剤を適用した場合、加工時に金型を消耗し易いという問題もあった。
【0006】また、上記公報に提案されているような有機樹脂系処理剤の場合には、上述のような無機系処理剤における臭気や加工性の問題は小さいが、親水性に劣るという問題があった。特に、近年、空調機は小型軽量化が進み、熱交換器のフィン間隔が小さくなっており、より高い親水性を付与できる処理剤が要求されている。上記公報で提案されている有機樹脂系処理剤において、樹脂の分子構造中の極性基を増加させるなどして親水性を向上させようとすると、逆に処理被膜の耐水溶解性が低下し、水に溶解し易くなり、親水性を持続させることができないという問題が生じる。またカビなどの発生を防ぐ目的で抗菌剤等が配合されている場合には、被膜が水に溶解することによってこのような抗菌剤等の効果が保たれなくなるという問題も生じる。
【0007】また、近年、環境や安全性の面から水を溶剤として用いることができる水性の処理剤が望まれている。このような水性処理剤においては、樹脂の親水性と硬化後の被膜の耐水性を両立させることがさらに困難となり、従来提案されている有機樹脂系処理剤ではこのような要求を満足することができなかった。
【0008】本発明の目的は、このような従来の問題点を解消し、臭気やプレコート処理における加工性の問題がなく、かつ親水性に優れるとともに、耐水溶解性に優れた水性の親水化処理用ポリマー組成物及び該ポリマー組成物から形成される親水性ポリマー被膜を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点を解消するため、親水性に優れかつ耐水溶解性に優れた水性の親水化処理用ポリマー組成物に関して鋭意研究を重ねた結果、カルボン酸基を有する高分子と、該高分子と水素結合によって会合して高分子集合体、いわゆるポリマーコンプレックスを形成し得る水溶高分子を用いることにより、親水性に優れかつ耐水溶解性に優れたポリマー被膜を形成し、これを熱交換器のアルミ製フィン等の親水化処理に利用し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明のポリマー組成物は、高分子(a)、(b)及び(c)からなる群より選択される少なくとも2種の高分子の組合せ、または高分子(c)単独〔I〕と、揮発性塩基〔II〕とを含有している。
【0011】高分子(a)は、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しない、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなる高分子である。高分子(a)は水溶性高分子、または塩基で中和することにより水に溶解するようになる高分子である。
【0012】高分子(b)は、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しないが、前記高分子(a)のカルボン酸基と水素結合にて相互作用するプロトン受容性の構造単位を分子中に有し、高分子(a)と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得る水溶性高分子である。
【0013】高分子(c)は、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなり、かつ分子中にカルボン酸基と水素結合にて相互作用するプロトン受容性の構造単位を有する、単独で水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有する高分子である。高分子(c)は塩基で中和することにより水に溶解するようになる。
【0014】このようなポリマー組成物の水溶液をアルミニウムまたはアルミニウム合金等の被処理体表面上に塗布した後、ポリマー組成物を加熱することによって、含有する水分を蒸発させるとともに、ポリマー組成物中の揮発性塩基を揮発させてポリマーコンプレックスを形成し、水不溶性のポリマー被膜とすることができ、これによって被処理体表面上に親水性ポリマー被膜を形成させることができる。
【0015】すなわち、本発明の親水性ポリマー被膜の形成方法は、上記のポリマー組成物の水溶液を前記被処理体表面上に塗布する工程と、被処理体表面に塗布されたポリマー組成物を加熱することによって、ポリマー組成物中の揮発性塩基を揮発させ、上記のポリマーコンプレックスを形成して水不溶性にする工程とを備えることを特徴としている。
【0016】また、本発明の親水性ポリマー被膜は、このようにして形成されたポリマー被膜であり、高分子(a)、高分子(b)及び高分子(c)からなる群より選択される少なくとも2種の高分子の組合せ、または高分子(c)単独を必須成分として含有することを特徴としている。上記少なくとも2種の高分子の組合せとは、具体的に、高分子(a)と高分子(b)との組合せ、高分子(a)と高分子(c)との組合せ、高分子(b)と高分子(c)との組合せ、並びに高分子(a)、高分子(b)及び高分子(c)の3種のすべての高分子の組合せを意味している。
【0017】本発明のポリマー組成物の製造方法の第1の局面は、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しない、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなる高分子(a)のカルボン酸基の少なくとも一部を揮発性塩基〔II〕で中和する工程と、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しないが、前記高分子(a)のカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有し、高分子(a)と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得る高分子(b)を、中和した前記高分子(a)と混合する工程とを備える。
【0018】本発明のポリマー組成物の製造方法の第2の局面は、カルボン酸基を有する不飽和モノマーを揮発性塩基〔II〕で中和する工程と、中和した前記不飽和モノマーを50モル%以上重合させて、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しない高分子(a)を調製する工程と、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しないが、前記高分子(a)のカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有し、高分子(a)と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得る高分子(b)を、前記高分子(a)と混合する工程とを備える。
【0019】本発明のポリマー組成物の製造方法の第3の局面は、カルボン酸基を有する不飽和モノマーの揮発性塩基〔II〕で中和する工程と、中和した前記不飽和モノマー50モル%以上と、カルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有するモノマーとを共重合させて、単独で水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有する高分子(c)を調製する工程とを備える。
【0020】本発明における水素結合によるポリマーコンプレックスとは、カルボン酸基を有する高分子とプロトン受容性の構造を有する高分子とが水素結合によって相互作用し、該相互作用する官能基が高分子鎖に沿って隣接していることによるエントロピー効果によって、安定な集合体を形成するものである。水溶液中でのそれぞれの高分子の分子とそれに水和している水分子との相互作用よりも高分子同士の相互作用の方が強いので、カルボン酸基を有する高分子水溶液とプロトン受容性の構造を有する高分子の水溶液を混合した場合、直ちに両者のコンプレックスが形成されて沈澱を生じる。このような水素結合によるポリマーコンプレックスの例は、例えば、JOURNAL OF POLYMERSCIENCE,Polymer Chemistry Edition, VOL.13,1505−1514(1975)や、化学総説No. 40,186−189(1983),日本化学会編に記載されている。
【0021】本発明における高分子(a)中のカルボン酸基を有する不飽和モノマーとしては、カルボン酸基を有する不飽和モノマーであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、およびマレイン酸などのカルボン酸基およびビニル基を有するモノマーを挙げることができる。このような不飽和モノマーは、1種または2種以上を用い、50モル%以上をモノマー成分として重合させる。カルボン酸基を有する不飽和モノマーの量が50モル%未満の場合には、良好な親水性が得られなかったり、ポリマーコンプレックスが不安定になり耐水溶解性が低下したりする場合があるので望ましくない。
【0022】本発明における高分子(a)は、上述のような不飽和モノマーを50モル%以上用いてラジカル重合させることにより得ることができる。このような重合の際、カルボン酸基を有する不飽和モノマー以外の他の共重合モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびスチレンなど通常のラジカル重合に用いられる不飽和モノマーを用いることができる。重合反応は、水を媒体とした水溶液重合や乳化重合、さらには有機溶剤による溶液重合後溶剤置換を行うなどの、水性重合体を製造するのに用いられる通常の方法によって製造することができる。高分子(a)の分子量は、特に限定されるものではないが、平均分子量で1000〜100000のものが好ましい。
【0023】本発明における高分子(b)は、上述の高分子(a)のカルボン酸基と、水素結合力によって相互作用するプロトン受容性の構造単位を分子鎖に沿って繰り返し有するものであって、高分子(a)とポリマーコンプレックスを形成し得るものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、繰り返し単位が少なくとも5以上のポリオキシエチレン鎖─(CH2 CH2 −O)─n (n≧5)を有する高分子や1分子中にアミド結合を平均5個以上有する高分子を挙げることができる。
【0024】ポリオキシエチレン鎖を有する高分子の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
(b−1)下記一般式
【0025】
【化1】


【0026】で示されるポリエチレングリコール。
(b−2)メタノール、エタノール、プロパノール、フェノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エチルアミン、エチレンジアミン等の分子中に1個以上の活性水素官能基を有する化合物に、活性水素1モル当たり5モル以上のエチレンオキサイドを付加重合させて得られる末端に水酸基を有するポリエーテル化合物。例えば、活性水素官能基含有化合物がグリセリンの場合ならば、下記一般式
【0027】
【化2】


【0028】(l,m,nは同じかまたは異なり、いずれも≧5)で示されるような化合物。
(b−3)前記ポリエチレングリコール(b−1)や末端水素含有ポリエーテル化合物(b−2)の水酸基の一部または全てに、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、安息香酸等の1塩基酸を反応させたエステル化合物。例えば、ポリエチレングリコールの場合ならば、下記一般式
【0029】
【化3】


【0030】(R1 は、R(CO)−なる一価の有機カルボン酸基であり、R2 は水素かR1 に等しい。ここでRは一価の有機残基であって、好ましくはアルキルまたはアリール、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルまたはアリールである。n≧5)で示されるような化合物。
(b−4)下記一般式
【0031】
【化4】


【0032】(R1 は、水素またはメチル基であり、R2 は水素または一価の有機残基であって、好ましくは水素、アルキルまたはアリール、より好ましくは水素または炭素数1〜6のアルキルもしくはアリールである。n≧5)で示されるポリオキシエチレン鎖を有する不飽和モノマーの重合によって、またはこれと共重合可能な、スチレン、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル等の不飽和モノマーとの共重合によって得られるビニルポリマー。
【0033】(b−5)繰り返し単位が5以上のポリエチレングリコールを単独、または必要に応じてエチレングリコールやプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類とともに、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マイレン酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多塩基酸及びその無水物と反応させて得られるポリエステルポリマー。
【0034】(b−6)繰り返し単位が5以上のポリエチレングリコールを単独、または必要に応じてエチレングリコールやプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタロール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類とともに、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート,ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物及びそのイソシアヌレート変性体と反応させて得られるポリウレタンポリマー。
【0035】これらのポリオキシエチレン鎖を有する高分子において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位は、コンプレックス形成に対するエントロピー効果が十分に得られるだけであればよく、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上である。またポリオキシエチレン鎖の含有量は、全体の50重量%以上であることが親水性の点から好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。
【0036】1分子中にアミド結合を平均5個以上有する高分子としては、高分子の側鎖中にアミド結合を有するものが好ましく、このような化合物としては以下のようなものが挙げられる。
(b−7)下記一般式
【0037】
【化5】


【0038】(R1 は、水素またはメチル基であり、R2 及びR3 は、それぞれ独立して水素または一価の有機残基であるか、または環構造を形成する有機鎖の両末端であり、好ましくはそれぞれ独立して水素、アルキル、アリール、アルコキシアルキルまたはヒドロキシアルキルであるか、または炭素及び水素または炭素、水素、及び酸素からなる環構造を形成する有機鎖の両末端であり、より好ましくはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル、アリール、アルコキシアルキルまたは炭素数1〜2のヒドロキシアルキルであるか、または炭素及び水素または炭素、水素及び酸素からなる5〜8員環構造を形成する有機鎖の両末端である。)で示される不飽和アミドモノマー、及び/または下記一般式
【0039】
【化6】


【0040】(R1 及びR2 は、それぞれ独立して水素または一価の有機残基であるか、または環構造を形成する有機鎖の両末端であり、好ましくはそれぞれ独立して水素、アルキル、アリールであるか、または炭素及び水素または炭素、水素、及び酸素からなる環構造を形成する有機鎖の両末端であり、より好ましくはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル、アリールであるか、または炭素及び水素または炭素、水素、及び酸素からなる5〜8員環構造を形成する有機鎖の両末端である。)で示されるNビニルアミドモノマーの重合によって、またはこれと共重合可能な、スチレン,アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル等の不飽和モノマーとの共重合によって得られるビニルポリマー。
【0041】上記一般式(化5)で示される不飽和アミドモノマーの例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、Nメチルアクリルアミド、Nメチルメタクリルアミド、N,Nジメチルアクリルアミド、N,Nジメチルメタクリルアミド、Nエチルアクリルアミド、Nエチルメタクリルアミド、N,Nジエチルアクリルアミド、N,Nジエチルメタクリルアミド、Nイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、Nメチロールアクリルアミド、Nメチロールメタクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0042】また、上記一般式(化6)で示されるNビニルアミドモノマーの例としては、Nビニルホルムアミド、NビニルNメチルホルムアミド、Nビニルアセトアミド、NビニルNメチルアセトアミド、Nビニルピロリドン等が挙げられる。また、Nビニルオキサゾリドンや5メチルNビニルオキサゾリドンのようなNビニルカルバメート化合物や、NビニルサクシンイミドやNビニルフタルイミドのようなNビニルイミド化合物も使用してよい。
(b−8)下記一般式
【0043】
【化7】


【0044】(Rは、水素または一価の有機残基であり、好ましくは水素、アルキルまたはアリールであり、より好ましくは、水素または炭素数1〜6のアルキルもしくはアリールである。)で示されるオキサゾリン化合物の1種または2種以上を、カチオン開環重合させて得られるポリオキサゾリンポリマー。
【0045】上記一般式(化7)で示されるオキサゾリン化合物としては、例えばオキサゾリン、2メチルオキサゾリン、2エチルオキサゾリン等が挙げられる。上記(b−7)のビニルポリマーにおいて、不飽和アミドモノマー及び/またはNビニルアミドモノマーを他の不飽和モノマーと共重合する場合、親水性とコンプレックスの安定性の点から不飽和アミドモノマー及び/またはNビニルアミドモノマーは50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。また、特にNビニルピロドリンを用いることが安定性の点から好ましい。
【0046】本発明における高分子(b)において、その親水性構造が水溶化させるのに十分でない場合は、これを補助する意味で、カルボン酸やスルフォン酸のようなアニオン性の官能基を高分子(b)の分子中に導入してこれを中和してもよい。これらのアニオン性の官能基は、高分子(a)や高分子(c)とのコンプレックス形成を阻害するための揮発性塩基〔II〕の機能や、加熱乾燥時に揮発性塩基〔II〕が揮発した後のコンプレックス形成、及び形成されたコンプレックスの耐水溶解性を損なわない範囲で導入される。具体的には、酸価が10〜100となる範囲が好ましい。
【0047】また、本発明における高分子(b)の分子量は、その構造によって最適な値が異なり、特に限定されるものではないが、数平均分子量で500〜500000のものが好ましい。
【0048】本発明における、単独でポリマーコンプレックス形成能を有する高分子(c)とは、上述の高分子(a)と高分子(b)の機能を共に有するものであって、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなり、かつ分子中にカルボン酸と水素結合にて相互作用し得る繰り返し単位も有するものである。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びマレイン酸等のカルボン酸基とビニル基を有するモノマーの1種または2種以上と、上記一般式(化4)で示されるポリオキシエチレン鎖を有する不飽和モノマーのような、カルボン酸基と水素結合にて相互作用し得る繰り返し単位を有する不飽和モノマーを共重合させて得られるビニルポリマーが挙げられる。このような重合の際、カルボン酸基を有する不飽和モノマーのカルボン酸基と水素結合にて相互作用し得る繰り返し単位を有する不飽和モノマー以外に、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、及びスチレン等通常のラジカル重合に用いられる不飽和モノマーを共重合してもよい。
【0049】重合反応は、水を媒体とした水溶液重合、もしくは有機溶剤による溶液重合後に溶剤置換を行う等の水性重合体を製造するのに用いられる通常の方法によって製造できる。しかしながら、重合途中でカルボン酸基と、それと水素結合にて相互作用し得る繰り返し単位との相互作用によって増粘やゲル化が起こることがあるので、予めカルボン酸基を有する不飽和モノマーに揮発性塩基〔II〕を反応させ中和させたモノマーを重合に用いるか、または、重合反応容器中に揮発性塩基〔II〕を先に仕込み、その後にモノマーを加え、重合反応と中和反応を同時に進行させることが好ましい。
【0050】高分子(c)の分子量は、特に限定されるものではないが、数平均分子量で1000〜100000のものが好ましい。本発明において、高分子(a)、高分子(b)及び高分子(c)の配合割合は、コンプレックス形成のための官能基の割合によって決まる。高分子(a)及び高分子(c)中のカルボン酸基1モルに対して、高分子(b)及び高分子(c)中の、カルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容体の構造体が0.1から10モル、好ましくは0.3〜3モルとなるように配合されることが好ましい。プロトン受容体の構造としては、上記のオキシエチレン構造及びアミド結合が挙げられる。
【0051】本発明における揮発性塩基〔II〕は、水素結合による上記のポリマーコンプレックスの形成を阻害し得るもので、かつ揮発性を有するものであれば、特に限定されるものではない。このようなものとして、例えば、アンモニアや、あるいはトリメチルアミンおよびトリエチルアミンなどのような沸点が150℃以下、より好ましくは100℃以下の有機アミン等が挙げられる。これらの揮発性塩基は、1種または2種以上を混合して用いることができる。また、例えば、テトラメチルアンモウニムヒドロキシドのように加熱によって低沸点アミンに分解するような塩基を用いてもよい。また、本発明の親水化処理用ポリマー組成物を塗布した後に、加熱乾燥して硬化させる際にポリマーコンプレックスの形成を妨げない範囲であれば、塩基の一部を水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムのような不揮発性の塩基で置き換えてもよい。
【0052】本発明において、揮発性塩基〔II〕は、高分子(a)及び高分子(c)のカルボン酸基と中和反応し、これによって上述のポリマーコンプレックスの形成反応が抑制される。
【0053】このような揮発性塩基〔II〕の添加方法は、高分子(c)の場合を除き特に限定されるものではないが、例えば以下に示す方法で、高分子(a)および高分子(b)と配合させることができる。
(1)高分子(a)中のカルボン酸基の一部もしくは全部を中和するように予め高分子(a)と揮発性塩基(c)を配合した後に高分子(b)を添加する。
(2)予めカルボン酸基を有する不飽和モノマーのカルボン酸基に揮発性塩基(c)を反応させ中和させたモノマーを用いてこれを重合し、高分子(a)を調製して、これに高分子(b)を添加する。
(3)高分子(a)と高分子(b)を反応させてポリマーコンプレックスの沈澱を形成させた後、揮発性塩基(c)を適当量添加して水溶化させる。
【0054】高分子(c)の場合には、上述のように、重合反応の際、予めまたは重合反応と同時にカルボン酸基を有する不飽和モノマーと中和反応させることが、重合反応の安定性から好ましい。
【0055】いずれにしても、揮発性塩基〔II〕の添加量は、ポリマーコンプレックスの形成を阻害するのに必要な量であればよい。このような揮発性塩基〔II〕の添加量は、高分子(a)および高分子(b)及び高分子(c)の構造にもよるが、通常、カルボン酸基の総モル数の5%〜10%以上であればよい。ただし、揮発性塩基〔II〕の添加量が少なすぎる場合には、ポリマーコンプレックスの形成が阻害されてもポリマー組成物の粘度が高くなりすぎる場合がある。また添加量が過剰の場合には、ポリマー組成物自体が、あるいは加熱乾燥硬化の際に、臭気の問題などを生じる場合がある。従って、揮発性塩基〔II〕の添加量は、さらに好ましくは、カルボン酸基の総モル数の20%以上であり、特に好ましくは30〜100%である。
【0056】本発明においては、上記の高分子(a)、高分子(b)、高分子(c)、揮発性塩基〔II〕の必須成分以外に他の成分を含有してもよい。例えば、水性塗料において公知の架橋剤を含有してもよく、このようなものとして、水溶性のメラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、および金属架橋剤などを挙げることがでる。これらの架橋剤を含有させることにより、さらに優れた耐水溶解性を付与することができる。また、反応性の官能基を導入して、高分子(a)、高分子(b)、高分子(c)のいずれかを自己架橋型のポリマーとしてもよい。
【0057】さらに、本発明においては、必要に応じて、他の水溶性樹脂や水分散性樹脂、顔料、界面活性剤、および消泡剤などの汎用の任意成分を含有させることができる。
【0058】本発明の親水化処理用ポリマー組成物は、金属表面等の被処理体表面上に塗布した後加熱することによって、親水性でかつ水不溶性のポリマー被膜とすることができる。このようなポリマー組成物の水溶液の塗布は、浸漬、ハケ塗り、スプレー、ロールコーターなど通常の方法によって行うことができる。また塗布後の加熱の条件は、水および揮発性塩基〔II〕が揮発し、ポリマーコンプレックスが形成される加熱条件であればよく、通常は、100〜300℃×数秒〜数十分間の程度である。
【0059】
【作用】本発明では、水素結合によるポリマーコンプレックスの形成を、揮発性塩基〔II〕により抑制し、水溶性ポリマー組成物の形態で被処理体表面の上に塗布した後、含有する水分とともに、揮発性塩基を揮発させ、上述のポリマーコンプレックスを形成し水不溶性の塗膜としている。
【0060】このようにして得られるポリマーコンプレックスの塗膜は、水に不溶のものであり、耐水溶解性に優れるとともに、親水性基を多数有した高分子のコンプレックスであるため、親水性に優れたものである。
【0061】従って、従来の有機樹脂系処理剤では、得ることが困難であった被膜の親水性と耐水溶解性を両立させることができ、親水性と耐水溶解性に優れたポリマー被膜を形成させることができる。
【0062】
【実施例】以下実施例にて本発明を具体的に説明する。なお特に断らない限り、部及び%は重量部及び重量%を示す。
【0063】〔高分子(a)の水溶液(揮発性塩基〔II〕を予め含有)の調製〕
調製例1市販のポリアクリル酸ホモポリマー(日本純薬(株)社製ジュリマーAC−10L)の10%水溶液100部に25%アンモニア水6.6部とイオン交換水93.4部を添加し、ポリアクリル酸の部分アンモニア中和物水溶液を調製した。
【0064】調製例2アクリル酸32部とアクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル8部の混合物と10%過硫酸アンモニウム水溶液20部をそれぞれ別口から、窒素雰囲気下80℃で、イオン交換水100部に2時間かけて滴下し、さらに3時間加熱攪拌して重合させた。これにトリエチルアミン18.0部とイオン交換水622.0部を添加して、アクリル酸共重合体の部分中和物水溶液を調製した。
【0065】調製例3アニオン型界面活性剤(日本乳化剤(株)社製ニューコール271NH)の0.3%イオン交換水溶液15.8部にメタクリル酸10.7部とメタクリル酸メチル5.0部、アクリル酸n−ブチル4.3部、ドデシルメルカプタン0.2部を加えて攪拌し、モノマープレエマルションを調製した。
【0066】このプレエマルションと10%過硫酸アンモニウム水溶液8部をそれぞれ別口から、窒素雰囲気下80℃で、イオン交換水27.4部に3時間かけて滴下し、さらに1時間加熱攪拌して乳化重合させた。これに25%アンモニア水8.5部とイオン交換水320.1部を添加してエマルションを溶解し、メタクリル酸共重合体の中和物水溶液を調製した。
【0067】〔高分子(b)の水溶液の調製〕
調製例4市販の高分子量ポリエチレンオキサイド(住友精化(株)社製PEO−1)5部をイオン交換水95部に溶解し、樹脂水溶液を調製した。
【0068】調製例5繰り返し単位数が10であるメタクリル酸ポリエチレンオキシドエステル(日本乳化剤(株)社製MA100)40部と10%過硫酸アンモニウム水溶液20部をそれぞれ別口から、窒素雰囲気下80℃で、イオン交換水140部に2時間かけて滴下し、さらに3時間加熱攪拌して水溶液重合させた。これにイオン交換水600部を添加して希釈し、固形分濃度を調節した。
【0069】調製例6アジピン酸30.6部とイソフタル酸28部、5−スルホイソフタル酸ナトリウム10.8部、ネオペンチルグリコール21.8部、エチレングリコール13部、平均分子量が1000であるポリエチレングリコール(三洋化成(株)社製PEG−1000)124.8部に、ジブチルスズオキサイド0.12部を添加し、窒素雰囲気下150℃に加熱した。生成する水を除去しながら220℃まで4時間かけて昇温してエステル化反応を進行させ、次に1時間かけて1mmHgまで減圧した後、250℃まで3時間かけて昇温し、ポリオキシエチレン鎖60%を含むポリエステル樹脂を調製した。この樹脂5部をイオン交換水95部に溶解し、樹脂水溶液を調製した。
【0070】調製例7市販のポリビニルピロリドン(BASF(株)社製ルビスコールK−17)5部をイオン交換水95部に溶解し、樹脂水溶液を調製した。
【0071】調製例8ジメチルアクリルアミド30部とアクリル酸ヒドロキシエチル20部にアゾ系開始剤(和光純薬(株)社製V−601)1部を溶解し、窒素雰囲気下80℃で、イソプロパノール49部に2時間かけて滴下し、さらに3時間加熱攪拌して重合させた。これにイオン交換水900部を添加して希釈し、固形分濃度を調節した。
【0072】調製例9Nビニルピロリドン21部とNメチロールアクリルアミド4部、繰り返し単位数が5であるメクタリル酸ポリエチレンオキシドエステル(日本乳化剤(株)社製MA50)5部の混合物と、ジメチルエタノールアミン0.5部で中和して水溶化させたアゾ系開始剤(大塚化学(株)社製ACVA)1部をイオン交換水20部に溶解した溶液をそれぞれ別口から、窒素雰囲気下80℃でイオン交換水50部に3時間かけて滴下し、さらに2時間加熱攪拌して重合させた。これにイオン交換水500部を添加して希釈し、固形分濃度を調節した。
【0073】〔高分子(c)の水溶液(揮発性塩基〔II〕を予め含有)の調製〕
調製例1025%アンモニア水22.7部とイオン交換水37.3部を混合したものに、アクリル酸24部を徐々に添加して中和させ、アクリル酸アンモニウム塩水溶液とした。これに平均の繰り返し単位数が8.4である末端がメトキシ基のアクリル酸ポリエチレンオキサイドエステル(共栄社化学(株)製ライトアクリレート130A)16部を添加してモノマー水溶液を調製した。
【0074】このモノマー水溶液と10%過硫酸アンモニウム水溶液20部をそれぞれ別口から、窒素雰囲気下80℃で、イオン交換水80部に2時間かけて滴下し、さらに3時間加熱攪拌して重合させた。
【0075】これにイオン交換水600部を添加してアクリル酸共重合体の中和物水溶液を調製した。以上の調製例に基づいて調製した各高分子の水溶液と任意成分の水溶性架橋剤を、表1に示す割合で配合して各親水化処理用ポリマー組成物(実施例1〜13,比較例1〜4)を調製し、以下の手順で供試した。
【0076】50mm×100mm×0.1mmのアルミニウム板(JIS A1100)を日本ペイント(株)社製サーフクリーナー332N8にて脱脂し、日本ペイント(株)社製アルサーフ407/47を用いてリン酸クロメート処理した。水洗、乾燥させた処理板の重量Wを測定した後、上記の親水化処理用ポリマー組成物溶液に1分間浸漬し、180℃×10分間加熱して乾燥硬化させた。この試験板の重量Wiを測定し、水滴と接触して30秒後の被膜の水接触角を協和界面化学(株)社製CA−Z形全自動接触角計を用いて測定した後に、11/分の流量でオーバーフローさせた水道水中に室温で10日間浸漬した。室内で1日風乾した後に試験板の重量Woを測定し、水接触角を同様に測定した。被膜の溶出率を、下式によって算出した。
【0077】被膜溶出率(%)=(Wi−Wo)/(Wi−W)×100各親水化処理用ポリマー組成物の配合と、水接触角および被膜溶出率の評価結果を表1に示す。ここで配合の数値は固形分重量部数である。
【0078】
【表1】


【0079】1)水溶性メラミン樹脂:スミマール M−50W(住友化学(株)社製)
2)尿素樹脂:サイメルUFR−65(三井東圧化学(株)社製)
3)接触角:◎=20°以下 ○=20〜30° △=30〜40° ×=40°以上4)被膜溶出率:◎=10%以下 ○=10〜25% △=25〜50% ×=50%以上表1から明らかなように、本発明に従う実施例1〜13においては、長時間の流水浸漬後も小さな水接触角を示し、かつ水に対する被膜溶出率も少ない。一方、比較例では、親水性の高いものは被膜が溶出してしまい、被膜溶出率の低いものは親水性に劣っていることがわかる。従って、本発明に従えば、親水性と耐水溶解性をともに付与することができる。
【0080】
【発明の効果】本発明に従えば、高分子(a)、高分子(b)、及び高分子(c)のうちの少なくとも2種の高分子の組み合わせまたは高分子(c)単独の反応によりポリマーコンプレックスの塗膜を形成している。このポリマーコンプレックスは、水に対し不溶化したものであるので、耐水溶解性に優れるとともに、高分子中に多数の親水性基を含有したものであるので優れた親水性を示す。
【0081】従って、本発明に従えば、親水性に優れ、かつ耐水溶解性に優れた親水化処理用のポリマー被膜を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 〔I〕単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しない、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなる高分子(a)と、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しないが、前記高分子(a)のカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有し、高分子(a)と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得る高分子(b)と、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなり、かつ分子中にカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有する、単独で水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有する高分子(c)とからなる群より選択される少なくとも2種の高分子の組み合わせ、または高分子(c)単独と、〔II〕揮発性塩基とを含有することを特徴とする、親水化処理用ポリマー組成物。
【請求項2】 前記高分子(b)と高分子(c)において、カルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位がオキシエチレン構造及び/またはアミド結合である請求項1に記載の親水化処理用ポリマー組成物。
【請求項3】 前記高分子(a)及び高分子(c)中のカルボン酸基1モルに対し、前記高分子(b)及び高分子(c)中の、オキシエチレン構造及び/またはアミド結合が0.1から10モルの割合となるよう配合され、前記揮発性塩基〔II〕が0.05から10モルの割合で配合される請求項2に記載の親水化処理用ポリマー組成物。
【請求項4】 前記高分子(b)及び高分子(c)が、繰り返し単位が少なくとも5以上のポリオキシエチレン鎖を有する高分子、及び/または1個の分子中に平均5個以上のアミド結合を有する高分子である、請求項2に記載の親水化処理用ポリマー組成物。
【請求項5】 前記1個の分子中に平均5個以上のアミド結合を有する高分子が、Nビニルアミド化合物、Nビニルイミド化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、及び2−オキサゾリン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を重合してなる構造を有する高分子である、請求項4に記載の親水化処理用ポリマー組成物。
【請求項6】 前記繰り返し単位が少なくとも5以上のポリオキシエチレン鎖を有する高分子が、ポリオキシエチレン鎖を50重量%以上有する高分子である、請求項4に記載の親水化処理用ポリマー組成物。
【請求項7】 前記揮発性塩基〔II〕が、アンモニアまたは沸点が150℃以下の有機アミンである、請求項1に記載の親水化処理用ポリマー組成物。
【請求項8】 水性架橋剤〔III 〕を含有する、請求項1に記載の親水化処理用ポリマー組成物。
【請求項9】 被処理体表面を親水化処理するため、被処理体表面上に親水性でかつ水不溶性のポリマー被膜を形成する方法であって、請求項1に記載のポリマー組成物の水溶液を前記被処理体表面に塗布する工程と、前記被処理体表面に塗布された前記ポリマー組成物を加熱することによって、ポリマー組成物中の揮発性塩基を発揮させ、水素結合による前記ポリマーコンプレックスを形成して水不溶性にする工程とを備える、親水性ポリマー被膜の形成方法。
【請求項10】 単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しない、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなる高分子(a)と、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しないが、前記高分子(a)のカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を分子中に有し、高分子(a)と水素結合によるポリマーコンプレックスを成形し得る高分子(b)と、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなり、かつ分子中にカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有する、単独で水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有する高分子(c)とからなる群より選択される少なくとも2種の高分子の組み合わせ、または前記高分子(c)単独を含有することを特徴とする、親水性ポリマー被膜。
【請求項11】 単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しない、カルボン酸基を有する不飽和モノマー50モル%以上を重合してなる高分子(a)のカルボン酸基の少なくとも一部を揮発性塩基〔II〕で中和する工程と、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しないが、前記高分子(a)のカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有し、高分子(a)と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得る高分子(b)を、中和した前記高分子(a)と混合する工程とを備える、親水化処理用ポリマー組成物の製造方法。
【請求項12】 カルボン酸基を有する不飽和モノマーを揮発性塩基〔II〕で中和する工程と、中和した前記不飽和モノマーを50モル%以上重合させて、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しない高分子(a)を調製する工程と、単独では水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有しないが、前記高分子(a)のカルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有し、高分子(a)と水素結合によるポリマーコンプレックスを形成し得る高分子(b)を、前記高分子(a)と混合する工程とを備える、親水化処理用ポリマー組成物の製造方法。
【請求項13】 カルボン酸基を有する不飽和モノマーの揮発性塩基〔II〕で中和する工程と、中和した前記不飽和モノマー50モル%以上と、カルボン酸基と水素結合力で相互作用するプロトン受容性の構造単位を有するモノマーとを共重合させて、単独で水素結合によるポリマーコンプレックス形成能を有する高分子(c)を調製する工程とを備える、親水化処理用ポリマー組成物の製造方法。

【公開番号】特開平6−322292
【公開日】平成6年(1994)11月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−43590
【出願日】平成6年(1994)3月15日
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)