説明

親水性粘着剤を有するパッチ剤

本発明は、皮膚に適用するためのパッチ剤(1)であって:水の存在下で粘着性を獲得する親水性粉末(2);その上に親水性粉末(2)を提供した適用面を有する基体(4)を含むパッチ剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に皮膚に適用するためのデバイスに関する。本発明は、さらに詳細には、水和のために皮膚と相互作用すること、または生物活性物質の経皮吸収を促進することを目的とする皮膚用パッチ剤または経皮デバイスなどのデバイスをより良好に皮膚に付着させることを可能にする製品および方法に関する。さらに、このようなデバイスの製造方法、ならびに、たとえば治療、診断および/または化粧品におけるその使用にも関する。
【0002】
皮膚または経皮吸収は、皮膚を通して、典型的には、外部媒体から血液へと物質を運ぶことに相当する。この吸収は、一般的に、2つの現象、すなわち分子の皮膚層中への浸透と、それに続く、血液またはリンパ液を真皮乳頭層から次いで真皮深層へ循環させることによる再吸収との和であると定義される。浸透段階は、外皮、すなわち角質層、マルピーギ層、真皮および皮膚付属器の構造のそれぞれまたはいくつかを通る、物理的な受動拡散である。浸透は、その最も広い意味において、外皮の構造全体、とりわけ最深層を通る拡散を必ずしも含む必要はないが、好ましくは免疫系または循環系に物質を暴露させるべきである。いったん吸収されると、物質は生物中に広く分布し、次いで代謝された後、または代謝されないで、排出される。経皮吸収後の段階は、通常、他の投与経路に典型的なものと類似している。
【0003】
角質層は、物質の浸透に対して最も有効なバリアを形成する:解剖学上、物質は2つの経路で浸透する。すなわち、1つは、角質層の細胞内空間を経由し、角質細胞自体を通る経路であり、他方は、皮膚付属器を経由するものである。親水性活性成分の角質層中への通過は、これらの化合物が湿潤雰囲気中に含まれている場合に促進されると言われてきた。ワクチンの場合、物質(抗原、免疫原、アジュバントなど)が角質層を通過すると、免疫適格細胞および、特に、抗原提示細胞、たとえば身体の免疫学的反応において重要な役割を果たすランゲルハンス細胞と遭遇することができる。抗原が角質層を初めて通過するのを容易にすることによって、経皮免疫化に多大な効果が付与される。全身性治療のために分子を投与することを目的とするパッチ剤に関して、角質層のバリア効果が一時的に減少するならば、このことによって、高分子量を有する活性成分の経皮投与が可能になり、一般的に、活性成分(タンパク質、ペプチド、化学物質、核酸など)の投与速度が改善されるであろう。
【0004】
活性物質の皮膚移動について、様々な種類のパッチ剤が文献で提案されている。一般的に、これらのパッチ剤は、「粘着性」である。すなわち、パッチ剤を皮膚に接近して保持するために、のりまたは粘着剤、典型的にはアクリル系粘着剤が設けられている。
【0005】
たとえば、文献US2004/137004は、場合により様々な処方およびヒドロゲルの形態のアクリル系粘着剤を含む経皮パッチ剤に関する。文献US2006/002949は、アジュバントを用いない経皮免疫化法に関し、この方法では、粉末形態の抗原を使用することができる。文献US2006/147509は、免疫原を経皮送達するためのデバイスであって、サポニンとステロールと閉塞性ビヒクルとを含む送達系を含むデバイスに関する。文献WO00/43058は、加速粒子の形態の活性成分を投与するための経皮法に関する。この方法は、PowderJect(商標)デバイスを用いた注射、またはスポーツ選手用包帯(athlete's band)によって適切な位置で保持されたパッチ剤のいずれかを使用する。文献WO02/07325は、経皮免疫化用のパッチ剤に関し、文献WO2006/007366は、経皮免疫化用の融合タンパク質に関する。これらの文献では、抗原を粉末形態または液体形態で、単独またはアジュバントと混合してのいずれかで用いることができる。パッチ剤を適切な位置に保持するために粘着剤を使用する場合、これは、樹脂または水性粘着剤のいずれかであってよい。
【0006】
パッチ剤は、皮膚を水和するために使用されることも公知である。この場合、パッチ剤は必ずしも活性物質を含む必要はないが、その適用によって、特に閉塞性形式では、皮膚と接触した水和部分が形成される。前記パッチ剤は主に化粧品部門を対象とする。
【0007】
先行技術のパッチ剤は、特に所望の効果を得るために従来の粘着剤(たとえば、アクリル系)を用いて得られる強力なパッチ剤粘着が必要とされる場合には不都合である。パッチ剤を除去する場合、粘着剤表面と皮膚との分離が実際に刺激をもたらし、痛みを引き起こす可能性がある。また、水性粘着剤の使用は、パッチ剤上の活性成分の劣化につながり、したがって保存寿命が短くなる可能性がある。したがって、パッチ剤を皮膚上に確実に保持しつつ、パッチ剤除去の間の痛みを限定するためには、粘着剤表面の粘着性に関して妥協を見いださなければならない。この粘着性を正確に決定するのは比較的困難である。その理由は、パッチ剤を適用する前の保存時間によって、粘着性が変化し得るからである。
【0008】
本発明は、これらの不都合の1以上を解決するためのものである。本発明は、皮膚に適用するための親水性粘着剤を有するパッチ剤であって、パッチ剤の皮膚への粘着性が、水の存在下で粘着性を獲得する親水性粉末によって保証されることを特徴とするパッチ剤を提供する。本発明のこの特性は、適用に際してデバイスの改善された粘着性、簡便な保存、保存時間に関連した粘着性の損失がないこと、(乾燥形態で維持される)活性成分の安定性、および親水性粉末を粘着剤ゲルに変えるために必要な皮膚の事前水和(自然または人工的)のために、任意の活性物質の皮膚中へのより良好な浸透を保証する。
【0009】
この粉末粘着剤の利点は以下のとおりである:
−ヒドロゲルの使用と比較して:ヒドロゲルを用いるパッチ剤では、実質的な量のヒドロゲルをパッチ剤上に、一般的にはパッチ剤表面全体にわたって配置することが必要とされ、このことは、取り扱いが困難であることを意味し;前記パッチ剤は、従来の経皮パッチ剤のように、たとえば着衣の下で皮膚上につけることができず;さらに、その名のとおり湿っているヒドロゲルを、適用前にそのパック中で保存することは限定され(限定された保存時間);最終的に、ヒドロゲルの使用によって、ヒドロゲル中に含まれる水が活性成分を湿らせるため、場合によっては保存のために要求される乾燥形態で活性成分を提供することができない。
−アクリル系またはシリコン系粘着剤の使用と比較して:皮膚に適用するためのいくつかのデバイスは、デバイス下の皮膚の深部局所的水分過剰を得るために(たとえば、活性成分の通過を促進するために)またはデバイスの(皮膚に面した)内部表面上に配置された乾燥活性成分をより良好に溶解させるために、皮膚を事前に湿らせることを必要とし;この場合、水の存在下で粘着性を獲得する親水性粉末の使用によって、デバイスを湿った皮膚上に直接粘着させることが可能になり、このことは、アクリル系またはシリコン系の粘着剤を用いる場合には可能でない。
【0010】
本発明の特定の目的は、したがって、皮膚に適用するためのパッチ剤であって:
−水の存在下で粘着性を獲得する親水性粉末;および
−その上に親水性粉末を配置した適用面を有するバッキング
を含むパッチ剤に関する。
【0011】
本発明のパッチ剤において、乾燥形態の親水性粉末は、したがって、水の存在下で粘着性を獲得し、その結果、パッチ剤は、有利には事前に湿らせておいた皮膚に適用される場合にしっかりと保持されることが可能になる。
【0012】
親水性粉末を、パッチ剤の適用面の全体または一部上に、粘着を可能にするために十分な面積にわたって配置することができる。1つの変形態様によれば、親水性粉末をバッキングの適用面の周囲上に配置する。
【0013】
もう1つの変形態様によれば、親水性粉末はバッキングの適用面全体にわたって分布するスポットを形成する。
【0014】
さらに別の変形態様によれば、親水性粉末をバッキングの適用面の全表面上に配置する。
【0015】
さらなる変形態様によれば、パッチ剤は、生物活性物質も含む。
【0016】
1つの変形態様によれば、物質は、親水性粉末と混合された粉末である。
【0017】
もう1つの変形態様によれば、物質を、親水性粉末と異なるバッキングの適用面の部分(1つまたは複数)上に配置する。
【0018】
もう1つの変形態様によれば、親水性粉末は水溶性ポリマー鎖を含む。
【0019】
1つの変形態様によれば、親水性粉末は、セルロースガム、エチルセルロース、ヒドロエチルセルロース、N−ビニル−2−ピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、または1−ビニル−2−ピロリドンのポリマーを含む。
【0020】
もう1つの変形態様によれば、パッチ剤は、親水性粉末の上に位置する、水溶液を含むリザーバーをさらに含む。
【0021】
もう1つの変形態様によれば、パッチ剤は、その中にバッキングおよび親水性粉末が含まれる、水蒸気を通さない密封パッケージングを含む。
【0022】
さらなる変形態様によれば、バッキングはコンマ形である。
【0023】
本発明はまた、パッチ剤の製造法であって、水の存在下で粘着性を獲得する親水性粉末を、バッキングの適用面上に塗布することを含む方法にも関する。バッキングは、様々な形状および種類のものであってよく、特に、平坦であるかどうかにかかわらず、ポリマー、プラスチック、金属、織物および/または生体物質、固体または半固体などで作られたものであってよい。
【0024】
1つの変形態様によれば、親水性粉末を適用面の表面全体にわたってまたは一部に塗布する。
【0025】
もう1つの変形態様によれば、親水性粉末を、適用面の周囲、またはバッキングの適用面の表面にわたって分布するスポットの形態で塗布する。
【0026】
もう1つの変形態様によれば、方法は、生物活性物質をバッキングの表面上に塗布する段階をさらに含む。
【0027】
もう1つの変形態様によれば、物質を、親水性粉末との混合物中粉末の形態で塗布する。
【0028】
もう1つの変形態様によれば、物質および親水性粉末を連続して塗布する。
【0029】
1つの変形態様によれば、粉末および/または物質を、静電気タイプの力によってバッキング上に保持する。
【0030】
本発明のさらなる目的は、物質を皮膚へ皮膚適用するための方法であって、前記定義のものなどのパッチ剤を対象の皮膚に適用することを含む方法に関し、適用段階前に、皮膚の前水和段階をおこなうか、またはおこなわない。
【0031】
本発明のさらなる目的は、対象の皮膚を水和する方法であって、前記定義のものなどのパッチ剤を、水和させる皮膚の部分に適用することを含む方法に関する。
【0032】
本発明のさらなる目的は、皮膚へ物質を適用するため、および/または経皮経路により対象、特に哺乳動物、とりわけ人間(例えば、小児または成人)に物質を送達するための、前記定義のものなどのパッチ剤の使用に関する。パッチ剤は、特に、対象の予防接種のため、対象の脱感作のため、または任意の活性物質、特に生物活性および/または抗原性(ポリ)ペプチドなどの送達のために使用することができる。本発明はまた、本発明のパッチ剤を対象の皮膚に適用することを含む対応する方法に関し、この適用段階の前に、皮膚の前水和工程をおこなうか、またはおこなわない。
【0033】
パッチ剤を使用して、任意の活性物質を送達することができる。したがって、本発明の1つの特定の目的は、対象に活性物質を送達する方法であって、(i)前記活性物質を含む本発明のパッチ剤を対象の皮膚に適用し、そして(ii)皮膚中に物質を移動させるための期間、パッチ剤をしっかりと保持することを含む方法にある。物質は、典型的には、ホルモン、サイトカイン、成長因子、栄養素等のポリペプチドタイプのものである。
【0034】
パッチ剤中に含まれる物質は、適合ビヒクルまたは賦形剤中に配合することができ、固体形態(粉末)、液体形態などであり得る。
【0035】
たとえば、パッチ剤を用いて、対象を病原体に対して予防接種することができる。したがって、本発明の1つの特定の目的は、病原体に対して対象を予防接種する方法であって、(i)前記病原体に対して特異的な抗原を含む本発明のパッチ剤を対象の皮膚に適用し、そして(ii)抗原の皮膚中への移動を可能にする期間、パッチ剤をしっかりと保持することを含む方法にある。病原体は、様々な種類のもの(ウイルス、細菌、寄生生物など)であってよく、抗原は、典型的にはポリペプチドまたは脂質タイプのものである。
【0036】
パッチ剤を使用して、アレルゲンに対して対象を脱感作することもできる。したがって、本発明の1つの特定の目的は、アレルゲンに対して対象を脱感作する方法であって、(i)前記アレルゲンに対して特異的な抗原を含む本発明のパッチ剤を対象の皮膚上に適用し、そして(ii)抗原の皮膚中への移動を可能にする期間、パッチ剤をしっかりと保持することを含む方法にある。
【0037】
前記方法において、好ましくはパッチ剤の適用の前に皮膚を水和させる(または湿らせる)。
【0038】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、制限するためではなく指標のために記載された以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のパッチ剤の粘着剤面の上面図である。
【図2】パックの内部に置かれた図1のパッチ剤の垂直断面図である。
【図3】パッチ剤の1つの変形態様の粘着剤面の上面図である。
【図4】パッチ剤のもう1つの変形態様の粘着剤面の上面図である。
【図5】パッチ剤を適用した使用者の顔の側面図である。
【0040】
本発明は、水の存在下で粘着性を獲得する親水性粉末を用いることによって、パッチ剤の固定粘着剤を形成することを提案している。本発明は、任意の種類のパッチ剤、すなわち、対象の皮膚の部分を物質と接触させて配置するため、または水和領域を形成するために、対象の皮膚の部分に適用できる任意のデバイスに適している。デバイスは、典型的には、異なる形状または種類のものであってよいバッキング、特に平坦であるかどうかに関わらず、ポリマー、プラスチック、金属、織物および/または生体物質、固体または半固体などで作られたものであってよいバッキングを含む。
【0041】
様々な種類のデバイスを用いて、本発明を実施することができる。特に、文献EP1367944またはFR2,866,553に記載されているパッチ剤を挙げることができる。このようなパッチ剤は、典型的には、粉末を静電気力によってその表面上に固定できるポリマー材料(たとえば、プラスチック材料のフィルム)を含む。
【0042】
本発明を実施するために使用できるもう1種類のパッチ剤は、例えば、角質層の一部を除去することを目的とする粘着剤フィルム、および経皮経路によってワクチンを浸透させるためのパッチ剤の連続使用について言及している出願EP1356821に記載されているパッチ剤などである。
【0043】
他のパッチ剤系、例えばカップなどを本発明にしたがって使用することができる。
【0044】
図1および2は、本発明のパッチ剤1の第1の実施形態を説明し、この場合、活性物質を使用者の体内に拡散させることを目的とする。パッチ剤1はバッキング4を備える。バッキング4は、親水性粉末2をその上に配置した適用面を有する。物質3を、有利には適用面上に配置する。物質3は、それ自体公知の方法で表皮中に侵入することを目的とする。親水性粉末2は乾燥形態で存在し、水の存在下でその粘着性を獲得する。次いで、親水性粉末2を皮膚に付着するゲルに変換し、かくしてパッチ剤1の粘着を可能にする。
【0045】
したがって、適用時のパッチ剤1の粘着性は、保存時間の長さによって減少しない。さらに、水の存在下での粘着性は、相対的に減少し、パッチ剤1の痛みのない除去を容易にする。
【0046】
湿った媒体と接触した場合に粘着剤に変わり、パッチ剤1の粘着と、皮膚上へしっかりと固定することとを可能にする任意の親水性粉末2を用いることができる。親水性粉末2は、好ましくは生体適合性かつ不活性な粉末であり、したがって物質3の活性成分と相互作用せず、また有害反応も引き起こさない。
【0047】
親水性粉末2は、有利には親水コロイドまたはヒドロゲルである。すなわち、水溶性ポリマー鎖を含む。親水性粉末は、特に以下の化合物を含むことができる:セルロースガム(特に、商標名Blanoseで流通しているガム)、エチルセルロース(特に、商標名Ethocelで流通している)、ヒドロエチルセルロース(特に、商標名Natrosolで流通している)、N−ビニル−2−ピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー(特に、商標名Plasdone S-630で流通している)および/または1−ビニル−2−ピロリドンのポリマー(特に、商標名Plasdone K-29/32で流通している)。
【0048】
水の添加は、自然(発汗、適用時の使用者の汗)または人工的(たとえば、有利には80%を超える水を含むスプレー、洗浄フランネル(wash flannel)、綿、水和ゲルまたはクリームによって外部から加えられる水)のいずれかに関わらず、様々な手段によって行うことができる。リザーバー(図示せず)を有し、親水性粉末2の上に位置するパッチ剤1を提供することによっても、水を人工的に添加することができる。リザーバーは、その結果、水溶液を含む。リザーバーは親水性粉末2を含浸させるためのティアオフエンベロープ(tear-off envelope)の形態であってよい。
【0049】
図1に示す例において、親水性粉末2は、バッキング4の周囲と接合している。親水性粉末2は、バッキング4の適用面の周囲上に配置され、物質3でコーティングされた表面を取り囲んでいる。バッキング4の適用面の周囲を、したがってバッキングを皮膚に固定するために使用し、一方、適用面の中心部分は、物質3を使用者の皮膚に接して配置するために使用される。
【0050】
図2に示すように、パッチ剤1は有利には密封されたパッケージング5を備え、このパッケージング内にバッキング4が配置されている。このパッケージング5を使用して、パッチ剤1の使用より前に親水性粉末2を乾燥状態に保つ。パッケージングはまた、物質3を保護する。パッケージング5は、開封するために、破るのを容易にするために弱くなった部分を有し得る。
【0051】
図3は、本発明のパッチ剤のもう1つの実施形態を示す。この実施形態によれば、パッチ剤1は、バッキング4の適用面上に分布した親水性粉末のスポット6を含む。スポットは、物質3でコーティングされた表面にわたって分布している。したがって、物質3は常にスポット6付近にあり、このことによって、使用者の皮膚に対して正しい位置にあることが保証される。
【0052】
図4は、本発明のパッチ剤1のもう1つの実施形態を示す。この例において、バッキング4の適用面は、親水性粉末と物質との混合物を含む粉末7でコーティングする。したがって、粉末7の皮膚への均一な粘着が保証され、これによって、物質の皮膚への均一な適用が保証される。加えて、粘着表面はこれによって最適化され、このことによって、パッチ剤1をしっかりと良好に保持することが保証され、同時にパッチ剤1を剥離する際に、力の局部的な集中が回避される。
【0053】
これらの様々な実施形態において、静電的特性を有するバッキング4の適用面を提供することが可能である。この場合、親水性粉末2(および場合によって粉末形態の物質3)を、特許EP1367944に記載されているように、静電気力によって適用面と接触した状態に保つことができる。親水性粉末2適用の他の実施形態も考慮することができる。
【0054】
図1〜4に示すバッキング4は平坦であるが、他の形状、特に、チャンバーを形成するくぼみを有するバッキング、リザーバーパッチ剤、硬質もしくは半硬質バッキング、平坦、または非平坦、および材料の種類が異なるものも想定することができる。
【0055】
図1〜4に示す実施形態において、パッチ剤はおよそコンマ形をしている。図5に示すように、このような形状のパッチ剤1は、使用者の顔8の頬と鼻の間に適用するのに特に適している。
【0056】
図示されていない1つの変形態様によれば、パッチ剤は、バッキングの適用面の上方、したがって粉末(2)および/または物質3の上方にあるにピールオフ粘着フィルムを含んでもよい。このピールオフフィルムによって、角質層の部分を除去するための皮膚剥脱が可能になる。フィルムをはがすと、適用された物質の体内への浸透が改善される。
【0057】
パッチ剤1を、対象の予防接種、対象の脱感作のため、または特に、活性物質、たとえば生物活性および/または抗原性(ポリ)ペプチドなどを送達するために使用することができる。パッチ剤は、したがって対象を任意の病原体に対して予防接種するめに使用できる。したがって、本発明の一つの特定の目的は、病原体に対して対象を予防接種する方法であって、(i)前記病原体に対して特異的な抗原を含む本発明のパッチ剤を対象の皮膚に適用し、(ii)皮膚中への抗原の移動を可能にする期間、パッチ剤をしっかりと保持することを含む方法にある。場合によって、剥脱段階が、パッチ剤をしっかりと保持する段階の前にあってもよい。病原体は様々な種類のもの(ウイルス、細菌、寄生生物など)であってよく、抗原は典型的には、ポリペプチドまたは脂質タイプのものである。パッチ剤は、アレルゲンに対して対象を脱感作するために使用することもできる。パッチ剤は、活性物質を送達するためにも使用できる。物質は、典型的にはポリペプチドタイプのもの、たとえば、ホルモン、サイトカイン、成長因子、栄養素などである。
【0058】
説明した実施形態は、活性物質を適用するためのパッチ剤を詳述するが、本発明は、このような物質のないパッチ剤にも適用される。したがって、本発明のパッチ剤は、特に化粧用途に関して、使用者の皮膚を水和するために、単独で親水性粉末によりコーティングしてもよい。前記パッチ剤の形式は、したがって有利には閉塞性である。閉塞性パッチ剤は、たとえば、親水性粉末をバッキングの適用面の周囲上に配置することによって得られる。図3に示す実施形態におけるように、親水性粉末は、バッキングの適用面上にわたって分布するスポットを形成することもできる。図4に示す実施形態におけるように、親水性粉末を、バッキングの表面全体にわたって配置することもできる。前記パッチ剤は、その中にバッキングおよび親水性粉末が含まれる、密封されたパックを備えてもよい。
【0059】
本発明のパッチ剤の製造法は、典型的には、バッキングの適用面全体または一部の上に親水性粉末を適用する段階を含む。1つの特定の実施形態において、方法は、生物活性物質をパッチ剤バッキングの適用面上に塗布することも含む。それ自体公知の任意の粉末化法を使用することができる。親水性粉末をバッキングの周囲上に配置して、たとえば、活性物質でコーティングされた表面を取り囲むようにすることができる。さらに、親水性粉末をバッキングに適用して、バッキングの適用面上にわたって分布するスポットを形成することができる。これらのスポットは、活性物質でコーティングされた表面上に形成することができる。活性物質を有し、かつ親水性粉末を有する部分は、異なるパターンを形成する粉末化デバイスによって、または異なるモデルを使用することによって、規定することができる。
【0060】
親水性粉末と活性物質を含む粉末との混合物を、バッキングの適用面上に塗布することも可能である。粉末混合物の適用は、平坦なバッキングを有するパッチ剤に特に適している。
【0061】
親水性粉末および活性物質を、独立した連続段階中にバッキングの適用面に塗布することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に適用するためのパッチ剤(1)であって:
−水の存在下で粘着性を獲得する親水性粉末(2);
−その上に親水性粉末(2)を配置した適用面を有するバッキング(4)
を含む、パッチ剤。
【請求項2】
親水性粉末(2)を、バッキング(4)の適用面の周囲上に配置した、請求項1記載のパッチ剤。
【請求項3】
親水性粉末が、バッキング(4)の適用面にわたって分布するスポット(6)を形成する、請求項1または2記載のパッチ剤。
【請求項4】
親水性粉末(2)を、バッキング(4)の適用面の全表面上に配置した、請求項1記載のパッチ剤。
【請求項5】
前記パッチ剤が、生物活性物質(3)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のパッチ剤。
【請求項6】
物質(3)が、親水性粉末(2)と混合された粉末(7)である、請求項5記載のパッチ剤。
【請求項7】
物質(3)を、親水性粉末(2)から分離して、バッキングの適用面の1以上の部分上に配置した、請求項5記載のパッチ剤。
【請求項8】
バッキング(4)がコンマ形をしている、請求項1〜7のいずれか1項記載のパッチ剤。
【請求項9】
親水性粉末(2)が水溶性ポリマー鎖を含む、請求項1〜8のいずれか1項記載のパッチ剤。
【請求項10】
親水性粉末(2)が、セルロースガム、エチルセルロース、ヒドロエチルセルロース、N−ビニル−2−ピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、および/または1−ビニル−2−ピロリドンのポリマーを含む、請求項9記載のパッチ剤。
【請求項11】
親水性粉末上に位置する水溶液を含むリザーバーをさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項記載のパッチ剤。
【請求項12】
バッキング(4)および親水性粉末(2)がその中に含まれる、水蒸気を通さない密封パッケージング(5)を含む、請求項1〜11のいずれか1項記載のパッチ剤。
【請求項13】
パッチ剤(1)の製造法であって、水の存在下で粘着性を獲得する親水性粉末を、パッチ剤バッキングの適用面の全体または一部上に塗布することを含む、方法。
【請求項14】
親水性粉末を適用面の周囲上またはバッキングの適用面にわたって分布するスポットの形態で塗布する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
生物活性物質をバッキングの表面上に塗布する段階をさらに含む、請求項13〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
物質を親水性粉末との混合物中の粉末の形態で塗布する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
物質および親水性粉末を連続して塗布する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
粉末および/または物質を、静電気タイプの力によってバッキング上に保持する、請求項13〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
予防接種のため、脱感作のため、もしくは活性物質を対象に送達するため、または皮膚を水和するための生成物を調製するための、請求項1〜12のいずれか1項記載のパッチ剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−540603(P2010−540603A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527503(P2010−527503)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051749
【国際公開番号】WO2009/050403
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(503330303)デベヴェ・テクノロジーズ (11)
【Fターム(参考)】