説明

親綱展開具とそれを用いた作業方法

【課題】安全かつ容易に親綱を屋根に展開できる親綱展開具の提供。
【解決手段】親綱展開具2は、筒体4及び呼び線6を備えている。筒体4は、その手元部から先端部まで連通する案内孔と、手元部に形成され案内孔に貫通する入口孔と、筒体の先端部に形成され案内孔に貫通する出口孔とを備えている。呼び線6の先端が入口孔から案内孔に通されて、案内孔から出口孔を通されて筒体の外に出ている。筒体4は、直径の異なる複数の筒状の節(10aから10m)を有している。内側の節がその径方向外側に隣合う節の空間から引き出されることにより筒体4が伸ばされ、内側の節がその径方向外側に隣合う節の空間に押し込まれることにより筒体4が縮められる。呼び線6の先端部に着脱可能にボール8が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の屋根に親綱を展開する親綱展開具と、この親綱展開具を用いた親綱展開方法と、この親綱展開具を用いた作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の屋根上の作業者が転落することを防止のため、安全装置が設置される。この安全装置の一つとして、屋根の上に親綱が展開配置される方法がある。この親綱に作業者の命綱が連結される。作業者は、命綱が連結された状態で、作業を行う。これにより、作業者が転落することが防止される。この安全装置では、作業者が親綱を屋根の上に展開する必要がある。この親綱を展開する作業では、転落を防止する措置が十分にとれない。
【0003】
特開2005−325562公報では、伸縮可能な操作棒を用いて、親綱を展開する方法が提案されている。この操作棒が梯子に固定されている。この操作棒の先端が屋根の棟を超えた状態で、操作棒の先端から重錘を降下させてロープが屋根上に展開されている。このロープに親綱が連結される。ロープが引き戻される。これにより、親綱が屋根上に展開される。この方法は、親綱の展開がより安全に行い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−325562公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2005−325562公報の方法では、梯子に登った状態でロープが展開されている。作業者は、梯子から転落する恐れがある。地上からロープを展開するには、このロープの先端の重錘を投げ上げる必要がある。投げ上げる方法では、確実にロープを展開することは困難である。送られるロープが、樋などに引っ掛かってしまう恐れがある。重錘が屋根材を損傷する恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、安全に親綱を屋根に展開できる親綱展開具と、この親綱展開具による親綱展開方法の提供にある。更に、本発明の目的は、この親綱展開具を用いた作業方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る親綱展開具は、筒体及び呼び線を備えている。この筒体は、筒体の手元部から先端部まで連通する案内孔と、手元部に形成され案内孔に貫通する入口孔と、先端部に形成され案内孔に貫通する出口孔とを備えている。この呼び線は、入口孔から案内孔に通されている。呼び線の先端部は、案内孔から出口孔を通されて筒体の外に出ている。
【0008】
好ましくは、この親綱展開具の筒体は、直径の異なる複数の筒状の節を有している。この複数の節は、径方向に重なり合っている。節は、その径方向外側に隣合う節の空間に通されている。この筒体は、内側の節がその径方向外側に隣合う節の空間から引き出されることにより筒体が伸ばされ、内側の節がその径方向外側に隣合う節の空間に押し込まれることにより筒体が縮められるように構成されている。筒体が伸ばされて、複数の節の連通する空間が案内孔を形成する。
【0009】
好ましくは、この親綱展開具では、上記呼び線の先端部に着脱可能に頭部が取り付けられている。
【0010】
本発明に係る親綱展開方法は、
筒体の手元部から先端部まで連通する案内孔に手元部から先端部に向かって呼び線が送り込まれるステップと、
この筒体が先端部を家屋の屋根の一方側の上方に位置するように配置されるステップと、
この呼び線が更に手元部から先端部に向かって送りこまれて屋根の一方側から他方側に延ばされて配置されるステップと、
この呼び線の先端部に親綱の先端部が連結されるステップと、
この呼び線が手元部で引き戻されて親綱の先端部が屋根の他方側から一方側に向かって送られるステップと、
この呼び線の先端部が屋根の一方側から下方に下ろされることで親綱が家屋の屋根の他方側から一方側まで延ばされて配置されるステップと、
親綱の両端が固定されるステップと
を備える。
【0011】
本発明にかかる作業方法は、
筒体の手元部から先端部まで連通する案内孔に手元部から先端部に向かって呼び線が送り込まれるステップと、
この筒体が先端部を家屋の屋根の一方側の上方に位置するように配置されるステップと、
この呼び線が更に手元部から先端部に向かって送りこまれて屋根の一方側から他方側に延ばされて配置されるステップと、
この呼び線の先端部に親綱の先端部が連結されるステップと、
この呼び線が手元部で引き戻されて親綱の先端部が屋根の他方側から一方側に向かって送られるステップと、
この呼び線の先端部が屋根の一方側から下方に下ろされることで親綱が屋根の他方側から一方側まで延ばされて配置されるステップと、
親綱の両端が固定されるステップと、
この親綱が移動用ロープを介して作業者に連結されるステップと、
この作業者が移動用ロープに連結された状態で作業を行うステップと
を備えている。
この移動用ロープは、スライドロック機構を備えている。移動用ロープは、スライドロック機構により親綱に対してスライド可能な状態とスライドしない状態とを切り替え可能に構成されている。
【0012】
好ましくは、この作業方法では、上記移動用ロープがグリップを備えている。このグリップは、本体、爪及び弾性体を備えている。この弾性体の付勢力により、本体と爪とが親綱を挟み込んでいる。この爪が弾性体の付勢力に抗して回動可能に構成されており、
この爪が回動されて本体と爪との親綱の挟み込みを解除して、親綱に沿ってスライド可能に構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る親綱展開具を用いることで、地上から容易に呼び線を展開できる。この親綱展開具を用いることで、より安全に家屋の屋根上の作業が可能となる。本発明に係る親綱展開方法及び屋根上の作業方法は、家屋の屋根上の作業の安全がより確保されうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る親綱展開具が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の矢印IIで示された部分の一部断面が示された説明図である。
【図3】図3は、図1の矢印IIIで示された部分の一部断面が示された説明図である。
【図4】図4は、図1の親綱展開具の使用状態が示された説明図である。
【図5】図5は、図1の親綱展開具の他の使用状態が示された説明図である。
【図6】図6は、図1の親綱展開具の更に他の使用状態が示された説明図である。
【図7】図7は、図6の親綱の使用状態が示された説明図である。
【図8】図8は、図7の使用状態で親綱に連結されたグリップが示された説明図である。
【図9】図9は、本発明に係る親綱展開方法で展開された親綱の他の使用状態が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1に示された親綱展開具2は、筒体4と、呼び線6と、頭部としてのボール8とを備えている。筒体4は、12本の節を備えている。筒体4は、節10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j、10k及び10mを備えている。節10aは、手元側に位置する。節10aから節10mに向かって順に先端側に位置している。
【0017】
図1及び図2に示される節10aの形状は、筒状である。節10aは、その長手方向に延びる空間12aが形成されている。この空間12aは、節10aの長手方向に貫通している。節10aの太さは、元端側から先端側に向かって細くなっている。節10aの太さと同様に空間の外径も元端側から先端側に向かって細くなっている。
【0018】
図1に示されるように、節10aの元端側端面の空間12aの開口は、栓14で塞がれている。図2に示されように、節10aの筒状の壁16には入口孔18が形成されている。この入口孔18は、節10aの壁16を空間12aに貫通している。この入口孔18は、節10aの元端側から先端側に向かって径方向外側から内側に傾斜して貫通している。節10aの先端部には、キャップ止め20が取り付けられている。このキャップ止め20には、孔22が形成されている。
【0019】
節10bの形状は、節10aと同様に筒状である。節10bは、その長手方向に延びる空間12bを備えている。この空間12bは、節10bの長手方向に貫通している。節10bの太さは、元端側から先端側に向かって細くなっている。節10bの太さと同様に空間12bの外径も元端側から先端側に向かって細くなっている。節10cから節10mの形状は、その太さ及び空間の外形が異なるが、節10bと同様の形状である。
【0020】
図3に示されるように、節10mの空間12mは、節10mの先端で開口している。この先端の開口は、出口孔24と称する。
【0021】
この筒体4では、節10aの空間12aに節10bが挿入されている。節10bは、節10aに対してスライド可能に挿入されている。節10bの元端の太さは、節10aの先端の空間12aの外径より大きい。節10bの元端は節10aの先端の空間12aから抜けないようにされている。同様にして、節10bに節10cがスライド可能に挿入されている。この様にして、内側の節はその径方向外側に隣り合う節の空間に通されている。
【0022】
図1に示される呼び線6は、電線、電話線、光ケーブル等を保護管内に引き込み配線する際に用いられる引き込み用線材である。図1及び図3に示されるように、この呼び線6は、呼び線本体26、収納ケース28及び先端具30を備えている。呼び線本体26の材料としては、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が例示される。使用しないときに、この呼び線本体26は、収納ケース28に収納されている。使用するときに、呼び線本体26が収納ケース28から引き出される。呼び線本体26の先端には、先端具30が連結されている。図示されないが、この先端具30には雄ねじが形成されている。
【0023】
図3に示されるように、ボール8は、本体32、取付具34及び環36を備えている。本体32としては、ポリ塩化ビニル(PVC)製の空気入りボール、ゴム製ボールなどが例示される。このボール8は、頭部の一例である。頭部の外表面は、家屋42の突起物に引っ掛かり難い滑らかな曲面であることが好ましい。頭部の形状は、特に球体が好ましい。
【0024】
取付具34は、本体32に固定されている。この取付具34には、雌ねじが形成されている。取付具34には、環36が取り付けられている。この取付具34の雌ねじに、呼び線6の先端具30の雄ねじがねじ込まれて締結されている。このボール8は、呼び線6に着脱可能に取り付けられている。このボール8が呼び線6に着脱可能に取り付けられていれば良く、ねじ締結以外の取付方法が用いられても良い。例えば、取付具34と先端具30とが面ファスナーを構成していて、ボール8が呼び線6に取り付けられても良い。
【0025】
図4(a)は、筒体4の全長が縮められた状態が示されている。節10aの空間12aに節10bが挿入されている。節10bの空間12bに節10cが挿入されている。同様にして、節10cから節10mまでが順に挿入されている。節10aには、節10bから節10mが収納されている。キャップ止め20には、キャップ38が取り付けられている。キャップ38により、孔22は塞がれている。この筒体4は、持ち運びが容易にされている。
【0026】
図4(a)の状態から、キャップ38が外される。孔22から、節10mから節10bまでの、内側の節が引き出される。節10bの元端は節10aの先端の空間12aから抜けないようにされている。節10bの元端部は、節10aの先端部に重なり合っている。同様にして、節10bから節10mまで、径方向内側の節の元端部が、径方向外側の節の先端部に重なり合っている。この様にして、筒体4は、その全長を伸ばされる。節10aから節10mは、内側の節が径方向外側に隣り合う節から抜け止めされていればよく、元端側から先端側まで太さが一定であっても良い。
【0027】
図4(b)には、筒体4が伸ばされた状態の一部が示されている。図示されないが、この伸ばされた筒体4は、節10aの空間12aから節10mの空間12mまでを連通する空間が形成されている。この複数の節10aから10mを連通する空間が案内孔40である。図2には、この案内孔40の手元側の一部が示されている。この筒体4では、節10aが手元部である。図3には、この案内孔40の先端側の一部が示されている。この筒体4では、節10mが先端部である。
【0028】
図4(b)には、入口孔18から案内孔40に挿入される前の呼び線6が示されている。この呼び線6の先端具30が入口孔18から案内孔40に挿入される。この呼び線6が、案内孔40に押し込まれていく。呼び線6の先端具30は、節10aから挿入されて、節10mに向かって押し込まれていく。この先端具30は、節10mの出口孔24から押し出される。このようにして、呼び線6は、筒体4に通される。
【0029】
図4(c)は、呼び線6が筒体4を通された状態が示されている。この図4(b)から図4(c)までは、筒体4の案内孔40に、筒体4の手元部から先端部に向かって呼び線6が送り込まれるステップである。
【0030】
更にこの実施形態では、先端具30の雄ねじが、ボール8の取付具34の雌ねじにねじ込まれる。呼び線6にボール8が取り付けられる。図4(d)は、呼び線6にボール8が取り付けられた状態が示されている。
【0031】
図5(a)は、図4(d)に示された筒体4が家屋42に立て掛けられた状態が示されている。この図5(a)は、筒体4が、節10mを屋根44の一方側44aの上方に位置するように配置されるステップである。
【0032】
図5(a)の状態で、呼び線6は、更に入口孔18から案内孔40に押し込まれる。呼び線6の先端具30及びボール8は、屋根44の一方側44aから他方側44bに向かって延びていく。呼び線6の筒体4から突き出された部分は、その部分の自重と、ボール8の重さとにより、徐々に湾曲させられる。この湾曲により、先端具30及びボール8が下向きに下がっていく。
【0033】
図5(b)は、呼び線6が一方側44aから他方側44bに延ばされてた状態が示されている。図5(a)の状態から図5(b)の状態に至るまでが、呼び線6が更に筒体4の手元部から先端部に向かって送りこまれて屋根44の一方側44aから他方側44bに延ばされて配置されるステップである。
【0034】
図5(b)の状態から、更に、呼び線6は、入口孔18から案内孔40に押し込まれる。呼び線6の筒体4から突き出された部分の湾曲により、先端具30及びボール8は、地面に向かって下がっていく。図5(c)には、この様にして、先端具30及びボール8が地面に近付いた状態が示されている。
【0035】
ボール8の環36に、親綱46の先端部が結び付けられる。図5(d)には、呼び線6の先端具30が、ボール8を介して親綱46の先端部に連結された状態が示されている。図5(c)の状態から図5(d)の状態に至るまでが、呼び線6に親綱46が連結されるステップである。
【0036】
図5(d)の状態から、呼び線6は、入口孔18から引き戻される。図6(a)には、呼び線6の先端具30及びボール8が、屋根44の上方に引き戻された状態が示されている。図6(b)には、この先端具30及びボール8が、屋根44の他方側44bから一方側44aに向かって引き戻された状態が示されている。親綱46の先端部は、他方側44bから一方側44aに向かって送られている。図5(d)の状態から図6(b)の状態に至るまでが、呼び線6が手元部で引き戻されて親綱46の先端部が屋根44の他方側44bから一方側44bに向かって送られるステップである。
【0037】
図6(b)の状態から、筒体4が地面に置かれる。図6(c)には、筒体4が地面に置かれた状態が示されている。呼び線6の先端具30及びボール8が下方に下ろされている。図6(b)の状態から図6(c)の状態から至るまでが、呼び線6の先端具30が屋根44の一方側44aから下方に下ろされることで親綱46が家屋42の屋根44の他方側44bから一方側44aまで延ばされて配置されるステップである。なお、筒体4の全長が縮められて、呼び線6の先端具30が屋根44の一方側44aから下方に下ろされてもよい。
【0038】
この図6(c)の状態で、親綱46の先端部がボール8の環36から外される。親綱46の先端部が重錘としての水袋48に連結される。この水袋48は、その袋の中に水を入れられた重錘である。同様にして、親綱46の後端部が水袋50に連結される。図6(d)は、この様にして、親綱46が屋根44の上に展開された状態が示されている。図6(c)の状態から図6(d)の状態に至るまでが、親綱46の両端が固定されるステップである。
【0039】
図7は、この親綱46を使用した作業者50の作業状態が示されている。図6(d)に示された親綱46の近傍で、梯子52が家屋42に立て掛けられる。作業者50は、安全帯54を装着している。
【0040】
この移動用ロープ56は、連結具57、ロープ本体58、巻取器60及びグリップ62を備えている。ロープ本体58の一端に連結具57が連結されている。ロープ本体58の他端が巻取器60に連結されている。巻取器60は、ロープ本体58の他端部を、巻取り繰り出し可能に巻き取っている。
【0041】
この巻取器60がグリップ62に連結されている。このグリップ62は、親綱46に取り付けられている。この様にして、この安全帯54と、移動用ロープ56と、親綱46とが連結されている。
【0042】
巻取器60は、繰り出しを阻止する手動ロック機構を備えている。この手動ロック機構を作用させることで、ロープ本体58の繰り出しが阻止されてる。この巻取器60は、手動ロック機構を解除することで、ロープ本体58の繰り出しが可能になっている。
【0043】
この手動ロック機構が解除された状態にあっても、急激にロープ本体58が繰り出されると、繰り出しを阻止する自動ロック機構が備えられている。この自動ロック機構は、一般に周知であり、ここではその詳細な説明が省略される。この自動ロック機構としては、ロープ本体58を巻き取っているドラムの回転の遠心力を利用して、巻取器60の本体とドラムとの間でロック爪を係合させる機構が例示される。また、移動用ロープ56は、巻取器60を備えなくてもよい。移動用ロープ56は、連結具57、ロープ本体58及びグリップ62から構成されてもよい。
【0044】
図8に示されるように、グリップ62は、本体64、第一爪66、第二爪68、握り桿70、連結環72及び弾性体としてのバネ74を備えている。バネ74の付勢力により、本体64と第一爪66及び第二爪68とが親綱46を挟み込んでいる。挟み込むことで、グリップ62は、親綱46に固定される。本体64、第一爪66、第二爪68、握り桿70及びバネ74は、親綱46に対してのスライドを阻止するスライドロック機構を構成している。連結環72の孔76を利用して巻取器60が取り付けられる。
【0045】
このグリップ62では、矢印Xで示された一方向に連結環72が引かれると、第一爪66及び第二爪68はバネ74の付勢力に抗して回動する。本体64と第一爪66及び第二爪68とが親綱46の挟み込みを解除する。このグリップ62のスライドロック機構が解除され、グリップ62は親綱46に沿ってスライド可能にされる。このグリップ62では、連結環72に代えて、握り桿70を一方向に移動させることでも、第一爪66及び第二爪68はバネ74の付勢力に抗して回動する。
【0046】
図7では、この親綱46に移動用ロープ56のグリップ62が連結される。連結具57が安全帯54に連結される。この様にして、親綱46と移動用ロープ56と安全帯54とが連結される。この移動用ロープ56は、安全帯54を介して作業者50に連結されている。この様にして、親綱46が移動用ロープ56を介して作業者50に連結されるステップが行われる。
【0047】
作業者が、梯子52を昇る。グリップ62は一方向に(図7上方向きに)連結環72を回動させることで又は握り桿70を移動させることで、作業者50の移動に伴い、親綱46に連結されたまま、親綱46に沿ってスライドする。この移動用ロープ56は、スライドロック機構により、親綱46に対してスライド可能な状態とスライドしない状態とを切り替え可能に構成されている。
【0048】
図9は、屋根44の上での作業状態が示された説明図である。屋根44の上では、スライドロック機構により、グリップ62は、親綱46に固定されている。親綱46から離れる向きに作業者50が移動すると、巻取器60からロープ本体58が繰り出される。これにより、作業者50は、所定の範囲で移動可能に作業をすることができる。
【0049】
図9に示されるように、親綱46の先端は梯子52に連結されていてもよい。また、親綱の先端部及び後端部のいずれか一方又は両方が、家屋に連結されていてもよい。
【0050】
この梯子52を昇る行為又は屋根44の上で作業することは、いずれも作業者50が移動用ロープ56に連結された状態で作業を行うステップである。
【0051】
通常、グリップ62は、スライドロック機構により親綱46に固定されている。作業者50が屋根44や梯子52から落下すると、巻取器60の自動ロック機構が働く。これにより、作業者50が高所から落下することが抑制されている。なお、屋根44上では、親綱46に巻取器60が連結され、巻取器60がロープ本体58を繰り出し可能な範囲で作業がされてもよい。
【0052】
この親綱案内具2では、筒体4の案内孔40を通して呼び線6が送られる。呼び線6が、家屋42の凹凸部に引っ掛かることが防止される。呼び線6を容易に送り出すことができる。
【0053】
呼び線本体26では、筒体4の出口孔24から突出させられた部分は、その自重、先端具30及びボール8の重さで湾曲する。この湾曲により、徐々に先端具30及びボール8が下方に下がる。これにより、筒体4の節10mが屋根44の一方側44aの上方に位置した状態で、先端具30及びボール8が他方側44b側へ送られうる。勢いをつけて先端具30を送る必要がないので、屋根材等を損傷することが抑制される。
【0054】
更に、ボール8を備えることで、より一層、屋根材等を損傷することが抑制される。また、家屋42の樋などの凹凸部に引っ掛かることが抑制される。更に、筒体4は伸縮可能である。ボール8は着脱可能にされている。この親綱案内具2は、携帯に適している。
【0055】
この親綱展開具2を用いた親綱展開方法では、地上から親綱46を展開できる。この親綱展開方法は、安全性に優れている。親綱46の展開が容易にされている。親綱展開具2により、家屋42の損傷が抑制されている。
【0056】
親綱展開具2及び移動用ロープ56を用いた作業方法では、梯子52を昇り始めるときから地上に降りるときまで、作業者50の転落事故の発生が抑制されている。この作業法は、安全性に優れている。
【0057】
この筒体4は12本の節を備えているが、本発明に係る筒体は1本の筒(節)から構成されても良い。また、この筒体は、筒体4と同様の構造を備える、2本以上の複数の節を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
2・・・親綱展開具
4・・・筒体
6・・・呼び線
8・・・ボール
10・・・節
12・・・空間
14・・・栓
16・・・壁
18・・・入口孔
20・・・キャップ止め
22・・・孔
24・・・出口孔
26・・・呼び線本体
28・・・収納ケース
30・・・先端具
32・・・本体
34・・・取付具
36・・・環
38・・・キャップ
40・・・案内孔
42・・・家屋
44・・・屋根
46・・・親綱
48、50・・・水袋
52・・・梯子
54・・・安全帯
56・・・移動用ロープ
57・・・連結具
58・・・ロープ本体
60・・・巻取器
62・・・グリップ
64・・・本体
66・・・第一爪
68・・・第二爪
70・・・握り桿
72・・・連結環
74・・・バネ
76・・・孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体及び呼び線を備えており、
この筒体が筒体の手元部から先端部まで連通する案内孔と、手元部に形成され案内孔に貫通する入口孔と、先端部に形成され案内孔に貫通する出口孔とを備えており、
この呼び線が入口孔から案内孔に通されて、呼び線の先端部が案内孔から出口孔を通されて筒体の外に出ている親綱展開具。
【請求項2】
上記筒体が直径の異なる複数の筒状の節を有し、この複数の節が径方向に重なり合っており、節がその径方向外側に隣合う節の空間に通されて構成されており、
この内側の節がその径方向外側に隣合う節の空間から引き出されることにより筒体が伸ばされ、内側の節がその径方向外側に隣合う節の空間に押し込まれることにより筒体が縮められるように構成されており、
この筒体が伸ばされて複数の節の連通する空間が案内孔を形成する請求項1に記載の親綱展開具。
【請求項3】
上記呼び線の先端部に着脱可能に頭部が取り付けられている請求項1又は2に記載の親綱展開具。
【請求項4】
筒体の手元部から先端部まで連通する案内孔に手元部から先端部に向かって呼び線が送り込まれるステップと、
この筒体が先端部を家屋の屋根の一方側の上方に位置するように配置されるステップと、
この呼び線が更に手元部から先端部に向かって送りこまれて屋根の一方側から他方側に延ばされて配置されるステップと、
この呼び線の先端部に親綱の先端部が連結されるステップと、
この呼び線が手元部で引き戻されて親綱の先端部が屋根の他方側から一方側に向かって送られるステップと、
この呼び線の先端部が屋根の一方側から下方に下ろされることで親綱が家屋の屋根の他方側から一方側まで延ばされて配置されるステップと、
親綱の両端が固定されるステップと
を備える親綱展開方法。
【請求項5】
筒体の手元部から先端部まで連通する案内孔に手元部から先端部に向かって呼び線が送り込まれるステップと、
この筒体が先端部を家屋の屋根の一方側の上方に位置するように配置されるステップと、
この呼び線が更に手元部から先端部に向かって送りこまれて屋根の一方側から他方側に延ばされて配置されるステップと、
この呼び線の先端部に親綱の先端部が連結されるステップと、
この呼び線が手元部で引き戻されて親綱の先端部が屋根の他方側から一方側に向かって送られるステップと、
この呼び線の先端部が屋根の一方側から下方に下ろされることで親綱が屋根の他方側から一方側まで延ばされて配置されるステップと、
親綱の両端が固定されるステップと、
この親綱が移動用ロープを介して作業者に連結されるステップと、
この作業者が移動用ロープに連結された状態で作業を行うステップと
を備えており、
この移動用ロープがスライドロック機構を備えており、スライドロック機構により親綱に対してスライド可能な状態とスライドしない状態とを切り替え可能に構成されている作業方法。
【請求項6】
上記移動用ロープがグリップを備えており、
このグリップが、本体、爪及び弾性体を備えており、
この弾性体の付勢力により、本体と爪とが親綱を挟み込んでおり、
この爪が弾性体の付勢力に抗して回動可能に構成されており、
この爪が回動されて本体と爪との親綱の挟み込みを解除して、親綱に沿ってスライド可能に構成されている請求項5に記載の作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−179241(P2011−179241A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44842(P2010−44842)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)