説明

角形石詰篭

【課題】菱形金網を形成する列線を滑りにくくすることにより、石詰篭の地面に対する係止力及び隣接する石詰篭同士の係止力を高めて設置強度を増大させると共に、その上を人が歩いても滑りにくくして安全性を高める。
【解決手段】扁平螺旋状に折曲した複数の列線20を折曲部20bにおいて順次連繋してなる菱形金網により形成され、内部に栗石を詰めた状態で現場に設置される石詰篭において、上記菱形金網を形成する列線20の表面に、該列線20に対して交差する方向を向く凹溝27を、該列線20の長さ方向に間隔をおいて形成し、この凹溝27を、石詰篭の内側と外側とに向ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に石を詰めて護岸工事や宅地造成工事等に使用する石詰篭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
護岸工事や道路工事等の各種工事に使用される石詰篭は、通常、菱形金網によって円筒形や角形に形成され、内部に栗石を詰めた状態で現場に設置される。図10には、細長い円筒形の石詰篭1を、内部に栗石2を詰めて法面の傾斜に沿って設置したものが示されている。また、図11には、角形の石詰篭(フトン篭)3を、内部に栗石2を詰めて川岸に段積した状態が示されている。
【0003】
このような石詰篭に要求されることは、設置後の安定性に勝れていて、地盤を強固に固定できるということである。特に、地震によって地盤が振動したり、水流や土石等による大きな外力が石詰篭に加わったような場合でも、該石詰篭の地面に対する滑りや隣接する石詰篭同士の滑りを生じにくくして水害や土砂崩れ等を未然に防止できるように、常に設置時の安定姿勢を維持できるということが重要である。
また、石詰篭の設置工事中や、その設置後等には、設置された石詰篭の上を作業者や一般歩行者が歩くこともあるが、このような場合に石詰篭が滑ると非常に危険であるため、該石詰篭の表面は滑りにくくなっていることも要求される。
【0004】
ところが、上記従来の石詰篭は、一般に、円形の針金(列線)からなる菱形金網で形成されているため、該針金の表面が滑り易く、地面に対する係止力も隣接する石詰篭同士の係止力も弱いという問題があった。従って、地震やその他の災害時に、石詰篭がずれ動いて位置ずれしたり傾いたりし易く、また、設置した石詰篭の上を作業者や一般歩行者が歩くと非常に危険である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の問題点に鑑み、本発明の目的は、菱形金網を形成する列線を滑りにくくすることにより、石詰篭の地面に対する係止力及び隣接する石詰篭同士の係止力を高めて設置強度を増大させると共に、その上を人が歩いても滑りにくくして安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によれば、扁平螺旋状に折曲した複数の列線を折曲部において順次連繋してなる菱形金網により箱形又は筒形に形成され、内部に栗石を詰めた状態で現場に設置される石詰篭であって、上記菱形金網を形成する列線の表面に、該列線に対して交差する方向を向く凹溝が、該列線の長さ方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする石詰篭が提供される。
【0007】
本発明においては、上記列線の外周面における一半部側の半周面と他半部側の半周面とにそれぞれ、個々に独立する複数の凹溝が並列状態に形成されていて、これら両半周面の凹溝が列線の少なくとも一部において石詰篭の内側と外側とに向けられていることが望ましい。
あるいは、上記列線の外周面における一半部側の半周面と他半部側の半周面とにそれぞれ、個々に独立する複数の凹溝が並列状態に形成され、また、上記列線は周方向に捻られていて、上記両半周面の複数の凹溝が該列線の捻れに沿って順次向きを変えながら該列線の周囲全方向を向いていても良い。
【0008】
本発明において好ましくは、上記凹溝が、上記列線の外周を取り巻く螺旋に沿って斜めに形成されていることであり、あるいは、上記凹溝の配列間隔が列線の線径と同等か又はそれ以下であると共に、該凹溝の溝幅が、隣接する凹溝間に介在する溝間部の部幅と同等か又はそれ以下であることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の石詰篭によれば、菱形金網を形成する列線の表面に、該列線と交差する方向の凹溝を形成したことにより、該列線が滑りにくくなり、その結果、該石詰篭の地面に対する係止力と、隣接する石詰篭同士の係止力とが高まり、該石詰篭の設置強度即ち地盤支持強度が増大する。また、設置された石詰篭の上を歩いても滑りにくいため、安全性にも勝れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る石詰篭の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示す石詰篭10は、角形の石詰篭であって、菱形金網で矩形の容器形に形成された篭本体11と、この篭本体11の上面に取り付けられる菱形金網13(図2参照)製の矩形の蓋網板12とで形成され、内部に栗石等を詰めた状態で、図11に示すように護岸工事や宅地造成工事等に使用されるものである。
【0011】
上記篭本体11は、矩形の底網板16と、前後一対の矩形の側網板17,17と、左右一対の矩形の側網板18,18とで構成されている。このうち、底網板16と前後の側網板17,17とは、1枚の菱形金網によって一連に形成され、それらの境界部分に1本の枠線19が挿通されている。また、底網板16と左右の側網板18,18とは、互いに別々に形成され、底網板16における列線20の端部に形成した環21と、側網板18の最下端に位置する列線20の折曲部20bとに、共通の枠線22を挿通することにより、これらの底網板16と側網板18とが相互に連結されている。更に、隣接する側網板17と18との側辺同士の連結は、それらの相対する枠線がスクリューストッパ23で連結されている。
上記篭本体11に蓋網板12を取り付ける場合は、該蓋網板12の枠線24と、上記側網板17及び18の上端の枠線17a及び18aとが、上述したスクリューストッパで連結される。
図中25は、上記各網板の中央部に張設した補強用の骨線である。
【0012】
上記菱形金網13は、図2にその一部を示すように、扁平螺旋状に折曲した複数の列線20(図4参照)を折曲部20bにおいて順次係合することにより構成されたものであるが、このような菱形金網13の構成自体は周知のものである。そして、この菱形金網13で上記各網板12,16,17,18を形成し、これらの網板で図1の石詰篭10を構成した場合、図2において、菱形金網13の向こう側(紙面の裏側)が石詰篭10の内側又は外側となり、手前側(紙面の表側)が石詰篭10の外側又は内側となる。
【0013】
上記複数の列線20のうち一部又は全部の列線には、滑り止めの機能を持たせるため、その表面に、図3及び図4に示すように、該列線20と交差する方向の凹溝27が、該列線20の長さ方向に一定の間隔を保って形成されている。この凹溝27は、図5及び図6に詳細に示すように、円形断面を有する針金21aの表面に、該針金21aの中心軸線L1と交差する方向に延在させて形成したもので、図示した例では、針金21aの外周面における一半部側の半周面M1と他半部側の半周面M2とに、それぞれ、個々に独立する複数の凹溝27が、針金21aの外周面を取り巻く螺旋に沿ってほぼ等間隔に配設されている。
【0014】
上記凹溝27は、上記各半周面M1,M2の周方向の全面域にわたって延在しているのではなく、該半周面M1,M2の両周端付近を除く一部の面域だけに形成されている。このため、上記針金21aにおける2つの半周面M1,M2の境界付近には、凹溝27の形成されていない2つの無溝部28が相反する位置に形成されることになる。
【0015】
上記凹溝27は、それを形成することによる列線20の強度低下をできるだけ避けながら、同時に有効な滑り止め効果を発揮できるものであることが望ましい。このため、図5及び図7から分かるように、凹溝27の深さHは、針金20aの表面から僅かに落ち窪む程度の比較的浅い深さに形成され、該凹溝27の配列間隔Pは、上記針金20a即ち列線20の線径Dと同等かそれ以下に形成され、かつ、該凹溝27の溝幅W1は、隣接する凹溝27,27間に介在する溝間部29の部幅W2と同等かそれより若干大きめあるいは小さめであるように形成されることが望ましい。このときの上記凹溝27の深さHと溝幅W1の好ましい関係は、H=1/2W1〜1/7W1程度であり、より好ましくは1/3W1〜1/5W1程度である。しかし、列線20の線径Dや石詰篭10の大きさあるいはその設置条件等によっては、上記関係は変更されても良い。
【0016】
また、上記凹溝27の溝断面形状は、図7に示すように、U字を扁平にしたような形をしていて、針金20aの軸線L1方向に平坦な溝底壁27aと、この溝底壁27aに滑らかに連なる溝側壁27bとを有していることが望ましい。しかし、これらの溝底壁27aと溝側壁27bとは角を介して連なっていても良い。あるいは、図8に示すように、凹溝27全体が浅い弧状に湾曲した溝断面を有していても良い。
【0017】
而して、図3及び図4に示す列線20の例では、該列線20の2つの半周面M1,M2にそれぞれ形成された凹溝27が、この列線20が形作る扁平な螺旋の内側と外側とに向けられている。従って、この列線20を使用した菱形金網13で図1の石詰篭10を形成した場合、上記両半周面の凹溝27がほぼ全て該石詰篭10の内側と外側とを向くことになる。
しかし、上記凹溝27は、列線20全体にわたって設けることなく、折曲部20bを除くその他の部分に設けるとか、列線20に凹溝27が形成されている領域と形成されていない領域とが交互に存在するといったように、該列線20に部分的に設けることも可能である。あるいは、凹溝27が石詰篭10の内側と外側とを向く領域と、その他の方向を向く領域とを、列線20に混在させても良い。
【0018】
また、図9に示す別の列線20の例では、該列線20が針金20aの中心軸線L1の回り即ち周方向に緩やかに捻られていて、2つの半周面M1,M2にそれぞれ形成された複数の凹溝27が、その捻れに従って該列線20の周方向に順次向きを変えながら、該列線20の周囲全方向を向いている。従って、この列線20を使用した菱形金網13で図1の石詰篭10を形成した場合には、上記凹溝27が、石詰篭10の内側と外側だけでなく、それ以外のあらゆる方向を向くことになる。
この図9の列線20の場合にも、凹溝27を列線20に部分的に設けることができ、また、図3に示す列線20と図9に示す列線20を混用して上記菱形金網13を形成することも可能である。
【0019】
従って、上記石詰篭10を図11に示すように現場に設置した場合、何れの網板12,16,17,18においても、列線20の凹溝27が少なくとも必ず該石詰篭10の内側と外側とを向いた状態に位置することになる。このため、主として石詰篭10の外側を向く上記凹27溝の係止力により、該石詰篭10の地面に対する係止力が増大するだけでなく、隣接する石詰篭10,10同士が接触する部分において篭相互間の係止力も増大し、該石詰篭の設置強度即ち地盤支持強度が増大する。従って、地震による振動が作用したり水流や土石等による大きな外力が石詰篭に加わったような場合でも、該石詰篭は地面あるいは隣接する石詰篭に対してしっかりと係止し、安定姿勢を保って地盤を強固に固定することになる。このため、石詰篭の位置ずれによる護岸の崩壊や法面の土砂崩れ等が発生しにくくなる。
また、内部に詰めた栗石と列線20との間の係止力も強まるため、該栗石がずれ動きにくくなり、栗石の位置ずれによる石詰篭10の変形が防止される。
更に、設置された石詰篭10の上を作業者や一般歩行者が歩いた場合でも、上述したように列線が滑りにくいため、安全である。
【0020】
なお、上述した各例では、上記凹溝27が、列線20(針金20a)の中心軸線L1に対して螺旋方向に傾斜した状態に設けられているが、該凹溝27は、上記中心軸線L1に対して垂直な面内を列線20の円周方向に延在させて形成することもできる。この場合、2つの半周面M1,M2の凹溝27,27は、互いに同じ円周上にあっても良いが、それらの配列位置が互いに1/2ピッチずれていても構わない。
【0021】
また、上記実施形態では、凹溝27が、列線20の一側の半周面M1と他側の半周面M2とに別々に形成されているが、これら凹溝27は、列線20を取り巻く一重または多重の螺旋として連なった状態に形成することも可能である。あるいは、上述したように凹溝27を円周方向に設ける場合には、2つの半周面M1,M2の凹溝27,27同士を、相互に連なったリングの形に形成することもできる。
更に、本発明は、上述した角形の石詰篭10だけでなく、円筒形の石詰篭にも適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る石詰篭の蓋網板を取り外した状態の斜視図である。
【図2】上記石詰篭を形成する菱形金網の部分拡大平面図である。
【図3】図2の菱形金網を形成する列線の一例を示す部分拡大図である。
【図4】図3の列線の側面図である。
【図5】図3の列線の部分拡大正面図である。
【図6】図5の断面図である。
【図7】図5のA−A線の位置での拡大断面図である。
【図8】凹溝の異種例を示す要部断面図である。
【図9】図2の菱形金網を形成する列線の他例を示す部分拡大図である。
【図10】石詰篭の設置態様の一例を示す側断面図である。
【図11】石詰篭の設置態様の他例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 石詰篭
13 菱形金網
20 列線
20b 折曲部
27 凹溝
29 溝間部
M1,M2 半周面
P 配列間隔
D 線径
W1 溝幅
W2 部幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平螺旋状に折曲した複数の列線を折曲部において順次連繋してなる菱形金網により箱形又は筒形に形成され、内部に栗石を詰めた状態で現場に設置される石詰篭であって、上記菱形金網を形成する列線の表面に、該列線に対して交差する方向を向く凹溝が、該列線の長さ方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする石詰篭。
【請求項2】
上記列線の外周面における一半部側の半周面と他半部側の半周面とにそれぞれ、個々に独立する複数の凹溝が並列状態に形成されていて、これら両半周面の凹溝が列線の少なくとも一部において石詰篭の内側と外側とに向けられていることを特徴とする請求項1に記載の石詰篭。
【請求項3】
上記列線の外周面における一半部側の半周面と他半部側の半周面とにそれぞれ、個々に独立する複数の凹溝が並列状態に形成され、また、上記列線は周方向に捻られていて、上記両半周面の複数の凹溝が該列線の捻れに沿って順次向きを変えながら該列線の周囲全方向を向いていることを特徴とする請求項1又は2に記載の石詰篭。
【請求項4】
上記凹溝が、上記列線の外周を取り巻く螺旋に沿って斜めに形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の石詰篭。
【請求項5】
上記凹溝の配列間隔が列線の線径と同等又はそれ以下であると共に、該凹溝の溝幅が、隣接する凹溝間に介在する溝間部の部幅と同等又はそれ以下であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の石詰篭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−30240(P2009−30240A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192286(P2007−192286)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(390006116)瀬戸内金網商工株式会社 (18)
【Fターム(参考)】