説明

角速度センサ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば車両等の回転方向,姿勢等を検出するのに用いて好適な角速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、車両等の回転方向を検出するのに用いられる角速度センサとしては、例えば特公平3−74926号公報、特開昭61−114123号公報等によって知られている。
【0003】そこで、図19に従来技術による角速度センサとして、特公平3−74926号公報に記載の半導体回転センサを例に挙げて示す。
【0004】図において、1はシリコン材料からなる基板を示し、該基板1は、図中下側に位置する下側基板1Aと、該下側基板1A上に形成された上側基板1Bとから大略構成され、該各基板1A,1B間には後述する片持梁2の振動を許す空間1Cが形成されている。
【0005】2は基板1の上側基板1Bにエッチング技術等を用いて一体形成された片持梁を示し、該片持梁2は、その基端2A側が上側基板1Bに固定された固定端となり、その先端2B側が基板1に対して垂直な上,下方向に振動可能な自由端となっている。また、該片持梁2の基端2A側には、幅方向の中心に位置して長手方向に伸びる角形状のスリット3が穿設されている。
【0006】4は片持梁2の先端2B側上面に形成された電極を示し、該電極4は所定の周波数信号を発振する発振回路(図示せず)と接続されている。そして、発振回路からの周波数信号が電極4を介して片持梁2に印加されると、該片持梁2は静電力により上,下方向に振動するようになっている。
【0007】5,5はスリット3の左,右に位置して片持梁2の基端2A側に設けられたピエゾ抵抗素子を示し、該各ピエゾ抵抗素子5は、基板1の回転時に片持梁2に生じる応力を抵抗値変化として検出し、これを回転方向の角速度として信号処理回路(図示せず)に出力するものである。
【0008】従来技術による角速度センサは上述の如き構成を有するもので、発振回路から電極4を介して所定の周波数信号を印加すると静電力が発生し、これにより、片持梁2の先端2Bは例えば自身の共振周波数で基板1に対して垂直な上,下方向に振動する。そして、この状態で、基板1に回転軸Oを中心とする回転力Tが加わると、コリオリの力F,F′によって片持梁2によじれ(応力)が生じ、この回転によるよじれは、スリットの左,右に圧縮応力,引張応力としてそれぞれ表われる。これにより、各ピエゾ抵抗素子5は、これら圧縮応力,引張応力に応じた信号を出力し、回転力Tの角速度を検出する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従来技術による角速度センサでは、シリコン材料からなる基板1にエッチング技術等を用いて片持梁2を一体形成し、該片持梁2を上,下方向に振動させることにより、回転力Tの角速度に応じた応力を各ピエゾ抵抗素子5によって検出している。しかし、片持梁2を基板1に対して垂直な上,下方向に振動させる3次元的構成であるから、励振構造が複雑化し、空気の粘性抵抗を受け易い。
【0010】このため、上述した従来技術によるものでは、片持梁2の振動時に生じる空気の粘性抵抗力が大きくなって、該片持梁2を振動させるためのエネルギが徒に浪費されてしまい、エネルギ効率が極めて低いという問題がある。また、この粘性抵抗力のため、片持梁2の振幅を大きくすることができないから、各ピエゾ抵抗素子5による角速度の検出感度が低いという問題がある。
【0011】本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、振動体に加わる気体の粘性抵抗力を効果的に低減して検出感度を向上することができ、全体構造をコンパクトに形成することができるようにした角速度センサを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために本発明が採用する構成は、基板と、該基板に第1の支持梁を介して支持され、該基板と平行方向に振動可能に設けられた第1の振動体と、該第1の振動体に第2の支持梁を介して平行に支持され、該第1の振動体の振動方向に対して直交方向に振動可能に設けられた第2の振動体と、前記第1の振動体を前記基板に対して平行方向に振動させる振動発生手段と、前記第2の振動体の変位量を検出する変位量検出手段とからなる。
【0013】
【作用】振動発生手段により第1の振動体が基板に対して平行方向に振動している状態で、センサ全体が該基板と垂直な回転軸を中心として回転すると、第2の振動体は、この回転力の角速度に応じたコリオリの力によって第1の振動体の振動方向と直交方向に振動する。そして、変位量検出手段は、該第2の振動体の振動時の変位量を検出し、これを前記回転力の角速度信号として出力する。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1ないし図18に基づき、独立した角速度センサとして構成した場合を例に挙げて説明する。
【0015】まず、図1ないし図12は本発明の第1の実施例を示している。
【0016】図中、11はシリコン材料等からなる基板を示し、該基板11は、下側に位置する下側基板11Aと、該下側基板11Aの上側に後述の酸化膜27からなる支持枠11Bを介して設けられた上側基板11Cとから大略構成され、該各基板11A,11C間には空間11Dが画成されている。また、該基板11の上側基板11Cは所定の厚さ寸法tを有し、図2にも示す如く、後述する第1の振動体12,第1の支持梁13,第2の振動体14,第2の支持梁15等がエッチング技術等によってそれぞれ一体形成されている。
【0017】12は基板11の上側基板11Cに一体形成され、該上側基板11Cと平行方向に振動可能に設けられた第1の振動体を示し、該第1の振動体12は、上側基板11Cのほぼ中央部に位置して方形枠状に形成された枠部12Aと、該枠部12Aの両端側からX軸方向に延設された一対の腕部12B,12Bとから構成され、該各腕部12Bは第1の支持梁13,13によってY軸方向からそれぞれ支持されている。そして、該第1の振動体12は、4本の支持梁13によってY軸方向から支持されることにより、上側基板11Cと平行にX軸方向に振動可能となっている。
【0018】ここで、前記各第1の支持梁13は、所定の長さ寸法L1 ,幅寸法W1 ,厚さ寸法tをもって長板状に形成され、所定の弾性率を有している。
【0019】14は第1の振動体12の枠部12A内に位置して該第1の振動体12とほぼ同一平面上に設けられ、方形平板状に形成された第2の振動体を示し、該第2の振動体14は、図3にも示す如く、X軸方向に配設された2本一組の第2の支持梁15,15,…によって、第1の振動体12の各腕部12Bに平行に支持されている。そして、該第2の振動体14は、各第2の支持梁15によって支持されることにより、第1の振動体12の振動方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に振動可能となっている。
【0020】ここで、前記各第2の支持梁15は、所定の長さ寸法L2 ,幅寸法W2 ,厚さ寸法tを有する長板状に形成されて所定の弾性率を有し、これにより、後述する振動発生部16,16の励起周波数と第2の振動体14の共振周波数とを実質的に一致せしめ、コリオリの力に対する該第2の振動体14の感度を高めるものである。また、該各第2の支持梁15は、その基端側が第1の振動体12の各腕部12Bに接続され、その先端側が第2の振動体14に接続されている。
【0021】図1中に二点鎖線で示す16,16は第1の振動体12の各腕部12B両側に位置して基板11の上側基板11Cに設けられた振動発生手段としての振動発生部を示し、該各振動発生部16は、図4にも示す如く、第1の振動体12の各腕部12B先端側に設けられ、X軸方向に伸長する複数の突起17A,17A,…がY軸方向に離間して形成された可動側導電部17と、該可動側導電部17と対向して基板11の上側基板11Cに設けられ、前記各突起17Aと互い違いに組み合される複数の突起18A,18A,…が形成された固定側導電部18とから構成されている。また、該各導電部17,18はプリント配線(金属配線)19,20を介して基板11に形成された発振回路(図示せず)とそれぞれ接続されている。
【0022】そして、前記各振動発生部16は、発振回路から第2の振動体14の共振周波数に一致した所定の周波数信号が各プリント配線19,20を介して各導電部17,18に印加されると、電極たる該各導電部17,18間に静電力を発生せしめ、この静電力によって第1の振動体12を第2の振動体14と共に、X軸方向に振動させるものである。
【0023】21,21,…は第2の支持梁15の基端側にそれぞれ設けられた変位量検出手段としての変位量検出部を示し、該各変位量検出部21は、図4,図5に示す如く、第2の支持梁15の基端側に位置して幅方向両側に配設され、該第2の支持梁15の長さ方向(X軸方向)に伸びて形成されたピエゾ抵抗素子としての拡散抵抗22,22と、該各拡散抵抗22の両端側に設けられたコンタクトホール23,23とから大略構成され、該各拡散抵抗22は、各コンタクトホール23に接続されたプリント配線24,25,26を介して、基板11に形成された信号処理回路(図示せず)に接続されている。
【0024】そして、前記各変位量検出部21は、回転に伴うコリオリの力によって第2の振動体14がY軸方向に変位(振動)すると、これにより、各第2の支持梁15に生じる歪み(圧縮応力および引張応力)を検出し、これを角速度信号として信号処理回路に出力するものである。ここで、該各変位量検出部21の各拡散抵抗22は、第2の支持梁15の幅方向両端側に離間して設けられているため、一の拡散抵抗22には圧縮応力が作用し、他の拡散抵抗22には逆の引張応力が作用する。従って、該各拡散抵抗22のピエゾ抵抗効果による抵抗変化率も互いに逆符号となるので、信号処理回路によって両者の抵抗変化率を比較演算することにより、角速度に比例するコリオリの力に応じた第2の振動体14のY軸方向の変位量、即ち、振幅を求めることができるようになっている。
【0025】本実施例による角速度センサは上述の如き構成を有するもので、次に、その製造方法について図6ないし図11を参照しつつ、単結晶シリコンを用いた場合を例に挙げて説明する。
【0026】まず、図6に示す酸化膜形成工程では、例えば熱酸化法等の手段を用いて、単結晶シリコン材料からなる基板11の下側基板11Aの上面側に酸化膜27を形成する。
【0027】次に、図7に示す支持枠形成工程では、酸化膜形成工程で形成された酸化膜27を、その周縁部を除いてエッチングにより除去し、方形角枠状の支持枠11Bを形成する。
【0028】そして、図8に示す接合工程では、別工程で形成された方形板状の単結晶シリコンからなるウエハ28を下側基板11Aの上側に支持枠11Bを介して搭載し、例えばシリコンの直接接合技術によって両者を接合し、固定する。
【0029】さらに、図9に示す上側基板形成工程では、基板接合工程で接合されたウエハ28を均一に研磨し、所定の厚さ寸法tを有する上側基板11Cを形成する。
【0030】次に、図10に示す素子形成工程では、上側基板形成工程で形成された上側基板11Cの上面側に、不純物導入技術,フォトリソグラフィ技術等の手段を用いて、素子たる振動発生部16、変位量検出部21、プリント配線19,20,24,25,26(図示せず)等を形成する。
【0031】最後に、図11に示す振動体形成工程では、素子形成工程で振動発生部16等が形成された上側基板11Cをエッチングすることにより、図1にも示す如く、各振動体12,14および各支持梁13,15を形成する。なお、このときに、各導電部17,18の各突起17A,18Aも形成される。
【0032】次に、このようにして形成された本実施例による角速度センサの作動について、図12を参照しつつ説明する。
【0033】まず、図12は、本実施例による角速度センサの機械的構成を模式的に表現したものであり、弾性体たる各第1の支持梁13によって上側基板11CにY軸方向から4点で支持された第1の振動体12内に、第2の振動体14が他の弾性体たる各第2の支持梁15によってX軸方向から4点で支持されている。
【0034】次に、図1,図4に示す各振動発生部16に発振回路から所定の周波数信号を印加すると、各導電部17,18間に静電力が発生し、これにより、第1の振動体12は、各第1の支持梁13に支持されつつ第2の振動体14と共に、該第2の振動体14の共振周波数と実質的に等しい周波数でX軸方向に振動する。
【0035】そして、各振動体12,14をX軸方向に振動させた状態で、図1にも示す如く、Z軸を回転軸とする回転力Tが加わってセンサ全体が回転すると、第2の振動体14は、この回転力により生じた角速度に比例するコリオリの力を受けて、各第2の支持梁15に支持されつつ、第1の振動体12の振動方向と同一平面上で直交するY軸方向に変位する。
【0036】これにより、各第2の支持梁15には、第2の振動体14の変位量に応じた歪みが発生し、各変位量検出部21は、この歪みによる圧縮応力,引張応力を各拡散抵抗22のピエゾ抵抗効果を利用して検出し、これを信号処理回路に角速度信号として出力する。そして、該信号処理回路は、第2の支持梁15,15,…にそれぞれ設けられた変位量検出部21からの信号を処理することにより、第2の振動体14のZ軸方向等の振動,ねじれ等を検出し、角速度信号を補正して外部に出力する。
【0037】かくして、本実施例によれば、シリコン材料からなる下側基板11A上に空間11Dを介して設けられたシリコン材料からなる上側基板11Cに、エッチング技術等の半導体微細加工技術を用いて、各第1の支持梁13によってX軸方向に振動可能に支持された第1の振動体12と、該第1の振動体12に各第2の支持梁15により第1の振動体12の振動方向と同一平面上で直交するY軸方向に振動可能に支持された第2の振動体14と、各導電部17,18間に生じる静電力によって第1の振動体12をX軸方向に振動させる振動発生部16と、各拡散抵抗22により回転の角速度に比例するコリオリの力を第2の支持梁15の応力変化として検出する変位量検出部21とを、一体形成する構成としたから、図1に示す如く、第1の振動体12の振動方向(X軸方向)および第2の振動体14の振動方向(Y軸方向)に対して垂直な回転軸(Z軸方向)を回転中心に加わった回転力Tの角速度を確実に検出することができ、以下の効果を奏する。
【0038】第1に、第1の振動体12および第2の振動体14を基板11の上側基板11Cに対して平行に、同一平面上で平行に振動させる構成としたから、従来技術で述べた如く、各振動体12,14の周囲の空気から受ける粘性抵抗力を大幅に低減することができ、該各振動体12,14の振幅(変位量)を大きくして角速度の検出感度を大幅に向上することができる。
【0039】第2に、各振動体12,14は基板11に対して平行に振動する2次元的構成としたから、従来技術で述べた如く、片持梁2が基板1に対して垂直に振動する3次元的構成とは異なり、センサ全体の構造を簡素化してコンパクトに形成することができる。
【0040】第3に、シリコン材料からなる基板11に、エッチング等の半導体微細加工技術を用いて各振動体12,14、各支持梁13,15等を一体形成する構成としたから、同一素材のシリコンウエハから複数個の角速度センサを容易に製造することができ、均一な特性を有する角速度センサを効果的に量産することができ、コストを大幅に低減することができる。
【0041】第4に、各振動発生部16の励起周波数を第2の振動体14の共振周波数と実質的に一致させる構成としたから、コリオリの力を受けたときの第2の振動体14の変位量を増大することができ、角速度の検出感度を大幅に向上することができる。
【0042】第5に、一対の拡散抵抗22等からなる変位量検出部21を、各第2の支持梁15の基端側にそれぞれ設ける構成としたから、第2の振動体14のY軸方向の変位量に加えて、Z軸方向等の振動,よじれ等も効果的に検出することができ、角速度の検出精度を高めて信頼性を大幅に向上することができる。
【0043】第6に、各振動体12,14を各支持梁13,15によって4点で支持する構成としたから、機械的強度が増大し、衝撃に対する信頼性等を大幅に向上することができる。
【0044】第7に、各支持梁13,15の形状、即ち、長さ寸法L1 ,L2 、幅寸法W1,W2 、厚さ寸法tを調整することにより、角速度の検出範囲、要求精度等の諸条件に応じた弾性率を容易に得ることができ、市場要求に即応できる。
【0045】次に、図13は本発明の第2の実施例を示し、本実施例の特徴は、各振動体12,14間の静電容量変化に基づき、第2の振動体14の変位量を検出する構成としたことにある。なお、本実施例では、上述した第1の実施例と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0046】図中、31は第1の振動体12と第2の振動体14との間にY軸方向に亘って設けられた変位量検出手段としての変位量検出部を示し、該変位量検出部31は、第1の振動体12の内側に形成された固定側電極31Aと、該固定側電極31Aと対向して第2の振動体14に形成された可動側電極31Bとから構成され、該各電極31A,31Bはプリント配線32,33を介して信号処理回路(図示せず)と接続されている。そして、該変位量検出部31は、各電極31A,31B間の静電容量変化を検出することにより、第2の振動体14のY軸方向の変位量を検出するものである。
【0047】このように構成される本実施例でも、前記第1の実施例とほぼ同一の作用効果を得ることができる。
【0048】さらに、図14は本発明の第3の実施例を示し、本実施例の特徴は、第1の支持梁を水平方向に凹凸を有する凹凸板状に形成したことにある。なお、本実施例では、前記第1の実施例と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0049】図中、41,41,…は本実施例による第1の支持梁を示し、該各第1の支持梁41は、前記各実施例で述べた第1の支持梁13とほぼ同様に、第1の振動体12を基板11に対して平行に支持しているものの、該各第1の支持梁41は、エッチング技術等により、角速度の検出範囲、各振動体12,14の共振周波数等の条件に応じた所定の弾性率を得るべく、水平方向に凹凸を有する凹凸板状に形成されている。
【0050】かくして、このように構成される本実施例でも、前記各実施例とほぼ同一の作用効果を得ることができるが、特に、本実施例では、各第1の支持梁41を水平方向に凹凸を有する凹凸板状に形成する構成としたから、その形状によって容易に弾性率を調整することができる。
【0051】なお、前記各実施例では、基板11に単結晶シリコン材料を用いて角速度センサを製造する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば図15ないし図18に示す他の製造方法の如く、上側基板11Cを多結晶シリコン材料を用いて形成する構成としてもよい。
【0052】即ち、図15に示す酸化膜形成工程では、例えば熱酸化法等の手段を用いて、単結晶シリコン材料からなる基板11の下側基板11Aの上面側に酸化膜27を形成する。
【0053】次に、図16に示す上側基板形成工程では、酸化膜27の上面側に、CVD法等の手段を用いて不純物を含まない多結晶シリコン材料からなる上側基板11Cを、所定の厚さ寸法tをもって一体形成する。
【0054】そして、図17に示す素子,振動体形成工程では、上側基板形成工程で形成された多結晶シリコン膜からなる上側基板11Cの上面側に、不純物導入技術,フォトリソグラフィ技術等の手段を用いて、振動発生部16、変位量検出部21、プリント配線19,20,24,25,26(図示せず)等を形成した後、該上側基板11Cをエッチングすることにより、各振動体12,14、各支持梁13,15を形成する。
【0055】最後に、図18に示す支持枠形成工程では、下側基板11Aと上側基板11Cとの間にエッチング液を注入し、いわゆる犠牲層エッチング技術により周縁部を残して酸化膜27を除去し、支持枠11Bを形成する。
【0056】このようにしても図1に示す角速度センサを形成することができるが、特に、この他の製造方法によれば、CVD法により多結晶シリコン材料からなる上側基板11Cを、直接的に形成することができ、その厚さ寸法tを例えば数μm程度に低減して、生産効率を大幅に向上することができる。
【0057】さらに、前記各実施例では、各振動発生部16の励起周波数を、第2の振動体14の共振周波数と実質的に一致させる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、各振動体12,14の共振周波数と各振動発生部16の励起周波数の三者を実質的に一致させる構成としてもよい。この場合には、各振動発生部16によって第1の振動体12を少ないエネルギで振動させることができるから、該各振動発生部16に印加する周波数信号の電圧値を低減することができ、エネルギ効率を大幅に向上することができる。
【0058】また、前記各実施例では、振動発生手段としての振動発生部16を可動側導電部17および固定側導電部18とから構成し、該各導電部17,18間に生じる静電力によって、第1の振動体12を第2の振動体14と共にX軸方向に振動させるものとして述べたが、本発明はこれに限らず、例えば第1の支持梁13の一部にヒータとしての導電部を形成し、該導電部に間欠的に電流を通電することにより発熱せしめ、この発熱による熱膨張を利用して各振動体12,14を基板11と平行なX軸方向に振動させる構成としてもよく、他の振動発生手段を用いてもよい。
【0059】さらにまた、前記各実施例では、各支持梁13(41),15をそれぞれ4本設けた場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、例えば第1の支持梁,第2の支持梁を1本ないし3本、あるいは5本以上設ける構成としてもよい。
【0060】また、前記第1,第3の実施例では、各第2の支持梁15の基端側に変位量検出部21をそれぞれ設ける場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、4本の第2の支持梁15のうち、いずれか1本ないし3本にのみ変位量検出部21を設ける構成としてもよい。
【0061】さらに、前記第1,第3の実施例では、ピエゾ抵抗素子として拡散抵抗22を用いる場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、例えば電界効果型トランジスタのピエゾ抵抗効果を利用してもよい。
【0062】一方、前記第2の実施例では、変位量検出部31をY軸方向に沿って1個だけ設ける場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、例えばY軸方向に複数の変位量検出部31を配設してもよく、また、X軸方向にも変位量検出部31を設ける構成としてもよい。
【0063】また、前記第3の実施例では、第1の支持梁41を水平方向に凹凸を有する凹凸板状に形成するものとして述べたが、本発明はこれに限らず、例えば鋸歯状等の他の形状に形成してもよく、あるいは、第2の支持梁15の形状も凹凸板状,鋸歯状等の他の形状に形成してもよい。
【0064】さらに、前記各実施例では、独立した単体の角速度センサとして用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば車両に搭載される他の基板の一部として形成することもできる。
【0065】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、基板と、該基板に第1の支持梁を介して支持され、該基板と平行方向に振動可能に設けられた第1の振動体と、該第1の振動体に第2の支持梁を介して平行に支持され、該第1の振動体の振動方向に対して直交方向に振動可能に設けられた第2の振動体と、前記第1の振動体を前記基板に対して平行方向に振動させる振動発生手段と、前記第2の振動体の変位量を検出する変位量検出手段とから構成したから、振動発生手段により第1の振動体が基板に対して平行方向に振動している状態で、センサ全体が該基板と垂直な回転軸を中心として回転すると、第2の振動体は、この回転力に応じたコリオリの力によって第1の振動体の振動方向と直交方向に振動する。そして、変位量検出手段は、該第2の振動体の振動時の変位量を検出し、これを前記回転力の角速度信号として出力することができる。
【0066】この結果、各振動体の振動時に周囲の空気から受ける粘性抵抗力を低減することができ、該各振動体の変位量を大きくして角速度の検出感度、検出精度等を向上することができる。また、各振動体は基板に対して平行に振動する2次元的構成としたから、センサ全体の構造を簡素化してコンパクトに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例による角速度センサを示す一部破断の斜視図ある。
【図2】図1中の角速度センサを上側から見た平面図である。
【図3】図2中の矢示III −III 方向断面図である。
【図4】図2中の要部を拡大して示す平面図である。
【図5】図2中の矢示V −V 方向断面図である。
【図6】第1の実施例による酸化膜形成工程を示す断面図である。
【図7】第1の実施例による支持枠形成工程を示す断面図である。
【図8】第1の実施例による接合工程を示す断面図である。
【図9】第1の実施例による上側基板形成工程を示す断面図である。
【図10】第1の実施例による素子形成工程を示す断面図である。
【図11】第1の実施例による振動体形成工程を示す図5R>5と同様の断面図である。
【図12】第1の実施例による角速度センサの機械的構成を示す模式図である。
【図13】本発明の第2の実施例による角速度センサを示す図2と同様の平面図である。
【図14】本発明の第3の実施例による角速度センサを示す図2と同様の平面図である。
【図15】本発明の他の製造方法による酸化膜形成工程を示す断面図である。
【図16】他の製造方法による上側基板形成工程を示す断面図である。
【図17】他の製造方法による素子,振動体形成工程を示す断面図である。
【図18】他の製造方法による支持枠形成工程を示す断面図である。
【図19】従来技術による角速度センサを示す一部破断の斜視図である。
【符号の説明】
11 基板
12 第1の振動体
13,41 第1の支持梁
14 第2の振動体
15 第2の支持梁
16 振動発生部(振動発生手段)
21,31 変位量検出部(変位量検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板と、該基板に第1の支持梁を介して支持され、該基板と平行方向に振動可能に設けられた第1の振動体と、該第1の振動体に第2の支持梁を介して平行に支持され、該第1の振動体の振動方向に対して直交方向に振動可能に設けられた第2の振動体と、前記第1の振動体を前記基板に対して平行方向に振動させる振動発生手段と、前記第2の振動体の変位量を検出する変位量検出手段とから構成してなる角速度センサ。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【特許番号】第2888029号
【登録日】平成11年(1999)2月19日
【発行日】平成11年(1999)5月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−143148
【出願日】平成4年(1992)5月8日
【公開番号】特開平5−312576
【公開日】平成5年(1993)11月22日
【審査請求日】平成9年(1997)8月11日
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【参考文献】
【文献】特開 平4−242114(JP,A)
【文献】特開 平4−296657(JP,A)
【文献】特表 平5−502945(JP,A)
【文献】特表 平6−508684(JP,A)