説明

解像度検査装置

【課題】ガンマ補正処理が施されたカメラモジュールであっても、解像度の精度を低下させることなく検査可能な解像度検査装置。
【解決手段】複数の解像度検査用パターンを有する解像度検査用チャートと、
検査すべきカメラモジュールにより撮像されガンマ補正処理が施された前記解像度検査用チャートの画像に対し、解像度を算出する制御装置と、
を備えた解像度検査装置であって、
前記制御装置は、前記画像に対しガンマ値が略1.0になるように逆ガンマ補正処理を施した後に解像度を算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールの解像度を高精度で算出できる解像度検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小型で薄型のカメラモジュールが携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等の小型、薄型の電子機器である携帯端末に搭載されるようになり、これにより遠隔地へ音声情報だけでなく画像情報も相互に伝送することが可能となっている。
【0003】
このようなカメラモジュールを製造した後は各種の検査を行う。各検査の中で解像度の検査の場合は、検査すべきカメラモジュールで解像度検査用チャートを撮像して行う。解像度検査用チャートは複数の黒線と白線が交互に繰り返す解像度検査用パターンが中央と四隅に配置されている。カメラモジュールがこの解像度検査用パターンを撮像すると、その画像はパソコンに転送され、パソコンはコントラストの程度によって良否を判定する。
【0004】
このような解像度検査用パターンを有する検査用チャートは特許公報に開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の検査用チャートは解像度検査用領域(解像度検査用パターン)と色再現性検査用領域とを一つの検査用チャートに配置し、検査の生産性を向上させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−245891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
携帯電話機等の携帯端末の小型化に伴ってカメラモジュールも小型化が要求されている。このように小型化したカメラモジュールには、SOC(System on a chip)センサやISP(Image Sensor Processor)を搭載したものがある。SOCは1枚のチップに撮像素子と画像処理回路が実装されたものであり、ISPは1枚のプリント配線板に撮像素子と画像処理回路が実装されたものである。
【0008】
この様に画像処理回路が実装されたカメラモジュールにおいては、より自然に近い画像を出力するためにガンマ補正処理が施される。ガンマ補正処理は、画像情報である明度(輝度)、彩度及び色度等に対して非線形の画質アレンジを加える処理である。
【0009】
ガンマ補正処理が施されたカメラモジュールについて解像度の検査を行う場合、解像度検査用パターンの輝度分布は線形性を保てなくなる。その結果、解像度検査用パターン面上の多少の輝度差、経時的な輝度変化、複数の検査装置を用いたときの輝度の微小な差等により、最終的に算出される解像度に差が生じ、バラツキが大きくなって検査精度の低下の一要因になっていた。
【0010】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、ガンマ補正処理が施されたカメラモジュールであっても、解像度の精度を低下させることなく検査できる解像度検査装置を提案することを発明の目的とする。
【0011】
なお、特許文献1にはガンマ補正処理に関する記載はなく、まして上述の問題やこれを解決する課題についての記載はない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は下記に記載した発明により達成される。
【0013】
1.複数の解像度検査用パターンを有する解像度検査用チャートと、
検査すべきカメラモジュールにより撮像されガンマ補正処理が施された前記解像度検査用チャートの画像に対し、解像度を算出する制御装置と、
を備えた解像度検査装置であって、
前記制御装置は、前記画像に対しガンマ値が略1.0になるように逆ガンマ補正処理を施した後に解像度を算出することを特徴とする解像度検査装置。
【0014】
2.複数の解像度検査用パターンを有する解像度検査用チャートと、
検査すべきカメラモジュールにより撮像されガンマ補正処理が施された前記解像度検査用チャートの画像に対し、解像度を算出する制御装置と、
を備えた解像度検査装置であって、
前記解像度検査用チャートは、ガンマ補正処理により非線形にならずに略線形を保つ前記画像の輝度領域に相当する輝度領域を設けた解像度検査用パターンを有することを特徴とする解像度検査装置。
【0015】
3.前記解像度検査用チャートは少なくとも階調検査用パターンを有することを特徴とする前記1又は前記2に記載の解像度検査装置。
【0016】
4.前記制御装置は算出した解像度に基づいて前記カメラモジュールの良否を判定することを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の解像度検査装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の解像度検査装置によれば、ガンマ補正処理が施されたカメラモジュールであっても、解像度の精度を低下させることなく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】解像度検査装置の斜視図である。
【図2】解像度検査用チャートの正面図である。
【図3】解像度検査装置を用いて検査する手順のフローチャートである。
【図4】ガンマ補正の線図である。
【図5】異なる解像度検査用チャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、本発明の解像度検査装置の一例を図1の斜視図を参照して説明する。
【0020】
解像度検査装置は、検査すべきカメラモジュール1で撮像する解像度検査用チャート11、カメラモジュール1を保持する保持台12、各種の制御を行うパソコン(制御装置)13から構成される。
【0021】
このカメラモジュール1は少なくとも撮像レンズと、CCDやCMOS等から成る撮像素子と、撮像した画像を処理するSOCやISP等の画像処理回路を有する。
【0022】
カメラモジュール1は保持台12に載置され保持されると共に、保持台12上の絵出しボード12aに電気的に接続される。絵出しボード12aはケーブル14によってパソコン13と接続し、パソコン13の指令によりカメラモジュール1は解像度検査用チャート11を撮像する。撮像した画像は絵出しボード12aのメモリに一時保管され、パソコン13に伝送される。
【0023】
解像度検査用チャート11は衝立状に形成され、カメラモジュール1に対して例えば1mの距離で正対する。解像度検査用チャート11には、例えば図2に示す如く、中央に位置する解像度検査用パターン11aと四隅に位置する解像度検査用パターン11b,11c,11d,11eが配置されている。解像度検査用パターン11a〜11eは拡大図に示す如く、黒基準パッチ111、白基準パッチ112、複数の黒線と白線が同一幅で交互に繰り返して横に配置された垂直解像度パッチ113、及び複数の黒線と白線が同一幅で交互に繰り返して縦に配置された水平解像度パッチ114から成る。なお、黒線や白線の幅は、カメラモジュール1の撮像素子(CCDやCMOS)の画素ピッチの整数倍に設定しないことが望ましい。
【0024】
また、解像度検査用パターン11aの下方には、RGBの3色から成る色彩検査用パターン11fと、黒、灰、白から成る階調検査用パターン11gが配置されている。
【0025】
このように、解像度検査用チャート11には解像度検査用パターン11a〜11e、色彩検査用パターン11f、及び階調検査用パターン11gが配置されているので、1回の撮像で解像度検査、色彩検査及び階調検査を行うことができ、検査時間が短縮する。
【0026】
次に、このような解像度検査装置を用いて検査する手順を図3のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
先ず、パソコン13から開始信号を絵出しボード12aに出力する(S1)。
【0028】
続いて、絵出しボード12aからカメラモジュール1を起動する(S2)。このカメラモジュール1は撮像した画像を処理するSOCやISP等の画像処理回路を有するので、カメラモジュール1がガンマ処理を含む画質良化のための画像処理設定を行うように初期設定する(S3)。
【0029】
図4にガンマ補正の線図を示す。線形の線図αは原画像の入出力データであって、ガンマ値が1.0である。このデータを再生するディスプレイ等に合わせ、より自然に近い画像を出力するためにガンマ補正処理を施したものが曲線の線図βである。
【0030】
続いて、カメラモジュール1は解像度検査用チャート11を撮像し、撮像した画像にガンマ処理を含む画像処理を行う(S4)。そして、撮像した画像は絵出しボード12aを介してパソコン13に送信され、解像度が算出され、カメラモジュール1の良否が判定される。
【0031】
ここで、検査は解像度に加えて階調及び色度についても同時に行う。この際に、階調及び色度についてはガンマ補正処理が施された状態で検査することが望ましい。しかし、解像度に関してはガンマ補正処理が施されていると、線形性を保てなくなるので、解像度検査用パターン面上の多少の輝度差、経時的な輝度変化、複数の検査装置を用いたときの輝度の微小な差等により、最終的に算出される解像度に差が生じ、バラツキが大きくなって検査精度が低下する。
【0032】
このために、パソコン13は入力した画像に対して、先にガンマ補正処理を施したのと逆の逆ガンマ補正処理を施してガンマ値が略1.0になるようにする(S5)。そして、線図αの如く線形に戻ったデータに基づいて解像度を算出する(S6)。
【0033】
パソコン13は、算出した解像度を所定の基準値と比較して解像度の良否を判定する(S7)。同時に、階調及び色度についても良否を判定する。
【0034】
以上の如く検査が終了すれば、パソコン13は終了信号を絵出しボード12aを介してカメラモジュール1に出力する(S8)。
【0035】
ここで、ガンマ補正処理を施した状態で輝度が変化したときの垂直解像度評価値の一例を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1によれば、輝度変化に伴って垂直解像度評価値も変化してしまう。
【0038】
なお、垂直解像度評価値は下記の式で算出する。
【0039】
垂直解像度評価値=垂直解像度検査パッチ/(白基準パッチ−黒基準パッチ)
次に、ガンマ補正処理を施した後に逆ガンマ補正処理を施した状態で輝度が変化したときの垂直解像度評価値の一例を表1に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表1によれば、輝度変化が生じても垂直解像度評価値が変化することはない。
【0042】
なお、水平解像度評価値についても同様の結果が得られる。
【0043】
以上の如く、カメラモジュールで撮像した画像にガンマ補正処理を施した後に、パソコンで逆ガンマ補正処理を施すことにより、解像度検査用チャートに輝度の変化が生じても正確な解像度検査を行うことができる。
【0044】
次に、以上と異なる形態の解像度検査装置について説明する。
【0045】
図4において、カメラモジュールで撮像した画像にガンマ補正処理を施すと曲線の線図βになるが、線図βは全てが曲線で形成されるのではなく、入力値のP1とP2との間の如く略線形性を保っている所もある。このため、P1からP2までの輝度領域に相当する輝度領域を設けた解像度検査用パターンを有する解像度検査用チャートを用いれば、前述の如き逆ガンマ補正処理を施す必要はない。
【0046】
このような解像度検査用チャートを図5に示す。
【0047】
図5の解像度検査用チャート21において、解像度検査用パターン21a,21b,21c,21d,21eは黒基準パッチ211、白基準パッチ212、複数の黒線と白線が同一幅で交互に繰り返して横に配置された垂直解像度パッチ213、及び複数の黒線と白線が同一幅で交互に繰り返して縦に配置された水平解像度パッチ214から成る。そして、黒基準パッチ211は図4のP1に相当する輝度に、白基準パッチ212は図4のP2に相当する輝度になるように形成されている。また、この解像度検査用チャート21にもRGBの3色から成る色彩検査用パターン21fと、黒、灰、白から成る階調検査用パターン21gが配置されている。
【0048】
このようにガンマ補正処理により非線形にならずに略線形を保つ画像の輝度領域に相当する輝度領域を設けた解像度検査用パターンを有する解像度検査用チャートを用いることにより、逆ガンマ補正処理を施すことなく正確な解像度検査を行うことができる。
【0049】
なお、ガンマ補正処理のデータが未知の場合は、実験データの例えば0から255の8ビット出力画像データに対して、入力値を5や10刻みで変化させながら出力データをプロットし、線形部分を確認すればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 カメラモジュール
11,21 解像度検査用チャート
11a,11b,11c,11d,11e,21a,21b,21c,21d,21e 解像度検査用パターン
11f,21f 色彩検査用パターン
11g,21g 階調検査用パターン
111,211 黒基準パッチ
112,212 白基準パッチ
113,213 垂直解像度パッチ
114,214 水平解像度パッチ
12 保持台
13 パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の解像度検査用パターンを有する解像度検査用チャートと、
検査すべきカメラモジュールにより撮像されガンマ補正処理が施された前記解像度検査用チャートの画像に対し、解像度を算出する制御装置と、
を備えた解像度検査装置であって、
前記制御装置は、前記画像に対しガンマ値が略1.0になるように逆ガンマ補正処理を施した後に解像度を算出することを特徴とする解像度検査装置。
【請求項2】
複数の解像度検査用パターンを有する解像度検査用チャートと、
検査すべきカメラモジュールにより撮像されガンマ補正処理が施された前記解像度検査用チャートの画像に対し、解像度を算出する制御装置と、
を備えた解像度検査装置であって、
前記解像度検査用チャートは、ガンマ補正処理により非線形にならずに略線形を保つ前記画像の輝度領域に相当する輝度領域を設けた解像度検査用パターンを有することを特徴とする解像度検査装置。
【請求項3】
前記解像度検査用チャートは少なくとも階調検査用パターンを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の解像度検査装置。
【請求項4】
前記制御装置は算出した解像度に基づいて前記カメラモジュールの良否を判定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の解像度検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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