説明

触媒の前処理方法

【課題】 簡便でかつ効率よく貴金属担持触媒から塩素を除去する前処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明における触媒の前処理方法は、触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持して調製した貴金属担持触媒を、スチームを流通させて塩素を除去してなるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の前処理方法に関するものであり、より詳しくは、触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持した触媒の脱塩素方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
触媒担体に貴金属を担持した触媒としては、触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持して調製した貴金属担持触媒がある。
【0003】
一般に、触媒中に塩素が残存すると、活性金属と塩素化合物を形成するため、所望の活性や選択性を得ることができない。また、当該触媒を使用したプラント運転中における塩素の流出およびそれに伴う材料の腐食も懸念される。
【0004】
触媒の調製時に塩化物を使用する触媒系においては、効率的に塩素を除去することが望まれるが、活性金属あるいは触媒担体と塩素が強く結合しており、単純な水処理では十分な脱塩素を行なうことができない。また、アンモニア水にて洗浄する方法でも、若干脱塩素率が向上するものの、その値は不十分でしかも廃水処理用に余分なコストが必要となる。
【0005】
【非特許文献1】触媒講座5(講談社サイエンティフィク)P.100〜101
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような実状のもと、本発明は創案されたものであってその目的は、簡便でかつ効率よく貴金属担持触媒から塩素を除去する前処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明の触媒の前処理方法は、触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持して調製した貴金属担持触媒を、スチームを流通させて塩素を除去してなるように構成される。
【0008】
また、本発明の触媒の前処理方法の好ましい態様として、スチームおよび水素を流通させて塩素を除去してなるように構成される。
【0009】
また、本発明の触媒の前処理方法の好ましい態様として、前記スチームに対する水素の含有割合が75%以下となるように構成される。
【0010】
また、本発明の触媒の前処理方法の好ましい態様として、スチーム、またはスチームおよび水素の流通温度が350℃以上となるように構成される。
【0011】
また、本発明の触媒の前処理方法の好ましい態様として、スチーム、またはスチームおよび水素の流通温度が350〜700℃となるように構成される。
【0012】
また、本発明の触媒の前処理方法の好ましい態様として、前記貴金属がRuまたはRhからなるように構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の触媒の前処理方法は、触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持して調製した貴金属担持触媒を、スチームを流通させて塩素を除去するように構成しているので、簡便でかつ効率よく貴金属担持触媒から塩素を除去することができるという極めて優れた効果が発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の触媒の前処理方法の要部は、触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持して調製した貴金属担持触媒に、スチームを流通させて塩素を除去しているところにある。以下、各構成要件ごとに説明する。
【0016】
〔触媒担体の形成工程〕
触媒担体の原料として、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)などの単一金属酸化物、あるいはこれらの2種以上を含有させた複合金属酸化物が挙げられる。これらの中では、酸化マグネシウム(MgO)を用いることが好ましい。
【0017】
このような触媒担体の原料(通常、粉末形態)は、モールドにより所定の形状に圧力成形された後に、焼成され、触媒担体が形成される。触媒担体の具体的形状に特に制限はないが、一般には、リング、サドル、マルチホール、ペレット等の工業触媒形態とすることが望ましい。また、破砕物のような不定形形状であってもよい。
【0018】
焼成条件として、焼成温度は、通常、1000℃以上、好ましくは、1000〜1300℃、さらに好ましくは、1100〜1200℃とされ、焼成時間は、1〜4時間とされる。焼成雰囲気は通常大気中で行われる。なお、上記触媒担体の原料の中には、カーボン等を含有させてもよい。
【0019】
焼成後の担体は、その比表面積が0.1〜1.0m2/g程度とすることが好ましい。比表面積は、いわゆる「BET」法により測定されたものである。一般には、焼成温度と焼成時間によって、得られる触媒または担体の比表面積をコントロールすることができる。
【0020】
〔触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持させて貴金属担持触媒を形成させる工程〕
上記の要領で作製された触媒担体に、貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持させる処理が行なわれる。
【0021】
貴金属塩化物水溶液としては、ルテニウム(Ru)やロジウム(Rh)の塩化物水溶液を使用することが好ましい。具体的には、ルテニウム(III)クロライド水溶液、ロジウム(III)クロライド水溶液などが好適例として挙げられる。担持させる具体的手法としては、スプレー(噴霧)含浸法や、浸漬法や、イオン交換法等を用いることができる。
【0022】
触媒担体に触媒金属を水溶液状で担持させた後、通常、乾燥工程が施される。乾燥温度は例えば、50〜150℃程度とされる。得られた乾燥物は、そのままの状態で触媒として用いることもできるが、通常は、300〜800℃程度の温度で焼成(2次焼成)される。このような2次焼成を行うことにより触媒金属の反応活性がさらに高まる。
【0023】
触媒コストの低減化を図るには、担体に担持させる触媒金属の担持量をできるだけ少なくさせると同時に、少ない量で十分な反応活性を発現させる必要がある。そのために触媒担体の結晶化を促進させることは好ましい手法の1つである。結晶化を促進させることにより、触媒担体の表面に活性金属が効率良く担持される。
【0024】
触媒貴金属の担持量は、重量基準で100〜10000wt-ppm、好ましくは
300〜5000wt-ppm、より好ましくは600〜2500wt-ppm担持させるのがよい。
【0025】
ルテニウム(Ru)やロジウム(Rh)等の触媒貴金属は、金属状態で担持されていても良いし、酸化物等の金属化合物の状態で担持されていてもよい。なお、上記触媒貴金属の担持量は、触媒担体に対する重量割合として算出される。
【0026】
〔貴金属担持触媒を、スチームを流通させて塩素を除去する工程〕
上記の要領で作製した貴金属担持触媒を、反応器に充填した後、スチームを流通させて触媒に残存している塩素を除去する触媒の前処理工程が行なわれる。
【0027】
塩素除去のために用いられるスチームの流通条件は、以下のように設定される。
【0028】
スチーム温度は、350℃以上、特に350〜700℃の範囲とすることが望ましい。この温度が350℃未満であると、担体の酸化マグネシウムが水和されて水酸化マグネシウムとなり触媒強度が低下するという不都合が生じる。この一方で、この温度が700℃を超えると、触媒の活性が低下するという不都合が生じる。
【0029】
スチーム圧力は、0.0〜1.0MPaG程度とされる。また、GHSV(gas hourly space velocity)は、10〜3000hr-1程度とされる。
【0030】
スチームのみでの処理でもよいが、水素との混合としてもよい。混合使用する場合には、スチームに対する水素の含有割合(モル比)が、75%以下、好ましくは、50%以下とするのがよい。水素が75%を超えて多くなりすぎると、スチームによる塩素除去の効果が十分でなくなってしまうという不都合が生じてしまう。
【実施例】
【0031】
以下、具体的実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0032】
[実験例I]
触媒調製例1
市販の純度98.7wt%以上の酸化マグネシウム(MgO)の粉末に滑択材として3.0wt%のカーボンを混合したものを、1/4インチペレットにタブレット形成した。次いで、このペレットを空気中で1180℃で3hr(時間)焼成し、MgO触媒担体を得た。
【0033】
次いで、このMgO触媒担体に向けて、0.2wt%のRuを含有するルテニウム(III)クロライド水溶液を噴霧(スプレー)してRuが付着したMgO触媒担体を得た。
次いで、Ruが付着したMgO触媒担体を空気中において110℃の温度で10hr乾燥させた後、空気中において400℃で2.0hr焼成し、Ruが担持されたMgO触媒担体を得た(調製触媒1)。
【0034】
この触媒はRuをRu金属として、MgO触媒担体(Ruの担持なしの状態)に対し300wt-ppmの割合で含有しており、触媒の比表面積は0.4m2/gであった。また、この触媒は、ClをMgO触媒担体(Ruの担持なしの状態)に対し660wt-ppmの割合で含有していた。
【0035】
触媒調製例2
市販の純度98.7wt%以上の酸化マグネシウム(MgO)の粉末に滑択材として3.0wt%のカーボンを混合したものを、1/4インチペレットにタブレット形成した。次いで、このペレットを空気中で1180℃で3hr(時間)焼成し、MgO触媒担体を得た。
【0036】
次いで、このMgO触媒担体に向けて、1.3wt%のRuを含有するルテニウム(III)クロライド水溶液を噴霧(スプレー)してRuが付着したMgO触媒担体を得た。
次いで、Ruが付着したMgO触媒担体を空気中において110℃の温度で10hr乾燥させた後、空気中において400℃で2.0hr焼成し、Ruが担持されたMgO触媒担体を得た(調製触媒2)。
【0037】
この触媒はRuをRu金属として、MgO触媒担体(Ruの担持なしの状態)に対し2000wt-ppmの割合で含有しており、触媒の比表面積は0.4m2/gであった。また、この触媒は、ClをMgO触媒担体(Ruの担持なしの状態)に対し710wt-ppmの割合で含有していた。
【0038】
脱塩素処理1
上記触媒調製例1で調製した触媒10ccを反応器に充填して、触媒の脱塩素試験(触媒の前処理試験)を行なった。
【0039】
充填した触媒に対して、スチームを流通させて触媒に残存する塩素を除去した。スチーム処理は、圧力0.0MPaG、温度400℃、GHSV=500hr-1の条件で行なった。脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、89%であった。
【0040】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0041】
なお、触媒強度(side-crashing-strength)は、JIS R2206に準じて、軸圧縮試験装置により計測を実施した。測定は、触媒を稜線で接触させ、上方から荷重を加えて触媒が破壊するに至る力を測定した。
【0042】
脱塩素処理2
上記脱塩素処理1におけるスチームの温度を400℃から500℃に変えた。それ以外は上記脱塩素処理1と同じ条件で、本発明の脱塩素処理2を行なった。
【0043】
脱塩素処理2における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、91%であった。
【0044】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0045】
脱塩素処理3
上記脱塩素処理1において使用した触媒調製例1の触媒(調製触媒1)を、触媒調製例2(調製触媒2)の触媒に変えた。さらに、上記脱塩素処理1におけるスチームの温度を400℃から600℃に変えた。それ以外は上記脱塩素処理1と同じ条件で、本発明の脱塩素処理3を行なった。
【0046】
脱塩素処理3における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、93%であった。
【0047】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0048】
脱塩素処理4
上記脱塩素処理3におけるスチームの温度を600℃から700℃に変えた。それ以外は上記脱塩素処理3と同じ条件で、本発明の脱塩素処理4を行なった。
【0049】
脱塩素処理4における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、95%であった。
【0050】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0051】
脱塩素処理5
上記脱塩素処理1において使用したスチームの半分を水素に置換した。すなわち、水素:スチーム=1:1とした。それ以外は上記脱塩素処理1と同じ条件で、本発明の脱塩素処理5を行なった。
【0052】
脱塩素処理5における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、92%であった。
【0053】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0054】
脱塩素処理6
上記脱塩素処理5におけるスチームの温度を400℃から600℃に変えた。それ以外は上記脱塩素処理5と同じ条件で、本発明の脱塩素処理6を行なった。
【0055】
脱塩素処理6における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、95%であった。
【0056】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0057】
脱塩素処理7
上記脱塩素処理5における水素:スチーム条件を、水素:スチーム=1:20の条件に変えた。触媒は触媒調製例2(調製触媒2)を用いた。それ以外は上記脱塩素処理1と同じ条件で、本発明の脱塩素処理7を行なった。
【0058】
脱塩素処理7における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、91%であった。
【0059】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0060】
脱塩素処理8
上記脱塩素処理7におけるスチームの温度を400℃から600℃に変えた。それ以外は上記脱塩素処理7と同じ条件で、本発明の脱塩素処理8を行なった。
【0061】
脱塩素処理8における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、94%であった。
【0062】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0063】
脱塩素処理9
上記脱塩素処理5における水素:スチーム条件を、水素:スチーム=2.7:1の条件に変えた。それ以外は上記脱塩素処理1と同じ条件で、本発明の脱塩素処理9を行なった。
【0064】
脱塩素処理9における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、80%であった。
【0065】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0066】
脱塩素処理10
上記脱塩素処理1におけるスチームの温度を400℃から300℃に変えた。それ以外は上記脱塩素処理1と同じ条件で、本発明の脱塩素処理10を行なった。
【0067】
脱塩素処理10における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、85%であった。
【0068】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は22N/mmであった。スチームの温度を300℃までに下げると、塩素除去率は85%程度までには維持できるが、脱塩素処理による触媒強度の劣化が生じる。
【0069】
比較脱塩素処理1*
上記脱塩素処理1で用いたスチームを、水素(H2)に変えた。それ以外は上記脱塩素処理1と同じ条件で、比較例1*である比較脱塩素処理1*を行なった。
【0070】
比較脱塩素処理1*における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、22%であった。
【0071】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0072】
比較脱塩素処理2*
上記脱塩素処理2で用いたスチームを、水素(H2)に変えた。それ以外は上記脱塩素処理2と同じ条件で、比較例2*である比較脱塩素処理2*を行なった。
【0073】
比較脱塩素処理2*における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、41%であった。
【0074】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0075】
比較脱塩素処理3*
上記脱塩素処理3で用いたスチームを、水素(H2)に変えた。それ以外は上記脱塩素処理3と同じ条件で、比較例3*である比較脱塩素処理3*を行なった。
【0076】
比較脱塩素処理3*における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、65%であった。
【0077】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0078】
比較脱塩素処理例4*
上記脱塩素処理4で用いたスチームを、水素(H2)に変えた。それ以外は上記脱塩素処理4と同じ条件で、比較例4*である比較脱塩素処理4*を行なった。
【0079】
比較脱塩素処理4*における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、78%であった。
【0080】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0081】
比較脱塩素処理例5*
上記脱塩素処理1で用いたスチームを、窒素(N2)に変えた。それ以外は上記脱塩素処理1と同じ条件で、比較例5*である比較脱塩素処理5*を行なった。
【0082】
比較脱塩素処理5*における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、0%であった。
【0083】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0084】
比較脱塩素処理例6*
上記脱塩素処理2で用いたスチームを、窒素(N2)に変えた。それ以外は上記脱塩素処理2と同じ条件で、比較例6*である比較脱塩素処理6*を行なった。
【0085】
比較脱塩素処理6*における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、15%であった。
【0086】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0087】
比較脱塩素処理例7*
上記脱塩素処理3で用いたスチームを、窒素(N2)に変えた。それ以外は上記脱塩素処理3と同じ条件で、比較例7*である比較脱塩素処理7*を行なった。
【0088】
比較脱塩素処理7*における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、57%であった。
【0089】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0090】
比較脱塩素処理例8*
上記脱塩素処理4で用いたスチームを、窒素(N2)に変えた。それ以外は上記脱塩素処理4と同じ条件で、比較例8*である比較脱塩素処理8*を行なった。
【0091】
比較脱塩素処理8*における脱塩素開始から10時間経過後の塩素除去率は、71%であった。
【0092】
脱塩素前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、脱塩素処理終了後の触媒強度は31N/mmであった。脱塩素処理による触媒強度の劣化は見られなかった。
【0093】
比較脱塩素処理例9*
上記脱塩素処理1におけるスチーム処理を、水洗処理に変えた。すなわち、室温にて、触媒調製例1で調製した触媒30ccを、1L(リットル)の純水で5回、室温にて洗浄し、脱塩素処理を行なった。
【0094】
その結果、塩素除去率は、30%であった。
【0095】
水洗処理前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、水洗処理終了後の触媒強度は15N/mmであった。水洗処理によって、触媒強度は大きく劣化した。
【0096】
比較脱塩素処理例10*
上記脱塩素処理1におけるスチーム処理を、アンモニア水による洗浄処理に変えた。すなわち、触媒調製例1で調製した触媒30ccを、1リットルの0.2Nアンモニア水で5回、室温にて洗浄し、脱塩素処理を行なった。
【0097】
その結果、塩素除去率は、40%であった。
【0098】
水洗処理前の触媒強度(side-crashing-strength)は、31N/mmであり、水洗処理終了後の触媒強度は16N/mmであった。NH3処理によって、触媒強度は大きく劣化した。
【0099】
上記の実験結果を下記表1にまとめて示した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
[実験例II]
触媒調製例3
市販の純度98.7wt%以上の酸化マグネシウム(MgO)の粉末に滑択材として3.0wt%のカーボンを混合したものを、1/4インチペレットにタブレット形成した。次いで、このペレットを空気中で1180℃で3hr(時間)焼成し、MgO触媒担体を得た。
【0103】
次いで、このMgO触媒担体に向けて、1.3wt%のRhを含有するロジウム(III)クロライド水溶液を噴霧(スプレー)してRhが付着したMgO触媒担体を得た。
【0104】
次いで、Rhが付着したMgO触媒担体を空気中において110℃の温度で10hr乾燥させた後、空気中において600℃で2.0hr焼成し、Rhが担持されたMgO触媒担体を得た(調製触媒3)。
【0105】
この触媒はRhをRh金属として、MgO触媒担体(Rhの担持なしの状態)に対し2000wt-ppmの割合で含有しており、触媒の比表面積は0.4m2/gであった。また、この触媒は、ClをMgO触媒担体(Rhの担持なしの状態)に対し650wt-ppmの割合で含有していた。
【0106】
この調製触媒3を用いて、上記実験例Iに準じた種々の脱塩素処理の実験を行なったところ、表1に示されるのと同様な傾向の結果が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持する場合の、貴金属担持触媒の調製に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担体に貴金属塩化物水溶液を使用して貴金属を担持して調製した貴金属担持触媒を、スチームを流通させて塩素を除去してなることを特徴とする触媒の前処理方法。
【請求項2】
スチームおよび水素を流通させて塩素を除去してなる請求項1に記載の触媒の前処理方法。
【請求項3】
前記スチームに対する水素の含有割合が、75%以下である請求項2に記載の触媒の前処理方法。
【請求項4】
前記スチーム、または前記スチームおよび水素の流通温度が350℃以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の触媒の前処理方法。
【請求項5】
前記スチーム、または前記スチームおよび水素の流通温度が350〜700℃である請求項4に記載の触媒の前処理方法。
【請求項6】
前記貴金属がRuまたはRhである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の触媒の前処理方法。

【公開番号】特開2007−325991(P2007−325991A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157248(P2006−157248)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【Fターム(参考)】