説明

触媒及びその製造方法

【課題】反応の際の炭素の析出を抑制することができ、寿命が長い、触媒を提供する。
【解決手段】炭素材料から成る担体と、この担体に担持された、触媒成分であるニッケルと、担体に担持されたアルカリ土類金属とを含み、水素を使用した昇温脱離法で分析したときに、400〜550℃の第1の温度領域における水素の脱離量Xの、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yに対する比X/Yが、X/Y<1である触媒を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒及びその製造方法に係わり、バイオマスのガス化等の有機物の熱分解反応又は有機物の接触的合成反応用の触媒、水素化触媒、脱水素化触媒として用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
有限な資源である化石燃料に代わる資源として、循環型エネルギー資源であるバイオマスが注目を集めている。
バイオマスの利用方法の1つとして、ガス化が挙げられる。
木材や家畜糞尿等のバイオマス(有機廃棄物)をガス化することにより、水素やメタン等の燃料ガスと、タールと、固体残渣(チャー)とが生成する。
従来は、800℃以上、例えば1000℃〜1200℃の高温領域で、ガス化が行われていた。
【0003】
しかしながら、高温領域でガス化を行うためには、使用する熱処理炉に耐熱性が必要となるため、熱処理炉が高価になってしまう。また、ガス化して得られる燃料ガスの発熱量が小さいため、エネルギーの利用効率が低かった。
【0004】
そこで、触媒を使用することにより、従来よりも低い温度領域の500℃〜800℃でガス化を行うことが提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−229548号公報
【特許文献2】特開2008−132458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された方法では、触媒を構成する要素として、高価な金属であるセリウムを含むセリウム化合物が必須である。
前記特許文献2に記載された方法では、触媒を構成する要素として、高価な金属である白金を含む白金族化合物が必須である。
従って、いずれの方法も、コストや資源の面で問題がある。
【0007】
また、触媒を使用してガス化を行った場合には、ガス化の際に生じるタールによって、触媒の表面に炭素が析出することから、触媒が失活してしまう。
そのため、触媒の寿命が短くなるという問題がある。
【0008】
そして、1000℃〜1200℃の高温領域でガス化を行った場合には、タールとしてベンゼンやナフタレン等の芳香族炭化水素が生成するのに対して、500℃〜800℃でガス化を行った場合には、タールとしては、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素が生成する。
そのため、500℃〜800℃でガス化を行う場合には、脂肪族炭化水素からの炭素析出を抑制することが必要になる。
【0009】
上述した問題の解決のために、本発明においては、反応の際の炭素の析出を抑制することができ、寿命が長い、触媒及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の触媒は、炭素材料から成る担体と、この担体に担持された、触媒成分であるニッケルと、担体に担持されたアルカリ土類金属とを含み、水素を使用した昇温脱離法で分析したときに、400〜550℃の第1の温度領域における水素の脱離量Xの、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yに対する比X/Yが、X/Y<1であるものである。
【0011】
本発明の触媒の製造方法は、褐炭からなる担体に、アルカリ土類金属の水酸化物と、塩化アンモニウム水溶液とを添加して、担体にアルカリ土類金属を担持させる工程と、アルカリ土類金属を担持させた担体に、触媒成分であるニッケルを含む材料と、濃アンモニア水とを添加して、担体にさらに触媒成分を担持させる工程と、生成物をろ過して、洗浄する工程と、その後、窒素もしくは不活性ガスの雰囲気中で焼成する焼成工程とを含むものである。
【0012】
上述の本発明の触媒の構成によれば、担体に担持された、触媒成分であるニッケルを含むことにより、この触媒成分によって、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応を促進することができる。例えば、有機廃棄物をガス化して燃料ガスを生成させることができる。また、触媒成分の触媒作用によって、500℃〜700℃の低温領域でガス化を行うことが可能になる。
また、アルカリ土類金属を含むことにより、このアルカリ土類金属を助触媒として作用させて、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際において触媒成分のニッケルに炭素が析出して、触媒が失活することを抑制することができる。
さらに、水素を使用した昇温脱離法で分析したときに、400〜550℃の第1の温度領域における水素の脱離量Xの、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yに対する比X/Yが、X/Y<1であることにより第2の温度領域における水素の脱離量Yが相対的に多くなっている。第2の温度領域における脱離は、高い脱離エネルギーを要する、脱離しにくい水素種に対応しており、この水素種によよって炭素析出反応を抑制することができる。
【0013】
上述の本発明の触媒の製造方法によれば、褐炭からなる担体に、アルカリ土類金属の水酸化物と、塩化アンモニウム水溶液とを添加して、担体にアルカリ土類金属を担持させる工程により、担体の褐炭に存在するカルボキシル基を用いてイオン交換がなされて、担体にアルカリ土類金属が担持される。
また、アルカリ土類金属を担持させた担体に、触媒成分であるニッケルを含む材料と、濃アンモニア水とを添加して、担体にさらに触媒成分を担持させる工程により、担体の褐炭に存在するカルボキシル基を用いてイオン交換がなされて、担体にアルカリ土類金属に加えて、触媒成分であるニッケルが担持される。なお、このとき、濃アンモニア水によりpHが高くなるため、イオン交換されなかった余分なアルカリ土類金属を水酸化物として除去することができる。
そして、触媒に担持されたアルカリ土類金属により、このアルカリ土類金属を助触媒として作用させて、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際において触媒成分であるニッケルに炭素が析出し、触媒が失活することを抑制することができる。
また、生成物をろ過して、洗浄する工程により、溶媒成分(塩化アンモニウム水溶液や濃アンモニア水)を除去することができる。
さらに、窒素もしくは不活性ガスの雰囲気中で焼成する焼成工程により、不要な水分等を除去して、ニッケル(触媒成分)とアルカリ土類金属とが担体に担持された触媒を製造することができる。そして、窒素もしくは不活性ガスの雰囲気中で焼成工程を行うので、担体の褐炭が酸素等によって分解することがなく、担体が保持される。
【0014】
上述の本発明の触媒及び本発明の触媒の製造方法において、さらに、アルカリ土類金属をマグネシウムとすることができる。
これにより、高い触媒活性が得られると共に、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際における炭素の析出を少なくすることができる。また、低コストで触媒を製造することができ、安価な触媒を構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の触媒及びその製造方法によれば、500℃〜700℃の低温領域でガス化等の反応を行うことが可能になる。
そして、担体に担持される触媒成分のニッケルの濃度を高く保つことができるので、充分な触媒活性が得られる。
また、アルカリ土類金属によって、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際において、触媒成分のニッケルに炭素が析出して触媒が失活することを抑制することができるので、触媒の寿命を長くすることができる。
【0016】
従って、本発明により、低温領域でガス化等の反応を行うことができ、充分な触媒活性が得られると共に、寿命が長い触媒を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の触媒の実施例の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】実施例及び比較例の各試料のXRD法の測定結果を示す図である。
【図3】図2の46度〜58度の部分を拡大した図である。
【図4】A、B 実施例1の試料のTEM像である。 C 実施例1の試料の粒子径の分布である。
【図5】A、B 比較例1の試料のTEM像である。 C 比較例1の試料の粒子径の分布である。
【図6】実施例1の試料及び比較例1の試料の温度による質量の変化を示す図である。
【図7】A〜D 炭素析出後の状態の実施例1の試料のTEM像である。
【図8】A〜D 炭素析出後の状態の比較例1の試料のTEM像である。
【図9】触媒活性の測定を行った温度プロファイルである。
【図10】実施例1の試料と比較例1の試料に対してメタネーション反応を行ったときの温度とメタンの発生量との関係を示す図である。
【図11】昇温脱離法による測定を行った温度プロファイルである。
【図12】A、B 実施例及び比較例の各試料の水素を使用した昇温脱離法による測定結果である。
【図13】A、B 実施例及び比較例の各試料のXPSによるNiの電子状態の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の概要について説明する。
本発明の触媒においては、炭素材料から成る担体と、この担体に担持された、触媒成分であるニッケルと、担体に担持されたアルカリ土類金属とを含んで構成する。そして、水素を使用した昇温脱離法で分析したときに、400〜550℃の第1の温度領域における水素の脱離量Xの、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yに対する比X/Yが、X/Y<1である構成とする。
また、本発明の触媒の製造方法においては、褐炭からなる担体に、アルカリ土類金属の水酸化物と、塩化アンモニウム水溶液とを添加して、担体にアルカリ土類金属を担持させる工程と、アルカリ土類金属を担持させた担体に、触媒成分であるニッケルを含む材料と、濃アンモニア水とを添加して、担体にさらに触媒成分を担持させる工程と、生成物をろ過して、洗浄する工程と、その後、窒素もしくは不活性ガスの雰囲気中で焼成する焼成工程とを含んで、触媒を製造する。
【0019】
本発明の触媒において、炭素材料から成る担体としては、例えば、褐炭、即ち、石炭化度の低い低品位炭を使用することができる。
なお、担体に用いる炭素材料は、褐炭に限定されるものではない。炭素材料に触媒成分(ニッケル)とアルカリ土類金属触媒とを担持させた触媒が、水素を使用した昇温脱離法で分析したときに、400〜550℃の第1の温度領域における水素の脱離量Xの、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yに対する比X/Yが、X/Y<1となるものであれば良い。このような炭素材料としては、550〜800℃の第2の温度領域において、スピルオーバーや元来担体に含まれている水素の存在による、より強く保持された水素を多く含む炭素材料が考えられる。
【0020】
本発明の触媒において、触媒成分としては、遷移金属であるニッケル(Ni)を使用する。触媒成分としてニッケルを使用することにより、高い触媒活性が得られ、また、安価な触媒を構成することができる。
【0021】
本発明の触媒において、アルカリ土類金属としては、Mg,Ba,Caを使用することができる。これらのうち、特にMgを使用すると、500℃〜700℃の低温領域におけるガス化等の反応の際の炭素の析出を抑制する効果がより大きくなる。
アルカリ土類金属は、金属単体もしくは酸化物(MgO,BaO,CaO)等の化合物の状態で、触媒中に存在する。
【0022】
本発明の触媒においては、さらに、水素を使用した昇温脱離法で分析したときに、400〜550℃の第1の温度領域における水素の脱離量Xの、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yに対する比X/Yが、X/Y<1である構成とする。
第2の温度領域において、スピルオーバーや元来担体に含まれている水素の存在による、より強く保持された水素を多く含む、褐炭等の炭素材料では、第2の温度領域における水素の脱離量Yが、第1の温度領域における水素の脱離量Xに対して相対的に大きくなるので、X/Y<1となる。
これに対して、アルミナや炭素材料の中でもカーボンブラックやナノシェル炭素等は、水素のスピルオーバー現象を生じない。そして、これらの材料を担体として使用して、触媒成分とアルカリ土類金属を担体に担持させても、第2の温度領域における水素の脱離量Yが少ないので、第1の温度領域における水素の脱離量Xの、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yに対する比X/Yが、X/Y>1となる。
これらの比X/Yの値の違いから、スピルオーバーした水素や元来担体に保持されている水素が、炭素の析出反応を抑制する効果があり、褐炭等の炭素材料は水素のリザーバーとなり、触媒成分に付着した炭素原子を、炭素材料に蓄えられた水素で洗い流す作用が生じていると推測される。
【0023】
さらに、本発明の触媒では、アルカリ土類金属を担体に担持させるので、比X/Yが少し大きくなり、炭素析出量が減少する。比X/Yが大きくなることは、触媒成分のニッケル上の触媒活性点が相対的に増加することを意味しており、アルカリ土類金属を担体に担持させることによって、触媒成分のニッケル上の触媒活性点が相対的に増加すると推測される。
【0024】
なお、本発明の触媒においては、上述した3つの成分(担体、触媒成分、アルカリ土類金属)以外の他の成分を含有していても構わない。
他の成分の含有量は、本発明の構成である比X/Y<1を満たし、かつ、触媒の活性を大きく低下させない範囲であれば良い。
【0025】
本発明の製造方法において使用する、触媒成分のニッケルを含む材料としては、各種のニッケル化合物を使用することができる。例えば、ニッケル塩の水溶液を使用することができる。
そして褐炭からなる担体と、ニッケルを含む化合物を溶媒に溶解又は分散させたものとを混合した後に、好ましくは、乾燥や熱処理等により、溶媒を除去する。例えば、100℃以上で乾燥させて、水溶液の水分を除去する。
【0026】
本発明の触媒及び本発明の触媒の製造方法は、有機物の熱分解反応又は有機物の接触的合成反応の様々な反応に適用することができる。
例えば、有機廃棄物のガス化反応は、有機物の熱分解反応の1つとして挙げられる。
バイオマス(有機廃棄物)の低温領域におけるガス化反応は、500℃〜700℃で行われる。
本発明の触媒は、ニッケルからなる触媒成分を含むので、この低温領域においてガス化反応を行うことができる。
【0027】
本発明による触媒は、水素を使用した昇温脱離法で分析したときに、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量が相対的に多いという特徴を有するので、第1の温度領域等の第2の温度領域よりも低い温度領域では水素をある程度の量担体中に保持することができると考えられる。
従って、本発明による触媒を水素化触媒や脱水素化触媒としても適用することができる。
【0028】
本発明の触媒は、アルカリ土類金属を含んでいる。
これにより、このアルカリ土類金属を助触媒として作用させて、有機廃棄物のガス化等の、有機物の熱分解反応又は有機物の接触的合成反応用の際において、触媒成分のニッケルに炭素が析出して触媒が失活することを抑制することができる。
従って、触媒の寿命を長くすることができる。
また、水素化触媒や脱水素化触媒として適用する場合でも、アルカリ土類金属を助触媒として作用させて、触媒活性を増大させることができる。
【0029】
本発明の触媒の製造方法では、褐炭からなる担体に、先にアルカリ土類金属を担持させる工程を行う。その後、担体に、触媒成分であるニッケルを担持させる工程を行う。
ニッケルを担持させる工程では、アルカリ土類金属を担持させた担体に、ニッケルを含む材料と濃アンモニア水を添加している。これにより、担体の褐炭に存在するカルボキシル基を用いてイオン交換がなされて、担体にアルカリ土類金属に加えて、触媒成分であるニッケルが担持される。このとき、濃アンモニア水によりpHが高くなるため、イオン交換されなかった余分なアルカリ土類金属を水酸化物として除去することができる。
さらに、本発明の触媒の製造方法では、ニッケルを担持させた後の生成物をろ過して、洗浄する工程を行う。
このろ過して、洗浄する工程により、濃アンモニア水等の溶媒成分を除去することができる。
さらにまた、本発明の触媒の製造方法では、窒素もしくは不活性ガスの雰囲気中で焼成する焼成工程を行う。
この焼成工程により、不要な水分等を除去して、ニッケル(触媒成分)とアルカリ土類金属とが担体に担持された触媒を製造することができる。このとき、窒素もしくは不活性ガスの雰囲気中で焼成を行うので、担体の褐炭が酸素等によって分解することがない、
【0030】
これに対して、触媒成分のニッケルとアルカリ土類金属とを同時に担持させる製造方法も考えられる。
この場合、ニッケルを担持させるには、Ni(NO・6HOを濃アンモニア水に溶かして、高いpHで褐炭のカルボキシル基とのイオン交換を行うことになるが、アンモニア水中では塩化マグネシウムが水酸化マグネシウムとなって沈殿してしまうため、マグネシウムをイオン交換させることができない。水酸化マグネシウムは、酸やアンモニウム塩水溶液には可溶であるが、濃アルカリには不溶である。
【0031】
触媒成分のニッケルを先に褐炭に担持させて、その後にアルカリ土類金属を担持させる製造方法も考えられる。
この場合、ニッケルを担持させるときに使用したアンモニアが担体の表面に残存するため、マグネシウムが水酸化マグネシウムとなり、ニッケルの担持を阻害してしまう。
また、水酸化マグネシウムは、pH7程度の塩化アンモニウム水溶液に溶解して使用するが、その際に、高いpHで担持させたニッケルが再び水溶液中に溶出してしまう可能性がある。
【0032】
従って、本発明の触媒の製造方法のように、褐炭からなる担体に、先にアルカリ土類金属を担持させる工程を行った後に、触媒成分であるニッケルを担持させる工程を行うのがよい。
【実施例】
【0033】
続いて、実際に触媒を作製して、本発明の触媒の構成と、類似の他の触媒の構成とについて、特性等の比較を行った。
【0034】
(実施例1;Ni/Mg/LY)
以下に説明するようにして、本発明の構成の触媒の試料を作製した。
【0035】
まず、触媒の製造に使用する、ニッケルアンミン錯体の調整を行った。即ち、硝酸ニッケル六水和物に過剰の濃アンモニア水を加えて、30%過酸化水素水を少量加えた。
次に、不純物をろ別して、ろ液が青紫色になるまで濃アンモニア水を加えて、そこに充分に過剰な塩化アンモニウムを加えた。紫色の固体が析出するので、これをろ別した。
さらに、熱アンモニア水で再結晶させて、ろ別した。得られた結晶を、濃アンモニア水で洗浄し、次に濃アンモニア水とエタノールの1:1混合物で洗浄し、最後にエタノールで洗浄した。そして、空気中にて、アンモニア臭がなくなるまで乾燥させた。
このようにして、ニッケルアンミン錯体[Ni(NH]Clを得た。
【0036】
続いて、図1に示す製造方法のフローチャートに従い、触媒の試料を作製した。
濃度1モル/dm(=10モル/m)の塩化アンモニウム水溶液に、適量の水酸化マグネシウムを溶解させて、そこに粒径0.25mm以下に篩分けした褐炭(Loy Yang炭;LY炭)を加えて、常温で24時間撹拌することにより、マグネシウムを褐炭に担持させた。マグネシウムの担持量は、褐炭100質量%に対して、5質量%とした。
次に、吸引ろ過により、マグネシウムを担持した褐炭の試料(以下、Mg/LYとする)を回収した。
続いて、このMg/LYの試料を、ニッケルアンミン錯体[Ni(NH]Clの濃アンモニア水溶液に加えて、常温で24時間撹拌した。これにより、マグネシウムに加えて、ニッケルを褐炭に担持させた。なお、ニッケルの担持量は、褐炭100質量%に対して、20質量%とした。
その後、吸引ろ過を行い、アンモニア臭がなくなるまで蒸留水で洗浄した後、107℃で24時間乾燥させた。
次に、窒素流通下で、焼成工程を行った。焼成工程の温度は、常温から600℃まで30分で昇温させた後に、600℃で30分保持させた。
このようにして、触媒の試料(Ni/Mg/LY)を作製して、実施例1の試料とした。
【0037】
(比較例1;Ni/LY)
担体となる褐炭(Loy Yang炭;LY炭)の粉末と、濃アンモニア水と、ニッケルアンミン錯体[Ni(NH]Clとを混合して、常温で24時間撹拌した。
ニッケルアンミン錯体[Ni(NH]Clの量は、褐炭100質量%に対して、ニッケルが20質量%となるようにした。
その後、実施例1と同様にして、吸引ろ過と蒸留水による洗浄を行った後、乾燥工程と焼成工程とを行い、触媒の試料を作製して、比較例1の試料(以下、Ni/LYと呼ぶ)とした。
【0038】
(XRD測定)
まず、実施例1及び比較例1の各試料について、XRD(粉末X線回折)法により、測定を行った。
各試料の測定結果を上下に並べて、図2に示す。また、図2の2θ=46度〜58度の部分を拡大して、図3に示す。図2において、金属Niのピーク、MgOのピーク、炭素Cのピークを、それぞれ印で示している。
【0039】
図2及び図3に示すように、実施例1のNi/Mg/LYでは、MgOのピークが現れているが、比較例1のNi/LYでは現れていない。
【0040】
図2の52度付近のNiのピークから、Niの結晶子径を求めることができる。このピークから求めた、各例のNiの結晶子径を、表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から、Niの結晶子径の大きさは、実施例1と比較例1とで、ほぼ同等であることがわかる。
【0043】
(TEM観察)
実施例1及び比較例1の各試料について、TEM(透過型電子顕微鏡)により状態を観察した。実施例1の試料のTEM像を図4A及び図4Bに示し、比較例1の試料のTEM像を図5A及び図5Bに示す。
また、観察されたTEM像から、各粒子の粒子径を求めた。実施例1の試料と比較例1の試料の粒子径の分布を、図4Cと図5Cにそれぞれに示す。
【0044】
図4Cより、実施例1の試料の平均粒子径は4.43nmであり、図5Cより、比較例1の試料の平均粒子径は4.96nmである。
また、比較例1の試料の方が、平均粒子径が大きくなっており、10nm程度の粒子径の粒子の割合が多くなっている。
【0045】
(炭素析出量の比較)
次に、実施例1及び比較例1の触媒の各試料を使用して、触媒への炭素の析出量を比較した。なお、触媒へ炭素を析出させる原因物質である、タールのモデル物質として、n−ヘキサンを用いた。
【0046】
TG(熱重量測定)装置の石英セルに、各試料を充填した。
また、n−ヘキサンを入れた容器を恒温槽内に入れて、Arガスボンベからの配管と弁を介して接続すると共に、リボンヒーターを通してTG装置にArガスとn−ヘキサンガスとが供給されるように配管を接続した。
そして、恒温槽を33℃に保ち、n−ヘキサンが蒸気圧35kPaとなるようにして、Arガスとn−ヘキサン蒸気とをTG装置に供給すると共に、カーテンガスとしてArガスをTG装置に供給した。
この状態で、TG装置の加熱部によって、室温から700℃まで10℃/分で昇温させながら、TG装置によって試料の質量を測定した。
【0047】
測定結果として、各試料の温度による質量の変化を、図6に示す。炭素の析出量が多いものほど、質量変化が大きくなる。
図6より、実施例1のNi/Mg/LYは、比較例1のNi/LYと比較して、質量変化が小さくなっている。即ち、炭素の析出量が抑制されていると考えられる。
【0048】
炭素析出後の状態の各試料について、TEM像を観察した。各試料のTEM像を、図7A〜図7Dと図8A〜図8Dに示す。図7A〜図7Dは実施例1のNi/Mg/LYであり、図8A〜図8Dは比較例1のNi/LYである。図7B及び図7Dは、図7A及び図7Cの一部の領域を拡大した図であり、図8B及び図8Dは、図8A及び図8Cの一部の領域を拡大した図である。
図7A及び図7Bに示すように、実施例1のNi/Mg/LYは、カーボンナノファイバーが形成されている。また、図7C及び図7Dに示すように、Niの表面を炭素が被覆している。
比較例1のNi/LYでは、図8A〜図8Dに示すように、Ni粒子同士の距離が近く、一部のNi粒子が凝集している。また析出炭素は確認できなかった。
【0049】
(触媒活性の比較)
実施例1及び比較例1の触媒の試料を使用して、触媒活性の比較を行った。
図9に示す温度プロファイルに従い、測定を行った。
図9に示すように、まず、ステップST1として、各試料を20mg採取して、水素流通下(流量 50ml/分)で、350℃まで10℃/分で昇温させた後に、350℃で30分保持させた。
その後、ステップST2として、100℃まで放冷した。
さらに、ステップST3として、100℃の状態で保持してガス置換を行った。
次に、ステップST4として、メタネーション反応を行った。具体的には、体積比がHe:H:CO=18:24:8で合計50mlとなるようにした混合ガス雰囲気中で、100℃から700℃まで10℃/分で昇温させた。
このときの反応は、以下の化学反応式で表わされる。
CO+3H→CH+H
即ち、一酸化炭素と水素との反応により、メタンと水が発生する。
【0050】
実施例1のNi/Mg/LYと、比較例1のNi/LYとについて、メタネーション反応における、温度とメタンCHの発生量との関係を、図10に示す。
図10より、実施例1のNi/Mg/LYは、比較例1のNi/LYと比較して、反応開始温度が低く、またメタンの発生のピーク温度が200℃程度低くなっている。メタンの発生量は、比較例1より若干少ないが、同等に近い量となっている。
【0051】
続いて、さらに、本発明の構成以外のニッケルを含有する触媒を用意して、実施例1の試料と特定の比較を行った。
【0052】
(比較例2;Ni−Mg/Al
以下に説明するようにして、担体をAlとして、Ni及びMgを含有する触媒の試料を作製した。
まず、担体のγ−Alの粉末に、硝酸ニッケル水溶液及び硝酸マグネシウム水溶液を添加して、これらを混合した。添加する量は、Al100質量%に対して、Niが20質量%、Mgが5質量%となるようにした。
次に、混合物を100℃で乾燥させることにより、溶媒を除去して、触媒前駆体を作製した。
次に、触媒前駆体を熱処理炉内に入れて、熱処理炉内で750℃まで10℃/分で昇温させて、750℃で1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出した。
次に、水素雰囲気とした熱処理炉内で、650℃まで20℃/分で昇温させて、650℃で1時間保持することにより、還元工程を行った。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出した。
このようにして、触媒の試料を作製して、比較例2の試料とした。
なお、実施例1の試料は、右のMgを先に担持させた後に左のNiを担持させていることから、Ni/Mgと表記したが、比較例2の試料は、NiとMgを同時に担持させていることから、Ni−Mgと表記している。以下の試料でも同様とする。
【0053】
(比較例3;Mg/Ni/Al
担体のγ−Alの粉末に、硝酸ニッケル水溶液を添加して、これらを混合した。添加する量は、Al100質量%に対して、Niが20質量%となるようにした。
次に、熱処理炉内で、750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出して、硝酸マグネシウム水溶液を添加して、混合した。添加する量は、最初の担体のAl100質量%に対して、Mgが5質量%となるようにした。
次に、熱処理炉内で750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、比較例2と同様にして、還元工程を行い、触媒の試料を作製して、比較例3の試料とした。
【0054】
(比較例4;Ni/Mg/Al
担体のγ−Alの粉末に、硝酸マグネシウム水溶液を添加して、これらを混合した。添加する量は、Al100質量%に対して、Mgが5質量%となるようにした。
次に、熱処理炉内で750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出して、硝酸ニッケル水溶液を添加して、混合した。添加する量は、最初の担体のAl100質量%に対して、Niが20質量%となるようにした。
次に、熱処理炉内で、750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、比較例2と同様にして、還元工程を行い、触媒の試料を作製して、比較例4の試料とした。
【0055】
(比較例5;自作Ni/Al
担体のγ−Alの粉末に、硝酸ニッケル水溶液を添加して、これらを混合した。添加する量は、Al100質量%に対して、Niが20質量%となるようにした。
その後、比較例2と同様にして、か焼工程と還元工程とを行い、触媒の試料を作製して、比較例5の試料とした。
【0056】
(比較例6;Ni/XC)
カーボンブラックVulcanXC72R(以下、XCとする)に対して、ニッケルを含浸担持させた。
具体的には、Ni(NO・6HOを蒸留水200mlに溶かして、カーボンブラックXCと共にナスフラスコに入れて、分散性を上げるために少量のメタノールを加えた。その後、超音波で10分間撹拌し、湯浴の温度を60℃としてロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。さらに、80℃で一晩真空乾燥を行った。
なお、ニッケルの量は、カーボンブラックXCの100質量%に対して、8質量%となるようにした。
さらに、水素:窒素=1:9(50ml:450ml)の混合ガス雰囲気中で、350℃まで20℃/分で昇温させた後、350℃で1時間保持して、還元を行った。
このようにして、触媒の試料を作製して、比較例6の試料とした。
【0057】
(比較例7;Ni/NS)
ナノシェル炭素(NS)に対して、ニッケルを含浸担持させた。
具体的には、Ni(NO・6HOを蒸留水200mlに溶かして、ナノシェル炭素(NS)と共にナスフラスコに入れて、分散性を上げるために少量のメタノールを加えた。その後、超音波で10分間撹拌し、湯浴の温度を60℃としてロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。さらに、80℃で一晩真空乾燥を行った。
なお、ニッケルの量は、ナノシェル炭素(NS)の100質量%に対して、10質量%となるようにした。
さらに、水素:窒素=1:9(50ml:450ml)の混合ガス雰囲気中で、350℃まで20℃/分で昇温させた後、350℃で1時間保持して、還元を行った。
このようにして、触媒の試料を作製して、比較例7の試料とした。
【0058】
(比較例8;市販Ni/Al
比較例8の試料として、市販のNi/Al触媒を用意した。Niの量は、Al100質量%に対して、20質量%であった。
【0059】
(炭素析出量の比較)
前述した方法と同様の方法を用いて、炭素析出量の測定を行い、550℃における各試料の炭素析出量を求めた。
550℃における各試料の炭素析出量の測定結果を、表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2より、実施例1のNi/Mg/LYが0.96%と最も少なく、比較例の中では、比較例1のNi/LYと比較例2のNi−Mg/と比較例4のNi/Mg/が10%以下と比較的少なかった。一方、他の比較例は、炭素析出量が多かった。
【0062】
(H−TPD測定)
実施例1及び比較例1〜比較例8の触媒の各試料を使用して、H−TPD測定(水素の昇温脱離法による測定)を行った。
日本ベル株式会社製の昇温脱離スペクトル装置と、検出器としてアネルバ社製のM−QA100TSとを使用して、m/z=2を温度の関数として、図11に示す温度プロファイルに従い、測定を行った。
図11に示すように、まず、ステップST5として、各試料を20mg(担体が炭素である試料)もしくは40mg(担体がアルミナである試料)採取して、キャリアガスをHeガスとして、水素流通下(流量50ml/分)で、350℃まで10℃/分で昇温させた後に、350℃で30分保持させて、水素による還元を行った。
その後、ステップST6として、40℃まで放冷した。
さらに、ステップST7として、10%の水素流通下(水素:He=45ml/分:5ml/分)で、40℃の状態で保持して、水素の吸着を行った。物理吸着した水素を除去するために、同温度でHe(流量50ml/分)に切り替え、10分間流し続けた。
次に、ステップST8として、水素の脱離を行った。具体的には、He流通下(流量50ml/分)で、40℃から800℃まで10℃/分で昇温させた。
実施例1、比較例1、比較例4、比較例6〜比較例8の各試料の測定結果を、図12A及び図12Bに示す。図12Aは全測定温度範囲のスペクトルを示し、図12Bは図12Aの領域Iの部分を拡大したスペクトルを示している。
【0063】
図12Aより、担体が褐炭である、実施例1のNi/Mg/LYと比較例1のNi/LYは、高温での脱離ピーク(領域II)を示している。特に、実施例1のNi/Mg/LYでは、420℃〜550℃にもう1つの脱離ピーク(領域I)を示している。この領域Iのピークは、ナノシェル炭素やカーボンブラックを担体とした、比較例6及び比較例7でも現れているピークである。
実施例1のNi/Mg/LYは、褐炭系の特長により領域IIにピークを有すること、それと同時に、領域Iにピークを有している。
【0064】
次に、図12A及び図12Bに示した水素の脱離量の温度プロファイルから、積分により400〜550℃の第1の温度領域における水素の脱離量Xと、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yとを求めた。そして、各試料について、これら水素の脱離量X,Yの比X/Yを計算により求めた。
【0065】
図12Bの温度プロファイルから、どの試料においても、第1の温度領域において脱離ピークとある程度の脱離量Xがあり、これは、ニッケルを担持させた触媒に特有のものと考えられる。
【0066】
一方、第2の温度領域における脱離量Yは、担体によって異なる傾向を示す。
アルミナ担体(比較例4、比較例8)やカーボンブラック担体(比較例6)、ナノシェル炭素担体(比較例7)では、第1の温度領域における脱離量Xと比較して、第2の温度領域における脱離量Yが相対的に小さくなっており、X/Y>1である。
これに対して、褐炭担体(実施例1、比較例1)では、第2の温度領域に脱離ピークを有しており、第1の温度領域における脱離量Xと比較して、第2の温度領域における脱離量Yが相対的に大きくなっており、X/Y<1である。
第2の温度領域における脱離は、高い脱離エネルギーを要する、脱離しにくい水素種に対応しており、ニッケル触媒上で解離吸着して生成した水素原子がスピルオーバー現象により担体に流れて、これが逆スピルオーバー現象により再びニッケル触媒から脱離するものと推測される。即ち、褐炭を担体とすると、水素のスピルオーバー現象を容易に生じると言える。また、担体上に元来存在している水素も、この作用を示し、効果を増大させている可能性がある。
そして、前述した表2の550℃の炭素析出量の値と併せて考えると、X/Y<1である褐炭担体の方が、X/Y>1である他の担体よりも炭素析出量が少ない。
【0067】
さらにまた、褐炭担体の実施例1と比較例1とを比較すると、いずれもX/Y<1を満たすが、マグネシウムが担持された実施例1の方が、比X/Yの値が少し大きくなっていた。前述した表2の550℃の炭素析出量の値と併せて考えると、同じ褐炭担体の試料では、比X/Yの値が大きい方ほど、炭素析出量が少なくなる傾向を示す。
【0068】
褐炭担体の触媒と、その他の担体の触媒とでは、水素のスピルオーバー現象が生じるかどうかが異なる。このことから、スピルオーバーや元来担体に含まれている水素が炭素析出反応を抑制する効果があると考えられる。これは、担体が水素のリザーバーとなっており、触媒表面に付着した炭素原子を担体に蓄えられた水素で洗い流す作用を想定することで説明できる。
また、比X/Yの値が大きくなることは、ニッケル上の触媒活性点が相対的に増加することを意味しており、マグネシウムを担持させると、さらに触媒活性点が増強されると考えられる。
ガス化や改質反応等に対する触媒反応は、第1の温度領域の脱離をもたらすニッケルによって行われる。そして、第2の温度領域の脱離で示される、褐炭担体上に流れ出たスピルオーバー水素及び担体上に元来存在している水素により、触媒の表面のクリーニングが随時行われるので、炭素析出による触媒性能の劣化をふせぐことができる。
【0069】
(XPS測定)
実施例1及び比較例1〜比較例8の各試料について、XPS(X線光電子分光分析法)によるNiの電子状態の測定を行った。
各試料のXPSによるNiの2p軌道の電子状態の測定結果を、図13A及び図13Bに示す。図13Aは実施例1、比較例1、比較例6、比較例7の各試料の測定結果であり、図13Bは、比較例2〜比較例5の各試料の測定結果である。
【0070】
図13Aより、炭素析出量が少なかった、担体が褐炭である、実施例1のNi/Mg/LYと比較例1のNi/LYは、金属ニッケルに帰属される853eVのピークのみが現れている。
これに対して、炭素析出量が多かった、担体がカーボンブラックやナノシェル炭素である、比較例6のNi/XCと比較例7のNi/NSとは、金属ニッケルに帰属される853eVのピークだけでなく、ニッケル酸化物に帰属される854eV以上にもピークを示している。
図13Bより、担体をAlとした比較例2〜比較例5では、854eV以上のピークは現れるが、853eVのピークは現れていない。
【0071】
以上の結果から、実施例1のNi/Mg/LY、即ちNiとMgとを共に褐炭に担持させた場合に、充分な触媒活性が得られると共に、炭素析出が抑制されることがわかる。
【0072】
実施例1のNi/Mg/LY等の、本発明の触媒は、ガス化等の反応の際の炭素析出を抑制する触媒や、水素化触媒、脱水素触媒として有望である。
【0073】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料から成る担体と、
前記担体に担持された、触媒成分であるニッケルと、
前記担体に担持された、アルカリ土類金属とを含み、
水素を使用した昇温脱離法で分析したときに、400〜550℃の第1の温度領域における水素の脱離量Xの、550〜800℃の第2の温度領域における水素の脱離量Yに対する比X/Yが、X/Y<1である
触媒。
【請求項2】
前記担体が褐炭である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
X線光電子分光装置でニッケルの2p軌道のスペクトルを分析したときに、853eV以下のピークのみが現れ、854eV以上のピークが現れない、請求項1又は請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属がマグネシウムである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
褐炭からなる前記担体に、アルカリ土類金属の水酸化物と、塩化アンモニウム水溶液とを添加して、前記担体に前記アルカリ土類金属を担持させる工程と、
前記アルカリ土類金属を担持させた前記担体に、触媒成分であるニッケルを含む材料と、濃アンモニア水とを添加して、前記担体にさらに前記触媒成分を担持させる工程と、
生成物をろ過して、洗浄する工程と、
その後、窒素もしくは不活性ガスの雰囲気中で焼成する焼成工程とを含む
触媒の製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属としてマグネシウムを使用する請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
前記触媒成分であるニッケルを含む材料として、ニッケルのアンミン錯体を使用する請求項6に記載の触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115728(P2012−115728A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265612(P2010−265612)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】