説明

触媒層形成用ペースト組成物及び触媒層−電解質膜積層体

【課題】本発明は、触媒の分散性が良好で、発火の危険性を低くした触媒層形成用ペースト組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の触媒層形成用ペースト組成物は、(1)触媒担持炭素粒子の水分散液に(2)水素イオン伝導性高分子電解質、(3)t−ブタノール及び(4)1−ブタノールを配合した触媒層形成用ペースト組成物であって、ペーストの固形分濃度が9〜20重量%であり、t−ブタノール1重量部に対して1−ブタノールが2.5〜9重量部の割合で含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒層形成用ペースト組成物及び触媒層−電解質膜積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質膜の両面に触媒層を配置し、水素と酸素の電気化学反応により発電するシステムであり、発電時に発生するのは水のみである。燃料電池は従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素などの環境負荷ガスを発生しないために、次世代のクリーンエネルギーシステムとして注目されている。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、電解質膜層として水素イオン伝導性高分子電解質膜を用い、その両面に触媒層を配置し、次いでその両面に電極基材を配置し、更にこれをセパレータで挟んだ構造をしている。電解質膜層の両面に触媒層を配置し、次いでその両面に電極基材を配置したもの(即ち、電極基材/触媒層/電解質膜/触媒層/電極基材の層構成のもの)は、電極−電解質膜接合体と称されている。
【0004】
従来、電極−電解質膜接合体の製造方法としては、(1)片面に印刷法又はスプレー法を適用して触媒層を形成した2個の電極基材を用い、該電極基材の触媒層面が電解質膜の両面に接するように配置し、熱プレスする方法(例えば、特許文献1、特許文献2等)、(2)電解質膜の両面に印刷法又はスプレー法を適用して触媒層を形成し、各々の触媒層面に電極基材が接するように配置し、熱プレスする方法(例えば、特許文献3等)等が知られている。
【0005】
上記各種の方法で使用される触媒層形成用ペースト組成物は、いずれも触媒を担持した炭素粒子及び水素イオン伝導性電解質を低級脂肪族アルコールに溶解ないし分散させたものである。
【0006】
しかしながら、斯かる触媒層形成用ペースト組成物は、触媒と低級脂肪族アルコールとが直接接触し、触媒の活性により発火する危険性を有している。そのためペースト組成物を調製する際、予め触媒を水に溶解ないし分散させておき、これに低級脂肪族アルコールを配合することで、触媒と低級脂肪族アルコールとが直接接触することを防止する措置が講じられている。しかるに、このような措置を講じた場合には、発火の危険性をある程度抑えることができるが、発火の危険性をゼロにすることはできない。
【0007】
上記アルコールに対する水の含有割合を多くすることにより、発火の危険性をより一層低くすることができる。しかし、水の含有量が多くなると、逆にペースト組成物調製の際に触媒の分散性が悪くなり、その結果、該ペースト組成物を用いて形成される触媒層の性能が低下するのが避けられなくなる。
【0008】
触媒の分散性が良好で、発火の危険性を低くしたペースト組成物として、(1)t−ブタノール、(2)1−ブタノール、(3)水及び(4)触媒担持カーボン粉末を含有する触媒層形成用ペースト組成物であって、t−ブタノール1重量部に対して、1−ブタノールが0.5〜2重量部程度の範囲で含有されているペースト組成物が提案されている(特許文献4)。この触媒層形成用ペースト組成物は、従来の上記欠点を大幅に解消したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭62−61118号公報(第1〜2頁)
【特許文献2】特公昭62−61119号公報(第1〜2頁)
【特許文献3】特公平2−48632号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2006−73313号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、触媒の分散性が良好で、発火の危険性を低くしたペースト組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、特許文献4に記載されているペースト組成物に着目し、触媒の分散性が良好で、発火の危険性を低減した新規ペースト組成物を開発すべく鋭意研究を重ねてきた。本発明者は、その研究過程で、特許文献4のペースト組成物について、t−ブタノールに対する1−ブタノールの配合比を高くすると、触媒の凝集及び触媒層形成後のクラックの発生を大幅に低減でき、触媒層の膜質が向上するが、その一方において、t−ブタノール1重量部に対して1−ブタノールが2重量部以上になると、触媒層にピンホールが発生する問題を再確認した。本発明者は、斯かるペースト組成物について更に検討を重ねるうち、ペーストの固形分濃度が特定の範囲内にある場合において、1−ブタノールの配合量を多くしても、ピンホールが発生せず、良好な触媒層を形成できる所望のペースト組成物が得られることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0012】
本発明は、項1〜6に係る触媒層形成用ペースト組成物、触媒層−電解質膜積層体製造用転写シート及び触媒層−電解質膜積層体を提供する。
項1.(1)触媒担持炭素粒子の水分散液に(2)水素イオン伝導性高分子電解質、(3)t−ブタノール及び(4)1−ブタノールを配合した触媒層形成用ペースト組成物であって、
ペーストの固形分濃度が9〜20重量%であり、t−ブタノール1重量部に対して1−ブタノールが2.5〜9重量部の割合で含有されている、
触媒層形成用ペースト組成物。
項2.水1重量部に対して、t−ブタノール及び1−ブタノールが合計量で1.25〜2.5重量部含有されている、項1に記載のペースト組成物。
項3.t−ブタノール1重量部に対して、1−ブタノールが3重量部以上の割合で含有されている、項1又は2に記載のペースト組成物。
項4.基材の少なくとも一方面上に、項1〜3のいずれかに記載のペースト組成物を塗布し、乾燥することにより触媒層を形成させてなる触媒層−電解質膜積層体製造用転写シート。
項5.項4に記載の触媒層−電解質膜積層体製造用転写シートを用いて作成した触媒層−電解質膜積層体。
項6.電解質膜の少なくとも一方面上に、項1〜3のいずれかに記載のペースト組成物を塗布し、乾燥することにより触媒層を形成させてなる触媒層−電解質膜積層体。
【0013】
触媒層形成用ペースト組成物
本発明の触媒層形成用ペースト組成物は、(1)触媒担持炭素粒子の水分散液に(2)水素イオン伝導性高分子電解質、(3)t−ブタノール及び(4)1−ブタノールを配合した触媒層形成用ペースト組成物である。
【0014】
本発明の触媒層形成用ペースト組成物は、ペーストの固形分濃度が9〜20重量%であり、t−ブタノール1重量部に対して1−ブタノールが2.5〜9重量部の割合で含有されている。
【0015】
(1)の触媒担持炭素粒子は、公知である。
【0016】
触媒としては、例えば白金、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、白金と、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属との合金等が挙げられる。
【0017】
触媒担持炭素粒子の水分散液は、触媒担持炭素粒子を水に分散させることにより得られる。触媒担持炭素粒子を水に分散させるに当たっては、公知の方法を広く用いることができる。
【0018】
本発明においては、予め、触媒担持炭素粒子を水に分散させておくことが必須である。これによって、触媒の発火が実質的に起こらないようにすることができる。
【0019】
(2)の水素イオン伝導性高分子電解質は、公知である。
【0020】
水素イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂等、炭化水素系のイオン交換樹脂等が挙げられる。
【0021】
パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂の具体例としては、例えば、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、スルホン酸基(−SO3H)及びカルボン酸基(−COOH)からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有するパーフルオロビニルエーテルに基づく重合単位とを含む共重合体等を例示することができる。
【0022】
通常、(2)の水素イオン伝導性電解質は、電解質を5〜30重量%程度含むアルコール水溶液として使用されることが公知である。
【0023】
(1)触媒担持炭素水分散液と(2)水素イオン伝導性高分子電解質の固形分濃度は、9〜20重量%、好ましくは10〜13重量%である。固形分濃度が上記範囲より低くなると、ペースト粘度が低くなり、乾燥過程のインキの流動性が高くなるため、固形分が凝集したり、基材上のインキはじきが原因となってピンホールが発生するのが避けられなくなる。固形分濃度が上記範囲より高くなると、ペーストの伸びが悪いために塗工面の平滑性が悪くなり、顕著なクラック及び欠落が生ずる。
【0024】
上記(1)成分中の固形分(触媒担持炭素)と(2)成分中の固形分(水素イオン伝導性高分子電解質)との配合割合は、前者100重量部に対して、後者が20〜200重量部程度、好ましくは30〜90重量部程度であるのが好ましい。水素イオン伝導性高分子電解質の割合が上記範囲より多くなると、触媒層の抵抗が増大して高出力が得られない、フラッディングが増大する等の問題が生ずる傾向になり、逆に、触媒担持炭素の割合が上記範囲より多くなると、炭素同士の結着性が低くなり触媒層の強度が低下する、十分なプロトン伝導性が得られない等の問題が生ずる傾向になる。
【0025】
(3)のt−ブタノール1重量部に対して、(4)の1−ブタノールは2.5〜9重量部の割合で含有されている。(3)のt−ブタノール1重量部に対して、(4)の1−ブタノールは3〜9重量部の割合で含有されているのが好ましい。1−ブタノールの含有量が上記範囲より少なくなると、ペースト固形分量が上記範囲内であっても固形分が凝集し、触媒の分散性が低下する。逆に、1−ブタノールの含有量が上記範囲より多くなると、クラックが生じる。
【0026】
本発明の触媒層形成用ペースト組成物には、上記(1)〜(4)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲内でアルコール系溶剤、その他の添加剤を配合することができる。
【0027】
アルコール系溶剤としては、公知のアルコールを広く使用できる。このようなアルコールとしては、例えば、沸点150℃以下のアルコール、より具体的には、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、プロピレングリコール・エチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。これらアルコール系溶剤は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0028】
その他の添加剤としては、例えば、フッ化カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー、触媒未担持のカーボンブラック等が挙げられる。
【0029】
(1)〜(4)成分の混合順序は、特に制限されない。例えば、(1)成分、(2)成分、(3)成分及び(4)成分を順次又は同時に混合し、分散させることにより、本発明ペースト組成物を調製できる。混合には、公知の混合手段を広く適用できる。
【0030】
触媒層−電解質膜積層体製造用転写シート
本発明の触媒層−電解質膜積層体製造用転写シートは、基材上に上記ペースト組成物を塗布し、乾燥することにより触媒層を形成したものである。
【0031】
触媒層は、基材の一方面に形成されていてもよく、又は基材の両面に形成されていてもよい。
【0032】
また、本発明の転写シートは、基材の一方面又は両面に、複数個の触媒層、好ましくは同一形状の複数個の触媒層が一定間隔で形成されていてもよい。
【0033】
本発明の触媒層−電解質膜積層体製造用転写シートの一例を図1に示す。図1は、本発明の触媒層−電解質膜積層体製造用転写シートの断面図である。
【0034】
基材としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを挙げることができる。
【0035】
また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。
【0036】
更に、基材は、高分子フィルム以外に、アート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙等の非塗工紙等の紙であってもよい。また、基材は、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素繊維からなるシートであってもよい。
【0037】
基材の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から、通常6〜100μm程度、好ましくは10〜50μm程度、より好ましくは15〜30μm程度とするのがよい。
【0038】
従って、基材としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0039】
本発明の触媒層−電解質膜積層体製造用転写シートは、基材の少なくとも一方面上に、本発明ペースト組成物からなる塗膜を形成することにより製造される。
【0040】
基材の少なくとも一方面上に、本発明ペースト組成物からなる塗膜を形成させるに当たっては、形成される塗膜が所望の層厚になるように、本発明ペースト組成物を公知の方法に従い基材上に塗布するのがよい。
【0041】
本発明ペースト組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
【0042】
本発明ペースト組成物を塗布した後、乾燥することにより、塗膜が形成される。乾燥温度は、通常40〜120℃程度、好ましくは75〜95℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは30分〜1時間程度である。
【0043】
塗膜の膜厚は、通常10〜50μm程度、好ましくは15〜30μm程度がよい。
【0044】
触媒層−電解質膜積層体
本発明の触媒層−電解質膜積層体の一例を図2に示す。図2は、本発明の触媒層−電解質膜積層体の断面図である。
【0045】
触媒層−電解質膜積層体は、電解質膜の両面に、触媒層が形成されている。触媒層−電解質膜積層体は、電解質膜の両面の各々に、複数個の触媒層(好ましくは同一形状の複数個の触媒層)が一定間隔で形成されていてもよい。
【0046】
電解質膜は、公知のものである。電解質膜の膜厚は、通常20〜250μm程度、好ましくは20〜80μm程度である。電解質膜の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」膜、旭硝子(株)製の「Flemion」膜、旭化成(株)製の「Aciplex」膜等が挙げられる。
【0047】
本発明の触媒層−電解質膜積層体は、例えば本発明転写シートの触媒層面が電解質膜面に対面するように転写シートを配置し、加圧した後、該転写シートの基材を触媒層面から剥離することにより製造される。この操作を2回繰り返すことにより、触媒層面が電解質膜の両面に積層された触媒層−電解質膜積層体が製造される。
【0048】
作業性を考慮すると、触媒層面を電解質膜の両面に同時に積層するのがよい。この場合には、例えば、本発明転写シートの触媒層面が電解質膜の両面に対面するように転写シートを配置し、加圧した後、該転写シートの基材を剥離すればよい。
【0049】
加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5〜20Mpa程度、好ましくは1〜10Mpa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために、加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜の破損、変性等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは120〜150℃程度がよい。
【0050】
また、本発明の触媒層−電解質膜積層体は、電解質膜の少なくとも一方面上に、触媒層形成用ペースト組成物を塗布し、乾燥することにより製造することができる。塗布及び乾燥条件は、上記と同じでよい。
【0051】
電極−電解質膜接合体
電極−電解質膜接合体は、上記で製造された触媒層−電解質膜積層体の両面に電極基材を配置し、加圧することにより製造される。
【0052】
電極基材は、公知であり、燃料極、空気極を構成する各種の電極基材を使用できる。
【0053】
加圧レベルは、通常0.1〜100Mpa程度、好ましくは5〜15Mpa程度がよい。この加圧操作の際に加熱するのが好ましく、加熱温度は通常120〜150℃程度でよい。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、触媒の分散性が良好で、発火の危険性を低くしたペースト組成物を提供できる。
【0055】
本発明によれば、クラック、ピンホール等が実質的に生じない触媒層を形成するためのペースト組成物を提供できる。
【0056】
本発明のペースト組成物を用いて得られる転写シートを使用すれば、触媒層−電解質膜積層体を容易に、効率的に製造することができる。
【0057】
本発明転写シートを使用すれば、触媒層が多孔質の電極基材の中に入り込む虞れがないので、触媒層の膜厚調整が容易となり、また均一な触媒層を電極基材上に容易に形成させることができる。
【0058】
また、本発明転写シートを使用すれば、電極素材表面乃至内部の孔を塞ぐことはないので、ガスの通流性能を阻害する虞れがない。
【0059】
従って、本発明転写シートを用いて得られる電極−電解質膜接合体を使用すれば、発電効率が高く優れた電池性能、電池寿命等を備えた高品質の燃料電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の触媒層−電解質膜積層体製造用転写シートの一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の触媒層−電解質膜積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0062】
実施例1(ペースト組成物の調製)
白金触媒担持カーボン(Pt:50wt%、田中貴金属工業製のTEC10E50E)10gを水30gに分散機にて攪拌混合して、白金担持カーボンの水分散液を調製した。
【0063】
上記で調製された水分散液にt−ブタノール(キシダ化学製)12.5g、1−ブタノール67.5g及び20wt%ナフィオン(Nafion DE2021)溶液(水素イオン伝導性高分子電解質、デュポン社製、溶剤:水/1−プロパノール=1/1(重量比))25gを配合し、分散機にて攪拌混合することにより、本発明のペースト組成物を調製した。
【0064】
実施例2(ペースト組成物の調製)
t−ブタノールを12.5gの代わりに10g、1−ブタノールを67.5gの代わりに90g用いる以外は、実施例1と同様にして本発明のペースト組成物を調製した。
【0065】
実施例3(ペースト組成物の調製)
1−ブタノールを67.5gの代わりに37.5g用いる以外は、実施例1と同様にして本発明のペースト組成物を調製した。
【0066】
実施例4(ペースト組成物の調製)
白金触媒担持カーボン(Pt:50wt%、田中貴金属工業製のTEC10E50E)10gを水30gに分散機にて攪拌混合して、白金担持カーボンの水分散液を調製した。
【0067】
上記で調製された水分散液にt−ブタノール(キシダ化学製)12.5g、1−ブタノール67.5g、20wt%ナフィオン(Nafion DE2021)溶液(水素イオン伝導性高分子電解質、デュポン社製、溶剤:水、プロパノール)25g及びカーボン繊維(VGCF:昭和電工社製、平均繊維径150nm、平均繊維長約9μm、アスペクト比60)1gを配合し、分散機にて攪拌混合することにより、本発明のペースト組成物を調製した。
【0068】
比較例1(ペースト組成物の調製)
t−ブタノールを12.5gの代わりに30g、1−ブタノールを67.5gの代わりに130g用いる以外は、実施例1と同様にしてペースト組成物を調製した。
【0069】
比較例2(ペースト組成物の調製)
t−ブタノールを12.5gの代わりに30g、1−ブタノールを67.5gの代わりに20g用いる以外は、実施例1と同様にしてペースト組成物を調製した。
【0070】
比較例3(ペースト組成物の調製)
t−ブタノールを12.5gの代わりに5g、1−ブタノールを67.5gの代わりに90g用いる以外は、実施例1と同様にしてペースト組成物を調製した。
【0071】
実施例1〜4及び比較例1〜3で調製した各ペースト組成物の固形分濃度及び1−ブタノール/t−ブタノール比(重量比)を、表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例5(転写シートの製造)
上記実施例1で調製した本発明ペースト組成物を、ドクターブレードにより乾燥後の白金量が0.5mgPt/cm2になるように、大気雰囲気中の加熱乾燥(100℃以下)により、本発明の転写シートを製造した。
【0074】
実施例6(転写シートの製造)
実施例2で調製した本発明ペースト組成物を用いる以外は、実施例5と同様にして本発明の転写シートを製造した。
【0075】
実施例7(転写シートの製造)
実施例3で調製した本発明ペースト組成物を用いる以外は、実施例5と同様にして本発明の転写シートを製造した。
【0076】
実施例8(転写シートの製造)
実施例4で調製した本発明ペースト組成物を用いる以外は、実施例5と同様にして本発明の転写シートを製造した。
【0077】
比較例4(転写シートの製造)
比較例1で調製したペースト組成物を用いる以外は、実施例5と同様にして比較のための転写シートを製造した。
【0078】
比較例5(転写シートの製造)
比較例2で調製したペースト組成物を用いる以外は、実施例5と同様にして比較のための転写シートを製造した。
【0079】
比較例6(転写シートの製造)
比較例3で調製したペースト組成物を用いる以外は、実施例5と同様にして比較のための転写シートを製造した。
【0080】
試験例1
実施例5〜8及び比較例4〜6で製造した転写シート(50mm×50mm)の乾燥状態を目視により以下の3つの観点から観察した。
ピンホール;塗膜に目視可能なピンホールが2つ以上発生していないものを○、塗膜に目視可能なピンホールが2つ以上発生しているものを×として評価した。
凝集物;塗膜に3mm×3mm以上の海島状の濃淡が生じていないものを○、塗膜に3mm×3mm以上の海島状の濃淡が生じているものを×として評価した。
クラック;触媒層を写真に取り込み、2値化(白/黒)し、それぞれの面積率(%)を算出した。2値化は、写真の色彩を255段階に分割し、0〜50までを触媒層部、51〜255までを触媒層のない部分(=クレバス状の亀裂)と判断した。写真は、デジタルマイクロスコープにて撮影した。このときの触媒層部が40%以上のものを○、40%以下のものを×として評価した。
【0081】
結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例9
実施例5〜9で製造した各転写シート(50mm×50mm)を電解質膜(ナフィオン112、75mm×75mm)の両側に設置し、ホットプレスすることにより、本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0084】
実施例10
実施例1〜4で調製した各触媒層形成用ペースト組成物を、ドクターブレードにより乾燥後の白金量が0.5mgPt/cm2になるように、電解質膜(ナフィオン112)の片面に大気雰囲気中で塗布し、乾燥した。更に、塗布及び乾燥した側が基材側になるように基材(100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)に固定した後、上記電解質膜の反対側に上記触媒層形成用ペースト組成物を同様に乾燥後の白金量が0.5mgPt/cm2となるように塗布し、乾燥した後、基材から切り離して、本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)触媒担持炭素粒子の水分散液に(2)水素イオン伝導性高分子電解質、(3)t−ブタノール及び(4)1−ブタノールを配合した触媒層形成用ペースト組成物であって、
ペーストの固形分濃度が9〜20重量%であり、t−ブタノール1重量部に対して1−ブタノールが2.5〜9重量部の割合で含有されている、
触媒層形成用ペースト組成物。
【請求項2】
水1重量部に対して、t−ブタノール及び1−ブタノールが合計量で1.25〜2.5重量部含有されている、請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項3】
t−ブタノール1重量部に対して、1−ブタノールが3重量部以上の割合で含有されている、請求項1又は2に記載のペースト組成物。
【請求項4】
基材の少なくとも一方面上に、請求項1〜3のいずれかに記載のペースト組成物を塗布し、乾燥することにより触媒層を形成させてなる触媒層−電解質膜積層体製造用転写シート。
【請求項5】
請求項4に記載の触媒層−電解質膜積層体製造用転写シートを用いて作成した触媒層−電解質膜積層体。
【請求項6】
電解質膜の少なくとも一方面上に、請求項1〜3のいずれかに記載のペースト組成物を塗布し、乾燥することにより触媒層を形成させてなる触媒層−電解質膜積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−182153(P2012−182153A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140439(P2012−140439)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2006−258679(P2006−258679)の分割
【原出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】