説明

触媒担持フィルム及びその製造方法

【課題】帯電防止性を良好にすることで静電気による障害をなくし、取扱い性に優れ、また、使用後の反応生成物等からの分離、回収も容易な触媒担持フィルムを提供する。
【解決手段】極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂をフィルム状にしてなる担体と、該担体の表面に担持された触媒活性を有する微粒子と、前記担体の表面に担持された導電性カーボン微粒子と、からなる触媒担持フィルム及び極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂、触媒活性を有する微粒子及び導電性カーボン微粒子を前記極性有機溶媒中で混合して触媒含有樹脂溶液を得た後、これをフィルム状に形成する触媒担持フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応に用いられる触媒活性を有する微粒子を担持した樹脂フィルム及びその製造方法に関するものであり、特に、極性有機溶媒に可溶性のフッ素樹脂を用いて形成した樹脂フィルムからなる触媒担持フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、化学工業において、化学商品の合成・分解、廃棄物や廃ガスの分解・除去等、化学反応を利用したほとんどの場合に触媒が用いられており、めざましい成果をあげている。また最近では、自動車や工場の排気ガスの浄化、燃料電池の電極、セパレータ等にも貴金属触媒が使用されている。
【0003】
これらの触媒は、長時間の使用においても活性を失うことがなく、損失が少ないこと、使用後に原料や反応生成物と分離しやすいこと、回収後に再生が容易であることが求められており、そのような触媒を使用することによる経済効果は莫大なものがある。
【0004】
一般に、上記用途に使用される触媒は触媒活性を有する金属成分を主成分とし、この金属成分としては貴金属が用いられている。通常、このような金属触媒成分は担体の表面に担持されて用いられている。触媒成分を担体の表面に担持させることで、触媒効率を向上させることができ、また触媒成分の有効利用により担持量を低減させることができるため、特に触媒成分が高価な貴金属である場合に適用される。また、触媒は適当な希釈剤中の溶液又は微細分散液の形態で反応液に導入され、反応終了後には反応生成物等から分離、回収されるが、担体の表面に触媒成分を担持させることで、触媒成分が微粒子状である場合にも、その分離、回収が容易となる。
【0005】
担体材料としては、合成樹脂製の多孔質フィルム、例えば、ポリエチレンフィルムやテトラフルオロエチレンフィルム、塩化ビニル樹脂フィルム等を多孔質化したものが用いられている。触媒の固定化は、合成樹脂中に触媒を混合、含有させ、これをフィルム化するか、又はシリカゲル、ゼオライト、活性炭等の担体表面に触媒を導入し、これを樹脂に混合、含有させフィルム化するか、合成樹脂フィルムの表面に触媒を加圧、加熱圧着して担持する方法等も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、合成樹脂製の多孔質フィルムの多くは電気絶縁体で、一度帯電すると電荷が表面から漏洩しにくい。このため、さまざまな静電気障害を起こす。特に薄いフィルム状の取扱では作業時に手に張付くという問題があった。
【0007】
このような帯電現象によって起こる障害を防止する対策として、界面活性剤等の帯電防止剤を(例えば、特許文献2参照)または金属分のような導電性のフィラーを練り込むこと(例えば、特許文献3参照)が一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−110541号公報
【特許文献2】特開平11−323052号公報
【特許文献3】特開平7−41697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、界面活性剤の添加や、金属成分を練り込んだ触媒担持フィルムでは、充分な触媒活性が得られないという問題や、帯電防止性が不充分、フィルム強度が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、触媒活性が良好で、帯電防止性に優れ、かつ、取扱性に優れた触媒担持フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、導電性物質として導電性カーボン微粒子を用いることで、帯電防止性の低下が抑えられ、溶液の種類等によって対象反応への適用が制約されず、取扱性に優れた触媒担持フィルムが得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0012】
すなわち、本発明の触媒担持フィルムは、極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂をフィルム状にしてなる担体と、該担体の表面に担持された触媒活性を有する微粒子と、前記担体の表面に担持された導電性カーボン微粒子と、からなることを特徴とするものであり、このとき、触媒を担持するフィルムとしては、ポリフッ化ビニリデンフィルムであることが好ましい。
【0013】
本発明の触媒担持フィルムの製造方法は、極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂、触媒活性を有する微粒子及び導電性カーボン微粒子を前記極性有機溶媒中で混合して触媒含有樹脂溶液を得た後、これをフィルム状に形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、触媒担持フィルムにおいて導電性の導電性カーボン微粒子を用いることで、帯電防止性の低下を抑制し、高温の酸、アルカリ溶液中でも溶出することがなく、かつ、取扱性に優れ、対象とすべき化学反応が制約されず、使用後の反応生成物等からの分離、回収も容易なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の触媒担持フィルムは、極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂をフィルム状にしてなる担体と、この担体の表面に担持された触媒活性を有する微粒子(以下、単に触媒微粒子と称する。)と、同じくこの担体の表面に担持された導電性カーボン微粒子を具備することを特徴とするものである。
【0016】
本発明におけるフィルム状の担体は、極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂フィルムであれば特に限定されるものではなく、例えば、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキレンビニルエーテル、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等の化合物が重合したフッ素化モノポリマー、フッ素化コポリマー、又はそれらの混合物によるポリマー等が好適である。この中でも、特にポリフッ化ビニリデンからなるフィルムが担持体としては好ましく、その主鎖中の構成単位の結合形態としてはHead to Tail結合を主鎖中に数多く含むものが好ましい。
【0017】
ポリフッ化ビニリデンからなるフィルムが担持フィルムとして好ましいのは、ポリフッ化ビニリデンは、耐熱性、耐薬品性が良好であるため、使用環境を選ばず、製品寿命を長くすることもでき、さらに、フィルムを形成した時に多孔質性のフィルムを形成し易いため、担持された触媒による触媒反応を効率的に行うことができるためである。
【0018】
ポリフッ化ビニリデン樹脂は、市販のものを使用することができる。例えば、クレハKFポリマー(株式会社クレハ製、商品名)、カイナー720(ペンウォルト社製、商品名)等がある。
【0019】
フィルム状担体の膜厚は、担持させる触媒微粒子の大きさやその担持量等によって適宜決定することができるが、例えば5〜100μm以下であることが好ましく、15〜60μm以下であることがより好ましい。フィルム厚が5μm未満の場合、フィルム強度が低くなりその表面に触媒微粒子を担持させることが困難となるおそれがある。一方、担体のフィルム厚が100μmを超えるものは、高価格となるうえ、担体内部に存在し反応に関与しない触媒が多くなり触媒能に劣るため好ましくない。
【0020】
また、担体の表面に担持される触媒としては、公知の触媒活性を有する微粒子であれば特に限定されずに用いることができる。ここで用いることができる触媒は、フィルム状にした樹脂に固定できる金属触媒、金属化合物触媒等の固体触媒が挙げられるが、金属化合物触媒であることが好ましく、その反応変換率が高いことからペロブスカイト型金属酸化物であることが特に好ましい。
【0021】
このとき、触媒中に用いられる金属は、例えば、チタン、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミニウム、イリジウム、銀、金、白金、スズ等の金属から選ばれる複数種の金属を含む複合金属酸化物が挙げられ、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、LaFe0.95Pd0.05等のようにパラジウムを含むものが好ましい。
【0022】
また、触媒微粒子は平均粒径が1μm以下であることが好ましく、例えば、その平均一次粒径は1〜100nm以下といったナノサイズの複合酸化物微粒子等を用いることが好ましく、その平均二次粒子径は0.1〜10μmであることが好ましい。
【0023】
触媒担持フィルムに対する触媒微粒子の配合量は、それぞれ使用するものの組み合わせにより適宜決定することができるが、例えば、20質量%から60質量%の範囲で用いることができ、30質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0024】
上記で好ましいとしたペロブスカイト型金属酸化物である触媒微粒子としては、例えば、パラジウムを含むペロブスカイト型化合物としてLaFe(1−r)Pd(0<r<0.2)が挙げられ、このようなペロブスカイト構造を有する触媒微粒子をフッ素樹脂フィルムと組み合わせて用いることによって触媒活性を有する担持フィルムを得ることができる。このとき、触媒中の金属(例えばパラジウム)の割合は、触媒担持フィルム中、0.8〜1.3質量%の範囲であることが好ましい。
【0025】
本発明における導電性カーボン微粒子としては、導電性を有し、触媒担持フィルムの帯電特性を改善することができるものであれば、特に限定されず、市販されている粒状、フィブリル状、繊維状、鱗片状の導電性カーボン微粒子を用いることができる。
【0026】
粒状の炭素化合物としては、黒鉛、アセチレンブラックや各種ファーネス系の導電性カーボンブラックが例示でき、市販の各種のものが使用できる。例えば、粒状の例としては、ケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、商品名)、HOP(日本黒鉛工業株式会社製、商品名)などが挙げられる。
【0027】
繊維状の例としては、パイロフィル(三菱レイヨン株式会社製、商品名)が挙げられる。また、微細なフィブリル状の炭素化合物の例としては、直径が約3.5〜75nmの微細糸状のフィブリル状炭素化合物が例示され、これは、いわゆるカーボンナノチューブと称されるものである。市販の各種のものが使用でき、例えば、ハイペリオン(ハイピリオンカタリシスインターナショナル社製、商品名)などが挙げられる。また、繊維状のものの例としては、昭和電工株式会社製の気相法炭素繊維VGCFが挙げられる。また、これらを混合して使用することもできる。
【0028】
また、本発明における導電性カーボン微粒子は、平均粒径が0.001〜10μmであるのが好ましく、0.01〜5μm程度であることがより好ましい。
【0029】
本発明の触媒担持フィルムに配合される導電性カーボン微粒子の配合量は、1〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。導電性カーボン微粒子の配合量が、1質量%未満であると導電性が不充分で取扱性に問題となる場合があり、25質量%を超えるとフィルム強度の低下や触媒機能としての反応性が損なわれる場合があり好ましくない。
【0030】
なお、本明細書において、触媒微粒子及び導電性カーボン微粒子における平均粒径は、レーザー回折法により算出されたものである。
【0031】
このようなフィルム状触媒は、例えば、極性有機溶媒中に溶解(膨潤)させたフッ素系樹脂に触媒微粒子と導電性カーボン微粒子を混合して触媒含有樹脂溶液を得た後、これをフィルム状に形成することで容易に製造することができる。
【0032】
本発明で用いるフッ素樹脂は極性有機溶媒中で溶解(膨潤)してフィルム状に成形されて膜を形成することができる。極性有機溶媒としては、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチレンジクロライド、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、トリフルオロ酢酸等の極性溶媒が使用できるが、NMP溶媒で溶解(膨潤)させた後にフィルム化すると、均一な細孔を有するフィルム状担体を得ることができ好ましい。
【0033】
フィルム状担体は、上記したように触媒含有樹脂溶液をフィルム状に形成して製造する。その方法は極性有機溶媒に溶解(膨潤)させた樹脂を、基材となるフィルムや離型フィルムに塗布、乾燥して溶媒を除去しフィルム化することによって行われる。塗布方法は既存の方法がいずれも適用可能であるが、具体的にはグラビアコーター、リバニスロールコーター、キスコーター、ロールナイフコーター、ロッドコーター等のコーターによって塗膜形成する方法、アプリケーターにより手塗りで塗膜形成する方法、スピンコーター法、バーコート法、スクリーン印刷法等があげられ、商品形態によって選択する。
【0034】
このとき、触媒含有樹脂溶液は、極性有機溶媒に溶解(膨潤)させたフッ素樹脂に触媒微粒子と導電性カーボン微粒子を混合・分散させて調整してもよいし、触媒微粒子及び導電性カーボン微粒子を分散させた極性有機溶媒にフッ素樹脂を後から混合・分散させて溶解(膨潤)させて調整してもよい。このとき、フッ素樹脂、触媒微粒子及び導電性カーボン微粒子の混合・分散は、公知の撹拌装置等による一般的な混合・分散方法で容易に行うことができる。
【0035】
この撹拌は、通常は常温で行うことができ、また撹拌速度も担体の混合液と触媒微粒子の分散液とを均一に混合できる程度のものであれば特に制限されるものではない。なお、このとき、充分に分散させたり、微粒子が凝集し易い場合にはこれを解砕して分散させたりするために、ボールミル等によるメディア分散装置、高圧ホモジナイザー等による高速高剪断ミキサー等を用いて、フッ素樹脂中に触媒微粒子が均一に分散する操作を行ってもよい。
【0036】
フィルム状担体の膜厚は、担持させる触媒微粒子の大きさやその担持量等によって適宜決定することができるが、例えば5〜100μm以下であることが好ましく、15〜60μm以下であることがより好ましい。フィルム厚が5μm未満の場合、フィルム強度が低くなりその表面に触媒微粒子を担持させることが困難となるおそれがある。一方、担体のフィルム厚が100μmを超えるものは取り扱いづらく、担体内部に存在し反応に関与しない触媒が多くなるため高価格となり好ましくない。
【0037】
以上のように製造された触媒担持フィルムは、反応後に反応液から容易に分離、回収することができる。このようにして分離、回収された担持触媒は、通常の触媒と同様にして繰り返し触媒反応に用いることができる。また、本発明の触媒担持フィルムは、触媒活性、帯電防止効果に優れ、取扱い性の良好なものである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0039】
(実施例1)
N−メチル−2−ピロリドンを溶媒としたポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製;質量平均分子量 28万)の12質量%溶液を50質量部、ペロブスカイト型金属酸化物であるLaFe0.95Pd0.05(北興化学工業株式会社製;平均粒径50nm)を3.9質量部、導電性カーボン微粒子としてHOP(日本黒鉛工業株式会社製、平均粒径4μm)を0.52質量部計量し、それらをボールミル(直径2mmジルコニアボール、充填率60%)で20時間混合し、触媒微粒子分散液を得た。得られた触媒微粒子分散液をポリエステルフィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラー)に、アプリケーターで塗布し、70℃で30分乾燥して、膜厚35μmの触媒担持フィルムを製造した。
【0040】
(実施例2〜5)
ポリフッ化ビニリデン、ペロブスカイト型金属酸化物、導電性カーボン微粒子を表1の配合とし、導電物固形比を所定のものとした以外は、実施例1と同様にして触媒担持フィルムを製造した。
【0041】
(実施例6)
導電性カーボン微粒子としてSG−BH8(伊藤黒鉛工業株式会社製、平均粒径8μm)を使用し表1の配合とした以外は、実施例1と同様にして触媒担持フィルムを製造した。
【0042】
(比較例1)
N−メチル−2−ピロリドンを溶媒としたポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製;質量平均分子量 28万)の12質量%溶液を50質量部、ペロブスカイト型金属酸化物であるLaFe0.95Pd0.05(北興化学工業株式会社製;平均粒径50nm)を3.6質量部計量し、それらをボールミル(直径2mmジルコニアボール、充填率60%)で20時間混合し、触媒微粒子分散液を得た。得られた触媒微粒子分散液をポリエステルフィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラー)に、アプリケーターで塗布し、70℃で30分乾燥して、膜厚11μmの触媒担持フィルムを製造した。
【0043】
(比較例2)
触媒担持のフィルム膜厚を35μmとした以外は、比較例1と同様にして触媒担持フィルムを製造した。
【0044】
(比較例3)
触媒担持のフィルム膜厚を150μmとした以外は、比較例1と同様にして触媒担持フィルムを製造した。
【0045】
(比較例4)
導電性カーボン微粒子の代わりに陽イオン性界面活性剤であるテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(TBAHS、広栄化学株式会社製)を使用し、表1の配合とした以外は、実施例1と同様にして触媒担持フィルムを製造した。
【0046】
(比較例5)
導電性カーボン微粒子の代わりに導電性金属酸化物であるW−1(三菱マテリアル株式会社製、商品名;酸化チタン/スズ−アンチモン系酸化物;平均粒径200nm)を使用し、表1の配合とした以外は、実施例1と同様にして触媒担持フィルムを製造した。
【0047】
(試験例)
次に、実施例及び比較例で製造した触媒担持フィルムについて、触媒担持フィルムの表面抵抗と帯電量を測定し、取扱性について評価したのち、所定の化学反応に供し、反応変換率を求め触媒能を評価した。さらに回収したサンプルのフィルム形状を目視にて評価した。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
[表面抵抗]
抵抗率計ロレスタMCP−T610(三菱化学株式会社製、商品名)で触媒担持フィルム表面の任意の3箇所の表面抵抗値を測定し平均値を求めた。
[帯電量]
離型フィルムで挟持した触媒担持フィルムを静置し片側の離型フィルムを300mm/分の引っ張り速度で180°方向に剥離した時の、触媒担持フィルム表面の帯電量を3MStatic Sensor 709(住友スリーエム株式会社製、商品名)で測定した。
[取扱性]
触媒担持フィルムから離型フィルムを剥離したときの取扱性について評価した。
○:フィルムケース(ポリエチレン製)やピンセットに付着しない、△:フィルムケースやピンセットに付着するがすぐに剥離する、×:フィルムケースやピンセットに付着する
【0051】
[反応変換率]
4−ブロモアニソール 2.24g(0.012モル)、フェニルボロン酸 2.19g(0.018モル)、炭酸カリウム 4.98g(0.036モル)を、100mL容量の丸底フラスコに加え、溶剤として純水及び1−メトキシ−2−プロパノールを各18mL加え、撹拌溶解した。この溶液に、実施例及び比較例で得られた触媒担持フィルムを接触させ(このとき、4−ブロモアニソールに対し、触媒微粒子中のPdが0.005モル%に相当する量を含む触媒担持フィルムを使用)、室温で24時間反応させた。
反応終了後、反応液にトルエン及び純水を20mLずつ加えて、生成物を溶解した後、吸引ろ過により不溶解物を除去して、分液ロートに移し、下層の水層を分液し、上層のトルエン層を、ガスクロマトグラフィーにより分析し、以下の式により変換率を求めた。
変換率(%)=4−メトキシビフェニル/(4−ブロモアニソール+4−メトキシビフェニル)×100
(予め4−メトキシビフェニルと4−ブロモアニソールのトルエン溶液を個別に測定して相対感度を求め補正した。)
以上で算出された反応変化率に基づいて、次の基準により触媒能を評価した。
○:90%以上、△:75%以上90%未満、×:75%未満
【0052】
[フィルム形状]
触媒回収性評価において、回収したサンプルのフィルム形状を目視にて評価した。
○:試験前後において変化のないもの、△:試験後に割れ等が見られるが回収は容易なもの、×:試験後に割れ等によりフィルムの回収が困難なもの
【0053】
以上の結果から、本願発明のフッ素樹脂フィルムに金属酸化物からなる触媒と導電性カーボン微粒子とを担持した触媒担持フィルムが、触媒活性、帯電防止効果に優れ、微粒子の溶出もなく、取扱い性の良好なものである。また、触媒が担体から脱離しにくく回収性も良好なもので、触媒の有効利用を図れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂をフィルム状にしてなる担体と、該担体の表面に担持された触媒活性を有する微粒子と、前記担体の表面に担持された導電性カーボン微粒子と、からなることを特徴とする触媒担持フィルム。
【請求項2】
前記極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂が、ポリフッ化ビニリデンであることを特徴とする請求項1記載の触媒担持フィルム。
【請求項3】
前記触媒活性を有する微粒子が、ペロブスカイト型金属酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載の触媒担持フィルム。
【請求項4】
前記導電性カーボン微粒子が、黒鉛粉末であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の触媒担持フィルム。
【請求項5】
前記触媒担持フィルムが、前記触媒活性をもつ微粒子、前記導電性カーボン微粒子及び前記極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂を極性有機溶媒中で混合した後、得られた触媒含有樹脂溶液をフィルム化して製造することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の触媒担持フィルム。
【請求項6】
極性有機溶媒に可溶なフッ素樹脂、触媒活性を有する微粒子及び導電性カーボン微粒子を前記極性有機溶媒中で混合して触媒含有樹脂溶液を得た後、これをフィルム状に形成することを特徴とする触媒担持フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−31161(P2011−31161A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179214(P2009−179214)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】