説明

触媒構造および燃焼装置

【課題】触媒を通過することなく、触媒設置箇所を通過してしまう燃焼ガス等の流体を低減することを目的とする。
【解決手段】ガス流路9に設置される触媒15は、触媒本体20と、この触媒本体20の両側板20c,20dの上流側および下流側の周縁部からそれぞれ延出する上流側第1,第2シール板21a,22a、下流側第1,第2シール板21b,22bを備えており、各シール板21a,22a、21b,22bの先端部が、ガス流路9を形成する一対の対向壁18,23の内面に摺接し、触媒15の両側面20c,20dと前記対向壁18,23との間の隙間をシールするようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガス等に含まれる、例えば、一酸化炭素(CO)等の有害成分を削減するのに好適な触媒構造およびそれを用いた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラ等の燃焼装置において、バーナの燃焼により発生する燃焼ガスに含まれる、例えば、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO×)、硫黄酸化物(SO×)等の有害成分を削減するために、燃焼ガスを、触媒に通過させて除去することが行われている。
【0003】
このように、燃焼ガスに含まれる有害成分を触媒により削減する技術として、燃焼ガスが通過するガス流路に触媒を配置する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−69139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる触媒では、触媒作用が経時劣化するので、長期間の使用によって触媒作用が劣化した触媒は交換する必要がある。このため、触媒は、ガス流路に、取外し可能に設置する必要がある。
【0006】
従来では、例えば、矩形断面のガス流路に、前記矩形に対応した直方体状の触媒を、その外周面にブランケット状の断熱材を巻付けて前記ガス流路の内面との間の隙間を閉塞するようにして設置している。
【0007】
このように触媒の外周面に断熱材を巻付けてガス流路に設置する従来例では、触媒の外周面とガス流路内面との間の隙間を断熱材によって十分に閉塞することができず、更に、断熱材は、長期間高温の燃焼ガスに晒されることによって硬化が進んで熱応力等によって亀裂が生じてしまう。
【0008】
このため、触媒の外周付近を流れる燃焼ガスが、触媒を通過することなく、触媒の外周面とガス流路の内面との間に形成された亀裂や隙間を通過してしまい、有害成分が削減されていない燃焼ガスが流出してしまうという課題がある。
【0009】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであって、触媒を通過することなく、触媒設置箇所を通過してしまう燃焼ガス等の流体を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、次のように構成している。
【0011】
(1)本発明の触媒構造は、流体が流れる流路に設置される触媒の構造であって、前記触媒は、前記流体が通過する触媒本体と、該触媒本体の外周に設けられて、前記流路の内面に摺接して前記触媒本体と前記流路の内面との間に生じる隙間をシールするシール部とを備える。
【0012】
触媒本体の形状は、特に限定されないが、流路の断面形状に応じた形状とするのが好ましい。
【0013】
シール部は、触媒本体の外周の少なくとも一部に設ければよく、必ずしも全周に設けなくてもよい。このシール部は、バネ弾性を有するのが好ましい。
【0014】
本発明の触媒構造によると、触媒本体の外周に、流路内面に摺接してシールするシール部を備えているので、燃焼ガス等の流体が、触媒本体の外周面と流路内面との間に生じる隙間を通過するのをシール部によって阻止し、燃焼ガス等の流体を、触媒本体に通過させることができ、触媒作用を受けずに触媒の設置箇所を通過してしまう燃焼ガス等の流体を低減することができる。
【0015】
(2)本発明の触媒構造の好ましい実施態様では、前記シール部は、前記触媒本体の外周に支持されるシール基端部と、該シール基端部から延出して前記流路の内面に摺接するシール先端部とを有し、前記シール基端部から前記シール先端部へ至る延出方向が、前記流路の内面に対して傾斜している。
【0016】
この実施態様によると、シール部は、シール基端部からシール先端部へ至る延出方向が、流路の内面に対して傾斜している、すなわち、シール先端部は、流路の内面に対して傾斜した状態で摺接しているので、シール先端部が流路内面に圧接されると、シール先端部は、前記流路内面に沿って気密状態を保持しながら容易に摺動する。
【0017】
(3)上記(2)の実施態様では、前記シール部は、前記触媒本体の外周の面の内、少なくとも、両側面の内の一方の側面に対向する前記流路の内面に摺接する第1のシール部と、他方の側面に対向する前記流路の内面に摺接する第2のシール部とを備え、前記第1および第2のシール部は、それぞれ、前記流路の上流側と下流側それぞれに対応して設けられた少なくとも一対のシール部を有し、前記一対のシール部は、前記流路の内面に向かう付勢力によって、各シール先端部が前記内面に沿ってそれぞれ摺動可能としてもよい。
【0018】
この実施態様によると、触媒本体の少なくとも両側面に、第1および第2のシール部をそれぞれ備えているので、触媒本体の両側面と流路内面との間の隙間を、第1,第2のシール部でそれぞれシールすることができ、しかも、第1,第2の各シール部は、流路の上流側と下流側とにそれぞれ対応して一対のシール部を有しているので、上流側と下流側との二重のシール部によって一層確実にシールすることができる。
【0019】
(4)本発明の燃焼装置は、バーナで発生した燃焼ガスが通過するガス流路が形成され、かつ前記ガス流路を通過する燃焼ガスと熱交換して熱媒体を加熱するよう構成された缶体を備えると共に、前記ガス流路に触媒が設置される燃焼装置であって、前記触媒は、前記燃焼ガスが通過する触媒本体と、前記触媒本体の外周に設けられて、前記ガス流路の内面に摺接して前記触媒本体と前記ガス流路の内面との間に生じる隙間をシールするシール部とを備える。
【0020】
本発明の燃焼装置によると、ガス流路に設置される触媒本体の外周に、ガス流路内面に摺接してシールするシール部を備えているので、燃焼ガスが、触媒本体の外周面とガス流路内面との間に生じる隙間を通過するのをシール部によって阻止し、燃焼ガスを、触媒本体に通過させることができ、触媒作用を受けずに触媒の設置箇所を通過する燃焼ガスを低減することができる。
【0021】
(5)本発明の燃焼装置の別の実施態様では、前記シール部は、前記触媒本体の外周に支持されるシール基端部と、該シール基端部から延出して前記ガス流路の内面に摺接するシール先端部とを有し、前記シール基端部から前記シール先端部へ至る延出方向が、前記ガス流路の内面に対して傾斜している。
【0022】
この実施態様によると、シール部は、シール基端部からシール先端部へ至る延出方向が、ガス流路の内面に対して傾斜している、すなわち、シール先端部は、ガス流路の内面に対して傾斜した状態で摺接しているので、シール先端部がガス流路内面に圧接されると、シール先端部は、前記ガス流路内面に沿って気密状態を保持しながら容易に摺動する。
【0023】
(6)上記(5)の実施態様では、前記缶体は、前記ガス流路を形成するよう互いに対向する少なくとも2つの対向壁を有し、前記触媒は、それら2つの対向壁間に設置され、前記シール部は、少なくとも、前記2つの対向壁それぞれの内面に摺接する第1および第2のシール部を備え、前記第1および第2のシール部は、それぞれ、前記ガス流路の上流側および下流側それぞれに対応して設けられた少なくとも一対のシール部を有し、前記一対のシール部は、前記対向壁の内面に向かう付勢力によって、各シール先端部が前記内面に沿ってそれぞれ摺動可能としてもよい。
【0024】
この実施態様によると、触媒は、2つの対向壁それぞれの内面に摺接する第1および第2のシール部を備えているので、触媒と各対向壁の内面との間の隙間を、第1および第2のシール部でそれぞれシールすることができ、しかも、第1および第2のシール部は、ガス流路の上流側と下流側とにそれぞれ対応して設けられる一対のシール部を有しているので、上流側と下流側との二重のシール部によって一層確実にシールすることができる。
【0025】
(7)上記(6)の実施態様では、前記缶体は、前記対向壁に形成された開口部と、該開口部を閉塞して対向壁を形成する蓋体とを備え、前記触媒を、前記開口部を介して前記ガス流路に着脱可能に、かつ、前記各シール部に前記対向壁の内面へ向かう付勢力を付与するように設置してもよい。
【0026】
この実施態様によると、蓋体を外して対向壁に形成された開口部から触媒をガス流路内に挿入し、蓋体で触媒を押し付けるようにして開口部を閉塞することにより、各シール部に対向壁の内面へ向かう付勢力を付与して触媒を設置することができ、これによって、各シール部のシール先端部が対向壁の内面に押圧された状態で摺接してシール性能を高めることができる。
【0027】
(8)上記(6)または(7)の実施態様では、前記2つの対向壁の少なくともいずれか一方の対向壁には複数の伝熱管が連結され、前記2つの対向壁の少なくともいずれか一方の対向壁の内面と、前記第1および第2のシール部の少なくともいずれか一方のシール部が有する前記一対のシール部と、前記触媒本体の外周とによって形成される空間には、断熱材を充填してもよい。
【0028】
この実施態様によると、高温の燃焼ガスによって、対向壁の伝熱管内の媒体を加熱することができ、また、対向壁の内面と、一対のシール部と、触媒本体の外周とによって形成される空間に充填された断熱材によって、対向壁の温度が高温になるのを抑制することができると共に、熱応力を緩和する緩衝材として機能させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、触媒本体の外周に、燃焼ガス等の流路内面に摺接してシールするシール部を備えているので、燃焼ガス等の流体が、触媒本体と流路内面との間に生じる隙間を通過するのを前記シール部で阻止することができ、触媒作用を受けずに触媒の設置箇所を通過してしまう燃焼ガス等の流体を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るボイラの縦断面図である。
【図2】図2は図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図3は図1の触媒の斜視図である。
【図4】図4は触媒の取付け状態を説明するための概略平面図である。
【図5】図5は図1の触媒15の取付け状態の詳細を示す平面図である。
【図6】図6は筐体を外した状態の缶体の側面図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態の触媒15の取付け状態の詳細を示す平面図である。
【図8】図8は本発明の他の実施形態に係るボイラの縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面によって本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃焼装置としての小型貫流式のボイラの縦断面図であり、図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【0033】
ボイラ1は、燃料供給部2と、缶体3と、バーナ4と、燃焼ガス排出路5とを備えており、缶体3は筐体6内に配置されると共に、燃焼ガス排出路5にはエコノマイザ7が設けられている。
【0034】
また、ボイラ1は、バーナ4から水管群8を経由して燃焼ガス排出路5の排出口5aに至るまでの間に燃焼ガスGが流れるガス流路9が形成され、バーナ4で発生した燃焼ガスGがガス流路9を経由して排出ロ5aから排出される。
【0035】
ボイラ1の燃料は、生ガスと燃焼用空気とを混合した燃料ガスからなり、生ガスは、例えば、S(硫黄)を含んだ付臭剤が添加されて、漏出した場合に早期に発見できるようになっている。
【0036】
燃料供給部2は、燃焼用空気を供給する送風ファン10と、生ガスを供給するノズル11とを備え、送風ファン10から送風された燃焼用空気とノズル11から供給された生ガスとがダクト内で混合されて燃料ガスが生成されるようになっている。
【0037】
缶体3は、図2に示すように、バーナ4から燃焼ガス排出路5までのガス流路9を形成する一対の対向壁18,19を備えると共に、図1に示すように、下部管寄せ12と、上部管寄せ13と、水管群8とを備えており、角型の缶体構造となっている。水管群8は、図2に示すように、両対向壁18,19の間のガス流路9内に配置された複数の内側水管8aと、各対向壁18,19によってそれぞれ連結された複数の外側水管8bとを備えている。水管群8を構成する伝熱管としての各水管8a,8bは、図1に示すように、垂直方向に延びて下部管寄せ12と上部管寄せ13とを通水可能に接続する。また、下部管寄せ12の上部及び上部管寄せ13の下部は、キヤスタブル(耐火物)14が配置されている。
【0038】
バーナ4は、水管群8側の面に複数のノズル孔が該面に沿って平面状に配列されたバーナエレメント4aを有し、燃料供給部2から供給された燃料ガスがバーナエレメント4aで燃焼するようになっている。また、バーナ4は、例えば、圧力センサにより検出された蒸気集合部(図示せず)の圧力に基づいて、燃焼状態(例えば、高燃焼、低燃焼)を制御可能とされている。
【0039】
図1及び図2においてバーナエレメント4aから水管群8側に示した破線部は、バーナエレメント4aで形成される火炎を概念的に表したものである。
【0040】
バーナ4の燃焼で発生した高温の燃焼ガスGは、ガス流路9を通過して水管群8の水を加熟し、缶体3の下流側の燃焼ガス排出路5に導入されてエコノマイザ7の水を加熱する。エコノマイザ7は、燃焼ガスGの廃熱によって加熱された水を下部管寄せ12に供給する。
【0041】
筐体6は、缶体3の少なくともボイラ1の両側面を構成する上述の対向壁18,19、燃料供給部2側及び燃焼ガス排出路5側の各面を覆うように形成され、燃焼ガスGの漏出と加熱された水管群8の露出が防止されるようになっている。
【0042】
また、缶体3の長手方向の中央部には、図2に示すように、ガス流路9に沿う方向に隣接する内側水管8a同士の間に、空間16が形成されており、この空間16内には、例えば、CO酸化触媒等の触媒15が後述のように設けられている。
【0043】
上記構成を有するボイラ1では、先ず、燃料供給部2からバーナ4に供給された燃料ガスが、バーナエレメント4aのノズル孔から噴出、燃焼して、高温の燃焼ガスGが生成される。
【0044】
燃焼ガスGは、ガス流路9を通過しながら水管群8内の水を加熱して蒸気とし、水管群8を通過した後に燃焼ガス排出路5の排出ロ5aから排出される。加熱により生じた蒸気は上部管寄せ13を経由して蒸気利用機器に供給される。
【0045】
水管群8を通過する際、燃焼ガスGは、後述のように触媒15を通過して燃焼ガスGに含まれたCOがCO2に酸化され、燃焼ガスGに含有されるCOの濃度が低下する。
【0046】
この実施形態では、燃焼ガスが触媒15を通過せずに、触媒15の外周と一対の対向壁18,19との間に生じる隙間を通過してしまうのを可及的に低減するために、次のように構成している。
【0047】
図3は、触媒15の斜視図であり、図4は、触媒15を、一対の対向壁18,19の間に取付けた状態を概略的に示す平面図である。なお、図4では、燃焼ガスの流通方向を矢符Bで示している。
【0048】
この実施形態の触媒15は、矩形断面のガス流路9に対応する直方体状の触媒本体20を備えている。この触媒本体20は、上板20a、底板20b、及び、両側板20c,20dによって矩形の枠体を構成し、この枠体内に、例えば、白金などの触媒をそれぞれ担持した平板20e及び波板20fが交互に配置され、枠体の前面側が、燃焼ガスが流入するガス流入面20gとされ、背面側が、燃焼ガスが流出するガス流出面20hとされる。この触媒15は、燃焼ガスGに含まれるCOを酸化してCO2とすることでCOを除去するものである。
【0049】
この実施形態では、触媒本体20を構成する上板20a、底板20b、両側板20c,20d、平板20e及び波板20fは、例えば、ステンレスからなる。平板20e及び波板20fは、それぞれ燃焼ガスとの接触面積を広くするために表面処理が施されて表面に多数の微小凹凸が形成され、この微小凹凸に触媒活性材料が担特されている。
【0050】
この実施形態の触媒15では、両側板の一方の側板20cには、ガス流路9を形成する一方に対向壁19の内面に摺接する第1のシール部21が設けられ、他方の側板20dには、ガス流路9を形成する他方の対向壁18の内面に摺接する第2のシール部22が設けられる。
【0051】
第1のシール部21は、ガス流路9の上流側および下流側にそれぞれ対応して設けられた一対のシール部として、一方の側板20cのガス流入面20g側及びガス流出面20h側の各縁部をシール基端部とし、各シール基端部からそれぞれ延出する薄い平板状の上流側第1シール板21a及び下流側第1シール板21bを備えている。上流側第1シール板21aは、ガス流路9の斜め上流に向かって一方の対向壁19に対して傾斜するように延出し、下流側第1シール板21bは、ガス流路9の斜め下流に向って一方の対向壁19に対して傾斜するように延出する。
【0052】
同様に、第2のシール部22は、ガス流路9の上流側および下流側にそれぞれ対応して設けられた一対のシール部として、他方の側板20dのガス流入面20g側及びガス流出面20h側の各縁部をシール基端部とし、各シール基端部からそれぞれ延出する薄い平板状の上流側第2シール板22a及び下流側第2シール板22bを備えている。上流側第2シール板22aは、ガス流路9の斜め上流に向って他方の対向壁18に対して傾斜するように延出し、下流側第2シール板22bは、ガス流路9の斜め下流に向って他方の対向壁18に対して傾斜するように延出する。
【0053】
各シール板21a,21b,22a,22bは、バネ弾性を有している。この実施形態では、上流側第1シール板21a及び下流側第1シール板21bは、一方の側板20cの上流側及び下流側の両端縁を延ばして折り曲げ形成され、上流側第2シール板22a及び下流側第2シール板22bは、他方の側板20dの上流側及び下流側の両端縁を延ばして折り曲げ形成される。なお、シール板としての所要のバネ弾性が得られない場合には、側板20c,20dの各シール板の部分を加工して所要のバネ弾性が得られるようにしてもよい。また、各シール板21a,21b,22a,22bは、必ずしも側板20c,20dと一体に形成する必要はなく、別体の各シール板を、触媒本体20に取付けるようにしてもよい。また、各シール板21a,21b,22a,22bは、平板状に限らず、例えば、波板状などであってもよい。
【0054】
各シール板21a,21b,22a,22bの各先端部は、図4に示すように、ガス流路9を形成する一対の対向壁18,19の内面にそれぞれ摺接して、触媒本体20の両側面20c,20dと対向壁18,19との間の隙間をシールするシール先端部となっている。
【0055】
触媒15は、触媒作用が劣化したときに、交換する必要があるために、ガス流路9に着脱可能に設置するのであるが、この設置の際に、各シール板21a,21b,22a,22bに、各対向壁18,19の内面にそれぞれ向かう付勢力を付与するように、すなわち、各シール板21a,21b,22a,22bのシール先端部を、ガス流路を形成する各対向壁18,19の内面に圧接するように取付ける。具体的には、一方の対向壁19に形成された開口部から触媒15をガス流路内に挿入し、前記開口部を閉塞する蓋体によって触媒15を、矢符Cで示すように、他方の対向壁18に対して押付けるように圧力を加えて取付ける。これによって、各シール板21a,21b,22a,22bには、各対向壁18,19の内面にそれぞれ向かう付勢力が生じ、各シール先端部は、各対向壁18,19に圧接され、触媒本体20の両側面20c,20dと対向壁18,19との間の隙間をシールする。
【0056】
なお、触媒15は、ガス流路9の高さに対応して上下方向に長い構造であるので、一体構造に限らず、複数の部分に分割した分割構造としてもよい。
【0057】
図5は、この実施形態の触媒15の取付け状態の詳細を示す平面図であり、図6は、筐体6の一方の側面を取外した状態の対向壁19を示す側面図である。
【0058】
この実施形態では、ガス流路9を形成する対向壁18,19の内、一方の対向壁19には、触媒15を、ガス流路内に着脱可能に取付け、取外しするための矩形の開口部が形成されると共に、この開口部を蓋体23によって閉塞するようにしている。この蓋体23の内面には、断熱材24が装着されている。
【0059】
この実施形態では、触媒15の上面、下面、及び、両側面には、シリカアルミナ系の繊維などからなる断熱材を耐熱性無機接着剤などによってそれぞれ装着し、筐体6の一方の側面を取り外して缶体3を露出させ、缶体3を構成する一方の対向壁19の蓋体23を取外し、開口部からガス流路9内に、断熱材を装着した状態で触媒15を着脱可能に設置する。
【0060】
その際、触媒15の両側板20c,20dの各シール板21a,21b,22a,22bが、他方の対向壁18と一方の対向壁としての蓋体23の内面とによって挟圧されるように、蓋体23を締付け固定して、触媒15を、他方の対向壁18に押付けるようにしてガス流路9内に設置する。
【0061】
これによって、触媒15は、各シール板21a,21b,22a,22bに、ガス流路9の対向壁18,23の内面に向かう付勢力が付与され、各シール板21a,21b,22a,22bのシール先端部を、対向壁18,23の内面に圧接する。また、熱膨張によっても、各シール板21a,21b,22a,22bには、ガス流路9の対向壁18,23の内面に向かう付勢力が付与される。
【0062】
したがって、図5の平面図に示すように、触媒15の一方の側板20cに設けられた上流側第1シール板21a及び下流側第1シール板21bは、一方の対向壁19の一部を構成する蓋体23の内面に圧接され、各第1シール板21a,21bの各シール先端部が蓋体23の内面にそれぞれ押圧されて摺接する。また、触媒15の他方の側板20dに設けられた上流側第2シール板22a及び下流側第2シール板22bは、他方の対向壁18の内面に圧接され、各第2シール板22a,22bの各シール先端部が対向壁18の内面にそれぞれ押圧されて摺接する。各シール板21a,21b,22a,22bは、対向壁18,23に対する圧接力に応じて各シール先端部が、シール状態を維持しながら対向壁18,23の内面に沿って摺動する。
【0063】
上流側第1シール板21a及び下流側第1シール板21bによって、触媒本体20の一方の側板20cと一方の対向壁23との間の隙間が二重にシールされ、上流側第2シール板22a及び下流側第2シール板22bによって、触媒本体20の他方の側板20dと他方の対向壁18との間の隙間が二重にシールされる。
【0064】
これによって、燃焼ガスが、触媒本体20の両側面20c,20dと対向壁18,23の内面との間に生じる隙間を通過するのを各シール板21a,21b,22a,22bによって阻止し、燃焼ガスを、触媒本体20に通過させることができ、触媒作用を受けずに通過する燃焼ガスを低減することができる。
【0065】
しかも、上流側第1シール板21a及び上流側第2シール板2aは、対向壁18,19側から触媒本体20のガス流入面20g側へそれぞれ傾斜しているので、触媒本体20の側面20c,20dよりも外側を流通する燃焼ガスを、触媒本体20のガス流入面20gへ案内して触媒本体20に通過させることができる。
【0066】
また、上流側及び下流側第1シール板21a,21bと、蓋体23と、触媒本体20の側板20cとによって形成される空間には、上述のように断熱材25が充填されると共に、上流側及び下流側第2シール板22a,22bと、対向壁18と、触媒本体20の側板20dとによって形成される空間には、断熱材26が充填される。これら断熱材25,26によって、対向壁18,23の温度が高温になるのを抑制することができると共に、緩衝材として熱応力を緩和することができる。
【0067】
上述の実施形態では、触媒15は、外側水管8bが存在しない位置に設置し、各シール板21a.21b,22a,22bのシール先端部は、対向壁18,23の平面に摺接したけれども、各シール板21a.21b,22a,22bは、バネ弾性を有しているので、図7に示すように、例えば、上流側第2シール板22aおよび下流側第2シール板22bの各シール先端部を、各外側水管8bの外周面にそれぞれ摺接させてシールすることもできる。
【0068】
上述の実施形態では、各シール板21a,21b,22a,22bは、ガス流入面20gの周縁部及びガス流出面20hの周縁部に設けたけれども、触媒本体20の外周とガス流路9を形成する対向壁18,19との間の隙間をシールできれば、周縁部以外、例えば、触媒本体20の側板20c,20dの平面部に設けてもよい。また、上述の実施形態では、シール板は、上流側と下流側とに一対設けたけれども、一対に限らず、一つ設けてもよいし、三つ以上設けてもよい。
【0069】
また、触媒15は、上述の構成に限らず、例えば、ステンレス以外の金属やセラミックによって構成してもよく、通気孔を有するスポンジ状の多孔質構造、あるいは、通気可能な流路が形成された容器内に触媒活性材料が担持されたペレットを多数収容した構成としてもよい。なお、触媒活性材料として、上述の白金以外の貴金属(Ag、Au、Rh、Ru、Pt、Pd、Ir)または金属酸化物(NiOX、CuOX、COX、MnOX、FeOx)を用いてもよい。
【0070】
また、触媒15は、CO酸化触媒であったけれども、CO酸化触媒に限らず、燃焼ガスに含まれるNOxを還元してN2としてNOxを除去するNOx還元触媒、あるいは、燃焼ガスに含まれるNH3を酸化してN2としてNH3を除去するNH3酸化触媒、その他の触媒であってもよい。触媒の数も1個に限らず、複数の触媒を設置してもよい。
【0071】
上述の実施形態では、触媒15は、缶体3内のガス流路9に配置されたけれども、缶体3外のガス流路9、例えば、図8に示すように、煙道27に配置してもよい。
【0072】
上述の実施形態では、触媒本体20の両側板20c,20dに、各シール板21a,21b,22a,22bを設けたけれども、本発明の他の実施形態として、触媒本体20の上板20a及び底板20bにシール板を設けてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、角型缶体構造のボイラに適用して説明したけれども、本発明は、角型缶体構造のボイラに限らず、水管群を内側水管列と外側水管列との2重円環状に配列すると共に、内側水管列の内側を燃焼室とする円筒型の缶体構造であって、内側水管列の周方向の一部に設けた連通部を介して燃焼ガスを、内側水管列と外側水管列との間のガス流路に導入し、外側水管列の周方向の他部に設けた連通部を介して外側水管列の外側へ燃焼ガスを導出するωフロー缶体構造のボイラに適用してもよい。あるいは、水管群を内側水管列と外側水管列との2重円環状に配列すると共に、内側水管列の内側を燃焼室とする円筒型の缶体構造であって、内側水管列の下端部に設けた連通部を介して燃焼ガスを、内側水管列と外側水管列との間のガス流路に導入し、外側水管列の上端部に設けた連通部から放射状に燃焼ガスを導出する缶体構造のボイラやその他の燃焼装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 ボイラ
3 缶体
4 バーナ
8 水管群
8a 内側水管
8b 外側水管
9 ガス流路
15 触媒
18,19 対向壁
20 触媒本体
21 第1のシール部
21a 上流側第1シール板
21b 下流側第1シール板
22 第2のシール部
22a 上流側第2シール板
22b 下流側第2シール板
23 蓋体
24,25,26 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路に設置される触媒の構造であって、
前記触媒は、前記流体が通過する触媒本体と、該触媒本体の外周に設けられて、前記流路の内面に摺接して前記触媒本体と前記流路の内面との間に生じる隙間をシールするシール部とを備える、
ことを特徴とする触媒構造。
【請求項2】
前記シール部は、前記触媒本体の外周に支持されるシール基端部と、該シール基端部から延出して前記流路の内面に摺接するシール先端部とを有し、
前記シール基端部から前記シール先端部へ至る延出方向が、前記流路の内面に対して傾斜している、
請求項1に記載の触媒構造。
【請求項3】
前記シール部は、
前記触媒本体の外周の面の内、少なくとも、両側面の内の一方の側面に対向する前記流路の内面に摺接する第1のシール部と、他方の側面に対向する前記流路の内面に摺接する第2のシール部と、を備え、
前記第1および第2のシール部は、それぞれ、前記流路の上流側と下流側それぞれに対応して設けられた少なくとも一対のシール部を有し、
前記一対のシール部は、前記流路の内面に向かう付勢力によって、各シール先端部が前記内面に沿ってそれぞれ摺動可能である、
請求項2に記載の触媒構造。
【請求項4】
バーナで発生した燃焼ガスが通過するガス流路が形成され、かつ前記ガス流路を通過する燃焼ガスと熱交換して熱媒体を加熱するよう構成された缶体を備えると共に、前記ガス流路に触媒が設置される燃焼装置であって、
前記触媒は、前記燃焼ガスが通過する触媒本体と、前記触媒本体の外周に設けられて、前記ガス流路の内面に摺接して前記触媒本体と前記ガス流路の内面との間に生じる隙間をシールするシール部とを備える、
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項5】
前記シール部は、前記触媒本体の外周に支持されるシール基端部と、該シール基端部から延出して前記ガス流路の内面に摺接するシール先端部とを有し、
前記シール基端部から前記シール先端部へ至る延出方向が、前記ガス流路の内面に対して傾斜している、
請求項4に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記缶体は、前記ガス流路を形成するよう互いに対向する少なくとも2つの対向壁を有し、前記触媒は、それら2つの対向壁間に設置され、
前記シール部は、少なくとも、前記2つの対向壁それぞれの内面に摺接する第1および第2のシール部を備え、
前記第1および第2のシール部は、それぞれ、前記ガス流路の上流側および下流側それぞれに対応して設けられた少なくとも一対のシール部を有し、
前記一対のシール部は、前記対向壁の内面に向かう付勢力によって、各シール先端部が前記内面に沿ってそれぞれ摺動可能である、
請求項5に記載の燃焼装置。
【請求項7】
前記缶体は、前記対向壁に形成された開口部と、該開口部を閉塞して対向壁を形成する蓋体とを備え、
前記触媒を、前記開口部を介して前記ガス流路に着脱可能に、かつ、前記各シール部に前記対向壁の内面へ向かう付勢力を付与するように設置する、
請求項6に記載の燃焼装置
【請求項8】
前記2つの対向壁の少なくともいずれか一方の対向壁には複数の伝熱管が連結され、
前記2つの対向壁の少なくともいずれか一方の対向壁の内面と、前記第1および第2のシール部の少なくともいずれか一方のシール部が有する前記一対のシール部と、前記触媒本体の外周とによって形成される空間には、断熱材が充填される、
請求項6または7に記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115718(P2012−115718A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265019(P2010−265019)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】