説明

触媒被覆された膜を製造する方法

【課題】触媒被覆された膜を製造する方法を提供する。
【解決手段】実質的にフッ素化された非イオン性高分子アイオノマーのプリカーサー樹脂と触媒を合わせて均一混合物を形成し;その混合物を固体ポリマー電解質膜の表面に塗って被覆膜を形成し;その被覆膜をアルカリ金属塩基と接触させて非イオン性高分子アイオノマーのプリカーサー樹脂を加水分解してそれからアイオノマーを形成させ;そして、そのアイオノマーを鉱酸と接触させることを特徴とする触媒被覆された膜を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電気化学的用途、特に燃料電池用途に非結晶性フロロポリマーを使用することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素およびメタノール燃料電池は新しいエネルギ−技術の探索においてかなりの重要性を有する。例えば、 Ullman´s Encyclopediaof Industrial Chemistry, 5thed. Vol.12A,pp.55ff, VCH,New York,1989、を参照されたい。これらの燃料電池を開発するアプロ−チの一つは、固体ポリマー電解質膜を触媒層およびガス拡散性支持体層(GDB)と組合せて膜電極アッセンブリー(MEA)を作ることである。触媒層は典型的には白金、パラヂウムまたはルテニウムのような細かく砕かれた金属、白金−ルテニウムのような複数金属の組合せ、または酸化ルテニウムのような金属酸化物を、通常はバインダーとの組合せで、含むものである。水素燃料電池においては、触媒は通常炭素上に担持されており、メタノール燃料電池においては、触媒は担持されていないのが通常である。ガス拡散支持体は、典型的には高度に多孔性の炭素シ−トまたは繊維である。このような電池の例としては、イエーガーら,米国特許第4,975,172号を参照されたい。
【0003】
水素および直接メタノール燃料電池に共通の問題は、反応物および生成物の流れに流量制限を持ち込み、それによって燃料電池の性能を低下させる過剰の水の氾濫に弱いことである。触媒層およびガス拡散性支持体層にフロロポリマーを混合して、そうしなければ親水性であるものを疎水性にするのが一般的なやり方になっている。例えば、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)またはそれとヘキサフロロプロピレンまたはパーフロロビニルエーテルとの共重合体が使用される。(ブランチャート,米国特許第4,447,505号、イエーガーら、op.cit.、およびセルピコら,米国特許第5,677,074号参照)。
【0004】
耐久性、均一性および構造的な完全性を達成するためには、通常、そのように使用されるフロロポリマーを焼結する必要がある。既知のフロロポリマーは結晶性であって200℃を優に越える融点を持ち、300℃以上の温度で焼結を行う必要がある。そこに組み込まれる加熱サイクルは長く複雑である。さらに、高温はMEAの他の構成要素を劣化させる傾向があるため、実際にはMEAが組立てられる前に焼結を行うことが要求される。典型的な焼結サイクルが第1図に示されている。
【0005】
以下の開示は本発明の種々の側面に関連しており、次のようにまとめられる:セルピコ,上掲(op.cit.)、は触媒層中に好適には15−30%のPTFEを含む触媒層を有する多孔性のガス拡散電極を開示している。得られた触媒層は固体ポリマー電解質膜と組合せる前に不活性雰囲気下380℃に加熱される。
【0006】
マクロ−ド,米国特許第4,215,183号は、イオン交換膜電解質およびその膜の表面に結合された触媒電極からなる、酸化電極に湿潤防止された集電炭素紙を持つ燃料電池のような電気化学電池について開示している。20−35mg/cm2 のPTFEを含む湿潤防止された伝導体は590−650゜Fの温度で焼結されている。さらに、15−30重量%のPTFE粒子が触媒粒子と混合された触媒組成物が、MEAを作る前に、同じ様にして焼結されている。
【0007】
ウイルソン,米国特許第5,234,777号は、固体ポリマ−電解質(SPE)膜と多孔性電極支持体の間に薄い触媒層を入れた気体反応燃料電池を開示している。触媒層は好ましくは約10μmの厚さであり、約0.35mgPt/cm2 以下のカ−ボンに担持された白金触媒である。フィルムはインクのように形成され、フィルム剥離性の台紙上で広げられ硬化させられる。硬化されたフィルムは次いでSPE膜に移され、表面にホットプレスされて、制御された厚みと触媒分布を有する触媒層を形成する。もしくは、触媒層は、Na+ 型のパ−フロロスルフォンサン塩アイオノマ−を膜に直接張り付け、そのフィルムを高温で乾燥させ、次いでフィルムをアイオノマ−のプロトン型に戻すことによって形成される。この層は電池の性能が影響されない適度のガス透過性を有しており、触媒への水素のアクセスを最適化するのに有効な密度と粒子分布を有しており、触媒上で起るhalf−cell反応からの電子の流れのための電気的連続性も有している。
【0008】
藤田ら、日本特許第02007399号は、PTFEが触媒組成物中に含まれており、SPE膜への触媒層の設置(deposition)が100℃で行われることを除きウイルソン,上掲、のそれと類似の方法である。このような条件下でPTFEは不連続な粉末粒子として組成物中に残り、使用中に非常に飛び出し易いかまたは単純にこぼれ落ち易いものである。
【0009】
イエーガーら,米国特許第4,975,172号は、ガス拡散電極およびガス生成またはガス消費電気化学電池を開示している。電極は、それぞれのガスおよび電解質接触表面を限定する導電性の電気化学的に活性な多孔質体を、電解質接触表面をカバーするアイオノマーイオン導電性のガス不透過層と共に含んでいる。その層は電解質接触表面に直接張り付けられている親水性のイオンポリマー層およびそのポリマー層の上にある親水性イオン交換樹脂膜を含むものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、耐久性、均一性および優れた構造的完全性を有し、そこに添加されたフロロポリマーの望ましくない高温での長い複雑な焼結を必要としない方法で製造されるMEAを提供するものである。
【0011】
簡潔に言えば、そして本発明の一側面としては、膜電極アッセンブリーの製造方法が提供される。その方法とは、少なくとも一つの実質的にフッ素化された固体ポリマー電解質膜、貴金属触媒と実質的にフッ素化されたアイオノマー樹脂バインダーを含む少なくとも一つの触媒層、および少なくとも一つの炭素繊維製ガス拡散性支持体層、そしてこれら少なくとも一つの触媒層または少なくとも一つの炭素繊維製ガス拡散性支持体層はさらに無定形フロロポリマーからなっている、を含む多層構造体を形成し、その多層構造体を約200℃より低い温度に加熱し、そしてその加熱された多層構造体を加圧して、触媒層が固体ポリマー電解質膜とイオン的導電性接触を有し、かつガス拡散支持体層が触媒層と電子的導電性接触を有している一体化された(consolidated)膜電極アッセンブリーを製造するものである。
【0012】
本発明の他の側面によれば、触媒被覆された膜を製造する方法を提供する。即ち実質的にフッ素化された非イオン性高分子アイオノマーのプリカーサー樹脂と触媒とを合せて均一混合物を形成し、その混合物を固体ポリマー電解質膜の表面に塗って被覆膜を形成し、その被覆膜をアルカリ金属塩基と接触させて非イオン性高分子アイオノマーのプリカーサー樹脂を加水分解してそれからアイオノマーを形成させ、そしてそのアイオノマーを鉱酸と接触させることからなる方法である。
【0013】
本発明のもう一つの側面によれば、膜電極アッセンブリーが提供される。即ち、実質的にフッ素化された固体ポリマー電解質膜分離層(separator)、該分離層とイオン的導電性接触しており、触媒と実質的にフッ素化されたアイオノマー樹脂バインダーからなる触媒層、該触媒層と電子的導電性接触している炭素繊維製ガス拡散性支持体層、およびこれらの触媒層および支持体の一つかまたは両方に含まれているフロロポリマー、そのフロロポリマーは無定形フロロポリマーである、からなる膜電極アッセンブリーである。
【0014】
本発明の他の特徴は、以下の説明によってまた図を参照することによって明らかになるであろう。
【0015】
第1図は、公知のPTFE被覆されたGDBの一体化のために採用される典型的な焼結サイクルを図式的に示すものである。
【0016】
第2図は、膜電極アッセンブリーの性能を評価するのに使用される単一セル試験アッセンブリーを示す図である。
【0017】
第3図は、第2図に示す単一セル試験アッセンブリーから70℃で取られた電圧対電流密度曲線を図示する。ただしMEAは実施例1および2の態様であり、比較対象は比較例1である。
【0018】
第4図は、実施例2の態様と比較例1を対比させる電圧対電流密度曲線であって、第2図に示す単一セル試験アッセンブリーから85℃で取られたものを図示する。
【0019】
第5図は、実施例2の態様と比較例1を対比させる電圧対電流密度曲線であって、第2図に示す単一セル試験アッセンブリーから50℃で取られたものを図示する。
【0020】
第6図は、約9%のテフロン(R) −PTFEで被覆されたGDBを組み入れた燃料電池で取られた電圧対電流密度曲線を図示する。
【0021】
第7図は、三つの異なる濃度の無定型フロロポリマーで被覆されたGDBを組み入れた燃料電池で取られた電圧対電流密度曲線を図示する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】公知のPTFE被覆されたGDBの一体化のために採用される典型的な焼結サイクルを図式的に示すものである。
【図2】膜電極アッセンブリーの性能を評価するのに使用される単一セル試験アッセンブリーを示す図である。
【図3】第2図に示す単一セル試験アッセンブリーから70℃で取られた電圧対電流密度曲線を図示する。ただしMEAは実施例1および2の態様であり、比較対象は比較例1である。
【図4】実施例2の態様と比較例1を対比させる電圧対電流密度曲線であって、第2図に示す単一セル試験アッセンブリーから85℃で取られたものを図示する。
【図5】実施例2の態様と比較例1を対比させる電圧対電流密度曲線であって、第2図に示す単一セル試験アッセンブリーから50℃で取られたものを図示する。
【図6】約9%のテフロン(R) −PTFEで被覆されたGDBを組み入れた燃料電池で取られた電圧対電流密度曲線を図示する。
【図7】三つの異なる濃度の無定型フロロポリマーで被覆されたGDBを組み入れた燃料電池で取られた電圧対電流密度曲線を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
公知のフロロポリマーを特徴づける低い溶解性や高い加工温度は、機能的に同等のこれらの欠点を有さない代替物を見出そうと言うかなりの誘因を作り出す。公知のフロロポリマーの欠点はその高い結晶性と大きく関係していると考えられる。本発明においては、公知の高結晶性フロロポリマーは非晶性のフロロポリマーによって置き換えられる。本発明での使用に適した非晶性フロロポリマーは、実質的にフッ素化されたポリマー、好ましくはパーフロロポリマーであって、示差熱計,ASTM D−4591によって測定される吸熱が1J/gより大きくないことを特徴としている。本発明の目的のためには、「実質的にフッ素化された」とは、対応する非フッ素化ポリマーの水素の少なくとも約90%がフッ素置換されていることを言う。好ましいフロロポリマーは、四フッ化エチレン(TFE)の共重合体であって共重合モノマーは、ヘキサフロロプロピレン(HFP)、パーフロロビニルエーテル、2,2−ビスフロロメチル−4、5−ジフロロ−1、3−ジオキソール(PDD),およびその混合物から選ばれる。好ましくは、TFEモノマー単位の濃度は80mol%またはそれ以下であり共重合モノマーの濃度は少なくとも20mol%である。最も好ましいのは、60mol%のTFE、26mol%のパーフロロメチルビニルエーテル、および14mol%のパーフロロエチルビニルエーテルからなる三元共重合体、および67mol%のPPDからなるTFEとPDDとの共重合体である。
【0024】
本発明の実施に好ましく用いられるTFEとHFPまたはパーフロロアルキルビニルエーテルとの共重合体およびその製造法については、アノリックらの米国特許第5,663,255号に記載されている。またTFEとPDDとの共重合体およびその製造法については、スクアイアーの米国特許第4,754,009号に記載されている。両者を引用によって全てここに含める。
【0025】
本発明の非晶性フロロポリマーは種々のパーフロロ化された溶媒に溶解し、200℃より低い温度、好ましくは160℃より低い温度で融着する。本発明の実施に適した溶媒はパーフロロオクタンおよびその誘導体、パーフロロデカリンおよびその誘導体、パーフロロベンゼン、パーフロロメチルシクロヘキサン、パーフロロジメチルシクロヘキサン、パーフロロ(n−ブチルテトラハイドロフラン)、(C493 N、(C492 S、(C252 SO2 、C817 SO2 Fを含む。好ましい溶媒は、パーフロロ(n−ブチルテトラハイドロフラン)、(C493 N、およびパーフロロオクタンを含む。
その外、本発明の実施に適したフロロポリマーの水性分散液が製造され本発明の組成物を作るのに使用されるかもしれないが、それらは好ましいカーボン基材を濡らすのにより効果的ではなく、より好ましいものではない。
【0026】
本発明の好ましい態様において、TFEとPDDの共重合体、最も好ましくは67mol%のPDD含有率のもの(”テフロン”AF1600としてデラウエア州ウイルミントンのデユポン社から購入できる)が、重合済みのポリマーパウダー粉末の形で、室温またはそれ以上の温度でパーフロロオクタン(PF5080としてミネソタ州ミネアポリスの3M社から購入できる)に溶解され、固形分1−30重量%無定型フロロポリマー溶液が調製される。固形分5−10重量%無定型フロロポリマー溶液が好ましい。
【0027】
水素燃料電池に使用するのに特に適した本発明の一つの実施態様においては触媒組成物が作られる。公知技術の教えるところに従って選ばれる、金属、金属合金および/または金属酸化物触媒、好ましくは白金(Pt)が、カーボン粉末と結合され担持された触媒を形成する。触媒の濃度はカーボンの重量に対し約5−60重量%、好ましくは20−40重量%である。カーボンは好ましくは中ないし高表面積粉末である(約100から約2000m2 /g).マサチュセッツ州ビレリカのキャボット社から購入できるVulcan(R) XC72カーボンブラックが非常に好適であることが見出だされている。
【0028】
このようにして形成された担持触媒は、実質的にフッ素化された、好ましくはパーフロロ化されたアイオノマーの、水、アルコール、または、好ましくは水/アルコール混合物(SE−5112としてデユポンから購入できる)分散液中に固形分5−10重量%でスラリー化され、触媒分散液が調製される。好ましいアイオノマーは、PTFEと次式で表されるペンダント基を有するモノマーとのパーフロロ共重合体である。
【0029】
−(0−CF2CFR)aO−CF2(CFR´)bSO3-+
式中,RおよびR´は独立にフッ素、塩素または炭素数1−10のパーフロロアルキル基、a=0,1または2、b=0ないし6、そしてMは水素または一価の金属である。好ましくは,Rはトリフロロメチル基、R´はフッ素、a=0または1、b=1、そしてMは水素またはアルカリ金属である。最も好ましいのは、a=1、Mは水素である。Mが水素でない場合は、追加的なイオン交換工程をここで概略説明されるプロセスの適当な段階に導入して、MをHに変換する必要がある。アイオノマーを適当な方法で鉱酸と接触させるので十分である。好ましいアイオノマーは700−2000EWの当量重量(equivalent weight)を有する。
【0030】
得られた触媒分散液は次いで無定型フロロポリマー溶液と(最終的な乾燥組成物中で無定型フロロポリマーが1−20重量%となるように)スラリー化され、上で述べたように均一な触媒ペーストまたはインクを調製する。公知技術の中で一般的に使用されているいかなる追加的な添加剤もこのスラリーに加えて良い。
【0031】
得られた触媒ペーストまたはインクは、次いでMEAに組み込むための適当な基材上に塗布される。塗布する方法は本発明の実施において臨界的ではない。数多くの方法が公知技術の中で実施されている。
【0032】
一つの方法は、まず本発明の触媒インクをGDB、好ましくはしかし必須ではなく本発明のGDBと、次いで続く工程でSPE膜と結合する。PTFEに必要な第1図に示されるような焼結プロセスによる熱一体化工程は、フロロポリマーの高温一体化が最早必要ではないために除外される。その代わりに、一体化はMEAの一体化と同時に、200℃より高くない、好ましくは140−160℃の範囲の温度で行われる。
【0033】
好ましい実施態様において、本発明のCCMは固体ポリマー電解質(SPE)膜の上に配置された無定型フロロポリマーを含む薄い触媒層からなる。触媒層は好ましくは約10μmの厚さであり、約0.35mgPt/cm2 以下のカーボン上に担持された触媒からなる。一つの製造方法において触媒フィルムは、「カプトン」(R) ポリイミドフィルム(デユポン社から購入できる)のような平坦な剥離性の基材の上に広げることにより、転写膜(decal)として製造される。インクが乾く前に、転写膜は圧力と必要な熱を加えることによりSPE膜の表面に移され、次いで剥離性の基材を取り去ることによって、一定の厚さと触媒分布を有する触媒層を持つCCMが形成される。もしくは、無定型フロロポリマーを含む触媒層はプリント法のようなやり方で膜に直接張り付けられ、次いで触媒フィルムは200℃を越えない温度で乾燥される。好ましくは触媒インクはSPE膜を形成するのに用いられるアルカリ金属型のアイオノマー樹脂からなり、SPE膜と一体化された後に触媒層を鉱酸と接触させてプロトン型のアイオノマーに変換する。このようにして形成されたCCMはGDB、好ましくは本発明のGDBと結合され本発明のMEAが製造される。
【0034】
本発明の方法においては、触媒インク、SPE膜、およびGDBの各層を重ね合わせ、触媒インクおよびGDBの少なくとも一つ、好ましくは両方が一体化されていない無定型フロロポリマーからなり、次いで構成体全体を200℃を越えない温度、好ましくは140−160℃の範囲の温度で加熱、加圧することによって一体化する。MEAの両側を同じ方法で同時に形成することができる。また、触媒層のおよびGDBの組成はMEAの二つの側面で相違し得る。
【0035】
好ましい固体ポリマー電解質膜はPTFEと次式で表されるペンダント基を有するモノマーとのパーフロロ共重合体からなるアイオノマーである。
【0036】
−(O−CF2CFR)aO−CF2(CFR´)bSO3-+
式中,RおよびR´は独立にフッ素、塩素または炭素数1−10のパーフロロアルキル基、a=0,1または2、b=0ないし6、である。好ましくは,Rはトリフロロメチル基、R´はフッ素、a=0または1、b=1、である。最も好ましいのは、a=1である。
【0037】
好ましくは、そして上記と類似の方法によって、好ましい固体ポリマー電解質膜の第二側面に、同じ成分からなる同じ方法で形成された第二のコーテイング層が張り付けられる。
【0038】
本発明の、特に直接メタノール燃料電池に適したもう一つの実施態様において、触媒組成物は上述の方法で調製されるがカーボン触媒担体は除外される。そのように調製される担持されていない触媒組成物は、上記のCCMおよびMEA製造方法においてカーボン担持触媒組成物の代わりに使用される。
【0039】
好ましい実施態様において、本発明のガス拡散支持体は、多孔性の導電性基材(好ましくは公知技術で使用される通常のグラファァイト紙または布(例えば、東レ製TGPH−090およびTGPH−060))を、TFE、PMVEおよびPEVEの最も好ましい三元共重合体の固形分5%以下のPF5080溶液に、室温で少なくとも30秒間、浸すことによって形成される。(しかしながら、当業者はガス拡散支持体が金属やポリマーを含む多くの他の物質から作られてもよいことを認識している。)好ましくは、紙または布はフロロポリマーの炭素紙中の濃度が約3重量%になるまで浸されてから溶液から取り出され、残留する溶媒が上述のように蒸発によって除去される。本発明の実施において、MEAの性能は、本発明の無定型フロロポリマーの量が約5−6重量%を越えると低下することが見出だされた。スプレイコーテイングを含む他の公知の方法も、本発明のフロロポリマーをガス拡散支持体に適用するのに使用され得る。
【0040】
本発明の実施において、触媒層はGDBおよびSPE膜と200℃以下、好ましくは140−160℃の温度で熱的に一体化される。GDBは公知のいかなるタイプのものでも良いし、もしくは本発明のGDBでも良い。本発明の触媒層は、SPE膜の表面に,GDBとの一体化の前に、デポジットさせても良い。その方法は公知のいかなる方法でも良い。また、本発明の触媒層は、SPE膜との一体化の前に、最初に公知の方法でGDB上にデポジットされても良い。
【0041】
同様に、本発明のGDBは、触媒層およびSPE膜と200℃、好ましくは140−160℃の温度で熱的に一体化される。触媒層は本発明のそれであっても良いが、そうである必要はない。触媒層はSPE膜の表面に、GDBとの一体化の前に、デポジットされても良い。デポジットの方法は公知のいかなる方法でも良い。また、触媒層は、SPE膜との一体化の前に、最初に公知の方法で本発明のGDB上に設置(deposit)されてもよい。
【0042】
本発明のためには、ここに開示された本発明の触媒層または本発明のGDBのどちらかが必須である。好ましくは、触媒層およびGDBの両方が本発明のものであっても良く、触媒層とSPE膜は上述のように最初にCCMに作り込まれる。本発明の実施において、溶媒が除去され、無定型フロロポリマーが凝固し、そしてMEAが、室温と200℃の間、好ましくは140−160℃にゆっくりと加熱することにより、一工程で形成されるのである。僅か約3重量%の無定形フロロポリマーを含む本発明のGDB支持体を組み込んだMEAは、約10−30%の半結晶性フロロポリマーを必要とする公知のMEAと同様のまたはより優れた、高度に効率的な電気化学的な性能を示す。
【0043】
本発明においては、公知技術で教えられているガラス転移温度のみを示し結晶融点を示さない比較的新しいクラスの無定形フロロポリマーにより半結晶性フロロポリマーを置き換えることに加えて、本発明の無定形フロロポリマーは、より結晶性の高い公知のポリマーが分散液を形成するのに対し、むしろ容易に溶液を形成するのである。このことは、本発明のフロロポリマーの触媒組成物およびガス拡散支持体への応用を改良しかつ単純化する。
【0044】
加えて、本発明は、改良された均一性と触媒塗布膜の接着性を、コントロールされた疎水性による適切な水管理能力(water management)と結合するものである。さらに、本発明においては公知技術によって教えられているよりも50−80%低いフロロポリマー濃度で効率的な性能が実現されている。
【実施例】
【0045】
以下の具体例は発明の実施を説明することを意図するものであっていかなる意味でも限定的に考えられるべきではない。
【0046】
実施例1−4および比較実施例1−3は、触媒層に無定型フロロポリマーを加えることの効果を記載する。これらの実施例および比較実施例においてGDBは公知の方法によって作られる。実施例1−4および比較実施例1−3において、触媒ペーストは次の処方で調製された:白金20重量%を含むカーボン担持白金触媒(マサチュセッツ州、ウオードヒルのジョンソンマセイ社)15gを氷冷されたガラス製広口瓶に入れた。窒素雰囲気中で5重量%のNafion(R) アルコール/水−溶液(デユポン社、SE5112)60gおよび1−メトキシ−2−プロパノール(アルドリッチケミカル社)48gが加えられ、TempsetVirti Shear撹拌機により、設定1で、30−45分間よく撹拌した。撹拌後、混合物全体をボールミル(オハイオ州、イーストペイルステイン、ストーンウエアボールミル社製)に移し、サイズ1/2”×1/2”のBurundamシリンダーを使用して18時間擂り潰した。混合物をフィルターペーパーを通して注いでボールを除去し、ボウルは追加の1−メトキシ−2−プロパノールで洗浄した。グラインドゲイジ#5252(オハイオ州、プレシジョンケイジアンドトウール社)で粒子サイズを測定したところ3−4μmであった。溶媒は温和な温度(50−60℃)で窒素ガスを吹き込んで30分間蒸発させ触媒ペーストを得た。このようにして調製された触媒ペーストは、”Nafion”(R) バインダーを除きフロロポリマーを全く含んでいない。
【0047】
第2図には単一セル試験アッセンブリーが図示されている。燃料電池試験測定は、ニューメキシコ州のフューエルセルテクノロジー社から得られた単一セル試験アッセンブリーを使って行なった。第2図に示されるようにNafion(R)パーフロロ化イオン交換樹脂膜1が、カ−ボン粒子上に担持された白金とNafion(R) バインダーからなる触媒層2、および炭素紙とフロロポリマーからなるガス拡散支持体3と結合され、膜電極アッセンブリー(MEA)が作られた。試験アッセンブリーは、陽極ガス入口4、陽極ガス出口5、陰極ガス入口6、陰極ガス出口7、アルミニウム製エンドブロック8、シーリングのためのガスケット9、電気絶縁層10、ガス流通のための流動フィールド(flow field)を備えたグラファイト製集電ブロック11、および金メッキされた集電層12から成っている。
【0048】
燃料電池性能は次のような条件で測定された:水素(500cc/分)および酸素(1000cc/分)ガスが圧力30psiで燃料電池の陽極および陰極側からそれぞれ送り込まれた。膜を湿った状態に保つために、これらのガスは燃料電池に入る直前に加湿器を通過させた。電流は一定温度でセルの電圧を変化させて調べられた。単位面積あたりの電流は得られた総電流から計算された。種々の温度でのセルの電圧対電流密度曲線は第3−5図に示される。
【0049】
比較実施例1
既知の方法に従って、東レTGPH−090炭素紙の小片が、水対テフロン(R) 比が4:1になるように水で希釈されたテフロン(R) PTFE−30水分散液中に6−8分間浸漬された。テフロン(R) を吸収した炭素紙は取り出され、乾燥され、そして第1図に示されるサイクルに従って焼結された。この焼結されたPTFE被覆された炭素紙は、80部のVulcan(R) XC−72カーボンを20部のテフロン(R) T−30に加え高いせん断力をかけて混合することによって調製したスラリーで、さらに被覆された。スラリー被覆された紙はさらに第1図に示される第2の加熱サイクルによって焼結され、既知のGDBが形成された。乾燥されたカーボンスラリーの最終的な付着量は約2mg/cm2 であった。形成されたGDBに約10ml部の上記のように調製された触媒ペーストがスクリーンプリンター(MPM社、モデルTF−100)を使用して張り付けられた。
【0050】
このようにして形成された電極はまず30分間風乾され、次いで90−100℃で1時間オーブンで乾燥された。上記の方法で作られた電極は25cm2 サイズであった。二つの乾燥された25cm電極が取り上げられ、それぞれ150mgの5重量%Nafion(R) 溶液(SE5112,デユポン社)で塗布された。それらは20−30分間風乾され、さらに60分90℃でオーブン乾燥された。乾燥された被覆電極を、湿ったNafion(R) N115パーフロロスルフォン酸膜(デラウエア州、ウイルミントンのデユポン社)のどちらかの面の上に置いて、一体化されていないMEAを形成した。
【0051】
一体化されていないMEAは二つのカプトン(R) ポリイミドフィルム(デユポン社)の層の間に置かれ、そのアッセンブリーは二層のシリコンゴムシートの間に、そして最終的には二枚の平らなスチール板の間に置かれた。アッセンブリー全体を135℃に予熱された水圧プレスにかけ、接触圧のみで3分間加熱せしめた後、ピストン圧(ram force) 3000lbを2分間かけた。プレスは室温に冷却されその間MEAアッセンブリーは圧力下に維持された。そして次いでMEAは取り出され、使用されるまで湿った状態に保つため水中で保存された。
【0052】
MEAは単一セルアッセンブリー中に置かれ、セルハードウエアはレンチを使用して1.5ft−lbsトルクで締め付けられた。このセルアッセンブリーは、Test Station GT120(GlobeTech社、テキサス州)に接続され,成極(polarization)データ(電流―電圧曲線)が70℃で取られた。第3図にテフロン(R) AF0%に対応する点として、0.2ボルトにおける電流密度が0.8A/cm2 であったと言う結果が図示されている。
【0053】
実施例1
1.6gのテフロン(R) AF1601(デユポン社)6重量%溶液を上記のようにして調製された0.85gのPt/Cを含む触媒ペーストおよび0.1703gのNafion(R) に加えた。得られた混合物は2時間攪拌され、8.6重量%のテフロン(R) AFを含む触媒組成物が調製された。
【0054】
電極とMEAは比較実施例1に記載されたのと同じ方法で作られた。そのように作られたMEAは、比較実施例1に於けるように70℃でテストされた。第3図に8.6重量%テフロン(R) AFと表示された点で結果が図示されている。0.2ボルトでの電流密度0.89A/cm2 は、比較実施例1と比べて有意に高いものであった。
【0055】
実施例2
テフロン(R) AF1601の0.096g(6重量%溶液1.6g)を上記のようにして調製された0.43gのPt/Cを含む触媒ペーストおよび0.086gのNafion(R) に加えた。得られた混合物は2時間攪拌され、15.3重量%のテフロン(R) AFを含む触媒組成物が調製された。
【0056】
電極とMEAは比較実施例1に記載されたのと同じ方法で作られた。そのように作られたMEAは、比較実施例1に於けるように70℃でテストされた。第3図に15.3重量%テフロン(R) AFと表示された点で結果が図示されている。約0.92A/cm2 の電流密度は、比較実施例1と比べて有意に高いものであった。
【0057】
比較実施例2
この比較実施例では、比較実施例1のMEAが85℃でテストされた。第4図に0%テフロン(R) AFと表示された点で結果が図示されている。0.2ボルトでの電流密度は約1.091A/cm2 であった。
【0058】
実施例3
この実施例では、実施例2のMEAが85℃でテストされた。第4図に15.3%テフロン(R) AFと表示された点で結果が図示されている。0.2ボルトでの電流密度約1.22A/cm2 は、比較実施例2と比べて高いものであった。
【0059】
比較実施例3
この比較実施例では、比較実施例1のMEAが50℃でテストされた。第5図に0%テフロン(R) AFと表示された点で結果が図示されている。
【0060】
実施例4
この実施例では、実施例2のMEAが50℃でテストされた。第5図に15.3%テフロン(R) AFと表示された点で結果が図示されている。0.2ボルトでの電流密度は、比較実施例3と同等であった。しかしながら、より高い電圧下では実施例2のMEAに生じる電流に明らかな増加が認められた。
【0061】
比較実施例4および実施例5ないし7
比較実施例4および実施例5ないし7は、無定形フロロポリマーのGDB組成物への添加効果を述べる。Nafion(R) バインダー以外はフロロポリマーを含まない触媒層がここに述べるようにSPE膜に張り付けられた。
【0062】
加水分解されていない940当量重量のNafion(R) パーフロロアイオノマー樹脂(デラウエア州ウィルミントンのデュポン社)の固形分3.5%溶液が、攪拌機と水冷リフラックスコンデンサーを備えた12Lの丸底フラスコ中で586gのNafion(R) を16,455gのFluorinert(R) FC−40パーフロロ化溶媒(ミネソタ州ミネアポリスの3M社)とを一緒にすることによって調製された。混合物は500rpmで室温、16時間攪拌され、次いで145℃で4時間リフラックスされた。得られた溶液は冷却され5ガロンのプラスティック製バケツにろ過された。5グラムのサンプルが固形分の決定のために乾燥された。
【0063】
Nafion(R) 溶液85gが、40%のカーボン担持白金15g(マサチューセッツ州、ネイティックのEtec社)と合わされ、触媒ペーストが調製された。カーボンはVulcan(R) XC−72カーボンブラックパウダー(マサチューセッツ州、ビレリカのCabot社)であった。混合物は2時間、室温で、1.0−1.25mmのジルコニア製ビーズを含む Eiger MiniTM 100ボールミル(イリノイ州、モンデラインの Eiger Machinery社)によって粉砕された。粉砕の後で粒子径が1μm以下であることがグラインドゲージ Model 5252(オハイオ州、デイトンのPrecision Gauge and Tool社)を使用して決定された。固形分%は13.56−13.8の範囲であった。
【0064】
10.2cm×10.2cm、厚さ76μmのカプトン(R) ポリイミドフィルム(デラウエア州、ウィルミントンのデュポン社)が、その重量を記録した後、平坦な吸着板(vacuum board)の上に置かれた。7.1cm×7.1cmの窓が切り抜かれたもう一枚の厚さ76μmのカプトン(R) ポリイミドフィルムが、その窓が中央にくるように前者の上に置かれた。後者は前者より少し大きくその少なくとも一部が吸着板に直接接触した。使い捨てのピペットを使って少量(〜10cc)の触媒ペーストが後者のカプトン(R) フィルム上、開口窓の真上に置かれた。ペーストが開口窓の範囲を満たすようにドクターナイフで押し広げられた。次いで、上のフィルムは注意深く取り除けられ、前者のフィルム上に設置(deposit)された被覆は、全ての溶媒が完全に蒸発し触媒被覆転写紙(decal)が形成されるまで、数時間風乾された。約76μm厚の湿った被覆は典型的には、最終CCM中0.3mgPt/cm2 の触媒装填量になった。
【0065】
10.2cm×10.2cmの、湿った、酸交換された、Nafion(R) N112パーフロロアイオノマー膜(デラウエア州、ウイルミントンのデュポン社)が上で述べたように形成された二枚の触媒被覆転写紙の間にサンドイッチされた。二枚の転写紙上の被覆が相互に正しく揃えられ、膜に面して位置付けられるように注意を払った。このように形成されたアッセンブリーは、145℃に予熱された水圧プレスの20.3cm×20.3cmの圧力板の間に挿入された。プレスは閉じられピストン圧22000Nで加圧された。サンドイッチアッセンブリーは〜2分間、加圧下に保たれ、次いで加圧されたままで〜2分間冷却された。アッセンブリーはプレスから取り出され、カプトン(R) ポリイミドフィルム片がゆっくりと剥がされて全ての触媒コーティングが膜に移行された。このようにして形成されたCCMは室温水のトレイに浸され(膜を完全に湿らせるように)そして注意深く保存と将来の使用のためにジッパー付の袋に移された。
【0066】
それからMEAを作る前に、触媒層のNafion(R) を加水分解するために、上で形成されたCCMは二枚のPTFEラボマット(イリノイ州、バーノンヒルのCole−Parmer Instrument社から得られる、カタログ番号E−09406−00)層の間に置かれ、そして30重量%のNaOH溶液に80℃で30分間浸漬された。溶液は均一な加水分解を確実にするために攪拌された。浴中30分の後CCMは取り出され、新鮮な脱イオン水で完全に洗浄して全てのNaOHを除去した。
【0067】
このように加水分解されたCCMは、まだテフロン(R) メッシュ中にあり、次いで15重量%硝酸に65℃の温度で45分間浸漬した。溶液は均一な酸交換を確実にするために攪拌された。この処理は15重量%硝酸を含む第2の浴で65℃45分間繰り返された。次いでCCMは室温で15分間脱イオン水の流れの中で洗浄され、全ての残留する酸が除去された。次いでそれらはすぐ使えるよう湿った状態で包装された。
【0068】
比較実施例4
31mlのテフロン(R) タイプ30、固形分60%のPTFE分散液(デラウエア州ウィルミントンのデュポン社)が、ガラス製のトレイ中で、469mlの脱イオン水で薄められた。7.5cm×7.5cm片のタイプTGP090炭素紙(東レ社製)がその分散液に1分間浸漬され、2時間風乾された。乾燥されたフィルムはオーブン(フィッシャーサイエンティフィック、プログラム可能な加熱炉、モデル497)に入れられ、窒素雰囲気中で第1図に示された焼結サイクルに従って焼結され、PTFE被覆されたGDBが形成された。2枚組の炭素紙が、別々の希釈されたPTFE分散液を使ってこのように処理された。PTFE濃度は8.6―9.5%の範囲にあることが認められた。各々のPTFE被覆されたGDBの片面が600グリット(grit)のサンドペーパーでこすることによって粗面化され、単一セルアッセンブリーがテストのために組み立てられた。ここにSPE膜1、および触媒層2が、上述のようにCCMを形成する。(第2図参照)。そのCCMは、上述のように作られたPTFE被覆GDB3の粗面の間に置かれ、MEAが形成された。このCCMおよびGDBは熱で一体化されることなく組み立てられた。単一セルアッセンブリーは、ロスアラモス国立研究所のGM/DOE燃料電池開発センターから入手された燃料電池試験アッセンブリーに接続された。
【0069】
電圧‐電流密度曲線を示す第6図を引用する。この図はテフロン(R) PTFE分散液で処理されたガス拡散支持体を使用したセルの性能曲線を示す。0.5ボルトでの電流密度は約1.2A/cm2 であった。
【0070】
実施例5‐7
PTFE被覆したGDBを形成した比較実施例4の方法が、PTFEを無定形三元共重合体に置き換えられたことおよび第1図の焼結サイクルが真空下140℃のオーブン加熱と1時間その温度に保持することに置き換えられたのを除き、そのまま行なわれた。アノーリックらの米国特許第5,663,255号の教えるところに従って製造される、60mol%のTFE、26mol%のパーフロロメチルビニルエーテル、および14mol%のパーフロロエチルビニルエーテルからなる無定形三元共重合体が、ミネソタ州、ミネアポリスの3M社から購入できるPF5080パーフロロオクタンに表1に示された濃度で溶解され、炭素紙が30秒間浸され、乾燥後の無定形フロロポリマーの装填率が同様に示される。
【0071】
【表1】

【0072】
燃料電池性能の結果を示す第7図を引用する。第7図において、1.2/2.5化学量論@1A/cm2 とは、燃料電池測定における水素と空気の流速を意味する。水素ガスは燃料電池の陽極側に1A/cm2 で運転するセルに必要とされる量の1.2倍の流速で導入され、空気は陰極側に1A/cm2 で運転するセルに必要とされる量の2.5倍の流速で導入された。これらの流量は流通セル(current cell)中で毎分417ccの水素および毎分2072ccの空気に相当した。両方の気体は、水素と空気にそれぞれ0.08cc/minおよび0.176cc/minの水を加えることによって、それぞれ100%RHおよび50%RHに加湿された。
【0073】
第6および7図には、同様の条件が適用され、新しいフロロポリマーを使用して従来のPTFEよりも少ない使用量で、同様の燃料電池性能が得られることが示される。このことは、第7図に見られるように新しいフロロポリマーの最も低い装填率(〜3.2重量%)において事実である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にフッ素化された非イオン性高分子アイオノマーのプリカーサー樹脂と触媒を合わせて均一混合物を形成し;
その混合物を固体ポリマー電解質膜の表面に塗って被覆膜を形成し;
その被覆膜をアルカリ金属塩基と接触させて非イオン性高分子アイオノマーのプリカーサー樹脂を加水分解してそれからアイオノマーを形成させ;そして
そのアイオノマーを鉱酸と接触させることを特徴とする触媒被覆された膜を製造する方法。
【請求項2】
均一混合物がさらに無定形フロロポリマーからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無定形フロロポリマーが四フッ化エチレン(TFE)から誘導されるモノマー単位とヘキサフロロプロピレン(HFP)、パーフロロアルキルビニルエーテル、2,2−ビストリフロロメチル−4,5−ジフロロ−1,3−ジオキソール(PDD)およびその混合物から誘導される少なくとも20モル%のモノマー単位からなる共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
無定形フロロポリマーが約60モル%のTFEから誘導されるモノマー単位、約26モル%のパーフロロメチルビニルエーテルから誘導されるモノマー単位、および約14モル%のパーフロロエチルビニルエーテルから誘導されるモノマー単位からなる三元共重合体、またはPPD67モル%のTFE・PDD共重合体であることを特徴とする請求項3に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−103308(P2011−103308A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14138(P2011−14138)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【分割の表示】特願2000−616083(P2000−616083)の分割
【原出願日】平成12年4月20日(2000.4.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】