説明

触媒装置

【課題】少なくとも一枚の金属製の波形板を積層して構成される筒状のハニカム構造体を触媒の担体として用いる触媒装置において、触媒機能を向上させる。
【解決手段】ハニカム構造体2の端部2aにハニカム構造体2の軸方向に沿って複数の凸部51と凹部52とを設け、該凸部51の頂部51aと該凹部52の最奥部52aとの該軸方向の距離hを波形板4の板厚の2〜10倍の範囲とし、排ガスの流れを乱流とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の筒状ハニカム構造体を排ガス浄化用触媒の担体として用いる触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車又は自動二輪車に用いられる排気管には、金属製のハニカム構造体を排ガス浄化用触媒の担体として用いる触媒装置が取り付けられている。前記触媒装置は、一般に金属製の波形板を巻回してハニカム構造体を形成し、触媒を担持させたハニカム構造体を円筒体の中に挿入して構成される。そして、ハニカム構造体の端部にレーザを照射して、波形板の隣接する部分同士を溶接し固定している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
エンジン側から排気管中を流れる排ガスは、ハニカム構造体の一方の端部から流入し、触媒装置の触媒機能により排ガス中の炭化水素、窒素酸化物及びすす等が浄化されて、ハニカム構造体の他方の端部から流出してマフラーへ流れる。
【0004】
ここで、従来の触媒装置は、ハニカム構造体の一方の端部に流入する排ガスがハニカム構造体中で層流となるため、排ガスと触媒とが十分に接触しないことがあり、さらに触媒機能を向上させた触媒装置を提供することが望まれる。
【特許文献1】特開2004−160505号公報(第3頁、第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、触媒機能を向上させた触媒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、少なくとも一枚の金属製の波形板を積層して構成される筒状のハニカム構造体を触媒の担体として用いる触媒装置において、前記ハニカム構造体の端部に該ハニカム構造体の軸方向に沿って複数の凸部と凹部とを備え、該凸部の頂部と該凹部の最奥部との該軸方向の距離が前記波形板の板厚の2〜10倍の範囲であることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、ハニカム構造体の端部に流れ込む排ガスは、凸部や凹部に接触するとその流れの方向が変化する。又、凸部の頂部と凹部の最奥部とのハニカム構造体の軸方向の距離が波形板の板厚の2〜10倍の範囲であるため、排ガスが凸部と凹部とで接触するタイミングにズレが生じる。又、排ガスには、凸部や凹部と接触せずにそのまま直進しようとする流れもある。
【0008】
このように、凸部に接触して変化した排ガスの流れと、凹部に接触して変化した排ガスの流れと、直進しようとする排ガスの流れが様々な方向から互いに衝突し乱流となる。従って、排ガスと触媒との接触が大となり、触媒装置の触媒機能を向上させることができる。
【0009】
ここで、凸部の頂部と凹部の最奥部とのハニカム構造体の軸方向の距離が波形板の板厚の2倍未満であると、上述したタイミングのズレがほとんどなくなりハニカム構造体の端部に流れ込む排ガスが乱流とならず、触媒装置の触媒機能を向上させることができない。又、凸部の頂部と凹部の最奥部とのハニカム構造体の軸方向の距離が波形板の板厚の10倍を超えても、それ以上の触媒機能の向上は得られない。
【0010】
又、凸部を球状で且つ波形板の板厚を超える幅を有するように構成すれば、ハニカム構造体の端部に流れ込む排ガスがより乱流となり易く好ましい。但し、凸部の幅はハニカム構造体に流れ込む排ガスの流れを阻害しない程度の幅とすることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図1から図5を参照して説明する。図1は本発明の実施形態の触媒装置を示す説明図、図2はハニカム構造体の端部を示す平面図、図3はハニカム構造体の端部を示す斜視図、図4は図1のIV−IV部分を切断した断面を示す説明図、図5はハニカム構造体の端部における排ガスの流れを示す模式図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態の触媒装置1は、自動車や自動二輪車の排気管に取り付けられ、排ガスを触媒機能により浄化するものであり、排ガス浄化用触媒の担体としての金属製筒状のハニカム構造体2と、ハニカム構造体2の外周を覆う筒体3とで構成される。図1には円筒状のハニカム構造体2を示したが、角筒状であってもよく、排気管への取付環境等に応じて適宜変更する。
【0013】
ハニカム構造体2は、触媒を担持するものであり、図2に示すように、ステンレス製の波形板4を巻回して積層したものである。但し、波形板4を積層する方法はこれに限られず、例えば、波形板4を蛇腹状に折り返して積層したもの、複数枚の波形板4を重ね合わせて積層したものなどであってもよい。又、ハニカム構造体2は波形板4だけでなく平坦な板も用いて両板を交互に積層するようにしてもよい。又、波形板4は必ずしも板全体が波形状となっていなくてもよく、少なくとも一部が波形状となっていればよい。
【0014】
ハニカム構造体2の排ガスが流れ込む側の端部2aには、図3に示すように、凸部51と凹部52とが波形板4の端縁に沿って交互に複数形成されている。図4に示すように、凸部51の頂部51aと凹部52の最奥部52aとのハニカム構造体2の軸方向の距離hは、波形板4の板厚の2〜10倍となっている。凸部51は球状であり、且つ波形板4の板厚を超える幅に形成されている。
【0015】
次に、触媒装置1の製造方法について説明する。
【0016】
まず、長方形状の板の長手方向中央から一方の端縁までをプレス加工により波形状に加工して波形板4を得る。次いで、この波形板4を、複数枚、波形状の部分とその反対側の平坦な部分とが重なるように交互に重ね合せる。そして、重ね合わせた複数枚の波形板4を互いに長手方向中央部で接合し、この接合した部分を中心に巻回して円筒状ハニカム構造体2を得る。
【0017】
尚、波形板4を全体に波形状を有するものとし、更に平坦な板も用いて両板を交互に積層してもよい。又、波形板4を複数枚重ね合わせたものを説明したが、波形板4は1枚であってもよい。
【0018】
又、波形板4を巻回して積層したハニカム構造体2の製造方法について説明したが、例えば、長方形状の板の全体を波形状にプレス加工して波形板4を得て、この波形板4を蛇腹状に折り返して積層してもよい。このとき、ハニカム構造体を円筒状とする場合は、折曲部分間の幅を中央から両端に向かって次第に小さくなるようにすればよい。
【0019】
又、全体に波形状のプレス加工が施された波形板4と、平坦な板とを交互に複数枚重ね合わせて積層するようにしてもよい。この場合もハニカム構造体を円筒状とする場合は、中央から両端に向かって板の幅が次第に小さくなるようにすればよい。
【0020】
このようにして得られたハニカム構造体2を、その外周が完全に覆われるように筒体3に圧入する。そして、筒体3の外周面の軸方向中央部を周方向に1周するようにレーザビームを照射し、ハニカム構造体1と筒体3とを溶接して固定する。
【0021】
次いで、ハニカム構造体2の端部2aにレーザビームを照射し隣接する波形板4同士の接点(平坦な板も積層している場合には、波形板4と平坦な板との接点)を溶接する。この溶接と同時に端部2aに凸部51と凹部52とを設ける。即ち、端部2aが溶融すると、溶融した金属が流動性を有し表面張力により凝集する。この凝集した部分が凸部51となり、それ以外の部分が凹部52となる。従って、凸部51と凹部52とは波形板4の端縁で交互に形成される。
【0022】
レーザビームの照射による溶接は、凸部51の頂部51aと凹部52の最奥部52aとのハニカム構造体2の軸方向の距離hが波形板4の板厚の2〜10倍の範囲となり、且つ凸部51が球状で波形板4の板厚を超える幅を有するように調節する。但し、凸部51の幅は、ハニカム構造体2に流れ込む排ガスの流れを阻害しない程度の幅となるようにする。例えば、板厚0.1mmのステンレス製波形板4に、レーザビームサイズ1×4mm、出力2〜3kw、溶接速度5〜10m/分で溶接を行うことにより、ハニカム構造体2の端部2aに前述の凸部51及び凹部52を形成することができる。
【0023】
本実施形態の触媒装置1によれば、図5に示すように、ハニカム構造体2の端部2aに流れ込む排ガスは、凸部51や凹部52に接触するとその流れの方向が変化する。又、凸部51の頂部51aと凹部52の最奥部52aとのハニカム構造体2の軸方向の距離hが波形板4の板厚の2〜10倍の範囲であるため、排ガスが凸部51と凹部52とで接触するタイミングにズレが生じる。又、排ガスには、凸部51や凹部52と接触せずにそのまま直進しようとする流れもある。
【0024】
このように、凸部51に接触して変化した排ガスの流れと、凹部52に接触して変化した排ガスの流れと、直進しようとする排ガスの流れとが様々な方向から互いに衝突し乱流となる。又、凸部51が球状で、且つ波形板4の板厚を超える幅を有しているため、排ガスはより乱流となり易い。又、排ガスはハニカム構造体2の内壁に接触する度に流れの方向に変化が生じ、乱流のままハニカム構造体内を流れる。ここで、層流よりも乱流の方が排ガスと触媒との接触が大となる。従って、触媒装置1の触媒機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の触媒装置を示す説明図。
【図2】ハニカム構造体の端部を示す平面図。
【図3】ハニカム構造体の端部を示す斜視図。
【図4】図1のIV−IV部分を切断した断面を示す説明図。
【図5】ハニカム構造体の端部における排ガスの流れを示す模式図。
【符号の説明】
【0026】
1…触媒装置、 2…ハニカム構造体、 2a…端部、 3…筒体、 4…波形板、 51…凸部、 51a…頂部、 52…凹部、 52a…最奥部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一枚の金属製の波形板を積層して構成される筒状のハニカム構造体を触媒の担体として用いる触媒装置において、
前記ハニカム構造体の端部に該ハニカム構造体の軸方向に沿って複数の凸部と凹部とを備え、該凸部の頂部と該凹部の最奥部との該軸方向の距離が前記波形板の板厚の2〜10倍の範囲であることを特徴とする触媒装置。
【請求項2】
前記凸部は球状であり且つ前記波形板の板厚を超える幅を有することを特徴とする請求項1記載の触媒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−252994(P2007−252994A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77750(P2006−77750)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】