説明

触覚式通信装置

【課題】視覚障害者の方などが、指の触覚を利用してメッセージ交換することのできる通信装置を提供する。
【解決手段】触覚式通信装置1には、表面がなぞられた位置を検出するタッチ式入力デバイス12を前面に、指の触覚を利用して情報を伝達するための触覚素子130がマトリクス状に配置された触覚ディスプレイ13を背面に備え、データの送受信を行うための無線通信手段11と、タッチ式入力デバイス12の表面がなぞられた位置を記憶し、送信操作がなされると、無線通信手段11を用いて、タッチ式入力デバイス12の表面がなぞられた位置を示すメッセージを受信側の装置に送信し、送信側の装置から送信されたメッセージを無線通信手段11が受信すると、メッセージで示される位置に対応する触覚ディスプレイ13の触覚素子130を作動させる制御手段10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指の触覚を利用して情報を伝達する触覚ディスプレイを利用して通信を行う技術に係わる。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者の方に情報を伝達する手法として紙等に形成された点字が用いられてきたが、コンピュータ技術の発達により、指の触覚を利用して情報を伝達する触覚ディスプレイが開発されるようになった。
【0003】
触覚ディスプレイの方式としては、ピン部材をマトリックス状に配置し、ピン部材を機械的に突出させることにより、凹凸により情報を伝達するようにした方式(例えば、特許文献1)、皮膚表面に媒体を介して超音波を照射し、皮膚を刺激することにより情報を伝達する方式(例えば、特許文献2)、開口状の気孔部をマトリックス状に配置し、気孔部の内圧を負圧に変動させることにより情報を伝達する方式(例えば、特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−222057号公報
【特許文献2】特開2003−29898号公報
【特許文献3】特開2005−43385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術は、コンピュータのディスプレイのように、指の触覚を利用して情報を伝達することのみを目的とし、視覚障害者の方などが、指の触覚を利用してメッセージ交換するための技術ではない。
【0006】
そこで、本発明は、視覚障害者の方などが、指の触覚を利用してメッセージ交換することのできる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する第1の発明は、視覚障害者の方などが、指の触覚を利用してメッセージ交換することのできるように、表面がなぞられた位置を検出するタッチ式入力デバイスを前面に、指の触覚を利用して情報を伝達するための触覚素子がマトリクス状に配置された触覚ディスプレイを背面に備え、データの送受信を行うための無線通信手段と、前記タッチ式入力デバイスの表面がなぞられた位置を記憶し、送信操作がなされると、前記無線通信手段を用いて、前記タッチ式入力デバイスの表面がなぞられた位置を示すメッセージを受信側の装置に送信し、送信側の装置から送信された前記メッセージを前記無線通信手段が受信すると、前記メッセージで示される位置に対応する前記触覚ディスプレイの前記触覚素子を作動させる制御手段を備えていることを特徴とする触覚式通信装置である。
【0008】
更に、第2の発明は、第1の発明に記載した触覚式通信装置において、送信者が受信者に送信する前記メッセージを確認できるようにするため、前記制御手段は、前記タッチ式入力デバイスの表面がなぞられると、なぞられた位置に対応する前記触覚ディスプレイの前記触覚素子を作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、視覚障害者の方などが、指の触覚を利用してメッセージ交換することのできる通信装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る触覚式通信装置の外観を説明する図。
【図2】触覚式通信装置のブロック図。
【図3】触覚式通信装置の制御手段の動作を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここから,本発明の実施形態について,本発明の技術分野に係わる当業者が,発明の内容を理解し,発明を実施できる程度に説明する。なお、これから説明する実施形態は本発明の一実施形態にしか過ぎず、種々の変形や変更が可能である。
【0012】
図1は、本実施形態に係る触覚式通信装置1の外観を説明する図である。図1で図示した触覚式通信装置1は、視覚障害者の方などが、指の触覚を利用してメッセージ交換することのできるように発案された装置で、触覚式通信装置1は、指などにより表面がなぞられた位置を検出するタッチ式入力デバイス12を前面に、指の触覚を利用して情報を伝達するための触覚素子130がマトリクス状に配置された触覚ディスプレイ13を背面にそれぞれ備え、タッチ式入力デバイス12と触覚ディスプレイ13は一体化されておらず、タッチ式入力デバイス12と触覚ディスプレイ13は独立した構成になっている。
【0013】
触覚式通信装置1を用いて送信者と受信者で通信を行う際、触覚式通信装置1の前面に備えられたタッチ式入力デバイス12が、受信者に送信するメッセージの入力に用いられるデバイスになり、触覚式通信装置1の背面に備えられた触覚ディスプレイ13が、送信者が送信したメッセージの描写に用いられるデバイスになる。
【0014】
送信者が触覚式通信装置1のタッチ式入力デバイス12の表面を指でなぞった後、送信者が触覚式通信装置1のタッチ式入力デバイス12を用いて送信操作(例えば、ダブルタップ)を行うと、タッチ式入力デバイス12の表面がなぞられた位置を示すメッセージが、送信者の触覚式通信装置1から受信者の触覚式通信装置1へ送信され、受信者の触覚式通信装置1は、送信者の触覚式通信装置1からメッセージを受信すると、受信者の触覚式通信装置1の触覚ディスプレイ13に該メッセージを表示することで、送信側と受信側間で通信が行われる。
【0015】
図2は、図1で図示した触覚式通信装置1のブロック図である。触覚式通信装置1は、タッチ式入力デバイス12の表面がなぞられた位置を示すメッセージを入力するための入力デバイスとなるタッチ式入力デバイス12と、指の触覚を利用して情報を伝達するための触覚素子130がマトリクス状に配置された触覚ディスプレイ13に加え、メッセージの送受信を行うための無線通信手段11と、メッセージの送受信を制御する制御手段10を備える。
【0016】
タッチ式入力デバイス12の表面がなぞられた位置を示すメッセージを入力するための入力デバイスとなるタッチ式入力デバイス12は、表面上の指等を検出する入力デバイスにより実現され、このような入力デバイスとしては、パーソナルコンピュータなどに備えられたタッチパッドや、スマートフォンなどで用いられているタッチパネルを利用できる。
【0017】
指の触覚を利用して情報を伝達する触覚ディスプレイ13は、指の触覚に刺激を与えるための触覚素子130がマトリクス状に配置されたディスプレイで、指の触覚に刺激を与える方式としては、ピンを利用する方式及び空気の負圧を利用する方式があるが、本実施形態では、超音波を利用する方式を採用し、図1に図示したように、触覚ディスプレイ13には、超音波を発振する超音波発振素子が触覚素子130としてマトリクス状に配置されている。
【0018】
データの送受信を行うための無線通信手段13は、無線により通信する手段で、無線通信の方式としては、携帯電話の公衆無線通信、赤外線通信またはBluetoothを利用することができる。
【0019】
図3は、触覚式通信装置1の制御手段10の動作を説明するフロー図である。触覚式通信装置1の間でメッセージ交換が行われる際、送信者が触覚式通信装置1のタッチ式入力デバイス12の表面を指でなぞると、送信者の触覚式通信装置1の制御手段10は、タッチ式入力デバイス12の表面が指でなぞられた位置を記憶する。
【0020】
なお、送信側が触覚式通信装置1のタッチ式入力デバイス12の表面を指でなぞるのに連動して、指でなぞった位置に対応する触覚式ディスプレイの触覚素子130を作動させ、指でなぞった軌跡を送信者の触覚式通信装置1の触覚ディスプレイ13に描写すると、送信者が受信者に送信するメッセージを確認できるようになる。
【0021】
送信者が触覚式通信装置1のタッチ式入力デバイス12をダブルタップするなどして送信操作を行うと、送信者の触覚式通信装置1の制御手段10は、無線通信手段11を作動させて、この時点で記憶している位置をメッセージとして受信者の触覚式通信装置1へ送信する。
【0022】
受信者の触覚式通信装置1の制御手段10は、送信者の触覚式通信装置1からメッセージを受信すると、受信者の触覚式通信装置1の触覚ディスプレイ13において、メッセージで示される位置の触覚素子130を作動させ、送信者が触覚式通信装置1のタッチ式入力デバイス12の表面を指でなぞった軌跡を、受信者の触覚式通信装置1の触覚ディスプレイ13に復元してこの手順を終了する。
【0023】
また、送信者が触覚式通信装置1のタッチ式入力デバイス12の表面を指でなぞるのに連動して、指でなぞった位置を示すメッセージを、受信者の触覚式通信装置1へリアルタイムに送信し、受信者の触覚式通信装置1の触覚ディスプレイ13に描写することにより、送信者が指でなぞった軌跡を受信者に伝えられるようにしても良い。
【0024】
このように本実施形態によれば、触覚式通信装置1を用いることによって視覚障害者の方などが、指の触覚を利用してメッセージ交換することができるようになる。また、触覚式通信装置1は、タッチ式入力デバイス12の背面に触覚ディスプレイ13を配置することによって、送信者が受信者に対して、タッチ式入力デバイス12の画面中の任意の位置を、触覚ディスプレイ13を通じて指示したりすることができるようになる。これにより、送信者が視覚障害者である受信者に対して、例えばタッチ式入力デバイス12の画面上における操作を指示したりすることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 触覚式通信装置
10 制御手段
11 無線通信手段
12 タッチ式入力デバイス
13 触覚ディスプレイ
130 触覚素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面がなぞられた位置を検出するタッチ式入力デバイスを前面に、指の触覚を利用して情報を伝達するための触覚素子がマトリクス状に配置された触覚ディスプレイを背面に備え、データの送受信を行うための無線通信手段と、前記タッチ式入力デバイスの表面がなぞられた位置を記憶し、送信操作がなされると、前記無線通信手段を用いて、前記タッチ式入力デバイスの表面がなぞられた位置を示すメッセージを受信側の装置に送信し、送信側の装置から送信された前記メッセージを前記無線通信手段が受信すると、前記メッセージで示される位置に対応する前記触覚ディスプレイの前記触覚素子を作動させる制御手段を備えていることを特徴とする触覚式通信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記タッチ式入力デバイスの表面がなぞられると、なぞられた位置に対応する前記触覚ディスプレイの前記触覚素子を作動させることを特徴とする、請求項1に記載した触覚式通信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−73118(P2013−73118A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213510(P2011−213510)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】