説明

計算機システム、仮想環境マイグレーション方法および仮想環境マイグレーションプログラム

【課題】二重化コンピュータの物理環境を仮想環境に容易に移行可能な計算機システムを提供する。
【解決手段】業務アプリケーションを実行する二重化コンピュータ100の物理環境を単一のコンピュータ110上の仮想環境に移行させるマイグレーション処理を実行する際に、管理コンピュータ120からの指示により、まず、二重化コンピュータ100のネットワーク設定情報、業務アプリケーション用の業務ファイルをネットワーク管理情報ファイル140、業務バックアップファイル150に退避した後、二重化コンピュータ100のモジュール10,11の2つの系を切り離し、一方の系例えばモジュール10は、実行中の業務アプリケーションの処理をそのまま継続し、他方の系例えばモジュール11は、マイグレーション処理を行い、二重化機能を自動的に削除させ、二重化機能を削除したディスクイメージを仮想マシンイメージの基としてHDD11c上に形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機システム、仮想環境マイグレーション方法および仮想環境マイグレーションプログラムに関し、特に、二重化コンピュータのような特殊なハードウェア環境を、ハードウェアに依存しない仮想環境に移行することを可能とする計算機システム、仮想環境マイグレーション方法および仮想環境マイグレーションプログラムに関する。本発明は、例えば、製造業等の工場で生産管理等の業務管理システムにおいて使用されている業務サーバや、病院の電子カルテや伝票の発行を行う業務システム、銀行の印鑑業務システムや、行政機関の書類発行システム等において使用されている各種のアプリケーションサーバ等、二重化コンピュータを使用している分野に好適に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1の特開2002−7149号公報「仮想計算機のシステム構成情報生成システムおよび方法ならびに記録媒体」や特許文献2の特開2010−237737号公報「パススルーI/Oデバイスを伴うLPARの動的マイグレーション装置、その方法およびそのプログラム」等に記載されているように、サーバに仮想環境を導入することを検討している企業が増加している。仮想環境導入のメリットとしては、ユーザが現在使用している業務アプリケーションを変更することなく、新サーバへ移行することができることにある。
【0003】
一般に、仮想環境を使用する場合は、物理サーバから仮想サーバへ移行を行うことになるが、通常の単一のハードウェアモジュールからなるIA(Intel Architecture)サーバを適用している場合であれば、物理サーバから仮想サーバへの移行を簡易化することができる移行ツール(マイグレーションツール)が既に存在している。
【0004】
しかしながら、二重化サーバについては、ハードウェアの構造が一般のIAサーバとは異なり、かつ、固有のドライバ等も多数含まれているため、通常の移行ツールをそのまま利用することができない。一方、二重化サーバにおいても、老朽化したサーバのユーザ環境を仮想サーバへ移行したいという要望が幅広く存在し、簡易に、物理環境を仮想環境に変換するマイグレーション手段(移行手段)の提供が強く望まれるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−7149号公報(第4−6頁)
【特許文献2】特開2010−237737号公報(第5−8頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、二重化コンピュータを仮想環境に移行させるマイグレーション技術が強く望まれているが、前述のような現状の技術における問題は、二重化コンピュータの物理環境を仮想環境へマイグレーション(移行)する作業における手間と作業の煩雑さにある。つまり、かくのごとき二重化コンピュータを物理環境から仮想環境へ移行する場合には、一般に、仮想環境において二重化コンピュータのハードウェア環境をそのまま移行する必要はなく、通常の単一のコンピュータ(例えばIAサーバ)として構築するようにすれば良い。しかし、単一のコンピュータ上の仮想環境に移行する場合は、ハードウェアの構成を変更する必要があり、また、二重化機能を実現するドライバ等のソフトウェアを移行する必要もない。このため、仮想環境を構築するための人手による作業が複雑化し、作業の手間がかかり、かつ、誤った操作を行ってしまうことが生じるという問題がある。
【0007】
さらには、物理環境から仮想環境へ変換する一般的なマイグレーション手段(移行手段)だけでは、正常に変換することができず、仮想環境にて、一旦、ゲストOS(Operating System)のインストールを行い、一からシステムの構築を行った上で、業務アプリケーションを移行することが必要であった。このため、物理環境から仮想環境への移行作業に時間を要するため、移行作業中の長時間に亘って、業務アプリケーションの実行が中断されてしまい、移行作業中の間、業務を停止せざるを得ない状態に陥っていた。
【0008】
(本発明の目的)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、二重化コンピュータにおいても、物理環境を仮想環境に容易に移行することが可能な計算機システム、仮想環境マイグレーション方法および仮想環境マイグレーションプログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による計算機システム、仮想環境マイグレーション方法および仮想環境マイグレーションプログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)本発明による計算機システムは、業務アプリケーションを実行する二重化コンピュータの物理環境を単一のコンピュータ上の仮想環境に移行させるマイグレーション処理を実行する計算機システムにおいて、前記マイグレーション処理を実行する際に、前記二重化コンピュータの2つの系を切り離し、かつ、二重化機能を自動的に削除させる二重化機能削除手段と、該二重化機能削除手段によって二重化機能を削除した状態に基づいて前記単一のコンピュータ上で動作させる仮想マシンの仮想マシンイメージファイルを作成するイメージ作成手段と、を少なくとも備えていることを特徴とする。
【0011】
(2)本発明による仮想環境マイグレーション方法は、業務アプリケーションを実行する二重化コンピュータの物理環境を単一のコンピュータ上の仮想環境に移行させるマイグレーション処理を実行する計算機システムにおける仮想環境マイグレーション方法であって、前記マイグレーション処理を実行する際に、前記二重化コンピュータの2つの系を切り離し、かつ、二重化機能を自動的に削除させる二重化機能削除ステップと、該二重化機能削除手段によって二重化機能を削除した状態に基づいて前記単一のコンピュータ上で動作させる仮想マシンの仮想マシンイメージファイルを作成するイメージ作成ステップと、を少なくとも有していることを特徴とする。
【0012】
(3)本発明による仮想環境マイグレーションプログラムは、少なくとも前記(2)に記載の仮想環境マイグレーション方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の計算機システム、仮想環境マイグレーション方法および仮想環境マイグレーションプログラムによれば、以下のような効果を奏することができる。
【0014】
第1に、二重化コンピュータの物理環境から単一のコンピュータ上の仮想環境への移行を行う際のマイグレーション作業を大幅に簡易化することができる。
【0015】
第2に、二重化コンピュータのネットワーク設定において、AFT(Adapter Fault Tolerance)やALB(Adaptive Load Balancing)等の可用性のある構成を利用していた場合であっても、二重化コンピュータにおけるネットワーク設定状態を示す構成内容を、仮想環境におけるネットワーク設定に忠実に反映させることができる。
【0016】
第3に、二重化コンピュータ物理環境から単一のコンピュータ上の仮想環境へ移行する際に、業務アプリケーションの停止時間を大幅に縮小することができ、業務の中断を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による計算機システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】図1に示す計算機システムを物理環境から仮想環境へ移行させるマイグレーション手順の一例を説明するフローチャートである。
【図3】図2に示した計算機システムのマイグレーション手順のうち二重化機能削除準備処理および二重化機能削除処理の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図4】図2に示した計算機システムのマイグレーション手順のうちディスクイメージ作成処理、仮想マシンリストア処理および仮想マシンネットワーク設定処理の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図2に示した計算機システムのマイグレーション手順のうち業務ファイルバックアップ処理および業務ファイルリストア処理の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】図1に示す計算機システムの管理コンピュータのネットワーク管理情報ファイルに格納しているネットワーク設定情報の一例を示すテーブルである。
【図7】図1に示す計算機システムを物理環境から仮想環境へ移行させるマイグレーション手順の図2とは異なる例を説明するフローチャートである。
【図8】図7に示した計算機システムのマイグレーション手順のうち業務ファイルリストア処理および切り戻し処理の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による計算機システム、仮想環境マイグレーション方法および仮想環境マイグレーションプログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による計算機システムおよび仮想環境マイグレーション方法について説明するが、かかる仮想環境マイグレーション方法をコンピュータにより実行可能な仮想環境マイグレーションプログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、仮想環境マイグレーションプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0019】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、二重化コンピュータのハードウェア構成に依存したドライバ等のソフトウェアを自動的に仮想マシン用のドライバへコンバートすることにより、物理環境から仮想環境への移行(マイグレーション)すなわち仮想マシンの構築を簡易に行うことを可能にすることを主要な特徴としている。
【0020】
また、二重化コンピュータの両系を別々に動作させ、一方の系において仮想環境への移行処理を行い、他方の系では、業務アプリケーションを継続して実行させることにより、マイグレーション時における業務停止時間を短縮することも可能としている。
【0021】
より具体的には、本発明は、次のような特徴を有している。二重化コンピュータを物理環境から単一のコンピュータ上の仮想環境へ移行させる処理において、ハードウェア構成から二重化構成部分を自動的に取り除き、さらに、二重化コンピュータに依存した二重化機能用ソフトウェア例えばドライバ等のソフトウェアを自動的にアンインストールする二重化機能削除処理を追加することにより、簡易に、単一のコンピュータ上で動作する仮想マシンへの移行を可能にしている。
【0022】
さらに、二重化コンピュータを構成する2つの系のモジュールをそれぞれ別々に動作させ、仮想マシンへの移行処理中においても、他方の系においては業務アプリケーションを継続して実行させることによって、該業務アプリケーションで使用する業務ファイルを継続的に更新させ、仮想マシンへの移行が完了した際に、該業務アプリケーションで使用する業務ファイルの差分情報を、移行先の仮想マシンの業務ファイルへコピーすることにより、業務の停止時間を大幅に縮小することを可能にしている。
【0023】
(本発明の実施形態のシステム構成例)
次に、本発明による計算機システムのシステム構成の一例について図1を用いて説明する。図1は、本発明による計算機システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図であり、計算機システムとして、移行元の二重化コンピュータ、移行先として仮想環境を構築する単一のコンピュータを含んで構成している例を示している。
【0024】
図1に示すように、本実施形態による計算機システムは、プログラム制御により動作し、二つのハードウェアモジュール(中央処理装置、プロセッサ、データ処理装置)からなる移行元の二重化コンピュータ100と、単一のハードウェアモジュールからなる移行先のコンピュータ110と、物理環境から仮想環境へのマイグレーション動作を管理する管理コンピュータ120と、システムイメージ格納ファイル130と、ネットワーク管理情報ファイル140と、業務バックアップファイル150と、を少なくとも含んで構成されている。
【0025】
二重化コンピュータ100は、0系のモジュール10、1系のモジュール11との2系統のハードウェアモジュールからなっており、それぞれは、同じハードウェア構成であり、モジュール10は、CPU(Central Processing Unit)10a、メモリ10b、HDD10c、NIC(Network Interface Card)10dを含み、モジュール11は、CPU11a、メモリ11b、HDD11c、NIC11dを含んで構成される。
【0026】
二重化コンピュータ100のCPU10a,11a、メモリ10b、11bについては、ハードウェアによって二重化されるが、HDD10c,11cそれぞれに格納される記憶情報についてはソフトウェアによって二重化されている。また、NIC10d,11dについては、LAN(Local Area Network)20のネットワークを介して通信を行うものであり、それぞれ、通常業務に使用する業務用LANカード10e,11e、管理用に使用する管理用LANカード10f,11f等を含み、ソフトウェアによって仮想LANを設定することにより、二重化している。
【0027】
つまり、二重化コンピュータ100は、仮想LANとして、業務用LANと管理用LANとの双方のLAN機能を有しており、管理コンピュータ120は、仮想環境の移行元になる二重化コンピュータ100と仮想環境の移行先となるコンピュータ110とを、それぞれ、LAN20を介して接続している。
【0028】
管理コンピュータ120は、システムイメージ格納ファイル130と、ネットワーク管理情報ファイル140と、業務バックアップファイル150との3つのファイルを少なくとも有しており、システムイメージ格納ファイル130は、図1のような計算機システムのシステムイメージを格納するファイルであり、ネットワーク管理情報ファイル140は、二重化コンピュータ100におけるLAN20に関するネットワーク設定情報を格納しているファイルであり、業務バックアップファイル150は、二重化コンピュータ100の業務アプリケーションによる業務実施内容を示す業務ファイルをバックアップするファイルである。
【0029】
なお、仮想環境を構築するコンピュータ110も、二重化コンピュータ100の各モジュールと同様に、CPU21a、メモリ21b、HDD21c、NIC21dを含んで構成されており、NIC21dのLANカード21eによって、LAN20に接続されている。
【0030】
次に、二重化コンピュータ100の物理環境から単一のコンピュータ110上の仮想環境へ移行させるマイグレーション手順の一例について、図2を用いて説明する。図2は、図1に示す計算機システムを物理環境から仮想環境へ移行させるマイグレーション手順の一例を説明するフローチャートである。
【0031】
図2のフローチャートにおいて、二重化機能削除準備処理S1、ディスクイメージ作成処理S3、仮想マシン変換処理S4、仮想マシンリストア処理S5、仮想マシンネットワーク設定処理S6、業務ファイルバックアップ処理S7、業務ファイルリストア処理S8のそれぞれの処理は、管理コンピュータ120において実行されるが、二重化機能削除処理S2については、二重化コンピュータ100において実行される。
【0032】
次に、図2に示す各処理の概要について順次説明する。ここで、二重化コンピュータ100の仮想環境へのマイグレーション動作を実行するための二重化コンピュータ100やコンピュータ110に対する操作は、管理コンピュータ120がLAN20のネットワークを経由して実行する。
【0033】
まず、管理コンピュータ120は、二重化コンピュータ100に対して、二重化機能削除準備処理S1を実行する。二重化機能削除準備処理S1においては、次に実行する二重化機能削除処理S2に先立って、二重化状態におけるLAN20に関するネットワーク設定情報や業務アプリケーションが使用する業務ファイルなどをあらかじめ収集して、ネットワーク管理情報ファイル140、業務バックアップファイル150として、バックアップする。
【0034】
次に、二重化コンピュータ100は、管理コンピュータ120からの指示に基づいて、二重化機能削除処理S2を実行する。二重化機能削除処理S2においては、モジュール10、モジュール11の2系統のハードウェアモジュールは別々に動作し、一方の0系のモジュール10は、引き続き、業務アプリケーションを実行するが、他方の1系のモジュール11においては、仮想マシンへ変換するために、二重化機能を削除する処理を行い、その結果を、ディスクイメージとして、HDD11cに保存する。
【0035】
二重化コンピュータ100における二重化機能削除処理S2が完了した旨の通知を受け取ると、管理コンピュータ120は、次に、ディスクイメージ作成処理S3を実施する。ディスクイメージ作成処理S3においては、二重化機能を削除した1系のモジュール11を、管理コンピュータ120が保持するバックアップ用OSイメージによって起動させて、HDD11cのディスクイメージ(二重化機能を削除したファイルイメージのみならず、今までの業務アプリケーションの実行結果を示す業務ファイルのファイルイメージも含む)を転送させて、HDD11cのイメージバックアップを管理コンピュータ120の業務バックアップファイル150上に形成する。
【0036】
しかる後、管理コンピュータ120は、仮想マシン変換処理S4を実行して、二重化機能削除処理S2によって二重化機能を削除した状態に基づいて、二重化コンピュータ100の物理マシンイメージを変換した仮想マシンのイメージファイル(単一のコンピュータ110上で動作させる仮想マシンの仮想マシンイメージファイル)を作成する。次いで、管理コンピュータ120は、仮想マシンリストア処理S5を実行して、移行先となる単一のコンピュータ110のディスクすなわちHDD21cに、仮想マシン変換処理S4において作成した仮想マシンのイメージファイルをリストアする。
【0037】
次に、管理コンピュータ120は、仮想マシンネットワーク設定処理S6を実行する。仮想マシンネットワーク設定処理S6においては、二重化機能削除準備処理S1においてネットワーク管理情報ファイル140にバックアップしておいた二重化コンピュータ100のネットワーク設定情報を、仮想マシンのイメージファイルとして作成した仮想マシン環境に合わせたネットワーク設定情報に変換して、仮想マシン上にリストアすることによって、仮想マシン環境を構築する。
【0038】
仮想マシン環境が構築されると、管理コンピュータ120は、業務ファイルバックアップ処理S7を実行する。業務ファイルバックアップ処理S7においては、0系のモジュール10において継続して実行していた業務アプリケーションを停止させ、停止した時点の業務ファイルと二重化機能削除準備処理S1において業務バックアップファイル150としてバックアップしておいた業務ファイルとの間の差分を採取し、差分バックアップファイルを作成する。
【0039】
引き続いて、管理コンピュータ120は、業務ファイルリストア処理S8を実行する。業務ファイルリストア処理S8においては、業務ファイルバックアップ処理S7において作成した差分バックアップファイルを、移行先のコンピュータ110の仮想マシン上の業務ファイルへリストアする。
【0040】
しかる後、管理コンピュータ120は、コンピュータ110の仮想マシン上の業務アプリケーションを起動し、二重化コンピュータ100の0系のモジュール10が実行していた業務アプリケーションの処理を引き継ぐ。以上により、二重化コンピュータ100上の物理環境からコンピュータ110上の仮想環境への移行が完了するが、二重化に関する機能を仮想マシン用の機能に自動的に変換するので、仮想マシンへのマイグレーション作業を簡素化することができ、かつ、該マイグレーション作業中においても、業務アプリケーションを続行することを可能としているので、業務アプリケーションとしては、極めて短い停止時間で、仮想マシンへの移行が可能になっている。
【0041】
(実施形態の動作例の説明)
次に、図1、図2において説明した計算機システムにおける動作の詳細について、その一例を、まず、図3を用いて説明する。図3は、図2に示した計算機システムのマイグレーション手順のうち二重化機能削除準備処理S1および二重化機能削除処理S2の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートであり、図3(A)が、管理コンピュータ120において実行される二重化機能削除準備処理S1における処理の詳細を示し、図3(B)が、二重化コンピュータ100において実行される二重化機能削除処理S2における処理の詳細を示している。
【0042】
前述したように、二重化コンピュータ100から単一のコンピュータ110への仮想環境の移行動作は、まず、管理コンピュータ120において、図3(A)に示すような二重化機能削除準備処理S1を実行することによって開始される。二重化機能削除準備処理S1が起動されると、準備処理として、管理コンピュータ120は、二重化コンピュータ100のネットワーク設定情報を、管理コンピュータ120上にあるネットワーク管理情報ファイル140に格納する(ステップS11)。二重化コンピュータ100は、前述したように、ネットワーク管理ソフトウェアによって、複数のNIC10d,11dについて各ネットワーク機能(例えば、業務用LAN機能や管理用LAN機能等)ごとにチーミング(グループ化)して仮想LANつまり一つの仮想的なNICとして扱うようにしている。
【0043】
ネットワーク管理ソフトウェアによって仮想的なNICとして管理されている二重化コンピュータ100のネットワーク設定情報をネットワーク管理情報ファイル140として格納している一例を、図6に示している。図6は、図1に示す計算機システムの管理コンピュータ120のネットワーク管理情報ファイル140に格納しているネットワーク設定情報の一例を示すテーブルである。
【0044】
図6のネットワーク管理情報ファイル140の例においては、複数個(図6の例では2個)のLANカードを多重化した仮想LANとしてチームごとに管理する構成とされており、各チームを示す仮想LAN140a、チームを構成する物理的なLANカードを示す第1物理LAN140b、第2物理LAN140c、ネットワークの可用性を示す構成140d、ネットワークアドレスを示すIPアドレス140e、サブネットマスク140f、デフォルトゲートウェイ140g、多重度を示す構成物理LAN数140hを少なくとも含む構成としている。
【0045】
ステップS11において、二重化コンピュータ100のネットワーク設定情報を保存すると、管理コンピュータ120は、次に、二重化コンピュータ100で実行している業務アプリケーションが使用する業務ファイルをバックアップするためのバックアッププログラムを二重化コンピュータ100にインストールして(ステップS12)、該業務アプリケーションが使用している業務ファイルを転送させて、管理コンピュータ120上にある業務バックアップファイル150に格納する(ステップS13)。
【0046】
次に、二重化コンピュータ100において実施される二重化機能削除処理S2の詳細について、図3(B)のフローチャートを用いて説明する。図3(A)に示した二重化機能削除準備処理S1が終了すると、管理コンピュータ120は、ネットワークのLAN20を介して、二重化コンピュータ100に対して二重化機能削除処理S2の実行を指示する二重化切り離しコマンドを送信する。管理コンピュータ120からの二重化切り離しコマンドを受信した二重化コンピュータ100は、図3(B)に示す二重化機能削除処理S2を起動する。
【0047】
二重化機能削除処理S2が起動すると、二重化コンピュータ100は、まず、0系のモジュール10、1系のモジュール11の2系統のハードウェアモジュールの片系例えば1系のモジュール11を切り離す(ステップS21)。次いで、2系統のハードウェアモジュールそれぞれで別々の動作を行うために、まず、残った系例えば0系のモジュール10であるか否かを判定する(ステップS22)。残った系例えば0系のモジュール10であった場合には(ステップS22のY)、残った0系のモジュール10のみにおいて業務アプリケーションをそのまま継続して実行する(ステップS23)。
【0048】
一方、切り離された系例えば1系のモジュール11であった場合には(ステップS22のN)、切り離された系例えば1系のモジュール11においては、業務用LANカード11eはLAN20との接続が切り離されて、管理コンピュータ120との通信を行う管理用LANカード11fのみがLAN20に接続されている状態に移行する。つまり、管理コンピュータ120は、管理用ネットワークとして接続されている管理用LANカード11fを用いて、1系のモジュール11との通信を行い、1系のモジュール11を操作することになる。
【0049】
次に、管理コンピュータ120は、該管理用ネットワークを介して、切り離された系例えば1系のモジュール11に対して、二重化設定解除コマンドを発行する。
【0050】
管理コンピュータ120からの二重化設定解除コマンドを受信した二重化コンピュータ100の切り離された系例えば1系のモジュール11は、HDD10c,11cに関するディスクの二重化設定を解除する(ステップS24)。さらに、切り離された系例えば1系のモジュール11は、NIC10d,11dに関するネットワークの二重化設定を解除する(ステップS25)。しかる後、最終的に、切り離された系例えば1系のモジュール11は、二重化関連機能を実行するドライバ等のソフトウェアモジュールをアンインストールする(ステップS26)。以上の処理により、二重化機能を削除した結果は、少なくとも、切り離された系例えば1系のモジュール11のHDD11cに保存される。
【0051】
次に、図1、図2において説明した計算機システムにおける動作の詳細について、図3の動作に引き続く動作の一例を、図4を用いてさらに説明する。図4は、図2に示した計算機システムのマイグレーション手順のうちディスクイメージ作成処理S3、仮想マシンリストア処理S5および仮想マシンネットワーク設定処理S6の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートであり、図4(A)が、管理コンピュータ120において実行されるディスクイメージ作成処理S3における処理の詳細を示し、図4(B)が、管理コンピュータ120において実行される仮想マシンリストア処理S5における処理の詳細を示し、また、図4(C)が、管理コンピュータ120において実行される仮想マシンネットワーク設定処理S6における処理の詳細を示している。
【0052】
図3(B)の処理を実行した二重化コンピュータ100からネットワークのLAN20を介して二重化機能削除処理S2が終了した旨が通知されてくると、管理コンピュータ120は、図4(A)に示すディスクイメージ作成処理S3を起動する。
【0053】
ディスクイメージ作成処理S3が起動すると、管理コンピュータ120は、まず、二重化機能の削除処理を実行した二重化コンピュータ100の系例えば1系のモジュール11をバックアップイメージの取得対象のモジュールとして一旦シャットダウンさせ(ステップS31)、しかる後、管理コンピュータ120が保持しているバックアップ用OSイメージを1系のモジュール11に転送して、該バックアップ用OSによって1系のモジュール11を再起動させる(ステップS32)。
【0054】
バックアップ用OSによって再起動された二重化コンピュータ100の1系のモジュール11は、HDD11cのディスクイメージ(二重化機能を削除したファイルイメージや図3(B)の二重化機能削除処理S2にて切り離されるまでの業務アプリケーションの実行結果を示す業務ファイルのファイルイメージ等)を、LAN20を介して、管理コンピュータ120に転送する。二重化コンピュータ100の1系のモジュール11からのディスクイメージを受信した管理コンピュータ120は、受信したディスクイメージ(つまりHDD11cのディスクイメージ)を、業務バックアップファイル150として、保存する(ステップS33)。
【0055】
二重化コンピュータ100の1系のモジュール11からのディスクイメージの受信が終了すると、管理コンピュータ120は、バックアップ用OSが動作している二重化コンピュータ100の1系のモジュール11を再度シャットダウンさせる(ステップS34)。
【0056】
しかる後、管理コンピュータ120においては、図2において説明したように、仮想マシン変換処理S4を実行して、既存の仮想環境への変換ツールを用いて、図4(A)のディスクイメージ作成処理S3によって作成した二重化コンピュータ100のイメージファイル(つまり、業務バックアップファイル150に保存したディスクイメージ)を、単一のコンピュータ110上で仮想マシンとして動作することが可能な仮想マシンファイル形式へ変換する処理を行ったり、また、物理的なドライバをコンピュータ110上の仮想マシン用のドライバへ変換する処理を行ったりする。
【0057】
仮想マシン変換処理S4が終了すると、管理コンピュータ120は、図4(B)に示す仮想マシンリストア処理S5を起動する。
【0058】
仮想マシンリストア処理S5が起動すると、管理コンピュータ120は、仮想マシンを構築するために、移行先のコンピュータ110を起動する(ステップS51)。しかる後、仮想マシン変換処理S4において作成した仮想マシンファイル(つまり、二重化コンピュータ100の1系モジュール11から転送されたディスクイメージを仮想マシン用に変換したイメージファイル)をリストアするための仮想ディスク(VD:Virtual Disc)を作成する(ステップS52)。
【0059】
仮想ディスクを作成した管理コンピュータ120は、コンピュータ110の仮想マシンに対して、LAN20を介して、作成した仮想ディスクを転送することによって、コンピュータ110のHDD21c上に仮想ディスク(VD)をリストアする(ステップS53)。仮想ディスクをリストアすると、管理コンピュータ120は、コンピュータ110上の仮想マシンを、二重化コンピュータ100の仮想マシンとして起動する(ステップS54)。なお、このとき、管理コンピュータ120からコンピュータ110上の仮想マシンの接続が可能となるように、仮想マシン上に一時的なネットワークの設定を行っている。
【0060】
図4(B)の仮想マシンリストア処理S5を実行して、移行先の単一のコンピュータ110を二重化コンピュータ100の仮想マシンとして起動すると、管理コンピュータ120は、図4(C)に示す仮想マシンネットワーク設定処理S6を起動する。
【0061】
仮想マシンネットワーク設定処理S6が起動すると、管理コンピュータ120は、図3(A)の二重化機能削除準備処理S1においてネットワーク管理情報ファイル140に保存していたネットワーク設定情報を取り出して、仮想マシン環境に合わせたネットワーク設定情報に変換する(ステップS61)。この際、二重化コンピュータ100のネットワーク設定情報がAFT(Adapter Fault Tolerance)やALB(Adaptive Load Balancing)等の可用性がある構成となっていた場合には、仮想マシン環境においてもかかる構成内容を反映した形式のネットワーク設定情報に変換している。
【0062】
ネットワーク設定情報の変換処理が終了すると、管理コンピュータ120は、LAN20を介して、変換したネットワーク設定情報を、仮想マシンのコンピュータ110上の仮想マシンに転送して、仮想マシンのネットワーク設定情報として、仮想マシン上にリストアする(ステップS62)。しかる後、管理コンピュータ120は、コンピュータ110上の仮想マシンを一旦シャットダウンさせる(ステップS63)。
【0063】
次に、図1、図2において説明した計算機システムにおける動作の詳細について、図4の動作に引き続く動作の一例を、図5を用いてさらに説明する。図5は、図2に示した計算機システムのマイグレーション手順のうち業務ファイルバックアップ処理S7および業務ファイルリストア処理S8の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートであり、図5(A)が、管理コンピュータ120において実行される業務ファイルバックアップ処理S7における処理の詳細を示し、図5(B)が、管理コンピュータ120において実行される業務ファイルリストア処理S8における処理の詳細を示している。
【0064】
図4(C)に示した仮想マシンネットワーク設定処理S6を終了すると、管理コンピュータ120は、図5(A)に示す業務ファイルバックアップ処理S7を起動する。
【0065】
業務ファイルバックアップ処理S7が起動すると、管理コンピュータ120は、まず、業務アプリケーションを継続して実行している二重化コンピュータ100の系例えば0系のモジュール10の業務アプリケーションの実行を停止させる(ステップS71)。
【0066】
しかる後、二重化コンピュータ100の系例えば0系のモジュール10のHDD10c内に保存されている業務ファイルの内容を転送させて、図3(A)の二重化機能削除準備処理S1において業務バックアップファイル150に保存していた業務ファイルの内容(図4(B)の仮想マシンリストア処理S5においてコンピュータ110の仮想マシンに仮想マシンファイルとしてリストアした業務ファイルと同一の内容)と比較して、差分データを採取して、差分バックアップファイルを業務バックアップファイル150内に作成する(ステップS72)。しかる後、業務アプリケーションを継続して実行していた二重化コンピュータ100の系例えば0系のモジュール10をシャットダウンする(ステップS73)。
【0067】
図5(A)の業務ファイルバックアップ処理S7を実行して、差分バックアップファイルを作成すると、管理コンピュータ120は、図5(B)に示す業務ファイルリストア処理S8を起動する。
【0068】
業務ファイルリストア処理S8が起動すると、管理コンピュータ120は、図4(C)の仮想マシンネットワーク設定処理S6において一旦シャットダウンしていたコンピュータ110上の仮想マシンを再度起動する(ステップS81)。しかる後、業務バックアップファイル150内に保存しておいた差分バックアップファイルを、LAN20を介して、コンピュータ110の仮想マシンに転送して、該差分バックアップファイルの差分データを、移行先のコンピュータ110の仮想マシン上の業務ファイルに反映させるようにリストアする(ステップS82)。この結果、コンピュータ110の仮想マシン上の業務ファイルは、図5(A)の業務ファイルバックアップ処理S7において、二重化コンピュータ100の0系のモジュール10における業務アプリケーションの実行を停止させた時点と同一の状態の内容に更新されることになる。
【0069】
差分バックアップファイルのリストア処理までの処理が終了すると、二重化コンピュータ100における物理環境から単一のコンピュータ110上における仮想環境への移行が完了することになり、管理コンピュータ120は、コンピュータ110の仮想マシン上の業務アプリケーションを起動することにより、コンピュータ110上の仮想マシンとして、二重化コンピュータ100の0系のモジュール10において実行していた業務アプリケーションを引き継いで実行することになる(ステップS83)。かくのごとき処理を行うことにより、物理環境から仮想環境へのマイグレーション作業中においても、業務アプリケーションを継続して実行することが可能であり、業務アプリケーションとしては、ごく短い停止時間で、仮想マシンへの移行が可能になる。
【0070】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、次のような効果が得られる。
【0071】
第1に、二重化コンピュータ100の物理環境から単一のコンピュータ110上の仮想環境への移行を行う際のマイグレーション作業を大幅に簡易化することができる。
【0072】
第2に、二重化コンピュータ100のネットワーク設定において、図6に示すようなAFT(Adapter Fault Tolerance)やALB(Adaptive Load Balancing)等の可用性のある構成を利用していた場合であっても、二重化コンピュータ100におけるネットワーク設定状態を示す構成内容を、仮想環境におけるネットワーク設定に忠実に反映させることができる。
【0073】
第3に、二重化コンピュータ100の物理環境から単一のコンピュータ110上の仮想環境へ移行する際に、業務アプリケーションの停止時間を大幅に縮小することができ、業務の中断を大幅に短縮することができる。
【0074】
(本発明の他の実施形態)
次に、二重化コンピュータ100を物理環境から単一のコンピュータ110上の仮想環境へ移行させるマイグレーション手順について、図2に示したマイグレーション手順とは異なる例を、図7を用いて説明する。図7は、図1に示す計算機システムを物理環境から仮想環境へ移行させるマイグレーション手順の図2とは異なる例を説明するフローチャートである。なお、本実施形態における計算機システムのシステム構成は、前述した図1のシステム構成と全く同様である。
【0075】
図7のフローチャートにおいて、二重化機能削除準備処理S1、ディスクイメージ作成処理S3、仮想マシン変換処理S4、仮想マシンリストア処理S5、仮想マシンネットワーク設定処理S6、業務ファイルバックアップ処理S7、業務ファイルリストア処理S8a、問題発生判定処理S9および切り戻し処理S10のそれぞれの処理は、管理コンピュータ120において実行されるが、二重化機能削除処理S2については、二重化コンピュータ100において実行される。
【0076】
ここで、管理コンピュータ120において実行される業務ファイルリストア処理S8a、問題発生判定処理S9および切り戻し処理S10以外の、二重化機能削除準備処理S1、ディスクイメージ作成処理S3、仮想マシン変換処理S4、仮想マシンリストア処理S5、仮想マシンネットワーク設定処理S6および業務ファイルバックアップ処理S7の各処理と二重化コンピュータ100において実行される二重化機能削除処理S2とについては、つまり、図2における二重化コンピュータ100からコンピュータ110への仮想環境の移行処理のうち業務ファイルリストア処理S8以外の各処理については、図2において説明した各処理と全く同様であり、ここでの重複する説明は省略する。
【0077】
次に、図7に示す各処理のうち、図2の業務ファイルリストア処理S8とは異なる業務ファイルリストア処理S8a、図2の処理に新たに追加した問題発生判定処理S9および切り戻し処理S10の各処理の概要について順次説明する。なお、二重化コンピュータ100の仮想環境へのマイグレーション動作を実行するための二重化コンピュータ100やコンピュータ110に対する操作は、図2の場合と同様、管理コンピュータ120がLAN20のネットワークを経由して実行する。
【0078】
図7の業務ファイルリストア処理S8aは、図2における業務ファイルリストア処理S8に加えて、移行処理が完了したコンピュータ110上の仮想マシンについて、仮想マシンシステムの動作状況を確認し、仮想マシンが正常に起動されているか否かを、また、業務アプリケーションが正常に起動されたか否かを確認するという確認処理が追加されている。
【0079】
図7において、図2のマイグレーション手順に対して新たに追加した問題発生判定処理S9は、業務ファイルリストア処理S8aにおける確認処理結果に基づいて、仮想マシンが正常に起動されているか否か、また、業務アプリケーションが正常に起動されたか否かの確認結果を判定する処理を行い、正常に起動されていた場合には、物理環境から仮想環境へ移行するマイグレーション手順が正常に実施されたものとして、図7の手順を終了させるが、万が一、不具合が発生していることを検知した場合には、物理環境から仮想環境への移行を停止させて、元の物理環境を復元させるために、新たに追加した切り戻し処理S10を起動する。
【0080】
図7において、図2のマイグレーション手順に対して新たに追加した切り戻し処理S10は、コンピュータ110の仮想マシン上で業務アプリケーションを実行させる移行動作を中止して、移行前の二重化コンピュータ100において業務アプリケーションを再開させる動作に切り戻す。
【0081】
次に、図7において説明した計算機システムにおける業務ファイルリストア処理S8aおよび切り戻し処理S10の各処理の詳細について、その一例を、図8を用いてさらに説明する。図8は、図7に示した計算機システムのマイグレーション手順のうち業務ファイルリストア処理S8aおよび切り戻し処理S10の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートであり、図8(A)が、管理コンピュータ120において実行される業務ファイルリストア処理S8aにおける処理の詳細を示し、図8(B)が、管理コンピュータ120において実行される切り戻し処理S10における処理の詳細を示している。
【0082】
図2においても説明したように、図7の業務ファイルバックアップ処理S7を実行して、差分バックアップファイルを作成すると、管理コンピュータ120は、図8(A)に示す業務ファイルリストア処理S8aを起動する。
【0083】
業務ファイルリストア処理S8aが起動すると、管理コンピュータ120は、図5(B)の場合と同様に、図7の仮想マシンネットワーク設定処理S6において一旦シャットダウンしていたコンピュータ110上の仮想マシンを再度起動する(ステップS81)。
【0084】
しかる後、管理コンピュータ120は、図5(B)の場合とは異なり、管理コンピュータ120とコンピュータ110上の仮想マシンとの間で、ネットワークのLAN20を介した通信が可能であるか否か、すなわち、管理コンピュータ120が仮想マシンを認識することができたか否かを判定することによって、コンピュータ110上の仮想マシンが問題なく正常に起動されているか否かを確認する(ステップ81a)。
【0085】
管理コンピュータ120が、ネットワークのLAN20を介して、コンピュータ110上の仮想マシンを認識することができない場合には(ステップS81aのN)、コンピュータ110上の仮想マシンを正常に起動することができないという異常が発生した旨を設定して(ステップS85)、処理を終了する。業務ファイルリストア処理S8aから異常の発生の旨が出力されてくると、図7において説明したように、問題発生判定処理S9において、物理環境から仮想環境への移行を停止させるために、切り戻し処理S10を起動する。
【0086】
一方、管理コンピュータ120が、ネットワークのLAN20を介して、コンピュータ110上の仮想マシンを認識することができた場合には(ステップS81aのY)、仮想マシンが正常に起動されていることが確認されたものとして、図5(B)の場合と同様に、業務バックアップファイル150内に保存しておいた差分バックアップファイルを、LAN20を介して、コンピュータ110上の仮想マシンに転送して、該差分バックアップファイルの差分データを、移行先のコンピュータ110の仮想マシン上の業務ファイルに反映させるようにリストアする(ステップS82)。この結果、コンピュータ110の仮想マシン上の業務ファイルは、図7の業務ファイルバックアップ処理S7において、二重化コンピュータ100の0系のモジュール10における業務アプリケーションの実行を停止させた時点と同一の状態の内容に更新されることになる。
【0087】
差分バックアップファイルのリストア処理までの処理が終了すると、二重化コンピュータ100における物理環境から単一のコンピュータ110における仮想環境への移行が完了することになり、管理コンピュータ120は、図5(B)の場合と同様、コンピュータ110の仮想マシン上の業務アプリケーションを起動して、コンピュータ110上の仮想マシンとして、二重化コンピュータ100の0系のモジュール10において実行していた業務アプリケーションを引き継いで実行することになる(ステップS83)。
【0088】
しかる後、管理コンピュータ120は、図5(B)の場合とは異なり、コンピュータ110上の仮想マシンにおいて業務アプリケーションが問題なく正常に起動されているか否かを確認する(ステップ83a)。
【0089】
管理コンピュータ120が、コンピュータ110上の仮想マシンにおいて業務アプリケーションが正常に起動されていないことを検知した場合には(ステップS83aのN)、コンピュータ110上の仮想マシンにおいて業務アプリケーションが正常に起動することができないという異常が発生した旨を設定して(ステップS85)、処理を終了する。業務ファイルリストア処理S8aから異常の発生の旨が出力されてくると、前述したように、問題発生判定処理S9において、物理環境から仮想環境への移行を停止させるために、切り戻し処理S10を起動する。
【0090】
一方、管理コンピュータ120が、コンピュータ110上の仮想マシンにおいて業務アプリケーションが正常に起動されていることを検知した場合には(ステップS83aのY)、業務ファイルリストア処理S8aが正常に終了した旨を設定して(ステップS84)、処理を終了する。業務ファイルリストア処理S8aから正常終了の旨が出力されてくると、前述したように、問題発生判定処理S9において、物理環境から仮想環境へのマイグレーション処理が正常に実施されたものとして、すべての処理を終了する。
【0091】
以上のように、本実施形態においては、業務ファイルリストア処理S8aから異常発生の旨が出力されてくると、管理コンピュータ120は、図7の問題発生判定処理S9において、物理環境から仮想環境への移行を停止させ、二重化コンピュータ100の物理環境において業務アプリケーションを再開させるために、図8(B)に示す切り戻し処理S10を起動させる。
【0092】
切り戻し処理S10が起動すると、管理コンピュータ120は、まず、コンピュータ110上の仮想マシンをシャットダウンする(ステップS101)。次いで、管理コンピュータ120は、直前まで業務アプリケーションを継続して実行していた二重化コンピュータ100の一方の系例えば0系のモジュール10を再起動する(ステップS102)。
【0093】
ここで、二重化コンピュータ100の他方の系例えば1系のモジュール11は図7の二重化機能削除処理S2において切り離された状態であるため、管理コンピュータ120は、次に、他方の系例えば1系のモジュール11の電源を投入し、削除していた二重化機能の組み込み処理を実施する(ステップS103)。しかる後、管理コンピュータ120は、ネットワーク管理情報ファイル140に保存していたネットワーク設定情報を再設定するとともに、二重化コンピュータ100の0系のモジュール10におけるHDD10cのディスクイメージを1系のモジュール11のHDD11cへコピーすることによって、HDD10c,11cの記憶内容を同一の内容に合わせ、0系のモジュール10と1系のモジュール11とを再度二重化する処理を実行する(ステップS104)。
【0094】
二重化コンピュータ100における二重化処理が完了すると、管理コンピュータ120は、二重化コンピュータ100の0系のモジュール10と1系のモジュール11との2系統を用いた物理環境において業務アプリケーションを実行させるべく、二重化コンピュータ100における該業務アプリケーションを起動する(ステップS105)。
【0095】
かくのごとく、本実施形態においては、物理環境から仮想環境への移行のために、二重化コンピュータ100の他方の系例えば1系のモジュール11のシステムディスクから二重化動作に必要なドライバやプログラムをアンインストールした場合であっても、0系のモジュール10のシステムディスクによって起動して再二重化することにより、仮想環境への移行前の環境状態を容易に復元することが可能である。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0097】
10 モジュール
10a CPU
10b メモリ
10c HDD
10d NIC
11 モジュール
11a CPU
11b メモリ
11c HDD
11d NIC
10e 業務用LANカード
11e 業務用LANカード
10f 管理用LANカード
11f 管理用LANカード
20 LAN
21a CPU
21b メモリ
21c HDD
21d NIC
21e LANカード
100 二重化コンピュータ
110 コンピュータ
120 管理コンピュータ
130 システムイメージ格納ファイル
140 ネットワーク管理情報ファイル
140a 仮想LAN
140b 第1物理LAN
140c 第2物理LAN
140d 構成
140e IPアドレス
140f サブネットマスク
140g デフォルトゲートウェイ
140h 構成物理LAN数
150 業務バックアップファイル
S1 二重化機能削除準備処理
S2 二重化機能削除処理
S3 ディスクイメージ作成処理
S4 仮想マシン変換処理
S5 仮想マシンリストア処理
S6 仮想マシンネットワーク設定処理
S7 業務ファイルバックアップ処理
S8 業務ファイルリストア処理
S8a 業務ファイルリストア処理
S9 問題発生判定処理
S10 切り戻し処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
業務アプリケーションを実行する二重化コンピュータの物理環境を単一のコンピュータ上の仮想環境に移行させるマイグレーション処理を実行する計算機システムにおいて、前記マイグレーション処理を実行する際に、前記二重化コンピュータの2つの系を切り離し、かつ、二重化機能を自動的に削除させる二重化機能削除手段と、該二重化機能削除手段によって二重化機能を削除した状態に基づいて前記単一のコンピュータ上で動作させる仮想マシンの仮想マシンイメージファイルを作成するイメージ作成手段と、を少なくとも備えていることを特徴とする計算機システム。
【請求項2】
前記二重化機能削除手段によって前記二重化コンピュータを2つの系に切り離した後、一方の系においては、実行中の前記業務アプリケーションの処理をそのまま継続し、他方の系において、物理環境を仮想環境に移行させるマイグレーション作業を実行することを特徴とする請求項1に記載の計算機システム。
【請求項3】
前記イメージ作成手段により前記仮想マシンイメージファイルを作成する際に、前記仮想マシンイメージファイルにおけるネットワーク設定情報を、前記二重化コンピュータにおけるネットワーク設定情報における構成内容を反映した情報として作成することを特徴とする請求項1または2に記載の計算機システム。
【請求項4】
前記単一のコンピュータ上の仮想環境に移行させるマイグレーション処理を実行した際に、前記単一のコンピュータ上の仮想マシンが正常に起動されなかった場合、または、前記単一のコンピュータ上の仮想マシンにおいて前記業務アプリケーションが正常に起動されなかった場合には、前記単一のコンピュータ上の仮想環境への移行動作を停止し、前記二重化コンピュータの物理環境において前記業務アプリケーションを実行させる状態に復元させる切り戻し手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の計算機システム。
【請求項5】
業務アプリケーションを実行する二重化コンピュータの物理環境を単一のコンピュータ上の仮想環境に移行させるマイグレーション処理を実行する計算機システムにおける仮想環境マイグレーション方法であって、前記マイグレーション処理を実行する際に、前記二重化コンピュータの2つの系を切り離し、かつ、二重化機能を自動的に削除させる二重化機能削除ステップと、該二重化機能削除手段によって二重化機能を削除した状態に基づいて前記単一のコンピュータ上で動作させる仮想マシンの仮想マシンイメージファイルを作成するイメージ作成ステップと、を少なくとも有していることを特徴とする仮想環境マイグレーション方法。
【請求項6】
前記二重化機能削除ステップにおいて前記二重化コンピュータを2つの系に切り離した後、一方の系においては、実行中の前記業務アプリケーションの処理をそのまま継続し、他方の系において、物理環境を仮想環境に移行させるマイグレーション作業を実行することを特徴とする請求項5に記載の仮想環境マイグレーション方法。
【請求項7】
前記イメージ作成ステップにおいて前記仮想マシンイメージファイルを作成する際に、前記仮想マシンイメージファイルにおけるネットワーク設定情報を、前記二重化コンピュータにおけるネットワーク設定情報における構成内容を反映した情報として作成することを特徴とする請求項5または6に記載の仮想環境マイグレーション方法。
【請求項8】
前記単一のコンピュータ上の仮想環境に移行させるマイグレーション処理を実行した際に、前記単一のコンピュータ上の仮想マシンが正常に起動されなかった場合、または、前記単一のコンピュータ上の仮想マシンにおいて前記業務アプリケーションが正常に起動されなかった場合には、前記単一のコンピュータ上の仮想環境への移行動作を停止し、前記二重化コンピュータの物理環境において前記業務アプリケーションを実行させる状態に復元させる切り戻しステップを有していることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の仮想環境マイグレーション方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載の仮想環境マイグレーション方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする仮想環境マイグレーションプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−185546(P2012−185546A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46523(P2011−46523)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】