説明

計量印字装置

【課題】ロードセルの温度補償を徹底させる必要から製造コストが高く付く、また、本体ケース内には、電源回路、ロードセル、回路基板、プリンタ等が横並びで収納されるので、本体ケースをコンパクトにできない。さらに、本体ケース内を冷却ファンで冷却すると、ロードセル出力が風の影響を受けて不安定になる。これらの問題を解決した安価な計量印字装置を提供する。
【解決手段】計量印字装置はロードセル、回路部、電源回路、プリンタ、制御部等が収納されるケースを上下二段重ねの分離されたケースとし、下部ケースには、制御部とプリンタと電源回路とを収納し、上部ケースには、少なくともロードセルと回路部とを収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、肉や惣菜等の量り売りに使用される計量印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、重量センサとしてのロードセルは、周囲の温度変化によって出力感度や零点出力が変化する。そのため、ロードセルが組み込まれる計量装置では、例えば、ロードセルの出力回路に温度補償抵抗を接続したり(特許文献1参照)、無負荷時の零点を自動的に更新するオートトラッキングを働かせたり(特許文献2参照)、ケーシング内の温度を検出して、ロードセルの出力に補正係数を掛けて温度ドリフトによる影響を低減したりする(特許文献3参照)試みがなされている。
【0003】
一方、スーパーマーケット等の対面販売コーナーでは、肉や惣菜等の商品を計量し、得られた商品重量に単価を掛けて価格を算出し、それらをラベルやレシートに印字する対面式の計量印字装置が使用されるが、こうした計量装置では、下記特許文献4乃至6に開示されているように、本体ケース内に温度変化を嫌うロードセルと、通電によって発熱する電源回路やプリンタ等が一緒に収納されるので、そこに収納されるロードセルには、特に入念な温度補償を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3534205号公報
【特許文献2】特許第3568609号公報
【特許文献3】特開2008−64497号公報
【特許文献4】特開2002−310776号公報
【特許文献5】特許第4449310号公報
【特許文献6】特開2009−14455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、この種の計量装置に搭載されるロードセルは、高度な温度補償を行わねばならないので、製造コストが高く付くという問題があった。また、本体ケース内には、電源回路、ロードセル、回路基板、プリンタ等が収納されるので、本体ケースをコンパクトにできない問題もあった。さらに、本体ケース内を冷却ファンで冷却すると、ロードセル出力が風の影響を受けて不安定になるという問題もあった。
【0006】
この発明は、こうした問題を全て解決することのできる安価な計量印字装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係る計量印字装置は、計量皿に載荷される被計量物の重量をアナログ信号として出力するロードセルと、そのロードセル出力を信号処理してデジタル重量信号を出力する回路部と、そのデジタル重量信号を入力して印字データを出力する制御部と、その印字データに基づいてラベル又はレシートに所定事項を印字するプリンタと、少なくとも前記制御部と前記プリンタとに電力を供給する電源回路と、これらを収納するケースとを備えてなる計量印字装置であって、前記ケースを上下二段重ねの分離されたケースとし、下部ケースには、制御部とプリンタと電源回路とを収納し、上部ケースには、少なくともロードセルと回路部とを収納したことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、温度上昇が避けられない電源回路と、温度上昇を嫌うロードセルとを物理的に隔絶して、電源回路の発熱によるロードセルへの影響を排除するので、ロードセルに対する温度補償を軽微なものに止めることができる。また、一つのケース内に横並びで収納されていたロードセルと電源回路とを上部ケースと下部ケースとに分離して収納したので、ケース自体の横幅を小さくすることができる。加えて、電源回路を冷やすための冷却ファンは、ロードセルが収納されない下部ケースに収納されるので、冷却ファンによるロードセルへの風の影響を無くすことができる。
【0009】
請求項2の発明に係る装置は、請求項1に記載の計量印字装置であって、前記上部ケースが、脚部を有する金属製のベース部材と、そのベース部材の上に非接触状態で被させられ、かつ、前記計量皿が載置される金属製の皿受け部材とで構成され、この両部材が前記ロードセルを介して上下に結合されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、下部ケース内の温度が上昇しても、それと分離された上部ケースは、熱伝導性に優れた金属部材で構成され、しかも、常に室内に晒されているから、ほぼ室温に維持される。したがって、これらの金属部材で囲まれたロードセルと回路部も、緩慢に変化する室温に維持されるから、ロードセルに対する温度補償を軽微なものに止めることができる。
【0011】
請求項3の発明に係る装置は、請求項1又は2に記載の計量印字装置であって、前記上部ケースには、前記ロードセルと前記回路部とに給電するバッテリーと、前記回路部が出力するデジタル重量信号をワイヤレスで送信する送信部とが設けられ、前記下部ケースには、前記デジタル重量信号をワイヤレスで受信して、それを前記制御部に出力する受信部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、分離された上部ケースから下部ケースへワイヤレスで重量信号を伝達することができるので、計量皿が載置された上部ケースを、使い勝手のよい場所に移動させて使うことができる。しかも、上部ケースは、背の低いロードセルを使用することで、可及的に薄くすることができるので、そうした薄い上部ケースをショーケース上に設置すれば、肉や惣菜等の計量皿への載せ降ろしが楽になるメリットがある。
【0013】
請求項4の発明に係る装置は、請求項3に記載の計量印字装置であって、前記バッテリーが充電式の二次電池であり、前記上部ケースが下部ケースの上に載置されると、前記二次電池が前記電源回路と電気的に接続されて給電されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、使用時には、上部ケースと下部ケースを分離させて使用し、不使用時には、上部ケースを下部ケースの上に重ねるだけで、二次電池を充電することができる。したがって、長時間の使用に耐え得る大容量のバッテリーを搭載しなくても済むので、上部ケースをよりコンパクトにすることができる。
【0015】
請求項5の発明に係る装置は、請求項4に記載の計量印字装置であって、当該装置には、前記電源回路から前記二次電池にワイヤレスで電力を供給するワイヤレス給電装置が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ワイヤレスで二次電池に充電できるので、上部ケースと下部ケースとの分離結合が自由にできる。したがって、使用場所に応じて各ケースの配置構成を自由に変えることができるから、計量印字装置としての汎用性が増す。
【0017】
請求項6の発明に係る装置は、請求項1から5までの何れかに記載の計量印字装置であって、前記下部ケースの店側側面には、該装置を操作することのできるタッチパネルが付設され、それと対向する客側側面には、商品名、重量、価格を表示する表示部が設けられ、さらに、前記タッチパネルの背面側上部には、前記プリンタのラベルやレシートの発行口が臨まされていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、プリンタの前面にタッチパネルを配置することができるので、タッチパネルの横幅を下部ケースの横幅一杯にまで広げることができる。従来装置では、タッチパネルの横にプリンタの発行口を並設していたので、本体ケースの横幅が広くなっていたが、この発明装置では、タッチパネルの背面にプリンタの発行口が位置するので、下部ケースの幅をよりコンパクトにすることができる。
【0019】
請求項7の発明に係る装置は、請求項6に記載の計量印字装置であって、前記タッチパネルを跳ね上げると、その跳ね上げ動作に連動して前記プリンタの前面に設けられたカセット挿入ゲートが開放されることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、タッチパネルを跳ね上げるだけで、プリンタのカセット装着ゲートが開いて、カセットの出し入れができるので、カセットの出し入れが容易になるとともに、そこに収納されたラベルやレシートの交換も容易になる。
【0021】
請求項8の発明に係る装置は、請求項1から5までの何れかに記載の計量印字装置であって、前記下部ケースの客側側面には、ポールが立設され、そのポールに商品名、重量、価格を表示する表示部が設けられることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、計量印字装置を調理台やテーブル等のような比較的低い場所に設置しても、表示部を見やすい高さまで上げることができるので、ショーケースを置かない鮮魚店等の販売形態にも対応することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ロードセルに対する温度補償を、室温変化による影響を押えるだけの軽微なものに止めておくことができるので、製造コストを押えた安価な計量印字装置を提供することができる。また、装置の横幅を従来装置よりもコンパクトにすることができるので、ショーケースの上に設置して使用しても、従来装置ほど場所を取らない利点がある。さらに、計量皿が載置された薄い上部ケースを、電源回路が収納された分厚い下部ケースと分離させて使用することができるので、薄い上部ケースだけをショーケースの上に設置すれば、計量皿への被計量物の載せ降ろしが楽になる。加えて、電源回路を冷却するファンを設けても、冷却ファンによるロードセルへの風の影響を完全に無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態に係る計量印字装置の外観斜視図を示す。
【図2】図1の上部ケースにおいてa−a方向から見た断面図を示す。
【図3】上部ケースから計量皿を取り除いたときの外観斜視図を示す。
【図4】下部ケースの上蓋を取り除いて下部ケース内を覗いたときの平面図を示す。
【図5】下部ケース前面のタッチパネルを跳ね上げた状態の外観斜視図を示す。
【図6】カセット挿入ゲートのロック機構の要部斜視図を示す。
【図7】前記実施形態の下部ケースを客側から見た外観斜視図を示す。
【図8】この発明の他の実施形態に係る計量印字装置の外観斜視図を示す。
【図9】この発明のさらに他の実施形態に係る計量印字装置の外観斜視図を示す。
【図10】これらの実施形態に係る計量印字装置のブロック線図を示す。
【図11】上記実施形態で使用されるワイヤレス給電装置のブロック線図を示す。
【図12】上部ケースに収納されるロードセルと回路部のブロック線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、この発明の一実施形態に係る計量印字装置Aの外観斜視図を示し、特に、この図では、計量皿Bが載置された上部ケース100を下部ケース200から降ろした状態を示している。
この図1において、計量印字装置Aは、前面にタッチパネル300が、背面に客側表示部310がそれぞれ取り付けられた下部ケース200と、計量皿Bが載置された上部ケース100とを備え、これらの各ケース100、200は、分離可能で、かつ、上部ケース100を下部ケース200の上に重ねることができるようになっている。
【0027】
前記上部ケース100は、図2の断面図に示すように、脚部101が設けられた金属製のベース部材102と、そのベース部材102の上に非接触状態で被さる金属製の皿受け部材103とで構成され、この両部材102、103がロードセル400を介して上下に結合されている。また、皿受け部材103の上面には、金属製の計量皿Bが被せられている。
【0028】
前記ベース部材102は、図3に示すように、全体が矩形状をなし、その四隅には、雌ネジが施されたボス部104が形成され、そのボス部104の雌ネジに脚部101の軸ボルトが捻じ込まれ、その捻じ込み量の調整により、ベース部材102の水平度が調整できるようになっている。
また、図2に示すように、ベース部材102の上面には、ロードセル400の周囲を囲む補強用リブ105と、そこから周囲に広がる図示しない補強用リブとが形成されており、さらに、ベース部材102のロードセル取り付け面には、座金状のボス部106が形成され、そのボス部106を貫通する雌ネジにボルト107が捻じ込まれてロードセル400がベース部材102に固定されている。
【0029】
前記皿受け部材103は、図3に示すように、全体が同じく矩形状をなし、その四隅は、各ボス部104と干渉しないように円弧状にカットされ、そのカット面には、水平ブラケット108が設けられている。そのブラケット108には、ネジ穴が設けられており、ストッパーとしての図示しない調整ボルトが捻じ込まれて、そのボルト先端部とベース部材102との間隔調整により、皿受け部材103の過度な沈下が調整ボルトによって規制できるようになっている。
また、皿受け部材103の上面4ヶ所には、計量皿Bの裏面に設けられたピンを挿入するためのゴム製ブッシュ109が取り付けられ、中央部には、ロードセル400の偏置誤差を修正するための工具挿入窓110が設けられている。また、その横には、皿受け部材103をロードセル400に固定するためのボルト取り付け窓111と、スパン調整ネジ112を操作するための操作窓113と、ベース部材102に取り付けられた回路基板114(図10の回路部140)の電子部品115を逃がすための窓116と、水準器120を覗き見るための覗き窓117とが設けられている。そして、計量皿Bを被せるときは、図2に示すように、皿受け部材103の上面にクション材130を敷き詰め、その上から計量皿Bを被せて皿受け部材103に固定する。
【0030】
なお、皿受け部材103の裏面には、ベース部材102のリブ105と非接触状態で嵌り合う補強用リブ118が設けられている。また、スパン調整窓113には、封印カバー119が被せられるが、図3では、そのカバー119をボルト取り付け窓111まで延伸させて取り付けた状態を示している。さらに、ベース部材102の水平度を見るための水準器120は、ベース部材102に取り付けられ、皿受け部材103には、その水準器120と非接触状態で嵌り合う貫通孔117が設けられ、計量皿Bには、その水準器120を覗き見るための覗き窓121(図1参照)が設けられている。さらに、ベース部材102の裏面側には、図10のバッテリー160を収納するスペースと、無線モジュールが実装された回路基板(図10の送信部150)を収納するスペースとが設けられている。
【0031】
前記ロードセル400は、図2に示すように、中央部がめがね状に刳り貫かれて薄肉にされた上下の歪受感部401に歪ゲージを貼付してなる周知構造のものであるが、特にこの実施形態では、ロードセル400を可及的に扁平にして、上部ケース100全体の厚みが薄くなるようにしている。
そして、ロードセル400の向かって左側の固定部402がベース部材102にボルト107で固定され、右側の可動部403が皿受け部材103にボルト122で固定されて、皿受け部材103がロードセル400を介してベース部材102から浮いた状態で支持されるようになっている。また、可動部403に固定される皿受け部材103の下面には、座金状のボス123が形成されており、このボス123とベース部材102に形成されたボス106とで、ボルト107、122の締め付けによる歪ゲージへの影響が低減されるようにしている。
【0032】
なお、前記ロードセル400の可動部403には、歪受感部401よりも一段低くした段差部が設けられて、ボルト122の頭が下部ケース100内に収まるようにしている。また、歪ゲージが貼付された歪受感部401の上下面には、防湿剤404が貼り付けられている。そして、前記可動部403に近接するベース部材102には、上下に貫通するネジ穴が設けられ、そこに底面からストッパー用のボルト124が捻じ込まれて、その捻じ込み量の調整により、前記可動部403が過度に沈下するのを規制している。
【0033】
図4は、下部ケース200の上蓋を外して内部の各デバイスの配置構成を示したもので、向かって右半分には、カセット式のプリンタ500(破線で囲まれた部分)が配置され、その左隣には、プリンタ500の駆動モータ501と電源コネクタ201が配置され、その左隣には、コンピュータが実装された回路基板202が配置され、さらにその左隣には、スピーカー203と無線通信モジュールが実装された回路基板204とが配置され、さらにその左隣には、電源回路205とそれを冷却する冷却ファン206とが配置されている。
なお、無線モジュールの回路基板204には、そこから下部ケース200の裏面を通って外部に伸びるアンテナ207が接続されている。
【0034】
前記プリンタ500は、プリンタ本体に出し入れできるカセット502を備え、そのカセット502には、ラベルやレシート570(図1参照)のロール503が装着されるホルダー504と、ラベルの台紙を巻き取る巻取ローラ505と、印字ローラ506とが設けられている。そして、カセット502をプリンタ本体に挿入すると、駆動モータ501の駆動歯車507に、巻取ローラ505と印字ローラ506の駆動歯車が歯車列を介して噛み合って回転力が伝達されるようになっている。
【0035】
こうした構成は、周知であるので、その詳細な説明は省略するが、カセット502を出し入れする側(前面)には、タッチパネル300が設けられているので、この実施形態では、図5に示すように、前面のタッチパネル300を跳ね上げると、それと連動してカセット502を挿入するゲート508のロックが解除されて、ゲート508が下向きに開放されるようになっている。
前記ゲート508の内側には、先端部にサーマルヘッド509が取り付けられ、その下方にロック機構が設けられて、開放されたゲート508を元の位置に戻すと、サーマルヘッド509が印字ローラ506に密着するとともに、ロック機構が働いて、ゲート508が閉じた姿勢に保持されるようになっている。
なお、このプリンタ500では、ラベルやレシート570の発行口580を閉じたゲート508の先端部に設けるとともに、そこから垂直面に対し斜め35度に前傾した姿勢でラベルやレシート570が発行されるようにしている。したがって、図1、図9に示すように、発行されるラベルやレシート570は、タッチパネル300と干渉しないようになっている。
また、発行口580の後方にある計量皿Bへの接触も防ぐことができる。
図5では、計量皿Bが載置された上部ケース100を下部ケース200の上に重ねた状態を示している。また、タッチパネル300を跳ね上げた下部ケース200の前面側には、電源スイッチ207が設けられ、その上方には、リセットスイッチ208が設けられている。
【0036】
図6は、前記ゲート508のロック機構550の斜視図を示したもので、タッチパネル300は、図4のアーム304を介してシャフト306と一体的に連結されているから、タッチパネル300を跳ね上げると、それと連動してシャフト306が矢印方向dに回転し、その端部に固定されたフック551も同方向dに回転してレバー552を矢印方向eに回転させる。すると、レバー552は、回転軸553を中心として矢印方向eに回転してプレート554の折り曲げ部555に当り、その折り曲げ部555をさらに回転軸553を中心として矢印方向eに回転させる。すると、プレート554に設けられた円弧状のフック556がピン557から外れる。
こうしたプレート554とピン557とからなる機構は、対面側にも設けられ、しかも、両プレート554が連結板558で連結されているので、対面側でも同様な回転運動が生じてフック556がピン557から外れる。
【0037】
一方、両サイドのピン557は、下部ケース200のフレームに固定されており、また、ゲート508は、パネル511の下端に設けられた軸513を中心にして矢印方向fへ回転するように構成されているので、フック556がピン557と係合している間は、フック556の回転軸553回りの回転半径の方が、ゲート508の軸513回りの回転半径よりも小さいため、ゲート508の軸513回りの回転は、ピン557によって阻止される。しかし、フック556がピン557から外れると、ピン557による阻止が解除されるので、ゲート508は、軸513を中心にして矢印方向fへ回転して開放される。
なお、連結板558には、下向きに延伸する手動レバー559が設けられ、このレバー559が、図1、図8、図9に示すゲート508前面の操作窓560に臨まされ、その操作窓560から手動レバー559を押せば、同様にフック556がピン557から外れるようになっている。
また、図6のフレーム先端部510には、サーマルヘッド509が取り付けられ、それより下方のパネル511には、折り曲げ部512が設けられ、その折り曲げ部512にゲート508の前面カバーの裏面が固定されるようになっている。
【0038】
図4に戻って、タッチパネル300は、二つのチルト機構301、302を介して下部ケース200の前面上部に取り付けられている。第1のチルト機構301は、タッチパネル300の背面に設けられた回転軸303を中心にして、タッチパネル300がアーム304に対して任意角度に回動し、これにより、タッチパネル300の傾斜角度が自由に変えられるようになっている。第2のチルト機構302は、タッチパネル300の跳ね上げ動作と、カセット挿入ゲート508の開放運動とを連動させたもので、下部ケース200の前面上部に設けられたシャフト306に前記アーム304がブラケット308を介して固定され、タッチパネル300を跳ね上げると、その跳ね上げ動作に伴ってアーム304とブラケット308がシャフト306を中心にして回転し、これにより、タッチパネル300が図5に示す状態にまで跳ね上がるようになっている。
第1チルト機構301の回転軸303には、摩擦機構が組み込まれ、任意角度でタッチパネル300の傾斜姿勢が保持されるようになっている。また、シャフト306の左端には、トルクリミッター307が設けられて、タッチパネル300が跳ね上げられた姿勢で保持されるようになっている。また、シャフト306の右端には、図6のフック551が固定され、タッチパネル300の跳ね上げ運動に連動してフック551が回転するようになっている。
なお、図5では、チルト機構301にカバー308を被せているが、図4では、それを外して示している。
【0039】
前記タッチパネル300には、プリンタ500や計量装置を操作するための各種のファンクションキーが表示され、併せて、操作メッセージやメモリ230(図10参照)から読み出された商品情報等が画面を切り替えて表示されるが、下部ケース200の背面側、即ち、客側側面にも同様な表示部310が設けられている。
図7は、下部ケース200を客側から見た斜視図を示しており、その客側側面には、被計量物の商品名、重量、価格、販促文字等が表示される表示部310が取り付けられている。
【0040】
図8は、他の実施形態に係る計量印字装置を示したもので、この実施形態では、下部ケース200の客側側面にポール取り付け部320を設け、そこに立設した一対のポール321先端部にタッチパネル300と、客側表示部310とを取り付けている。
【0041】
また、図9は、さらに他の実施形態に係る計量印字装置を示したもので、この実施形態では、下部ケース200の前面にタッチパネル300を取り付け、一方、一対のポール321先端部には、客側表示部310を取り付けている。
この実施形態に係る計量皿Bは、サイズの大きな商品を計量するために、図1に示す計量皿Bよりも幅広に形成されている。そのため上部ケース100のベース部材102には、取っ手としてのハンドル150が取り付けられている。
【0042】
図10は、以上の各実施形態に組み込まれる各デバイスのブロック線図を示す。この図において、上部ケース100には、ロードセル400と、そのロードセルのアナログ出力を信号処理してデジタル信号を出力する回路部140と、その回路部140のデジタル出力を無線送信する送信部150と、これらの各デバイスに電力を供給するバッテリー160とが収納されている。一方、下部ケース200には、送信部150から送られてくる信号を受信する受信部210と、受信部210から出力される重量信号とタッチパネル300の操作によってメモリ230から読み出された商品情報とに基づいて表示データや印字データを生成するマイクロコンピュータからなる制御部220と、印字データを入力してラベル又はレシートに印字するプリンタ500と、これらのデバイスに電力を供給する電源回路240とが収納されている。
また、下部ケース200には、前述のタッチパネル300と客側表示部310とが外付けされ、これらには、制御部220から表示データが送信されるとともに、電源回路240から電力が供給されて、画面上に商品名、重量、価格、メッセージ等が表示されるようになっている。
【0043】
前記バッテリー160としては、乾電池を使用するが、充電ができる二次電池を使用することもできる。この場合には、例えば、電磁誘導式のワイヤレス給電装置250を付設する。この給電装置250は、図11に示すように、電源回路240から出力される直流電流をインバーター251で高周波に変換して一次コイル252に送り、電磁誘導によって二次コイル253に高周波電流を励起する。それをコンバーター254で直流に変換してから規定電圧をバッテリー160に供給する。
この給電装置250を使用する場合は、インバーター251と一次コイル252は、下部ケース200の上蓋裏面に収納し、二次コイル253とコンバーター254は、上部ケース100の対向する近接位置に収納する。このようにすれば、上部ケース100を下部ケース200の規定位置に重ねるだけで、二次電池に充電することができる。
【0044】
図12は、ロードセル400のブリッジ回路410と回路部140の構成を示したもので、ロードセル400に使用する歪ゲージR1、R2,R3,R4としては、温度変化に起因する歪受感部401の熱膨張やヤング率の変化量を補償した補償型歪ゲージを使用する。その歪ゲージR1、R2,R3,R4でブリッジ回路410を形成し、そのアナログ出力をプリアンプ141で増幅した後、シグマデルタ型A/D変換器142でデジタル量に変換して、マイクロコンピュータ143に入力し、そこでノイズ成分をフィルタリングしてデジタル重量信号として送信部150に出力する。
また、これらの各デバイスには、バッテリー160から規定電圧が供給されている。
なお、前記回路部140は、プリアンプ141と、A/D変換器142と、マイクロコンピュータ143とから構成される。
【0045】
一方、送信部150から発信されたデジタル重量信号は、下部ケース200内の受信部210で受信されて制御部220に出力される。制御部220では、指定商品の単価をメモリ230から読出し、読出した単価と受信部220から入力した商品重量とに基づいて価格を算出し、算出した価格と読み出した商品情報とを客側表示部310とタッチパネル300に出力する。
前記メモリ230には、取り扱う全商品の品名、単価等の商品情報やメッセージが登録されており、タッチパネル300を操作すると、これらの情報が読み出されて、タッチパネル300や客側表示部310に表示されるようになっている。
【0046】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これ以外の態様も採用可能である。
例えば、図10では、送信部150と受信部210を設けてワイヤレスで重量信号を送信するようにしたが、これに代えてケーブルを介して回路部140から制御部220へデジタル重量信号を送信するようにしてもよい。その際、併せて、ケーブルで電源回路240からバッテリー160へ電力を供給することもできる。さらには、バッテリー160を使わずに、電源回路240から直接、上部ケース100内の各デバイスに電力を供給するようにしてもよい。
また、ワイヤレス給電装置250を使わずに、例えば、上部ケース100の底面と下部ケース200の上蓋との対向位置にコネクタを取り付けて、上部ケース100を下部ケース200の上に重ねると、コネクタが接続されて、バッテリー160に給電されるようにすることもできる。
さらに、図12では、自己温度補償型の歪ゲージや温度感度補償型の歪ゲージを用いたが、それに加えて、ブリッジ回路に温度センサを組み込み、室温に応じて変化する零点をソフト的に補償する機能をマイクロコンピュータ143に組み込めば、ハード的な補償を施す必要がないので、より安価で高精度な計量装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
A 計量印字装置
B 計量皿
100 上部ケース
101 脚部
102 ベース部材
103 皿受け部材
140 回路部
150 送信部
160 バッテリー
200 下部ケース
210 受信部
220 制御部
230 メモリ
240 電源回路
250 ワイヤレス給電装置
300 タッチパネル
310 客側表示部
321 ポール
400 ロードセル
500 プリンタ
508 カセット挿入ゲート(ゲート)
570 ラベル又はレシート
580 発行口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量皿に載荷される被計量物の重量をアナログ信号として出力するロードセルと、そのロードセル出力を信号処理してデジタル重量信号を出力する回路部と、そのデジタル重量信号を入力して印字データを出力する制御部と、その印字データに基づいてラベル又はレシートに所定事項を印字するプリンタと、少なくとも前記制御部と前記プリンタとに電力を供給する電源回路と、これらを収納するケースとを備えてなる計量印字装置であって、
前記ケースを上下二段重ねの分離されたケースとし、下部ケースには、制御部とプリンタと電源回路とを収納し、上部ケースには、少なくともロードセルと回路部とを収納したことを特徴とする計量印字装置。
【請求項2】
前記上部ケースが、脚部を有する金属製のベース部材と、そのベース部材の上に非接触状態で被させられ、かつ、前記計量皿が載置される金属製の皿受け部材とで構成され、この両部材が前記ロードセルを介して上下に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の計量印字装置。
【請求項3】
前記上部ケースには、前記ロードセルと前記回路部とに給電するバッテリーと、前記回路部が出力するデジタル重量信号をワイヤレスで送信する送信部とが設けられ、前記下部ケースには、前記デジタル重量信号をワイヤレスで受信して、それを前記制御部に出力する受信部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の計量印字装置。
【請求項4】
前記バッテリーが充電式の二次電池であり、前記上部ケースが下部ケースの上に載置されると、前記二次電池が前記電源回路と電気的に接続されて給電されることを特徴とする請求項3に記載の計量印字装置。
【請求項5】
前記電源回路から前記二次電池にワイヤレスで電力を供給する給電装置が付設されていることを特徴とする請求項4に記載の計量印字装置。
【請求項6】
前記下部ケースの店側側面には、該装置を操作することのできるタッチパネルが付設され、それと対向する客側側面には、商品名、重量、価格を表示する表示部が設けられ、さらに、前記タッチパネルの背面側上部には、前記プリンタのラベルやレシートの発行口が臨まされていることを特徴とする請求項1から5までの何れかに記載の計量印字装置。
【請求項7】
前記タッチパネルを跳ね上げると、その跳ね上げ動作に連動して前記プリンタの前面に設けられたカセット挿入ゲートが開放されることを特徴とする請求項6に記載の計量印字装置。
【請求項8】
前記下部ケースの客側側面には、ポールが立設され、そのポールに商品名、重量、価格を表示する表示部が設けられることを特徴とする請求項1から5までの何れかに記載の計量印字装置。


【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−177561(P2012−177561A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39501(P2011−39501)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)