説明

訓練評価装置

【課題】 客観的、且つ、訓練者に分かり易い訓練評価をする訓練評価装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の訓練評価装置2は、電力系統において所定の電気事故を模擬し、該電気事故に対してオペレータに復旧操作訓練を実施させるシミュレータ7とともに用いられ、オペレータが実施した復旧操作訓練に対する評価を行う訓練評価装置2であって、オペレータが行う復旧操作に関する情報をシミュレータ7から収集するデータ収集部3と、前記所定の電気事故に対して推奨される復旧操作及び前記所定の電気事故に起因する供給支障電力を時系列的に関連付けた情報が採点化されてなる採点データを収納する採点データ収納部4と、データ収集部3の前記復旧操作に関する情報及び採点データ収納部4の前記採点データに基づき、オペレータが実施した復旧操作訓練を採点して評価する評価部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統(電力需要先に電力供給するための、送・配電線、発電所、変電所等の設備を統合したシステム)において所定の電気事故(例えば、送・配電線や変電所、発電所等の設備における電気的な事故)を模擬し、その電気事故に対してオペレータ(訓練者)に復旧操作訓練を実施させるシミュレータとともに用いられ、オペレータが実施した復旧操作訓練に対する評価を行う訓練評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シミュレータを用いた訓練評価においては、トレーナー(指導員)が、訓練者の行った復旧操作・方法等を、機械的手段を介すことなく、直接確認し評価しており、従って、トレーナーの負担や訓練評価における客観性が特に問題となっていた。そのため、これまでに、トレーナーの負担を軽減させ、信頼性の高い評価を得られる運転訓練評価装置(例えば、特許文献1)や、訓練評価の客観性をより高める運転訓練支援装置が発明されている(例えば、特許文献2)。
【0003】
特許文献1に記載された運転訓練評価装置は、運転訓練環境を構成するシミュレータから訓練の状態を自動認識する状態認識手段と、該状態認識手段によって認識された状態に適合した評価項目を提示する評価項目提示手段とから構成される。訓練評価にあっては、トレーナーが、評価項目提示手段を介した所与の評価項目について、訓練者の状態観察を行い、該観察結果に基づいてなされる。
【0004】
また、特許文献2に記載された運転訓練評価装置は、画面(事故による異常個所)選択部及び操作手順選択部の選択結果とデータ収集部により収集されたプラントの操作データ及び監視する画面の選択データとを比較して訓練の評価をする訓練評価部を備え、該訓練評価部によって、目標達成度を算出し、客観的に訓練評価がなされる。ここで、目標達成度は、三つの項目の評価であって、一つ目は画面(事故による異常個所)選択の正誤に関して、訓練者によって画面が適切に選択されたか否かを評価し、二つ目は操作手順の正誤に関して、訓練者による操作手順と操作手順選択部による手順とを比較し、操作ミスが幾つあるかという基準で評価し、三つ目は画面選択と操作のタイミングに関して、訓練者と熟練者の結果を比較し、そのズレを偏差値で評価することからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−257420号公報
【特許文献2】特開平6−130885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された運転訓練評価装置では、トレーナーによる訓練者の状態観察を要し、従って、トレーナーの恣意性が含まれ得るため、とりわけ、訓練評価の客観性という面において問題を残していた。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された運転訓練評価装置では、目標達成度という指標を採用することによって、客観的な訓練評価はなされているものの、訓練者に理解しづらいという問題があった。例えば、操作手順の正誤では、操作手順のミスの数で評価されており、操作手順のどこにミスがあったのかが訓練者によって分かり難く、また、画面選択と操作のタイミング評価では、偏差値を採用する等、最終アウトプットとしての訓練評価の結果が訓練者にとって、必ずしも分かり易いものとは言えなかった。そのため、フィードバック面、つまり、訓練評価を踏まえた訓練者の育成が不十分等の2次的な問題も懸念されていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、客観的、且つ、分かり易い訓練評価をする訓練評価装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る訓練評価装置は、上記課題を解決するためになされたもので、電力系統において所定の電気事故を模擬し、該電気事故に対してオペレータに復旧操作訓練を実施させるシミュレータとともに用いられ、オペレータが実施した復旧操作訓練に対する評価を行う訓練評価装置であって、オペレータが行う復旧操作に関する情報をシミュレータから収集するデータ収集部と、前記所定の電気事故に対して推奨される復旧操作及び前記所定の電気事故に起因する供給支障電力を時系列的に関連付けた情報が採点化されてなる採点データを収納する採点データ収納部と、データ収集部の前記復旧操作に関する情報及び採点データ収納部の前記採点データに基づき、オペレータが実施した復旧操作訓練を採点して評価する評価部とを備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成からなる訓練評価装置によれば、データ収集部は、所定の電気事故に対してオペレータが行った復旧操作に関する情報をシミュレータから収集する。そして、当該情報と、採点データ収納部に収納される所定の電気事故に対して推奨される復旧操作及び所定の電気事故に起因する供給支障電力を時系列的に関連付けた情報が採点化されてなる採点データとに基づいて、評価部は、オペレータが実施した復旧操作訓練を採点し、評価する。
【0011】
また、本発明に係る訓練評価装置において、採点データは、前記所定の電気事故に対して推奨される復旧操作及び前記所定の電気事故に起因する供給支障電力を時系列的に関連付けた図に、所定の得点を付してなるように構成することができる。
【0012】
かかる構成からなる訓練評価装置によれば、採点データは、所定の電気事故に対して推奨される復旧操作と所定の電気事故に起因する供給支障電力とが時系列的に関連付けて図化され、図上には所定の得点が付与される。
【0013】
また、本発明に係る訓練評価装置は、所定の電気事故の復旧に係る特定の違反行為となる違反操作を監視し、当該違反操作をした場合、シミュレータに対して、オペレータの復旧操作を中止させるための指示を出す違反行為監視機能を有する違反行為監視部を備えるように構成することができる。
【0014】
かかる構成からなる訓練評価装置によれば、違反行為監視部は、違反行為監視機能によって、所定の電気事故の復旧に係る特定の違反行為となる違反操作を監視し、当該違反操作をした場合、シミュレータに、オペレータの復旧操作を中止させるための指示を出す。
【0015】
また、本発明に係る訓練評価装置は、違反行為監視部が、違反行為監視機能を有効あるいは無効に切り替え可能であるように構成することができる。
【0016】
かかる構成からなる訓練評価装置によれば、違反行為監視部によって、違反行為監視機能を有効にするか、あるいは、無効にするかを切り替えられる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る訓練評価装置によれば、シミュレータを用いてオペレータが行った復旧操作に関する情報がデータ収集部によって収集され、当該情報と、採点データ収納部に収納されている推奨復旧操作に基づく採点データとに基づき、オペレータが実施した復旧操作訓練を評価部が採点化し、評価するようになっているため、客観的、且つ、訓練者に分かり易い訓練評価をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態に係る訓練対象エリアの送電概況図を示す。
【図2】同訓練対象エリアにおける制御所での訓練評価装置の機能ブロック図を示す。
【図3】同訓練対象エリアにおける電気事故の推奨復旧操作の概況図を示す。
【図4】同電気事故の復旧操作に係る採点データの図を示す。
【図5】同採点データに基づく、推奨復旧操作と訓練者の採点例を示す。
【図6】第二実施形態に係る訓練評価装置のブロック図を示す。
【図7】同実施形態に係る訓練対象エリアに関して、(a)は常時状態の単線結線図、(b)は(a)の変圧器H1における電気事故時の状態図を示す。
【図8】同電気事故の復旧フロー図を示す。
【図9】同電気事故の復旧操作に係る採点データの図を示す。
【図10】第三実施形態に係る訓練対象エリアに関して、(a)は常時状態の単線結線図、(b)は(a)の変圧器H3における電気事故時の単線結線図、(c)は同電気事故の復旧時の単線結線図を示す。
【図11】同電気事故の復旧フロー図を示す。
【図12】(a)は変圧器の過負荷運転の説明図、(b)は変圧器の過負荷違反行為にあたる、変圧器の過負荷運転を逸脱した状況の説明図を示す。
【図13】同電気事故の復旧操作に係る採点データの図を示す。
【図14】第四実施形態に係る電力系統間の連絡線図であって、(a)は常時状態、(b)は連絡線Aのループ潮流状況、(c)は連絡線Bのループ潮流状況を示す。
【図15】同実施形態に係る電力系統内における電気事故の復旧フロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る訓練評価装置の第一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。図1は、同実施形態に係る訓練対象エリアの送電概況図であり、図2は、同訓練対象エリアにおける制御所での訓練評価装置の機能ブロック図であり、図3は、同訓練対象エリアにおける電気事故の推奨復旧操作の概況図であり、図4は、同電気事故の復旧操作に係る採点データの図である。また、図5は、同採点データに基づく、推奨復旧操作と訓練者の採点例である。
【0020】
本実施形態に係る訓練評価装置2は、電力系統において所定の電気事故を模擬し、該電気事故に対してオペレータに復旧操作訓練を実施させるシミュレータ7、具体的には、制御所1の運転を模擬する、制御所1におけるシミュレータ7とともに用いられる。そこで、訓練評価装置2の構成説明に先立ち、訓練評価装置2が使用される背景構成(制御所1、電源Aによる電力供給範囲10(訓練対象エリア)、シミュレータ7)について、説明する。
【0021】
制御所1は、電力系統における発電所や変電所、送・配電線等の送・配電状況を監視し、送・配電線や変電所等に電気事故が生じた際には、送・配電操作等によって復旧操作を行う施設である。本実施形態では、制御所1は、図1に示すように、電源Aによる電力供給範囲10の送・配電状況を監視し、電気事故が生じた際には、復旧操作を行うことができるように構成される。
【0022】
電源Aによる電力供給範囲10において、電源A(発電所)は、10MWの電力供給が可能であり、その10MWを、負荷5MW、1MW、3MW、1MWの電力需要先(変電所や住宅等)に分散供給している。また、電源B(電源Aとは異なる発電所)は、10MWの電力供給が可能であり、その内、5MWを、負荷5MWの電力需要先(変電所や住宅等)に電力供給し、残りの5MWを余剰電力として蓄え、遮断器B1で電気的に電源Aと遮断されている。なお、遮断器B1は、通常、開状態(遮断状態)であり、電気事故等の緊急時に、閉状態(通電状態)となる。また、電源C(電源A、Bとは異なる発電所)は、10MWの電力供給が可能であり、その6MWを、負荷6MWの電力需要先(変電所や住宅等)に電力供給し(図示しない)、残りの4MWを余剰電力として蓄え、遮断器C1で電気的に電源Aと遮断されている。なお、遮断器C1も、遮断器B1と同様な構成であり、通常、開状態(遮断状態)であり、電気事故等の緊急時に、閉状態(通電状態)となる。
【0023】
シミュレータ7は、電力系統において所定の電気事故を模擬し、該電気事故に対してオペレータに復旧操作訓練を実施させるように構成され、図2に示すように、本実施形態では、上記制御所1の運転を模擬できる、制御所1の構成そのもの、つまり、制御所1の実機である。具体的には、本実施形態に係るシミュレータ7は、電源Aによる電力供給範囲10を訓練対象エリアとし、当該エリアで所定の電気事故を模擬し、模擬した電気事故に対して、訓練者が復旧操作をなすことができる訓練用シミュレーションを構築するように構成される。また、シミュレータ7は、復旧操作中止等の所定の音声ガイダンスを提供する音声機能も備えて構成される。
【0024】
次に、訓練評価装置2は、電力系統において所定の電気事故を模擬し、該電気事故に対してオペレータ(訓練者)に復旧操作訓練を実施させるシミュレータ7に接続され、オペレータが実施した復旧操作訓練に対する評価を行う訓練評価装置2であって、オペレータが行う復旧操作に関する情報をシミュレータから収集するデータ収集部3と、前記所定の電気事故に対して推奨される復旧操作及び前記所定の電気事故に起因する供給支障電力を時系列的に関連付けた情報が採点化されてなる採点データを収納する採点データ収納部4と、データ収集部3の前記復旧操作に関する情報及び採点データ収納部4の前記採点データに基づき、オペレータが実施した復旧操作訓練を採点して評価する評価部5と、データを表示する表示部6とを備えてなる。
【0025】
データ収集部3は、所定の電気事故に対して、訓練者がシミュレータ7で行う復旧操作に関する情報を、シミュレータ7から収集できるように構成される。具体的には、データ収集部3は、訓練者による復旧操作に関する情報として、該復旧操作手順と各復旧操作の経過時間(各復旧操作の実経過時間、あるいは、所定の時間内(例えば、5分間)に一つの復旧操作がなされるように、訓練用シミュレーションが設定される場合には、該所定の時間)、各復旧操作に連関する供給支障電力に関する情報を、シミュレータ7から取得する。ここで、供給支障電力とは、電気事故等により、電力需要先への電力供給が停止する直前と直後との供給電力の差である。
【0026】
採点データ収納部4は、訓練者が行う復旧操作に対する評価基準である採点データを収納するように構成される。具体的には、採点データ収納部4は、所定の電気事故について推奨される復旧操作(推奨復旧操作)と、各復旧操作に連関する供給支障電力とを時系列的に関連付けた情報に対して、所定の得点を付した採点データを収納するように構成される。ここで、推奨復旧操作は、所定の電気事故に対して、例えば、熟練者が行う復旧操作であり、復旧操作手順と復旧操作の経過時間に関する情報からなる。また、採点データは、推奨復旧操作とその復旧操作に連関する供給支障電力とを時系列に関係付けた情報に対して、所定の得点を与えてなり、所定の電気事故について、事前に作成され、採点データ収納部4に収納される。本実施形態では、採点データは、推奨復旧操作とその操作に連関する供給支障電力とを関係付けた時系列図に、所定の得点を付与した図である。なお、所定の得点の付与とは、例えば、図4に示すように、推奨復旧操作の各操作に連関する供給支障電力を基準に、高得点領域と低得点領域とそれ以外の領域の3領域を定めて、復旧操作訓練において電気事故復旧までに、訓練者が高得点領域を達成し続けると100点となるよう設定する。詳細には、推奨復旧操作の各操作に連関する供給支障電力を基準に、基準以下の供給支障電力(高得点領域)を、訓練者が達成するときには20点、基準より高い所定範囲内の供給支障電力(低得点領域)を、訓練者が達成するときには10点、基準より高い所定範囲を超えた供給支障電力(高得点領域と低得点領域を除く領域)を、訓練者が達成するときには0点が付与される。
【0027】
評価部5は、データ収集部3の訓練者が行った復旧操作に関する情報と、採点データ収納部4の採点データとを用いて、訓練者が実施した復旧操作訓練を採点して評価するように構成される。本実施形態では、評価部5は、図4に示すように、図化した採点データに、訓練者による復旧操作に関する情報を重ねて表示し、採点データに付与した得点に基づいて、0点から100点の範囲で訓練者が実施した復旧操作訓練を採点して評価する。訓練評価の結果は、例えば、各復旧操作順に、経過時間、供給支障電力(訓練対象エリア内)、取得点を表示したものである。
【0028】
表示部6は、各種データを表示するように構成され、例えば、データ収集部3における、訓練者による復旧操作手順と復旧操作の経過時間、復旧操作に連関する供給支障電力に関する情報、また、採点データ収納部4における推奨復旧操作や採点データ、評価部5における、採点データに訓練者の復旧操作に関する情報を重ねて表示したデータ、訓練者が実施した復旧操作訓練の評価結果がGUIを介して表示される。
【0029】
また、訓練評価装置2は、機能的には、図2に示すように、データ収集部3によって、訓練者による復旧操作に関する情報が、シミュレータ7から収集され、該収集された復旧操作に関する情報と採点データ収納部4の採点データとを用いて、評価部5によって、訓練者が実施した復旧操作訓練が採点され、表示部6によって訓練評価の結果は表示される。なお、訓練評価の結果のみならず、訓練評価装置2による一連のデータ(復旧操作に関する情報、採点データ等)も、表示部6に表示され得る。
【0030】
次に、本実施形態に係る訓練評価装置2を用いた訓練評価について説明をする。本実施形態では、図3に示すように、図1の訓練対象エリア(電源Aによる電力供給範囲10)における電源A(発電所)の電気事故を想定し、その復旧に対する訓練評価を行う。
【0031】
まず、トレーナーが、シミュレータ7を用いて、訓練対象エリアの発電所(電源A)の電気事故を模擬する。このとき、電源A近傍の遮断器が仮想的に開状態(遮断状態)となり、電源Aから各電力需要先への電力供給は仮想的に遮断される。続いて、電源Aの電気事故に対して、訓練者は、復旧操作をシミュレータ7で行い、その復旧操作に関する情報はデータ収集部3に所定の時間間隔(あるいは、各操作後即時)で送信された後、データ収集部3から評価部5に送信される。一方で、トレーナーは、採点データ収納部4から、訓練対象エリアの発電所(電源A)の電気事故に係る推奨復旧操作(図3,4の(1)から(6)に示すように、(1)永久事故発生、(2)遮断器A1を開操作(遮断)、(3)遮断器B1を閉操作(通電)、電源Bより5MWの電力供給、(4)遮断器A2を開操作(遮断)、(5)遮断器C1を閉操作(通電)、電源Cより4MWの電力供給、(6)遮断器A2を閉操作(通電)、電源Cより1MWの電力供給、からなる。)による採点データを選択する、あるいは、シミュレータ7で訓練対象エリアの発電所の電気事故が模擬された際、採点データ収納部4から、訓練対象エリアの発電所の電気事故に対応する推奨復旧操作に基づく採点データが自動的に選択される。そして、トレーナーが選択した、あるいは、機械的に自動選択された採点データは、評価部5に送信される。
【0032】
評価部5に送信された訓練者による復旧操作に関する情報と採点データは、評価部5によって、図4のように、重ねて表示され、採点データに付した得点に基づき、採点される。採点後、訓練評価結果は、表示部6によって、図5(a)(b)に示すように、各復旧操作順に、経過時間、供給支障電力、得点からなる表として、表示される。図5(a)に示すように、推奨復旧操作の手順に従って、時間内に復旧操作が行われれば、100点満点中の100点の評価を得る。詳細には、図4に示す推奨復旧操作の(2)から(6)の5つの各操作をすれば、それらの各操作は、高得点領域(20点)に該当するため、5つの各操作に20点が加算され、100点(20点×5)となる。一方で、例えば、図4に示す(1)’から(6)’は、訓練者が行った復旧操作の実施例であり、この場合、訓練者は、(1)’永久事故発生、(2)’遮断器A1を開操作(遮断)、(4)’遮断器A2を開操作(遮断)、(6)’他の電力供給設備(例えば、予備変電所)から1MWの予備電力を電力供給、(5)’遮断器C1を閉操作(通電)して、電源系統Cより4MWの電力供給、(3)’断器B1を閉操作(通電)して、電源系統Bより5MWの電力供給、という順に復旧操作をしており、発電所(電源A)の電気事故に係る推奨復旧操作(図3、4の(1)から(6))の手順とは異なる。そのため、図5(b)に示すように、該訓練者の実施結果は、図4の高得点領域(20点)、低得点領域(10点)、それ以外の領域(0点)に基づいて、訓練者の復旧操作(2)’から(6)’の各操作に所定の得点が与えられる結果、70点となる。図5(b)の訓練者の訓練評価結果によれば、3番目の復旧操作(4)’をした10分経過以降、訓練者の達成した供給支障電力が推奨復旧操作に連関する供給支障電力よりも高くなっていることから、少なくとも3番目の復旧操作(4)’の手順以降(10分経過以降)、推奨復旧操作とは異なる復旧操作を訓練者はしていたことが把握される。また、復旧操作手順のミスについては、データ収集部3における訓練者の復旧操作手順と採点データ収納部4における推奨復旧操作の手順とを比較することで、容易に把握される。
【0033】
以上、第一実施形態に係る訓練評価装置2によれば、データ収集部3を備えているため、訓練者がシミュレータ7で行った復旧操作に関する情報をシミュレータ7から収集できるとともに、採点データ収納部4を備えているため、訓練評価基準として、所定の電気事故に対する推奨復旧操作に基づく採点データを収納しておくことができ、評価部5を備えているため、採点データに基づき、データ収集部3の訓練者の復旧操作に関する情報を採点することによって、客観的、且つ、自動的に訓練者が実施した復旧操作訓練を評価できる。また、訓練評価の結果は、図化した採点データに訓練者の復旧操作に関する情報が重ねられて表示部6によって表示され、且つ、訓練者が実施した復旧操作訓練が採点化(本実施形態では、0点から100点)されているため、訓練者にとって、分かり易いものと言える。従って、訓練者は、自己の訓練評価の結果と推奨復旧操作とを比較検討等を通して、自己の復旧操作の問題点、課題を明確にし、訓練の結果をその後に十分に活用することができる。
【0034】
次に、本発明に係る訓練評価装置の第二から第四実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。第二から第四実施形態の訓練評価装置は、各々、所定の違反行為監視機能(規定やルール等から逸脱する違反行為となる違反操作がなされた場合、シミュレータ7に復旧操作中止の指示を出す機能)を備えている点で、第一実施形態の訓練評価装置2とは異なる。図6は、第二から第四実施形態に係る訓練評価装置のブロック図である。図6に示すように、第二から第四実施形態に係る訓練評価装置2Aは、図2に示す第一実施形態に係る訓練評価装置2に、所定の違反行為監視機能を有する違反行為監視部52を評価部5Aに備えてなり、違反行為監視部52は、データ収集部3から送信される訓練者の復旧操作に関する情報において、所定の違反行為となる違反操作を認識した場合、シミュレータ7に対して、訓練用シミュレーションを中止させる指示を出し、訓練者による復旧操作を中止させるように構成される。
【0035】
以下、本発明に係る訓練評価装置の第二実施形態について、説明する。図7(a)は、同実施形態に係る訓練対象エリアの常時状態の単線結線図、図7(b)は(a)の変圧器H1における電気事故時の状態図を示す。図8は、同電気事故の復旧フロー図を示す。図9は、同電気事故の復旧操作に係る採点データの図を示す。
【0036】
本実施形態に係る訓練評価装置2Aは、変圧器H1の試充電(電気事故等により、変圧器に異常が発生し、変圧器を停止させた後、変圧器を再稼働させる際の試験的充電)に係る違反行為となる違反操作を監視し、当該違反操作をした場合、シミュレータ7に対して、訓練者の復旧操作を中止させるための指示を出す違反行為監視機能を有する違反行為監視部52を、第一実施形態の訓練評価装置2の評価部5に備えて構成される。
【0037】
本実施形態に係る訓練対象エリアは、図7(a)に示すように、110kvの母線と6kvの母線が変圧器H1を介して接続され、変圧器H1の110kvの母線側に1次遮断器X1、6kvの母線側に2次遮断器X2が設けられ、6kvの母線からは、配電線が4本配設されている。また、各配電線には、各々、配電線遮断器Y1,Y2,Y3,Y4が設けられている。
【0038】
次に、本実施形態に係る訓練評価装置2Aを用いた訓練評価について説明をする。本実施形態では、図7(b)に示す変圧器H1の電気事故をシミュレータ7で模擬し、その復旧に対する訓練評価を行う。図7(b)に示すように、変圧器H1の電気事故によって、1次、2次遮断器X1,X2、並びに、配電線遮断器Y1からY4は開操作(遮断)される。
【0039】
本実施形態に係る変圧器H1の電気事故に対する復旧フローは、図8に示すように、ステップ1で、変圧器H1の電気事故が生じ、1次、2次遮断器X1,X2を自動遮断(開操作)する。ステップ2で、配電線遮断器(配電線遮断器Y1からY4)を自動遮断(開操作)する。また、ステップ3で、訓練者は、変圧器H1の故障表示に故障要素が表示されているか否かを確認する。具体的には、該確認は、変圧器H1に表示される故障要素(故障原因)に基づいてなされ、故障要素が何も表示されていなければ、現地で変圧器H1の確認を要することなく、変圧器H1の試充電が可能であり、一方で、故障要素が表示されていれば、現地で変圧器H1の確認し故障要素を解消後、変圧器H1の試充電をする必要がある。換言すれば、故障表示に故障要素が表示されているとき、現地で変圧器H1の状態確認をせず、試充電を実施すれば、違反行為となる。例えば、故障表示に重故障と短絡が表示されているとき、現地で変圧器H1の状態確認をせず、試充電を実施すれば、違反行為となる。ステップ3の故障表示の確認によって、故障要素が何も表示されていなければ(ステップ3でNo)、ステップ4を行い、故障要素が表示されていれば(ステップ3でYes)、ステップ9を行う。
【0040】
ステップ4では、1次遮断器X1を閉操作(通電)し、変圧器H1の試充電操作を行う。試充電後、ステップ5で、配電線遮断器Y1を閉操作(通電)、ステップ6で、配電線遮断器Y2を閉操作(通電)、ステップ7で、配電線遮断器Y3を閉操作(通電)、ステップ8で、配電線遮断器Y4を閉操作(通電)すると、変圧器H1の電気事故に伴う供給支障電力はゼロとなり、変圧器H1に係る電気事故の復旧がなされる。
【0041】
ステップ9では、1次遮断器X1を閉操作(通電)し、変圧器H1の試充電操作を実施するか、あるいは、1次遮断器X1を開操作(遮断)したまま、変圧器H1の試充電操作を実施しないかを決める。ステップ9において、変圧器H1の試充電操作を実施すれば、ステップ10で、変圧器H1の試充電の違反行為(変圧器H1の故障表示に故障要素が表示されているにも関わらず、試充電を行う行為)となり、違反行為のあったことをシミュレータ7に送信し、シミュレータ7において、変圧器H1事故に係る訓練用シミュレーションを中止する。そして、ステップ11で、シミュレータ7の音声機能による音声ガイダンス「違反操作行為により、訓練を中断します。」が実行される。一方で、ステップ9において、変圧器H1の試充電操作を実施しなければ、ステップ3に戻って、再度、故障表示を確認する。このステップ3(Yes)とステップ9(No)の繰り返し実行は、例えば、訓練者による現地の変圧器H1の状態確認・点検・修理等によって、故障表示に故障要素が表示されなくなり(ステップ3でNo)、つまり、変圧器H1の故障原因が解消されるか、あるいは、故障表示に故障要素が表示されているにも関わらず変圧器H1の試充電を実施するか(ステップ9でYes)によって、終了される。
【0042】
上記のような復旧フローによって復旧される変圧器H1の電気事故に対して、訓練者が実施する復旧操作訓練の評価がなされる。具体的には、まず、トレーナーが、シミュレータ7で、変圧器H1の電気事故を模擬する。模擬後、6kvの母線から配設される配電線の配電線遮断器Y1からY4は仮想的に開状態(遮断状態)となり、110kvの母線から変圧器H1を通って、各配電線へ供給される電力は仮想的に遮断される。続いて、訓練者は、変圧器H1の電気事故に対して、シミュレータ7で復旧操作を行い、その復旧操作に関する情報は、シミュレータ7からデータ収集部3に、所定の時間間隔(あるいは、各操作後即時)で送信され、さらにデータ収集部3から評価部5Aに送信される。このとき、評価部5Aにおける違反行為監視部52は、変圧器H1の試充電に係る違反行為となる違反操作を認識すると、シミュレータ7に復旧操作中止の指示を出し、シミュレータ7の訓練用シミュレーションを中止させることで、訓練者が行っている復旧操作を中止させる。一方で、トレーナーは、採点データ収納部4から、変圧器H1の電気事故に係る推奨復旧操作による採点データを選択する、あるいは、シミュレータ7で変圧器H1の電気事故が模擬された際、採点データ収納部4から、変圧器H1の電気事故に対応する推奨復旧操作に基づく採点データが自動的に選択される。そして、トレーナーが選択した、あるいは、機械的に自動選択された採点データは、評価部5Aに送信される。
【0043】
ここで、変圧器H1の電気事故に係る推奨復旧操作は、例えば、故障表示に故障要素がされていない場合、図8のステップ1からステップ8(ステップ3でNoが選択)に基づき、図9の(1)から(7)に示す以下の手順からなる。
(1)変圧器H1事故発生と1次、2次遮断器X1,X2を自動遮断(開操作)(図8のステップ1)
(2)配電線遮断器Y1〜Y4を自動遮断(開操作)開操作(図8のステップ2)
(3)変圧器H1の故障表示がないことを確認し(図8のステップ3でNo)、1次遮断器X1を閉操作(通電)して変圧器H1の試充電操作を実施(図8のステップ4)
(4)配電線遮断器Y1を閉操作(通電)(図8のステップ5)
(5)配電線遮断器Y2を閉操作(通電)(図8のステップ6)
(6)配電線遮断器Y3を閉操作(通電)(図8のステップ7)
(7)配電線遮断器Y4を閉操作(通電)(図8のステップ8)
【0044】
評価部5Aに送信された訓練者による復旧操作に関する情報と採点データは、評価部5Aの評価演算部51によって、図9に示す採点データに付した得点に基づき、採点される。図9から把握されるように、仮に、訓練者が、推奨復旧操作(図9の(1)から(7))と同一の操作をしていれば、図9の(2)から(7)の6つの各復旧操作に対して、100/6点が与えられ、その結果、訓練者の訓練評価は100点(100/6点×6)となる。一方で、変圧器H1の試充電に係る違反行為となる違反操作であって、例えば、変圧器H1の故障表示に故障要素が表示されているにも関わらず、試充電を行えば、その違反操作をした時点までに訓練者が行った復旧操作に基づいて、訓練者の訓練評価はなされる。
【0045】
以上、第二実施形態に係る訓練評価装置2Aによれば、変圧器H1の電気事故復旧操作の訓練評価のみならず、変圧器H1の試充電に係る違反行為を考慮した、訓練評価をすることができる。
【0046】
次に、本発明に係る訓練評価装置の第三実施形態について、説明する。図10(a)は、同実施形態に係る訓練対象エリアに関して、常時状態の単線結線図、図10(b)は(a)の変圧器H3における電気事故時の単線結線図、図10(c)は同電気事故の復旧時の単線結線図である。また、図11は、同電気事故の復旧フロー図であり、図12(a)は変圧器の過負荷運転の説明図、図12(b)は変圧器の過負荷違反行為にあたる、変圧器の過負荷運転を逸脱した状況の説明図である。図13は、同電気事故の復旧操作に係る採点データの図である。
【0047】
本実施形態に係る訓練評価装置2Aは、変圧器に対する過負荷違反行為となる違反操作を監視し、当該違反操作をした場合、シミュレータ7に対して、訓練者の復旧操作を中止させるための指示を出す違反行為監視機能を有する違反行為監視部52を、第一実施形態の訓練評価装置2の評価部5に備えて構成される。
【0048】
本実施形態に係る訓練対象エリアは、図10(a)に示すように、110kvの母線と6kvの母線が平行に配設され、両母線間に、2つの変圧器が設けられる。1つは、8MWの電力供給を行う変圧器H2(10MWの定格容量)、もう1つは、7MWの電力供給を行う変圧器H3(10MWの定格容量)であり、変圧器H2,H3の110kvの母線側には1次遮断器、6kvの母線側には2次遮断器が各々設けられる。また、6kvの母線からは、変圧器H2が電力供給する3本の配電線と、変圧器H3が電力供給する3本の配電線とが配設され、前者の3本の配電線と後者の3本の配電線を隔てる6kv母線上の位置には、母線遮断器Y11が常時、開状態(遮断状態)で設けられ、また、6kv母線から配設される各配電線には、配電線遮断器Y5からY10が各々設けられている。
【0049】
次に、本実施形態に係る訓練評価装置2Aを用いた訓練評価について説明をする。本実施形態では、図10(b)に示す変圧器H3の電気事故を模擬し、その復旧に対する訓練評価を行う。図10(b)に示すように、変圧器H3の電気事故によって、1次、2次遮断器X3,X4、並びに、配電線遮断器Y8からY10は開状態(遮断状態)となる。
【0050】
変圧器H3の電気事故の復旧は、図10(c)に示すように、変圧器H3によって電力供給がなされていた配電線に、事故後も、電力供給がなされるように、母線遮断器Y11を閉操作(通電)し、変圧器H3によって供給されていた電力分を変圧器H2に加え、変圧器H2に負荷を与えつつ、6本の配電線全てに過不足なく電力供給を一時的に行う。そして、変圧器H3の電気事故が復旧したら、図10(a)の常時状態に戻す。
【0051】
このような変圧器H3の電気事故の復旧フローは、図11に示すように、ステップ12で変圧器H3の電気事故が生じ1次、2次遮断器X3,X4を自動遮断(開操作)、ステップ13で、配電線遮断器Y8からY10は自動遮断(開操作)し、ステップ14で、6kvの母線遮断器Y11を閉操作(通電)する。ステップ15で、8MWが供給されている変圧器H2に、変圧器H3によって供給されていた7MW分を加えて、合計15MWを変圧器H2に供給する。このとき、変圧器H2は、定格容量10MWであるため、15MWを供給すると、150%の過負荷運転となる。ステップ16では、図12(a)に基づき、変圧器H2の過負荷運転の有無が、違反行為監視部52によって確認される。例えば、図12(a)に示すように、負荷150%の変圧器の運転は10分、負荷140%の変圧器の運転は50分以内の運転が推奨されており、図12(b)に示すように、各負荷の規定の運転時間を超えて運転するとき、あるいは、最大過負荷150%を超えて運転するとき、過負荷違反行為となる。ステップ16の変圧器H2の過負荷運転の有無の確認において、最大過負荷150%を超過している場合には(ステップ16でYes)、ステップ17で、過負荷違反行為があった旨がシミュレータ7に送信され、シミュレータ7の訓練用シミュレーションが中止され、シミュレータ7の音声ガイダンスによる復旧操作中止の旨が流されるとともに、復旧操作は中止される。一方で、最大過負荷150%を超過していない場合には(ステップ16でNo)、ステップ18を行う。ステップ18では、配電線遮断器Y8、ステップ19では、配電線遮断器Y9、ステップ20では、配電線遮断器Y10を各々閉操作(通電)し、本来は変圧器H3が供給していた7MW分の電力供給をする。ステップ21で、変圧器H3を復旧させ、変圧器H2に供給する電力を8MWにし、6kvの母線遮断器Y11を開操作(遮断)する。ステップ22で、変圧器H2の過負荷運転の有無が、違反行為監視部52によって確認される。このとき、負荷150%の状態にした変圧器H2の運転(ステップ15からステップ21までの復旧操作に費やした時間)が10分を超えてなされていれば(ステップ22でNo)、ステップ23で、過負荷違反行為があった旨がシミュレータ7に送信されて、シミュレータ7の訓練用シミュレーションは中止され、10分以内であれば(ステップ22でYes)、変圧器H3事故に係る復旧は適切になされたとして終了される。
【0052】
上記のような復旧フローによって復旧される変圧器H3の電気事故に対して、訓練者が実施する復旧操作訓練の評価がなされる。具体的には、まず、トレーナーが、シミュレータ7で、変圧器H3の電気事故を模擬する。模擬後、配電線遮断器Y8からY10は仮想的に開状態(遮断状態)にされ、変圧器H3が電力供給していた配電線への電力供給は仮想的に遮断される。続いて、変圧器H3の電気事故に対して、訓練者は、シミュレータ7で復旧操作を行い、その復旧操作に関する情報は、シミュレータ7からデータ収集部3に、所定の時間間隔(あるいは、各操作後即時)で送信され、さらに、データ収集部3から評価部5Aに送信される。また、評価部5Aにおける違反行為監視部52は、変圧器の過負荷違反行為となる違反操作を認識すると、シミュレータ7に復旧操作中止の指示を出し、シミュレータ7の訓練用シミュレーションを中止させることで、訓練者が行っている復旧操作を中止させる。一方で、トレーナーは、採点データ収納部4から、変圧器H3の電気事故に係る推奨復旧操作に基づく採点データを選択する、あるいは、シミュレータ7で変圧器H3の電気事故が模擬された際、採点データ収納部4から、変圧器H3の電気事故に係る推奨復旧操作による採点データが自動的に選択される。そして、トレーナーが選択した、あるいは、機械的に自動選択された採点データは、評価部5Aに送信される。
【0053】
ここで、変圧器H3の電気事故に係る推奨復旧操作は、図11のステップ12からステップ22(ステップ16でNo、ステップ22でYesが選択)に基づき、図13の(1)から(8)に示す以下の手順からなる。
(1)変圧器H3事故発生と1次、2次遮断器X3,X4を自動遮断(開操作)(図11のステップ12)
(2)配電線遮断器Y8からY10を自動遮断(開操作)(図11のステップ13)
(3)6kv母線遮断器Y11を閉操作(通電)(図11のステップ14)
(4)変圧器H2に15MWを供給(過負荷率150%)(図11のステップ15)、このとき、変圧器過負荷運転の有無を違反行為監視部52が確認(図11のステップ16)
(5)配電線遮断器Y8を閉操作(通電)(図11のステップ18)
(6)配電線遮断器Y9を閉操作(通電)(図11のステップ19)
(7)配電線遮断器Y10を閉操作(通電)(図11のステップ20)
(8)変圧器H3を復旧させ、変圧器H2を8MWの供給に戻して、6kv母線遮断器Y11を開操作(遮断)(図11のステップ21)、このとき、変圧器過負荷運転の有無を違反行為監視部52が確認(図11のステップ22)
【0054】
評価部5Aに送信された訓練者による復旧操作に関する情報と採点データは、評価部5Aの評価演算部51によって、図13に示す採点データに付した得点に基づき、採点され評価される。図13から把握されるように、訓練者が、仮に、推奨復旧操作(図13の(1)から(8))と同一の操作をしていれば、図13の(2)から(8)の7つの各復旧操作に対して、100/7点が与えられ、その結果、訓練者の訓練評価は100点(100/7点×7)となる。一方で、変圧器の過負荷違反行為となる違反操作であって、例えば、変圧器に負荷をかけ、規定の過負荷時間を超過して操作を行えば、規定の過負荷時間を超過した時点までに訓練者が行った復旧操作に基づいて、訓練者の訓練評価はなされる。
【0055】
以上、第三実施形態に係る訓練評価装置2Aによれば、変圧器H3の電気事故復旧操作の訓練評価のみならず、変圧器H3の過負荷違反行為を考慮した、訓練評価をすることができる。
【0056】
次に、本発明に係る訓練評価装置の第四実施形態について、説明する。図14(a)は、同実施形態に係る電力系統間の常時状態の連絡線図、図14(b)は連絡線Aのループ潮流状況、(c)は連絡線Bのループ潮流状況である。また、図15は、同実施形態に係る電力系統内における電気事故の復旧フロー図を示す。
【0057】
本実施形態に係る訓練評価装置2Aは、電力系統変更(ループ操作)時の、ループ潮流(電力系統変更前の潮流に重畳される潮流)に伴う設備容量超過となる違反操作を監視し、当該違反操作をした場合、シミュレータ7に対して、訓練者の復旧操作を中止させるための指示を出す違反行為監視機能(潮流監視機能)を有する違反行為監視部52を、第一実施形態の訓練評価装置2の評価部5に備えて構成される。
【0058】
本実施形態に係る訓練対象エリアは、図14(a)に示すように、電力系統Aと電力系統Bとが連絡線Aと連絡線Bによって、接続されている。連絡線Aの設備容量は108A、連絡線Bの設備容量は216Aであり、両連絡線は、常時、開状態(遮断状態)であり、電気事故等の緊急時に、閉状態(通電状態)となる。
【0059】
本実施形態に係る電気事故とその復旧フローは、例えば、電力系統Bの電気事故を模擬し、電力系統B内だけでは、その電気事故によって生じた供給支障電力を解消できないような場合、電力系統Aから所定の供給支障電力(電力系統B内の電気事故に起因して、不足する電力)に相当する電力供給を、電力系統Bに一時的に行い、電力系統Bの電気事故を復旧(電力系統Bの供給支障電力を解消)させ、電力系統AからBへの電力供給を遮断することからなる。具体的には、電力系統Bの電気事故がトレーナーによって模擬されると、図15に示すように、ステップ24で、電力系統B内の電気事故発生、ステップ25で、訓練者は、連絡線Aあるいは連絡線Bを用いて、電力系統Aから電力系統Bに、電力系統Bにおける不足電力相応の電力供給(ループ操作)を行う。そして、ステップ26で、違反行為監視部52によって、ループ潮流を考慮した電流(ループ潮流と負荷電流)が、ループ操作時に用いた連絡線の設備容量を超過したか否か確認される。このとき、ループ潮流を考慮した電流が、ループ操作時に用いた連絡線の設備容量を超過していなければ(ステップ26でNo)、訓練用シミュレーションは継続され、ステップ27で、訓練者は、電力系統B内の電気事故を復旧させ、ループ操作時に用いた連絡線を開操作(遮断)し、一方で電流が連絡線の設備容量を超過していれば(ステップ26でYes)、ステップ28で、シミュレータ7に対して、違反行為監視部52から復旧操作中止の指示が出され、シミュレータ7において、訓練用シミュレーションは中止され、また、音声ガイダンスにより復旧操作中止の旨が通知される。より詳細には、電力系統Aから電力系統Bの電力供給によって流される、ループ潮流を考慮した電流を、例えば、200Aとするとき、図14(b)に示すように、遮断器Y12を閉操作(通電)し、遮断器Y13を開操作(遮断)することによって、連絡線Aを用いれば、連絡線Aの設備容量(108A)を超過するため、違反行為として、その旨が違反行為監視部52からシミュレータ7に送信され、訓練用シミュレーションは中止されるとともに、音声ガイダンスにて復旧操作中止が伝えられる。一方で、図14(c)に示すように、遮断器Y12を開操作(遮断)し、遮断器Y13を閉操作(通電)することによって、連絡線Bが用いられれば、連絡線Bの設備容量(216A)の範囲内となるため、違反行為を回避し、200Aの電流を電力系統AからBに流すことができ、復旧操作は継続される。そして、訓練評価にあっては、系統間の電流が連絡線の設備容量を超過することなく、復旧操作が適切に終了すれば、電力系統Bの電気事故に対応する推奨復旧操作による採点データに基づいて、訓練者が実施した復旧操作訓練の訓練評価はなされるが、仮に超過していれば、その超過時までに訓練者が行った復旧操作に基づいて、訓練評価はなされることになる。
【0060】
このような、第四実施形態に係る訓練評価装置2Aによれば、電力系統変更(ループ操作)時の、ループ潮流に伴う設備容量超過となる違反行為を考慮した、訓練評価をすることができる。
【0061】
尚、ループ操作時の潮流監視機能においては、上記の連絡線の設備容量の超過による復旧操作中止のほかに、アングル(電流と電圧間の位相差)についての違反行為による復旧操作中止もなされる。具体的には、系統変更(ループ操作)時の、アングルについて所定範囲を超過する操作を行った場合、訓練用シミュレーションは中止され、復旧操作中止の旨が音声通知されるとともに、復旧操作は中止される。例えば、アングルが、常時、+方向及び−方向に15度以内、電気事故時等の緊急時には+方向及び−方向に30度以内となるように設定される場合、電気事故時に行ったループ操作によって、仮に、アングルが+方向あるいは−方向30度を越えていれば、復旧操作は中止され、一方で、+方向及び−方向に30度以内であれば、復旧操作は継続される。従って、ループ潮流に伴うアングル超過となる違反行為を考慮した、訓練評価をすることができる。
【0062】
また、第二から第四実施形態に係る訓練評価装置2Aにおいて、違反行為監視部52における各々の所定の違反行為監視機能を、常に有効(実行する状態)にしなくとも、当該機能を有効(監視機能を実行する状態)あるいは無効(監視機能を実行しない状態)に切り替え可能な構成にしても良い。
【0063】
また、第一から第四実施形態において、シミュレータ7は、制御所1の実機でなくとも、制御所1の実機と同一若しくは類似の機能を有し、制御所1の実機とは別個独立した装置であっても良い。また、トレーナーの行為は、訓練者が代替して行うことも可能であり、この場合、訓練者が一人で、訓練することができる。また、採点データにおける所定の得点の付与は、高得点領域等の3領域に限定されず、例えば、2領域、4領域に分けて、所定の得点を付与しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1…制御所、2,2A…訓練評価装置、3…データ収集部、4…採点データ収納部、5,5A…評価部、51…評価演算部、52…違反行為監視部、6…表示部、7…シミュレータ、10…電源Aによる電力供給範囲(訓練対象エリア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統において所定の電気事故を模擬し、該電気事故に対してオペレータに復旧操作訓練を実施させるシミュレータとともに用いられ、オペレータが実施した復旧操作訓練に対する評価を行う訓練評価装置であって、オペレータが行う復旧操作に関する情報をシミュレータから収集するデータ収集部と、前記所定の電気事故に対して推奨される復旧操作及び前記所定の電気事故に起因する供給支障電力を時系列的に関連付けた情報が採点化されてなる採点データを収納する採点データ収納部と、データ収集部の前記復旧操作に関する情報及び採点データ収納部の前記採点データに基づき、オペレータが実施した復旧操作訓練を採点して評価する評価部とを備えることを特徴とする訓練評価装置。
【請求項2】
前記採点データは、前記所定の電気事故に対して推奨される復旧操作及び前記所定の電気事故に起因する供給支障電力を時系列的に関連付けた図に、所定の得点を付してなることを特徴とする請求項1に記載の訓練評価装置。
【請求項3】
前記所定の電気事故の復旧に係る特定の違反行為となる違反操作を監視し、当該違反操作をした場合、シミュレータに対して、オペレータの復旧操作を中止させるための指示を出す違反行為監視機能を有する違反行為監視部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の訓練評価装置。
【請求項4】
前記違反行為監視部は、違反行為監視機能を有効あるいは無効に切り替えが可能であることを特徴とする請求項3に記載の訓練評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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