記憶媒体および記憶装置
【課題】サイドイレーズを抑制して記録密度を向上させることができる記憶媒体および記憶装置を提供する。
【解決手段】各磁性ドット64では軟磁性体68は硬磁性体67の外端よりも記録トラック61の中心線63側で外端を規定する。硬磁性体67および軟磁性体68の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、中心線63側で軟磁性体68に所定の記録磁界が作用すれば、軟磁性体68および硬磁性体67で磁化は所定の方向に容易に向けられる。その一方で、境界線66に隣接する外側で硬磁性体67上に軟磁性体68は配置されない。硬磁性体67に記録磁界が作用しても硬磁性体67で磁化の向きは変化しにくい。境界線66を挟んで隣接する記録トラック61に対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。その結果、クロストラック方向に磁性ドット64同士のビットピッチはこれまで以上に狭められる。記録密度は向上する。
【解決手段】各磁性ドット64では軟磁性体68は硬磁性体67の外端よりも記録トラック61の中心線63側で外端を規定する。硬磁性体67および軟磁性体68の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、中心線63側で軟磁性体68に所定の記録磁界が作用すれば、軟磁性体68および硬磁性体67で磁化は所定の方向に容易に向けられる。その一方で、境界線66に隣接する外側で硬磁性体67上に軟磁性体68は配置されない。硬磁性体67に記録磁界が作用しても硬磁性体67で磁化の向きは変化しにくい。境界線66を挟んで隣接する記録トラック61に対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。その結果、クロストラック方向に磁性ドット64同士のビットピッチはこれまで以上に狭められる。記録密度は向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビットパターンドメディアといった記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビットパターンドメディアといった磁気記憶媒体では、各記録トラックごとに非磁性体中に任意のパターンで磁性ドットが配列される。各磁性ドットは、硬磁性体と、この硬磁性体上に配置される軟磁性体とから形成される。硬磁性体および軟磁性体の間では交換結合が実現される。その結果、磁性ドットでは比較的に小さい記録磁界で磁化が反転することができる。
【特許文献1】特開2008−16072号公報
【特許文献2】特開2007−250047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
記録密度の向上にあたって相互に隣接する記録トラック同士のピッチは狭められる。その結果、書き込みヘッドの記録磁界は、書き込み対象の記録トラックに隣接する記録トラックに作用してしまう。前述のように、比較的に小さい記録磁界で磁化が反転することができることから、書き込み対象でない記録トラックに磁気情報が書き込まれる。サイドイレーズが発生してしまう。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、サイドイレーズを抑制して記録密度を向上させることができる記憶媒体および記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、記憶媒体は、基板と、前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記境界線側に規定される前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする。
【0006】
こうした記憶媒体によれば、各磁性ドットの硬磁性体上で軟磁性体は硬磁性体の外端よりも記録トラックの中心線側で外端を規定する。各磁性ドットでは硬磁性体および軟磁性体の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、記録トラックでは中心線側で軟磁性体に所定の記録磁界が作用すれば、軟磁性体および硬磁性体で磁化は所定の方向に容易に向けられる。その一方で、各磁性ドットでは境界線に隣接する外側で硬磁性体上に軟磁性体は配置されない。硬磁性体に記録磁界が作用しても硬磁性体で磁化の向きは変化しにくい。したがって、境界線を挟んで隣接する記録トラックに対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。その結果、クロストラック方向に磁性ドット同士のビットピッチはこれまで以上に狭められる。記録密度は向上する。加えて、硬磁性体ではこれまで通りに体積が確保されることから、磁性ドットは熱揺らぎに十分に耐えることができる。
【0007】
記憶媒体は、基板と、前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記記録トラックの中心線から前記境界線に向かって遠ざかるにつれて膜厚を減少させることを特徴とする。
【0008】
こうした記憶媒体によれば、記録トラックの中心線側で軟磁性体は比較的に大きな膜厚を有する。中心線側で軟磁性体に所定の記録磁界が作用すれば、硬磁性体で磁化は所定の方向に容易に向けられる。しかも、境界線に隣接する外側で軟磁性体は比較的に小さい膜厚を有する。記録磁界が作用しても硬磁性体で磁化の向きは変化しにくい。境界線を挟んで隣接する記録トラックに対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。記録密度は向上する。加えて、硬磁性体ではこれまで通りに体積が確保されることから、磁性ドットは熱揺らぎに十分に耐えることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、記憶媒体および記憶装置はサイドイレーズを抑制して記録密度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1は本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばAl(アルミニウム)といった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0012】
収容空間には、記憶媒体としての1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の駆動軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば4200rpmや5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。ここでは、例えば磁気ディスク14は垂直磁気記録ディスクに構成される。すなわち、磁気ディスク14上の記録磁性層では磁化容易軸は磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に設定される。
【0013】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきAlから成型されればよい。
【0014】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが貼り付けられる。ヘッドサスペンション21の先端でフレキシャにはジンバルが区画される。ジンバルに磁気ヘッドスライダすなわち浮上ヘッドスライダ22が搭載される。ジンバルの働きで浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対して姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ22には磁気ヘッドすなわち電磁変換素子が搭載される。
【0015】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0016】
キャリッジブロック17には例えばボイスコイルモータ(VCM)23といった動力源が接続される。このVCM23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中にキャリッジアーム19が支軸18回りで揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうして浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は目標の記録トラック上に位置決めされる。
【0017】
図2は一具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成される基材すなわちスライダ本体25を備える。スライダ本体25の空気流出側端面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜26が積層される。この素子内蔵膜26に電磁変換素子27が組み込まれる。電磁変換素子27の詳細は後述される。
【0018】
スライダ本体25は例えばAl2O3−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成される。素子内蔵膜26は例えばAl2O3(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成される。スライダ本体25は媒体対向面すなわち浮上面28で磁気ディスク14に向き合う。浮上面28には平坦なベース面29すなわち基準面が規定される。磁気ディスク14が回転すると、スライダ本体25の前端から後端に向かって浮上面28には気流31が作用する。
【0019】
浮上面28には、前述の気流31の上流側すなわち空気流入側でベース面29から立ち上がる1筋のフロントレール32が形成される。フロントレール32はベース面29の空気流入端に沿ってスライダ幅方向に延びる。同様に、浮上面28には、気流31の下流側すなわち空気流出側でベース面29から立ち上がるリアセンターレール33が形成される。リアセンターレール33はスライダ幅方向の中央位置に配置される。リアセンターレール33は素子内蔵膜26に至る。浮上面28には左右1対のリアサイドレール34、34がさらに形成される。リアサイドレール34は空気流出側でスライダ本体25の側端に沿ってベース面29から立ち上がる。リアサイドレール34、34同士の間にリアセンターレール33は配置される。
【0020】
フロントレール32、リアセンターレール33およびリアサイドレール34、34の頂上面にはいわゆる空気軸受け面(ABS)35、36、37、37が規定される。空気軸受け面35、36、37の空気流入端は段差でフロントレール32、リアセンターレール33およびリアサイドレール34の頂上面にそれぞれ接続される。気流31が浮上面28に受け止められると、段差の働きで空気軸受け面35、36、37には比較的に大きな正圧すなわち浮力が生成される。しかも、フロントレール32の後方すなわち背後には大きな負圧が生成される。これら浮力および負圧のバランスに基づき浮上ヘッドスライダ22の浮上姿勢は確立される。なお、浮上ヘッドスライダ22の形態はこういった形態に限られるものではない。
【0021】
空気軸受け面36の空気流出側でリアセンターレール33には電磁変換素子27が埋め込まれる。電磁変換素子27は例えば読み出し素子と磁気記録ヘッドすなわち書き込み素子とを備える。読み出し素子にはトンネル接合磁気抵抗効果(TuMR)素子が用いられる。TuMR素子では磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から磁気情報すなわち2値情報は読み出される。書き込み素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで記録磁界を生成する。この記録磁界の働きで磁気ディスク14に2値情報は書き込まれる。電磁変換素子27は素子内蔵膜26の表面に読み出し素子の読み出しギャップや書き込み素子の書き込みギャップを臨ませる。
【0022】
ただし、空気軸受け面36の空気流出側で素子内蔵膜26の表面には硬質の保護膜が形成されてもよい。こういった硬質の保護膜は素子内蔵膜26の表面で露出する読み出しギャップや書き込みギャップを覆う。保護膜には例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が用いられればよい。
【0023】
図3に示されるように、読み出し素子38では、上下1対の導電層すなわち下部電極39および上部電極41にトンネル接合磁気抵抗効果膜42が挟み込まれる。下部電極39および上部電極41は例えばFeN(窒化鉄)やNiFe(ニッケル鉄)、NiFeB(ニッケル鉄ボロン)、CoFeB(コバルト鉄ボロン)といった高透磁率材料から形成されればよい。こうして下部電極39および上部電極41は下部シールド層および上部シールド層として機能することができる。その結果、下部電極39および上部電極41の間隔は磁気ディスク14上で記録トラックのダウントラック方向に磁気記録の分解能を決定する。
【0024】
同時に、下部電極39および上部電極41の間には1対の磁区制御膜43が配置される。トンネル接合磁気抵抗効果膜42は浮上面28に沿って磁区制御膜43同士の間に配置される。磁区制御膜43は例えばCoCrPt(コバルトクロム白金)といった硬磁性材料から形成される。磁区制御膜43は浮上面28に沿って一方向に磁化を確立する。磁区制御膜43と下部電極39との間、および、磁区制御膜43とトンネル接合磁気抵抗効果膜42との間には絶縁膜44が挟み込まれる。絶縁膜44は例えばAl2O3から形成される。磁区制御膜43は下部電極39およびトンネル接合磁気抵抗効果膜42から絶縁される。したがって、たとえ磁区制御膜43が導電性を有していても、上部電極41と下部電極39との間ではトンネル接合磁気抵抗効果膜42のみで導通が確立される。
【0025】
書き込み素子45すなわち単磁極ヘッドは、リアセンターレール33の表面すなわち浮上面28で先端面を露出する主磁極46および補助磁極47を備える。浮上面28で補助磁極47のリーディング端にはトレーリングシールド48が区画される。トレーリングシールド48は主磁極46に向き合わせられる。主磁極46、補助磁極47およびトレーリングシールド48は例えばFeNやNiFe、NiFeB、CoFeBといった磁性材料から形成される。図4を併せて参照し、補助磁極47の後端は主磁極46に磁性連結片49で接続される。磁性連結片49周りで磁気コイルすなわち薄膜コイルパターン51が形成される。こうして主磁極46、補助磁極47、トレーリングシールド48および磁性連結片49は、薄膜コイルパターン51の中心位置を貫通する磁性コアを形成する。なお、図4は、図3の4−4線に沿った断面図である。
【0026】
図5は本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク14の構造を概略的に示す。この磁気ディスク14はビットパターンドメディアを構成する。磁気ディスク14の表裏面には磁気ディスク14の周方向すなわちダウントラック方向に沿って複数筋の記録トラック61、61…が延びる。記録トラック61は同心円状に形成される。図6に示されるように、各記録トラック61は、ダウントラック方向に延びる複数筋のサブトラック62から確立される。ここでは、各記録トラック61ではダウントラック方向に2筋のサブトラック62が延びる。その結果、サブトラック62同士は記録トラック61の中心線63を挟んで中心線63に沿って延びる。
【0027】
各サブトラック62では所定の間隔でダウントラック方向に複数の磁性ドット64が配列される。ここでは、各磁性ドット64は等間隔に配列される。1つの磁性ドット64で1つの磁性ビットが確立される。各磁性ドット64では、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。こうして各磁性ドット64に2値情報が記録される。磁性ドット64同士は非磁性体65で磁気的に分離される。非磁性体65は例えばSiO2(酸化珪素)やAl2O3といった非磁性材料から形成される。
【0028】
相互に隣接するサブトラック62、62同士の間で磁性ドット64は中心線63に沿って交互に配列される。ここでは、任意のサブトラック62上でダウントラック方向に相互に隣接する磁性ドット64の中心点同士の中間位置上を通過する半径線上に、隣接するサブトラック62の磁性ドット64の中心点が配置される。各記録トラック61、61同士は境界線66に沿って並列に延びる。境界線66は記録トラック61の中心線63に並列にダウントラック方向に延びる。
【0029】
各磁性ドット64は、硬磁性体67と、硬磁性体67上に配置される軟磁性体68との積層体から形成される。硬磁性体67は例えばCoCrPtといった硬磁性材料から形成される。軟磁性体68は例えばNiFeといった軟磁性材料から形成される。各記録トラック61内で境界線66に沿って配置されるサブトラック62では、軟磁性体68は、境界線66側に規定される硬磁性体67の外端よりも中心線63側で外端を規定する。軟磁性体68の内端は硬磁性体67の内端に揃えられる。ここで、磁気ディスク14上で外側は、記録トラック61の中心線63に対してクロストラック方向に内周側および外周側に遠ざかる方向に規定される。
【0030】
図7を併せて参照し、クロストラック方向に規定される硬磁性体67のビット幅Bwは例えば44nm程度に設定される。ダウントラック方向に規定される硬磁性体67のビット長BLは例えば20nm程度に設定される。硬磁性体67の膜厚は例えば10nm程度に設定される。軟磁性体68のビット幅Bwは30nm程度に設定される。軟磁性体68のビット長BLは20nm程度に設定される。軟磁性体68の膜厚は例えば5nm程度に設定される。クロストラック方向に相互に隣接する磁性ドット64、64同士のビットピッチは64nm程度に設定される。ダウントラック方向に相互に隣接する磁性ドット64、64同士のビットピッチは40nm程度に設定される。
【0031】
図8は本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク14の断面構造を示す。磁気ディスク14は基板71を備える。基板71は例えばガラス基板から形成される。基板71の表面には裏打ち層72が広がる。裏打ち層72は例えばFeTaC(炭化鉄タンタル)膜NiFe膜といった軟磁性体から形成される。裏打ち層72では、基板71の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。裏打ち層72の膜厚は例えば50nm程度に設定される。裏打ち層72の表面には非磁性中間層73が広がる。非磁性中間層73は例えばTa(タンタル)やRu(ルテニウム)といった非磁性材料から形成される。非磁性中間層73の膜厚は例えば5nm程度に設定される。
【0032】
非磁性中間層73の表面には記録磁性層74が広がる。記録磁性層74に前述の磁性ドット64および非磁性体65が形成される。非磁性中間層73の表面に硬磁性体67が配置される。軟磁性体68の外側で硬磁性体67上には非磁性体65が覆い被さる。軟磁性体68の表面および非磁性体65の表面で平坦面が規定される。各磁性ドット64では、基板71の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸は確立される。記録磁性層74の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜75やパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜76で被覆される。保護膜75の膜厚は例えば3nm程度に設定される。潤滑膜76の膜厚は例えば1nm程度に設定される。
【0033】
いま、浮上ヘッドスライダ22が浮上面28で磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、図9に示されるように、書き込み素子45は1記録トラック61上で中心線63上を辿る。書き込み素子45の中心線が中心線63上に位置決めされると、オントラックが実現される。書き込み素子45では主磁極46のトレーリング端のコア幅は記録トラック61のトラック幅程度に設定される。その一方で、読み出し素子38ではトンネル接合磁気抵抗効果膜42は両方のサブトラック62、62すなわち記録トラック61上に配置される。ここでは、トンネル接合磁気抵抗効果膜42のコア幅は記録トラック61のトラック幅程度に設定される。
【0034】
2値情報の書き込みにあたって、主磁極46のトレーリング端から磁気ディスク14に向かって記録磁界が漏れ出る。漏れ出る記録磁界は磁性ドット64で記録磁性層74に作用する。記録磁性層74には、記録磁性層74の表面に直交する垂直方向に記録磁界は誘導される。記録磁界は裏打ち層72から書き込み素子45のトレーリングシールド48に循環する。こうした記録磁界の循環に基づき記録磁性層74では1個の磁性ドット64ごとに上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。磁性ドット64は中心線63に沿って交互に配列されることから、書き込み素子45は各磁性ドット64に順番に個別に2値情報を書き込むことができる。
【0035】
各磁性ドット64では、硬磁性体67および軟磁性体68の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、2値情報の書き込みにあたって主磁極46のトレーリング端から軟磁性体68に記録磁界が作用すると、記録磁界の循環に応じて軟磁性体68で磁化の向きは容易に所定の方向に向けられる。その結果、軟磁性体68の直下の硬磁性体67で磁化の向きは容易に所定の方向に向けられる。硬磁性体67では部分的に所定の向きに磁化が確立される。こうした部分的な磁化の向きの確立を契機に硬磁性体67ではその全域で所定の向きに磁化が向けられる。こうして各磁性ドット64で1つの向きの磁化が確立される。その結果、磁性ドット64に2値情報が書き込まれる。
【0036】
その一方で、2値情報の読み出しにあたって、記録磁性層74の磁性ドット64から漏れ出る磁界はトンネル接合磁気抵抗効果膜42のトンネル接合膜に作用する。磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から2値情報は読み出される。前述と同様に、磁性ドット64は中心線63に沿って交互に配列されることから、読み出し素子38は各磁性ドット64から順番に個別に2値情報を読み出すことができる。
【0037】
以上のようなHDD11によれば、各磁性ドット64の硬磁性体67上で軟磁性体68は硬磁性体67の外端よりも中心線63側で外端を規定する。各磁性ドット64では硬磁性体67および軟磁性体68の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、記録トラック61では中心線63側で軟磁性体68に所定の記録磁界が作用すれば、軟磁性体68および硬磁性体67で磁化は所定の方向に容易に向けられる。したがって、書き込み素子45の主磁極46は各記録トラック61で中心軸63に沿って磁性ドット64に記録磁界を作用させれば足りる。
【0038】
その一方で、各磁性ドット64では境界線66に隣接する外側で硬磁性体67上に軟磁性体68は配置されない。硬磁性体67に記録磁界が作用しても硬磁性体67で磁化の向きは変化しにくい。したがって、境界線66を挟んで隣接する記録トラック61に対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。その結果、クロストラック方向に磁性ドット64、64同士のビットピッチはこれまで以上に狭められる。HDD11では記録密度は向上する。加えて、硬磁性体67ではこれまで通りに体積が確保されることから、磁性ドット64は熱揺らぎに十分に耐えることができる。
【0039】
以上のようなHDD11では、軟磁性体68は、軟磁性体68に作用する記録磁界に基づき硬磁性体67で所定の方向に磁化の向きを確立することができる面積で硬磁性体67上に広がればよい。したがって、硬磁性体67上で軟磁性体68の輪郭は前述の形態に限定されない。例えば軟磁性体68の内端は必ずしも硬磁性体67の内端に一致しなくてもよい。例えば軟磁性体68の内端は、硬磁性体67の内端よりも中心線63からクロストラック方向に外側に規定されてもよい。その他、例えばダウントラック方向に規定される軟磁性体68の側端は必ずしもダウトンラック方向に規定される硬磁性体67の側端に一致しなくてもよい。
【0040】
次に磁気ディスク14の製造方法を説明する。まず、基板71が用意される。図10に示されるように、基板71の表面には例えばスパッタリングに基づき所定の膜厚で裏打ち層72および非磁性中間層73が形成される。形成後、非磁性中間層73の表面には所定の膜厚で硬磁性連続膜81が形成される。形成にあたって例えばスパッタリングが実施される。その後、硬磁性連続膜81の表面には例えば紫外線硬化性の樹脂材料82が塗布される。
【0041】
図11に示されるように、樹脂材料82には第1モールド83の表面が重ね合わせられる。第1モールド83は紫外線透過性の材料から形成される。第1モールド83の表面には所定の凹凸パターンが形成される。ここでは、第1モールド83の表面には前述の硬磁性体67の位置に対応する位置に凹部83aが形成される。このとき、基板71の表面に向かって紫外線が照射される。樹脂材料82は硬化する。第1モールド83は樹脂材料82の表面から引き剥がされる。こうして、図12に示されるように、樹脂材料82には所定のパターンが転写される。
【0042】
その後、樹脂材料82の表面には反応性イオンエッチング(RIE)が実施される。その結果、図13に示されるように、硬磁性連続膜81の表面に残存する余分な樹脂材料82が除去される。こうして非磁性中間層73の表面で樹脂材料82は所定のパターンを形成する。硬磁性連続膜81の表面にはドライエッチングが実施される。その結果、図14に示されるように、樹脂材料82の周囲で硬磁性連続膜81は削り取られる。こうして樹脂材料82の直下で硬磁性体67が形成される。樹脂材料82は除去される。
【0043】
図15に示されるように、スパッタリングに基づき非磁性中間層73の表面には所定の膜厚で軟磁性膜84が形成される。軟磁性膜84は非磁性中間層73の表面で硬磁性体67に覆い被さる。その後、図16に示されるように、軟磁性膜84の表面には例えば紫外線硬化性の樹脂材料85が塗布される。図17に示されるように、樹脂材料85には第2モールド86の表面が重ね合わせられる。第2モールド86は紫外線透過性の材料から形成される。第2モールド86の表面には所定の凹凸パターンが形成される。ここでは、第1モールド85の表面には、硬磁性体67の位置に対応する凹部86aと、軟磁性体68の位置に対応する凹部86bとが形成される。
【0044】
このとき、基板71の表面には紫外線が照射される。樹脂材料85は硬化する。第2モールド86は樹脂材料85の表面から引き剥がされる。こうして、図18に示されるように、樹脂材料85には所定のパターンが転写される。その後、前述と同様に、樹脂材料85の表面には反応性イオンエッチング(RIE)が実施される。その結果、図19に示されるように、硬磁性連続膜81の表面に残存する余分な樹脂材料82が除去される。こうして軟磁性膜84の表面で樹脂材料85は所定のパターンを形成する。
【0045】
その後、軟磁性膜84の表面にはドライエッチングが実施される。その結果、図20に示されるように、樹脂材料85の周囲で軟磁性膜84は削り取られる。こうして樹脂材料85の直下で軟磁性体68が形成される。樹脂材料85は除去される。その後、図21に示されるように、非磁性中間層73の表面には非磁性材料87が積層される。非磁性材料87には平坦化処理が実施される。その結果、図22に示されるように、非磁性中間層73上に記録磁性層74が形成される。記録磁性層74の表面は平坦面で規定される。非磁性材料87は非磁性体65を形成する。
【0046】
記録磁性層74の表面には保護膜75が形成される。形成にあたって例えばCVD法(化学的気相蒸着法)が用いられる。保護膜75の形成後、保護膜75の表面には潤滑膜76が塗布される。塗布にあたって例えばディップ法が用いられる。ディップ法では基板71は例えばパーフルオロポリエーテルを含む溶液に浸される。こうして磁気ディスク14は製造される。
【0047】
図23は本発明の第2実施形態に係る磁気ディスク14aの構造を概略的に示す。この磁気ディスク14aでは軟磁性体68は例えば硬磁性体67の表面の全面に広がる。図24を併せて参照し、軟磁性体68のビット幅Bwおよびビット長BLは硬磁性体67のビット幅Bwおよびビット長BLにそれぞれ一致する。サブトラック62で軟磁性体68は、記録トラック61の中心線63から境界線66に向かってクロストラック方向に遠ざかるにつれて膜厚を減少させる。図25に示されるように、磁性ドット64は非磁性体65に埋め込まれる。非磁性体65の表面で平坦面が規定される。その他、前述の磁気ディスク14と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0048】
この磁気ディスク14aでは、前述と同様に、硬磁性体67および軟磁性体68の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、2値情報の書き込みにあたって主磁極46のトレーリング端から軟磁性体68に記録磁界が作用すると、記録磁界の向きに応じて軟磁性体68で磁化の向きは容易に所定の方向に向けられる。その結果、軟磁性体68の直下の硬磁性体67で磁化の向きは容易に所定の方向に向けられる。硬磁性体67ではその全域で所定の向きに磁化が確立される。こうして磁性ドット64で1つの向きの磁化が確立される。その結果、磁性ドット64に2値情報が書き込まれる。
【0049】
こうした磁気ディスク14aによれば、クロストラック方向の内側で軟磁性体68は比較的に大きな膜厚を有する。中心線63側で軟磁性体68に所定の記録磁界が作用すれば、硬磁性体67で磁化は所定の方向に容易に向けられる。しかも、クロストラック方向の外側で軟磁性体68の膜厚は比較的に小さいことから、記録磁界が作用しても硬磁性体67で磁化の向きは変化しにくい。境界線66を挟んで隣接する記録トラック61に対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。HDD11では記録密度は向上する。加えて、硬磁性体67ではこれまで通りに体積が確保されることから、磁性ドット64は熱揺らぎに十分に耐えることができる。
【0050】
次に磁気ディスク14aの製造方法を説明する。まず、基板71の表面に例えばスパッタリングに基づき所定の膜厚で裏打ち層72および非磁性中間層73が形成される。その後、前述と同様の製造方法で非磁性中間層73の表面に硬磁性体67が形成される。スパッタリングに基づき非磁性中間層73の表面に所定の膜厚で軟磁性膜84が形成される。軟磁性膜84は非磁性中間層73の表面で硬磁性体67に覆い被さる。その後、図26に示されるように、軟磁性膜84の表面には例えば紫外線硬化性の樹脂材料91が塗布される。
【0051】
図27に示されるように、樹脂材料91にはモールド92の表面が重ね合わせられる。モールド92は紫外線透過性の材料から形成される。モールド92の表面には所定の凹凸パターンが形成される。ここでは、モールド92の表面に硬磁性体67および軟磁性体68の位置に対応する凹部92aが形成される。凹部92aの底面は、非磁性中間層73の表面に対して所定の傾斜角で交差する仮想平面に沿って規定される。このとき、基板71の表面には紫外線が照射される。樹脂材料91は硬化する。モールド92は樹脂材料91の表面から引き剥がされる。
【0052】
その結果、図28に示されるように、樹脂材料91には所定のパターンが転写される。ここでは、硬磁性体67上で樹脂材料91は硬磁性体67の内端から外端に向かうにつれて膜厚を減少させる。その後、前述と同様に、樹脂材料91の表面には反応性イオンエッチング(RIE)が実施される。図29に示されるように、軟磁性膜84の表面に残存する余分な樹脂材料91が除去される。こうして軟磁性膜84の表面で樹脂材料91は所定のパターンを形成する。
【0053】
その後、軟磁性膜84の表面にはドライエッチング処理が実施される。その結果、図30に示されるように、硬磁性体67上で樹脂材料91および軟磁性膜84は削り取られる。樹脂材料91の膜厚の変化は軟磁性膜84の膜厚の変化に反映される。同時に、樹脂材料91の周囲で軟磁性膜84は削り取られる。こうして軟磁性体68が形成される。軟磁性体68はクロストラック方向に外側に向かうにつれて膜厚を減少させる。
【0054】
その後、図31に示されるように、非磁性中間層73の表面には非磁性材料87が積層される。非磁性材料87には平坦化処理が実施される。その結果、図32に示されるように、非磁性中間層73上に記録磁性層74が形成される。非磁性材料87は非磁性体65を形成する。記録磁性層74の表面は平坦面で規定される。その後、記録磁性層74の表面には、前述と同様に、保護膜75および潤滑膜76が形成される。こうして磁気ディスク14aは製造される。
【0055】
図33は本発明の第3実施形態に係る磁気ディスク14bの構造を概略的に示す。この磁気ディスク14bでは、軟磁性体68は、硬磁性体67の表面に形成される切り欠き95内に配置される。すなわち、硬磁性体67は、前述の磁気ディスク14の硬磁性体67に比べて軟磁性体68の外端よりも外側で膜厚が増大すればよい。記録磁性層74の表面に硬磁性体67は露出する。その他、前述の磁気ディスク14と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした磁気ディスク14bによれば、前述の磁気ディスク14と同様の作用効果が実現される。
【0056】
この磁気ディスク14bの製造にあたって、図34に示されるように、非磁性中間膜73の表面には例えばスパッタリング処理およびエッチング処理に基づき硬磁性体96が形成される。硬磁性体96は硬磁性材料から形成される。硬磁性体96には部分的にイオンドープ処理が実施される。イオンには例えばN2(窒素)イオンが用いられる。硬磁性体96では部分的に軟磁性化される。その結果、硬磁性体67上に配置される軟磁性体68が形成される。その他、前述の磁気ディスク14と同様に製造されればよい。
【0057】
以上のようなHDD11では、図35に示されるように、浮上ヘッドスライダ22すなわち電磁変換素子27にスキュー角θが規定される。スキュー角θは、電磁変換素子27の中心線と中心線63との交差角で規定される。したがって、前述の磁気ディスク14〜14bでは、記録トラック61内で一方のサブトラック62上でクロストラック方向に相互に隣接する磁性ドット64の中心点同士の中間位置上を通過する半径線に、交差角θで交差する交差線上に隣接する他方のサブトラック62の磁性ドット64の中心点が配置される。こうして相互に隣接するサブトラック62同士の間で磁性ドット64はスキュー角θに応じたずれ量でダウントラック方向にずれて配置される。なお、スキュー角θは磁気ディスク14〜14bのクロストラック方向に変化することから、変化に応じて交差角θが設定されればよい。
【0058】
(付記1) 基板と、
前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、
各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、
各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記境界線側に規定される前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする記憶媒体。
【0059】
(付記2) 付記1に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックで前記磁性ドット同士はダウントラック方向に等間隔に配列されることを特徴とする記憶媒体。
【0060】
(付記3) 付記2に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックの前記磁性ドットは、隣接する前記サブトラックの前記磁性ドットに対してダウントラック方向に交互に配置されることを特徴とする記憶媒体。
【0061】
(付記4) 基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラック、および、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットを有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体に向き合わせられて、前記記録トラックに沿って前記記憶媒体に対して相対移動するヘッドスライダと、前記ヘッドスライダの媒体対向面に埋め込まれて、前記記録トラックに向き合わせられる主磁極を区画する磁気記録ヘッドとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記境界線側に規定される前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする記憶装置。
【0062】
(付記5) 基板と、
前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、
各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、
各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記記録トラックの中心線から前記境界線に向かって遠ざかるにつれて膜厚を減少させることを特徴とする記憶媒体。
【0063】
(付記6) 付記5に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックで前記磁性ドット同士はダウントラック方向に等間隔に配列されることを特徴とする記憶媒体。
【0064】
(付記7) 付記6に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックの前記磁性ドットは、隣接する前記サブトラックの前記磁性ドットに対してダウントラック方向に交互に配置されることを特徴とする記憶媒体。
【0065】
(付記8) 基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラック、および、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットを有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体に向き合わせられて、前記記録トラックに沿って前記記憶媒体に対して相対移動するヘッドスライダと、前記ヘッドスライダの媒体対向面に埋め込まれて、前記記録トラックに向き合わせられる主磁極を区画する磁気記録ヘッドとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記記録トラックの中心線から前記境界線に向かって遠ざかるにつれて膜厚を減少させることを特徴とする記憶装置。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】一具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す拡大斜視図である。
【図3】媒体対向面から観察される電磁変換素子を概略的に示す電磁変換素子の正面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図9】磁気ディスクと電磁変換素子との関係を示す部分拡大平面図である。
【図10】基板上に裏打ち層、非磁性中間層および磁性連続膜を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図11】非磁性中間層上に硬磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図12】非磁性中間層上に硬磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図13】非磁性中間層上に硬磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図14】非磁性中間層上に硬磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図15】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図16】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図17】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図18】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図19】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図20】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図21】磁性ドット同士の間に非磁性材料を充填する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図22】非磁性材料に平坦化処理を施す工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図23】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大平面図である。
【図24】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大斜視図である。
【図25】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図26】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図27】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図28】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図29】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図30】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図31】磁性ドット同士の間に非磁性材料を充填する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図32】非磁性材料に平坦化処理を施す工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図33】本発明の第3実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大斜視図である。
【図34】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図35】本発明の変形例に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0067】
11 記憶装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、28 媒体対向面(浮上面)、45 磁気記録ヘッド(書き込み素子)、46 主磁極、61 記録トラック、62 サブトラック、63 中心線、64 磁性ドット、66 境界線、67 硬磁性体、68 軟磁性体、71 基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビットパターンドメディアといった記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビットパターンドメディアといった磁気記憶媒体では、各記録トラックごとに非磁性体中に任意のパターンで磁性ドットが配列される。各磁性ドットは、硬磁性体と、この硬磁性体上に配置される軟磁性体とから形成される。硬磁性体および軟磁性体の間では交換結合が実現される。その結果、磁性ドットでは比較的に小さい記録磁界で磁化が反転することができる。
【特許文献1】特開2008−16072号公報
【特許文献2】特開2007−250047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
記録密度の向上にあたって相互に隣接する記録トラック同士のピッチは狭められる。その結果、書き込みヘッドの記録磁界は、書き込み対象の記録トラックに隣接する記録トラックに作用してしまう。前述のように、比較的に小さい記録磁界で磁化が反転することができることから、書き込み対象でない記録トラックに磁気情報が書き込まれる。サイドイレーズが発生してしまう。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、サイドイレーズを抑制して記録密度を向上させることができる記憶媒体および記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、記憶媒体は、基板と、前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記境界線側に規定される前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする。
【0006】
こうした記憶媒体によれば、各磁性ドットの硬磁性体上で軟磁性体は硬磁性体の外端よりも記録トラックの中心線側で外端を規定する。各磁性ドットでは硬磁性体および軟磁性体の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、記録トラックでは中心線側で軟磁性体に所定の記録磁界が作用すれば、軟磁性体および硬磁性体で磁化は所定の方向に容易に向けられる。その一方で、各磁性ドットでは境界線に隣接する外側で硬磁性体上に軟磁性体は配置されない。硬磁性体に記録磁界が作用しても硬磁性体で磁化の向きは変化しにくい。したがって、境界線を挟んで隣接する記録トラックに対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。その結果、クロストラック方向に磁性ドット同士のビットピッチはこれまで以上に狭められる。記録密度は向上する。加えて、硬磁性体ではこれまで通りに体積が確保されることから、磁性ドットは熱揺らぎに十分に耐えることができる。
【0007】
記憶媒体は、基板と、前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記記録トラックの中心線から前記境界線に向かって遠ざかるにつれて膜厚を減少させることを特徴とする。
【0008】
こうした記憶媒体によれば、記録トラックの中心線側で軟磁性体は比較的に大きな膜厚を有する。中心線側で軟磁性体に所定の記録磁界が作用すれば、硬磁性体で磁化は所定の方向に容易に向けられる。しかも、境界線に隣接する外側で軟磁性体は比較的に小さい膜厚を有する。記録磁界が作用しても硬磁性体で磁化の向きは変化しにくい。境界線を挟んで隣接する記録トラックに対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。記録密度は向上する。加えて、硬磁性体ではこれまで通りに体積が確保されることから、磁性ドットは熱揺らぎに十分に耐えることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、記憶媒体および記憶装置はサイドイレーズを抑制して記録密度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1は本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばAl(アルミニウム)といった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0012】
収容空間には、記憶媒体としての1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の駆動軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば4200rpmや5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。ここでは、例えば磁気ディスク14は垂直磁気記録ディスクに構成される。すなわち、磁気ディスク14上の記録磁性層では磁化容易軸は磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に設定される。
【0013】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきAlから成型されればよい。
【0014】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが貼り付けられる。ヘッドサスペンション21の先端でフレキシャにはジンバルが区画される。ジンバルに磁気ヘッドスライダすなわち浮上ヘッドスライダ22が搭載される。ジンバルの働きで浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対して姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ22には磁気ヘッドすなわち電磁変換素子が搭載される。
【0015】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0016】
キャリッジブロック17には例えばボイスコイルモータ(VCM)23といった動力源が接続される。このVCM23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中にキャリッジアーム19が支軸18回りで揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうして浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は目標の記録トラック上に位置決めされる。
【0017】
図2は一具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成される基材すなわちスライダ本体25を備える。スライダ本体25の空気流出側端面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜26が積層される。この素子内蔵膜26に電磁変換素子27が組み込まれる。電磁変換素子27の詳細は後述される。
【0018】
スライダ本体25は例えばAl2O3−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成される。素子内蔵膜26は例えばAl2O3(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成される。スライダ本体25は媒体対向面すなわち浮上面28で磁気ディスク14に向き合う。浮上面28には平坦なベース面29すなわち基準面が規定される。磁気ディスク14が回転すると、スライダ本体25の前端から後端に向かって浮上面28には気流31が作用する。
【0019】
浮上面28には、前述の気流31の上流側すなわち空気流入側でベース面29から立ち上がる1筋のフロントレール32が形成される。フロントレール32はベース面29の空気流入端に沿ってスライダ幅方向に延びる。同様に、浮上面28には、気流31の下流側すなわち空気流出側でベース面29から立ち上がるリアセンターレール33が形成される。リアセンターレール33はスライダ幅方向の中央位置に配置される。リアセンターレール33は素子内蔵膜26に至る。浮上面28には左右1対のリアサイドレール34、34がさらに形成される。リアサイドレール34は空気流出側でスライダ本体25の側端に沿ってベース面29から立ち上がる。リアサイドレール34、34同士の間にリアセンターレール33は配置される。
【0020】
フロントレール32、リアセンターレール33およびリアサイドレール34、34の頂上面にはいわゆる空気軸受け面(ABS)35、36、37、37が規定される。空気軸受け面35、36、37の空気流入端は段差でフロントレール32、リアセンターレール33およびリアサイドレール34の頂上面にそれぞれ接続される。気流31が浮上面28に受け止められると、段差の働きで空気軸受け面35、36、37には比較的に大きな正圧すなわち浮力が生成される。しかも、フロントレール32の後方すなわち背後には大きな負圧が生成される。これら浮力および負圧のバランスに基づき浮上ヘッドスライダ22の浮上姿勢は確立される。なお、浮上ヘッドスライダ22の形態はこういった形態に限られるものではない。
【0021】
空気軸受け面36の空気流出側でリアセンターレール33には電磁変換素子27が埋め込まれる。電磁変換素子27は例えば読み出し素子と磁気記録ヘッドすなわち書き込み素子とを備える。読み出し素子にはトンネル接合磁気抵抗効果(TuMR)素子が用いられる。TuMR素子では磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から磁気情報すなわち2値情報は読み出される。書き込み素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで記録磁界を生成する。この記録磁界の働きで磁気ディスク14に2値情報は書き込まれる。電磁変換素子27は素子内蔵膜26の表面に読み出し素子の読み出しギャップや書き込み素子の書き込みギャップを臨ませる。
【0022】
ただし、空気軸受け面36の空気流出側で素子内蔵膜26の表面には硬質の保護膜が形成されてもよい。こういった硬質の保護膜は素子内蔵膜26の表面で露出する読み出しギャップや書き込みギャップを覆う。保護膜には例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が用いられればよい。
【0023】
図3に示されるように、読み出し素子38では、上下1対の導電層すなわち下部電極39および上部電極41にトンネル接合磁気抵抗効果膜42が挟み込まれる。下部電極39および上部電極41は例えばFeN(窒化鉄)やNiFe(ニッケル鉄)、NiFeB(ニッケル鉄ボロン)、CoFeB(コバルト鉄ボロン)といった高透磁率材料から形成されればよい。こうして下部電極39および上部電極41は下部シールド層および上部シールド層として機能することができる。その結果、下部電極39および上部電極41の間隔は磁気ディスク14上で記録トラックのダウントラック方向に磁気記録の分解能を決定する。
【0024】
同時に、下部電極39および上部電極41の間には1対の磁区制御膜43が配置される。トンネル接合磁気抵抗効果膜42は浮上面28に沿って磁区制御膜43同士の間に配置される。磁区制御膜43は例えばCoCrPt(コバルトクロム白金)といった硬磁性材料から形成される。磁区制御膜43は浮上面28に沿って一方向に磁化を確立する。磁区制御膜43と下部電極39との間、および、磁区制御膜43とトンネル接合磁気抵抗効果膜42との間には絶縁膜44が挟み込まれる。絶縁膜44は例えばAl2O3から形成される。磁区制御膜43は下部電極39およびトンネル接合磁気抵抗効果膜42から絶縁される。したがって、たとえ磁区制御膜43が導電性を有していても、上部電極41と下部電極39との間ではトンネル接合磁気抵抗効果膜42のみで導通が確立される。
【0025】
書き込み素子45すなわち単磁極ヘッドは、リアセンターレール33の表面すなわち浮上面28で先端面を露出する主磁極46および補助磁極47を備える。浮上面28で補助磁極47のリーディング端にはトレーリングシールド48が区画される。トレーリングシールド48は主磁極46に向き合わせられる。主磁極46、補助磁極47およびトレーリングシールド48は例えばFeNやNiFe、NiFeB、CoFeBといった磁性材料から形成される。図4を併せて参照し、補助磁極47の後端は主磁極46に磁性連結片49で接続される。磁性連結片49周りで磁気コイルすなわち薄膜コイルパターン51が形成される。こうして主磁極46、補助磁極47、トレーリングシールド48および磁性連結片49は、薄膜コイルパターン51の中心位置を貫通する磁性コアを形成する。なお、図4は、図3の4−4線に沿った断面図である。
【0026】
図5は本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク14の構造を概略的に示す。この磁気ディスク14はビットパターンドメディアを構成する。磁気ディスク14の表裏面には磁気ディスク14の周方向すなわちダウントラック方向に沿って複数筋の記録トラック61、61…が延びる。記録トラック61は同心円状に形成される。図6に示されるように、各記録トラック61は、ダウントラック方向に延びる複数筋のサブトラック62から確立される。ここでは、各記録トラック61ではダウントラック方向に2筋のサブトラック62が延びる。その結果、サブトラック62同士は記録トラック61の中心線63を挟んで中心線63に沿って延びる。
【0027】
各サブトラック62では所定の間隔でダウントラック方向に複数の磁性ドット64が配列される。ここでは、各磁性ドット64は等間隔に配列される。1つの磁性ドット64で1つの磁性ビットが確立される。各磁性ドット64では、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。こうして各磁性ドット64に2値情報が記録される。磁性ドット64同士は非磁性体65で磁気的に分離される。非磁性体65は例えばSiO2(酸化珪素)やAl2O3といった非磁性材料から形成される。
【0028】
相互に隣接するサブトラック62、62同士の間で磁性ドット64は中心線63に沿って交互に配列される。ここでは、任意のサブトラック62上でダウントラック方向に相互に隣接する磁性ドット64の中心点同士の中間位置上を通過する半径線上に、隣接するサブトラック62の磁性ドット64の中心点が配置される。各記録トラック61、61同士は境界線66に沿って並列に延びる。境界線66は記録トラック61の中心線63に並列にダウントラック方向に延びる。
【0029】
各磁性ドット64は、硬磁性体67と、硬磁性体67上に配置される軟磁性体68との積層体から形成される。硬磁性体67は例えばCoCrPtといった硬磁性材料から形成される。軟磁性体68は例えばNiFeといった軟磁性材料から形成される。各記録トラック61内で境界線66に沿って配置されるサブトラック62では、軟磁性体68は、境界線66側に規定される硬磁性体67の外端よりも中心線63側で外端を規定する。軟磁性体68の内端は硬磁性体67の内端に揃えられる。ここで、磁気ディスク14上で外側は、記録トラック61の中心線63に対してクロストラック方向に内周側および外周側に遠ざかる方向に規定される。
【0030】
図7を併せて参照し、クロストラック方向に規定される硬磁性体67のビット幅Bwは例えば44nm程度に設定される。ダウントラック方向に規定される硬磁性体67のビット長BLは例えば20nm程度に設定される。硬磁性体67の膜厚は例えば10nm程度に設定される。軟磁性体68のビット幅Bwは30nm程度に設定される。軟磁性体68のビット長BLは20nm程度に設定される。軟磁性体68の膜厚は例えば5nm程度に設定される。クロストラック方向に相互に隣接する磁性ドット64、64同士のビットピッチは64nm程度に設定される。ダウントラック方向に相互に隣接する磁性ドット64、64同士のビットピッチは40nm程度に設定される。
【0031】
図8は本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク14の断面構造を示す。磁気ディスク14は基板71を備える。基板71は例えばガラス基板から形成される。基板71の表面には裏打ち層72が広がる。裏打ち層72は例えばFeTaC(炭化鉄タンタル)膜NiFe膜といった軟磁性体から形成される。裏打ち層72では、基板71の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。裏打ち層72の膜厚は例えば50nm程度に設定される。裏打ち層72の表面には非磁性中間層73が広がる。非磁性中間層73は例えばTa(タンタル)やRu(ルテニウム)といった非磁性材料から形成される。非磁性中間層73の膜厚は例えば5nm程度に設定される。
【0032】
非磁性中間層73の表面には記録磁性層74が広がる。記録磁性層74に前述の磁性ドット64および非磁性体65が形成される。非磁性中間層73の表面に硬磁性体67が配置される。軟磁性体68の外側で硬磁性体67上には非磁性体65が覆い被さる。軟磁性体68の表面および非磁性体65の表面で平坦面が規定される。各磁性ドット64では、基板71の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸は確立される。記録磁性層74の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜75やパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜76で被覆される。保護膜75の膜厚は例えば3nm程度に設定される。潤滑膜76の膜厚は例えば1nm程度に設定される。
【0033】
いま、浮上ヘッドスライダ22が浮上面28で磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、図9に示されるように、書き込み素子45は1記録トラック61上で中心線63上を辿る。書き込み素子45の中心線が中心線63上に位置決めされると、オントラックが実現される。書き込み素子45では主磁極46のトレーリング端のコア幅は記録トラック61のトラック幅程度に設定される。その一方で、読み出し素子38ではトンネル接合磁気抵抗効果膜42は両方のサブトラック62、62すなわち記録トラック61上に配置される。ここでは、トンネル接合磁気抵抗効果膜42のコア幅は記録トラック61のトラック幅程度に設定される。
【0034】
2値情報の書き込みにあたって、主磁極46のトレーリング端から磁気ディスク14に向かって記録磁界が漏れ出る。漏れ出る記録磁界は磁性ドット64で記録磁性層74に作用する。記録磁性層74には、記録磁性層74の表面に直交する垂直方向に記録磁界は誘導される。記録磁界は裏打ち層72から書き込み素子45のトレーリングシールド48に循環する。こうした記録磁界の循環に基づき記録磁性層74では1個の磁性ドット64ごとに上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。磁性ドット64は中心線63に沿って交互に配列されることから、書き込み素子45は各磁性ドット64に順番に個別に2値情報を書き込むことができる。
【0035】
各磁性ドット64では、硬磁性体67および軟磁性体68の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、2値情報の書き込みにあたって主磁極46のトレーリング端から軟磁性体68に記録磁界が作用すると、記録磁界の循環に応じて軟磁性体68で磁化の向きは容易に所定の方向に向けられる。その結果、軟磁性体68の直下の硬磁性体67で磁化の向きは容易に所定の方向に向けられる。硬磁性体67では部分的に所定の向きに磁化が確立される。こうした部分的な磁化の向きの確立を契機に硬磁性体67ではその全域で所定の向きに磁化が向けられる。こうして各磁性ドット64で1つの向きの磁化が確立される。その結果、磁性ドット64に2値情報が書き込まれる。
【0036】
その一方で、2値情報の読み出しにあたって、記録磁性層74の磁性ドット64から漏れ出る磁界はトンネル接合磁気抵抗効果膜42のトンネル接合膜に作用する。磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から2値情報は読み出される。前述と同様に、磁性ドット64は中心線63に沿って交互に配列されることから、読み出し素子38は各磁性ドット64から順番に個別に2値情報を読み出すことができる。
【0037】
以上のようなHDD11によれば、各磁性ドット64の硬磁性体67上で軟磁性体68は硬磁性体67の外端よりも中心線63側で外端を規定する。各磁性ドット64では硬磁性体67および軟磁性体68の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、記録トラック61では中心線63側で軟磁性体68に所定の記録磁界が作用すれば、軟磁性体68および硬磁性体67で磁化は所定の方向に容易に向けられる。したがって、書き込み素子45の主磁極46は各記録トラック61で中心軸63に沿って磁性ドット64に記録磁界を作用させれば足りる。
【0038】
その一方で、各磁性ドット64では境界線66に隣接する外側で硬磁性体67上に軟磁性体68は配置されない。硬磁性体67に記録磁界が作用しても硬磁性体67で磁化の向きは変化しにくい。したがって、境界線66を挟んで隣接する記録トラック61に対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。その結果、クロストラック方向に磁性ドット64、64同士のビットピッチはこれまで以上に狭められる。HDD11では記録密度は向上する。加えて、硬磁性体67ではこれまで通りに体積が確保されることから、磁性ドット64は熱揺らぎに十分に耐えることができる。
【0039】
以上のようなHDD11では、軟磁性体68は、軟磁性体68に作用する記録磁界に基づき硬磁性体67で所定の方向に磁化の向きを確立することができる面積で硬磁性体67上に広がればよい。したがって、硬磁性体67上で軟磁性体68の輪郭は前述の形態に限定されない。例えば軟磁性体68の内端は必ずしも硬磁性体67の内端に一致しなくてもよい。例えば軟磁性体68の内端は、硬磁性体67の内端よりも中心線63からクロストラック方向に外側に規定されてもよい。その他、例えばダウントラック方向に規定される軟磁性体68の側端は必ずしもダウトンラック方向に規定される硬磁性体67の側端に一致しなくてもよい。
【0040】
次に磁気ディスク14の製造方法を説明する。まず、基板71が用意される。図10に示されるように、基板71の表面には例えばスパッタリングに基づき所定の膜厚で裏打ち層72および非磁性中間層73が形成される。形成後、非磁性中間層73の表面には所定の膜厚で硬磁性連続膜81が形成される。形成にあたって例えばスパッタリングが実施される。その後、硬磁性連続膜81の表面には例えば紫外線硬化性の樹脂材料82が塗布される。
【0041】
図11に示されるように、樹脂材料82には第1モールド83の表面が重ね合わせられる。第1モールド83は紫外線透過性の材料から形成される。第1モールド83の表面には所定の凹凸パターンが形成される。ここでは、第1モールド83の表面には前述の硬磁性体67の位置に対応する位置に凹部83aが形成される。このとき、基板71の表面に向かって紫外線が照射される。樹脂材料82は硬化する。第1モールド83は樹脂材料82の表面から引き剥がされる。こうして、図12に示されるように、樹脂材料82には所定のパターンが転写される。
【0042】
その後、樹脂材料82の表面には反応性イオンエッチング(RIE)が実施される。その結果、図13に示されるように、硬磁性連続膜81の表面に残存する余分な樹脂材料82が除去される。こうして非磁性中間層73の表面で樹脂材料82は所定のパターンを形成する。硬磁性連続膜81の表面にはドライエッチングが実施される。その結果、図14に示されるように、樹脂材料82の周囲で硬磁性連続膜81は削り取られる。こうして樹脂材料82の直下で硬磁性体67が形成される。樹脂材料82は除去される。
【0043】
図15に示されるように、スパッタリングに基づき非磁性中間層73の表面には所定の膜厚で軟磁性膜84が形成される。軟磁性膜84は非磁性中間層73の表面で硬磁性体67に覆い被さる。その後、図16に示されるように、軟磁性膜84の表面には例えば紫外線硬化性の樹脂材料85が塗布される。図17に示されるように、樹脂材料85には第2モールド86の表面が重ね合わせられる。第2モールド86は紫外線透過性の材料から形成される。第2モールド86の表面には所定の凹凸パターンが形成される。ここでは、第1モールド85の表面には、硬磁性体67の位置に対応する凹部86aと、軟磁性体68の位置に対応する凹部86bとが形成される。
【0044】
このとき、基板71の表面には紫外線が照射される。樹脂材料85は硬化する。第2モールド86は樹脂材料85の表面から引き剥がされる。こうして、図18に示されるように、樹脂材料85には所定のパターンが転写される。その後、前述と同様に、樹脂材料85の表面には反応性イオンエッチング(RIE)が実施される。その結果、図19に示されるように、硬磁性連続膜81の表面に残存する余分な樹脂材料82が除去される。こうして軟磁性膜84の表面で樹脂材料85は所定のパターンを形成する。
【0045】
その後、軟磁性膜84の表面にはドライエッチングが実施される。その結果、図20に示されるように、樹脂材料85の周囲で軟磁性膜84は削り取られる。こうして樹脂材料85の直下で軟磁性体68が形成される。樹脂材料85は除去される。その後、図21に示されるように、非磁性中間層73の表面には非磁性材料87が積層される。非磁性材料87には平坦化処理が実施される。その結果、図22に示されるように、非磁性中間層73上に記録磁性層74が形成される。記録磁性層74の表面は平坦面で規定される。非磁性材料87は非磁性体65を形成する。
【0046】
記録磁性層74の表面には保護膜75が形成される。形成にあたって例えばCVD法(化学的気相蒸着法)が用いられる。保護膜75の形成後、保護膜75の表面には潤滑膜76が塗布される。塗布にあたって例えばディップ法が用いられる。ディップ法では基板71は例えばパーフルオロポリエーテルを含む溶液に浸される。こうして磁気ディスク14は製造される。
【0047】
図23は本発明の第2実施形態に係る磁気ディスク14aの構造を概略的に示す。この磁気ディスク14aでは軟磁性体68は例えば硬磁性体67の表面の全面に広がる。図24を併せて参照し、軟磁性体68のビット幅Bwおよびビット長BLは硬磁性体67のビット幅Bwおよびビット長BLにそれぞれ一致する。サブトラック62で軟磁性体68は、記録トラック61の中心線63から境界線66に向かってクロストラック方向に遠ざかるにつれて膜厚を減少させる。図25に示されるように、磁性ドット64は非磁性体65に埋め込まれる。非磁性体65の表面で平坦面が規定される。その他、前述の磁気ディスク14と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0048】
この磁気ディスク14aでは、前述と同様に、硬磁性体67および軟磁性体68の間で磁気的な交換結合が実現される。その結果、2値情報の書き込みにあたって主磁極46のトレーリング端から軟磁性体68に記録磁界が作用すると、記録磁界の向きに応じて軟磁性体68で磁化の向きは容易に所定の方向に向けられる。その結果、軟磁性体68の直下の硬磁性体67で磁化の向きは容易に所定の方向に向けられる。硬磁性体67ではその全域で所定の向きに磁化が確立される。こうして磁性ドット64で1つの向きの磁化が確立される。その結果、磁性ドット64に2値情報が書き込まれる。
【0049】
こうした磁気ディスク14aによれば、クロストラック方向の内側で軟磁性体68は比較的に大きな膜厚を有する。中心線63側で軟磁性体68に所定の記録磁界が作用すれば、硬磁性体67で磁化は所定の方向に容易に向けられる。しかも、クロストラック方向の外側で軟磁性体68の膜厚は比較的に小さいことから、記録磁界が作用しても硬磁性体67で磁化の向きは変化しにくい。境界線66を挟んで隣接する記録トラック61に対して記録磁界が作用しても、サイドイレーズの発生は抑制される。HDD11では記録密度は向上する。加えて、硬磁性体67ではこれまで通りに体積が確保されることから、磁性ドット64は熱揺らぎに十分に耐えることができる。
【0050】
次に磁気ディスク14aの製造方法を説明する。まず、基板71の表面に例えばスパッタリングに基づき所定の膜厚で裏打ち層72および非磁性中間層73が形成される。その後、前述と同様の製造方法で非磁性中間層73の表面に硬磁性体67が形成される。スパッタリングに基づき非磁性中間層73の表面に所定の膜厚で軟磁性膜84が形成される。軟磁性膜84は非磁性中間層73の表面で硬磁性体67に覆い被さる。その後、図26に示されるように、軟磁性膜84の表面には例えば紫外線硬化性の樹脂材料91が塗布される。
【0051】
図27に示されるように、樹脂材料91にはモールド92の表面が重ね合わせられる。モールド92は紫外線透過性の材料から形成される。モールド92の表面には所定の凹凸パターンが形成される。ここでは、モールド92の表面に硬磁性体67および軟磁性体68の位置に対応する凹部92aが形成される。凹部92aの底面は、非磁性中間層73の表面に対して所定の傾斜角で交差する仮想平面に沿って規定される。このとき、基板71の表面には紫外線が照射される。樹脂材料91は硬化する。モールド92は樹脂材料91の表面から引き剥がされる。
【0052】
その結果、図28に示されるように、樹脂材料91には所定のパターンが転写される。ここでは、硬磁性体67上で樹脂材料91は硬磁性体67の内端から外端に向かうにつれて膜厚を減少させる。その後、前述と同様に、樹脂材料91の表面には反応性イオンエッチング(RIE)が実施される。図29に示されるように、軟磁性膜84の表面に残存する余分な樹脂材料91が除去される。こうして軟磁性膜84の表面で樹脂材料91は所定のパターンを形成する。
【0053】
その後、軟磁性膜84の表面にはドライエッチング処理が実施される。その結果、図30に示されるように、硬磁性体67上で樹脂材料91および軟磁性膜84は削り取られる。樹脂材料91の膜厚の変化は軟磁性膜84の膜厚の変化に反映される。同時に、樹脂材料91の周囲で軟磁性膜84は削り取られる。こうして軟磁性体68が形成される。軟磁性体68はクロストラック方向に外側に向かうにつれて膜厚を減少させる。
【0054】
その後、図31に示されるように、非磁性中間層73の表面には非磁性材料87が積層される。非磁性材料87には平坦化処理が実施される。その結果、図32に示されるように、非磁性中間層73上に記録磁性層74が形成される。非磁性材料87は非磁性体65を形成する。記録磁性層74の表面は平坦面で規定される。その後、記録磁性層74の表面には、前述と同様に、保護膜75および潤滑膜76が形成される。こうして磁気ディスク14aは製造される。
【0055】
図33は本発明の第3実施形態に係る磁気ディスク14bの構造を概略的に示す。この磁気ディスク14bでは、軟磁性体68は、硬磁性体67の表面に形成される切り欠き95内に配置される。すなわち、硬磁性体67は、前述の磁気ディスク14の硬磁性体67に比べて軟磁性体68の外端よりも外側で膜厚が増大すればよい。記録磁性層74の表面に硬磁性体67は露出する。その他、前述の磁気ディスク14と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした磁気ディスク14bによれば、前述の磁気ディスク14と同様の作用効果が実現される。
【0056】
この磁気ディスク14bの製造にあたって、図34に示されるように、非磁性中間膜73の表面には例えばスパッタリング処理およびエッチング処理に基づき硬磁性体96が形成される。硬磁性体96は硬磁性材料から形成される。硬磁性体96には部分的にイオンドープ処理が実施される。イオンには例えばN2(窒素)イオンが用いられる。硬磁性体96では部分的に軟磁性化される。その結果、硬磁性体67上に配置される軟磁性体68が形成される。その他、前述の磁気ディスク14と同様に製造されればよい。
【0057】
以上のようなHDD11では、図35に示されるように、浮上ヘッドスライダ22すなわち電磁変換素子27にスキュー角θが規定される。スキュー角θは、電磁変換素子27の中心線と中心線63との交差角で規定される。したがって、前述の磁気ディスク14〜14bでは、記録トラック61内で一方のサブトラック62上でクロストラック方向に相互に隣接する磁性ドット64の中心点同士の中間位置上を通過する半径線に、交差角θで交差する交差線上に隣接する他方のサブトラック62の磁性ドット64の中心点が配置される。こうして相互に隣接するサブトラック62同士の間で磁性ドット64はスキュー角θに応じたずれ量でダウントラック方向にずれて配置される。なお、スキュー角θは磁気ディスク14〜14bのクロストラック方向に変化することから、変化に応じて交差角θが設定されればよい。
【0058】
(付記1) 基板と、
前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、
各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、
各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記境界線側に規定される前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする記憶媒体。
【0059】
(付記2) 付記1に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックで前記磁性ドット同士はダウントラック方向に等間隔に配列されることを特徴とする記憶媒体。
【0060】
(付記3) 付記2に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックの前記磁性ドットは、隣接する前記サブトラックの前記磁性ドットに対してダウントラック方向に交互に配置されることを特徴とする記憶媒体。
【0061】
(付記4) 基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラック、および、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットを有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体に向き合わせられて、前記記録トラックに沿って前記記憶媒体に対して相対移動するヘッドスライダと、前記ヘッドスライダの媒体対向面に埋め込まれて、前記記録トラックに向き合わせられる主磁極を区画する磁気記録ヘッドとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記境界線側に規定される前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする記憶装置。
【0062】
(付記5) 基板と、
前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、
各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、
各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記記録トラックの中心線から前記境界線に向かって遠ざかるにつれて膜厚を減少させることを特徴とする記憶媒体。
【0063】
(付記6) 付記5に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックで前記磁性ドット同士はダウントラック方向に等間隔に配列されることを特徴とする記憶媒体。
【0064】
(付記7) 付記6に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックの前記磁性ドットは、隣接する前記サブトラックの前記磁性ドットに対してダウントラック方向に交互に配置されることを特徴とする記憶媒体。
【0065】
(付記8) 基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラック、および、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットを有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体に向き合わせられて、前記記録トラックに沿って前記記憶媒体に対して相対移動するヘッドスライダと、前記ヘッドスライダの媒体対向面に埋め込まれて、前記記録トラックに向き合わせられる主磁極を区画する磁気記録ヘッドとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記記録トラックの中心線から前記境界線に向かって遠ざかるにつれて膜厚を減少させることを特徴とする記憶装置。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】一具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す拡大斜視図である。
【図3】媒体対向面から観察される電磁変換素子を概略的に示す電磁変換素子の正面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図9】磁気ディスクと電磁変換素子との関係を示す部分拡大平面図である。
【図10】基板上に裏打ち層、非磁性中間層および磁性連続膜を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図11】非磁性中間層上に硬磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図12】非磁性中間層上に硬磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図13】非磁性中間層上に硬磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図14】非磁性中間層上に硬磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図15】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図16】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図17】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図18】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図19】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図20】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図21】磁性ドット同士の間に非磁性材料を充填する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図22】非磁性材料に平坦化処理を施す工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図23】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大平面図である。
【図24】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大斜視図である。
【図25】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図26】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図27】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図28】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図29】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図30】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図31】磁性ドット同士の間に非磁性材料を充填する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図32】非磁性材料に平坦化処理を施す工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図33】本発明の第3実施形態に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大斜視図である。
【図34】硬磁性体上に軟磁性体を形成する工程を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図35】本発明の変形例に係る磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0067】
11 記憶装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、28 媒体対向面(浮上面)、45 磁気記録ヘッド(書き込み素子)、46 主磁極、61 記録トラック、62 サブトラック、63 中心線、64 磁性ドット、66 境界線、67 硬磁性体、68 軟磁性体、71 基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、
各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、
各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする記憶媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックで前記磁性ドット同士はダウントラック方向に等間隔に配列されることを特徴とする記憶媒体。
【請求項3】
請求項2に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックの前記磁性ドットは、隣接する前記サブトラックの前記磁性ドットに対してダウントラック方向に交互に配置されることを特徴とする記憶媒体。
【請求項4】
基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラック、および、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットを有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体に向き合わせられて、前記記録トラックに沿って前記記憶媒体に対して相対移動するヘッドスライダと、前記ヘッドスライダの媒体対向面に埋め込まれて、前記記録トラックに向き合わせられる主磁極を区画する磁気記録ヘッドとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする記憶装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラックと、
各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットとを備え、
各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする記憶媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックで前記磁性ドット同士はダウントラック方向に等間隔に配列されることを特徴とする記憶媒体。
【請求項3】
請求項2に記載の記憶媒体において、各前記サブトラックの前記磁性ドットは、隣接する前記サブトラックの前記磁性ドットに対してダウントラック方向に交互に配置されることを特徴とする記憶媒体。
【請求項4】
基板上でダウントラック方向に沿って延びて1筋の記録トラックを確立する複数筋のサブトラック、および、各前記サブトラック内でダウントラック方向に配列され、硬磁性体および当該硬磁性体上に配置される軟磁性体から形成される磁性ドットを有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体に向き合わせられて、前記記録トラックに沿って前記記憶媒体に対して相対移動するヘッドスライダと、前記ヘッドスライダの媒体対向面に埋め込まれて、前記記録トラックに向き合わせられる主磁極を区画する磁気記録ヘッドとを備え、各前記記録トラック内で当該記録トラックに隣接する前記記録トラックとの境界線に沿って延びる前記サブトラックでは、前記磁性ドットの前記軟磁性体は、前記硬磁性体の外端よりも前記記録トラックの中心線側で外端を規定することを特徴とする記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2010−129142(P2010−129142A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304812(P2008−304812)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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